説明

密閉容器およびその製造方法、ならびに真空断熱体

【課題】固形物を収納した内部空間の真空度の低下が抑制される密閉容器およびその製造方法、ならびにこの密閉容器を用いた真空断熱体を提供する。
【解決手段】密閉容器(1)は、開口部(5)を有し、その第1内部空間が減圧された金属製容器(3)と、前記金属製容器の第1内部空間内に収容された固形物(4)と、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスから成る封止部材(2)と、を備え、前記封止部材は加熱溶融されて冷却固化されることにより前記金属製容器の開口部に接合されて前記開口部を封止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器およびその製造方法、ならびに真空断熱体に関し、特に、減圧された内部空間に固形物が収容された金属製容器の開口部が封止部材で封止された密閉容器と、この密閉容器の製造方法と、この密閉容器を中空の外被部材の減圧された内部空間に含む真空断熱体とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題である温暖化の対策として、省エネルギーを推進する動きが活発化している。このため、温冷熱利用機器に関しても、熱を有効活用するという観点から、優れた断熱性能を有する真空断熱体が求められている。
【0003】
真空断熱体は、たとえば、ラミネート加工された袋の内部空間にグラスウールなどの芯部材を収納し、袋の内部空間を減圧し、袋を密封することにより形成される。芯部材は、気相容積比率が高く、袋の内部空間に多数の微細な空隙が形成される。この芯部材の空隙径が、減圧下における気体分子の平均自由行程より小さいと、熱伝導する気体分子(気体熱伝導成分)のサイズが小さくなる。特に、芯部材の空隙径が、たとえば、1mm程度と非常に微細である場合、対流する気体分子による熱伝導が無視できるほど小さくなる。さらに、室温付近では、輻射物質による放射熱が熱伝導率に寄与する割合は、非常に小さい。したがって、真空断熱体における熱伝導は、芯部材の固体熱伝導成分と、僅かに残る気体熱伝導成分とが支配的になる。このため、真空断熱体の熱伝導率は、他の断熱材と比較して非常に小さいとされている。
【0004】
このような高性能な真空断熱体にとっては、ラミネート加工された袋を介して内部空間へ進入するわずかな空気も断熱性を劣化させる重要な要因となる。そこで、袋の内部空間に芯部材と共に気体吸着デバイスをさらに収納することが提案されている。これにより、気体吸着デバイスが、内部空間に侵入した微量の気体熱伝導成分を吸着するため、真空断熱体の断熱性能が維持される。このため、気体吸着デバイスには、非常に高い気体吸着性能が要求される。特に、真空断熱体の内部空間において気体吸着デバイスの封止部材が開放されることにより、気体吸着デバイスの性能を維持する方法が提案されている。
【0005】
また、このような気体吸着デバイスと同様に、容器を真空状態に封止するための封止ガラスの技術が提案されている。
【0006】
特許文献1に示す金属製真空二重容器では、金属製の内容器と外容器のいずれか一方に排気口を有する内外容器が接合されることにより、二重容器が形成される。この排気口の近傍に軟化温度が200〜600℃である低温溶融ガラスからなる封止材が配設される。そして、二重容器が真空加熱炉に配され、封止材の軟化温度より低い温度で二重容器の内外容器間の空隙が真空状態になるように排気される。次いで、封止材の軟化温度より高い温度に二重容器が加熱されると、封止材が軟化し排気口を封止する。
【0007】
また、特許文献2に示す金属製二重容器では、真空状態の二重容器の排気口を封止するための封止用ガラスの組成が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3に示す金属製二重容器では、真空状態の二重容器の排気口を封止するための封止ガラスとして、封止の際に封止ガラスから発生するガス量の低いものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−169850号公報
【特許文献2】特開2002−125866号公報
【特許文献3】特開2005−319150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれの金属製二重容器も魔法瓶などとして用いられるものである。このため、二重容器間の真空空間に固形物が設置されることも想定されていないため、真空空間に固形物が設置された場合に比べて封止ガラスが排気口に接合される力が小さくてもよい。このため、仮に真空空間に固形物が設置されると、真空封止過程において固形物に含まれるガスや水分が脱離する。これらの脱離した物質によって真空空間内の圧力が高くなり、真空空間内のガスが封止ガラスの周縁を通過して排出される。これにより、封止ガラスが真空封止する力が低下し、真空空間の真空度が低下してしまう。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、固形物を収納した内部空間の真空度の低下が抑制される密閉容器およびその製造方法、ならびにこの密閉容器を用いた真空断熱体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様に係る密閉容器は、開口部を有し、その第1内部空間が減圧された金属製容器と、前記金属製容器の第1内部空間内に収容された固形物と、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスから成る封止部材と、を備え、前記封止部材は加熱溶融されて冷却固化されることにより前記金属製容器の開口部に接合されて前記開口部を封止しており、前記金属製容器の開口部に狭窄部が設けられ、前記封止部材は、前記狭窄部に接合されて該狭窄部を封止している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固形物を収納した内部空間の真空度の低下が抑制される密閉容器およびその製造方法、ならびにこの密閉容器を用いた真空断熱体を提供することができることができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る密閉容器を示す斜視図である。
【図2】図1の密閉容器に用いられる金属製容器に固形物が収容された状態を示す斜視図である。
【図3】図2の金属製容器を略扁平に押しつぶした状態を示す斜視図である。
【図4】図3の金属製容器の開口部に封止部材を挿入した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例1に係る密閉容器を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例2に係る密閉容器を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る真空断熱体を示す断面図である。
【図8】図7の真空断熱体に収容される気体吸着デバイスを示す斜視図である。
【図9】図8の気体吸着デバイスが曲げられた状態を示す斜視図である
【図10】本発明の実施の形態2の変形例3に係る真空断熱体を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2の変形例3に係る真空断熱体を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る真空断熱体を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3の変形例9に係る真空断熱体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明に係る密閉容器は、開口部を有し、その第1内部空間が減圧された金属製容器と、前記金属製容器の第1内部空間内に収容された固形物と、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスから成る封止部材と、を備え、前記封止部材は加熱溶融されて冷却固化されることにより前記金属製容器の開口部に接合されて前記開口部を封止している。
【0017】
この構成によれば、加熱処理によって封止部材のガラスに含まれるアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ金属酸化物が、金属製容器の開口部の表面に形成される金属酸化物と化学結合する。これによって、封止部材と開口部とが強固に接合されため、固形物が金属製容器の内部に収納されても、密閉容器の密閉性が高く維持される。
【0018】
第2の発明に係る密閉容器は、第1の発明において、前記封止部材のアルカリ土類金属酸化物が、BaOおよびSrOのいずれかであってもよい。
【0019】
