説明

容器

【課題】容器の操作部材と相手部材を連接するスプリングピンを抜止めする別部材、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加することなく、抜止め性能を強化する。
【解決手段】ハンドル4(操作部材)と肩部材2(相手部材)のピン穴2a、4aにスプリングピン5をピン長さ方向に挿入して両部材2、4を連接する部材連接構造にピン長さ方向の鏡面対称性をもたせ、ハンドル4と肩部材2のピン長さ方向の相対的変位範囲を両部材2、4の突き当りで制限し、ピン挿入開始口となるピン穴2aの出口周囲と、このピン穴2aの出口に向き合うピン穴4aを形成する壁部分4cとの間に、突き当り壁面4bから壁部分4cをピン挿入方向に凹ますことで間隙7をピン長さ方向に確保し、スプリングピン5に、間隙7内に位置し、かつピン穴2aの出口周囲に対して反ピン挿入方向に引っ掛かり可能な突出部5bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓋、蓋ロック機構の操作フックや操作レバー、ハンドル等の操作部材を取付先とする相手部材にスプリングピンで連接する部材連接構造を備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の連接構造のスプリングピンには、JIS規格品が採用されている。規格品のスプリングピンは、全長に亘って同一の外径をもつように形成されている。操作部材及び相手部材のうち、一方の部材には、スプリングピンの挿入の開始口となる第一のピン穴が形成され、他方の部材には、第一のピン穴に対向する第二のピン穴が形成されている。スプリングピンは、各部材のピン穴同士が連通する方向に挿入される。操作部材や相手部材は、操作荷重、衝突等の外力を受けてピン長さ方向に変位しようとすることがある。この変位でスプリングピンが抜けないように、操作部材が相手部材に対してピン長さ方向に変位し得る位置範囲を制限する必要がある。この相対的な位置制限は、両部材のピン長さ方向の突き当りで行っている。この制限構造から、操作部材の操作方向は、ピン長さ方向に交差する直線方向や、スプリングピンを中心軸とした回転方向とされる。いすれの操作方向を採用するにせよ、操作部材を動かすときに相手部材がスプリングピンの外径部を支持することになる(例えば、特許文献1)。
【0003】
上述の部材連接構造において、スプリングピンの抜止めは、専らスプリングピンの外径部と、圧入するピン穴の内径部との間の摩擦に頼っている。スプリングピンの抜止め性能を強化するのに利用できる従来の強化構造として、ピンの端部を受け止める抜止め部をピン穴の外側に設けた構造がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−8838号公報(特に図2、図10)
【特許文献2】実開平6−79438号公報(特に図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、両部材に対するスプリングピン挿入の開始口となる第一のピン穴を操作部材又は相手部材のいずれに形成する場合でも、特許文献2のような抜止め部は、第一のピン穴の形成壁から突出するように形成しなければならない。そうすると、スプリングピンをピン長さ方向一端から第一のピン穴に挿入するとき、抜止め部が邪魔になり、スプリングピンを圧入すべきピン穴内径部の中心軸に沿った方向に真直ぐ挿入することができない。これを避けるには、上記抜止め部が設けられた別部材を連接構造に追加する必要がある。また、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加すると、連接構造をピン長さ方向に眺めたときの容器外観を従来品から変更しなければならない。また、第一のピン穴の入口外側に抜止め構造の配置空間を要するので、連接構造がピン長さ方向に大型化したり、大型化を避けるために第一のピン穴の形成壁を凹ましたりすることになる。
【0006】
