説明

密閉型角形非水電解質二次電池

【課題】高温環境に長期間おかれた場合や充放電サイクルを繰り返した場合等において、ガス発生による内圧の上昇が生じた際に電池膨れが生じ難い密閉型角形非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の密閉型角形非水電解質二次電池は、封口板16の長さ方向の両端部には外装缶14の内部方向に延びる突起16aが形成されており、外装缶14の開口部の長さ方向の両端側には、封口板16に形成された突起16aの先端に対応する位置に、外装缶14の内部に延在する凹み14aが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型角形非水電解質二次電池に関し、特に、高温環境に長期間おかれた場合や充放電サイクルを繰り返した場合等において、ガス発生による内圧の上昇が生じた際に電池膨れが生じ難い密閉型角形非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の携帯電話機、携帯型パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、高エネルギー密度を有し、高容量であるリチウムイオン二次電池に代表される密閉型非水電解質二次電池が広く利用されている。中でも、負極活物質として黒鉛粒子を用いた密閉型非水電解質二次電池は、安全性が高く、かつ、高容量であるために広く用いられている。
【0003】
この種の密閉型非水電解質二次電池が使用される機器においては、電池を収容するスペースが角形形状であることが多いことから、偏平な電極体を角形の外装缶に収容して形成した密閉型角形非水電解質二次電池が多く使用されている。このような密閉型角形非水電解質二次電池は、電池が高温環境に長期間おかれた時、または充放電サイクルを繰り返した時など、有機電解質の揮発、分解等によってガスが発生し、このガスが外装缶内に密閉されているために、内圧の上昇に伴って外装缶が膨化し、電池厚みが増加することがある。
【0004】
このような密閉型角形非水電解質二次電池の内圧の上昇を抑制するために、例えば、下記特許文献1〜3にも示されているように、安全弁を設けることが行われている。この安全弁は、電池の内圧が過度に高くなった際に内圧を開放することによって電池の破裂を抑制し、少なくとも電池を使用している機器の損傷を少なくするために設けられるものである。しかしながら、密閉型角形非水電解質二次電池の安全弁が作動するまでの電池内圧の上昇によって外装缶が膨化して電池厚みが増加するが、上記特許文献1〜3には、安全弁が作動するまでの間の外装缶の膨化を抑制することについては何も示されていない。
【0005】
ここで、従来の密閉型角形非水電解質二次電池の内圧の上昇による外装缶の膨化現象を図6を用いて説明する。なお、図6Aは従来の密閉型角形非水電解質二次電池の正面断面図であり、図6Bは電池内圧が上昇して変形した際の模式正面図であり、図6Cは図6BのVIC部分拡大断面図である。なお、図6においては、封口板及び角形外装缶以外の構成は図示省略してある。
【0006】
図6Aに示すように、密閉型角形非水電解質二次電池50は、角形の外装缶51の開口部に平板状の封口板52が嵌合され、この嵌合部がレーザ溶接された構成を備えている。このような密閉型角形非水電解質二次電池50においては、内圧が大きくなって外装缶51が膨化する際、図6Cに示すように、外装缶51の側面がくびれるように変形し、それにより封口板52及び外装缶51の側面を谷ゾリに反らすような力が加わるため、外装缶51の表面53は、図6Bに示したように、幅方向と高さ方向から変形が加わるので、電池厚みが大きく増加するように変形するようになる。
【0007】
一方、下記特許文献4には、このような密閉型角形非水電解質二次電池の電池内圧の増大に起因する電池厚みの増加を抑制する目的で、角形外装缶の開口部を密閉する封口板を、封口板の電池外方側表面における中央が、この封口板表面における両短辺部を含む平面よりも電池外方側に盛り上がるようにした例が示されている。ここで、下記特許文献4に示されている角形非水電解質二次電池を図7を用いて説明する。なお、図7Aは下記特許文献4に示されている密閉型角形非水電解質二次電池の正面図であり、図7Bは封口板の平面図であり、図7Cは封口板の正面図である。
【0008】
