説明

容器

【課題】液体を収容するための容器であって該容器から液体の一部を取り出すときに容器内に流入する外気の濃度を低減し、これにより、流入外気による残留液体の酸化による劣化を低減することを可能とする容器を提供すること。
【解決手段】容器は、弾性変形可能の液体容器部と気体容器部とを備える。気体容器部は、液体容器部に収容される液体の劣化防止用のガスを収容する。液体容器部は第1の逆止弁が適用された液体取出口を有し、両容器部は第2の逆止弁が適用された連通孔を介して互いに連通している。第1の逆止弁は、液体容器部がその容積が減少するように弾性変形するときに液体容器部から外部への液体の流出を許す。また、第2の逆止弁は、液体容器部が弾性変形した状態から弾性変形前の元の状態に弾性復帰するときに液体容器部内への劣化防止用ガスの流入を許す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器から繰り返し取り出して使用される化粧品や、飲料、調味料のような液体の品質を、その使用期間中、良好に保持するのに適した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品や、飲料、調味料のような液体は、通常、ガラス製やプラスチック製の瓶形の容器に密封状態で収容され、これを開封して使用されるところ、開封後の使用に伴い、容器内に流入する空気のために容器内に残る液体が酸化され、これにより劣化する。
【0003】
従来、このような液体を収容するための容器として、前記液体の酸化による劣化の防止を可能とする二重構造の容器が提案されている(後記特許文献1参照)。この容器は、前記液体を収容可能である、可撓性を有する液体容器部と、該液体容器部を取り巻く、可撓性を有する気体容器部とを備える。前記液体容器部はこれに収容された液体を取り出すための液体取出口を有する。前記液体容器部の液体取出口にはその内部からその外部への液体の流出を許す第1の逆止弁が設けられ、また前記気体容器部にはその外部からその内部への空気の流入を許す第2の逆止弁が設けられている。
【0004】
この二重構造の容器によれば、その気体容器部をその周囲からその内部に向けて押圧すると、前記気体容器部が弾性変形し、該気体容器部が規定する空間の容積が減少する。これに伴い前記気体容器部内に存する空気が加圧される。この加圧された空気により、前記気体容器部内の液体容器部がその周囲からその内部に向けての押圧力を受けて押し潰されるように変形し、その容積が減少する。その結果、前記液体容器部内の液体がその液体取出口から前記第1の逆止弁を経て外部に押し出される。
【0005】
所要量の液体を出し終わった後、前記気体容器部に対する押圧を解除すると、前記液体容器部に対する空気による加圧力が減少し、前記第1の逆止弁が閉じられる。他方、押圧を解除された前記気体容器部はその弾性復帰力により弾性変形前の元の形状に戻ろうとし、これに伴い前記気体容器部が規定する空間の容積が増大し、該空間内の空気の圧力が低下する。その結果、前記気体容器部に設けられた第2の逆止弁が開き、該第2の逆止弁を経て前記気体容器部内に外気(空気)が流入する。前記液体容器部は、前記気体容器部内に流入した空気の圧力を受けて、変形前の元の状態に戻ることを制限される。この液体容器部の元の形状への復帰の抑制及び前記第1の逆止弁による前記液体容器部の密閉により、前記液体容器部内への外気の流入と、これに伴う前記液体容器部内に残る液体の酸化防止の達成とが可能とされる。
【0006】
しかし、前記液体容器部内からの液体の取り出し後、前記液体容器部を密閉するための前記第1の逆止弁が閉じるまでの間、及び、前記気体容器部内への外気導入による前記液体容器部の復元動作の抑制までの間のわずかな時間内に、前記液体容器部内へのその取出口を通しての外気の流入を余儀なくされる場合がある。
【特許文献1】特開平9−124051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液体容器部及び気体容器部を備える容器であって前記液体容器部に収容された液体の一部を取り出すときに前記液体容器部内に流入することがある外気の濃度を低減することを可能とし、これにより、流入外気による前記液体容器部内の液体の酸化による劣化を低減することを可能とする容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1に記載の発明の特徴)