この構成によれば、アルカリ土類金属の中でもBaOおよびSrOは金属酸化物と強く強固に化学結合することにより、封止部材が金属製容器の開口部と強固に接合される。これにより、密閉容器は優れた密閉性を維持することができる。
【0020】
第3の発明に係る前記金属製容器は、第1または第2の発明において、前記封止部材は前記開口部の内部に位置して当該開口部に接合されており、前記金属製容器は、前記封止部材の熱膨張係数より大きな熱膨張係数を有してもよい。
【0021】
この構成によれば、加熱処理後の冷却処理により拡張した金属製容器が封止部材より大きく収縮する。このため、金属製容器の開口部が開口部の内部に位置する封止部材を締め付け、これらが強固に機械的に接合される。これにより、密閉容器は優れた密閉性を維持することができる。
【0022】
第4の発明に係る密閉容器は、第1〜3のいずれかの発明において、前記金属製容器が、アルミニウムで構成されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、アルミニウムで構成される金属製容器は封止部材の熱膨張係数より大きく、封止部材は金属製容器の開口部により強固に機械的に接合される。これにより、密閉容器は優れた密閉性を維持することができる。
【0024】
第5の発明に係る密閉容器は、第1〜4のいずれかの発明において、前記金属製容器の開口部に狭窄部が設けられ、前記封止部材は、前記狭窄部に接合されて該狭窄部を封止していてもよい。
【0025】
この構成によれば、その開口部の内部に封止部材が位置した金属製容器が加熱処理されると、溶融した封止部材がその表面張力によって狭窄部に保持される。このため、溶解した封止部材を支持する機構が不要であって、簡単な構造で封止部材が狭窄部を封止することができる。
【0026】
第6の発明に係る密閉容器は、第1〜5のいずれかの発明において、前記固形物が加熱処理により劣化しない気体吸着材を含み、気体吸着デバイスとして機能してもよい。
【0027】
この構成によれば、封止部材により金属製容器の開口部を封止するための加熱処理が固形物に施されても、固形物は劣化しない。このため、密閉容器内において固形物は気体吸着材としてその機能を発揮することができる。
【0028】
第7の発明に係る真空断熱体は、第6の発明の密閉容器で構成される気体吸着デバイスと、芯部材と、前記気体吸着デバイスと前記芯部材とをその第2内部空間内に収容し、前記第2内部空間が減圧されて密封されている中空の外被部材と、を備えていてもよい。
【0029】
この構成によれば、気体吸着デバイスが密閉されているため、気体吸着性能は高く維持されている。この気体吸着デバイスが外被部材の内部において開封されると、第2内部空間に残存または侵入する気体熱伝導成分が気体吸着デバイスに吸着されて、第2内部空間の真空度は高く維持される。これにより、真空断熱体は優れた断熱性を発揮することができる。
【0030】
第8の発明に係る真空断熱体は、第7の発明において、前記外被部材の第2内部空間において前記封止部材が破壊されることにより、前記気体吸着デバイスを開放する貫通口が形成されていてもよい。
【0031】
この構成によれば、封止部材に貫通口するための機構を別途設ける必要がなく、気体吸着デバイスが簡単な構造で確実に開放される。
【0032】
第9の発明に係る真空断熱体では、第8の発明において、前記金属製容器の開口部が、略扁平な断面を有する筒状に形成され、前記開口部に略扁平な断面の短軸方向の外力が前記封止部材に加わり、前記封止部材が破壊されることにより、前記貫通口が形成されていてもよい。
【0033】
この構成によれば、略扁平の断面を含む筒状で形成された開口部に対して、略扁平の断面の短軸方向に外力が加えられる。これにより、開口部が変形しやすいため、封止部材が簡単に破壊される。この結果、気体吸着デバイスが簡単な構造で確実に開放される。
【0034】
第10の発明に係る真空断熱体では、第7〜9の発明において、前記気体吸着デバイスが前記芯部材の内部に収納され、前記外被部材と前記気体吸着デバイスとの間に前記芯部材が介在してもよい。
【0035】
この構成によれば、外力によって封止部材が破壊されて、気体吸着デバイスが開放される際、外被部材と気体吸着デバイスとの間の芯部材により外力が緩和される。これにより、破壊された封止部材の破片が芯部材に散乱しない。このため、真空断熱体の解体の際に、各部材を簡単に分別することができ、真空断熱体をリサイクルし易い。
【0036】
第11の発明に係る真空断熱体は、第10の発明において、前記芯部材の内部において前記気体吸着デバイスが収納される空間に通ずる、前記芯部材に形成された切れ込みをさらに備えてもよい。
【0037】
この構成によれば、芯部材の切れ込みから芯部材の内部空間へ気体吸着デバイスを挿入することにより、気体吸着デバイスを芯部材の内部空間に簡単に収納することができる。
【0038】
第12の発明に係る真空断熱体は、第7〜11のいずれかの発明において、前記気体吸着デバイスが配設された箇所に対応する前記外被部材の部位に付けられた印をさらに備えていてもよい。
【0039】
この構成によれば、印に基づいて気体吸着デバイスの位置に外力を加えると、外力は気体吸着デバイスに作用する。このため、気体吸着デバイスの封止部材が破壊されて、気体吸着デバイスが確実に開放(開封)される。
【0040】
第13の発明に係る真空断熱体は、第7〜12のいずれの発明において、前記外被部材の第2内部空間に設けられ、前記気体吸着デバイスの移動を抑制する移動抑制部をさらに備えていてもよい。
【0041】
この構成によれば、外被部材の第2内部空間に設けられた移動抑制部により、気体吸着デバイスの移動が抑制される。このため、気体吸着デバイスの位置を外被部材の外から特定することができ、生産性の低下が防止される。
【0042】
第14の発明に係る真空断熱体では、第13の発明において、前記移動抑制部は、前記気体吸着デバイスの一部または全部を内包する内袋で構成されてもよい。
【0043】
この構成によれば、内袋により覆われた範囲において気体吸着デバイスと内袋との摩擦により、気体吸着デバイスの位置ずれが抑制され、生産性の低下が防止される。
【0044】
第15の発明に係る真空断熱体では、第14の発明において、前記内袋は弾性材料で構成されてもよい。
【0045】
この構成によれば、弾性材料の内袋により気体吸着デバイスが覆われることにより、内袋により傷や窪みなどが気体吸着デバイスに形成されることが防止される。
【0046】
第16の発明に係る真空断熱体では、第15の発明において、前記弾性材料は樹脂で構成される不織布を含んでもよい。
【0047】
この構成によれば、樹脂で形成される不織布は、水分の吸収が少なく、また、破れにくい。このため、第2内部空間における真空度の低下が防がれると共に、気体吸着デバイスの移動が規制される。
【0048】
第17の発明に係る真空断熱体では、第16の発明において、前記不織布を形成する樹脂は、PPおよびPETの少なくともいずれか1つを含んでもよい。
【0049】
この構成によれば、PPおよびPETは、引っ張り強度、引き裂き強度および耐熱性が高く、低コストである。このため、移動規制機能が維持され、生産性の低下が防止される。
【0050】
第18の発明に係る真空断熱体では、第13〜17のいずれか1つの発明において、前記移動抑制部は、前記芯部材の内部において前記気体吸着デバイスが収納された空間の内面で構成されてもよい。
【0051】
この構成によれば、芯部材の内部における気体吸着デバイスの収納空間では、空間の体面である芯部材と気体吸着デバイスとの摩擦によって、気体吸着デバイスの移動が規制されるため、生産性の低下が防止される。
【0052】
第19の発明に係る密閉容器の製造方法は、金属製容器の第1内部空間内に固形物を収容することと、前記金属製容器の第1内部空間を減圧しながら、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスから成る封止部材を加熱溶融し冷却固化することにより当該封止部材を前記金属製容器の開口部に接合し、それにより前記封止部材で前記開口部を封止することとを含む。
【0053】
この構成によれば、加熱処理によって封止部材のガラスに含まれるアルカリ土類金属酸化物またはアルカリ金属酸化物が、金属製容器の開口部の表面に形成される金属酸化物と化学結合する。これによって、封止部材と開口部とが強固に接合されため、固形物が金属製容器の内部に収納されても、密閉容器の密閉性が高く維持される。
【0054】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0055】
なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0056】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉容器1の断面図を示す。密閉容器1は、金属製容器3と、固形物4と、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスの封止部材2と、を備える。
【0057】
金属製容器3は、減圧された内部空間(以下、第1内部空間という)を形成する部材である。金属製容器3は、水や気体などが透過せず、耐熱性が高く、封止部材2よりも熱膨張係数が大きい金属により構成される。この金属には、コストおよび入手し易さの観点から、たとえば、アルミニウム、鉄、銅およびステンレスなどが用いられる。ただし、金属は、これに限定されず、密閉容器1の使用目的や、封止部材2の溶融温度に応じて適宜選択される。特に、アルミニウムは、金属の中でも熱膨張係数が大きく、他の金属と比較して展延性が高いため、金属製容器3の材質として好ましい。
【0058】
金属製容器3は、開口する一方端(以下、「開口端」と言う。)と、閉じられた他方端とを含む筒状に形成される。金属製容器3は開口部5を含み、開口部5は金属製容器3の開口及びその近傍で構成される。開口部5の径は、封止部材2が挿入可能な長さに設定される。ここでは、開口部5に狭窄部7が設けられる。
【0059】
狭窄部7は、金属製容器3の開口端と固形物4との間に設けられ、金属製容器3の開口(開口端)より細い部分である。狭窄部7の径は、開口の径より小さく、溶融した封止部材2を保持することができるサイズに設定される。狭窄部7の形状は、特に限定されない。狭窄部7の上端と金属製容器3の開口端との間隔があいていてもよいし、なくてもよい。この間隔がない場合、加熱処理前に封止部材2は金属製容器3の開口端の上に載せられる。一方、間隔がある場合、加熱処理前に金属製容器3の開口端と狭窄部7の上端との間において封止部材2が開口部5の中に挿入される。
【0060】
固形物4は、金属製容器3の第1内部空間に収容される。固形物4としては、減圧された第1内部空間を保持するために必要な支持材料、または減圧された第1内部空間内に保存する必要がある機能性材料などが挙げられる。
【0061】
支持材料には、多数の微細空間を含む芯部材などがある。芯部材が第1内部空間に配されることにより、第1内部空間が減圧されても、金属製容器3がつぶれずに、減圧された第1内部空間が維持される。たとえば、芯部材には、熱伝達率が小さく、かつ減圧下で加熱処理によりガスの発生が少ない、グラスウールなどの材料が用いられ得る。このような芯部材が固形物4として用いられると、金属製容器3の第1内部空間が減圧状態に維持され、かつ金属製容器3の第1内部空間内に芯部材を収容した密閉容器1の熱伝達率が小さくなる。このため、密閉容器1自体が真空断熱体として利用され得る。
【0062】
機能性材料には、気体を吸着する気体吸着材などがある。気体吸着材は、封止部材2が開放されるまでは減圧された第1内部空間内に保存される際、金属を支持し、第1内部空間を確保する。
【0063】
気体吸着材には、加熱処理により活性を失わず劣化しない材料が用いられる。気体吸着材として、減圧下において加熱処理によって活性化される物質が用いられる。気体吸着材には、たとえば、Ba系、Ti系、Zr系、Fe系などの合金ゲッターや、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトなどが挙げられる。特に、エネルギー効率および気体吸着性能の管理の点から、減圧下において加熱処理によって活性化される銅イオン交換ZSM−5が気体吸着材として好ましい。
【0064】
気体吸着性能の管理の点について、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの吸着活性点は銅イオンである。この銅イオンが銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト内に導入されている状態に応じて、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの色相が変化する。このことを利用して、測色値により減圧下において銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの気体吸着性能を管理することが可能である。
【0065】
測色値は、市販の分光色差計にて計測される。分光色差計では、測定用セルに銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトが充填され、380nm〜760nmの範囲の波長に対する光の反射率、吸収率および透過率などが計測される。計測された数値を基に、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの色座標が求められる。
【0066】
測色色差計SE6000(日本電色工業株式会社製)により計測された場合の、吸着性能を発揮する銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの測色値(色座標、反射率)の範囲が以下に示される。この場合、C光源が用いられ、視野角2°で色座標が測定された。なお、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトは加熱処理前後で活性が異なるため、加熱処理前および加熱処理後における測色値が求められた。また、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトは、金属製容器3に収容された状態で断熱体内に配されてから加熱処理された。このため、加熱処理された断熱体から金属製容器3を取り出し、金属製容器3を破壊し、第1内部空間から銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを取り出すことにより、加熱処理後の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを得た。そして、この加熱処理後の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトは、加熱処理前の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトと同様に、色差計により測定された。
【0067】
加熱処理前の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトのL*、a*、b*色座標が、たとえば、70≧L*≧96、0≧a*≧−6、−1≧b≧−15であれば、吸着性能が良好である。より望ましくは、色座標が、たとえば、75≧L*≧96、−2.5≧a*≧−6、−1≧b≧−10であれば、吸着性能がさらに優れる。また、380nm〜580nmの波長の光に対する反射率が、たとえば、55%以上で95%以下であれば、良好な吸着性能が発揮される。より望ましくは、400nm〜500nmの波長の光に対する反射率が、たとえば、60%以上で95%以下であれば、さらに高い吸着性能が発揮される。
【0068】
加熱処理により銅イオンの状態が変化すると共に、空気成分が銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトに吸着することによって、加熱処理後の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの測色値が変化する。このため、加熱処理後の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトのL*、a*、b*色座標が、たとえば、88≧L*≧81、4≧a*≧−4、12≧b≧−4であれば、吸着性能が良好であると考えられる。より望ましくは、色座標が、たとえば、86≧L*≧83、2≧a*≧−2、10≧b≧−2であれば、吸着性能がさらに優れる。また、380nm〜580nmの波長の光に対する反射率が、たとえば、50%以上で70%以下であれば、良好な吸着性能を得ることができる。より望ましくは、400nm〜500nmの波長の光に対する反射率が、たとえば、50%以上で70%以下であれば、さらに高い吸着性能が発揮される。
【0069】
銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの測色値が上記の範囲であれば、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトは優れた気体吸着性能を発揮することがわかる。このため、測色値により、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの気体吸着性能が容易に判定される。
【0070】
