説明

密閉形電池

【課題】高温になった場合でも、正極と負極が短絡するのを防止できる密閉形電池を提供する。
【解決手段】第1セパレータ58を介して負極56および正極57となる帯状電極が積層され、かつ、各金属箔56,57のうちの一方に沿う第2セパレータ59が内側になるように巻回された発電要素51と、この発電要素51を収容封止する密閉形電池用パッケージ52とを有する密閉形電池5であって、第1セパレータ58および第2セパレータ59にそれぞれ各金属箔56,57の長手方向端部よりも発電要素51の巻回方向に沿って突出する第1余長部58aおよび第2余長部59aが設けられ、第2余長部59aの第2余長寸法が第1余長部58aの第1余長寸法よりも1mm以上長いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、密閉形電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子技術の大きな進歩により、携帯用の電子機器の小形化が進んでいる。これに伴い、高エネルギーで小形薄形の電池が求められ、この要求に応えるものとして扁平形の密閉形電池が各種提案されている。図3に示すように、扁平形の密閉形電池1は、扁平形の発電要素11を備え、この発電要素11が金属樹脂複合フィルムで形成された密閉形電池用パッケージ12の収容凹部13に収容され、蓋部14を屈曲部15から屈曲することによって、発電要素11を密閉形電池用パッケージ12で収容封止するようになっている。
【0003】図4に示すように、発電要素11は、帯状の負極16および正極17と、微多孔化セパレータ18,18とが積層されて巻回されている。負極16および正極17には、それぞれ負極端子19,正極端子20が溶接等で固定されている。
【0004】そして、負極16,正極17および微多孔化セパレータ18,18を巻回して発電要素11が形成される。微多孔化セパレータ18,18は、その両側端部が負極16および正極17からはみ出ている。また、負極16,正極17および微多孔化セパレータ18の長手方向の端部は、粘着テープ21によって固定される。
【0005】図5に示すように、これらの負極16,正極17および微多孔化セパレータ18の端部は、正極17が最も短く、2枚の微多孔化セパレータ18,18が同一長さで正極17より長く、負極16が最も長くなっている。粘着テープ21は最外層の負極16の端部と一巻き前の負極16とに粘着され、両側の負極16,16の間に正極17および微多孔化セパレータ18,18を挟んで押さえるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の密閉形電池1は、発電要素11自体の発熱や外的要因等によって、150℃以上の高温になると、図6に示すように、PEまたはPET製の微多孔化セパレータ18,18が熱変形して、その端部が正極17より短くなり、正極17と負極16,16とが接触して短絡する虞れがあった。
【0007】本発明は、前述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、高温になった場合でも、正極と負極が短絡する虞れを回避できる密閉形電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載したように、第1セパレータを介して負極および正極となる帯状電極が積層され、かつ、前記各帯状電極のうちの一方に沿う第2セパレータが内側になるように巻回された発電要素と、前記発電要素を収容封止する密閉形電池用パッケージとを有する密閉形電池であって、前記第1セパレータおよび前記第2セパレータにそれぞれ前記各帯状電極の長手方向端部よりも前記発電要素の巻回方向に沿って突出する第1余長部および第2余長部が設けられ、前記第2余長部の第2余長寸法が前記第1余長部の第1余長寸法よりも1mm以上長いことを特徴としている。
【0009】このように構成された密閉形電池においては、内側にある第2セパレータの第2余長部の方が、その外側にある第1セパレータの第1余長部より1mm以上長いので、第1セパレータの外側に粘着される固定テープ等によって、第1セパレータおよび第2セパレータの両方の端部が粘着されて固定されるため、第1セパレータおよび第2セパレータが高温になっても、その端部が熱変位によって負極および正極の内側に移動するのを防止して、負極および正極が短絡する虞れを回避できる。
【0010】また、本発明においては、請求項2に記載したように、前記第1余長寸法が1mm以上であるため、第1セパレータの第1余長部の端部を確実に固定できる。
【0011】さらに、本発明においては、請求項3に記載したように、前記発電要素の巻回状態を維持するための固定テープが、前記第1余長部および前記第2余長部に接触しているため、第1セパレータおよび第2セパレータの端部を固定テープ等で確実に固定できる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る密閉形電池の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る密閉形電池を示す断面図、図2は本発明に係る第1セパレータおよび第2セパレターを示す図である。
