説明

容量可変回路および通信装置

【課題】 印加電圧による特性の制御が容易な容量可変回路および通信装置を提供すること。
【解決手段】 固定容量コンデンサCd1〜Cd5と印加電圧により比誘電率が変化する薄膜誘電体層を用いた可変容量コンデンサCt1〜Ct5とが直列に接続され、これら固定容量コンデンサCd1〜Cd5と可変容量コンデンサCt1〜Ct5との間に印加電圧が供給されるコンデンサ対A〜Eが複数接続されており、複数のコンデンサ対A〜Eの可変容量コンデンサCt1〜Ct5の印加電圧に対する比誘電率の変化が略同一であり、複数のコンデンサ対A〜Eへの印加電圧が共通に供給されている容量可変回路である。各コンデンサ対A〜Eの可変容量コンデンサCt1〜Ct5に供給する印加電圧を共通にできるため、電圧制御が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波帯およびミリ波帯等の通信機器や電子部品等に使用され、印加電圧により比誘電率が変化する誘電体層を有して容量を変化させることができる可変容量コンデンサを用い、その容量が変化することにより回路特性を可変とすることができる電圧制御型の容量可変回路に関するものであり、特に、電圧制御が容易な容量可変回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変容量コンデンサを用いて構成され、そのコンデンサの容量を変化させることによって回路特性を変化させて用いられる容量可変回路として、容量可変フィルタや、容量可変整合回路,容量可変発振器,容量可変フェーズシフタ等が知られている。
【0003】
図2は、従来の容量可変回路の一例として、容量可変フィルタの例を示す等価回路図である。このような可変容量フィルタは、例えば特許文献1等に提案されている。図2は、2つの並列LC共振回路を有するフィルタを示している。
【0004】
図2において、D1,D2はLC共振回路である。この複数のLC共振回路D1,D2としては、1/4波長の先端短絡型の誘電体共振器等が例示できる。このLC共振回路D1,D2に対して、可変容量ダイオードX1,X2がそれぞれ並列に接続されている。また、可変容量ダイオードX1,X2には、それぞれ制御電圧を供給するためのRF阻止用インダクタL1,L2と、直流制限コンデンサ(固定容量素子)C3,C4とが接続されていることにより、可変容量ダイオードX1,X2には制御電圧が印加されることになる。また、直流制限容量コンデンサC3,C4は、通常、高周波信号では可変容量ダイオードX1,X2のインピーダンスに影響を与えないように設定されている。また、LC並列共振回路D1,D2は、結合コンデンサC6を介して結合されており、さらに外部回路を結合するための入出力容量成分C5,C7を接続している。これにより、容量可変フィルタを構成している。なお、Iは入力信号端子、Oは出力信号端子、Vはバイアス端子である。
【0005】
また、可変容量コンデンサとしては、チタン酸ストロンチウムやチタン酸ストロンチウムバリウム等のペロブスカイト構造の強誘電体酸化物薄膜を誘電体層に用いて、これを挟持する上部電極層と下部電極層との間に所定の制御電圧を印加することによって、誘電体層の比誘電率を変化させて容量を変化させる構造の可変容量コンデンサが知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特許第3238167号公報
【特許文献2】特開平11−260667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の容量可変フィルタにおいて実際に所望の回路特性を得るためには、複数の異なる可変容量コンデンサの容量変化率が必要になる。例えば、図3に等価回路図で示す対称型の電圧制御容量可変フィルタの例では、主に通過帯域を可変容量コンデンサCt2,Ct4にて、阻止域を可変容量コンデンサCt3にて、入出力インピーダンスを可変容量コンデンサCt1,Ct5にてそれぞれ容量を変化させて調整することになる。なお、図3において、D1,D2はM結合(磁界結合)したλ/4先端短絡型の伝送線路、Lb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5はRF阻止インダクタ、Cdは直流制限容量素子、Iは入力信号端子、Oは出力信号端子、V1,V2はバイアス端子である。
【0007】
ここで、一定の印加電圧に対する容量変化率をΔC/C=|C−C’|/C(C:初期容量値,C’:印加電圧時容量値,C−C’:容量の変化量)とすると、図3に示す例では、例えば、K−PCS帯(1750MHz帯)とUS−PCS帯(1850MHz)との2つの通信システムに対応するためには、可変容量コンデンサCt1〜Ct5の容量を調整し、所望のフィルタ特性を得ることになる。Ct2,Ct4はそれぞれD1,D2と共に共振回路を形成し、主に通過帯域を変化させ、Ct3はD1およびD2との結合と共に阻止域を変化させ、Ct1,Ct5は主に入出力インピーダンスを変化させるため、可変容量コンデンサCt1〜Ct5それぞれの容量変化率はΔCt2/Ct2(=ΔCt4/Ct4),ΔCt3/Ct3,ΔCt1/Ct1(=ΔCt5/Ct5)と異なるものとなる。
