説明

容器詰飲料の製造方法及び製造装置

【課題】抽出液の味及び香りの劣化を抑制する。
【解決手段】抽出対象物と液体との混合液を配管内で下流側に連続的に流動させながら、配管の少なくとも一部の区間により構成される抽出部において混合液を加熱する工程を含む。この工程において、抽出対象物の成分が液体中に抽出された抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌する。抽出の際に加熱殺菌も行うので、抽出後には改めて加熱殺菌を行う必要がなく、抽出液の味及び香りの劣化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰飲料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー、茶等のように、抽出対象物に含まれる成分を液体中に抽出することにより抽出液を生成するには、一般に、加熱した水と抽出対象物とを混合する、もしくは抽出対象物と水とを混合した混合液を加熱する工程が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、抽出対象物と液体とを混合する工程と、抽出対象物と液体との混合液に電流を流してジュール熱により混合液を加熱する工程とを備える抽出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−223531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な容器詰飲料の製造方法では、缶入り飲料の場合には、加熱抽出の後、冷却、濾過、調合、容器充填、及び加熱殺菌がこの順に行われ、ペットボトル入り飲料等の場合には、加熱抽出の後、冷却、濾過、調合、加熱殺菌、及び容器充填がこの順に行われる。
【0006】
すなわち、缶入り飲料、ペットボトル入り飲料等の何れの場合にも、加熱抽出の後で、加熱殺菌が行われる。このため、この殺菌時の加熱により、抽出液の味及び香りが劣化してしまう。
【0007】
本発明は、抽出液の味及び香りの劣化を抑制することが可能な容器詰飲料の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、抽出対象物と液体との混合液を配管内で下流側に連続的に流動させながら、前記配管の少なくとも一部の区間により構成される抽出部において前記混合液を加熱する工程を含み、前記工程において、前記抽出対象物の成分が前記液体中に抽出された抽出液を生成するとともに前記混合液を加熱殺菌することを特徴とする容器詰飲料の製造方法を提供する。
【0009】
この容器詰飲料の製造方法によれば、抽出の際に混合液の加熱殺菌も行うので、抽出後には改めて混合液ないしは抽出液の加熱殺菌を行う必要がない。このため、加熱抽出後の加熱殺菌に起因する抽出液の味及び香りの劣化が生じないようにすることができる。よって、抽出液の味及び香りの劣化を抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、抽出対象物と液体との混合液を内部で流動させる配管と、前記配管の少なくとも一部の区間により構成される抽出部において前記混合液を加熱する加熱部と、を備え、前記混合液を前記配管内で下流側に連続的に流動させながら、前記抽出部内の前記混合液を前記加熱部により加熱することによって、前記抽出対象物の成分が前記液体中に抽出された抽出液を生成するとともに前記混合液を加熱殺菌するように構成されていることを特徴とする容器詰飲料の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抽出液の味及び香りの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置の配管及び加熱部の構成を示す概略図である。
【図3】第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置の配管及び加熱部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置100の構成を示す概略図、図2は第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置100の配管1及び加熱部2の構成を示す概略図、図3は第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。
【0015】
本実施形態に係る容器詰飲料の製造方法では、抽出対象物と液体との混合液を配管1内で下流側に連続的に流動させながら、配管1の少なくとも一部の区間により構成される抽出部11において混合液を加熱する工程を含み、その工程において、抽出対象物の成分が液体中に抽出された抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌する。