そこで、この発明の課題は、容器の操作部材と相手部材を連接するスプリングピンを抜止めする別部材、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加することなく、抜止め性能を強化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明は、操作部材と、この操作部材の取付先とする相手部材と、これら各部材のピン穴同士が連通する方向に挿入して両部材を連接するスプリングピンとからなる部材連接構造を備え、前記操作部材が前記相手部材に対してピン長さ方向に変位し得る位置範囲は、両部材のピン長さ方向の突き当りで制限され、前記操作部材が動くときに前記相手部材が前記スプリングピンの外径部を支持する容器において、前記両部材のうち、前記挿入の開始口となる第一の前記ピン穴の出口周囲と、前記第一のピン穴の出口に向き合う第二の前記ピン穴を形成する壁部分との間に、間隙がピン長さ方向に確保されており、前記スプリングピンに、前記間隙内に位置し、かつ前記第一のピン穴の出口周囲に対して反ピン挿入方向に引っ掛かり可能な突出部が形成されている構成を採用した。
【0008】
スプリングピンは、板材を巻いて製造されるので、板材を巻く前に突出部を形成することができる。突出部は、巻体であるスプリングピンの縮径を利用して第一のピン穴に押し通すように設けることができる。突出部を第一のピン穴に押し通すため、スプリングピンの縮径を利用するとしても、ピン外径側に突出させる高さに限界がある。スプリングピンが抜ける原因を探ると、スプリングピンの斜め挿入によりピン穴の内径部が削られたり、製造上の形状誤差により、スプリングピンがピン穴の中心軸に対して異常に斜めになった状態で固定されたり、操作部材を動かすときにスプリングピンが撓んだりすることにより、スプリングピンが圧入されたピン穴の内径部に対して斜め接触し、この外力がスプリングピンの反挿入方向に生じ、抜け出しの推進力となることが分かった。この発明は、その外力を受け止める程度の突出部であれば、スプリングピンの板材を押して形成でき、第一のピン穴に押し通すことができる点に着目したものである。
すなわち、押し通した突出部は、挿入の開始口となる第一の前記ピン穴の出口周囲と、前記第一のピン穴の出口に向き合う第二の前記ピン穴を形成する壁部分との間に位置し、ピン挿入の開始口となる第一のピン穴の出口周囲に反ピン挿入方向に引っ掛かるので、スプリングピンの抜止め性能を強化することができる。
突出部は、第一のピン穴の出口周囲と第二のピン穴を形成する壁部分との間に確保された隙間内に位置するため、前記の位置範囲で各部材が変位したとしても、両部材にピン長さ方向に挟まれて、第一のピン穴へ反挿入方向に押し込まれ、突出部の引っ掛かりが無力化される心配はない。また、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加することもない。したがって、この発明の構成によれば、スプリングピンに形成された突出部と第一のピン穴の出口周囲との引っ掛かりにより、別部材、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加することなく、抜止め性能を強化することができる。
【0009】
具体的には、前記スプリングピンのピン長さ方向の両端部は、前記第一のピン穴に対する圧入部分になっており、前記間隙は、前記壁部分を前記突き当りを生じる壁面からピン挿入方向に凹むように形成することで確保されていることが好ましい。
【0010】
スプリングピンを正規の挿入方向に初期から案内して斜め挿入を防止するため、スプリングピンのピン長さ方向の両端部は、前記第一のピン穴に対する圧入部分にすることが好ましい。第二のピン穴側である前記の壁部分を前記突き当りを生じる壁面からピン挿入方向に凹むように形成して前記の間隙を確保すれば、第一のピン穴がピン長さ方向に短くならず、前記の案内性が犠牲にならない。
【0011】
より具体的には、前記両部材のうち、一方の部材は、前記第一のピン穴の出口を囲むように形成された第一の突き当り壁面を有し、他方の部材は、前記第一の突き当り壁面とピン長さ方向に対面する第二の突き当り壁面を有し、両突き当り壁面がピン長さ方向に離間する最大間隔は、前記突出部のピン長さ方向幅よりも狭くすることができる。
【0012】