封止部材2は、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスで構成される。アルカリ金属酸化物としては、たとえば、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2Oが挙げられる。また、アルカリ土類金属酸化物としては、たとえば、MgO、CaO、BaOおよびSrOが挙げられる。特に、アルカリ土類金属酸化物はアルカリ金属酸化物より金属製容器3と強く化学結合するため、望ましい。このアルカリ土類金属酸化物の中でも、BaOおよびSrOは、金属製容器3との化学結合がさらに強固であるため、望ましい。このBaおよびSrのイオン化エネルギーが、Be、Mg、Caなど他のアルカリ土類金属酸化物よりも小さい。このため、BaおよびSrと結合している酸素原子が、金属製容器3の表面の金属酸化物と化学結合し易いためと考えられる。
【0071】
アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方(以下、「アルカリ土類金属酸化物など」と言う。)のモル比は、たとえば、1〜65%であり、15〜60%であることが好ましい。アルカリ土類金属酸化物などのモル比が多すぎると、封止部材2がガラスとしての性能を保持することができなくなる。また、アルカリ土類金属酸化物などのモル比が少なすぎると、封止部材2と金属製容器3との接合が弱くなってしまう。
【0072】
なお、モル比は、たとえば、以下のようにして求められる。封止部材2を酸などで溶解し、試料を作成する。この試料に含まれる各元素の重量を、ICP発光分光分析などによって測定する。元素の重量を元素の原子量で割って、元素のモルを求める。元素はガラス中では酸化物として存在するため、元素のモルを元素の酸化物にモルに変換する。そして、全元素の酸化物のモルの合計量に対するアルカリ土類金属酸化物などのモルの比により、アルカリ土類金属酸化物などのモル比が求められる。
【0073】
接合部6は、封止部材2の表面に形成された層であって、封止部材2において金属製容器3の開口部5と接合する部分である。接合部6は、金属製容器3の開口部5の内部において封止部材2が加熱溶融され冷却固化されることにより形成される。接合部6は、封止部材2のアルカリ土類金属酸化物などと、金属製容器3の表面に形成された金属酸化物とが酸素を介して化学結合する部分である。
【0074】
ここで、「化学結合する」ことの根拠を説明する。この接合部6は、水に浸漬されて多量の水に接触することにより、封止部材2から剥離する。この水をICP発光分光分析などで分析したところ、アルカリ土類金属が検出された。これに対して、封止部材2の単体を水に浸漬して、この水をICP発光分光分析などで分析しても、アルカリ土類金属は検出されなかった。この結果、接合部6は封止部材2とは異なり化学結合により形成され、水に溶解しやすい性質を有することが判明した。この化学結合は、金属製容器3の表面に形成された金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物とに起因する、酸素を介した化学結合であると考えられる。
【0075】
[密閉容器の製造方法]
図2は、第1内部空間に固形物4を収容した金属製容器3を示す斜視図である。図3は、図2に示す金属製容器3を潰した状態を示す。図4は、図3に示す金属製容器3の開口部5に封止部材2を挿入した状態を示す。
【0076】
図2に示すように、円筒形状の金属製容器3の第1内部空間内に固形物4を配置する。この金属製容器3の厚みが小さくなるように、図3に示すように、金属製容器3の軸方向の全長に亘って金属製容器3を潰す。これにより、金属製容器3の断面が、略楕円形または角が丸い矩形状の扁平な形状になる。そして、図4に示すように、金属製容器3の開口部5をさらに挟んで潰し、狭窄部7を形成する。そして、開口部5に封止部材2を挿入すると、封止部材2は狭窄部7の上に保持される。
【0077】
このような金属製容器3が真空加熱炉内で減圧されながら加熱される。この加熱温度は、適宜決定されるが、たとえば、封止部材2の一部または全部が溶融される温度に設定される。これにより、第1内部空間が減圧され真空状態になると共に、封止部材2が溶融する。溶融した封止部材2は、狭窄部7の中に流れ込み、表面張力などにより狭窄部7に留まる。続いて、真空加熱炉は減圧されたまま、温度が下げられると、金属製容器3は冷却される。これにより、溶融した封止部材2が固化する。また、熱膨張した金属製容器3が収縮する。
【0078】
このとき、ガラスの封止部材2に含まれるアルカリ土類金属酸化物などと、金属製容器3の表面に形成された金属酸化物とが化学結合することにより、金属製容器3の開口部5と封止部材2との間が化学的に接合する。また、金属製容器3が封止部材2より大きく収縮するため、金属製容器3の開口部5が封止部材2の周囲を挟み込むことにより、金属製容器3の開口部5と封止部材2との間が機械的に接合する。このような化学的な接合および機械的な接合によって、金属製容器3の開口部5と封止部材2との間が隙間なく、金属製容器3の開口が封止部材2により塞がれて、金属製容器3が密閉される。これにより、密閉容器1が形成される。
【0079】
なお、加熱処理および冷却処理の条件は、特に指定するものではなく、封止部材2および金属製容器3の組み合わせにより適切に選択される。ただし、加熱処理が減圧下で行われるため、加熱温度が高すぎると、封止部材2のガラス組成物と、金属製容器3の金属酸化物とにおいて脱酸素反応が生じる。これにより、ガラス組成物に含まれる金属と金属酸化物の金属とが合金を形成し、合金が剥離することがある。よって、加熱温度は、たとえば、700℃以下であることが望ましい。
【0080】
[作用、効果]
第1の実施の形態に係る密閉容器1によれば、ガラスの封止部材2が加熱処理により溶融すると、ガラス組成物内において元素の拡散および移動が生じる。これにより、アルカリ土類金属酸化物などが金属製容器3の表面の金属酸化物と親和性が高いため、金属製容器3と接触している接合部6にアルカリ土類金属酸化物などが増える。そして、この封止部材2のアルカリ土類金属酸化物などと金属製容器3の金属酸化物とが酸素を介して強固な化学結合を形成すると考えられる。この結果、金属製容器3の開口部5と封止部材2との間は、気密性が高い上、強固に接合される。
【0081】
また、アルミニウムの金属製容器3の熱膨張係数は、ガラスの封止部材2の熱膨張係数より大きい。このため、加熱処理後の冷却処理において、アルミニウムの金属製容器3は、金属製容器3の開口部5に挿入されたガラスの封止部材2より大きく収縮する。これにより、これらの熱膨張係数の差によって生じる応力によって、金属製容器3の開口部5は封止部材2を締め付ける。これにより、金属製容器3は封止部材2により強固に接合され、密閉容器1は気密性に優れる。
【0082】
さらに、アルミニウムの金属製容器3の展延性は、ガラスの封止部材2の展延性より大きい。このため、冷却処理により金属製容器3が収縮する際に、金属製容器3は、封止部材2を破壊することなく、また、破断することなく、封止部材2の形状に沿って柔軟に変形する。これにより、金属製容器3に開口部5は封止部材2に密着して、金属製容器3の開口部5と封止部材2との間に隙間が生じにくい。これにより、封止部材2により金属製容器3は強固に接合され、密閉容器1は気密性に優れる。
【0083】
さらに、アルミニウムの金属製容器3が展延性を有するため、金属製容器3の上から封止部材2に外力が加えられると、金属製容器3が容易に変形する。これにより、外力が封止部材2に伝わり、封止部材2が容易に破壊され、密閉容器1が開封され易い。
【0084】
また、加熱処理によって活性化する気体吸着材が固形物4として用いられれば、気体吸着材の活性化と、封止部材2の溶融とが一度の加熱処理によって行われる。このため、加熱処理のエネルギーの消費が抑えられ、エネルギー効率が良好となる。
【0085】
さらに、減圧状態で活性化され得る気体吸着材が固形物4として用いられれば、第1内部空間が減圧にされた状態で、気体吸着材が活性化され得る。これにより、活性化された気体吸着材が不要な気体や水分を吸着することがなく、気体吸着材の劣化が抑制される。
【0086】
上記構成の密閉容器1によれば、溶融した封止部材2が狭窄部7に固定され、金属製容器3の開口部5と封止部材2とは面接触する。これにより、これらの接合面積が広く、これらの接合力が強くなるため、金属製容器3を確実に密閉することができる。
【0087】
また、金属製容器3の開口部5を変形させることにより、狭窄部7が形成される。このため、金属製容器3とは別に設けられた封止部材2の支持部などを設けることなく、溶融した封止部材2を簡単な構造で支持することができる。
【0088】
さらに、加熱処理前に封止部材2が金属製容器3の開口部5に挿入される際、封止部材2は狭窄部7の上端に支えられる。これにより、封止部材2を簡単かつ確実に開口部5内に配置することができる。
【0089】
