説明

寒天培養培地上の微生物を単離又は計数する方法

本発明は、
・所定量の、場合によっては微生物を含有する分析される試料又は該微生物の懸濁液を、寒天培養培地に付与し、
・所定量の試料又は懸濁液と接触して、該寒天培養培地に播種手段を適用し、
・寒天培養培地の表面に、所定量の試料又は懸濁液を全体的又は部分的に展伸するために播種手段を動かし、該播種手段と寒天培養培地の表面との接触が、少なくとも一度、中断され、再開されるように、該播種手段の動きがこの動きの間不連続であり、展伸セグメントが生じ、試料又は懸濁液における播種手段の枯渇に至り、
・微生物の増殖が可能な条件下で、該寒天培養培地をインキュベートする、
工程を含む、寒天培養培地において微生物を単離する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、複合試料中の標的微生物の分析の分野である。より詳細には、本発明は、分析される液体試料から又は微生物の懸濁液から、寒天培養培地上に微生物を単離し、又はさらには計数する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析される液体試料から又は微生物の懸濁液からの、寒天培養培地上への微生物の単離は、微生物分析の多くの方法にしばしば必須の工程である。この工程は、同定を実施し、試料の微生物純度を検証し、又は他には得られた単離コロニーを計数することにより細菌計数を実施するために特に使用される。
【0003】
この細菌単離工程の主な問題の一つは、広げられる細菌の量と利用できる表面積との比に関係している。これは、ほとんどの寒天培地支持体が、増殖後と同じくらいのコロニーを付与する15〜300CFU(コロニー形成単位)の細菌量だけを単離することを可能にする表面積を有しているためである。
【0004】
ほとんどの場合、分析される試料は、1ミリリットル(ml)当たり0〜10以上の細菌の範囲でありうる不定量の微生物を含んでいる。よって、効果的な単離を担保するためには、連続段階を介して、試料の微生物負荷を低減させるために、寒天培養培地での展伸の上流で一連のカスケード希釈(一般的には10倍)を実施することが必要である。ついで、このようにして調製された各希釈液の所定容量が寒天培地に広げられる。次に、それぞれの希釈液に対応するペトリ皿を恒温槽においてインキュベートする。微生物の増殖後、皿上の微生物負荷が、単離コロニーを区別し、場合によっては継代培養するのに十分に低い寒天培地のペトリ皿を選択することができる。
【0005】
微生物計数の実施の観点では、単離コロニーだけを含むペトリ皿を使用することが必須である。このようにして得られる結果は、それが15〜300の単離コロニーを含む場合、信頼性があると考えられる。
【0006】
効果的ではあるが、先に記載されたような一般的な単離方法の実施は、非常に面倒で、多量の廃棄物を生じる多数の試薬(ペトリ皿、希釈チューブ、ループ等)を消費するという欠点(高圧蒸気殺菌、処理コスト)を有している。
【0007】
いくつかの手作業は、装置の開発により自動化されている。このことは、例えば、試料を培養培地に播種する装置及び方法を記載している欧州特許第0242114号公報におおいてしかりである。該方法は、接種菌液から出発して、いくつかの展伸セグメントを生成することからなる。これらのセグメントは円弧の形態であり、4つの異なる展伸ヘッドによって作製される。試料の希釈効果は、続くセグメントの部分的な重複により得られる。該文献に記載された方法は、実際には、播種手段に細菌を負荷させ、続く展伸セグメントの間に細菌を枯渇させるためのセグメントの重複を伴い、単一の接種菌液からいくつかの展伸セグメントを作製することからなる参照マニュアルの単離方法に非常に類似している。
【0008】
仏国特許出願公開第2694570号公報には、ジャッキにより駆動される細菌溶液分配器と共に、パイプを介して、流体連通したスタイレットにより培養培地に細菌溶液を付着させる方法及びシステムが記載されている。細菌溶液は、細菌溶液を培地に注ぐと同時に、臨機応変にプラットフォーム上の培養培地を回転させることにより、らせん形又は点状の形態に付着させられる。このような方法は、細菌溶液が培地の回転中注がれている限り、単離方法であると考えることはできない。すなわち、細菌溶液、よって細菌の枯渇はない。
【0009】
より最近では、最適化されたアプリケータ(WO-A-2005071055)を使用することにより、細菌の枯渇を改善することが可能になった新規の単離方法が日の目を見ている。これは、照会名PREVITM Isolaで出願人が販売している自動化装置に使用される播種方法の場合に特にしかりである。この新規の単離方法を実施することで、分析される最初の試料中の広範囲の微生物負荷から単離コロニーを得ることができる。この最適化されたアプリケータの使用によりもたらされる改善にかかわらず、微生物負荷/寒天表面積の比率に関する制約は現実に残ったままであり、この技術の使用は、非常に高度に汚染された試料では限界がありうる。さらに、現在、この技術では、計数が困難なコロニーの近接性のために、最初の試料の微生物負荷の正確な評価を実施することはできない。
【0010】
検討した従来技術から、単一の寒天培養培地上で、分析される試料から又は細菌懸濁液から実施するのが簡単で、該試料又は該懸濁液の最初の細菌負荷にかかわらず、単離コロニーを、寒天の制限された表面積で得ることができる、微生物を単離し、計数さえもする方法は存在しないことは明らかである。