前記間隙を前記第二のピン穴を形成する壁部分を凹まして確保すれば、操作部材が相手部材に対してピン長さ方向に変位し得る位置範囲を実質的に無くなるまで、両突き当り壁面を接近させたり、摺接させたりすることが可能である。いずれにせよ、第一のピン穴の出口を囲むように形成された第一の突き当り壁面と、第一の突き当り壁面とピン長さ方向に対面する第二の突き当り壁面とがピン長さ方向に離間する最大間隔は、突出部のピン長さ方向幅よりも狭くすることになり、これにより、突出部を両突き当り壁面で外観から隠すことができる。
【0013】
前記両部材のうち、一方の部材に、ピン長さ方向に対向する2つのピン穴が形成され、他方の部材に、前記2つのピン穴と対向するように貫通したピン穴が形成されており、前記2つのピン穴の一方が前記第一のピン穴になり、前記貫通したピン穴が前記第二のピン穴になり、前記2つのピン穴のうち他方のピン穴を形成する壁部分と、前記貫通したピン穴を形成する壁部分との間にも、第二の間隙がピン長さ方向に確保されており、前記スプリングピンに、前記第二の間隙内に位置し、かつ前記貫通したピン穴を形成する壁部分に対して反ピン挿入方向に引っ掛かり可能な第二の突出部が形成されていることも好ましい。
【0014】
貫通したピン穴のピン長さ方向両側に間隙、及び第二の間隙を確保し、これらに対応する突出部、第二の突出部がスプリングピンに形成されているので、スプリングピンの抜止めを二重化することができ、また、二重化しても別部材、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加することはない。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、この発明は、上記構成の採用により、容器の操作部材と相手部材を連接するスプリングピンを抜止めする別部材、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴の外側に追加することなく、抜止め性能を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、この発明の第一実施形態に係る部材連接構造を図2のI−I線で示した要部拡大断面図、(b)は、第一実施形態に係るスプリングピンの全体斜視図、(c)は、前記(b)のスプリングピンの正面図
【図2】第一実施形態に係る容器のピン長さ方向からの外観を示す側面図
【図3】(a)は、この発明の第二実施形態に係る容器の蓋部材と飲み口部材の全体を示す斜視図、(b)は、第二実施形態に係る容器の蓋部材と飲み口部材の縦断側面図
【図4】第三実施形態に係る容器の蓋部材と外カバー部材の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の第一実施形態を図1、図2に示した一例に基いて説明する。図示の第一実施形態に係る容器は、飲料を収容する容器本体1と、容器本体1に取り付ける肩部材2と、容器本体1に取り付ける底部材3と、容器本体1に取り付けるハンドル4とを備えた液体容器になっている。
【0018】
容器本体1は、飲料携帯用に構成されている。ハンドル4は、容器本体1を取り扱う操作のための操作部材となっている。ハンドル4の取付先とする相手部材は、肩部材2及び底部材3のそれぞれとなっている。スプリングピン5をハンドル4と肩部材2のピン穴同士が連通する方向に挿入してハンドル4と肩部材2を連接している。スプリングピン6をハンドル4と底部材3のピン穴同士が連通する方向に挿入してハンドル4と底部材3を連接している。すなわち、第一実施形態に係る容器は、操作部材としてのハンドル4と、ハンドル4の取付先とする肩部材2と、スプリングピン5とからなる部材連接構造と、ハンドル4と底部材3とスプリングピン6とからなる部材連接構造とを備えている。肩部材2、底部材3及びハンドル4の各ピン穴は、それぞれ射出成形で形成されている。
【0019】
両部材2、4のうち、一方の部材2に、ピン長さ方向に対向する2つのピン穴2a、2aが形成され、他方の部材4に、2つのピン穴2a、2aと対向するように貫通したピン穴4aが形成されている。ピン穴4aは、ハンドル4を特許文献1、2に開示されているように、未使用時に真直ぐにでき、使用時に中程を引っ張る操作荷重を与えて弓状にできる操作部材とするため、長穴になっている。
