説明

容器詰野菜飲料

【課題】甘みが強く、十分な食感があり、それでいてドロドロとした喉ごしがなく飲みやすい、消費者ニーズに適合した容器詰野菜飲料を提供する。
【解決手段】トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを含有することを特徴とする容器詰野菜飲料を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト果汁飲料やトマトミックスジュースなど、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜飲料は、年齢や性別を問わず多くの人に愛飲されている嗜好性飲料の一つである。容器詰された野菜飲料は、人々の健康志向を背景として急速に市場が伸張している飲料カテゴリーの一つであり、これを背景として工業的に生産された容器詰野菜飲料が数多く上市されている。
【0003】
最近では野菜飲料が健康に良いと広く認知されてきている一方、野菜由来の臭みやエグ味の影響で、この種の野菜飲料が苦手であるという人も少なからず存在する。よって、栄養性や健康性を担保しながらも、美味しく飲みやすい野菜飲料を開発することは野菜飲料の市場をさらに拡大する上での大きな課題であった。
【0004】
このような状況のもと、例えば、トマト抽出物とサイクロデキストリンとを配合することにより、飲みやすいトマト飲料を製造する技術が提案されている(特許文献1)。
また、青臭み、酸味等の強い野菜・果物を原料とする飲食物の製造において、飲食品質量当りエリスリトールを0.2〜3.0質量%添加する技術が提案されている(特許文献2)。
しかし、サイクロデキストリンやエリスリトールは、これらを添加しない場合と比較すれば飲みやすさは向上するものの、その味はいずれもトマト飲料と呼ぶには違味感が感じられるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−130745号公報
【特許文献2】特開平9−117262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
野菜の中でもトマトは、独特の風味から好き嫌いが特に分かれる野菜である。近年、トマトは甘い味のものが一般的に好まれる傾向にあり、殊に最近はフルーツトマトと呼ばれる高甘味度のトマトが青果市場で消費者の支持を得て来ており、最近の消費者嗜好の変化が伺える(例えば、平成20年度越谷市農業技術センター試験成果「トマトの食味に対する消費者の嗜好調査」を参照)。
【0007】
一方、飲料業界において「トマトジュース」は「トマト搾汁液だけ、またはそれに食塩を加えたもの」と定義されており、このことが最近の消費者嗜好の変化に合わせた商品を上市する上での阻害要因ともなっていた。事実、トマト飲料の売上額は、ここ数年間で低下し続けている(独立行政法人農畜産業振興機構「月報野菜情報」2007年6月)。
【0008】
本発明者らは、トマト飲料(ここでは、トマト搾汁液を含む飲料全般を包含する)に関し、嗜好が変化した現在の消費者ニーズを分析して鋭意研究した結果、甘みが強く、十分な食感があり、それでいてドロドロとした喉ごしがなく飲みやすいものが好まれる傾向があることを見いだした。
そこで本発明は、このように嗜好が変化した現在の消費者ニーズに適合したトマト飲料を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを含有することを特徴とする容器詰野菜飲料を提案する。
【0010】
トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを併用することにより、甘みが強く、十分な食感があり、それでいてドロドロとした喉ごしがなく飲みやすい、消費者ニーズに適合した容器詰野菜飲料を提供することができる。
【0011】
かかる観点から、本発明はまた、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを有効成分とする、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料の濃度感増強剤、並びに、野菜搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを配合することを特徴とする、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料の濃度感を増強する方法を提案するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<本野菜飲料>
本実施形態に係る容器詰野菜飲料(以下「本野菜飲料」と称する)は、トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを含有する容器詰野菜飲料である。
