説明

密着型リニアセンサー

【目的】 基板とリニアセンサーチップとの膨張率が異なるものであっても、温度変化等による伸縮差でリニアセンサーチップ内に発生する応力を緩和し、かつ2本のリニアセンサーチップが基板に対して位置ずれしない密着型リニアセンサーを提供することを目的とする。
【構成】 基板2上に設けた第1のリニアセンサーチップ3と、一端41をこの第1のリニアセンサーチップ3に対向させ、かつその長辺方向と略平行に第2のリニアセンサーチップ4を設ける。そして、この第1、第2のリニアセンサーチップが対向する一端31、41を基板2上に接着する第1の樹脂と、各他端32、42を基板2上に各々接着する第2の樹脂とから成るものであって、第1の樹脂としてエポキシ樹脂5を、第2の樹脂として第1の樹脂より軟質なゴム系接着剤6を用いたものから成る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、OA機器等の読み取り装置として使用する密着型リニアセンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、リニアセンサーには、主に縮小型リニアセンサーと密着型リニアセンサーとがある。前者は、被写体からの情報をレンズ系を介して縮小し、リニアセンサーチップで読み取る構造である。また後者は、レンズ系を介さず、被写体の情報を1対1で読み取る構造である。この密着型リニアセンサーは上述の如く、被写体の情報を1対1で読み取るため、少なくとも被写体の幅以上の長さのリニアセンサーチップが必要となる。このような1本の細長状のリニアセンサーチップを形成するには、この長さより大径のウェハが必要となる。しかし、このような大径のウェハを得るのは非常に困難である。そのため、リニアセンサーチップを2分割して形成し、この2本のセンサーチップと膨張率が比較的等しい石英基板上で連結して接着することで所定長の密着型リニアセンサーを構成している。このような密着型リニアセンサーのうち、コストダウンという観点から、この2本のリニアセンサーチップを搭載する基板として高価な石英基板を使用せず、その代わりに、ガラスエポキシ樹脂の基板を使用した密着型リニアセンサーが多く使用されるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記2本のリニアセンサーチップがガラスエポキシ樹脂の基板上で接着された密着型リニアセンサーには、以下のような問題がある。すなわち、基板と膨張率の異なるリニアセンサーチップとを基板上で接着すると、温度変化等による基板とリニアセンサーチップとの伸縮差によりリニアセンサーチップ内に応力が発生し、変形、亀裂、及び接着部のはがれ等が起きる。したがって、2本のリニアセンサーチップと基板とを軟質の樹脂で接着すれば、この伸縮差による応力を緩和できるが、2本のリニアセンサーチップの基板に対する位置ずれが起こるため、被写体の情報を正確に読み取ることができない。よって本発明は、基板とリニアセンサーチップとの膨張率が異なるものであっても、温度変化等による伸縮差でリニアセンサーチップ内に発生する応力を緩和し、かつ2本のリニアセンサーチップの基板に対する位置ずれが起きない密着型リニアセンサーを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、これらの課題を解決するためになされた密着型リニアセンサーである。すなわち、基板上に設けた第1のリニアセンサーチップと、一端をこの第1のリニアセンサーチップに対向させるとともに第1のリニアセンサーチップの長辺方向と略平行に設けた第2のリニアセンサーチップと、第1のリニアセンサーチップの一端側と第2のリニアセンサーチップの一端側とを基板上に接着する第1の樹脂と、第1、第2のリニアセンサーチップの各他端を基板上に各々接着する第2の樹脂とによって構成したもので、そのうち第2の樹脂を、第1の樹脂より軟質なものにしたことから成るものである。
【0005】
【作用】第1のリニアセンサーチップの一端と、第2のリニアセンサーチップの一端とを基板上に接着する第1の樹脂と、第1、第2のリニアセンサーチップの各他端を基板上に各々接着する第2の樹脂において、第2の樹脂は、第1の樹脂より軟質であるので、基板とリニアセンサーチップとの膨張率の差から発生する応力がリニアセンサーチップ自体にかからず、かつ第1、第2のリニアセンサーチップの基板に対する位置ずれがない。
【0006】