以下に、密閉容器1における封止部材2と金属製容器3との接合強度を評価した結果を説明する。この評価には、実施例1〜5の密閉容器1と、比較例1の密閉容器1とを用いた。接合強度を、外観評価および計測評価の2つの方法で評価した。外観評価では、1mの高さから密閉容器1を落下させ、封止部材2が金属製容器3から剥離しているか否かを目視により観察した。封止部材2が剥離している場合には接合強度が弱いと、封止部材2が剥離していない場合には接合強度が強いと判断した。また、計測評価は、島津社製オートグラフを用いて、T型剥離強度試験に準じて行なわれた。具体的には、金属製容器3の開口部5の対向する位置を計測治具に固定し、開口を広げる方向に計測治具を引っ張って移動させる。これにより、開口部5が変形し、封止部材2が開口部5から剥離する。このときの治具の移動距離と引っ張り力とから、引っ張り強度を求めた。
【0090】
(実施例1)
実施例1の密閉容器1では、封止部材2に、ZnO・P2O5・K2Oを含み、熱膨張係数が120×10−7/℃であり、軟化温度が420℃であるガラスを用いた。金属製容器3に、SUS301で構成された円筒を用いた。このSUS301は、その熱膨張係数が16.9×10−6/℃であって、硬さが165Hvである。固形物4に、減圧下で加熱処理により気体吸着活性を発現する合金系粉末を用いた。
【0091】
金属製容器3内に固形物4を設置した後、金属製容器3を全体的に略扁平に押しつぶす。この金属製容器3の開口部5の幅を狭めるように外力を与えて狭窄部7を形成し、狭窄部7の上に封止部材2を配設する。そして、真空加熱炉内において、約100℃にて気体吸着材に含まれるガスや水分を脱離させた後、約500℃にて気体吸着材を適切に活性化させてから、550℃にて封止部材2を溶融させた。この加熱処理の後、真空加熱炉を真空状態において常温まで放冷し、密閉容器1を作成した。
【0092】
このように作成された密閉容器1では、封止部材2が金属製容器3に接合し、封止部材2と金属製容器3との間に隙間がなかった。この密閉容器1を落下させた後の外観評価では、封止部材2と金属製容器3との隙間がなく、接道強度が高いと評価した。この高い接合強度は、接合部6における化学結合による化学的接合と金属製容器3の締め付けによる機械的接合とによるものと考えられる。また、密閉容器1の計測評価では、剥離強度が、0.80N/mm2であった。
【0093】
(実施例2)
実施例2の密閉容器1は、実施例1の密閉容器1と、封止部材2および固形物4が同じであるが、金属製容器3が異なる。金属製容器3に、熱膨張係数が17.0×10−6/℃であって、硬さが46Hvである銅で構成された円筒を用いた。また、実施例2の密閉容器1の作成方法も、実施例1の密閉容器1と同様である。
【0094】
作成された密閉容器1では、封止部材2と金属製容器3との間に隙間がなかった。この密閉容器1を落下させた後の外観評価では、封止部材2と金属製容器3との隙間がなく、接道強度が高いと評価した。この高い接合強度は、接合部6における化学結合による化学的接合と金属製容器3の締め付けによる機械的接合とによるものと考えられる。
【0095】
また、密閉容器1の計測評価では、剥離強度が、1.0N/mm2であった。この剥離強度が実施例1の剥離強度より大きい。これは、SUS301よりも銅の方が表面に金属酸化物の層を形成しやすいため、封止部材2のK2Oと強固に化学結合するからであると考えられる。
【0096】
なお、銅の硬度はSUS301の硬度より低く。このため、銅で構成された金属製容器3に外力が加えられると、その力が封止部材2に伝えられ、封止部材2が破壊され易い。このため、密閉容器1が容易に開放される。
【0097】
(実施例3)
実施例3の密閉容器1は、実施例1の密閉容器1と、封止部材2および固形物4が同じであるが、金属製容器3が異なる。金属製容器3に、熱膨張係数が23.9×10−6/℃であって、硬さが25Hvであるアルミニウムで構成された円筒を用いた。また、実施例3の密閉容器1の作成方法も、実施例1の密閉容器1と同様である。
【0098】
作成された密閉容器1では、封止部材2と金属製容器3との間に隙間がなかった。この密閉容器1を落下させた後の外観評価では、封止部材2と金属製容器3との隙間がなく、接道強度が高いと評価した。この高い接合強度は、接合部6における化学結合による化学的接合と金属製容器3の締め付けによる機械的接合とによるものと考えられる。
【0099】
また、密閉容器1の計測評価では、剥離強度が、1.1N/mm2であった。この剥離強度が実施例1および2の剥離強度より大きい。これは、SUS301および銅よりもアルミニウムの方が表面に金属酸化物の層を形成しやすいため、封止部材2のK2Oと強固に化学結合するからであると考えられる。
【0100】
(実施例4)
実施例4の密閉容器1は、実施例3の密閉容器1と、固形物4および金属製容器3が同じであるが、封止部材2が異なる。封止部材2にZnO・P2O5・CaOを含み、熱膨張係数が80×10−7/℃であり、軟化温度が500℃であるガラスを用いた。また、実施例4の密閉容器1の作成方法は、加熱処理以外は、実施例1の密閉容器1と同様である。実施例4の加熱処理では、約100℃にて気体吸着材に含まれるガスや水分を脱離させた後、約580℃にて気体吸着材を適切に活性化させてから、620℃にて封止部材2を溶融させた。
【0101】
作成された密閉容器1では、封止部材2と金属製容器3との間に隙間がなかった。この密閉容器1を落下させた後の外観評価では、封止部材2と金属製容器3との隙間がなく、接道強度が高いと評価した。この高い接合強度は、接合部6における化学結合による化学的接合と金属製容器3の締め付けによる機械的接合とによるものと考えられる。
【0102】
また、密閉容器1の計測評価では、剥離強度が、1.4N/mm2であった。この剥離強度が実施例3の剥離強度より大きい。これは、封止部材2のアルカリ土類金属のCaOがアルカリ金属のK2Oより金属製容器3の表面の金属酸化物と強く化学結合するからであると考えられる。
【0103】
(実施例5)
実施例5の密閉容器1は、実施例3の密閉容器1と、固形物4および金属製容器3が同じであるが、封止部材2が異なる。封止部材2にBi2O2・B2O3・SrO・BaO・ZnOを含み、熱膨張係数が110×10−7/℃であり、軟化温度が420℃であるガラスを用いた。また、実施例5の密閉容器1の作成方法は、加熱処理以外は、実施例1の密閉容器1と同様である。実施例5の加熱処理では、約100℃にて気体吸着材に含まれるガスや水分を脱離させた後、約500℃にて気体吸着材を適切に活性化させてから、600℃にて封止部材2を溶融させた。
【0104】
作成された密閉容器1では、封止部材2と金属製容器3との間に隙間がなかった。この密閉容器1を落下させた後の外観評価では、封止部材2と金属製容器3との隙間がなく、接道強度が高いと評価した。この高い接合強度は、接合部6における化学結合による化学的接合と金属製容器3の締め付けによる機械的接合とによるものと考えられる。
【0105】
また、密閉容器1の計測評価では、剥離強度が、2.0N/mm2であった。この剥離強度が実施例4の剥離強度より大きい。これは、封止部材2のSrOおよびBaOがCaOより金属製容器3の表面の金属酸化物と強く化学結合するからであると考えられる。
【0106】
(比較例)
比較例の密閉容器は、実施例5の密閉容器1と、金属製容器、封止部材および固形物が同じであるが、密閉容器の作成用法が異なる。つまり、実施例5の密閉容器1では、略扁平に潰されて、開口部5に狭窄部7が形成された金属製容器3が用いられた。この金属製容器3内の狭窄部7に封止部材2が侵入し、ここで封止部材2が金属製容器3と化学結合し、面状に広がる接合部6が形成された。これに対し、比較例の密閉容器では、円筒形状の金属製容器が用いられた。この金属製容器内に封止部材が侵入せずに、金属製容器の開口端と封止部材とが接合し、線状の接合部6が形成された。
【0107】
作成された密閉容器では、封止部材と金属製容器との間に隙間がなかった。しかし、この密閉容器を落下させた後の外観評価では、封止部材が金属製容器から剥離し、接道強度が低いと評価した。この低い接合強度は、化学結合の面積が小さい上、金属製容器の締め付けによる機械的接合がなかったことによるものと考えられる。
【0108】
[変形例1]
図1に示す金属製容器3の開口部5に狭窄部7が設けられたが、図5に示すように開口部5に狭窄部7が設けられなくてもよい。この場合、溶融した封止部材2を支持するものが開口と固形物4との間に設けられる。この支持部には、たとえば、通気性および耐熱性を有する無機繊維集合体やフィルター、または突起などが用いられる。この支持部が設けられた金属製容器3が加熱処理されると、支持部は、溶融した封止部材2を支持する。これにより、封止部材2が、金属製容器3の開口部5に保持され、金属製容器3の開口を確実に密閉することができる。なお、突起は、金属製容器3の開口部5の径が小さくなる方向に、開口部5から内側に向かって突出する。突起の高さは、溶融した封止部材2の粘度などにより決定される。突起は、金属製容器3と一体的に形成されてもよいし、金属製容器3と別に形成された部材が金属製容器3の内部に取り付けられて形成されてもよい。