但し、本野菜飲料は、トマト果汁飲料やトマトミックスジュースなど、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料を包含するものであり、上記成分以外の成分であっても、これらの飲料が通常含有し得る成分を含むことは任意である。
【0014】
(トマト搾汁)
トマト搾汁とは、トマト果実を破砕して搾汁し、又は裏ごしし、皮、種子等を除去したもの、さらには濃縮トマトを希釈して搾汁の状態に戻したものを包含する。
【0015】
トマト搾汁の原料となるトマト果実は、その品種、産地、熟度、大きさなどを適宜選択することができる。また、品種、産地、熟度、大きさ等が異なる二種類以上のトマト果実を原料としてブレンドすることもできる。
【0016】
原料のトマト果実は、必要に応じて洗浄し、傷みの有無などで選別すればよい。その際、洗浄方法及び選別方法は、通常行われている任意の方法を採用することができる。
また、必要に応じて、トマト由来の酵素活性を失活させる処理を施してもよい。例えば70℃以上に加熱処理を行えばよい。
【0017】
本野菜飲料に使用するトマト搾汁は、トマト果実を磨り潰し、裏ごしして果皮、種子などを除き、そのまま又は濃縮して得られるトマトペースト、トマトピューレ、トマト果汁、濃縮還元トマトなどを好ましく用いることができる。
【0018】
トマト搾汁の配合量は、飲料の種類によって適宜調整すればよい。例えば低カロリー飲料とする場合には、飲料100g当たり20kcal以下となるようにトマト搾汁の配合量を調整するのが好ましい。
また、トマト以外の野菜搾汁や果汁を含む場合には、野菜搾汁(トマト搾汁含む)及び果汁の総量においてトマト搾汁の占める割合を最も多くすることが重要であり、トマト搾汁の割合が本野菜飲料の50質量%以上、特に60〜100質量%、中でも特に70〜90質量%であるのが好ましい。
【0019】
(野菜搾汁)
本野菜飲料は、トマト以外の野菜の搾汁を含んでいてもよい。
この際、野菜の搾汁とは、野菜を加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を搾汁前後に施すなどして得られた野菜搾汁を用いることができる。さらに、前記野菜搾汁を特定の樹脂に通液するなどして野菜搾汁に含まれる特定の成分を除去した野菜搾汁も原料として用いることができる。また、これらの工程で得られた野菜搾汁を単独で用いることができるが、2種以上を適宜用いることもできる。
【0020】
この際、野菜としては、例えばニンジン、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等を挙げることができる。
中でも、トマトの風味を干渉しない点で、主に葉茎部を可食部とする野菜である葉物野菜が好ましく、例えばホウレンソウ、小松菜、カラシ菜、サラダ菜、春菊、白菜、レタス、芽キャベツ、キャベツ、チンゲン菜、シソの葉、ブロッコリー、モロヘイヤ、ネギ、ミズナ、ビート、チシャ、ターサイ、ケール、大麦若葉、セロリ、パセリ、ミツ葉、アスパラガス、クレソン、ニラ、高菜などを挙げることができ、さらにはモヤシ、ダイコンの葉部、サツマイモの葉部なども適宜利用できる。
なお、これらの野菜のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本野菜飲料において、トマト搾汁液を含めた野菜搾汁の配合量は、野菜飲料の呈味性や劣化防止効果を総合的に考慮すると、30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは45〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは50〜90質量%とするのが好ましい。
また、使用する野菜の種類は1種類でもよいが、2種以上の野菜から得た搾汁液を混合して用いてよい。複数種類の野菜を配合した場合には、その全体に占める各種野菜の割合は適宜調整することができる。
【0022】
(果汁)
本野菜飲料は、果汁を含んでいてもよい。この際、果汁のみ単独で配合してもよいし、野菜搾汁と果汁を混合して配合してもよいし、また、野菜搾汁のみ配合してもよい。
【0023】
配合し得る果汁の果実としては、例えば柑橘類果実(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、カシス、ブルーベリー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類等が挙げられる。
使用する果実の種類は1種類でもよいが、2種以上の果実から得た搾汁液を混合して用いてもよい。
【0024】
