説明

容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法

【課題】容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを、手間をかけることなく少ない工数で製造することができる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法を提供することである。
【解決手段】柑橘類果実を含む牛乳寒天ゼリーが透明蓋付き容器に充填してある容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法において、容器の底部に柑橘果実を載置する工程、次いで、容器に牛乳を含む寒天溶液を加え、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させる工程、更に、冷却によりゲル化させる工程を有する容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを、手間をかけることなく少ない工数で製造することができる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘果実入りの牛乳寒天ゼリーは、牛乳を含む寒天溶液に柑橘果実を加えてゼリー状に凝固させたものであり、デザートとして人気が高い。この柑橘果実入りの牛乳寒天ゼリーは、簡便に食べられるように容器詰めされた状態で市販されている。
【0003】
しかしながら、上記の柑橘果実入りの牛乳寒天ゼリーは、柑橘果実が牛乳で白濁したゼリー中に不均一に分散しており、外観上柑橘果実が確認できない場合も多く、店頭で陳列した際に何の果実が入っているかがわかり難く購買につながり難いという問題があった。
【0004】
牛乳を含む寒天溶液をゲル化させたゼリーとしては、特開2010−088357号公報(特許文献1)に、牛乳などの乳原料を含む液状部中に、乳成分を含有しないゼリーが分散した状態のゼリー入りデザートの製造方法が提案されている。しかしながら、当該文献には、白濁した牛乳寒天ゼリーにおいて、果実を添加した場合に外観上果実を確認できるかどうかについて一切検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−088357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明者は、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる牛乳寒天ゼリーを製造するため、鋭意研究を行った。そして、容器に牛乳を含む寒天溶液を加えゲル化した後、当該ゲル化した寒天溶液の上面に柑橘果実をならべ、更に柑橘果実が隠れない程度に牛乳を含む寒天溶液を再度流しいれてゲル化させるならば、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる牛乳寒天ゼリーを製造できることがわかった。しかしながら、この製造方法は、工数が多く手間がかかり惣菜工場等における大量生産にはむかないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを、手間をかけることなく少ない工数で製造することができる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく使用原料や製造方法等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、予め容器の底部に柑橘果実を載置した後、容器に牛乳を含む寒天溶液を加えて、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させるようにするならば、意外にも、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを簡便に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)柑橘果実を含む牛乳寒天ゼリーが透明蓋付き容器に充填してある容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法であって、容器の底部に柑橘果実を載置する工程、次いで、容器に牛乳を含む寒天溶液を加え、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させる工程、続いて、冷却によりゲル化させる工程を有する容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法、
(2)容器に加える前記寒天溶液の粘度が50mPa・s以下である(1)記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法、
(3)前記寒天溶液に配合する寒天が、ゼリー強度500〜2000g/cmの寒天である(1)又は(2)記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法、
(4)容器に加える前記寒天溶液の温度が55〜100℃である(1)乃至(3)のいずれかに記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法、
(5)前記寒天溶液を容器に加えた後、該寒天溶液の温度を品温30℃以下に冷却するまでの時間が10〜120分間である(1)乃至(4)のいずれかに記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを、手間をかけることなく少ない工数で製造することができる。したがって、スーパーマーケットやコンビニエンスとストアで販売されるこのような柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの需要拡大に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明において、柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーとは、少なくとも牛乳を含む寒天溶液が柑橘果実を含んだ状態でゲル化したものである。
【0013】
本発明で用いる前記柑橘果実とは、柑橘のうち特に色味が鮮やかなみかん、オレンジ、ポンカン等を用いることが好ましい。柑橘果実の形態は、特に制限はないが、柑橘果実が外観上視認しやすいことから、サノウとして用いることが好ましい。また、柑橘果実としては、生の柑橘の他、缶詰の柑橘等であってもよい。
【0014】