請求項1に記載の発明は、容器に係り、液体を収容するための液体収容空間を規定する、前記液体の取出口が設けられた弾性変形可能の液体容器部及び前記液体の劣化を防止するために用いられる劣化防止用気体を収容するための気体収容空間を規定する気体容器部からなり、両容器部の一方又は双方に設けられた連通孔を介して前記液体収容空間と前記気体収容空間とが互いに連通する容器本体と、前記液体取出口に適用された第1の逆止弁であって、前記液体容器部がその液体収容空間の容積が減少するように弾性変形をするとき、前記液体取出口を通しての前記液体収容空間からの液体の流出を許す第1の逆止弁と、前記連通孔に適用された第2の逆止弁であって、前記液体容器部が前記弾性変形をした状態から弾性変形前の元の状態に弾性復帰するとき、前記連通孔を通しての前記気体収容空間から前記液体収容空間への前記劣化防止用気体の流入を許す第2の逆止弁とを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、容器は、その容器本体の液体容器部の液体収容空間に液体が充填され、また気体容器部の気体収容空間に劣化防止用気体が充填された状態で使用される。前記気体収容空間に充填された前記劣化防止用気体の圧力は、大気圧より高いものであるように、その充填当初から又はその後の補充により維持される。前記容器からの液体の取り出しは、前記液体容器部にその周囲からその内部に向けて押圧作用を及ぼし、その液体収容空間の容積が減少するように弾性変形させることにより行うことができる。前記液体容器部の弾性変形によりその液体収容空間内の液体が加圧され、加圧された液体は前記第1の逆止弁に押圧力を及ぼし、これを開き、前記液体取出口を通して外部に連続的に流出する。
【0010】
また、前記液体容器部に対する押圧操作を解除すると、前記弾性変形状態にあった液体容器部が弾性変形前の元の状態に向けて弾性復帰動作を開始し、これに伴ってその液体収容空間の容積が次第に増大し、前記液体収容空間がこれに存する気体の圧力が大気圧より低い状態すなわち負圧状態下におかれる。その結果、前記第1の逆止弁が閉じ、前記液体取出口を通しての前記液体収容空間内への外気の流入が阻止される。他方、前記液体収容空間の負圧状態への移行に伴い、大気圧よりも高い前記劣化防止用気体の圧力を受けている第2の逆止弁が開き、連通孔を通して、前記気体収容空間から前記液体収容空間に前記劣化防止用気体が流入する。前記第2の逆止弁は、前記劣化防止用気体の流入により増大する前記液体収容空間内の圧力が前記気体収容空間内の圧力と拮抗したときに閉じる。前記気体収容空間内の劣化防止用気体の量及び圧力は、前記液体の取り出し毎に、減少する。したがって、前記劣化防止用気体の量及び圧力は、その充填の際、前記液体の取り出しの完了までに必要とされるものに設定され、又は前記劣化防止用気体の補充により補われる。
【0011】
前記液体収容空間内に流入した劣化防止用気体は、前記液体収容空間内に残る液体に酸化作用を及ぼすことがなく、前記液体の品質維持に寄与する。また、前記第1の逆止弁が閉じるまでのわずかな時間に前記液体取出口を通して前記液体収容空間内に外気が流入することがあっても、流入外気は前記液体収容空間内に取り入れられた前記劣化防止用気体により希釈され、その濃度が低下される。これにより、前記液体収容空間内に残る液体に対する酸化作用を低減し、その品質低下を回避することができる。
【0012】
(請求項2に記載の発明の特徴)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記液体容器部が、その液体取出口を除いて、前記気体容器部の気体収容空間内に位置し、また前記気体容器部が弾性変形可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、弾性変形可能の気体容器部を例えば指で把持してその気体収容空間の容積が低減するように弾性変形させ、これにより前記気体収容空間内の劣化防止用気体の圧力を高め、その圧力を前記液体容器部に及ぼすことにより、間接的に、前記液体容器部をその液体収容空間の容積が減少するように弾性変形させることができる。
【0014】
(請求項3に記載の発明の特徴)
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記気体容器部が前記液体容器部に接する当接部分を有することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、弾性変形可能の前記気体容器部の当接部分を前記液体容器部に向けて押圧することにより、これに接する前記液体容器部をその液体収容空間の容積が減少するように、間接的に弾性変形させることができる。
【0016】
(請求項4に記載の発明の特徴)
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記液体容器部が、その液体取出口を含む一部分を除いて、前記気体容器部の気体収容空間内に位置し又は前記前記気体容器部に設けられかつその気体収容空間に取り囲まれた凹所内に位置することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前記液体容器部の一部分が前記気体容器部の気体収容空間の外部にあることから、前記液体容器部から液体を取り出すべく該液体容器部の一部分を例えば指で把持することによりこれを直接的に前記弾性変形をさせることができる。前記液体容器部が前記気体容器部の凹所内に配置される例にあっては、これらの容器部の液体収容空間及び気体収容空間に連なる前記連通孔が両容器部の双方を貫通する孔からなる。