本野菜飲料において、トマト搾汁液を含む野菜搾汁及び果汁の配合量は、野菜飲料の呈味性や劣化防止効果を総合的に考慮すると、30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは45〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは50〜90質量%とするのが好ましい。
【0025】
(食物繊維)
食物繊維は、植物性、藻類性、菌類性食物の細胞壁を構成する成分であって、化学的には多糖類であることが多い。
本野菜飲料に含まれる食物繊維としては、トマト搾汁に含まれる食物繊維、トマト以外の野菜搾汁由来の食物繊維、トマト搾汁を含む野菜搾汁以外に由来する食物繊維(例えば藻類や菌類に由来する食物繊維)のほか、これら以外のもので別途添加される食物繊維(「添加型食物繊維」とも称する)などのいずれか1種又は2種以上が挙げられる。
製造時の簡便性の観点からは、添加型食物繊維を添加して本野菜飲料を調製するのが好ましい。
また、食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに大別されるが、いずれの食物繊維を用いてもよい。中でも、製品の粘性や粒度に影響しない点で、水溶性食物繊維が好ましい。
【0026】
水溶性食物繊維としては、例えば難消化性デキストリン、ペクチン、グアー豆酵素分解物、グアーガム、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
不溶性食物繊維としては、例えばセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサンなどが挙げられる。
中でも、製品の粘性や粒度、さらには透明性の観点から、難消化性デキストリン、ペクチンが好ましい。具体的には、難消化性デキストリンについてはその機能性を特に期待することができる。ペクチンについては、飲料の可溶性部分(上清)の粘度を上げて透明化を抑制することができる。
【0027】
本野菜飲料においては、上記食物繊維から選ばれる1種又は2種以上の食物繊維、特に添加型食物繊維を0.01〜4.0質量%、好ましくは0.01〜2.5質量%、さらに好ましくは0.03〜2.5質量%含有するのがよい。
【0028】
とくに機能性を増強する観点から、トマト搾汁100質量部に対して食物繊維、特に添加型食物繊維を、Brix4.5%での食物繊維量として0.01〜4.0質量部、特に0.2〜4.0質量部、中でも特に0.5〜4.0質量部、その中でも特に1.0〜2.5質量部含有するのが好ましい。
【0029】
(甘味料)
食品添加物としての甘味料は、トマトの臭み及び酸味をマスキングするともに、新しいトマト飲料としての味のバランスを調整するために加えるものである。例えば砂糖、蔗糖、果糖ぶどう糖液糖、果糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、トレハロース、ラクトース、キシロース、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、キシリトール、D−ソルビトール、D−マンニトール等を挙げることができる。
なお、エリスリトール、マルチトール、パラチニット、ラクチトールなどの糖アルコールや、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、パラチノースなどのオリゴ糖は、副食品であって、食品添加剤ではない。このような副食品は、本野菜飲料で使用する甘味料からは除外するものである。
【0030】
本野菜飲料に使用する甘味料は、甘味度が砂糖よりも高いことが好ましく、その中でも砂糖の10〜600倍、特に20〜300倍であるのが好ましい。
これらの中でも、食品添加物としての甘味料が、アセスルファムカリウムとスクラロースとを含有するもの、特にアセスルファムカリウムとスクラロースとを併用するのがより好ましい。
【0031】
トマトの臭み及び酸味をマスキングする観点から、トマト搾汁100質量部に対して甘味料を0.0005〜0.05質量部、特に0.003〜0.03質量部、中でも特に0.005〜0.015質量部含有するのが好ましい。
【0032】
(その他の成分)
本野菜飲料は、トマト果汁飲料やトマトミックスジュースなど、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料を包含するものであるから、これらの飲料が通常含有し得る成分を含むことは任意である。例えば、食塩、香辛料、酸味料、アミノ酸などの調味料、野菜か果実以外の農畜産物、着色料などを適宜加えることは任意である。
なお、本野菜飲料は、アルコールを含まない非アルコール飲料であることも特徴の一つである。
【0033】
(容器)
