説明

容器詰飲料

【課題】レスベラトロールを高濃度で含有しても、えぐ味及びあと味の改善された飲料を提供する。
【解決手段】レスベラトロールを0.09〜0.19質量%含有し、pHが3〜5である容器詰酸性飲料であって、更にグリセリン、ソルビトール又はこれらの組み合わせからなる多価アルコールをレスベラトロール1質量部に対して60〜150質量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
レスベラトロールは、ブドウやその加工品であるワイン、イタドリ等に含まれるポリフェノール成分であって、その食経験は豊富である。レスベラトロールは、高脂血症予防・治療(特許文献1)や脳性・加齢性疾患の予防又は治療(特許文献2)において有用であることが知られている。
【0003】
一方、赤ブドウエキスは、古くから静脈不全の治療薬として伝統的に使用されており、赤ブドウ抽出物による血液循環改善法が提案されている(特許文献3)。
【0004】
また、レスベラトロールやブドウ抽出物が持久力をはじめとする運動能力、疲労に対して与える影響及び老化に伴う持久力やエネルギー代謝の低下に及ぼす影響について報告されている(特許文献4)。
【0005】
さらに、レスベラトロールの生理作用を利用した飲食品として、例えば、水溶性スチルベン粉末製剤飲食品(特許文献5)、レスベラトロールを含むニュートラシューティカル組成物(特許文献6)、アディポネクチン産生促進剤飲食品(特許文献7)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−72583号公報
【特許文献2】特表2002−527389号公報
【特許文献3】特表2006−516542号公報
【特許文献4】特開2007−145809号公報
【特許文献5】特開2008−290982号公報
【特許文献6】特表2009−511523号公報
【特許文献7】特開2008−255040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、レスベラトロールを高濃度で飲料に含有させると、えぐ味が感じられ、しかもあと味に不快な異味が口内に残りやすいという課題があることを見出した。生理効果を発現する程度のレスベラトロール量に低減したとしても、この好ましくない風味により習慣的に飲用することに抵抗感を伴う。
したがって、本発明は、レスベラトロールを高濃度で含有しても、えぐ味及びあと味の改善された飲料を提供することを課題とする。ここで、本明細書において「えぐ味」とは、あくが強く、舌やのどがひりひりとするような感じや味をいい、また「あと味」とは、JIS Z 8144:2004に記載の「口内に残る感覚」をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、レスベラトロールの含有量とpHを一定範囲内に制御することで、えぐ味及びあと味が改善された飲みやすいレスベラトロール含有容器詰飲料が得られることを見出した。また、適度な苦味を有することにより効果を実感できる飲料であることも見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、レスベラトロールを0.09〜0.19質量%含有し、pHが3〜5である容器詰飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レスベラトロールを高濃度で含有しても、えぐ味、あと味の不快な異味が抑制されて飲みやすく、適度な苦味を有して効果感のある飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「レスベラトロール(Resveratrol)」とは、trans−レスベラトロール(trans-3,4',5-Trihydroxystilbene)、cis−レスベラトロール(cis-3,4',5-Trihydroxystilbene)の総称である。本発明においては、これら化合物のうち、少なくとも一種が含まれていればよい。
【0012】
本発明で使用するレスベラトロールは、有機化学的又は微生物を用いて合成した高純度品の他、ブドウ、落花生、ピーナッツ及びイタドリ等のタデ科植物等のレスベラトロール含有天然物からの抽出物を用いることができる。また、レスベラトロール含有天然物の抽出物、微生物を用いた合成物、各種食品抽出物を精製したものや、これらの加工品を用いてもよい。更に、これら抽出物、合成物、精製物又は加工品から単離したものを用いることもできる。
【0013】
天然物としてはブドウ、イタドリが好ましく、特にブドウが好ましい。
ブドウは、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)とアメリカブドウ(Vitis labrusca)に分類することができ、そのいずれでもよいが、ヨーロッパブドウが好ましい。
