説明

密閉容器

【課題】密閉容器の扉を開放する際に、扉又は密閉容器本体に張り付いた環状パッキンを良好に剥離することが可能な密閉容器を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る滅菌装置1は、缶体2と、制御器19と、パッキン溝用流体ライン20と、内缶ドレン排出ライン40と、外缶ドレン排出ライン50と、内缶蒸気供給ライン70と、外缶蒸気供給ライン80とを備える。缶体2は、内缶3、外缶4、ガイドレール8及び扉18を備え、缶体2の開口部7の周囲には、環状のパッキン溝10が形成され、環状パッキン溝10内には、環状パッキン15が収容されている。制御器19は、扉18の開放に先立って環状パッキン15を環状パッキン溝10内に引き込むパッキン引き込み時に、環状パッキン溝10内を減圧する第一減圧処理と、環状パッキン溝10内の減圧を停止させる休止処理と、環状パッキン溝10内を減圧する第二減圧処理と、を順次実行するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌器、蒸煮冷却機、蒸し器等において用いられる密閉容器に関し、特に、環状パッキンを押し付けて扉を密閉する構成を有する密閉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌器、蒸煮冷却機、蒸し器等では、本体内部を大気圧以上の高圧にしたり、真空等の減圧状態にしたりするために、扉によって本体の開口部が密閉されて内部が気密状態となる密閉容器が用いられている。
【0003】
従来の密閉容器では、例えば、扉と容器本体とを圧着させて内部を気密に保つために、密閉容器の開口部の周縁部又は扉の周縁部の内面に環状の凹溝(環状パッキン溝)を設けると共に、この凹溝内に弾性体の環状パッキンを挿入し、凹溝内に圧力流体を供給して環状パッキンを扉内面又は密閉容器の開口部周縁部に押し付けることで、容器内部を密閉する構成が採用されている。
【0004】
このような構成の滅菌装置は、例えば、下記特許文献1に開示されている。特許文献1には、容器本体側に設置された環状パッキン溝内に環状パッキンを挿入しておき、環状パッキンの底面側の空間を加圧することで、環状パッキンを扉に押し付けて容器内部を気密状態にすると共に、気密状態を解除する際には、環状パッキンの底面側の空間を減圧することで、環状パッキンを環状パッキン溝内に引き込んで収容するよう構成された密閉容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−200935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の密閉容器では、扉に押圧された環状パッキンが扉に強く張り付いてしまった場合、環状パッキン溝内を減圧しても環状パッキンの一部が扉に張り付いたままとなってパッキン溝内に良好に引き込めないケースが発生していた。特に、密閉容器を長期間気密状態に維持していた場合には、環状パッキンが扉に強固に張り付いてしまって、このような問題が多く発生していた。
【0007】
また、環状パッキンの摩耗や経年劣化によって、環状パッキンと環状パッキン溝の内側壁との気密性が低下する場合もある。気密性が低下すると、環状パッキン溝内を減圧しても隙間から減圧空間内へ空気が入ってしまい、環状パッキンを引き込む力が低下し、環状パッキン溝を扉から完全に剥離できなくなってしまう。
【0008】
さらに、このように環状パッキンが強固に扉に張り付いた状態で扉を開閉すると、環状パッキンが破断したり、環状パッキンが溝から抜けてしまったりする可能性もあり、スライド式の扉の場合には、パッキンの巻き込みによって容器が故障してしまうおそれもある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされた発明であり、密閉容器の扉を開放する際に、扉又は密閉容器本体に張り付いた環状パッキンを良好に剥離することが可能な密閉容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る密閉容器は、容器本体又は扉に設けられた環状パッキン溝内を加圧又は減圧することで、前記環状パッキン溝内に収容された環状パッキンを前記扉又は前記容器本体に対して密着又は剥離させて、容器内部を密閉又は開放する密閉容器において、前記環状パッキン溝内に流体を供給及び前記環状パッキン溝内から流体を排出するために前記環状パッキン溝に接続された流体ラインと、前記環状パッキン溝内を加圧するために、前記流体ラインを介して前記環状パッキン溝内に流体を供給する加圧手段と、前記環状パッキン溝内を減圧するために、前記流体ラインを介して前記環状