この角形非水電解質二次電池60は、有底筒状のアルミニウム合金製の外装缶61を有しており、この外装缶61内には、正極と、負極と、これら両電極を離間するセパレータとからなる偏平渦巻状の電極体(図示省略)が収納されている。さらに、外装缶61の開口にはアルミニウム合金からなる封口板62がレーザー溶接されており、これによって外装缶61の開口が封口されている。そして、封口板62は、その中央部を含む領域62aが両短辺部62bを含む平面よりも電池外方に突出した形状、すなわちアーチ状であり、外装缶61の開口部はこのような形状の封口板62に嵌合するように形成されている。なお、ここでは封口板62の長辺端部の長さL1=33.3mmであり、中央の突出高さL2=0.5mmとされている。
【0009】
このような構成を有している下記引用文献4に示されている非水電解質二次電池60では、電池内圧が上昇すると、封口板62は、最初に電池外方側表面が一平面となり、その後に電池内方へ突出するように変形するが、封口板62の電池外方側表面が一平面となるまでは膨張抑制作用を奏しているので、従来の封口板の中央が突出していない、すなわちL2=0mmの電池と比すると、電池膨れが小さくなるという効果を奏するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−310293号公報
【特許文献2】特開2000−036294号公報
【特許文献3】特開2005−158475号公報
【特許文献4】特開2005−294012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献4に示されている密閉型角形非水電解質二次電池によれば、電池内圧が増加しても、ある程度までは封口板が電池内方へ突出するように変形し難いため、電池膨れを抑制することができる。しかしながら、上記特許文献4に示されている密閉型角形非水電解質二次電池では、封口板がアーチ状とされているため、封口板と外装缶との間のレーザ溶接が困難であり、しかも、アーチの高さを大きくすると、それに対応して電池膨れを抑制することができると考えられるが、その分だけ電池の体積あたりのエネルギー効率が小さくなってしまう。
【0012】
発明者等は、上述の従来技術の問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、封口板の長さ方向の両端部に電池内部方向に突起を形成すると共に、外装缶の幅方向の開口部下に、封口板の突起と凹み部を形成することにより解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0013】
なお、上記特許文献1には、封口板の長さ方向の両端部に電池内部方向に突起を形成すると共に、封口板の開口端部に薄肉部を形成することによって封口板に形成された突起と当接する段部を形成した例が示されているが、外装缶の缶厚さは0.20mm程度と薄く、しかも、この部分に薄肉部を形成すると外装缶と封口板との接合部の強度が弱くなるという問題点が存在している上、ガス発生等による内圧の上昇が生じた場合の電池膨れを抑制することに関しては何も示されていない。
【0014】
さらに、上記特許文献2には、封口板の長さ方向の両端部に電池内部方向に突起を形成するとともに、この突起部分が外装缶の外面に嵌合するように取り付けたものが示されているが、ガス発生等による内圧の上昇が生じた場合の電池膨れを抑制することに関しては何も示されていない。
【0015】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、高温環境に長期間おかれた場合や充放電サイクルを繰り返した場合等において、ガス発生による内圧の上昇が生じた際に電池膨れが生じ難い密閉型角形非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の密閉型角形非水電解質二次電池は、開口部を備える角形の有底の外装缶と、前記開口部を封口する封口板と、電極体及び非水電解液と、を備える密閉型角形非水電解質二次電池において、前記封口板の長さ方向の両端部には前記外装缶の内部方向に延びる突起が形成されており、前記外装缶の前記開口部の長さ方向の両端側には、前記封口板に形成された突起の先端に対応する位置に、前記外装缶の内部に延在する凹みが形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の密閉型角形非水電解質二次電池によれば、封口板の長さ方向の両端部に形成された外装缶の内部方向に延びる突起と、外装缶の開口部の長さ方向の両端側に形成された外装缶の内部に延在する凹みとの相乗作用によって、単に封口板の長さ方向の両端部に形成された外装缶の内部方向に延びる突起を形成した場合よりも、電池の内圧が上昇しても電池膨れを抑制することができるようになる。