本野菜飲料を充填する容器は、特に限定するものではない。例えば金属缶(スチール缶、アルミニウム缶など)、PETボトル、紙容器、壜等を挙げることができる。容器の形状や色彩は問わないが、市場性や簡便性を考慮すると、金属缶、PETボトル、紙容器を用いるのが好ましい。
【0034】
(容器詰野菜飲料の製造方法)
本野菜飲料は、トマト搾汁を調製した後、これに食物繊維及び甘味料を加えて混合し、好ましくはホモジナイザー処理を行い、その後、必要に応じて水、食塩、香辛料、酸味料、アミノ酸などの調味料などを加えて味、濃度などを調整して、殺菌及び容器充填するなどして製造することができる。
【0035】
トマト搾汁を含有する野菜飲料は、食物繊維などの不溶性固形分が多く含まれることから、ドロドロとしていて飲み難いという課題があったため、従来からトマトの濃度を低くしたり、果汁等とミックスしたりして飲み易くする試みが為されてきた。しかし、トマトの濃度が低濃度であると、経時的に固形分が沈殿して分離するという問題があった。そこで、本野菜飲料では、トマト搾汁をホモジナイザー処理することで、粘性を上昇させ、固形分の沈殿を抑制することにした。また、ホモジナイザー処理することで、ドロドロとした従来のトマトジュースに比べて、滑らかでトロッとした飲み口の食感を得ることにも成功した。
さらに、食物繊維、特にペクチンを配合してホモジナイザー処理することにより、粘性がさらに上昇し、液部の透明化をも抑制することができ、固形分と液部の境界を目立たなくすることもできた。これは、ペクチンを加えてホモジナイザー処理することにより、可溶性部分(溶液部)の粘性が上がると共に、ホモジナイザーで微細化されることにより分散状態を保ちやすくなるためであると推察される。
【0036】
ホモジナイザー処理は、例えば食物繊維及び甘味料を温水で溶解し、水で還元したトマト搾汁と混合した後、ホモジナイザー処理を行うのが好ましい。但し、このような方法に限定するものではない。また、ホモジナイザー処理は、殺菌に影響を与えない程度の粘性という目安まで行うのが好ましい。
殺菌方法としては、気流式殺菌、高圧殺菌、加熱殺菌などを挙げることができる。
【0037】
(容器詰野菜飲料の物性)
本野菜飲料の粘度は、喉越し、風味の点から、20℃、Brix4.5における粘度(B型粘度計)が150cP〜250cP、特に180cP〜230cPであるのが好ましい。
【0038】
本野菜飲料において、トマト由来の粒子の平均粒子径は70μm〜250μmであるのが好ましく、特に100μm〜230μm、その中でも特に180μm〜230μmであるのがさらに好ましい。トマト由来の粒子の平均粒子径が70μm〜250μmであれば、よりなめらかな食感を得ることができる。
【0039】
<容器詰野菜飲料の濃度感増強剤>
本実施形態に係る濃度感増強剤(以下「本濃度感増強剤」と称する)は、食物繊維、特に添加型食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを有効成分とする、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料の濃度感増強剤である。
【0040】
ここで、本濃度感増強剤における「濃度感」とは、飲料の粘性等からくる飲用した際に感じる食感の意味である。
また、本濃度感増強剤において、トマト搾汁、食物繊維及び甘味料の種類は上述のとおりである。
【0041】
容器詰野菜飲料の濃度感を増強するという観点から、トマト搾汁100質量部に対して食物繊維、特に添加型食物繊維を0.01〜4.0質量部含有するのが好ましい。
また、同様の観点からトマト搾汁100質量部に対して甘味料を0.0005〜0.05質量部、特に0.003〜0.03質量部、中でも特に0.005〜0.015質量部含有するのが好ましい。
【0042】
<容器詰野菜飲料の濃度感を増強する方法>
本実施形態に係る濃度感増強方法(以下「本濃度感増強方法」と称する)は、トマト搾汁と、食物繊維、特に添加型食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを配合することを特徴とする容器詰野菜飲料の濃度感を増強する方法である。
【0043】
ここで、本濃度感増強方法における「濃度感」とは、飲料の粘性等からくる飲用した際に感じる食感の意味である。
本濃度感増強方法において、トマト搾汁、食物繊維及び甘味料の種類は上述のとおりである。
【0044】
容器詰野菜飲料の濃度感を増強するという観点から、トマト搾汁100質量部に対して食物繊維、特に添加型食物繊維を0.01〜4.0質量部含有するのが好ましい。
また、同様の観点からトマト搾汁100質量部に対して甘味料を0.0005〜0.05質量部、特に0.003〜0.03質量部、中でも特に0.005〜0.015質量部含有するのが好ましい。
【0045】
<用語の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0046】