パッキン溝内から流体を排出する減圧手段と、前記加圧手段及び前記減圧手段を制御する制御手段であって、前記扉の開放に先立って前記環状パッキンを前記環状パッキン溝内に引き込むパッキン引き込み時に、前記減圧手段を所定時間作動させる第一減圧処理と、前記減圧手段を所定時間停止させる休止処理と、前記減圧手段を再度所定時間作動させる第二減圧処理と、を順次実行するように制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る密閉容器によれば、扉を開放する際に、扉又は密閉容器本体に張り付いた環状パッキンを良好に剥離することができ、扉の動作不良やパッキンの破断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態に係る滅菌装置の缶体の水平断面図である。
【図2】図2は、図1のパッキン溝周辺部分の拡大断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る滅菌装置の構成を概略的に示す模式図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る滅菌装置において、扉を開く際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態に係る環状パッキン溝内の圧力測定結果を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る環状パッキン溝内の圧力測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る密閉容器について説明する。本実施形態では、密閉容器として、高圧蒸気を用いて手術器具等の被滅菌物の滅菌処理を行う滅菌装置を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態に係る滅菌装置の缶体の水平断面図、図2は、図1のパッキン溝周辺部分の拡大断面図、図3は、本実施形態に係る滅菌装置の構成を概略的に示す模式図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、滅菌装置1の缶体2は、内缶3、外缶4、ガイドレール8及び扉18を備えている。内缶3の内部は、被滅菌物を収容する処理槽5を構成し、内缶3の外缶4との間の空間はジャケット6を構成する。扉18は、ガイドレール8にガイドされて、図示しない駆動手段により駆動されて上下方向にスライドし、処理槽5を密閉又は開放する。
【0015】
缶体2の開口部7の周囲には、開口周縁部をぐるりと囲む環状のパッキン溝10が形成され、環状パッキン溝10内には、環状溝内を周回する環状パッキン15が収容されている。環状パッキン溝10の所定の底の部分には、後述するパッキン溝用流体ライン20に接続するための流体流通孔11が形成されている。この流体流通孔11に、パッキン溝用流体ライン20のノズル14が挿入されている。
【0016】
また、図3に示すように、滅菌装置1は、缶体2と、滅菌装置1を構成する各部材を制御する制御器19と、環状パッキン溝10に流体(本実施形態ではエア)を供給したり環状パッキン溝10から流体を排出したりするためのパッキン溝用流体ライン20と、内缶3内のドレンを排出するための内缶ドレン排出ライン40と、外缶4内のドレンを排出するための外缶ドレン排出ライン50と、処理槽5に高圧蒸気を供給する内缶蒸気供給ライン70と、ジャケット6に高圧蒸気を供給するための外缶蒸気供給ライン80とを備えている。
【0017】
パッキン溝用流体ライン20は、エアを供給するラインとして、缶体2から離れた末端側からコンプレッサ21、逆止弁22、エアタンク23、エアレギュレータ24、圧力センサ26、パッキンエア弁25及び圧力センサ27を備えている。また、パッキン溝用流体ライン20は、エアを排出するラインとして、パッキンエア弁25の缶体2側で供給ラインと分離したラインに設置されたパッキン真空弁31と真空ポンプ30とを備えている。なお、真空ポンプ30は、内缶ドレン排出ライン30と共用している。
【0018】
コンプレッサ21、パッキンエア弁25、真空ポンプ30及びパッキン真空弁31は、制御器19に接続されており、その動作が制御器19によって制御される。圧力センサ26,27は、制御器19に接続されており、その出力が制御器へと送られる。圧力センサ26は、供給するエアの圧力を検知し、圧力センサ27は、環状パッキン溝10内の圧力を検知する。
【0019】