【0018】
(請求項5に記載の発明の特徴)
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記液体容器部及び前記気体容器部が、これらの液体収容空間及び前記気体収容空間を仕切る共通の仕切壁を有することを特徴とする
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、前記液体容器部と前記気体容器部とがこれらの液体収容空間と気体収容空間とを仕切る仕切壁を共有することから、前記液体容器部から液体を取り出すべくこれを例えば前記液体容器部を指で把持することにより、これを直接的に弾性変形をさせることができる。
【0020】
(請求項6に記載の発明)
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記気体容器部が変形性に乏しい材料からなることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、前記気体容器部が変形性に乏しい、例えば比較的硬い材料からなることから、前記液体容器部を弾性変形させるとき、前記気体容器部を手がかりにして前記液体容器部を指で押し潰すようにこれに圧迫力を加えることができる。
【0022】
(請求項7に記載の発明)
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記気体容器部が、前記液体容器部の液体収容空間内に位置することを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、前記気体容器部が前記液体容器部内にあることから、前記液体容器部を直接に例えば指で押し潰すようにこれに圧迫力を加えることができる。
【0024】
(請求項8に記載の発明)
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記液体収容空間に収容される液体が化粧品、飲料又は調味料からなることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、前記容器から繰り返し取り出して使用される化粧品や、ワインのような飲料、醤油のような調味料について、使用の都度、前記液体収容空間内に残る前記液体の酸化による劣化を少なくし、その品質を良好に維持することができる。
【0026】
(請求項9に記載の発明の特徴)
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記劣化防止用ガスが窒素又はアルゴンを主成分とする気体からなることを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、これらの気体は前記液体に対して不溶性かつ不活性であることから、前記液体の品質低下を防止するために用いられる気体として特に適する。
【0028】
(請求項10に記載の発明の特徴)
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明の構成要素を備えた上で、さらに、前記容器が、その液体容器部の液体取出口を覆うためのキャップを含むことを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、前記液体の出口をなす前記液体容器部の液体取出口をキャップで覆うことにより、前記取出口が塵や埃で塞がれ、前記容器の使用が不能となるおそれを未然に防止することができる。
【0030】
(請求項11に記載の発明)
請求項11に記載の発明は、前記容器本体が、さらに、前記気体容器部の気体収容空間内への前記劣化防止用気体の流入を許す第3の逆止弁が適用された孔を含むことを特徴とする。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、第3の逆止弁が適用された孔を通して、前記気体容器部の気体収容空間にその外部から前記劣化防止用気体を充填し又は補充することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、前記液体容器部から前記液体の一部を取り出すときに前記液体容器部内に流入する外気の濃度を低減し、これにより、流入外気による前記液体容器部内の液体の酸化による劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1を参照すると、液体の収容に用いられる容器の一例が全体に符号1で示されている。容器1への収容に適する前記液体は、その品質を保持する上で酸化による劣化が回避されることが望ましいもの、例えば液状の化粧品や、ワインのような飲料、醤油、食用油のような調味料等からなり、さらに前記液体中に該液体の劣化を防止するために有用な後記劣化防止用気体を供給したときに前記液体中を前記劣化防止用気体がこれに作用する浮力により上昇移動可能であるような粘度を有するものからなる。