【0020】
ピン長さ方向(図1中に上下方向の一点鎖線で示した)は、スプリングピン5を全体的に縮径させる圧入固定を得るためのピン穴の内径部の中心軸に沿った方向である。図示例では、ピン穴4aが長穴なので、スプリングピン5を全体的に縮径させるのに利用できず、ピン穴2aの内径部の中心軸方向で定まる。
【0021】
各ピン穴2aは、ピン長さ方向に貫通穴とされている。これは、図示例のようにスプリングピン5に係る部材連接構造が、ピン長さ方向に直交する平面(図1中に左右方向の一点鎖線で示した)に関して鏡面対称形に設けるためである。この鏡面対称性から、スプリングピン5の挿入をピン長さ方向の上下いずれの方向からでも開始することができ、ひいては、ピン打ち込み機へのワークローディング、作業者の利き腕の相違、ピン穴2a、2aの金型成形の容易化等を図ることができる。
【0022】
両ピン穴2a、2aは、いずれもスプリングピン5を上述のように挿入する開始口となり得るので、以下、図中上方のピン穴2aを開始口となる第一のピン穴2aに想定して説明する。この想定下では、ピン挿入方向が、ピン長さ方向に沿って図中上から下に向う方向となり、この真逆の方向が、反ピン挿入方向となる。また、「入口」及び「出口」の概念は、それぞれ挿入するスプリングピン5にとってピン穴2a、4aの入口、出口になる方の穴口をいう。いずれのピン穴2aを開始口に選択しても、ピン穴4aが第一のピン穴2aに向き合う第二のピン穴4aになる。なお、適宜に片方のピン穴2aを非貫通穴に変更し、ピン挿入方向を一方向に定めることも可能である。
【0023】
一方の部材2は、第一のピン穴2aの出口を囲むように形成された第一の突き当り壁面2bを有する。他方の部材4は、第一の突き当り壁面2bとピン長さ方向に対面する第二の突き当り壁面4bを有する。ハンドル4が肩部材2に対してピン挿入方向に変位し得る範囲は、両部材2、4の図中上側の両突き当り壁面2b、4b同士のピン長さ方向の突き当りで制限される。したがって、上述の鏡面対称性から、ハンドル4が肩部材2に対して反ピン挿入方向に変位し得る範囲も同様である。このようにハンドル4が肩部材2に対してピン長さ方向に変位し得る位置範囲は、両部材2、4のピン長さ方向の突き当りで制限される。その許容変位量は、図示から明らかなように、操作部材であるハンドル4のピン長さ方向のガタつきを防止するため、可能な限り小さくすることが好ましい。
【0024】
両突き当り壁面2b、4bは、それぞれピン長さ方向に直交する平面に沿うように形成されている。ハンドル4に操作荷重が与えられて両突き当り壁面2b、4bが突き当たったとき、スプリングピン5の一端側に負荷が偏ることを防ぎ、ハンドル4を弓状にしたり、真直ぐにしたりする際に両突き当り壁面2b、4bを摺接可能とするためである。
【0025】
両部材2、4のうち、第一のピン穴2aの出口周囲と、第一のピン穴2aの出口に向き合う第二のピン穴4aを形成する壁部分4cとの間に、間隙7がピン長さ方向に確保されている。間隙7は、壁部分4cを前記突き当りを生じる第二の突き当り壁面4bからピン挿入方向に凹むように形成することで確保されている。したがって、第一のピン穴2aの内径部は、間隙7を確保するためにピン長さ方向に短くする必要がない。図示例では、壁部分4cは、ピン穴4aの内周全周に亘って第二の突き当り壁面4bから断面テーパ状に形成されている。第一のピン穴2aの出口周囲は、ピン長さ方向に直交する第一の突き当り壁面2bから反ピン挿入方向に凹んでいない。第一の突き当り壁面2bと第一のピン穴2aの出口周囲とを同一平面上に形成することにより、これらの強度確保と形状の単純化を図っている。例えば、第一のピン穴2aの内径部を長くするため、ピン穴2aの出口周囲を第一の突き当り壁面からピン挿入方向に突出させることもできる。
【0026】
スプリングピン5のピン長さ方向の両端部5a、5aは、第一のピン穴2aに対する圧入部分になっている。ピン穴2aの内径部は、円筒面に沿う。端部5aの先端は、ピン穴2aの内径部の削れを防止するため、面取りされている。
【0027】