次に、試験例に基づいて本発明について更に説明するが、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0047】
<官能評価>
14名のパネラーが、飲料(サンプル)を飲んで、「甘み」「飲みやすさ」「トマト臭さ」「濃度感」「物理的な飲みやすさ」について、下記基準に基づいて1〜5の点数評価を行った。表には、平均値を示した。
この際、「甘み」「トマト臭さ」「濃度感」については、それぞれ強く感じたほど点数が高くなるように点数評価を行った。具体的には、1:かなり弱い、2:やや弱い、3:普通、4:やや強い、5:かなり強い、という基準で評価した。
また、「飲みやすさ」「物理的な飲みやすさ」については、1:かなり飲み難い、2:やや飲み難い、3:普通、4:やや飲み易い、5:かなり飲み易い、という基準で評価した。
【0048】
なお、14名のパネラーの内訳としては、男女比は男性9名、女性5名、年齢的には20代:10名、30代:3名、40代:1名であり、トマトジュースに関する嗜好については、トマトジュースが好き:3名、トマトジュースが嫌い:5名、どちらでもない(飲まない):6名であった。
【0049】
<粘度の測定>
サンプル(試料)を、300mlのガラストールビーカーに投入し、B型粘度計を用いて、液温度約24℃、回転数60rpm、保持時間60秒で3回測定し、その平均値を測定値とした。
【0050】
<酸度の測定>
よく均一化した飲料から約5gの溶液をサンプリングし、平沼産業(株)社製の自動滴定装置COM−450で酸度の測定を行なった。
【0051】
<トマト由来の粒子の粒子径の測定>
よく均一化した飲料から溶液をサンプリングし、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津SALD-2100)を用いて、湿式測定モードで平均粒子径の測定を実施した。
【0052】
<サンプル:TP1〜3の調製>
主材となるトマトペーストに水溶性食物繊維(ペクチン)や甘味料を加えて、60℃以上の適量の温水を加え、ホモジナイザー((株)日音医理科器械製作所社製ヒスコトロン)を用いて5分〜10分間のホモジナイザー処理を行い、別に用意したトマトペースト調製液と混合し、ホットパックにて殺菌後、PET容器に充填し、下記成分割合の容器詰野菜飲料を得た。
なお、別に用意したトマトペースト調製液は、主材となるトマトペーストと同様のトマトペーストを水で希釈した調整液である。
【0053】
(TP1)
トマト搾汁 100部
ペクチン(水溶性食物繊維) 0.025部
但し、配合割合における「部」は「質量部」を意味する(ほか同様)。
【0054】
(TP2)
トマト搾汁 100部
ペクチン(水溶性食物繊維) 0.025部
サンスイート(甘味料):SA5050(三栄源FFI社) 0.009部
※サンスイートSA5050は、アセスルファムカリウムとスクラロースを含む甘味料であり、甘味度は砂糖の約200倍である。
【0055】
(TP3)
トマト搾汁 100部
ペクチン(水溶性食物繊維) 0.025部
グラニュー糖(甘味料) 1.80部
※甘味度がTP2と同等となるようにグラニュー糖を添加した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
TP2及びTP3は、TP1と比べて甘味を感じ、トマト臭さをマスキングして飲みやすい飲料になっていた。中でも、「トマト臭さ」の点では、TP2の方が弱く好ましい。また、TP2で使用した甘味料は、ノンカロリー(0kcal)であるのに対し、TP3で使用した甘味料(グラニュー糖)は約7.2kcalであり、低カロリーであるという点でもTP2が好ましい。
TP2及びTP3のように、トマト搾汁に食物繊維及び甘味料を配合することにより、従来のトマトジュースのように酸味と塩味を特徴とするのではなく、甘みを付与してトマト臭さをマスキングすることができ、十分な食感があり、それでいてドロドロとした喉ごしがない飲みやすいトマト飲料とすることができることが分かった。
【0059】
<サンプル:TD1〜TD3、TBT1〜TBT3の調製>
トマトペーストに、下記に示すように水溶性食物繊維や甘味料を加えて、一般的に工業用に使用されるホモジナイザーを用いて、処理を行い、殺菌後、紙容器に充填した。
なお、トマト搾汁は、濃縮トマトペーストを希釈し、製品中終濃度がBrix4.5%になるように調製した。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
いずれのサンプルも、甘みを付与してトマト臭さをマスキングすることができ、十分な食感があり、それでいてドロドロとした喉ごしがない飲みやすいトマト飲料であるという結果を得た。