【0018】
このような本発明の密閉型角形非水電解質二次電池の電池膨れの抑制効果は、電池の内圧が上昇した際、外装缶の開口部の長さ方向の両端側に形成された外装缶の内部に延在する凹みが延びるように変形することによって封口板を谷ゾリに反らす力の発生を抑制し、また、封口板と外装缶とが噛み合うことによって封口板がさらに変形することを抑制することができることにより生じるものと推定される。すなわち、封口板の谷ゾリを抑制することによって封口板の両端の変形が小さくなるので、電池膨れを抑制することができることになるわけである。
【0019】
また、本発明の密閉型角形非水電解質二次電池においては、前記封口板に形成された突起の長さは、前記封口板の厚み寸法に対して100%以上であることが好ましい。
【0020】
封口板に形成された突起の長さが封口板の厚みの100%以上であると、100%未満である場合と比較して本発明の効果が顕著になる。しかし、封口板に形成された突起の長さが封口板の厚みの300%を越えていると、外装缶の内部に延在する凹みの位置が外装缶の底部側に位置するようになるので、その分だけ電極体の長さが小さくなり、電池容量の低下に繋がるため、好ましくない。
【0021】
また、本発明の密閉型角形非水電解質二次電池においては、前記外装缶に形成された凹みの形状は、前記外装缶の開口部の長さ方向に沿った断面形状が三角、四角又は半円形状であることが好ましい。
【0022】
外装缶に形成された凹みの形状は、電池の内圧が上昇した際、この凹みが延びるように変形することによって封口板を谷ゾリに反らす力の発生を抑制するものであるため、電池膨れの抑制効果に影響を与える。この外装缶に形成された凹みの形状は、外装缶の開口部の長さ方向に沿った断面形状が三角、四角又は半円形状のいずれであっても、良好な電池膨れの抑制効果を生じる。特に、外装缶の開口部の長さ方向に沿った断面形状が四角の場合は、凹みの深さが同一の場合、最も良好な電池膨れの抑制効果を生じる。
【0023】
また、本発明の密閉型角形非水電解質二次電池においては、前記外装缶に形成された凹みは、前記封口板に形成された突起の先端と接触していることが好ましい。
【0024】
本発明の密閉型角形非水電解質二次電池によれば、電池の内圧が上昇した際、外装缶の開口部の長さ方向の両端側に形成された外装缶の内部に延在する凹みが延びるように変形することによって封口板の谷ゾリに反らす力の発生を抑制し、また、封口板と外装缶とが噛み合うことによって封口板がさらに変形することを抑制することができることにより生じるものであるから、外装缶に形成された凹みが封口板に形成された突起の先端と接触している場合に、凹部の深さによらず、最も良好に電池膨れの抑制効果を生じる。
【0025】
また、本発明の密閉型角形非水電解質二次電池においては、前記外装缶に形成された凹みの深さは、前記外装缶の缶厚の5倍〜15倍であることが好ましい。
【0026】
外装缶に形成された凹みの深さは、外装缶の缶厚の5倍以上であると凹みを設けたことの効果が顕著になり、外装缶の缶厚の15倍を越えると、電池膨れ抑制効果は良好であるが、外装缶内部の空間の体積が減少するために電池容量の低下に繋がるので、好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1Aは各実施例及び比較例に共通する密閉型角形非水電解質二次電池の内部を表面側から透視して表した模式図であり、図1Bは図1AのIB−IB線に沿った模式断面図である。
【図2】図2Aは比較例1〜7に共通する外装缶及び封口板の正面断面図であり、図2Bは図2AのIIB部分の封口板の拡大図である。
【図3】図3Aは実施例1〜27に共通する外装缶及び封口板の正面断面図であり、図3Bは図3AのIIIB部分の拡大図であり、図3Cは凹部の断面形状が三角形の場合の拡大図であり、図3Dは凹部の断面形状が半円形状の場合の拡大図である。
【図4】外装缶の凹部の深さと電池厚みの関係を示すグラフである。
【図5】封口板の突起の長さと電池厚みの関係を示すグラフである。
【図6】図6Aは従来の密閉型角形非水電解質二次電池の正面断面図であり、図6Bは電池内圧が上昇して変形した際の正面図であり、図6Cは図6BのVIC部分の拡大断面図である。