本発明で用いる透明蓋付き容器としては、内容物が視認できるように透明な蓋した容器であればよく、カップ状又は深皿状等に成形した樹脂製容器及び透明樹脂製の蓋を用いることができる。このような樹脂製容器及び蓋の材質としては、例えば、樹脂製容器については、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、紙、アルミ等が挙げられ、透明蓋の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0015】
本発明は、上述した柑橘果実を含む牛乳寒天ゼリーが透明な蓋付き容器に充填してある容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法であって、以下の工程を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の牛乳寒天ゼリーの製造方法は、まず、容器の底部に柑橘果実を載置する工程を有することを特徴とする。柑橘果実は、底部の略全体に載置することが好ましく、これにより、後述する牛乳を含む寒天溶液を加えて柑橘果実を浮上させる工程により、牛乳寒天ゼリーの上面の略全体に柑橘果実を位置させることができる。また、載置する柑橘果実の量は、柑橘果実の適度な酸味と牛乳寒天ゼリーの味のバランスを考慮すると、牛乳寒天ゼリー全体に対して、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%である。
【0017】
次に、本発明においては、柑橘果実を載置した容器に牛乳を含む寒天溶液を加え、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させる工程を有することを特徴とする。本発明では、予め容器の底部に柑橘果実を載置した後、容器に牛乳を含む寒天溶液を加えて、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させるだけで、上方から柑橘果実が視認できる柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを手間がかかることなく少ない工数で製造できる。
【0018】
ここで、前記牛乳を含む寒天溶液としては、寒天溶液に牛乳、必要に応じて、砂糖等の糖類、香料、pH調整剤等を加えたものである。なお、本発明の寒天溶液には、ゲル化剤として、寒天以外にゼラチン、カラギーナンなどのゲル化剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加してあってもよい。
【0019】
本発明に使用する牛乳としては、特に制限はなく、牛乳、加工乳、部分脱脂乳、粉乳などを含むものである。牛乳の配合量は、適度な牛乳の風味を得る点から、牛乳を含む寒天溶液全体に対して、固形分換算で好ましくは1〜20%、より好ましくは2〜10%である。
【0020】
本発明に使用する前記寒天は、通常食品素材として利用されているものであれば特に限定されず、一般に紅藻類から抽出して得られるアガロースとアガロペクチンを含有する多糖類であればいずれを使用しても構わない。これら寒天の中でも本発明においては、日寒水式で測定されるゼリー強度が500〜2000g/cmの寒天を用いることが好ましく、600〜1000g/cmの寒天を用いることが好ましい。本発明においては、ゼリー強度が比較的高い寒天を用いることにより比較的少量の配合量で寒天ゼリーを適度に凝固させることができる。このように寒天の配合量を少なくすることで、容器に加える寒天溶液の粘度を低く抑えることができることから、柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させ易くなる。一方、ゼリー強度が高すぎると、適度な硬さの牛乳寒天ゼリーを得るために寒天の配合量を少なくする必要があり、この場合、ゼリーから離水が起きやすくなる。寒天の配合量は、使用する寒天のゼリー強度にもよるが適度な硬さの牛乳寒天ゼリーが得られる点から、牛乳を含む寒天溶液全体に対して、好ましくは0.01〜3%、より好ましくは0.1〜2%である。
【0021】
上述のように、本発明においては、柑橘果実を載置した容器に牛乳を含む寒天溶液を加え、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させるが、前記柑橘果実を浮上させ易くするには、容器に加える前記寒天溶液の粘度は好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以下である。なお、前記粘度の下限値は、本発明においては、少なくとも増粘作用のある寒天を配合することから、1mPa・s以上となる。なお、前記粘度は、BH形粘度計で、回転数20rpmの条件で、ローターNo.1を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。
【0022】
容器に加える前記寒天溶液の粘度を前記範囲に調整するには、配合する寒天のゼリー強度や配合量にもよるが、容器に加える前記寒天溶液の温度が55〜100℃であることが好ましく、60〜95℃であることがより好ましい。前記範囲よりも温度が低いと上述の粘度に調整し難く、前記範囲よりも温度が高いと得られる牛乳寒天ゼリーの食感が悪くなる場合がある。
【0023】
続いて、本発明の製造方法は、冷却によりゲル化させる工程を有することを特徴とする。柑橘果実を寒天溶液の表面に浮上させる上述の工程により、上方から柑橘果実が視認できる状態となっているため、この状態のまま冷却してゲル化することで、上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを得ることができる。
【0024】
上述のように冷却してゲル化させるが、本発明においては、ゲル化する前に前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させる必要がある。したがって、柑橘果実が浮上し易いように冷却を緩慢な条件で行うことが好ましい。具体的には、前記寒天溶液を容器に加えた後、当該寒天溶液の温度を品温30℃以下に冷却するまでの時間が10分以上とすることが好ましく、20分以上とすることがより好ましい。なお、前記品温30℃以下まで冷却する時間は長くても120分間程度である。
【0025】
上述する工程により、柑橘果実が寒天ゼリー表面に位置して柑橘果実が上方から視認できる状態でゲル化していることから、これに透明な蓋をすることにより、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを製造することができる。なお、蓋は、内容物がゲル化する前にしてもよく、あるいは、ゲル化した後に冷却の前にしてもよい。
【0026】