【0034】
容器1は、液体容器部3及び気体容器部5からなる容器本体6と、該容器本体に設けられた第1の逆止弁7及び第2の逆止弁9とを備える。
【0035】
液体容器部3と気体容器部5とは、それぞれ、前記液体を収容するための液体収容空間10と、前記液体の劣化を防止するために使用される劣化防止用気体、好ましくは前記液体に対して不溶性でありまた不活性である窒素を主成分とする気体、アルゴンを主成分とする気体等を収容するための気体収容空間11とを規定する。また、第1の逆止弁7は液体容器部3の後記液体取出口13の開閉動作を行い、第2の逆止弁9液体及び気体の両収容空間10,11に連なる後記連通孔22の開閉動作を行うように配置されている。前記劣化防止用気体は、大気圧を超える大きさの圧力をもって気体収容空間11に収容される。
【0036】
図1に示す例では、液体容器部3と気体容器部5とが全体的に二重構造をなすように、液体容器部3が気体容器部5の内部にこれと同軸的に配置されている。両容器部3,5は、例えば、それぞれが全体に円筒形状を呈するものからなるものとすることができる。より詳細には、液体容器部3は、閉鎖底部及び閉鎖頂部を有する円筒状の筒体19と、該筒体の頂部に設けられ該頂部からその上方へ伸びる、筒体19の内部である液体収容空間10に連通する首17とを有する。首17は、液体収容空間10からこれに収容される前記液体を取り出すための液体取出口13が設けられた頂部21を有する。他方、気体容器部5は、閉鎖底部及び閉鎖頂部を有するほぼ円筒状の筒体15からなる。
【0037】
液体容器部3を構成する筒体19は気体容器部5を構成する筒体15の内径より小さい外径を有し、また筒体15よりわずかに小さい高さ寸法を有するように形成され、液体容器部3は気体容器部5の内部にこれと同軸的に配置されている。より詳細には、液体容器部3の筒体19、すなわち液体取出口13及びこれを規定する首17を除いた部分である筒体19が、気体容器部5の気体収容空間11内に配置されている。
【0038】
液体容器部3の筒体19はその底部外面において気体容器部5の底部内面に固着され、またその首17は気体容器部5の筒体15の前記頂部を経てその上方に伸びている。首17は、気体容器部5の筒体15の前記頂部に気密に接合されている。液体容器部3の筒体19の側壁には、該側壁を貫通する連通孔22が設けられており、両容器部3,5の液体収容空間10及び気体収容空間11は連通孔22を介して互いに連通している。連通孔22は、気体収容空間11からこれに収容される前記劣化防止用気体を液体容器部3の液体収容空間10内に導入するための通路をなす。連通孔22は、図1に示す例では、液体容器部3の筒体19の底部近傍に配置されているが、これに限らず、筒体19の頂底両部間の任意の箇所に配置することができる。
【0039】
液体容器部3及び気体容器部5は、それぞれ、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック材料からなり、弾性変形可能である。好ましくは、気体容器部5の筒体15は手指による圧迫を受けてその周囲からその内部に向けて押し潰され、気体収容空間11の容積が減少するように変形し得る弾性及び柔軟性を有する。また液体容器部3の筒体19は、気体収容空間11内に収容される前記劣化防止用気体に対する加圧によりその周囲からその内部に向けて押し潰され、液体収容空間10の容積が減少するように変形し得る弾性及び柔軟性を有する。
【0040】
第1の逆止弁7は液体容器部3の首17内に配置されている。第1の逆止弁7は、首17の液体取出口13に連通する弁座(図示せず)と、ばね力のような弾力が付与され、これにより前記弁座に着座し、液体取出口13を閉鎖する弁体(図示せず)とを有する。前記弁体は、液体容器部3の液体収容空間10内に収容される液体が加圧されその圧力を受けるとき、その圧力を受けて前記弁座を離れ、液体取出口13を開き、前記液体が液体取出口13を経て液体容器部3の外部である大気中に流出することを許す。前記液体への加圧は、液体容器部3をその液体収容空間10の容積が減少するように弾性変形させることにより行うことができ、液体容器部3の弾性変形は、気体容器部5をその気体収容空間11の容積が減少するように弾性変形させることにより生じさせることができる。
【0041】