【図7】図7Aは従来の密閉型角形非水電解質二次電池の正面図であり、図7Bは封口板の平面図であり、図7Cは封口板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明を実施するための形態を図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための密閉型角形非水電解質二次電池を例示すものであって、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0029】
まず、各実施例及び比較例に共通する密閉型角形非水電解質二次電池の概略構成を図1を用いて説明する。なお、図1Aは各実施例及び比較例に共通する密閉型角形非水電解質二次電池の内部を表面側から透視して表した模式図であり、図1Bは図1AのIB−IB線に沿った模式断面図である。
【0030】
この非水電解質二次電池10は、正極タブ11を有する正極極板と負極タブ12を有する負極極板とがセパレータを介して巻回された偏平状の巻回電極体13を有し、この偏平状の巻回電極体13が角形の外装缶14内に収容されている。偏平状の巻回電極体13の上部には、外装缶14内において巻回電極体13の位置決めに寄与する絶縁性材料からなるスペーサー15が配置され、更に角形の外装缶14の開口部は、内面に絶縁板18が形成されている封口板16が嵌合され、角形の外装缶14と封口板16との嵌合部が例えばレーザ溶接により溶接され、密閉されている。
【0031】
この巻回電極体13からは、正極タブ11及び負極タブ12が同一方向(図1A及び図1Bにおいて上方向)に突出され、負極タブ12はスペーサー15に形成されたスリット状の開口(図示省略)内を通され、絶縁板18上の負極集電タブ(図示省略)に接続され、負極集電タブ12は負極端子17に電気的に接続されている。また、正極タブ11は、スペーサー15と外装缶14との間を通され、スペーサー15及び絶縁板18との間で折り曲げ部11'(図1B参照)が形成され、端部が外装缶14と封口板16との間に挟まれて外装缶14及び封口板16と一体に溶接されている。なお、正極タブ11の折り曲げ部11'は、非水電解質二次電池10に衝撃が加わった場合、巻回電極体13が外装缶14内部で動いたとしても、正極タブ11にかかる衝撃を吸収するために形成されるものである。
【0032】
なお、各実施例及び比較例に共通する巻回電極体13は次のようにして作製した。まず、コバルト酸リチウムを94質量%、導電剤3質量%、結着剤3質量%をN−メチルピロリドンに分散させたスラリーをアルミ箔の両面に塗布し、乾燥後に圧延ロールを用いて所定の充填密度となるまで圧延し、所定寸法に切断して正極極板を得た。また、黒鉛粉末を95質量部,増粘剤を3質量部、結着剤を2質量部、水に分散させたスラリーを銅箔の両面に塗布し、乾燥後に圧延ロールを用いて所定の充填密度となるまで圧延し、所定寸法に切断して負極極板を得た。次に、正極極板及び負極極板をポリオレフィン系樹脂からなる微多孔膜のセパレータを介在させて巻き取り機により捲回し、絶縁性の巻き止めテープを取り付け、プレスして偏平状巻回電極体13を完成させた。
【0033】
この偏平状電極体13の上に樹脂製のスペーサ15を設置し、スペーサの一つの透孔に負極タブ12を通し、封口板16の負極端子17に溶接する。また、スペーサ15のもう片方の透孔上で正極タブ11を折り曲げ、封口板16側面に正極タブ11を沿わせ、それを有底角形の外装缶14内に挿入し、封口板16と外装缶14の嵌合部に正極タブ11を挟みこみ、レーザ溶接にて封口した。そして、エチレンカーボネート30vol%、エチルメチルカーボネート50vol%、ジエチルカーボネート20vol%となるように混合溶媒を調整し,これにLiPFを1mol/L溶解して電解質とした電解液を封口板16の注液口(図示省略)より所定量注入し、注液口に封止栓を挿入し、レーザ溶接にて固定した。
【0034】
なお、封口板16はアルミニウム合金をプレス成形にて以下に示す各種条件に沿った突起を持つ封口板を作製した。外装缶14は、アルミニウム合金をプレス成形にて所定の形状を持つ外装缶に作製した。また、外装缶14に形成する凹部14aについては、プレス成形後、ローラを押し当てることにより、凹部14aを以下に示す各種条件に沿った位置・寸法に形成した。なお、封口板16の突起16a以外の部分の厚みは1.1mmであり、形成された外装缶のアルミニウム合金材の厚さは0.20mmであり、作製した電池のサイズは、全て厚み:5.2mm×幅:34mm×高さ:50mmである。
【0035】
[比較例1〜7]
