説明

容器詰飲料

【課題】野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等を抑制させた容器詰飲料の提供。
【解決手段】発酵豆乳を添加することにより野菜及び/又は果実飲料の不快な風味を抑制する方法であり、飲料中の発酵豆乳の添加量が1〜15重量%の範囲であり、また、大豆固形分量を0.085〜1.275重量%の範囲にすることで野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等を抑制した容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等を抑制させた容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な野菜や果実を加工した飲料がある。しかし、野菜や果実を破砕して搾汁若しくは裏ごし等をしたもの、およびこれを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻すなどして得られた野菜汁や果汁には、青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等の風味があり、これら風味が問題となることがある。また、この風味は、異味・異臭として感じられ飲みにくさの原因となることから、この風味を抑制することによりさらに飲み易い飲料とすることが求められていた。
【0003】
一般的に、野菜汁や果汁の不快な風味を抑制するために、煮る、焼く、温める、蒸す等の加熱処理方法や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理方法がある(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−330719号公報
【特許文献2】特開2003−000179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等を抑制させた飲み易い容器詰飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題解決のために鋭意研究を行った結果、発酵豆乳と野菜汁及び/又は果汁とを含有する容器詰飲料において、野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等が抑制されることを見出した。これにより、野菜汁及び/又は果汁の不快な風味を顕著に改善し、素材が有する本来のコクや旨味を持った容器詰飲料を提供することが可能となった。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)野菜汁及び/又は果汁と、発酵豆乳とを含有することを特徴とする容器詰飲料。
(2)野菜及び/又は果実飲料であることを特徴とする(1)記載の容器詰飲料。
(3)発酵豆乳を添加することにより野菜汁及び/又は果汁の不快な風味を抑制したことを特徴とする容器詰飲料。
(4)発酵豆乳の添加量が1〜15重量%の範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載の容器詰飲料。
(5)飲料中の大豆固形分量が0.085〜1.275重量%の範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載の容器詰飲料。
(6)発酵豆乳を添加することにより野菜及び/又は果実飲料の不快な風味を抑制することを特徴とする風味改善方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、発酵豆乳を添加することにより野菜及び/又は果実飲料の不快な風味を抑制して、官能的に優れた飲み易い容器詰飲料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明において野菜汁とは、搾汁できる野菜であれば特に限定されないが、例えば搾汁可能な野菜としてトマト、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、エダマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等を挙げることができる。また、煮る、焼く、温める、蒸す等の加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を搾汁前後に施すなどして得られた野菜汁を原料として用いることができる。さらに、前記野菜汁を特定の樹脂に通液するなどして野菜汁に含まれる特定の成分を除去した野菜汁も原料として用いることができる。また、これら野菜汁を単品若しくは2種以上配合して用いることができる。また、果汁とは、搾汁できる果実であれば特に限定されないが、例えば搾汁可能な果実として、オレンジ、ミカン、リンゴ、モモ、ナシ、ブドウ、ブルーベリー、グレープフルーツ、パインアップル、シイクワシャー、グアバ、アセロラ、プルーン、パパイヤ、マンゴー、メロン、キウイフルーツ、ヤマモモ、バナナ、ユズ、レモン等を挙げることができる。また、煮る、焼く、温める、蒸す等の加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を搾汁前後に施すなどして得られた果汁を原料として用いることができる。また、これら果汁を単品若しくは2種以上配合して用いることができる。さらに、これら野菜汁及び/又は果汁をそれぞれ単品若しくは2種以上配合して用いることもできる。
【0010】
本発明において発酵豆乳とは、発酵してできた豆乳であれば特に限定されないが、例えば、原料の大豆を水で浸漬して加水した後、高圧ホモゲナイザー等にて摩砕処理して得られた大豆を蒸煮し、おからを除去して豆乳を得、この豆乳に乳酸菌を接種して発酵させ、発酵豆乳のpHが5.0〜6.2の範囲になったところで加熱処理して乳酸発酵を止めて得られた発酵豆乳をいう。また、発酵豆乳を得る際に、大豆をあらかじめ脱皮、脱胚軸処理することで大豆の青臭さ、えぐみ、苦味を抑制して得た発酵豆乳も含まれる。また、市販の発酵豆乳を用いることも可能である。
【0011】
本発明において野菜及び/果実飲料とは、日本農林規格にあるニンジンジュース及びニンジンミックスジュース等の野菜ジュース、果実ジュース、果実ミックスジュース、果粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュース及び果汁入り飲料をいう。
【0012】
本発明において容器詰飲料とは、清涼飲料等に用いられる缶、瓶、紙、プラスチック容器など密封容器に充填された飲料をいう。
【0013】
本発明において不快な風味とは、野菜汁及び/又は果汁の青臭さ、えぐみ、苦味、酸味、収斂味や土臭さ等であり、人間が異味・異臭と感じる野菜や果実由来の成分をいう。また、抑制するとは、これら不快な風味を感じる程度が少なくなることをいう。
【0014】
本発明において飲料中の大豆固形分量とは、飲料中に占める大豆固形分量換算での重量%をいう。
【0015】
また、本発明の野菜及び/又は果実飲料の不快な風味を抑制する風味改善方法においては、野菜汁及び/又は果汁を破砕して搾汁若しくは裏ごし等をして皮や種子等を除去したもの、およびこれを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを原料として使用できる。前記搾汁をそれぞれ単品若しくは2種以上配合した原料を使用した飲料としても用いることができ、2種以上では特にトマトとニンジンが本発明の効果をより良く発揮することができる。また、トマトとニンジンに加えオレンジ、好ましくはリンゴ、更に好ましくはオレンジとリンゴを配合することで不快な風味を顕著に改善し、素材が有する本来のコクや旨味といった味の厚みが感じられる容器詰飲料を提供することが可能となる。
【0016】
また、前記の野菜汁及び/又は果汁に砂糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、高果糖液糖、オリゴ糖、トレハロース、キシリトール、スクラロース、ステビア抽出物、ソルビトール、カンゾウ抽出物やラカンカ抽出物等の砂糖類及び甘味料、ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム等の増粘安定剤、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤、ウコン等の香辛料や香料を加えることができる。
【0017】
本発明の野菜汁及び/又は果汁の不快な風味を抑制するために添加する発酵豆乳の添加量は、飲料全体に占める発酵豆乳が1〜15重量%、好ましくは2〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%、最も好ましくは3〜5重量%の範囲になるように添加するとよい。また、飲料全体に占める大豆固形分量が0.085〜1.275重量%、好ましくは0.170〜1.275重量%、更に好ましくは、0.255〜0.850重量、最も好ましくは0.255〜0.425重量%の範囲になるようにするとよい。飲料全体に占める発酵豆乳の添加量や大豆固形分量の範囲がこれよりも少ないと本発明の効果を発揮し得ない場合があり、逆にこれよりも多いと不快な風味は和らぐが、発酵臭が強くなり香味のバランスが崩れるだけでなくコスト高となる。
【0018】
以上のように調製された容器詰飲料は、飲料用の密閉容器に封入され、不快な風味を抑制した容器詰飲料として提供される。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは単に本発明の実施態様を例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0020】
(果実・野菜ミックスジュースの調製)
ニンジンを破砕・搾汁して得られた野菜汁800mlに対し、ホウレンソウ、セロリ、クレソン、パセリからなる野菜を破砕・搾汁し、裏ごしして得られた野菜汁200mlを加え、全体を1000mlに調製した100%野菜汁を得た。次いで、リンゴとブドウの重量比が4:1からなる果実を破砕・搾汁し、裏ごしして得られた100%果汁を得、前記野菜汁と果汁とをそれぞれ50重量%となるように加えた後、レモン果汁でpHを4.2に調整して缶容器(190ml)にホットパック充填した。その後、巻締し、常温になるまで冷却して果実・野菜ミックスジュースのサンプルを得た。
【0021】
(トマトジュースの調製)
市販のトマトを破砕・搾汁し、100%トマトジュースを得た。このトマトジュースのpHは4.2であり、前記トマトジュースを缶容器(190ml)にホットパック充填した。その後、巻締し、常温になるまで冷却してトマトジュースのサンプルを得た。
【0022】
(発酵豆乳の調製)
市販の大豆を水にて充分膨張させた後、大豆をザルにて水切りした。その後、大豆を蒸煮処理して破砕・搾汁し、裏ごしすることで豆乳を得た。この豆乳1000ml当たり乳酸菌15mlを加え、43℃、16時間の乳酸発酵を行った。その後、65℃に加温して発酵豆乳の発酵を止め、pHが5.9の発酵豆乳を得た。
【0023】
<比較例及び実施例>
果実・野菜ミックスジュースとトマトジュースの各サンプルに発酵豆乳の調製過程で得られた豆乳と調製後の発酵豆乳を表1の配合割合となるように添加した。その後、各サンプルを専門パネリスト5名にて風味を評価し、飲み易さの観点から以下の4段階で評価した。
【0024】
【表1】