また、第2の逆止弁9は、液体容器部3の筒体19に設けられた連通孔22を開閉可能であるように配置されている。第2の逆止弁9は、第1の逆止弁7と同様の構造を有する。すなわち、連通孔22に連通するように配置された弁座(図示せず)と、ばね力のような弾力が付与され、これにより前記弁座に着座し、連通孔22を閉鎖する弁体(図示せず)とを有する。前記弁体は、液体容器部3内の圧力が大気圧よりも低下したとき、前記弁体が前記弾力に抗して前記弁座を離れ、連通孔22を開き、前記劣化防止用気体が連通孔22を経て液体容器部3内に流入することを許す。液体容器部3内に流入した前記劣化防止用気体は、液体容器部3内の液体中をこれに働く浮力の作用を受けて上昇し、液面の上方空間に至る。
【0042】
容器1は、好ましくは、さらに、液体容器部3の液体取出口13を覆うためのキャップ23を備える。キャップ23は、その内部に、液体容器部3の首17の外周面に設けられたねじ山25に噛合可能のねじ溝(図示せず)を有する。キャップ23は、これを回して、そのねじ溝を液体容器部3のねじ山25に噛み合わせることにより、液体容器部3に着脱可能に取り付けることができる。キャップ23は、液体容器部3の液体取出口13への塵や埃の付着防止に役立つ。
【0043】
容器1に収容された前記液体は、使用に際し、次の操作を行うことによりその一部を取り出すことができる。
【0044】
まず、キャップ23を回してこれを液体容器部3の首17から取り外したのち、図2(a)に示すように、気体容器部5の筒体15を指で掴み、太い矢印27で示すように、筒体15にその周面からその内部に向けて押圧力を加える。これにより、筒体15が、想像線で示す状態から実線で示す状態へと、その周囲からその内部に向けて弾性変形をする。その結果、気体容器部5の気体収容空間11の容積が減少し、気体収容空間11内に収容された前記劣化防止用気体の圧力が増大する。前記劣化防止用気体の圧力の増大に伴い、液体容器部3の筒体19がその周囲から前記劣化防止用気体の押圧力を受けて、想像線で示す状態から鎖線で示す状態へと、その周囲からその内部に向けて押し潰されるように弾性変形をする。
【0045】
液体容器部3の筒体19の前記弾性変形によって筒体19の容積の低減が生じ、これにより液体容器部3内の前記液体が加圧される。これに伴い第1の逆止弁7が開き、細い矢印29で示すように、前記液体が筒体19内からその外部へ液体取出口13を経て流出する。このとき、気体容器部5内の加圧された劣化防止用気体の圧力が液体容器部3内の加圧された液体の圧力より大きいときは第2の逆止弁9が開き、液体容器部3内に劣化防止用気体が流れ込む。反対に、気体容器部5内の加圧された劣化防止用気体の圧力が液体容器部3内の加圧された液体の圧力の大きさ以下のときは第2の逆止弁9は開かず、液体容器部3内に前記劣化防止用気体は流入しない。外部に取り出される前記液体の量は、気体容器部5の筒体15に対する押圧力の大きさを加減し、これにより液体容器部3の筒体19の弾性変形量を加減することにより、調節することができる。一度の操作で所要量の前記液体を取り出すことができないときは、所要量に達するまで、前記操作を繰り返す。
【0046】
前記液体の取り出し後、気体容器部5の筒体15に対する押圧を解除すると、図2(b)に示すように、筒体15がその弾性復帰力により前記弾性変形の状態から弾性変形前の元の状態へと戻り、同時に気体容器部5の気体収容空間11の容積が元の大きさに戻り、気体収容空間11内の前記劣化防止用気体の圧力が低減する。これに伴い、液体容器部3の筒体19もまたその弾性復帰力により前記弾性変形の状態から弾性変形前の元の状態へと戻り、同時に液体容器部3の液体収容空間10の容積が元の大きさに戻り、液体収容空間10内の圧力が低減する。その結果、第1の逆止弁7が閉じ、液体容器部3の液体収容空間10が密閉される。
【0047】
この過程において、液体容器部3の筒体19の容積が次第に増大し、筒体19内に存する気体、例えば初めから筒体19内に存した空気あるいは前記劣化防止用気体、該劣化防止用気体の蒸気等からなる気体の圧力の大きさが大気圧よりも低い値に低下する。筒体19の容積の増大に伴い、大気圧より大きい圧力を有する前記劣化防止用気体が第2の逆止弁9を開き、細い矢印31で示すように、連通孔22を経て、気体収容空間11内から液体収容空間10内へと流入する。液体収容空間10を規定する筒体19内に流入した前記劣化防止用気体は、筒体19内に残る液体中をこれに作用する浮力により上昇し、液面の上方空間に至り、ここに貯留される。
【0048】
前記液面上方に貯留された劣化防止用気体は、前記液体に対して不溶性でありまた不活性であることから、前記液体を酸化作用の存しない環境下におく。また、前記液面上方空間に最初から存し又は第1の逆止弁7が閉じるときのわずかな時間の間に流入した空気があるときは、これらの空気は流入した前記劣化防止用気体により希釈され、その濃度が低減される。これにより、前記空気による前記液体に対する酸化作用が低減され、その品質が良好に保たれる。
【0049】
