説明

容器詰茶飲料

【課題】高濃度の非重合体カテキン類を含有しながら、苦味と甘味のバランスに優れる容器詰茶飲料を提供すること。
【解決手段】茶抽出物を配合してなる容器詰茶飲料であって、
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)非重合体カテキン類、
(B)難消化性デキストリン、
(C)カフェイン
を含有し、それらの含有量が容器詰めされた飲料100mL当たり、
(イ)(A)=100〜600mg、
(ロ)(C)/(A)=0.001〜0.20、
(ハ)(B)/(A)=10〜80
である容器詰茶飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の非重合体カテキン類を含有する容器詰茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果として、コレステロール上昇抑制作用やアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(特許文献1及び2)。近年、このようなカテキン類の生理効果に着目して、高濃度のカテキン類を含有する容器詰茶飲料が上市している。その容器詰茶飲料の製造方法として、例えば、緑茶抽出液にカテキン製剤と言われる緑茶抽出物(特許文献3〜5)を配合して、容器詰茶飲料中の非重合体カテキン類濃度を増加させる方法が採用されている。
【0003】
しかしながら、高濃度にカテキン類を含有する容器詰茶飲料においては、茶抽出物又はその精製物の添加により苦味が増強されるため、茶飲料本来の美味しい呈味バランスを崩している。従来、この呈味バランスを改善すべく、苦味抑制剤であるサイクロデキストリンを配合し苦味を低減させて呈味バランスを改善する方法が提案されているが(特許文献6)、急須で入れた茶飲料本来の味からかけ離れたものであった。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−156614号公報
【特許文献2】特開平3−133928号公報
【特許文献3】特開2002−142677号公報
【特許文献4】特開平8−298930号公報
【特許文献5】特開平8−109178号公報
【特許文献6】特開平1−174328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、高濃度の非重合体カテキン類を含有しながら、苦味と甘味のバランスに優れる容器詰茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
非重合体カテキン類濃度を高濃度にすると、上記のとおり、苦味が強く感じられるが、苦いコーヒーに砂糖を入れると飲みやすくなるように、これと同様の手法で甘味を増強すれば強い苦味と甘味のバランスを取ることが可能ではないかと考えられる。しかしながら、茶飲料の場合、甘味だけを増やすと、苦味と甘味のバランスが崩れてしまう。
そこで、本発明者は、高濃度で非重合体カテキン類を含有する容器詰茶飲料の苦味と甘味のバランスについて検討した結果、水溶性添加物の中で特定の化合物を高濃度の非重合体カテキン類に対して一定の割合になるように配合したときに、苦味と甘味のバランスに優れる高濃度非重合体カテキン含有容器詰茶飲料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、茶抽出物を配合してなる容器詰茶飲料であって、
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)非重合体カテキン類、
(B)難消化性デキストリン、
(C)カフェイン
を含有し、それらの含有量が容器詰めされた飲料100mL当たり、
(イ)(A)=100〜600mg、
(ロ)(C)/(A)=0.001〜0.20、
(ハ)(B)/(A)=10〜80
である容器詰茶飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器詰飲料は、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘らず、苦味と甘味のバランスに優れ、香り立ちや風味立ちも良好で、かつ飲み心地のよい飲料である。すなわち、本発明によれば、急須で入れた茶飲料の呈味バランスにより近づけた美味しい茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において(A)非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称である。ここでいう非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0010】
本発明の容器詰茶飲料は、(A)非重合体カテキン類を容器詰された飲料100mL当たり100〜600mg含有するが、110〜500mg、更に130〜400mg、特に150〜300mg含有することが好ましい。非重合体カテキン類の含有量が上記範囲内であれば、多量の非重合体カテキン類の摂取が容易で、かつ非重合体カテキン類による生理効果を期待でき、また茶飲料の呈味が良好である。
【0011】