TD1〜TD3の中では、全員のパネラーがTD1よりも粘性の低いTD2及びTD3を好むという結果を得、中でも14名のパネラー中9名がTD2を好み、5名がTD3を好むと回答した。
TD1ほどに粘性が高くなると、やや飲みにくくなるものと考えることができる。
なお、甘味については明確な差がなかったが、粘性が低い程、つまりTD3が最も甘味がダイレクトに伝わっていると推測される。
また、濃度感の観点からはTD2が最も好ましいという結果も得た。
これより、飲料の粘度としては、150cP〜250cP程度であるのが好ましく、特になめらかな食感を得るためには、トマト由来の粒子の平均粒子径が70μm〜250μmとなる程度までホモジナイザー処理するのが好ましいと考えることができる。
【0063】
<分離透明化評価>
サンプル飲料としての容器詰め飲料を静かに開封し、容器上部からピペットで、サンプル上部のサンプリングを行い、ヘイズ値の測定を実施した。
他方、サンプル下部のサンプリングは、容器底部より1cm上部分までピペットを挿入してサンプリングを行い、ヘイズ値の測定を実施した。
【0064】
ヘイズ値(濁度)は、ヘイズメータ(HM−150 村上色彩研究所製)で測定した。
このヘイズ値(濁度)は、ヘイズ値大きいほど濁りがあり、透明化が抑制されていると言える。
【0065】
サンプル飲料は、上記TD2を37℃で1ヶ月保管したものと、2種類の市販のPETボトル入りトマトジュース(市販トマトジュース1、2)を用いた。
【0066】
【表5】

【0067】
この結果、いずれの市販トマトジュースも、上部の液の透明化が進んでいるのに対し、TD2については、透明化が抑制されていることを確認することができた。
トマト搾汁に食物繊維、中でもペクチンを加えてホモジナイザー処理することで、可溶性部分(溶液部)の粘性が上がると共に、ホモジナイザーで微細化されることにより分散状態を保ち易くなった結果、上部液部の透明化を抑制することができ、固形分と液部の境界を目立たなくすることができたものと考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを含有することを特徴とする容器詰野菜飲料。
【請求項2】
トマト搾汁以外の野菜搾汁をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の容器詰野菜飲料。
【請求項3】
トマト搾汁100質量部に対して0.01〜4.0質量部の食物繊維を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰野菜飲料。
【請求項4】
トマト搾汁100質量部に対して0.0005〜0.05質量部の甘味料を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の容器詰野菜飲料。
【請求項5】
食品添加物としての甘味料が、アセスルファムカリウムとスクラロースとを含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の容器詰野菜飲料。
【請求項6】
食物繊維が、水溶性食物繊維であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の容器詰野菜飲料。
【請求項7】
水溶性食物繊維として、難消化性デキストリン、ペクチン、グアー豆酵素分解物、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項6に記載の容器詰野菜飲料。
【請求項8】
アルコールを含まない非アルコール飲料であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の容器詰野菜飲料。
【請求項9】
トマト搾汁は、平均粒子径が70μm〜250μmであるトマト由来の粒子を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の容器詰野菜飲料。
【請求項10】
粘度が150cP〜250cPであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の容器詰野菜飲料。
【請求項11】
食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを有効成分とする、トマト搾汁を含有する容器詰野菜飲料の濃度感増強剤。
【請求項12】
食品添加物としての甘味料が、アセスルファムカリウムとスクラロースとを含有することを特徴とする請求項11に記載の容器詰野菜飲料の濃度感増強剤。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の濃度感増強剤を配合した容器詰野菜飲料。
【請求項14】
トマト搾汁と、食物繊維と、食品添加物としての甘味料とを配合することを特徴とする容器詰野菜飲料の濃度感を増強する方法。