内缶3に接続された内缶ドレン排出ライン40は、内缶3内を大気圧に開放するためのラインに設けられた内缶排気弁41及び逆止弁42と、内缶3内を負圧にするためのラインに設けられた内缶真空弁43、逆止弁44、真空ポンプ30及び逆止弁45とを備えている。内缶排気弁41、内缶真空弁43及び真空ポンプ30は、制御器に19に接続されており、その動作が制御器19によって制御される。
【0020】
外缶4に接続された外缶ドレン排出ライン50は、スチームトラップ51と逆止弁52とを備えている。内缶3に接続された内缶蒸気供給ライン70は、内缶給蒸弁71を備え、外缶4に接続された外缶蒸気供給ライン80は、外缶給蒸弁81を備えている。
【0021】
以上、本実施形態に係る滅菌装置1の構成について説明したが、続いて、滅菌装置1における扉18開閉時の作用について説明する。滅菌装置1において、缶体2の内部を密閉する際には、環状パッキン15が環状パッキン溝10内に引き込まれている状態において、制御器19の制御により、扉18を閉じる。続いて、パッキン真空弁31が閉じられた状態で、パッキンエア弁25を開くことで、エアコンプレッサ21で得られた圧縮エアを環状パッキン溝10内(環状パッキン15と環状パッキン溝10の内壁とで囲まれた空間)に供給し、溝内を加圧する。そうすると、圧力によって環状パッキン15の先端側が、環状パッキン溝10から押し出されて扉18の内面に押圧され、缶体2内部が密閉される。
【0022】
一方、扉18が密閉された状態の滅菌装置1において、扉18を開く際の処理の流れについて、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る滅菌装置において、扉を開く際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
まず、S10においては、扉18が閉じており、環状パッキン15が扉18の内面に押し付けられた状態となっている。そして、S11において、滅菌装置1の「開」ボタンが押されるなどして、ユーザから扉18を開く指示が入力されると、制御器19の制御によりS12以降の扉開処理が行われる。
【0024】
S12では、第一減圧工程が行われ、パッキンエア弁25を閉じると共にパッキン真空弁31を開き、真空ポンプ30を作動させる。そうすると、環状パッキン溝10内が減圧されて負圧となり、環状パッキン溝10から押し出されていた環状パッキン15が変形して環状パッキン溝10内へ引き戻される。なお、本実施形態では、約8秒間の第一減圧処理が行われる。なお、本実施形態では、環状パッキン溝10内の圧力を検知する圧力センサ(圧力スイッチ)27によって検知される環状パッキン溝10内の圧力が所定値(例えば、0kPa)以下になってから、第一減圧処理の時間計測を行うように構成されているが、真空ポンプ30の作動と共に計測を開始しても良い。
【0025】
続いて、S13では、減圧処理をいったん休止する休止工程が行われる。この休止工程においては、真空ポンプ30が停止するので、S12で減圧された環状パッキン溝10内は、環状パッキン15と環状パッキン溝10内壁とのわずかな隙間から空気が流入して徐々に復圧することで、変形した環状パッキン15が元の形状に戻るように、多少扉18側へ押し戻される。なお、本実施形態では、約2秒間の休止処理が行われる。
【0026】
S14では、上記S12と同様の減圧処理が再度行われ、この第二減圧工程により、環状パッキン溝15が環状パッキン溝10内へと再度引き込まれる。なお、本実施形態では、約8秒間の第二減圧処理が行われる。このように、S12〜S14によって扉18に張り付いた環状パッキン18を剥離させて環状パッキン溝10内に引き込んだ後、S15に進み、扉が開かれる。
【0027】
以上、詳細に説明したように、本実施形態では、環状パッキン溝10内の減圧処理を、インターバルを挟んで二回行っているので、環状パッキン15は一度引き込まれるように変形した後、インターバル期間中に変形した一部が戻ることで若干押し戻され、さらにもう一度引き込まれることになる。よって、環状パッキン15が強く扉18に張り付いてしまい、一回の減圧処理では剥離できなかった場合でも、より確実に環状パッキン15の引き込みを行うことができるようになり、張り付きにより環状パッキン15を引き込めないといった不具合の発生を従来と比べて大きく抑えることができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る滅菌装置の作用効果を考察するために、上記第一減圧工程、休止工程、第二減圧工程を行った場合の環状パッキン溝10内の圧力測定結果について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、減圧時に環状パッキン溝10と環状パッキン15との間で流体漏れが無く、第一減圧工程により確実に環状パッキン15の引き込みが行われている場合と、少量の流体漏れはあるが、第一減圧工程により確実に環状パッキン15の引き込みが行われている場合の測定結果を示しており、縦軸が環状パッキン溝内の圧力、横軸が時間を示している。図5中、実線は流体漏れが無い場合、点線は少量の流体漏れがある場合を示しており、図5(b)は、図5(a)の縦軸の-94〜-99kPaの部分を拡大して示す図である。