【0013】図1に示すように、本発明の密閉形電池5は、扁平形の発電要素51を備え、この発電要素51が金属樹脂複合フィルムで形成された密閉形電池用パッケージ52の収容凹部53に収容され、蓋部54で収容凹部53を覆うことによって、密閉形電池用パッケージ52により発電要素51が収容封止される。
【0014】発電要素51は、帯状の負極56および正極57と、微多孔化されたポリプロピレン製の第1セパレータ58および第2セパレータ59とが積層されて巻回されている。負極56および正極57には、それぞれ負極端子,正極端子(いずれも図示せず)が溶接等で固定されている。
【0015】そして、負極56,正極57,第1セパレータ58および第2セパレータ59を扁平に巻回して発電要素51が形成されている。負極56,正極57,第1セパレータ58および第2セパレータ59の長手方向の端部は、粘着テープ61によって固定されている。
【0016】第1セパレータ58および第2セパレータ59には、負極56および正極57の長手方向端部よりも発電要素51の巻回方向に沿って突出する第1余長部58a,第2余長部59aが設けられている。これらの第1および第2余長部58a,59aは、負極56および正極57より長くなっている。
【0017】また、第1セパレータ58と第2セパレータ59とのうち、内側に巻回されている第2セパレータ59の第2余長部59aの方が、外側に巻回されている第1セパレータ58の第1余長部58aより寸法Lだけ長くなっている。この寸法Lは1mm以上に設定されている。
【0018】このように、本発明の密閉形電池5は、内側に巻回される第2セパレータ59の第2余長部59aの方が、外側に巻回される第1セパレータ58の第1余長部58aより1mm以上長いので、第1セパレータ58および第2セパレータ59の端部58a,59bの両方が、粘着テープ61によって確実に固定される。
【0019】従って、密閉型電池5が高温になっても、第1セパレータ58および第2セパレータ59の端部58b,59bが熱変位によって負極58および正極59より内側に移動するのを防止できるので、負極58および正極59が接触して短絡する虞れを回避できる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の密閉形電池によれば、請求項1に記載したように、内側にある第2セパレータの第2余長部の方が、その外側にある第1セパレータの第1余長部より1mm以上長いので、第1セパレータの外側に粘着される固定テープ等によって、第1セパレータおよび第2セパレータの両方の端部が粘着されて固定されるため、第1セパレータおよび第2セパレータが高温になっても、その端部が熱変位によって負極および正極の内側まで移動するのを防止して、負極および正極が短絡する虞れを回避できる。
【0021】また、請求項2に記載したように、第1余長寸法が1mm以上である場合は、第1セパレータの第1余長部の端部を確実に固定できる。さらに、請求項3に記載したように、発電要素の巻回状態を維持するための固定テープが、第1余長部および第2余長部に接触している場合は、第1セパレータおよび第2セパレータの端部を固定テープで確実に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る密閉形電池を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1セパレータおよび第2セパレータの余長部を示す図である。
【図3】一般的な密閉形電池を示す図である。
【図4】一般的な密閉形電池を示す図である。
【図5】従来例に係る密閉形電池を示す図である。
【図6】従来例に係る密閉形電池を示す図である。
【符号の説明】
5 密閉形電池
51 発電要素
52 密閉形電池用パッケージ
56 負極
57 正極
58 第1セパレータ
58a 第1余長部
58b,59b 端部
59 第2セパレータ
59a 第2余長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1セパレータを介して負極および正極となる帯状電極が積層され、かつ、前記各帯状電極のうちの一方に沿う第2セパレータが内側になるように巻回された発電要素と、前記発電要素を収容封止する密閉形電池用パッケージとを有する密閉形電池であって、前記第1セパレータおよび前記第2セパレータにそれぞれ前記各帯状電極の長手方向端部よりも前記発電要素の巻回方向に沿って突出する第1余長部および第2余長部が設けられ、前記第2余長部の第2余長寸法が前記第1余長部の第1余長寸法よりも1mm以上長いことを特徴とする密閉形電池。
【請求項2】 前記第1余長寸法が1mm以上であることを特徴とする請求項1に記載した密閉形電池。
【請求項3】 前記発電要素の巻回状態を維持するための固定テープが、前記第1余長部および前記第2余長部に接触していることを特徴とする請求項1に記載した密閉形電池。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−343419(P2002−343419A)
【公開日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−149389(P2001−149389)
【出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】