また、本実施形態に係る容器詰飲料の製造装置100は、抽出対象物と液体との混合液を内部で流動させる配管1と、配管1の少なくとも一部の区間により構成される抽出部11において混合液を加熱する加熱部2と、を備え、混合液を配管1内で下流側に連続的に流動させながら、抽出部11内の混合液を加熱部2により加熱することによって、抽出対象物の成分が液体中に抽出された抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌するように構成されている。
以下、詳細に説明する。
【0016】
先ず、容器詰飲料の製造装置100の構成を説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る容器詰飲料の製造装置100は、配管1と、加熱部2と、抽出対象物投入部3と、液体投入部4と、混合容器5と、ポンプ6と、冷却部7と、分離部8と、攪拌機9と、圧力調節弁10と、調合部12と、充填部13と、を備えている。
【0018】
抽出対象物投入部3は、抽出対象物を貯留しており、抽出対象物を連続的又は間欠的に混合容器5に投入する。抽出対象物は、例えば、コーヒー豆の粉砕物(コーヒー豆を粉砕したもの)、茶葉、或いは茶葉の粉砕物(茶葉を粉砕したもの)等であることが挙げられる。
【0019】
なお、抽出対象物がコーヒー豆の粉砕物である場合には、その平均粒径は、例えば、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。また、その平均粒径は、0.5mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。コーヒー豆の粉砕物から高温下で抽出を行う場合、粉砕物の粒径が細かすぎると、えぐ味成分、渋味成分等、雑味の原因となる成分の抽出量が増大したり、抽出液に濁りが生じたりしてしまう。一方で、粒径が大きすぎると液体との混合液として連続的に流動させることが困難になる。これらに対して、コーヒー豆の粉砕物の平均粒径を0.1mm以上5.0mm以下とすることにより、加熱殺菌を兼ねるような高温下で抽出を行っても、そのような雑味の原因となる成分の抽出量の抑制と抽出液の濁りの抑制が可能であるとともに、液体との混合液として好適に連続的に流動させることができる。また、コーヒー豆の粉砕物の平均粒径を0.5mm以上2.0mm以下とすることにより、その効果を一層好適に得ることができる。また、抽出対象物が茶葉の粉砕物である場合にも、その粒径を適宜に設定することにより、同様の効果が得られる。
【0020】
液体投入部4は、液体を貯留しており、液体を連続的又は間欠的に混合容器5に投入する。液体は、例えば、水(自然水、イオン交換水、純水等)、アルコール水溶液、牛乳等であることが挙げられる。
【0021】
混合容器5は、該混合容器5内に投入された抽出対象物と液体との混合液を一時的に貯留する。攪拌機9は、混合容器5内に貯留されている混合液を攪拌し均一化する。混合容器5には配管1の一端が接続されている。この配管1にはポンプ6が設けられている。このポンプ6により、混合容器5内の混合液は配管1へと連続的に導入される。
【0022】
配管1の一部の区間は、加熱抽出が行われる抽出部11を構成している。
【0023】
配管1において、少なくとも抽出部11を構成する部分は、例えば、上流側よりも下流側の鉛直位置が高くなっている。すなわち、配管1において、少なくとも抽出部11を構成する部分は、例えば、上流側から下流側に向けて登り傾斜しているか、又は、流れ方向が鉛直上向きとなるようになっている。
【0024】
配管1内の混合液は、ポンプ6によって、配管1の上流側から下流側に向けて圧送される。
【0025】
本実施形態の場合、加熱部2は、例えば、抽出部11における上流部内にスチームを供給し、該抽出部11内の混合液にスチームを接触させることによって、該混合液を抽出部11において加熱するように構成されている。すなわち、本実施形態では、抽出部11内に直接スチームを吹き込むインジェクション方式を採用する。なお、インジェクション方式のスチーム加熱は、食品の殺菌時の加熱技術として知られているが、本実施形態では、インジェクション方式のスチーム加熱により、配管1内におけるコーヒー等の飲料の連続的な加熱抽出を、加熱殺菌を兼ねて行う。なお、本実施形態の加熱部2は、スチーム直接供給部を構成している。
【0026】
図2に示すように、加熱部2は、例えば、スチームを生成するスチーム生成部21と、このスチーム生成部21により生成されたスチームを抽出部11内に供給するスチーム供給部22と、を備えている。本実施形態の場合、これらスチーム生成部21及びスチーム供給部22はスチーム直接供給部を構成している。スチーム生成部21は、スチームの材料を加熱することにより、スチームを生成する。スチーム供給部22は、一端がスチーム生成部21に接続され、他端が抽出部11内に導入された(差し込まれた)配管からなる。
【0027】
なお、スチーム供給部22の他端側の部分は、例えば、複数に分岐した分岐管22aにより構成され、その分岐管22aの各々が抽出部11内に導入されている。また、各々の分岐管22aは、例えば、配管1における長手方向位置が互いに異なる箇所に差し込まれている。