【実施例】以下、図面に基づき本発明の実施例を説明する。図1は本発明を説明する平面図、図2は第1、第2のリニアセンサーチップが対向する一端の拡大図である。図1に示す如く、基板2上で第1のリニアセンサーチップ3の一端を対向させるとともに第1のリニアセンサーチップ3の長辺方向と略平行となる状態に第2のリニアセンサーチップ4が接着されている。これら第1、第2のリニアセンサーチップ3、4の各々対向する一端31、41は基板2上で第1の樹脂、例えばエポキシ樹脂5にて接着されている。また、第1、第2のリニアセンサーチップ3、4の各他端32、42は基板2上で第2の樹脂、例えばゴム系接着剤6にて各々接着されている。そして、第1、第2のリニアセンサーチップ3、4は、図示しない基板2上のプリント配線とボンディングワイヤー7にて接続されている。このゴム系接着剤6は、エポキシ樹脂5より軟質なので、基板2と第1、第2のリニアセンサーチップ3、4との膨張率の差から第1、第2リニアセンサーチップ3、4に発生する伸縮は、各他端32、42側のみが変位することになる。
【0007】図2に示す如く、第1、第2のリニアセンサーチップ3、4上には、この長辺方向と略平行に画素33、43がそれぞれの一端31、41まで形成されている。そして基板2上で第1のリニアセンサーチップ3の一端31と第2のリニアセンサーチップ4の一端41とが対向しており、さらに画素33と画素43とのピッチが連続するようにリニアセンサーチップ3、4を位置決めしてエポキシ樹脂5にて接着している。これにより2本のリニアセンサーチップが1本の細長状のリニアセンサーチップと同様の形状となる。
【0008】図3は本発明の他の実施例を説明する図である。図3に示す如く、第1、第2のリニアセンサーチップ3、4上の画素33、43はそれぞれ一端31、41まで形成されていない。したがって、第2のリニアセンサーチップ4を第1のリニアセンサーチップ3の短辺方向にずらした後、第1のリニアセンサーチップ3の画素33と第2のリニアセンサーチップ4の画素43とのピッチが合うように、第1のリニアセンサーチップ3の長辺方向に移動して位置決めした後、エポキシ樹脂5にて基板2上に接着する。この状態では、第1のリニアセンサーチップ3の画素33と第2のリニアセンサーチップ4の画素43とが短辺方向にずれているが、信号処理にてこのずれ量を補正すれば、第1のリニアセンサーチップ3と第2のリニアセンサーチップ4の各画素が連続したものと等価になる。
【0009】また、本発明はいずれも2本のリニアセンサーチップにより構成されているので、この構成を複数個接続すれば、さらに長い密着型リニアセンサーとして利用することができる。
【0010】
【発明の効果】以上説明したように本発明の密着型リニアセンサーによれば、基板と2本のリニアセンサーチップとの膨張率が異なるものであっても、温度変化等による伸縮差でリニアセンサーチップ内に発生する応力を緩和することができ、リニアセンサーチップの変形、亀裂、及び接着部のはがれ等が発生しない。また、2本のリニアセンサーチップが基板に対して位置ずれしないので、被写体の情報を正確に読み取ることができる。したがって、基板とリニアセンサーチップとの膨張率の差を考慮することなく密着型リニアセンサーを設計することができる。また、通常の大きさのウェハを使用してリニアセンサーチップを製造できるので、コストダウンや歩留り向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を説明する平面図である。
【図2】第1、第2リニアセンサーチップの対向する一端の拡大図である。
【図3】本発明の他の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
1 密着型リニアセンサー
2 基板
3 第1のリニアセンサーチップ
4 第2のリニアセンサーチップ
5 エポキシ樹脂
6 ゴム系接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に設けた第1のリニアセンサーチップと、一端を前記第1のリニアセンサーチップに対向させるとともに前記第1のリニアセンサーチップの長辺方向と略平行に設けた第2のリニアセンサーチップと、前記第1のリニアセンサーチップの一端側と前記第2のリニアセンサーチップの一端側とを前記基板上に接着する第1の樹脂と、前記第1、第2のリニアセンサーチップの各他端を前記基板上に各々接着する第2の樹脂とから成るものであって、前記第2の樹脂は、前記第1の樹脂より軟質であることを特徴とする密着型リニアセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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