【0109】
[変形例2]
図1に示す金属製容器3は略扁平状に潰されていたが、図6に示すように円筒形状の金属製容器3が用いられてもよい。の開口部5に狭窄部7が設けられたが、溶融した封止部材2を支持するものが設けられなくてもよい。この場合、開口部5の大きさは、加熱処理前の封止部材2の大きさより小さく設定されてもよい。この場合、加熱処理前に封止部材2を金属製容器3の開口端上に配置することができる。
【0110】
(実施の形態2)
[真空断熱体の構成]
図1は、本発明の実施の形態2に係る真空断熱体8を概略的に示す断面図である。
【0111】
真空断熱体8は、気体吸着デバイス1としての密閉容器1と、芯部材9と、気体吸着デバイス1と芯部材9とを第2内部空間に収容し、第2内部空間が減圧されて密封されている外被部材10と、を備える。
【0112】
外被部材10は、中空であって、いわゆる真空の内部空間(以下、第2内部空間という)を有する。ここで、いわゆる真空は、大気圧に比べて圧力が低い状態である。たとえば、第2内部空間の真空度は、1〜200Paである。外被部材10は、水や気体などが第2内部空間に侵入することを遮断するガスバリア性のフィルムで構成される。このガスバリア性は、たとえば、気体透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下であって、望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下であり、さらに望ましくは102[cm3/m2・day・atm]以下である。この外被部材10には、たとえば、樹脂膜およびアルミ箔などを積層したラミネートフィルムが用いられる。
ラミネートフィルムは、積層物がラミネート処理されたシートである。積層物は、最内層の熱溶着フィルムと、中間層のガスバリアフィルムと、最外層として表面保護フィルムとが積層されたシートである。
【0113】
最内層の熱溶着フィルムとしては、特に指定するものではないが、たとえば、熱可塑性樹脂あるいはその混合体が用いられる。この熱可塑性樹脂には、たとえば、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルムが挙げられる。
【0114】
中間層のガスバリアフィルムとしては、特に指定するものではないが、たとえば、金属箔または金属蒸着フィルムが用いられる。金属箔には、アルミニウム箔や銅箔などが挙げられる。金属蒸着フィルムは、たとえば、樹脂フィルムにアルミニウムや銅等の金属や金属酸化物が蒸着ることにより形成される。この樹脂フィルムの樹脂には、たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
【0115】
最外層の表面保護フィルムとしては、特に指定するものではないが、たとえば、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの樹脂フィルムが用いられる。
【0116】
芯部材9は、外被部材10の第2内部空間内に収容され、真空の第2内部空間を維持する真空断熱体8の骨格部材である。外被部材10の真空の第2内部空間において、芯部材9は、多数の微細な空間を内部に有し、外被部材10を支えることにより外被部材10の内部空間を保持する。芯部材9は、多孔性物質であって、ポリスチレンやポリウレタンなどのポリマー材料の連通気泡体や、無機材料の連通気泡体、無機および有機の粉末、無機および有機の繊維材料などが利用できる。芯部材9には、たとえば、熱伝導性が低く、耐熱性が高く、かつ真空状態や高温状態においてガスの発生が少ない繊維などが用いられる。繊維には、たとえば、グラスウール、ロックウール、アルミナ繊維、金属繊維など無機繊維や、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂繊維が挙げられる。この中でも、グラスウールは、弾性が高く、熱伝導率が低く、工業的に安価であるため好ましい。また、繊維は細いほど、真空断熱体8の熱伝導率が低下し、細い繊維が好ましい。ただし、繊維が高価になるため、コストと熱伝統率を考慮にいれて、繊維の径が選択される。たとえば、真空断熱体8用の繊維として一般的に使用されている比較的安価な平均繊維径が3μm〜6μm程度のグラスウールの集合体が望ましい。
【0117】
芯部材9は、立体形状を有し、たとえば、厚みが小さい略直方体形状である。芯部材9は、1枚の繊維シート、または、積層された複数の薄い繊維シートにより構成される。複数の繊維シートが積層された芯部材9では、その積層方向に延びる切れ込み11が設けられている。
【0118】
切れ込み11は、気体吸着デバイス1を芯部材9の内部に入れるための挿入口であって、気体吸着デバイス1が収納された空間に通ずる。切れ込み11は、芯部材9の表面に対して垂直に設けられた切れ目であって、たとえば、矩形の形状を有する。芯部材9の表面に平行な切れ込み11の幅は気体吸着デバイス1の幅より大きい。切れ込み11は、芯部材9の表面から内部に延び、芯部材9の表面に垂直な深さは一枚以上の繊維シートの厚みより大きいため、一枚以上の繊維シートが切断される。
【0119】
気体吸着デバイス1の収納空間12は、芯部材9の内部に設けられる。気体吸着デバイス1の収納空間12には、芯部材9が切断されることにより形成されてもよいし、芯部材9の内部に予め形成されていてもよい。芯部材9が切断されることにより気体吸着デバイス1の収納空間12が形成される場合、切れ込み11により切断された繊維シートが剥がされ、これにより形成された裂け目12が収納空間12として用いられる。裂け目12は、芯部材9の表面に平行であって、積層された繊維シートの間に形成される。この裂け目12と切れ込み11は、芯部材9の表面に垂直な方向においてL字状に繋がる。このため、気体吸着デバイス1は、切れ込み11から裂け目12に挿入される。
【0120】
気体吸着デバイス1は、外被部材10の第2内部空間に残存または侵入する気体熱伝導成分を吸着するための部材である。金属製容器3の第1内部空間に気体吸着材が収納され、第1内部空間が減圧されて金属製容器3の開口部5が封止部材2で封止されている。気体吸着材には、酸化カルシウムや酸化マグネシウム等の化学吸着物質や、ゼオライトのような物理吸着物質、あるいは、それらの混合物が使用できる。また、化学吸着性と物理吸着性を持った銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトも使用できる。また、金属製容器3には、アルミおよび銅金属、樹脂等が用いられる。封止部材2には、金属性容器を封止可能であって金属製容器3よりも脆弱な材料が用いられ、たとえば、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物を含むガラスが用いられる。
【0121】
気体吸着デバイス1は、芯部材9の内部に形成された裂け目12に収納されている。気体吸着デバイス1は、気体吸着デバイス1の形状は、特に限定されておらず、たとえば、真空断熱体8の形状に合わせられてもよい。たとえば、厚みの小さい略扁平形状の真空断熱体8には、幅が厚みより大きい略扁平な断面形状を有する気体吸着デバイス1の形状が用いられる。この場合、気体吸着デバイス1は、略扁平な断面の短軸(厚み)が真空断熱体8の厚み方向となり、略扁平な断面の長軸(幅)が真空断熱体8の表面に並行になるように配される。これにより、気体吸着デバイス1は、その略扁平な断面の短軸(厚み)が真空断熱体8の厚み方向となるように配置される。この真空断熱剤の表面において気体吸着デバイス1の配置箇所に対応する部分に印13が設けられる。
【0122】
印13は、外被部材10の内部に配されている気体吸着デバイス1の位置、特に気体吸着デバイス1の開口部5の位置を示す目印である。印13は、外被部材10において、気体吸着デバイス1が配設されている箇所に相対する(対応する)部位に付けられる。印13は、外被部材10の外部から気体吸着デバイス1の位置がわかるものであれば、種類や形状などは特に限定されない。たとえば、印13は、外被部材10の外表面に記されたマークであってもよいし、外被部材10の外表面に貼り付けられたシールであってもよい。たとえば、外被部材10を作製する際や真空断熱体8にロットナンバーを印13字する際に、印13を外被部材10に印刷してもよい。また、真空断熱体8の製造後に、インク等を用いて人が印13を付けてもよい。
【0123】
また、気体吸着デバイス1の設置位置、特に封止部9のある位置の印13が外被部材106に印刷されており、気体吸着デバイス1の開封時の外力を加える位置となっている。