【0028】
抽出部11における混合液の加熱温度の調節は、例えば、スチームの温度、単位時間当たりのスチームの供給量、及び、分岐管22aの数、或いは、分岐管22aを抽出部11に対して差し込む密度等を適宜に設定することなどにより行うことができる。
【0029】
また、抽出部11における混合液の加熱時間の調節は、抽出部11における混合液の流速を設定すること、或いは、抽出部11の長手方向において、分岐管22aが差し込まれている区間の長さを設定することなどにより行うことができる。
【0030】
なお、スチーム供給部22は、分岐していなくても良いのは勿論である。
【0031】
スチームの種類は特に限定しないが、スチームとの接触に起因する混合液の劣化を抑制するためには、不活性なスチームを用いることが好ましい。具体的には、例えば、脱酸素水を使用して作製された水蒸気や過熱水蒸気等のスチームを用いることが好適である。
【0032】
図1に示すように、圧力調節弁10は、配管1において、抽出部11よりも下流側の部分(具体的には、例えば、冷却部7と分離部8との間)に設けられている。スチームによる混合液の加熱温度が、混合液が大気圧で気化する温度よりも高い場合には、圧力調節弁10を適宜に絞ることによって、配管1における抽出部11を含む区間の背圧を大気圧以上に設定する。これにより、加熱抽出時における混合液の気化を抑制することができるので、抽出部11において混合液を大気圧で気化する温度よりも高温に加熱することができる。
【0033】
本実施形態では、このように抽出部11において加熱部2により混合液を加熱することによって、抽出対象物の成分が液体中に抽出された抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌する。加熱条件としては、容器詰飲料の組成やpH、容器形態や保存温度に応じて、必要な殺菌効果が得られる条件を設定することができる。具体的には、例えば、抽出部11において混合液が135℃以上145℃以下の温度に10秒程度保持されるように、加熱部2による加熱条件を設定することによって、抽出部11において抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌することができる。この具体的な加熱条件は、例えば、常温で流通するpH6前後のブラックコーヒーを抽出する場合に好適に用いることができる。ただし、加熱温度及び時間については、この例に限らず、必要とする殺菌効果が得られる任意の条件を選択できる。例えば、120℃以上、好ましくは130℃以上150℃以下の温度で、1秒間以上5分間以内の加熱を行うことができる。また、加熱部2から供給するスチームの温度及び供給範囲は、そのような加熱条件を満たすことができるように、適宜に設定する。
【0034】
なお、上述のように、抽出部11における上流部の混合液が加熱部2により加熱されるようになっている。抽出部11における下流部は、混合液を加熱部2による加熱温度に所定の時間保持するホールディングチューブ14を構成している。
【0035】
抽出後の混合液は、冷却部7によって所定温度(例えば、10℃〜40℃)に冷却される。
【0036】
分離部8は、配管1において、圧力調節弁10よりも下流側の部分に設けられている。分離部8は、抽出及び冷却後の混合液を抽出液と抽出カスとに分離させる。分離部8は、具体的には、例えば、遠心分離装置、或いは、デカンタ等により構成することができる。
【0037】
調合部12は、抽出カスと分離された後、且つ、容器に充填される前の抽出液に殺菌済みの所定の添加物を調合(添加)する。なお、図1では調合部12を備える例を示しているが、容器詰飲料の製造装置100は、調合部12を備えていなくても良い。
【0038】
充填部13は、抽出カスと分離された後の抽出液を所定の容器(缶、ペットボトル等)に充填し、該容器に封をする。
【0039】
次に、本実施形態に係る容器詰飲料の製造方法を説明する。
【0040】
図3は第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法の工程フローを示すフローチャートである。
【0041】
抽出対象物投入部3により抽出対象物を混合容器5に連続的又は間欠的に投入する一方で、液体投入部4により液体を混合容器5に連続的又は間欠的に投入する。これにより、抽出対象物と液体とが混合容器5内において混合される(ステップS1)。攪拌機9は、混合容器5内に貯留されている混合液を連続的に攪拌し均一化する。また、混合容器5内の混合液をポンプ6により配管1へと連続的に導入する。ポンプ6は、配管1内の混合液を上流側から下流側に向けて連続的に圧送する。
【0042】