本発明の容器詰茶飲料中の非重合体カテキン類には、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピカテキンからなるエピ体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、ガロカテキン及びカテキンからなる非エピ体がある。非エピ体は本来自然界には殆ど存在せず、エピ体の熱変性により生成する。本発明の容器詰茶飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(E)非重合体カテキン類の非エピ体の割合([(E)/(A)]×100)は20〜70質量%が好ましく、更に30〜65質量%、特に40〜60質量%であることが色調安定性の観点から好ましい。
【0012】
本発明の容器詰茶飲料中の非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートからなるガレート体と、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びカテキンからなる非ガレート体がある。エステル型非重合体カテキン類であるガレート体は苦味が強いことから、本発明の容器詰茶飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(D)非重合体カテキン類のガレート体の割合([(D)/(A)]×100)は、5〜95質量%、更に8〜57質量%であることが苦味抑制の観点から好ましい。
【0013】
本発明の容器詰茶飲料は、容器詰された飲料中に、(C)カフェインと(A)非重合体カテキン類とを質量比[(C)/(A)]で0.001〜0.20含有するが、0.002〜0.17、更に0.003〜0.14含有することが好ましい。カフェインの含有量が上記範囲内であれば、風味バランスが良好であり、また茶飲料本来の外観を保持することができる。
【0014】
本発明における高濃度の非重合体カテキン類を含有する容器詰茶飲料は、茶抽出物を配合し非重合体カテキン類濃度及びカフェイン量を上記範囲内に調整して得ることができる。ここで、茶抽出物とは、茶抽出液、その濃縮物及びそれらの精製物を包含する概念である。茶抽出物としては、茶抽出液、その濃縮物又はそれらの精製物を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができるが、中でも緑茶抽出液、半発酵茶抽出液又は発酵茶抽出液に、緑茶抽出物の精製物を配合したものが好ましい。茶抽出物の濃縮物としては、例えば、茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出した緑茶抽出液から水分を一部除去し、場合によっては精製して非重合体カテキン類濃度を高めたものが挙げられ、その形態としては、固体、水溶液、スラリーなど種々のものが挙げられる。
【0015】
非重合体カテキン類を含有する緑茶抽出物の濃縮物としては、例えば、三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」などの市販品を使用することができ、またこれらを精製して使用してもよい。精製の方法としては、例えば緑茶抽出物の濃縮物を水又は水とエタノールなどの有機溶媒の混合物に懸濁して生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去する方法が挙げられる。また、茶葉から熱水又はエタノールなどの水溶性有機溶媒により抽出した茶抽出物を濃縮したものを更に精製したもの、あるいは茶抽出物を直接精製したものを用いてもよい。本発明においては、これらの方法により得られた精製物を茶抽出物の精製物として使用することができる。
【0016】
本発明の容器詰茶飲料は(B)難消化性デキストリンを含有しており、(A)非重合体カテキン類と(B)難消化性デキストリンとを質量比[(B)/(A)]で10〜80含有するが、15〜70、更に20〜60、特に30〜50含有することが好ましい。難消化性デキストリンは苦味抑制効果と僅かな甘味を有するが、質量比[(B)/(A)]を上記範囲内とすることで、高濃度の非重合体カテキン類に起因する苦味を低減させつつ、その低減された苦味を難消化性デキストリンの甘味とバランスさせて、茶飲料本来の呈味バランスに近づけることができる。
【0017】
ここで難消化性デキストリンとは、平成15年2月17日付け食新発第0217002号厚生労働省医薬局食品保健部企画課新開発食品保健対策室長通知の項1(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」の一部改正)の1)で定義されているエネルギー換算係数が1(kcal/g)の食物繊維をいう。
【0018】
本発明の容器詰茶飲料は、滑らかな口当たり、非重合体カテキン類の安定性の観点から、20℃における粘度が5〜20mps・s、更に6〜15mps・s、特に7〜12mps・sであることが好ましい。ここで、粘度は、B型粘度計等で測定したものをいう。
【0019】
本発明の容器詰茶飲料は、pHが5〜7、更に5.5〜7、特に5.5〜6.5であることが好ましい。pHが上記範囲内であると、非重合体カテキン類の安定性も優れるようになる。
【0020】
本発明の容器詰茶飲料には、茶由来の成分にあわせて、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合してもよい。
【0021】
本発明の容器詰茶飲料は、非炭酸飲料でも、炭酸飲料であってもよい。炭酸飲料とすれば、炭酸ガスの適度な起泡性により、非重合体カテキン類の苦味を抑制することができ、さらにソフト感及び清涼感を継続して付与することもできる。茶系飲料としては、流通する商品として、緑茶飲料等の不発酵茶飲料、烏龍茶飲料等の半発酵茶飲料、紅茶飲料等の発酵茶飲料、あるいは麦茶等が挙げられ、中でも緑茶飲料が好ましい。