次に、図3に、液体容器部3の筒体19の外周面に当接する当接部分33を有する気体容器部5を備える他の例に係る容器1の例を示す。当接部分33は容器部5の筒体15に設けられ、環状のくびれをなす。図示の例では、当接部分33は、筒体15の頂底両部のほぼ中間部に形成されている。気体容器部5の筒体15の当接部分33以外の部分は、液体容器部3の筒体19から間隔をおいてこれを取り囲んでいる。
【0050】
この例によれば、容器1に収容された液体の使用のためにこれを容器1から取り出すに際し、気体容器部5の筒体15の当接部分33を指で掴み、筒体15の周囲からその内部に向けて押圧しこれを弾性変形させると、筒体15に接する液体容器部3の筒体19がその周囲からその内部に向けて弾性変形し、筒体19の容積が減少する。
【0051】
液体容器部3の筒体19に前記弾性変形を生じさせることにより、図1に示す例において説明したと同様に、第1の逆止弁7及び液体取出口13を通しての液体容器部3からの前記液体の取り出しを行うことができる。ただし、図1に示す例と比べて、当接部分33を介して筒体19に弾性変形を生じさせたときの筒体15の弾性変形量は少なく、筒体15内の前記劣化防止用気体の圧力上昇をより小さいものとすることができる。また、気体容器部5の筒体19の当接部分33から指を離すことによる気体容器部5の筒体15の弾性変形の解除及びこれに伴う液体容器部3の筒体19の弾性変形の解除により、連通孔22を通しての液体容器部3内への前記劣化防止用ガスの導入を行うことができる。
【0052】
気体容器部5の筒体15に前記くぼみを規定する当接部分33を設ける図3の例に代えて、図1に想像線で示すように、液体容器部3の筒体19と気体容器部5の筒体15との間にこれらの容器部3,5に接する押圧力伝達部材34を配置することができる。これによれば、筒体15に及ぼす押圧力を押圧力伝達部材34を介して筒体19に伝達し、筒体19に弾性変形を生じさせることができる。押圧力伝達部材34は、両容器部3,5のいずれか一方に固定することができる。また、押圧力伝達部材34は、環状の単一部材又はブロック状の複数の部材からなるものとすることができる。
【0053】
気体容器部5が規定する気体収容空間11内への前記劣化防止用気体の供給は、例えば気体容器部5の筒体15の底部に設けられた貫通孔35を通して行うことができる。貫通孔35には第3の逆止弁37が設けられている。第3の逆止弁37は、筒体15の外部からその内部への前記劣化防止用気体の流入を許す。気体収容空間11への前記劣化防止用気体の供給は、例えば前記劣化防止用気体が充填されたボンベ(図示せず)のガス注入部を貫通孔35に差し込み、第3の逆止弁37を開くことにより行うことができる。
【0054】
次に図4を参照すると、他の例に係る容器1が示されている。この容器1は、図1に示す例に係る容器1と次の点において相違する。すなわち、気体容器部5の筒体15にその頂面に開放する円筒形の凹所39が設けられている点、気体容器部5の凹所39に液体容器部3の筒体19が挿入されかつ気体容器部5に気密に接合されている点、液体容器部3の筒体19の上端部分41とこれに連なる首17とが凹所39からその上方に突出している点、及び連通孔22が両容器部3,5の双方を貫通する孔として形成されている点である。
【0055】
図示の例では、凹所39は、気体容器部5の筒体15と同軸をなすように設けられ、その周囲を気体収容空間11が取り囲んでいる。しかし、凹所39は、この例に代えて非同軸に設けることも可能である。また、連通孔22は、より正確には、凹所39を規定する気体容器部5の筒体15の側壁と、液体容器部3の筒体19の側壁とを貫通し、気体収容空間11と液体収容空間10とに開放している。
【0056】
図4に示す例によれば、液体容器部3の筒体19の上端部分41を指で掴んで押さえることにより、前記液体の取り出しの際に必要な筒体19の前記弾性変形を直接に生じさせることができる。このとき、気体容器部5の筒体15の弾性変形は比較的小さく、このため筒体15内の前記劣化防止用気体の圧力増大をより小さいものとすることができる。ただし、前述したと同様に、気体容器部5の筒体15を指で押さえてこれを弾性変形させることを妨げない。なお、この例においては、筒体19をその上端部分41において弾性変形させることが可能であるので、気体容器部5の筒体15を弾性変形が生じにくい例えば硬質プラスチック材料で形成することが可能である。また、気体容器部5の筒体15に凹所39を設けることなく、筒体19をその上端部分41が筒体15の頂部から上方に突出するように筒体15の内部に配置されたものとすることができる。この場合には、連通孔22は、図1に示す例におけると同様、筒体19の側壁のみを貫通する孔として設けられる。
【0057】