加熱部2は、抽出部11内にスチームを供給し、該抽出部11内を下流側に向けて流動する混合液にスチームを接触させることによって、該混合液を抽出部11における上流部において加熱し、更に、混合液が抽出部11における下流部のホールディングチューブ14内を流れる間、混合液をその加熱温度に保持する。上述のように、加熱温度及び時間については、必要とする殺菌効果が得られる任意の条件を選択でき、例えば、120℃以上、好ましくは130℃以上150℃以下の温度で、1秒間以上5分間以内の加熱を行うことができる。こうして、混合液が抽出部11を流動する過程において、抽出対象物の成分が液体中に抽出された抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌する(ステップS2)。
【0043】
抽出部11を通過することによって抽出及び加熱殺菌がなされた混合液は、冷却部7によって冷却される。冷却部7は、混合液を例えば10℃〜40℃に冷却する(ステップS3)。冷却部7により冷却された後の混合液は、分離部8によって抽出液と抽出カスとに分離される(ステップS4)。その後、抽出液は、必要に応じて調合部12により、殺菌後の所定の添加物が添加され(ステップS5)、充填部13により所定の容器(缶、ペットボトル等)に充填され、該容器に封が施される(ステップS6)。
【0044】
以上により、飲料としての抽出液が容器に充填されることにより構成された容器詰飲料を製造することができる。
【0045】
このように、本実施形態では、加熱抽出後は、抽出液を加熱殺菌する工程を経ずに、該抽出液を所定の容器に充填する。
【0046】
なお、必要に応じて、混合容器5への液体の投入前に、液体の脱酸素処理を行うことも好ましい。
【0047】
また、必要に応じて、冷却以降の工程(容器に充填し、該容器に封が施されるまで)を脱酸素条件下で行うことも好ましい。具体的には、抽出液に接触する雰囲気を窒素置換することなどにより、冷却以降の工程を脱酸素条件下で行うことができる。
【0048】
以上のような第1の実施形態によれば、抽出の際に混合液の加熱殺菌も行うので、抽出後には改めて混合液ないしは抽出液の加熱殺菌を行う必要がない。このため、加熱抽出後の加熱殺菌に起因する抽出液の味及び香りの劣化が生じないようにすることができる。よって、抽出液の味及び香りの劣化を抑制することができる。
【0049】
〔第2の実施形態〕
図4は第2の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置(全体図示略)の配管1及び加熱部2の構成を示す概略図である。
【0050】
上記の第1の実施形態では、抽出部11内にスチームを供給することによって混合液を加熱する例を説明したが、本実施形態では、スチームにより配管1の管壁を介して混合液を加熱する例を説明する。
【0051】
本実施形態に係る容器詰飲料の製造装置は、配管1及び加熱部2の構成が以下に説明する点で上記の第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置100と相違し、配管1及び加熱部2以外の構成については上記の第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置100と同様に構成されている。また、本実施形態に係る容器詰飲料の製造方法は、本実施形態に係る容器詰飲料の製造装置を用いて行う点でのみ上記の第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法と相違し、その他の点は第1の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法と同様に実施することができる。
【0052】
本実施形態の場合、配管1は、例えば、図4に示すように、内管1a及び外管1bを有する2重管である。配管1は、例えば、内管1aにおいて混合液を流動させる。本実施形態の場合、内管1aの一部の区間が抽出部11の上流部を構成している。
【0053】
本実施形態の場合、加熱部2は、抽出部11(内管1a)内にはスチームを供給せず、外管1b内にスチームを供給する。スチームは、内管1aの管壁を介して、内管1a内の混合液を間接的に加熱する。すなわち、本実施形態の場合、分岐管22aは、外管1b内に差し込まれている。本実施形態の場合、スチーム生成部21及びスチーム供給部22はスチーム間接供給部を構成している。
【0054】
なお、配管1を2重配管とするのは、抽出部11が存在する区間だけであっても良いし、配管1の長手方向全域を2重配管としても良い。
【0055】
また、本実施形態の場合、例えば、抽出部11内に空寸が存在しないように、抽出部11内に混合液を満たす。より好ましくは、内管1aの少なくとも抽出部11及びその下流の区間を混合液で満たす。上述のように、配管1において少なくとも抽出部11を構成する部分は、上流側から下流側に向けて登り傾斜しているか、又は、流れ方向が鉛直上向きとなるようになっている。内管1aの抽出部11が傾斜している場合には、その傾斜角度、傾斜している区間の長さ、及び、内管1aの内径を適宜に設定することにより、抽出部11(更には、抽出部11及びその下流の区間)に空寸が存在しないように抽出部11内に混合液を満たすことができる。また、内管1aの抽出部11における混合液の流れ方向が鉛直上向きである場合には、内管1aの内径等に関わらず、抽出部11内を混合液で満たすことができる。
【0056】