【0022】
本発明の容器詰茶飲料に使用できる容器としては、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常当該技術分野で使用されているものが挙げられる。
【0023】
また、本発明の容器詰茶飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0024】
(非重合体カテキン類の測定)
フィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0025】
(難消化性デキストリンの測定)
食品の栄養表示基準制度 第2版(平成11年7月1日発行、編集 財団法人日本健康・栄養食品協会・栄養食品部、46頁〜51頁)に記載の高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)を使用した。このとき、不溶性固形分由来の食物繊維を除くために、日本栄養・食糧学会誌,46(3)244(1993)の記載にしたがって、セライトを充填したガラスフィルター(No.2)を用いて水溶性食物繊維を分取した。なお、HPLCによる定量には、内部標準としてライテスウルトラ(ダニスコジャパン(株))を用いた。
【0026】
(風味の評価)
各容器詰茶飲料について飲用試験を実施し、次の方法により風味を評価した。
【0027】
(1)苦味の評価
5名の専門パネラーが、表1に記載の苦味標準溶液濃度を指標として苦味低減レベルを官能試験し、表2の基準に基づいて評価した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
(2)甘味・香りの評価
5名の専門パネラーが、下記の基準茶飲料に対する相対評価として下記の基準により評点を付け、その平均点を表3及び4の基準により評価した。
【0031】
基準茶飲料
実施例に使用した茶葉5gをビーカーに入れ、これに70℃の湯150gを注ぎ、2分間蒸らして基準茶飲料を得た。
【0032】
(i)甘味
1点:ちょうど良い
2点:僅かに弱く感じるか、又は僅かに強く感じる
3点:やや弱く感じるか、又はやや強く感じる
4点:弱く感じるか、又は強く感じる
【0033】
(ii)香り
1点:明らかに感じる
2点:僅かに弱く感じる
3点:やや弱く感じる
4点:弱く感じる
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
粘度測定条件
粘度計 :B8H型
サンプル:400mL/500mL ビーカー
ロータ :No.1
回転数 :50rpm
換算係数:×2
温度 :20℃
【0037】
(緑茶抽出液の製造)
緑茶葉に対して30倍のイオン交換水を用い、65℃、5分の条件下で攪拌抽出した。その後、緑茶葉を濾過し、水で希釈した。得られた緑茶抽出液中の非重合体カテキン類濃度は65mg/100mLであり、ガレート体率は48質量%であった。
【0038】
(緑茶抽出物の精製物の製造)
非重合体カテキン類の含有量が30質量%の緑茶抽出液を、スプレードライ法により噴霧乾燥させた。得られたパウダーからエタノールと水の混合溶媒(水:エタノール=40:60)で非重合体カテキン類を抽出した後に混合液に対して8質量部の活性炭を添加して精製を行って緑茶抽出物の精製物を得た。緑茶抽出物中の非重合体カテキン類は22質量%、ガレート体率は52質量%であった。
【0039】
(容器詰緑茶飲料の製造法)
(実施例及び比較例)
緑茶抽出液、緑茶抽出物の精製物、難消化性デキストリン及びその他成分を表5に示す割合で配合し、UHT殺菌(138℃、30秒)を施した。殺菌後のpHは6.1であった。得られた容器詰茶飲料の風味を評価した。その結果を表5に示す。なお、難消化性デキストリンは松谷化学工業社製のファイバーソル2を使用した。
【0040】
【表5】

【0041】
表5から明らかなように、実施例1〜4の容器詰飲料においては、高濃度で非重合体カテキン類を含有するにも拘らず、苦味と甘味のバランスに優れ、香りが良く、茶飲料本来の美味しい呈味を有することが確認された。
一方、サイクロデキストリンを配合した比較例1の容器詰茶飲料、(B)難消化性デキストリンを配合していない比較例2の容器詰茶飲料、及び(B)難消化性デキストリンを質量比(B/A)10未満で含有する比較例3の容器詰茶飲料においては、茶飲料の苦味が強く感じられ、香り又は甘味とバランスが不十分であった。また、(B)難消化性デキストリンを質量比(B/A)80超で含有する比較例4の容器詰飲料においては、茶飲料の苦味が抑制されるものの、甘味及び香りが不十分なものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物を配合してなる容器詰茶飲料であって、
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)非重合体カテキン類、
(B)難消化性デキストリン、
(C)カフェイン
を含有し、それらの含有量が容器詰めされた飲料100mL当たり、
(イ)(A)=100〜600mg、
(ロ)(C)/(A)=0.001〜0.20、
(ハ)(B)/(A)=10〜80
である容器詰茶飲料。
【請求項2】
pHが5〜7である、請求項1記載の容器詰茶飲料。
【請求項3】
20℃における粘度が5〜20mps・sである、請求項1又は2記載の容器詰茶飲料。
【請求項4】
緑茶飲料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器詰茶飲料。