【0029】
また、図6は、減圧時に環状パッキン溝10と環状パッキン15との間で流体漏れがあり、第一減圧工程によっても環状パッキン15の一部が扉18に張り付いたままとなっている場合の測定結果を示しており、縦軸が環状パッキン溝内の圧力、横軸が時間を表している。また、図6(b)は、図6(a)の縦軸の0〜-30kPaの部分を拡大して示す図である。
【0030】
図5に示す測定試験では、約69.5sから減圧を開始し、第一減圧工程が約78sまで行われ、その後、約80sまで休止工程となり、約80sから88sまで第二減圧工程が行われている。同図に示すように、流体漏れがないほうが減圧工程時により低く減圧され、また、休止工程における復圧の速度は、流体漏れがあるほうが早くなっている。
【0031】
このように、インターバルをおいて減圧工程を複数回行った場合には、環状パッキン溝10内の圧力も大きく変動しているため、この圧力変動により環状パッキン15に変形が加えられ、扉18に張り付いていた環状パッキン15を剥がし易くなると考えられる。
【0032】
次に、図6に示す測定試験では、約178sから減圧を開始し、その後、約188sまで第一減圧工程が行われた後、休止工程が約190sまで行われる。そして、第二減圧工程が、198sまで行われる。この測定試験では、第一減圧工程が行われても、環状パッキン15が扉18に張り付いたままで流体漏れが多いため、減圧時にも-26kPa程度までしか減圧されていない。
【0033】
そして、約188sあたりから始まる休止工程においての復圧速度も早くなっており、流体漏れがない場合と比べて、環状パッキン溝10内の圧力変動がより大きくなっていることが分かる。この復圧幅は、図5の少量の漏れありの場合には、1.3kPaであったのに対して、図6では、14kPaと10倍以上となっている。これは、環状パッキン15の上面が扉18に張り付いたままとなっているために、本来、減圧時には環状パッキン溝10の側壁と密接しているはずである環状パッキン15の底面両側端部が、内側に折れ込むように変形して漏れが大きくなっているためと考えられる。
【0034】
また、図6において、図5の場合と異なり第二減圧工程においても大きく減圧されているのは、第一減圧工程において内側に折れ込んで変形した環状パッキン15が休止工程において元の形状に戻り、気密性が回復したためと考えられる。よって、図6では、第二減圧工程において約0.4sで第一減圧工程の減圧値まで減圧されており、再度大きな引き込み力を環状パッキン15に与えることができる。
【0035】
以上の考察から、環状パッキン溝10内の流体漏れが大きい場合には、複数回の減圧工程を行うことで、より大きな変形を環状パッキン15に与えて、扉18に張り付いた環状パッキン15を剥がすことができ、本実施形態によってより大きな作用効果を奏することができる。
【0036】
なお、二回目の減圧工程による環状パッキン15の引き込みを効果的にするためには、休止工程をできる限り長くするのが望ましい。インターバルを長くすることで環状パッキン溝10内の圧力を大気圧近くまで戻すことができ、第二減圧工程において急激な圧力降下を実現して、再度強いパッキン引き込み力を得ることができる。但し、インターバルを長くすると、扉18を開くまでの時間が長くなるので、ある程度の時間内に抑える必要がある。
【0037】
以上、本実施形態に係る滅菌装置について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、密閉容器として滅菌装置を例に挙げて説明したが、蒸煮冷却機、蒸し器等、他の密閉容器にも本発明が適用可能であるのは言うまでもない。また、上記実施形態では、環状パッキン溝内を加圧又は減圧するための流体としてエア(空気)を用いているが、空気以外の気体を用いても良いし、水等の液体を用いても良い。
【0038】
また、上記実施形態では、一回の休止工程を挟んで減圧工程を二回行っているが、より確実に環状パッキンを引き込むためには、さらに休止工程を挟んで三回目以降の減圧工程を行うようにしても良い。また、各減圧工程及び各休止工程の実施時間も状況に応じて適宜変更可能である。なお、扉の開指令が出されてから実際に扉が開くまでの時間として、ユーザが大きなストレスを感じないのは一般に30秒程度と言われているので、全行程を30秒以内でまとめるのが望ましい。