【0008】
つまり、容量可変フィルタ等の容量可変回路においては、容量変化率ΔC/Cが等しい可変容量コンデンサを用いる場合には、異なる容量変化率が必要な容量可変回路においては、一定の印加電圧値では、所望の回路特性を得ることができない。そのため、制御電圧値を調整することで異なる容量変化率に調整する必要があるので、それぞれの可変容量コンデンサに印加する所望の制御電圧値が異なるものとなるという問題点があった。また、そのように可変容量コンデンサに印加する制御電圧が異なる場合には、電圧制御端子が多数となるという問題点があった。さらに、印加する電圧制御も複数必要なため、それらの制御も複雑になるという問題点があった。
【0009】
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、複数の可変容量コンデンサに印加する制御電圧を共通化でき、電圧制御端子も少なくすることができる、電圧制御が容易な容量可変回路を提供することにある。また、制御電圧を共通化できる容量可変回路を用いることで、電圧制御が容易な通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の容量可変回路は、固定容量コンデンサと印加電圧により比誘電率が変化する薄膜誘電体層を用いた可変容量コンデンサとが直列に接続され、これら固定容量コンデンサと可変容量コンデンサとの間に前記印加電圧が供給されるコンデンサ対が複数接続されており、前記複数のコンデンサ対の前記可変容量コンデンサの前記印加電圧に対する前記比誘電率の変化が略同一であり、前記複数のコンデンサ対への前記印加電圧が共通に供給されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の容量可変回路は、上記構成において、複数の前記コンデンサ対の一部において、前記固定容量コンデンサに代えて前記可変容量コンデンサが用いられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の通信装置は、上記各構成のいずれかの本発明の容量可変回路を用いたフィルタ回路および整合回路の少なくとも一方を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の容量可変回路によれば、固定容量コンデンサと印加電圧により比誘電率が変化する薄膜誘電体層を用いた可変容量コンデンサとが直列に接続されたコンデンサ対であって、これら固定容量コンデンサと可変容量コンデンサとの間に前記印加電圧が供給されるコンデンサ対が複数接続されており、前記複数のコンデンサ対の前記可変容量コンデンサの前記印加電圧に対する前記比誘電率の変化が略同一であり、前記複数のコンデンサ対への前記印加電圧が共通に供給されることにより、複数のコンデンサ対の可変容量コンデンサに印加する印加電圧を同一にすることができるため、複数のコンデンサ対の可変容量コンデンサに印加電圧を印加するための電圧制御端子を共通にすることができ、単純な回路構成にすることができる。また、複数のコンデンサ対の可変容量コンデンサに供給する印加電圧の電圧制御を共通にできるため、電圧制御も容易となり、さらに、電圧制御端子も少なくすることができる。
【0014】
また、本発明の容量可変回路によれば、複数のコンデンサ対に印加電圧に対する前記比誘電率の変化が略同一の可変容量コンデンサを用いることから、誘電体材料および薄膜誘電体層の厚み等を共通にできるため、可変容量コンデンサの設計・製造においてもその変更に対応するのに容量形成部(電極面積)の変更だけでよく、設計・製造が容易となる。
【0015】
また、本発明の容量可変回路によれば、複数の前記コンデンサ対の一部において、前記固定容量コンデンサに代えて前記可変容量コンデンサを用いるときには、前記コンデンサ対の合成容量の容量変化率は、可変容量コンデンサの容量変化率と等しくなるので、前記可変容量コンデンサの容量変化率を最大限に利用することができる。
【0016】
さらに、本発明の通信装置は、上述の特長を有する本発明の容量可変回路を用いたフィルタ回路および整合回路の少なくとも一方を有していることから、それらフィルタ回路および整合回路に対する特性を変化させるための電圧制御が容易な通信装置とすることができる。
【0017】
以上により、本発明によれば、電圧制御により特性を変化させることが容易な容量可変回路および通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の容量可変回路について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の容量可変回路の実施の形態の一例を示すものであり、容量変化率が等しい5つの可変容量コンデンサを用いた容量可変フィルタの等価回路図である。