図5を参照すると、さらに他の例に係る容器1が示されている。この容器1は、図1に示す例に係る容器1と次の点において相違する。すなわち、容器本体6の液体容器部3及び気体容器部5がこれらの液体収容空間10及び気体収容空間11を仕切る共通の仕切壁43を有する点である。より詳細には、単一の円筒状の筒体45の内部空間がその軸線を含む仕切壁43によって2つの半円筒形の空間に区画されており、これらの半円筒形空間がそれぞれ液体収容空間10及び気体収容空間11をなす。この例では、液体取出口13を規定する首17が、筒体45の軸線から偏心した位置に配置され、半円筒形の液体収容空間10に連通している。また、両収容空間10,11に連なる連通孔22及び第2の逆止弁9が仕切壁43に設けられている。
【0058】
筒体45は弾性変形可能の前記プラスチック材料で形成されており、半円筒形の液体容器部3を指で押さえることにより液体容器部3に前記した弾性変形を生じさせることができる。また、この例においては、半円筒形の気体容器部5のみを硬質プラスチックのような変形性に乏しい材料で形成することができる。これによれば、気体容器部5を反力支持体として、気体容器部5に向けて液体容器部3を押すことにより、液体容器部3に前記弾性変形を生じさせることができる。また、このとき、液体容器部3の弾性変形及びこれに伴う気体収容空間11内の前記劣化防止用気体の圧力上昇を生じないようにすることができる。なお、図示の例では、両容器部3,5の収容空間10,11の容積が等しいものとされているが、一方の収容空間が他方の収容空間よりも容積の大きいものに設定することができる。また、液体容器部3と気体容器部5とは上下に位置するように配置することができる。さらに、液体容器部3及び気体容器部5は、これらを前記半円筒形状のものとする図示の例に代えて、例えば直方体形状のものとすることができる。さらに、液体収容空間10と気体収容空間11とを共通の仕切壁43で仕切る図示の例に代えて、液体容器部3と気体容器部5とをそれぞれ独立した別部材からなるもので構成し、これらの別部材を互いに接合して一体のものとすることができる。両別部材にはこれらの接合面を貫通する連通孔22が設けられる。
【0059】
図6を参照すると、さらに他の例に係る容器1が示されている。この容器1は、図1に示す例に係る容器1と次の点において相違する。すなわち、液体容器部3の筒体19が気体容器部5の筒体15の内部に配置されているのではなく、これと反対に、気体容器部5の筒体15が液体容器部3の筒体19の内部に同軸に配置されている。また、第2の逆止弁9及び連通孔22が、液体容器部3の筒体19にではなく気体容器部5の筒体15に設けられている。さらに、第3の逆止弁37が適用される貫通孔35が、気体容器部5の筒体15の底部のみでなく、気体容器部5の筒体15及び液体容器部3の筒体19の双方を貫通している。この例では、液体容器部3の筒体19を指で直接に押さえることができ、これにより、筒体19に前記した弾性変形を生じさせることができる。また、気体容器部5の筒体15は、弾性変形可能のものとし、あるいは弾性変形しにくい前記硬質プラスチックからなるものとすることができる。これによれば、筒体19に弾性変形を生じさせるとき、筒体15の変形及びこれに伴う筒体15内の前記劣化防止用気体の圧力増大を生じさせないようにすることができる。
【0060】
なお、図6に示すように、気体容器部5の筒体15は、液体容器部3の筒体19の高さ寸法より小さいものとすることができる。これにより、筒体15の頂部と筒体19の頂部との間に前記液体が流通可能のスペースを確保し、該スペースに連通する首17を筒体19の頂部の中央に配置することができる。
【0061】
ところで、前記劣化防止用気体は、容器1からの前記液体の取り出し毎に前記液体と共に液体容器部3内からその外部に抜け出る。したがって、気体容器部5の気体収容空間11の容積は、前記劣化防止用気体の抜け出し量を考慮して、液体容器部3内に収容された前記液体が使い果たされるまでに必要とされるに充分な量を貯留することが可能の大きさに設定する。また、同時に気体容器部5内における前記劣化防止用気体の圧力が低下することから、前記液体が使い果たされるまでに大気圧より大きい圧力が維持されるように予めその圧力を設定する。しかし、これに限らず、必要に応じて、第3の逆止弁37が適用された貫通孔35を通して、前記劣化防止用気体を例えばガスボンベ又は他の補充手段から補充可能としてもよい。この場合には、例えば、気体容器部5の筒体15の全部又は一部と、液体容器部3の筒体19の全部又は一部とを透明なものとする。これにより、液体容器部3の筒体19内の前記液体の現在量を目視可能とし、前記液体の所定量が消費されたことを確認して、前記劣化防止用気体の補充を行うものとすることができる。
【0062】