ブドウの種類としては、具体的にはデラウエア、巨峰、甲州、ピオーネ、マスカット、シュナンブラン、グレナッシュ、マタロ、ミュラーテュルガウ、トレッビアーノ、ベリーA、カベルネソービニオン、メルロー、ピノノアール、カベルネフラン、シラー、シャルドネ、ソービニヨンブラン、セミヨン、ガメイ、リースリング、アリゴテ、ミュスカデル、ソーヴィニョン、フォルブランシュ、ミュスカデ、シュナン、グロロー、ピノー・ドーニス、ピノ・ムニエ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、シルヴァネール、プールサール、サヴァニャン、ジャケール、モンドーズ、ルーセット、カリニャン、サンソー、クレレット、グルナッシュ・ノワール、ムルヴェードル、ユニ・ブラン、ニエルチオ、スキアカレッロ、ヴェルマンチノ、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエ、ブールブーラン、マカブー、モーザック、タナ、コロンバール、ラン・ドヴ・レル、マルベック、プティ・マンセン、グロ・マンセン、プティ・ヴェルド、サンジョヴェーゼ、ナビオロ、バーベラ、ドルチェット、カリニェナ、ガルナーチャ、モナストレル、テンプラニーニョ等が挙げられる。
【0014】
ブドウ抽出物としては、ブドウ果実、ブドウ葉、ブドウ種子、ブドウ新芽又はブドウに由来するものからの抽出物等が挙げられる。ブドウに由来するものとしては、例えば、ブドウジュース、ワイン、ブドウジュースやワインの製造時の残渣、ブドウジュースやワインの濃縮物又は乾燥物等が挙げられる。
抽出は、例えば、レスベラトロールがブドウの果皮、葉、新芽に多く含まれていることから、当該部位を、水や熱水、アルコール水、有機溶剤(例えば、エタノール等のアルコール)等を用いて抽出する一般的な抽出方法が採用できる。また、ブドウジュースやワインの製造時に発生するブドウ残渣をそのまま用いるか、あるいはブドウ残渣を有機溶剤/水等により抽出することもできる。
【0015】
また、イタドリは、根に多くのレスベラトロールを含むことから、当該部位を上記と同様な一般的な抽出方法により得られるイタドリ抽出物を用いることもできる。
【0016】
レスベラトロールとして市販品を用いることもでき、例えば、「VINEATROL 20M」(サンブライト(株)製)等が挙げられる。「VINEATROL 20M」は、ブドウ新芽由来レスベラトロールであり、レスベラトロール総量が20質量%である。
【0017】
本発明の飲料中のレスベラトロールの含有量は0.09〜0.19質量%であるが、えぐ味及びあと味の改善、適度な苦味を有する観点(以下、単に「風味の改善」ともいう)から、好ましくは0.09〜0.18質量%、更に好ましくは0.09〜0.16質量%、特に好ましくは0.09〜0.15質量%である。なお、レスベラトロールの分析法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。
【0018】
本発明の飲料は液性が酸性であり、具体的にはpH(20℃)は3〜5であるが、風味の改善の観点から、好ましくは3〜4.5、特に好ましくは3〜4である。
【0019】
本発明の飲料には、多価アルコールを含有させることができる。これにより、風味の改善に加え、外観を向上させることができる。
多価アルコールは食品添加物として通常使用されているものであれば特に限定されず、例えば、グリセリン、ソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコールが挙げられるが、風味の観点から、グリセリン、ソルビトール又はこれらの組み合わせが好ましい。
本発明の飲料における多価アルコールの含有量は、外観向上の観点から、レスベラトロール1質量部に対して、好ましくは60〜150質量部、より好ましくは70〜140質量部、特に好ましくは80〜130質量部である。また、飲料全体中の含有量は、風味、外観向上の観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは7〜45質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。
【0020】
更に、本発明の飲料には、所望により、酸味料、甘味料、ビタミン、ミネラル、果汁、野菜汁、花蜜エキス、炭酸、pH調整剤、酸化防止剤、泡安定剤、各種エステル類、色素類、乳化剤、保存料等の添加剤を単独で又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。なお、添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定可能である。
【0021】
本発明の飲料は、レスベラトロール及びその他の成分を混合し、容器に充填し、殺菌して製造することができる。容器としては、金属缶、PETボトル、金属箔やプラスチックフィルムと複合化した紙容器、チューブパック、ビン等が挙げられる。また、殺菌方法は、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件であればよく、レトルト殺菌及びUHT殺菌のいずれでもよい。
【実施例】
【0022】
