説明

容器詰め茶アルコール飲料

【課題】本発明は、茶の香味を有し、酸味及び苦味を低減した茶炭酸アルコール飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、pH調整剤として、フィチン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を含み、pHが3.8以上4.0未満である容器詰め茶アルコール飲料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め茶アルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ウーロンハイや緑茶ハイなどの茶アルコール飲料は、甘味がなく、茶の香りとスッキリとした味わいの飲料であり、好んで飲用する消費者も多く、一定の市場を形成している。これらのチューハイは、一般的なチューハイのように、炭酸ガスを含有していない。これは、炭酸ガスの渋み及び刺激で、お茶のタンニンの苦味及び渋みが強調されて飲みにくくなるからである。なお、炭酸ガスを含有することにより、お茶の爽やかな香りが際立つという良い面もある。
【0003】
特開平6−237693号公報には、お茶、アルコール及び炭酸を含有する炭酸入りアルコール飲料が開示されている。この炭酸入りアルコール飲料の炭酸の濃度は、通常0.2〜0.8重量%(1〜4vol)である。しかしpHやタンニン含有量や食物繊維の調整はしていない。
また、特開2006−166770号公報には、緑茶抽出液及び/又は緑茶抽出物を配合した、pHが2〜4である容器詰飲料であって、フィチン酸又はその塩の濃度が100〜1000ppmである容器詰飲料が記載されている。この容器詰飲料では、そのpHは、フィチン酸の添加量とは別個に調整されており、したがってフィチン酸はpH調整用として使用されていない。また、炭酸やタンニン含有量や食物繊維の調整はしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−237693号公報
【特許文献2】特開2006−166770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、茶の香味を有し、酸味及び苦味を低減した茶炭酸アルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、pH調整剤として、フィチン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を含み、pHが3.8以上4.0未満である容器詰め茶アルコール飲料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、茶の香味を有し、酸味及び苦味を低減した茶炭酸アルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の容器詰め茶アルコール飲料は、pH調整剤として、フィチン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を含む。これらの酸を用いて、通常の茶のpH(5〜6)をpH3.8以上pH4.0未満の範囲とする。このようなpHの範囲とすることにより、容器詰め茶アルコール飲料は、レトルト殺菌をする必要がなく、ホットパック殺菌(炭酸ガスを含まない場合)又はトンネルパスツリゼーション殺菌(炭酸ガスを含む場合)をすればよく、茶の香味を損なうことがない。また、pH調整剤として、フィチン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を用いているために、酸味が強くなりすぎることもなく、酸味の増強による苦味の増強も生じない。
【0009】
本発明の容器詰め茶アルコール飲料は、好ましくはタンニン含有量が20〜60mg/Lであり、より好ましくは30〜40mg/Lである。タンニン含有量を上記範囲とすることにより、苦味を低減することができる。ここで、タンニン含有量の調整方法としては、例えば茶葉を水1L当たり8g程度使用し、抽出温度を通常の90℃又はそれより低い温度とすることなどが挙げられ、これにより、香りは十分抽出するが、タンニン抽出量は上記範囲に調整することができる。タンニン量は抽出時に測定し、所定のタンニン量になったときに抽出を終了する。
【0010】
本発明の容器詰め茶アルコール飲料は、好ましくは0.5〜4volの炭酸ガスを含み、より好ましくは2〜3volの炭酸ガスを含む。炭酸ガスを加えることで、容器詰め茶アルコール飲料に爽快感を付与することができる。なお、炭酸ガスを加えることによって、容器詰め茶アルコール飲料の苦味が増強されるが、炭酸ガスの量を上記範囲とすることで、その苦味の増強効果が低く抑えられる。
【0011】
本発明の容器詰め茶アルコール飲料は、好ましくは食物繊維を10〜30g/L含み、より好ましくは20〜24g/L含む。食物繊維の濃度を上記範囲とすることで、酸の添加による酸味の増強を緩和することができる。ここで、食物繊維とは、人の消化酵素によって消化されない、食物に由来する難消化成分の総称である。多糖類で、甘味はほとんどないがボディ感は出る。大腸内の腸内細菌が嫌気発酵することにより、一部は酪酸やプロピオン酸に分解され、吸収される。大腸の機能を正常に保つのに有用であり、栄養素の一つとされている。肥満防止、コレステロール上昇抑止、血糖値上昇抑制、大腸がん発生抑制効果が知られている。
本発明においては、水溶性食物繊維も使用でき、例えばパインファイバー(松谷化学)やポリデキストロースが粘度が少なく使いやすい。
【0012】
また、炭酸入り茶アルコール飲料は、ビールに似た泡が発生するので、泡持ち剤であるオクチニルコハク酸エステルやアルギニン酸プロピレンエステルなどを添加し、ホップを加えることにより、ビール風飲料にすることも出来る。
【実施例】
【0013】
(実験例1 ウーロン茶アルコール飲料のpH調整)
ウーロン茶葉8gを200mlの85℃の湯で5分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、乳酸、フィチン酸、クエン酸、アスコルビン酸(ビタミンC)又はリンゴ酸(それぞれ、下記表1〜5に示す量)、及び純水を加え、1000mlとし、5分間攪拌した。これらのウーロン茶アルコール飲料のpHを測定し、官能評価を行った。同様にして、さらに炭酸ガス2.3volを含有させたウーロン茶アルコール飲料の官能評価も行った。7人で官能評価した結果を下記表1〜4に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
【表3】