さらに、スプリングピン5には、前記間隙7内に位置する突出部5b、5bが形成されている。突出部5bの最大外径を第一のピン穴2aの出口内径よりも大きく設定することにより、仮にスプリングピン5が反ピン挿入方向に動いたとしても、突出部5bが第一のピン穴2aの出口周囲に対して反ピン挿入方向に引っ掛かるようになっている。図示例では、突出部5bが、ピン穴2aの出口周囲に反ピン挿入方向に接した時点の位置にあり、この時点で、壁部分4cからピン長さ方向に離間している。この図示から明らかなように、両突き当り壁面2b、4bがピン長さ方向に突き当たる状態でも、突出部5bが壁部分4cと、ピン穴2aの出口周囲とに挟まれることはない。このため、両部材2、4が前記の制限内でどのようにピン長さ方向に変位しようとも、突出部5bがピン穴2aに反ピン挿入方向に押し込まれる心配はない。
【0028】
両突き当り壁面2b、4bがピン長さ方向に離間する最大間隔は、図示から明らかなように、突出部5bのピン長さ方向幅よりも十分に狭い。したがって、両突き当り壁面2b、4bで取り囲まれた突出部5bは、両突き当り壁面2b、4bの間に生じ得る僅かなピン長さ方向の隙間から殆ど見ることができない。
【0029】
突出部5bは、スプリングピン5の周方向全域に亘って円弧状に突出している。これは、突出部5bを第一のピン穴2aに円滑に押し込めるようにすると共に、この押し込みの間に、スプリングピン5が斜めになることを防止するためである。突出部は、間隙7内に位置する限り、スプリングピン5の周方向に部分的に設けることもできる。また、間隙7内に位置する限り、突出部をピン長さ方向に複数箇所に設けることもできる。また、突出部は、例えば、反ピン挿入方向に外径の広がる楔状にすることもできる。分解性を考慮してスプリングピン5を意図的に抜き易くすると共に、突出部の最大外径部における耐久性を得るため、図示のような円弧状の突出部5bを採用することが好ましい。
【0030】
両突出部5b、5b間に亘る中間部5cは、両端部5a、5aと同一の外径になっている。第二のピン穴4aを形成する壁部分4cは、この内周全域に亘って端部5aの自然状態の外径以上の内径になっている。図1中では、ピン穴2a、4aに挿入を終えたスプリングピン5の両端部5a、5aのみを自然状態の外径で描き、ピン穴2aの内径部も実線で描くことにより、ピン穴2a、4aとスプリングピン5の嵌め合い関係を示している。両端部5a、5aが両ピン穴2a、2aに圧入され、かつ両突出部5b、5bがそれぞれ間隙7、7内に位置したスプリングピン5の固定状態では、両端部5a、5aが両ピン穴2a、2aの内径部に圧入されているため、スプリングピン5が全体的に縮径する。図1中では、突出部5b、5b、中間部5cをその縮径した状態で描いている。図示のように、ピン穴2aと、ピン穴4aとの間には、同一の外径の両端部5a、5a及び中間部5cに対する締め代の差があるため、スプリングピン5は、ピン穴2aに対して圧入固定、ピン穴4aに対して自由にピン長さ方向に変位可能となっている。したがって、ハンドル4が動くときに肩部材2がスプリングピン5の外径部を両端部5a、5aにおいて支持することになる。
【0031】
なお、両部材のピン穴にスプリングピンを圧入すると、両部材の片側がもう片側に対して反ピン挿入方向に動いたとき、スプリングピンも抜け方向に押されるので、ピン抜けの原因になり得る。両部材をピン挿入方向に直接に突き合わせた取付形態とし、両部材の片側がもう片側に対して反ピン挿入方向に動かないようにすることも考えられるが、寸法精度、及び経時変化からガタつきが生じるのは避けられない。このため、両部材のピン穴にスプリングピンを圧入すると、部材間の僅かな相対変位が繰り返されることで、徐々にピン抜けする可能性がある。したがって、両部材のうち、一方の部材のピン穴にスプリングピンを圧入固定し、他方の部材のピン穴に対してスプリングピンが挿入方向及びピン抜き方向に自由に動き得るようにすることが好ましい。
【0032】
図示例のスプリングピン5は、従来の規格品の外径部が円筒面に沿う形態のものを踏襲し、その板材を巻く前の工程で突出部5b、5bを押し出すだけで形成することができる。規格品を踏襲したため、両端部5a、5a、中間部5cは、それぞれ円筒面に沿う外径部を有している。なお、スプリングピンには、他の形態の従来の規格品を踏襲した形態のものを採用することもでき、例えば、直線状のスリットを形成したものを採用することもできる。