なお、本発明の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した柑橘果実及び牛乳寒天ゼリーの他に、柑橘果実以外の果物や、フルーツソース等のソース等を配合することができる。
【0027】
以下、本発明について、実施例、比較例、並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
(1)寒天溶液の製造
下記配合により寒天溶液を製造した。すなわち、まず、蒸気加熱式の二重釜に牛乳、砂糖、寒天(ゼリー強度600g/cm)、清水を投入し、撹拌しながら品温90℃まで加熱して寒天溶液を得た。
【0029】
<配合> (単位:kg)
牛乳(固形分13%) 58
砂糖 11
寒天 0.6
清水 残余
合計 100
【0030】
(2)柑橘果実の処理
柑橘果実として、缶詰みかんを用意した。前記缶詰みかんは、液切りしたサノウを使用した。
【0031】
(3)透明な蓋付き容器への充填
まず、上記(2)で用意したみかん20gを、透明な容器の底部に充填した。次いで、(1)で得られた寒天溶液80gを充填し、みかんを寒天溶液表面に浮上させた。その後、透明な樹脂製の蓋をして、雰囲気温度が20℃の室内に静置して冷却し、みかん入り寒天溶液を凝固させて本実施例の果実入り密封容器詰ゼリー状食品を得た。なお、充填した寒天溶液の温度は70℃であり、品温70℃における粘度は10mPa・sであった。また、前記寒天溶液を容器に加えた後、当該寒天溶液の温度を品温30℃以下に冷却するまでの時間は30分間であった。
【0032】
以上のようにして得られた本発明の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーは、柑橘果実が牛乳寒天ゼリー表面に位置しており、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認でき、好ましいものであった。また、牛乳寒天ゼリーの食感も適度なかたさであり好ましかった。
【0033】
[実施例2]
実施例1において、寒天の配合量を牛乳を含む寒天溶液全体に対して3%に増やした以外は同様にして、容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを製造した。なお、充填した寒天溶液の温度は90℃であり、品温90℃における粘度は15mPa・sであった。また、前記寒天溶液を容器に加えた後、当該寒天溶液の温度を品温30℃以下に冷却するまでの時間は30分間であった。得られた本発明の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーは、柑橘果実が牛乳寒天ゼリー表面に位置しており、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認でき、好ましいものであった。また、牛乳寒天ゼリーの食感も適度なかたさであり好ましかった。
【0034】
[比較例1]
実施例1において、ゼリー強度300g/cmの寒天を用いた以外は同様にして、容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを製造した。得られた牛乳寒天ゼリーは、充分にゲル化しておらず好ましいもものではなかった。
【0035】
[比較例2]
実施例2において、容器に加える寒天溶液の温度を35℃とした以外は同様にして、容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを製造した。品温35℃における寒天溶液の粘度は150mPa・sであった。容器に寒天溶液を加えた際にみかんが寒天溶液表面に浮上しなかったため、得られた牛乳寒天ゼリーは、上方から柑橘果実が視認できなかった。
【0036】
[試験例1]
実施例1において、容器に加える寒天溶液の温度を表1に記載する温度に変えた以外は同様にして3種類の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーを製造した。この際、寒天溶液の各温度における粘度を測定した。次に、得られた各容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーについて、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できるかどうかを下記評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0037】
<外観の食感>
A:柑橘果実が牛乳寒天ゼリー表面の略全体に視認できる。
B:柑橘果実が牛乳寒天ゼリー表面に視認できる。
C:柑橘果実が牛乳寒天ゼリー表面に視認できない。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、容器に加える寒天溶液の温度が55〜100℃であり、また、当該寒天溶液の粘度が50mPa・s以下であると、容器詰めした状態で上方から柑橘果実が視認できる容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーが得られることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘果実を含む牛乳寒天ゼリーが透明蓋付き容器に充填してある容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法であって、容器の底部に柑橘果実を載置する工程、次いで、容器に牛乳を含む寒天溶液を加え、前記柑橘果実を前記寒天溶液の表面に浮上させる工程、続いて、冷却によりゲル化させる工程を有することを特徴とする容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法。
【請求項2】
容器に加える前記寒天溶液の粘度が50mPa・s以下である請求項1記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法。
【請求項3】
前記寒天溶液に配合する寒天が、ゼリー強度500〜2000g/cmの寒天である請求項1又は2記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法。
【請求項4】
容器に加える前記寒天溶液の温度が55〜100℃である請求項1乃至3のいずれかに記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法。
【請求項5】
前記寒天溶液を容器に加えた後、該寒天溶液の温度を品温30℃以下に冷却するまでの時間が10〜120分間である請求項1乃至4のいずれかに記載の容器詰め柑橘果実入り牛乳寒天ゼリーの製造方法。