【0124】
[真空断熱体の製造]
真空断熱体8の製造方法は、特に限定されない。たとえば、芯部材9の表面を上にして、芯部材9の表面から内部に向かって切断し、芯部材9に切り込みを形成する。この切れ込み11により切断された繊維シートを剥がすと、繊維シートが剥がれて、芯部材9の内部に裂け目12が形成される。そして、気体吸着デバイス1を切れ込み11から裂け目12に挿入すると、裂け目12に気体吸着デバイス1が収納される。このとき、そして、封止部材2が配置された気体吸着デバイス1の先端部から切れ込み11に挿入されるため、気体吸着デバイス1の後端部は切れ込み11の近傍に配置される。そして、略扁平な断面の短軸(厚み)が芯部材9の厚み方向となるように、気体吸着デバイス1が芯部材9内に配置される。この切れ込み11により、気体吸着デバイス1の芯部材9の表面に平行な方向の移動が規制される。
【0125】
また、最内層の熱溶着フィルムが内側になるように、一枚のラミネートフィルムを折る。これにより、重ねられたラミネートフィルムの2辺を加熱し、熱溶着フィルムどうしを溶着すると、1辺が開口した袋状のラミネートフィルムが形成される。この開口から中に、気体吸着デバイス1が収容された芯部材9を挿入し、真空ポンプが接続されたチャンバーの減圧下にラミネートを配置する。チャンバー内が10Pa程度に減圧されたら、袋状のラミネートフィルムの開口を閉じるように熱溶着フィルム同士を熱溶着する。これにより、第2内部空間が真空になった状態で外被部材10が密封される。この外被部材10には印13が設けられており、印13は気体吸着デバイス1に対応する位置に配されている。このようにして、第2内部空間が真空な真空断熱体8が完成する。
【0126】
なお、上記の真空断熱体8の製造では、一枚のラミネートフィルムを三方閉めとすることにより外被部材10が形成された。これに対して、二枚のラミネートフィルムを四方閉めとすることによっても、同様に外被部材10が形成される。
【0127】
[真空断熱体の使用]
以上のように構成された真空断熱体8について、以下その動作を説明する。図8は、真空断熱体8の中に収容されている気体吸着デバイス1を示す斜視図である。図9は、変形した気体吸着デバイス1を示す斜視図である。
【0128】
図7に示すように、印13を上にして真空断熱体8を置き、印13に向かって略扁平の断面に対して平行な方向の外力を加えると、外被部材10および芯部材9が押し込まれる。そして、外力は、印13に対応する位置にある気体吸着デバイス1の封止部材2に作用する。この図8に示す気体吸着デバイス1は、図9に示すように、金属製容器3が曲がって変形する。そして、外力が封止部材2に作用し、脆弱な封止部材2が破壊される。これにより、封止部材2に貫通口14が形成され、金属製容器3内の第1内部空間と、金属製容器3外の第2内部空間が連通する。よって、第1内部空間内の気体吸着剤は、第2内部空間に残存する気体熱伝導成分および、第2内部空間に侵入してくる気体熱伝道成分を吸着する。この結果、第2内部空間が真空な状態、たちえば、1Pa以下に維持され、真空断熱体8は優れた断熱性能を維持することができる。
【0129】
[作用、効果]
上記構成によれば、気体吸着デバイス1が外被部材10の第2内部空間に収容されることにより、第2内部空間が真空状態に維持される。このため、真空断熱体8の断熱性能の低下が防止される。
【0130】
また、気体吸着デバイス1の配置位置に対応する箇所に印13が設けられていることにより、印13を目印に外力を加えると、封止部材2が確実に破壊される。このため、真空断熱体8内において気体吸着デバイス1の機能が発揮され、真空断熱体8の真空度、ひいては断熱性が維持される。
【0131】
さらに、外力により気体吸着デバイス1が開放されることにより、気体吸着デバイス1を開放するための器具などを設ける必要がなく、簡単かつ確実に吸着デバイスが開放される。また、開封部材により真空断熱体8表面が隆起し、外被部材106が擦れて破れるなどの不具合が防がれる。
【0132】
また、封止部材2が外被部材10の内部で破壊され、貫通口14が形成されることにより、気体吸着デバイス1の性能を発揮する。貫通口14の形成のこのため、たとえば、性能不良などの真空断熱体8の原因調査のために、真空断熱体8から気体吸着デバイス1を取り出し、封止部材2における貫通口14の形成状況を見ることにより、吸着デバイスが機能しているかどうかを確認することができる。
【0133】
さらに、気体吸着デバイス1が芯部材9の内部に設置されているため、芯部材9が緩衝材となり、気体吸着デバイス1の誤開封が防がれる。
【0134】
また、気体吸着デバイス1の金属製容器3の開口部5が略扁平の断面を含む筒状で形成され、気体吸着デバイス1は略扁平の短軸が真空断熱体8の表面に垂直になるように配置されている。このため、略扁平の断面に対して平行な方向に外力が加えられると、略扁平な短軸の方向において外力が開口部5に対して封止部材2を曲げる力が作用する。この略扁平な短軸方向における外力に対する開口部5および封止部材2の強度は略扁平な長軸方向に比べて小さい。これにより、封止部材2が簡単かつ各軸に破壊され、貫通口14が形成される。
【0135】
さらに、芯部材9に形成された切れ込み11は、芯部材9の内部の裂け目12に通ずる。このため、気体吸着剤は、切れ込み11から裂け目12に挿入され、気体吸着デバイス1が裂け目12の空間に収納される。この切れ込み11により、気体吸着デバイス1の芯部材9の表面に平行な方向の移動が規制される。
【0136】
[変形例3]
上記実施の形態2に係る真空断熱体8において、印13は、外被部材10の外表面に付されたマークやシールであった。ただし、印13は、外被部材10に現われた凹部、凸部、切り込みなどであってもよい。このため、芯部材9の切れ込み11も気体吸着デバイス1の設置位置の印13となり得る。また、図10に示すように、気体吸着デバイス1を芯部材9の内部に収容することにより、気体吸着デバイス1に対応する範囲において芯部材9の表面が外側に膨らむ。この膨らみは外被部材10に現われるため、この膨らみも気体吸着デバイス1の位置を表す印13に用いられる。さらに、図11に示すように、芯部材9に窪みが形成され、この窪みに気体吸着デバイス1が収容される場合、この窪みは外被部材10に現われるため、この窪みも気体吸着デバイス1の位置を示す印13として用いられる。
【0137】
[変形例4]
上記実施の形態2に係る真空断熱体8において、芯部材9の内部に気体吸着デバイス1が収容されていた。これに対し、芯部材9の表面上に気体吸着デバイス1が配置されてもよい。この場合、切れ込み11や気体吸着デバイスの収容空間12は設けられない。
【0138】
(実施の形態3)
実施の形態2では、気体吸着デバイス1が真空断熱体8に備えられていた。これに対し、実施の形態3では、気体吸着デバイス1が内袋15に収容され、さらに水分吸着剤16が真空断熱体8に備えられている。
【0139】
[真空断熱体の構成]
図12は、実施の形態3に係る真空断熱体8を示す断面図である。
【0140】
内袋15は、外被部材10の第2内部空間に設けられ、気体吸着デバイス1の位置ずれを抑制する移動抑制部である。内袋15には、摩擦力が大きい材料、たとえば、和紙やPEなどの樹脂で構成される不織布などが用いられる。特に、内袋15は、弾性材料で構成され、弾性材料には、PPおよびPETなどの樹脂で構成される不織布などが挙げられる。この弾性材料はやわらかく、変形しにくいため、内袋15によって気体吸着デバイス1にキズや凹みなどの外観異常が起きることが防止される。また、樹脂で構成された不織布は、和紙に比べて水分を含みにくく破れにくいという点から好ましい。特に、PPとPETで構成された不織布は、引張り強度、引裂き強度および耐熱性が高く、低コスト面であるため、安価で簡単な生産加工で製作することができるため、好ましい。
【0141】
内袋15は、気体吸着デバイス1の一部または全部を内包する。内袋15は、三方閉めや四方閉めされた形状を有する。内袋15が四方閉めされている場合、内袋15には通気性を有する材質が用いられる。四方閉めされた内袋15では、気体吸着デバイス1が外れにくいため、好ましい。
【0142】
水分吸着剤16は、真空断熱体8の第2内部空間に残存または侵入する水蒸気を吸着する材料である。水分吸着剤16には、たとえば、酸化カルシウムや酸化マグネシウム等の化学吸着物質やゼオライトのような物理吸着物質、あるいは、それらの混合物が用いられる。
【0143】
[作用、効果]
上記構成によれば、気体吸着デバイス1が内袋15に包まれている。これにより、気体吸着デバイス1を芯部材9内に設置する際や、この芯部材9を外被部材10で包む際などに、内袋15と芯部材9との摩擦によって気体吸着デバイス1の位置がずれることが防止される。これにより、気体吸着デバイス1の封止部材2の位置が簡単に特定でき、生産性の低下が抑えられる。また、外力が気体吸着デバイス1に確実に加わり、気体吸着デバイス1が開放される。