以上のような第2の実施形態によれば、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
また、抽出部11内に空寸が存在しないように、抽出部11内に混合液を満たすので、抽出部11を加熱殺菌が可能な高温に設定しても、抽出液の味及び香りが空寸部分に散逸しないようにできる。更に、空寸部分の存在に起因する抽出液の劣化(例えば、酸素との接触による酸化により、香味、特に香りが減少すること)も抑制することができる。
【0058】
なお、上記の第2の実施形態では、内管1aで混合液を流動させ、外管1bにスチームを供給する例を説明したが、それとは逆に、外管1bで混合液を流動させ、内管1aにスチームを供給するようにしても良い。
【0059】
〔第3の実施形態〕
上記の第1及び第2の実施形態では、スチームにより混合液を加熱する例を説明したが、本実施形態では、混合液をジュール発熱させることにより加熱する例を説明する。
【0060】
本実施形態に係る容器詰飲料の製造装置は、配管1及び加熱部2の構成が以下に説明する点で上記の第2の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置と相違し、配管1及び加熱部2以外の構成については上記の第2の実施形態に係る容器詰飲料の製造装置と同様に構成されている。また、本実施形態に係る容器詰飲料の製造方法は、本実施形態に係る容器詰飲料の製造装置を用いて行う点でのみ上記の第2の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法と相違し、その他の点は第2の実施形態に係る容器詰飲料の製造方法と同様に実施することができる。
【0061】
本実施形態の場合、配管1の抽出部11は、例えば、特許文献1の図4乃至図7に記載されているジョイント部35と同様に構成することができる。また、加熱部2(の通電部)は、特許文献1の図4乃至図7に記載されている通電加熱機13と同様に構成することができる。なお、通電加熱機13による混合液の加熱温度及び時間は、抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌することができるような温度及び時間に設定する。
【0062】
本実施形態の場合、抽出部11において加熱部2により混合液に電流を流し、該混合液をジュール熱によって発熱させて加熱し、抽出液を生成するとともに混合液を加熱殺菌することができる。
【0063】
以上のような第3の実施形態によれば、抽出の際に混合液の加熱殺菌も行うので、抽出後には改めて混合液ないしは抽出液の加熱殺菌を行う必要がない。このため、加熱抽出後の加熱殺菌に起因する抽出液の味及び香りの劣化が生じないようにすることができる。よって、抽出液の味及び香りの劣化を抑制することができる。
【0064】
また、第2の実施形態と同様に、抽出部11内に空寸が存在しないように、抽出部11内に混合液を満たすので、抽出部11を加熱殺菌が可能な高温に設定しても、抽出液の味及び香りが空寸部分に散逸しないようにできる。更に、空寸部分の存在に起因する抽出液の酸化も抑制することができる。
【0065】
<第3の実施形態の変形例>
この変形例では、上記の第3の実施形態において、混合液(或いは抽出対象物と混合する前の液体)に電解質を添加する。
【0066】
このように電解質を添加することにより、混合液の電気抵抗を小さくし、混合液のジュール発熱を効率的に実施できるようにすることができる。
【0067】
添加する電解質は、特に限定しないが、具体的には、例えば、重曹、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、カリウム、及び、炭酸カリウムのうちの少なくとも何れか1つであることが好ましい例である。
【0068】
アスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムは、抗酸化作用も併せ持つため、電解質としてアスコルビン酸とアスコルビン酸ナトリウムとのうちの少なくとも一方を添加する場合、抽出液の劣化をより確実に抑制することができる。
【0069】
なお、加熱部2の構成は、上記の各実施形態で説明した例に限らず、例えば、第1の実施形態で説明したようにスチームを混合液に接触させることによって行う加熱と、第2の実施形態で説明したようにスチームにより配管1の管壁を介して混合液を加熱する加熱と、第3の実施形態で説明したように混合液に電流を流し混合液をジュール熱により発熱させることによって行う加熱と、のうち2つ以上を任意に組み合わせて行うような構成としても良い。
【0070】
また、上記の各実施形態では、混合液を調製するために混合容器5を用いる例を説明したが、配管1内で液体を連続的に流動させ、その流動する液体中に抽出対象物を投入することによって、抽出対象物を液体と混合するようにしても良い(混合容器5を用いないようにしても良い)。
【符号の説明】
【0071】
1 配管
1a 内管
1b 外管
2 加熱部
3 抽出対象物投入部
4 液体投入部
5 混合容器