【0017】
【表4】

【0018】
【表5】

【0019】
(実施例1 茶炭酸アルコール飲料の作り方)
ウーロン茶葉8gを200mlの85℃の湯で5分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、50質量%の乳酸水溶液0.02ml及び純水を加えて500mlとし、5分間攪拌した。これを、350mlの缶に175ml入れ、4.6volの炭酸ガスを含む炭酸水で350mlとした。これを直ちに、缶巻き締め機でふたをして密閉した。その後、60℃で15分間後パス殺菌を行った。これにより、アルコール分4.5質量%、炭酸ガス2.3vol、エキス分0.1%及びpH3.9、タンニン35mg/Lの容器詰めウーロン茶炭酸アルコール飲料を得た。
【0020】
(比較例1)
ウーロン茶葉10gを200mlの90℃の湯で10分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、純水を加えて1000mlとし、5分間攪拌した。これを、350mlの缶に175ml入れ、4.6volの炭酸ガスを含む炭酸水で350mlとした。これを直ちに、缶巻き締め機でふたをして密閉した。その後、60℃で15分間後パス殺菌を行った。これにより、アルコール分4.5質量%、炭酸ガス2.3vol、及びエキス分0.1%、pH3.9、タンニン65mg/Lのタンニン量の多い容器詰めウーロン茶炭酸アルコール飲料を得た。
【0021】
実施例1及び比較例1を7人で比較官能評価した所、実施例1(タンニン量35mg)は香り味とも良好であったが、比較例(タンニン量65mg)では、渋すぎて飲みづらかった。
【0022】
(実施例2 茶炭酸アルコール飲料の作り方)
ウーロン茶葉8gを200mlの65℃の湯で5分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、50質量%の乳酸水溶液0.02ml及びウーロン茶回収フレーバー(ウーロン茶葉1重量部を60質量%の含水アルコール1重量部で、20℃で24時間抽出し、その後ろ紙ろ過したもの)1mlと純水を加えて500mlとし、5分間攪拌した。これを、350mlの缶に175ml入れ、4.6volの炭酸ガスを含む炭酸水で350mlとした。これを直ちに、缶巻き締め機でふたをして密閉した。その後、60℃で15分間後パス殺菌を行った。これにより、アルコール分4.5質量%、炭酸ガス2.3vol、及びpH3.9、タンニン20mg/Lの容器詰めウーロン茶炭酸アルコール飲料を得た。
【0023】
(比較例2)
実施例2と同様のタンニン量、アルコール量で、乳酸、炭酸を加えず、その代わりに重曹0.1gとアスコルビン酸ナトリウム0.5g、PH6.5のウーロン茶アルコール飲料をつくり、缶に充填後、120℃、5分間殺菌を行った。
【0024】
実施例2及び比較例2を7人で比較官能評価したところ、炭酸入りウーロン茶アルコール飲料は、比較例に比べ、ウーロン茶の爽やかな香りが際立ち、炭酸の刺激が心地良く、ボディ感もあった。また、実施例2は、通常のウーロン茶アルコール飲料のタンニン量(45mg/L)に比較して、タンニン量はかなり少ないが、茶葉感はしっかりあり、苦味も少なく良好であった。
【0025】
(実施例3 食物繊維入り茶炭酸アルコール飲料の作り方)
ウーロン茶葉10gを200mlの90℃の湯で10分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、食物繊維パインファイバ(松谷化学社製)21gとアスコルビン酸 0.4gと純水を加えて500mlとし、5分間攪拌した。これを、350mlの缶に175ml入れ、4.6volの炭酸ガスを含む炭酸水で350mlとした。これを直ちに、缶巻き締め機でふたをして密閉した。その後、60℃で15分間後パス殺菌を行った。これにより、アルコール分4.5質量%、炭酸ガス2.3vol、及びpH3.85、タンニン50mg/Lの容器詰めウーロン茶炭酸アルコール飲料を得た。