1.レスベラトロールの分析法
レスベラトロールの分析は、高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を用いて行った。サンプル5gに水2mLとメタノール20mLを添加し、10分間超音波を照射した後、フィルター濾過処理したものを用いた。高速液体クロマトグラフ質量分析計は、LC部はWaters 2695(Waters Co.)、検出器はMS部;QUATTRO Micro(Waters Co.)、カラムはYMC-Pack ODS-A A-312,φ6.0 mm×15 cm(ワイエムシィ(株))を用いた。カラム温度は35℃に設定した。移動相は水、アセトニトリル、メタノール及び酢酸の混液 (64:20:10:1)を用い、流量は1.0mL/minに設定した。エレクトロスプレーイオン化法でイオン化し、負イオン検出モードで検出した。イオン数はm/z227.2→142.9に設定した。予め作成した検量線より濃度を算出した。
【0023】
2.官能評価
各実施例及び比較例で得られた容器詰飲料のあと味、えぐ味及び効果感について官能評価を行った。官能評価は、専門パネル3名が下記の基準で各々採点し、その後協議により最終スコアを決定した。なお、「効果感」とは、適度な苦味を有することにより生ずる、効果を実感する感覚をいう。
【0024】
1)あと味
4点:あと味がすっきりとしている。
3点:あと味がややすっきりとしている。
2点:あと味に若干異味を感じる。
1点:あと味に異味を感じる。
【0025】
2)えぐ味
4点:えぐ味を感じない。
3点:えぐ味を若干感じる。
2点:えぐ味を感じる。
1点:強いえぐ味を感じる。
【0026】
3)効果感
3点:適度な苦味を有し、効果を実感する。
2点:苦味が強い又は弱いことにより、効果を実感し難い。
1点:苦味が強過ぎる又は弱過ぎることにより、効果を実感しない。
【0027】
3.外観評価
実施例10〜17で得られた容器詰飲料の外観について目視で観察し、以下の基準で評価した。
4点:透明度が高い。
3点:やや濁りあり。
2点:濁りあり。
1点:濁りが強い。
【0028】
実施例1〜9及び比較例1〜8
表1に示す割合のブドウ新芽抽出物(「VINEATROL 20M」;サンブライト株式会社製、レスベラトロール総量20質量%)をイオン交換水に総量100mLとなるように加え、25℃にて攪拌した。次に、表1に示すpHとなるようにクエン酸又は重曹で調整し、容器に充填し85℃で1分間殺菌して容器詰飲料を得た。各容器詰飲料の分析及び官能評価の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1から、レスベラトロールを0.09〜0.19質量%含有しても、pHが5よりも高い場合には、えぐ味が感じられ飲料として適さないことが分かった(比較例1〜3)。
また、レスベラトロール含有量が0.19質量%よりも高い場合には、pHの如何を問わず、えぐ味が強く、あと味に不快な異味があり、苦味も強く、効果を実感し難いことが分かった(比較例4〜7)。
さらに、レスベラトロール含有量が0.09質量%よりも低い場合には、苦味が弱過ぎ、効果を実感できず、好ましくないことがわかった(比較例8)。
一方、レスベラトロール含有量を0.09〜0.19質量%、pHを3〜5に制御した飲料の場合、えぐ味が抑制され、あと味も良好で、適度な苦味を有して効果を実感でき、飲料として好適であることが確認された(実施例1〜9)。
【0031】
実施例10〜17
表2の割合のブドウ新芽抽出物(「VINEATROL 20M」;サンブライト株式会社製。レスベラトロール総量20質量%)を食品添加物用グリセリン(花王株式会社製、純度100%)又は食品添加物用ソルビトール(「ソルビトールW 」;花王株式会社製、純度60%)に、ウォーターバス中において70℃加温の状態で30分溶解させ、イオン交換水で総量100mLに調製し、その後容器に充填し85℃で1分間殺菌して容器詰飲料を得た。各容器詰飲料の分析、並びに官能及び外観評価の結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2から、多価アルコール/レスベラトロールの質量比が60〜150であると、あと味、えぐ味及び苦味に影響を与えることなく、外観に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レスベラトロールを0.09〜0.19質量%含有し、pHが3〜5である容器詰飲料。
【請求項2】
レスベラトロールがブドウ抽出物由来のものである、請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
更に多価アルコールを含有し、多価アルコールの含有量がレスベラトロール1質量部に対して60〜150質量部である、請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【請求項4】
多価アルコールがグリセリン、ソルビトール又はこれらの組み合わせである、請求項3記載の容器詰飲料。