【0025】
評価基準
◎:大変飲み易い
○:飲み易い
△:普通
×:飲みづらい
【0026】
果実・野菜ミックスジュースに何も加えないと、原料に含まれるニンジン由来の土臭さ、リンゴ由来のえぐみ、ブドウ由来の収斂味が気になり飲みづらかった。しかし、豆乳を前記果実・野菜ミックスジュ−スに添加すると、添加量の増加に伴ってこれら不快な香味は和らぐが、全体的に味が薄く平らな傾向となり、淡白な香味となった。
【0027】
これに対して、発酵豆乳を前記果実・野菜ミックスジュースに添加すると、添加量の増加に伴ってこれら不快な香味は和らぎ、全体的に味に厚みが感じられる傾向となった。これは、発酵豆乳の発酵臭が野菜汁や果汁の不快な部分を抑制し、良好な香味を付与するためと考えられる。
【0028】
表1から、発酵豆乳を飲料に添加することによって、飲み易さが大きく改善されていることがわかる。さらに、豆乳に比べ発酵豆乳ではこの傾向が顕著であり、野菜汁及び/又は果汁の配合割合が高い飲料、中でも100%飲料の不快な風味を抑制し、飲みにくさを改善するという点で効果があることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜汁及び/又は果汁と、発酵豆乳とを含有することを特徴とする容器詰飲料。
【請求項2】
野菜及び/又は果実飲料であることを特徴とする請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
発酵豆乳を添加することにより野菜汁及び/又は果汁の不快な風味を抑制したことを特徴とする容器詰飲料。
【請求項4】
発酵豆乳の添加量が1〜15重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の容器詰飲料。
【請求項5】
飲料中の大豆固形分量が0.085〜1.275重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の容器詰飲料。
【請求項6】
発酵豆乳を添加することにより野菜及び/又は果実飲料の不快な風味を抑制することを特徴とする風味改善方法。