【0033】
上記のような第一実施形態によれば、スプリングピン5がハンドル4の取り扱い時に撓んだり、スプリングピン5が斜めに圧入されたりすることにより、圧入固定箇所である端部5aの外径部とピン穴2aの内径部の異常な傾き接触が生じ、これに伴って反ピン挿入方向の外力がスプリングピン5に与えられる。仮に、この外力でスプリングピン5がピン穴2aの内径部に対して図中上方の反ピン挿入方向に動いたとしても、図中上方の突出部5bがピン穴2aの出口周囲に引っ掛かるので、抜止め性能を強化することができる。前記外力以外の何らかの理由で図中上方の突出部5bが第一のピン穴2aの出口から反ピン挿入方向に押し込まれたとしても、同突出部5bがあることでピン穴2aを通過し難くなる。突出部5bは、スプリングピン5に形成され、上述の隙間7内に位置するため、スプリングピン5を抜止めする別部材、抜止め構造をピン穴2aの外側に追加することなく、抜止め性能を強化することができる。
【0034】
また、第一実施形態に係る第二のピン穴4aを形成する壁部分4cは、この内周全域に亘って間隙7内に位置する突出部5bの最大外径よりも小さい内径になっている。このため、仮に、図中上方の突出部5bが第一のピン穴2aの出口から反ピン挿入方向に押し込まれたとしても、図中上方の両突き当り壁面2b、4bがピン長さ方向に突き当った後、図中下方の突出部5bは、第二のピン穴4aの出口側である図中下方の壁部分4cに反ピン挿入方向に引っ掛かる。
【0035】
上述のように、第一実施形態は、2つのピン穴2a、2aの一方が第一のピン穴2aになり、貫通したピン穴4aが第二のピン穴4aになり、他方のピン穴2aを形成する壁部分である入口周囲と、ピン穴4aを形成する図中下方の壁部分4cとの間にも、第二の間隙7がピン長さ方向に確保され、スプリングピン5に、第二の間隙7内に位置し、かつピン穴4aの図中下方の壁部分4cに対して反ピン挿入方向に引っ掛かり可能な第二の突出部5bが形成されているので、スプリングピン5の抜止めを二重化することができ、また、二重化しても別部材、抜止め構造をピン挿入の開始口となるピン穴2a、2aの外側に追加することはない。
【0036】
なお、図示省略するが、スプリングピン6に係る部材連接構造においても、スプリングピン5に係る部材連接構造と同様に抜止め性能を強化することができる。2つの突出部を形成しない場合、両部材へのスプリングピンの圧入固定強度が十分に得られる限り、第一のピン穴と第二のピン穴を1つずつにすることもでき、この場合、第二のピン穴を貫通させる必要はない。
【0037】
また、スプリングピンを操作部材に圧入固定することもできる。その一例として、第二実施形態を図3に基いて説明する。なお、以下では、第一実施形態に係る部材連接構造と同様にスプリングピンの突出部、ピン穴等を形成しているので、第一実施形態との相違点を述べるに留める。
【0038】
図示のように、第二実施形態に係る容器は、飲料を収容する容器本体11と、容器本体11の側周に取り付ける飲み口部材12と、飲み口部材12に取り付ける蓋部材13とを有する。蓋部材13は、スプリングピン14で飲み口部材12に取り付けられている。スプリングピン14は、蓋部材13を開閉するヒンジ軸となっている。蓋部材13は、図3(b)中の矢線方向に操作可能な操作部材になっている。飲み口部材12の壁部12a、12a、蓋部材13の軸受部13a、13aに、前記の突き当り壁面、ピン穴が形成され、壁部12aと軸受部13a間に確保された間隙内に突出部14aが位置している。スプリングピン14は、操作部材である蓋部材13の軸受部13aの内径部に圧入固定され、相手部材である飲み口部材12に対して自由になっている。
【0039】