【0020】
図1に示す等価回路図において、符号Ct1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5はいずれも容量変化率Y(=ΔC/C)が等しい可変容量コンデンサであり、D1,D2はM結合したλ/4先端短絡型の伝送線路、Lb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5はRF阻止インダクタ、Cd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5は固定容量コンデンサ、Iは入力信号端子、Oは出力信号端子、Vは印加電圧を供給するためのバイアス端子である。
【0021】
そして、可変容量コンデンサCt1と固定容量コンデンサCd1とが直列に接続されたコンデンサ対をA、可変容量コンデンサCt2と固定容量コンデンサCd2とが直列に接続されたコンデンサ対をB、可変容量コンデンサCt3と固定容量コンデンサCd3とが直列に接続されたコンデンサ対をC、可変容量コンデンサCt4と固定容量コンデンサCd4とが直列に接続されたコンデンサ対をD、可変容量コンデンサCt5と固定容量コンデンサCd4とが直列に接続されたコンデンサ対をEとしている。そして、これらが図1に示すように接続されて、容量可変フィルタを構成している。
【0022】
このような構成では、可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5と、固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5とが直列に接続されたコンデンサ対A,B,C,D,Eは、それぞれ合成容量(合成容量可変コンデンサ)A,B,C,D,Eとみなすことができる。
【0023】
これら合成可変容量コンデンサA,B,C,D,Eの容量を、バイアス端子VからRF阻止インダクタLb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5を介して可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5と固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5との間に供給される印加電圧により変化させることで、複数の所望のフィルタ特性に変化させて特性を切り替えることができ、これによって容量可変フィルタとして動作する。
【0024】
例えば、所望1のフィルタ特性を得る場合に必要な合成可変容量コンデンサA,B,C,D,Eの初期合成容量値はそれぞれA,B,C,D,Eとなり、所望2のフィルタ特性を得るための合成可変容量コンデンサA,B,C,D,Eの合成容量値はそれぞれA’,B’,C’,D’,E’となり、このときの容量変化率はそれぞれX(=|A−A’|/Aであり、以下同様。),X,X,X,Xとなる。
【0025】
一方、合成容量可変コンデンサAの初期合成容量値Aは、A=Ct1・Cd1/(Ct1+Cd1)となり、印加電圧を供給して変化した後の合成容量値A’は、A’=(1−Y)・Ct・Cd/((1−Y)Ct+Cd)となる。ここで、固定容量コンデンサと可変容量コンデンサとの容量値の比をγとし、γ=Cd1(固定容量コンデンサ)/Ct1(可変容量コンデンサ)とおくと、それぞれ、A=Cd1/(1+γ)、A’=(1−Y)・Cd/(1−Y+γ)となる。ここで、合成可変容量コンデンサの容量変化率X=|A−A’|/Aであるから、それぞれ代入すると、X=γ・Y/(1+γ−Y)となる。
【0026】
同様に、合成容量可変コンデンサBの容量変化率XはX=γ・Y/(1+γ−Y)となり、合成容量可変コンデンサCの容量変化率XはX=γ・Y/(1+γ−Y)となり、合成容量可変コンデンサDの容量変化率XはX=γ・Y/(1+γ−Y)となり、合成容量可変コンデンサEの容量変化率XはX=γ・Y/(1+γ−Y)となる。
【0027】
つまり、容量変化率Yが等しい可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5を用い、固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5の容量値と可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の初期容量値との比をγ(γ,γ,γ,γ,γ)とすることで、複数の容量変化率X(X,X,X,X,X)を得ることができる。
【0028】