【0026】
(比較例3−1及び3−2)
実施例3と同様の条件で、食物繊維を添加しない茶炭酸アルコール飲料(比較例3−1)と食物繊維を40g/Lと多く添加した茶炭酸アルコール飲料(比較例3−2)を作製した。
【0027】
実施例3、比較例3−1及び比較例3−2を7人で比較官能比較したところ、実施例3(食物繊維21g/L)は、比較例3−1と比較して、渋み、苦味が少なく、アルコール感がマイルドになり良好な風味であった。比較例3−2(食物繊維40g/L)は、重すぎる感じであった。
【0028】
(実施例4 泡立ち茶炭酸アルコール飲料の作り方)
ウーロン茶葉8gを200mlの85℃の湯で5分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、クエン酸0.175g及びホップイソアルファ酸製剤(30%含有、ボタニックス社製)0.02mlとオクチニルコハク酸エステル2g(松谷化学社製、エマルスター)と純水を加えて500mlとし、5分間攪拌した。これを、350mlの缶に175ml入れ、4.6volの炭酸ガスを含む炭酸水で350mlとした。これを直ちに、缶巻き締め機でふたをして密閉した。その後、60℃で15分間後パス殺菌を行った。これにより、アルコール分4.5質量%、炭酸ガス2.3vol、及びpH3.9、タンニン35mg/Lの容器詰めウーロン茶炭酸アルコール飲料を得た。
7人で官能評価したところ、ビールのような泡が立ち、ホップのキレの良い苦味と茶葉の渋み、苦味、ウーロン茶の爽やかな香りが調和されて良好な風味であった。
【0029】
(実験例2 茶炭酸アルコール飲料のタンニン量と炭酸量のバランス)
ウーロン茶葉2〜20gを200mlの85℃の湯で2〜10分間抽出した後、茶葉を取り除いた。抽出液を20℃まで冷却した後、95質量%の含水アルコール48ml、クエン酸0.15g及び純水を加えて500mlとし、5分間攪拌した。これを、350mlの缶に適量入れ、0〜6volの炭酸ガスを含む水で350mlとした。これを直ちに、缶巻き締め機でふたをして密閉した。その後、60℃で15分間後パス殺菌を行った。これにより、アルコール分4.5質量%、炭酸ガス0〜4vol、エキス分0.1%及びpH3.9、タンニン10〜80mg/Lの容器詰めウーロン茶炭酸アルコール飲料を各種得た。これを専門パネル3人で官能評価し、炭酸ガスとタンニン量の適切なバランスを調べた。良好なバランスは○、ややバランスが悪いのは△、バランスが悪いのは×とした。結果を下記表6に示す。
【0030】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH調整剤として、フィチン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を含み、pHが3.8以上4.0未満である容器詰め茶アルコール飲料。
【請求項2】
タンニン含有量が20〜60mg/Lである、請求項1記載の容器詰め茶アルコール飲料。
【請求項3】
0.5〜4体積%の炭酸ガスを含む、請求項1又は2記載の容器詰め茶アルコール飲料。
【請求項4】
食物繊維を10〜30g/L含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の容器詰め茶アルコール飲料。

【公開番号】特開2011−142850(P2011−142850A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5216(P2010−5216)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】