6 ポンプ
7 冷却部
8 分離部
9 攪拌機
10 圧力調節弁
11 抽出部
12 調合部
13 充填部
14 ホールディングチューブ
21 スチーム生成部
22 スチーム供給部
22a 分岐管
100 容器詰飲料の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出対象物と液体との混合液を配管内で下流側に連続的に流動させながら、前記配管の少なくとも一部の区間により構成される抽出部において前記混合液を加熱する工程を含み、前記工程において、前記抽出対象物の成分が前記液体中に抽出された抽出液を生成するとともに前記混合液を加熱殺菌することを特徴とする容器詰飲料の製造方法。
【請求項2】
前記抽出部内に空寸が存在しないように前記抽出部内に前記混合液を満たすことを特徴とする請求項1に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項3】
前記加熱には、前記抽出部内にスチームを供給し、該スチームを前記混合液に接触させることによって行う加熱が含まれることを特徴とする請求項1に記載の抽出液製造方法。
【請求項4】
前記加熱には、スチームにより前記配管の管壁を介して行う加熱が含まれることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項5】
前記配管は内管及び外管を有する2重管であり、前記内管と前記外管の何れか一方で前記混合液を流動させ、前記内管と前記外管の何れか他方に前記スチームを供給することによって、前記スチームにより前記内管の管壁を介して前記混合液を加熱することを特徴とする請求項4に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項6】
前記加熱には、前記混合液に電流を流して該混合液をジュール熱により発熱させることによって行う加熱が含まれることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項7】
前記混合液には電解質が添加されていることを特徴とする請求項6に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項8】
前記電解質には、重曹、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、カリウム、及び、炭酸カリウムのうちの少なくとも何れか1つが含まれることを特徴とする請求項7に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項9】
前記抽出対象物はコーヒー豆の粉砕物であり、その平均粒径が0.1mm以上5.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の容器詰飲料の製造方法。
【請求項10】
抽出対象物と液体との混合液を内部で流動させる配管と、
前記配管の少なくとも一部の区間により構成される抽出部において前記混合液を加熱する加熱部と、
を備え、
前記混合液を前記配管内で下流側に連続的に流動させながら、前記抽出部内の前記混合液を前記加熱部により加熱することによって、前記抽出対象物の成分が前記液体中に抽出された抽出液を生成するとともに前記混合液を加熱殺菌するように構成されていることを特徴とする容器詰飲料の製造装置。
【請求項11】
前記加熱部は、前記抽出部内の前記混合液に接触するように前記配管内にスチームを供給するスチーム直接供給部を有し、前記スチームによって前記混合液を加熱することを特徴とする請求項10に記載の容器詰飲料の製造装置。
【請求項12】
前記加熱部は、前記抽出部内の前記混合液を前記配管の管壁を介して加熱するスチームを供給するスチーム間接供給部を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の容器詰飲料の製造装置。
【請求項13】
前記配管は、内管及び外管を有する2重管であり、前記内管と前記外管の何れか一方で前記混合液を流動させ、
前記スチーム間接供給部は、前記内管と前記外管の何れか他方にスチームを供給し、該スチームにより前記内管の管壁を介して前記混合液を加熱することを特徴とする請求項12に記載の容器詰飲料の製造装置。
【請求項14】
前記加熱部は、前記抽出管内の前記混合液に電流を流し、該混合液をジュール熱により発熱させることによって加熱する通電部を有することを特徴とする請求項10乃至13の何れか一項に記載の容器詰飲料の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−24509(P2011−24509A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175090(P2009−175090)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【出願人】(000136642)株式会社フロンティアエンジニアリング (30)
【Fターム(参考)】