また、液体容器部3及び気体容器部5のそれぞれの筒体は、前記円筒形状のものとする例に代えて、多角形の横断面形状を有するものとし、あるいは他の任意の横断面形状を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る容器の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す容器に収容された液体を取り出すべく、これに押圧力を加えて容器の気体容器部と液体容器部とに弾性変形を生じさせている状態にある前記容器の斜視図であり、(b)は前記液体を取り出した後、前記気体容器部及び液体容器部が弾性変形前の元の状態に弾性的に復元した状態にある前記容器の斜視図である。
【図3】他の例に係る容器の斜視図である。
【図4】さらに他の例に係る容器の斜視図である。
【図5】さらに他の例に係る容器の斜視図である。
【図6】さらに他の例に係る容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 容器
3 液体容器部
5 気体容器部
6 容器本体
7 第1の逆止弁
9 第2の逆止弁
11 気体収容空間
13 液体取出口
15 気体容器部の筒体
17 液体容器部の首
19 液体容器部の筒体
23 キャップ
33 気体容器部の当接部分
35 貫通孔
37 第3の逆止弁
39 凹所
43 仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するための液体収容空間を規定する、前記液体の取出口が設けられた弾性変形可能の液体容器部及び前記液体の劣化を防止するために用いられる劣化防止用気体を収容するための気体収容空間を規定する気体容器部からなり、両容器部の一方又は双方に設けられた連通孔を介して前記液体収容空間と前記気体収容空間とが互いに連通する容器本体と、
前記液体取出口に適用された第1の逆止弁であって、前記液体容器部がその液体収容空間の容積が減少するように弾性変形をするとき、前記液体取出口を通しての前記液体収容空間からの液体の流出を許す第1の逆止弁と、
前記連通孔に適用された第2の逆止弁であって、前記液体容器部が前記弾性変形をした状態から弾性変形前の元の状態に弾性復帰するとき、前記連通孔を通しての前記気体収容空間から前記液体収容空間への前記劣化防止用気体の流入を許す第2の逆止弁とを含む
ことを特徴とする、容器。
【請求項2】
前記液体容器部は、その液体取出口を除いて、前記気体容器部の気体収容空間内に位置し、また前記気体容器部は弾性変形可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記気体容器部は前記液体容器部に接する当接部分を有する
ことを特徴とする、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記液体容器部は、その液体取出口を含む一部分を除いて、前記気体容器部の気体収容空間内に位置し、又は前記気体容器部に設けられかつその気体収容空間に取り囲まれた凹所内に位置する
ことを特徴する、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記液体容器部及び前記気体容器部は、これらの液体収容空間及び気体収容空間を仕切る共通の仕切壁を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記気体容器部は変形性に乏しい材料からなる
ことを特徴とする、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記気体容器部は、前記液体容器部の液体収容空間内に位置する
ことを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記液体収容空間に収容される液体は、化粧品、飲料又は調味料からなる
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記劣化防止用気体は窒素又はアルゴンを主成分とする気体からなる
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の容器。
【請求項10】
さらに、前記液体容器部の液体取出口を覆うためのキャップを含む
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の容器。
【請求項11】
さらに、前記容器本体が、前記気体容器部の気体収容空間内への前記劣化防止用気体の流入を許す第3の逆止弁が適用された孔を含む
ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166878(P2009−166878A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8085(P2008−8085)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(599068463)
【Fターム(参考)】