また、操作レバー等の連接にもこの発明を適用することができる。その一例として、第三実施形態を図4に基いて説明する。図示のように、第三実施形態に係る容器は、飲料を収容する容器本体の側周に取り付ける栓セットの外カバー部材21と、外カバー部材21に取り付ける蓋部材22と、蓋部材22を閉じた状態に係止する操作部材23とを有する。操作部材23は、スプリングピン24で外カバー部材21に取り付けられている。スプリングピン24は、相手部材である外カバー部材21に対して操作部材23の係止・係止解除を揺動操作で行う際の揺動軸になっている。外カバー部材21の壁部21a、操作部材23の壁部23aに、前記の突き当り壁面、ピン穴が形成され、壁部21aと23a間に確保された間隙内に突出部24aが位置している。スプリングピン24は、操作部材である操作部材23側に圧入固定されている。
【0040】
上記各実施形態は携帯飲料容器への適用例であるが、この発明の技術的範囲は、上述の態様に限定されず、特許請求の範囲の記載に基く技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。例えば、この発明は、電気ポットの蓋の取り付けに適用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1、11 容器本体
2 肩部材
2a、4a ピン穴
2b、4b 突き当り壁面
3 底部材
4 ハンドル
4c 壁部分
5、6、14、24 スプリングピン
5a 端部
5b、14a、24a 突出部
5c 中間部
7 間隙
12 飲み口部材
12a、21a、23a 壁部
13、22 蓋部材
13a 軸受部
21 外カバー部材
23 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、この操作部材の取付先とする相手部材と、これら各部材のピン穴同士が連通する方向に挿入して両部材を連接するスプリングピンとからなる部材連接構造を備え、
前記操作部材が前記相手部材に対してピン長さ方向に変位し得る位置範囲は、両部材のピン長さ方向の突き当りで制限され、前記操作部材が動くときに前記相手部材が前記スプリングピンの外径部を支持する容器において、
前記両部材のうち、前記挿入の開始口となる第一の前記ピン穴の出口周囲と、前記第一のピン穴の出口に向き合う第二の前記ピン穴を形成する壁部分との間に、間隙がピン長さ方向に確保されており、
前記スプリングピンに、前記間隙内に位置し、かつ前記第一のピン穴の出口周囲に対して反ピン挿入方向に引っ掛かり可能な突出部が形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記スプリングピンのピン長さ方向の両端部は、前記第一のピン穴に対する圧入部分になっており、
前記間隙は、前記壁部分を前記突き当りを生じる壁面からピン挿入方向に凹むように形成することで確保されている請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記両部材のうち、一方の部材は、前記第一のピン穴の出口を囲むように形成された第一の突き当り壁面を有し、他方の部材は、前記第一の突き当り壁面とピン長さ方向に対面する第二の突き当り壁面を有し、
両突き当り壁面がピン長さ方向に離間する最大間隔は、前記突出部のピン長さ方向幅よりも狭い請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記両部材のうち、一方の部材に、ピン長さ方向に対向する2つのピン穴が形成され、他方の部材に、前記2つのピン穴と対向するように貫通したピン穴が形成されており、
前記2つのピン穴の一方が前記第一のピン穴になり、前記貫通したピン穴が前記第二のピン穴になり、
前記2つのピン穴のうち他方のピン穴を形成する壁部分と、前記貫通したピン穴を形成する壁部分との間にも、第二の間隙がピン長さ方向に確保されており、
前記スプリングピンに、前記第二の間隙内に位置し、かつ前記貫通したピン穴を形成する壁部分に対して反ピン挿入方向に引っ掛かり可能な第二の突出部が形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−195159(P2011−195159A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62472(P2010−62472)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】