【0144】
さらに、内袋15は気体吸着デバイス1の緩衝材となるため、気体吸着デバイス1の誤開封が低減される。
【0145】
また、うち袋により気体吸着デバイス1の位置ずれが防止されるため、位置ずれした気体吸着デバイス1に外被部材10が擦れて破れてしまうことが防止される。
【0146】
さらに、気体吸着デバイス1および水分吸着剤16が併用される。これにより、真空断熱体8の第2内部空間の気体の水分が安価な水分吸着剤16によって先に吸着される。その後、気体吸着デバイス1を開封すると、気体吸着デバイス1により第2内部空間において水分以外の気体が吸着される。このため、高価な気体吸着物質の使用量が減り、コストが削減される。
【0147】
[変形例5]
なお、上記実施の形態3に係る真空断熱体8に、水分吸着剤16が備えられなくてもよい。
【0148】
[変形例6]
さらに、上記実施の形態3に係る真空断熱体8の外被部材10に、実施の形態2に係る印13が付けられてもよい。この印13により、気体吸着デバイス1の封止部材2の位置が外から簡単に認識することができる。
【0149】
[変形例7]
また、上記実施の形態3に係る真空断熱体8の芯部材9に、図13に示すように、実施の形態2に係る切り込みおよび気体吸着デバイス1の収容空間が設けられてもよい。この場合、内袋15に包まれた気体吸着デバイス1は芯部材9の内部の収納空間12に収容される。この気体吸着デバイス1と内袋15との摩擦に加えて、内袋15と収納空間12の内面との摩擦によって、気体吸着デバイス1の移動が規制される。これにより、内袋15に加えて気体吸着デバイス1が収納された空間の内面が移動抑制部として機能する。
【0150】
[変形例8]
さらに、上記実施の形態3に係る真空断熱体8において気体吸着デバイス1の封止部材2が外力により破壊されて開放された。ただし、気体吸着デバイス1の開封部材が真空断熱体8に備えられてもよい。
【0151】
[変形例9]
また、上記実施の形態3に係る真空断熱体8には、気体吸着デバイス1を包む内袋15が設けられていたが、内袋15が設けられなくてもよい。この場合、気体吸着デバイス1が芯部材9の内部に収容されることにより、収納空間12の内面との摩擦によって、気体吸着デバイス1の移動が規制される。これにより、気体吸着デバイス1が収納された空間の内面が移動抑制部として機能する。また、気体吸着デバイス1と外被部材10の間に必ず芯部材9が挟まれている。これによって、封止部材2に開封部材などに押し当てられるとき、封止部材2と外被部材10との間に存在する弾力性のある芯部材9が、外力の衝撃を和らげる。このため、封止部材2は外力により破壊されるが、封止部材2の破片の飛散が防がれる。よって、封止部材2と外被部材10との間を除き、芯部材9に封止部材2の破片が入り込まない。この結果、真空断熱体8を廃棄する際、それぞれの部材を容易に分けることができ、リサイクル性が向上する。なお、封止部材2の破壊され方によっては、封止部材2と外被部材10との間の芯部材9には、封止部材2の破片を含むことがある。この場合、封止部材2と外被部材10との間の芯部材9をこれ以外の芯部材9から取り除くことにより、真空断熱体8を分別することができる。また、封止部材2と外被部材10との間の芯部材9と、これ以外の芯部材9とが予め分けられていてもよい。この場合、真空断熱体8をさらに簡単に分別することができる。
【0152】
[変形例10]
上記実施の形態3に係る真空断熱体8において、芯部材9の内部に気体吸着デバイス1が収容されていた。これに対し、芯部材9の表面上に気体吸着デバイス1が配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の密閉容器およびその製造方法、ならびに真空断熱体は、固形物を収納した内部空間の真空度の低下が抑制される密閉容器およびその製造方法、ならびに真空断熱体などに適用可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 密閉容器
2 封止部材
3 金属製容器
4 固形物
5 開口部
6 接合部
7 狭窄部
8 真空断熱体
9 芯部材
10 外被部材
11 切れ込み
12 裂け目
12 空間
13 印
14 貫通口
15 内袋
16 水分吸着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、その第1内部空間が減圧された金属製容器と、
前記金属製容器の第1内部空間内に収容された固形物と、
アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスから成る封止部材と、を備え、
前記封止部材は加熱溶融されて冷却固化されることにより前記金属製容器の開口部に接合されて前記開口部を封止しており、
前記金属製容器の開口部に狭窄部が設けられ、
前記封止部材は、前記狭窄部に接合されて該狭窄部を封止している、密閉容器。
【請求項2】
前記封止部材のアルカリ土類金属酸化物が、BaOおよびSrOのいずれかである、請求項1に記載の密閉容器。
【請求項3】
前記金属製容器が、アルミニウムで構成されている、請求項1または2に記載の密閉容器。
【請求項4】
前記固形物が加熱処理により劣化しない気体吸着材を含み、気体吸着デバイスとして機能する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の密閉容器。
【請求項5】
請求項4に記載の密閉容器で構成される気体吸着デバイスと、
芯部材と、
前記気体吸着デバイスと前記芯部材とをその第2内部空間内に収容し、前記第2内部空間が減圧されて密封されている中空の外被部材と、を備える、真空断熱体。
【請求項6】
前記外被部材の第2内部空間において前記封止部材が破壊されることにより、前記気体吸着デバイスを開放する貫通口が形成されている、請求項5に記載の真空断熱体。
【請求項7】
前記金属製容器の開口部が、略扁平な断面を有する筒状に形成され、
前記開口部に略扁平な断面の短軸方向の外力が前記封止部材に加わり、前記封止部材が破壊されることにより、前記貫通口が形成されている、請求項6に記載の真空断熱体。
【請求項8】
前記気体吸着デバイスが前記芯部材の内部に収納され、前記外被部材と前記気体吸着デバイスとの間に前記芯部材が介在する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の真空断熱体。
【請求項9】
前記芯部材の内部において前記気体吸着デバイスが収納される空間に通ずる、前記芯部材に形成された切れ込みをさらに備える、請求項8に記載の真空断熱体。
【請求項10】
前記気体吸着デバイスが配設された箇所に対応する前記外被部材の部位に付けられた印をさらに備える、請求項5〜9のいずれか一項に記載の真空断熱体。
【請求項11】
前記外被部材の第2内部空間に設けられ、前記気体吸着デバイスの移動を抑制する移動抑制部をさらに備えた、請求項5〜10のいずれか一項に記載の真空断熱体。
【請求項12】
前記移動抑制部は、前記気体吸着デバイスの一部または全部を内包する内袋で構成された、請求項11に記載の真空断熱体。
【請求項13】
前記内袋は弾性材料で構成される、請求項12に記載の真空断熱体。
【請求項14】
前記弾性材料は樹脂で構成される不織布を含む、請求項13に記載の真空断熱体。
【請求項15】
前記不織布を形成する樹脂は、PPおよびPETの少なくともいずれか1つを含む、請求項14に記載の真空断熱体。
【請求項16】
前記移動抑制部は、前記芯部材の内部において前記気体吸着デバイスが収納された空間の内面で構成された、請求項11〜15のいずれか一項に記載の真空断熱体。
【請求項17】
開口部に狭窄部が設けられた金属製容器の第1内部空間内に固形物を収容することと、
前記金属製容器の第1内部空間を減圧しながら、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むガラスから成る封止部材を加熱溶融し冷却固化することにより当該封止部材を前記金属製容器の狭窄部に接合し、それにより前記封止部材で前記狭窄部を封止することとを含む、密閉容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−91527(P2013−91527A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19728(P2013−19728)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2012−176195(P2012−176195)の分割
【原出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】