また、前述の式より固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5と可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の初期容量値との比γと合成可変容量コンデンサA,B,C,D,Eの容量変化率との関係は、γ=X(1−Y)/(Y−X),γ=X(1−Y)/(Y−X),γ=X(1−Y)/(Y−X),γ=X(1−Y)/(Y−X),γ=X(1−Y)/(Y−X)となるから、固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5の容量値と可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の初期容量値との比γ(γ,γ,γ,γ,γ)を、固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5および可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の自己共振周波数やQ値等の特性や設計・作製の容易さ等を考慮して選択することで、複数の合成容量変化率X(X,X,X,X,X)を得ることができることになる。
【0029】
また、容量変化率Yが等しい可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5を用いるため、制御電圧としての印加電圧を共通化でき、印加電圧を供給するための電圧制御端子も少なく、電圧制御が容易な容量可変回路である容量可変フィルタとすることができる。
【0030】
また、印加電圧に対する比誘電率の変化が略同一の可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5を用いることができるため、可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の設計・製造においても誘電体材料や薄膜誘電体層の厚み等を共通にできるため、設計・製造の変更への対応は容量形成部(電極面積)の変更だけでよくなり、設計・製造が容易となる。
【0031】
また、可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の初期容量値も同一になるように、固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5の容量値と可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の初期容量値との比γを選択することで、初期容量値および容量変化率が等しい可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5を用いて複数の合成容量変化率Xを得ることができるため、可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の設計・製造がさらに容易となる。
【0032】
さらに、コンデンサ対A,B,C,D,Eの一部において、固定容量コンデンサCd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5に代えて可変容量コンデンサを用いることで、そのコンデンサ対における可変容量コンデンサの容量変化率Yと合成容量変化率Xとが等しくなるので、可変容量コンデンサCt1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5の容量変化率Yを最大限に利用できるものとなる。
【0033】
さらに、本発明の通信装置は、上述の特長を有する本発明の容量可変回路を用いたフィルタ回路および整合回路の少なくとも一方を有していることから、それらフィルタ回路および整合回路に対する特性を変化させるための電圧制御が容易な通信装置とすることができる。
【0034】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、複数の回路特性の切り替えに必要な容量変化率が同じで、容量の絶対値が逆で変化させるための印加電圧が異なる場合に、印加電圧値が同じ電圧制御端子同士を共通にしても構わない。
【0035】
また、目的に応じて、複数のコンデンサ対とインダクタや伝送線路とともに、例えばLCローパス型,LCハイパス型,π型,T型等のような回路構成として、通信装置のアンテナやパワーアンプ等の可変整合回路に用いても構わない。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の容量可変回路の実施例について説明する。実施例として、図1に示す容量可変フィルタを例にとり説明する。
【0037】
シミュレーションを用いてK−PCS帯(1750MHz帯)とUS−PCS帯(1850MHz)に対応した挿入損失および帯域外減衰量等のフィルタ特性を満足する回路定数を求めたところ、K−PCS帯(1750MHz帯)に対応したフィルタ特性を得るには、合成容量値はそれぞれA=E=0.52pF,B=D=3.45pF,C=0.71pFであった。また、US−PCS帯(1850MHz)に対応したフィルタ特性を得るには、合成容量値はそれぞれA’=E’=0.42pF,B’=D’=2.86pF,C’=0.60pFであった。このとき、合成容量変化率はそれぞれX=X=19.2%,X=X=17.1%,X=15.5%となる。