比較例1〜7においては、外装缶14に凹部を形成せず、封口板16の長さ方向両端部に形成した突起16aの長さAを変化させた際の密閉型角形非水電解質二次電池の膨化抑制効果を確認した。比較例2〜7で用いた封口板16及び外装缶14の形状を図2に示した。なお、図2Aは比較例2〜7に共通する外装缶及び封口板の正面断面図であり、図2Bは図2AのIIB部分の封口板の拡大図である。ただし、比較例1では、封口板16に突起16aを形成しない以外は比較例2〜7の場合と同様のものを用いた。また、図2においては、封口板及び外装缶以外の構成については図示省略してある。
【0036】
比較例1の電池は封口板16の長さ方向両端部に突起を形成せず、比較例2〜7においては、突起16aの封口板16の長さ方向における幅Wを0.20mm一定とし、突起16aの長さAを封口板の突起16a以外の部分の厚さB(1.1mm)を基準として、A/Bが25%(比較例2)、50%(比較例3)、75%(比較例4)、100%(比較例5)、200%(比較例6)及び300%(比較例7)と変化させた電池を作製した。次いで、これらの電池に対して、電池の缶底部からエアー加圧によって電池内圧を0.1MPaまで加圧し、加圧後の外装缶14の最厚部の厚みを測定した。その結果を表1に纏めて示した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示した結果から、封口板16の長さ方向両端部に形成した突起16aの長さAを変えた際の電池厚みの変化は、A/Bが大きくなると小さくなり、突起A部の寸法を、封口板厚みB部に対して100%以上の高さで設けることで膨化抑制効果が期待でき、ここではA/Bを300%とすると電池厚みに最大0.12mmの膨化抑制効果が確認できた。
【0039】
[実施例1〜27]
実施例1〜27では、封口板16の長さ方向両端部に突起16aを形成するだけでなく、外装缶14に凹部14aを形成した際の密閉型角形非水電解質二次電池の膨化抑制効果を確認した。実施例1〜27で用いた封口板16及び外装缶14の形状を図3に示した。なお、図3Aは実施例1〜27に共通する外装缶及び封口板の正面断面図であり、図3Bは図3AのIIIB部分の拡大図であり、図3Cは凹部の断面形状が三角形の場合の拡大図であり、図3Dは凹部の断面形状が半円形状の場合の拡大図である。なお、図3においては、封口板及び外装缶以外の構成については図示省略してある。
【0040】
実施例1〜27においては、突起16aの封口板16の長さ方向における幅Wを0.20mm一定とし、突起16aの長さAを封口板の突起16a以外の部分の厚さB(1.1mm)を基準としてA/Bを200%一定とし、凹部の断面形状が四角形の場合(実施例1〜9)、三角形の場合(実施例10〜18)及び半円形の場合(実施例19〜27)のそれぞれについて、外装缶14の凹部14aの深さCを1.0mm〜3.0mmまで変化させ、さらに外装缶14の凹部14aの上端と封口板16の突起16aの先端との間の距離Dを0mm〜3.0mmまで変化させた密閉型角形非水電解質二次電池を作製した。次いで、各電池の缶底部からエアー加圧により電池内圧を0.1MPaまで加圧し、加圧後の電池の厚みを測定した。その結果を纏めて表2に示すと共に、D=0mmの場合の凹部の深さCと電池厚みの関係を凹部の断面形状毎に纏めて図4に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
表2及び図4に示した結果より、外装缶14に形成する凹部の形状がいずれの形状であっても、膨化抑制効果が認められることがわかるが、封口板16の突起16aと外装缶14の凹部14aまでの距離D=0mm(両者が接する位置)である時、最も大きな効果が得られている。しかも、外装缶14の凹部14aの形状は、三角形状ないし半円形状のものよりは四角形の形状が望ましいことがわかる。
【0043】
また、実施例1〜27は全てA/B=200%の場合であるが、実施例1〜27の結果と同じくA/Bが200%である比較例6の結果を対比すると、封口板16に突起16aを形成するだけでなく外装缶14に凹部14aも形成した実施例1〜27の方が、電池内部を加圧した後の電池厚さが小さくなっている。このことは、封口板16に突起16aを形成することの効果と外装缶14に凹部14aを形成することの効果とが相乗的に奏されていることによるものであることは明らかである。
【0044】