【0039】
また、上記実施形態では、休止工程は真空ポンプを停止しているだけであるが、休止工程においてエアコンプレッサにより加圧するようにしても良い。加圧することで、休止工程における復圧幅を大きくして、第二減圧工程における急激な圧力降下を実現し、パッキン引き込み力をより大きくすることができる。また、加圧工程により短時間で大きな復圧幅が得られるので、扉が開くまでの時間を短縮することもできる。
【0040】
また、上記実施形態において、第一減圧工程の前に、環状パッキン溝内の圧力を大気圧に開放したうえで、内缶ドレン排出ラインにより内缶内の減圧を行うようにしても良い。内缶内の減圧を行うと、扉が内側に引っ張られ、環状パッキンを環状パッキン溝に押し込むにように作用する。また、このような扉の動きにより、扉に張り付いている環状パッキンの張り付き解除を促進することもできる。
【0041】
具体的には、真空ポンプを作動させて内缶ドレン排出ラインを介して内缶内の減圧を行うと共に、パッキン溝用流体ラインのパッキン真空弁を開く。そうすると、扉が内缶方向に引きつけられ、環状パッキンがパッキン溝に押し込まれることになる。その後、内缶内を復圧させると、扉は内缶から離れる方向に移動するが、環状パッキンはパッキン溝との摩擦により動かないため、仮に環状パッキンが扉に密着していた場合でも、扉と環状パッキンが剥離される。また、内缶内を減圧することで環状パッキンをパッキン溝内にある程度引き込んでおくことで、引き続きパッキン溝内を減圧する際に、隙間からの空気の流入を抑制して引き込む力を大きくすることにもなる。
【0042】
また、上記実施形態では、容器本体側に環状パッキン溝を設け、環状パッキンを扉の内面に押し付けて密封するように構成したが、扉側に環状パッキン溝を設け、環状パッキンを容器本体側に押し付けて密封するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 滅菌装置
2 缶体
3 内缶
4 外缶
5 処理槽
6 ジャケット
8 ガイドレール
10 環状パッキン溝
11 流体流通孔
14 ノズル
15 環状パッキン
18 扉
19 制御器
20 パッキン溝用流体ライン
21 コンプレッサ
25 パッキンエア弁
30 真空ポンプ
31 パッキン真空弁
40 内缶ドレン排出ライン
50 外缶ドレン排出ライン
70 内缶蒸気供給ライン
80 外缶蒸気供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体又は扉に設けられた環状パッキン溝内を加圧又は減圧することで、前記環状パッキン溝内に収容された環状パッキンを前記扉又は前記容器本体に対して密着又は剥離させて、容器内部を密閉又は開放する密閉容器において、
前記環状パッキン溝内に流体を供給及び前記環状パッキン溝内から流体を排出するために前記環状パッキン溝に接続された流体ラインと、
前記環状パッキン溝内を加圧するために、前記流体ラインを介して前記環状パッキン溝内に流体を供給する加圧手段と、
前記環状パッキン溝内を減圧するために、前記流体ラインを介して前記環状パッキン溝内から流体を排出する減圧手段と、
前記加圧手段及び前記減圧手段を制御する制御手段であって、前記扉の開放に先立って前記環状パッキンを前記環状パッキン溝内に引き込むパッキン引き込み時に、前記減圧手段を所定時間作動させる第一減圧処理と、前記減圧手段を所定時間停止させる休止処理と、前記減圧手段を再度所定時間作動させる第二減圧処理と、を順次実行するように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする密閉容器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記休止処理中に、さらに前記加圧手段を作動させる加圧処理を実行するように制御することを特徴とする請求項1記載の密閉容器。
【請求項3】
前記容器内部を減圧するための容器内部減圧手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記第一減圧処理の前に、前記環状パッキン溝内の圧力を大気圧に開放すると共に前記容器内部減圧手段を作動させて前記容器内部を減圧するように制御することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−255681(P2010−255681A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103910(P2009−103910)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】