【0038】
これに対し、支持基板にサファイアのR基板、下部電極層にPt、薄膜誘電体層に(BaSr1−x)Ti(0≦x≦1,0≦y≦1)を用い、上部電極層にPt/Auを用いて、制御電圧としての印加電圧3V印加時における容量変化率が30%の可変容量コンデンサCtを作製した。
【0039】
合成容量変化率X=X=19.2%を得るための、固定容量コンデンサと可変容量コンデンサとの容量値の比は、γ=X(1−Y)/(Y−X)の関係式より、γ=γ=0.19・(1−0.3)/(0.3−0.19)=1.24になる。同様に、合成容量変化率X=X=17.1%を得るためには、γ=γ=0.93になる。同様に、合成容量変化率X=15.5%を得るためには、γ=0.75となる。
【0040】
また、A=Cd1/(1+γ)の関係式より、固定コンデンサCd1=Cd5=A・(1+γ)=0.52・(1+1.24)=1.16pFとなる。同様に、固定コンデンサCd2=Cd4=6.66pFとなる。同様に、固定コンデンサCd3=1.24pFとなる。
【0041】
また、γ=Cd/Ctより、可変容量コンデンサの容量値は、それぞれCt1=Ct5=1.17pF/1.24=0.94pF,Ct2=Ct4=6.66pF/0.93=7.16pF,Ct3=1.24pF/0.75=1.65pFとなる。
【0042】
つまり、合成可変容量コンデンサAに固定容量コンデンサCd1=1.16pFと可変容量コンデンサCt1=0.94pFとを組み合わせて用い、合成可変容量コンデンサBに固定容量コンデンサCd2=6.66pFと可変容量コンデンサCt2=7.16pFとを組み合わせて用い、合成可変容量コンデンサCに固定容量コンデンサCd3=1.24pFと可変容量コンデンサCt3=1.65pFとを組み合わせ、合成可変容量コンデンサDに固定容量コンデンサCd4=6.66pFと可変容量コンデンサCt4=7.16pFとを組み合わせて用い、合成可変容量コンデンサEに固定容量コンデンサCd5=1.16pFと可変容量コンデンサCt5=0.94pFとを組み合わせて用いることによって、印加電圧を3V共通にすることができ、各コンデンサ対A,B,C,D,Eに対する合成容量の制御が容易となった。
【0043】
これにより、異なる容量変化率が必要な容量可変回路において、一定の印加電圧値に対して略等しい容量変化率の可変容量コンデンサを用い、一定の制御電圧値で所望の回路特性を得ることができる。そのため、印加電圧を同一にすることができ、電圧制御端子を共通にすることができ、電圧制御も容易となり、さらに、電圧制御端子も少なくできることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の容量可変回路の実施の形態の一例を示す等価回路図である。
【図2】従来の容量可変回路の例を示す等価回路図である。
【図3】従来の容量可変回路の他の例を示す等価回路図である。
【符号の説明】
【0045】
Ct1,Ct2,Ct3,Ct4,Ct5・・・可変容量コンデンサ
Cd1,Cd2,Cd3,Cd4,Cd5・・・固定容量コンデンサ
Lb1,Lb2,Lb3,Lb4,Lb5・・・RF阻止インダクタ
A,B,C,D,E・・・コンデンサ対(合成容量)
D1,D2・・・分布定数型LC共振回路
V・・・バイアス端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定容量コンデンサと印加電圧により比誘電率が変化する薄膜誘電体層を用いた可変容量コンデンサとが直列に接続され、これら固定容量コンデンサと可変容量コンデンサとの間に前記印加電圧が供給されるコンデンサ対が複数接続されており、前記複数のコンデンサ対の前記可変容量コンデンサの前記印加電圧に対する前記比誘電率の変化が略同一であり、前記複数のコンデンサ対への前記印加電圧が共通に供給されることを特徴とする容量可変回路。
【請求項2】
複数の前記コンデンサ対の一部において、前記固定容量コンデンサに代えて前記可変容量コンデンサが用いられていることを特徴とする請求項1記載の容量可変回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の容量可変回路を用いたフィルタ回路および整合回路の少なくとも一方を有することを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−237239(P2006−237239A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49187(P2005−49187)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)