また、外装缶の凹部の深さCについては、深さCが深くなれば膨化抑制効果も増大しているが、この効果は外装缶の缶厚が変化すると最適な値も変化する。しかしながら、外装缶の缶厚で規格化すれば、外装缶に形成された凹みの深さCは、少なくとも外装缶の缶厚の5倍(1mmの場合)以上であると凹みを設けたことの効果が顕著になり、外装缶の缶厚の15倍(3mmの場合)を越えると、電池膨れ抑制効果は良好であるが、外装缶内部の空間の体積が減少するために電池容量の低下に繋がる。そのため、外装缶に形成された凹みの深さは、外装缶の缶厚の5倍〜15倍程度に収めるとよい。
【0045】
[実施例28〜39、比較例8〜15]
実施例28〜39、比較例8〜15では、封口板16の突起16aと外装缶14の凹部14aとの間の距離D=0mmとし、外装缶14に四角形状の凹部14aを形成してこの凹部14aの深さCを1mm〜3mmまで変化させ、さらに、封口板16の長さ方向両端部に形成した突起16aの寸法を種々変更した際の非水電解質二次電池の膨化抑制効果を確認した。なお、突起16aの封口板16の長さ方向における幅Wは1.0mm一定である。これらの実施例28〜39、比較例8〜15の各電池の缶底部からエアー加圧により電池内圧を0.1MPaまで加圧し、加圧後の電池の厚みを測定した結果を纏めて表3に示すと共に、封口板の突起の寸法(%単位)と電池厚みの関係を、外装缶14の凹部14aの深さC毎に図5に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
表3及び図5に示した結果より、外装缶14に凹部14aが形成されている場合、外装缶14に凹部が形成されていない比較例11〜15の電池と封口板16の突起16aの寸法が同じ場合で比較すると、実施例28〜39及び比較例8〜10の全てにおいて膨化抑制効果が奏されていることが確認される。また、外装缶14に形成されている凹部の深さCが同一の場合では、全て封口板突起寸法が100%以上の場合に特に大きな膨化抑制効果が奏されていることが分かる。したがって、本発明の非水電解質二次電池においては、封口板16に突起16aを形成すると共に、封口板の長さ方向の両端部には前記外装缶の内部方向に延びる突起を形成すると、膨化抑制効果が生じ、この膨化抑制効果は特に突起16aの寸法Aを封口板の突起16a以外の部分の厚さBを基準として、A/Bが100%以上の場合に特に良好に奏されることが分かる。
【符号の説明】
【0048】
10…密閉型角形非水電解質二次電池 11…正極タブ 12…負極タブ 13…巻回電極体 14…外装缶 14a…凹部 15…スペーサー 16…封口板 16a…突起 17…負極端子 18…絶縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備える角形の有底の外装缶と、前記開口部を封口する封口板と、前記外装缶内に配置された電極体及び非水電解液と、を備える密閉型角形非水電解質二次電池において、
前記封口板の長さ方向の両端部には前記外装缶の内部方向に延びる突起が形成されており、
前記外装缶の前記開口部の長さ方向の両端側には、前記封口板に形成された突起の先端に対応する位置に、前記外装缶の内部に延在する凹みが形成されていることを特徴とする密閉型角形非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記封口板に形成された突起の長さは、前記封口板の厚み寸法に対して100%以上であることを特徴とする請求項1に記載の密閉型角形非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記外装缶に形成された凹みの形状は、前記外装缶の開口部の長さ方向に沿った断面形状が三角、四角又は半円形状であることを特徴とする請求項1に記載の密閉型角形非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記外装缶に形成された凹みは、前記封口板に形成された突起の先端と接触していることを特徴とする請求項1に記載の密閉型角形非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記外装缶に形成された凹みの深さは、前記外装缶の缶厚の5倍〜15倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の密閉型角形非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249241(P2011−249241A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123409(P2010−123409)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】