【発明の概要】
【0011】
よって、本発明の第1の目的は、従来技術の方法よりも効果的な微生物を単離する方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、従来技術の方法よりも効果的な計数方法を提供することである。
本発明の第3の目的は、非常に広範囲の微生物負荷にわたって単離コロニーを得ることを可能にする、微生物を単離し、又は計数さえする方法を提供することである。
本発明の第4の目的は、最初の試料又は最初の懸濁液の微生物負荷の信頼性のある評価を得ることを可能にする、微生物を単離し又は計数さえする方法を提供することである。
本発明の第5の目的は、寒天培養培地の減少した表面積に利用されうる、微生物を単離し、又は計数さえする方法を提供することである。
【0012】
これらの目的は、とりわけ、寒天培養培地上に微生物を単離する方法において、
・上記微生物を場合によっては含む分析される試料又は上記微生物の懸濁液の予め定まった容積を上記寒天培養培地に付着させ、
・該容積の試料又は懸濁液と接触させて上記寒天培養培地に播種手段を適用し、
・播種手段を移動させて、試料又は懸濁液の該容積を寒天培養培地の表面にわたって全体的又は部分的に広げ、上記播種手段の移動が不連続で、該移動中に、上記播種手段と寒天培養培地の表面との接触が、少なくとも一回中断され再開され、連続的な展伸セグメントを生じ、試料又は懸濁液に関して播種手段の枯渇に至り、
・微生物の増殖を可能にする条件下で上記寒天培養培地をインキュベートする、
ことからなる工程を含む方法に関する、本発明により達成される。
【0013】
本発明の第2の主題は、
寒天培養培地上の微生物を計数する方法において、
・上記微生物を場合によっては含む分析される試料又は上記微生物の懸濁液の予め定まった容積を上記寒天培養培地に付着させ、
・該容積の試料又は懸濁液と接触させて上記寒天培養培地に播種手段を適用し、
・播種手段を移動させて、試料又は懸濁液の該容積を寒天培養培地の表面にわたって全体的又は部分的に広げ、上記播種手段の移動が不連続で、該移動中に、上記播種手段と寒天培養培地の表面との接触が、少なくとも一回中断され再開され、連続的な展伸セグメントを生じ、試料又は懸濁液に関して播種手段の枯渇に至り、
・微生物の増殖を可能にする条件下で上記寒天培養培地をインキュベートし、
・寒天培養培地の表面に存在する微生物のコロニーを計数する、
ことからなる工程を含む方法に関する。
【0014】
本発明によれば、上記手段の移動中における播種手段と寒天培養培地との接触の中断と再開は、上記手段のジャンプに関連しうる。このジャンプにより、試料又は懸濁液に関し、播種手段を枯渇させることができる。これは、播種手段が寒天培養培地と接触している限り、毛管排液によって、それが液体を運ぶからである。播種手段と寒天培養培地との接触が中断された場合、該播種手段は、液体から脱離するまで、培養培地の表面から離れる方向に移動させられる。そのとき、液体脈はもはや運ばれない。
【0015】
この脱離中、播種手段は、該播種手段に付着したままで残存している試料又は懸濁液のフラクションをそれと共に運ぶ。
【0016】
播種手段の動きは、それが培養培地と接触していない間は、上記培養培地の表面に実質的に平行な方向に沿って続く。この動きは、播種手段と寒天培養培地との接触が再開される際、播種手段と先の展伸との接触を回避するため、この新規の接触点は中断前の接触の最後の点から十分に遠くなるのに十分でなくてはならない。これは、このような接触が、播種手段への、最初の展伸から試料又は懸濁液、及び関連する細菌の移動を生じ得、よって枯渇現象を制限できるからである。さらに、これにより、展伸中、再負荷されるために、播種手段が先の展伸と交差する、一般的な単離を実施することになるであろう。
【0017】
接触が再開したとき、播種手段は、寒天培養培地上でのその水平方向の動きを再現し、毛管排液により、付着したまま残存している試料又は懸濁液のフラクションを運び、このフラクションの新規の展伸が可能になる。
【0018】
播種手段のいくつかの連続的ジャンプは、接触の各中断において、液体の脱離による、試料又は懸濁液に関する播種手段の枯渇の促進が生じるように、実施することができる。
【0019】
接触の中断中、播種手段に保持される試料又は懸濁液の量に影響を与える因子は、本質的に
−寒天培養培地の水和性、
−試料又は懸濁液の表面張力、
である。
これらの2つのパラメーターは、試料又は懸濁液の液体フラクションと培養培地の表面との間の接触角、よって液体脈を中断するのに必要な力に影響を与える。
これらの2つのパラメーターは、本質的には使用される寒天培養培地のタイプに応じて変化するが、分析される試料又は懸濁液のタイプにも依存する。
【0020】
有利には、本発明の方法によれば、播種手段は、上記培養培地との複数の接触面を有する。このような播種手段は、例えば特許出願WO-A-2005071055で保護されているような、PREVITM Isolaシステムで使用されるアプリケータでありうる。
【0021】
また、播種手段は、前記培養培地との単一の接触面を有する。このような手段は、例えばループ、白金線ループ又はスワブでありうる。
【0022】
播種手段の動きは、有利には直線的な動きでありうる。「直線的な動き」なる用語は、場合によっては異なる方向への、単一又は複数の直線的セグメントを意味するものである。このような動きは、ループ又は白金線ループにより、一般的な単離方法に常套的に使用されている。
あるいは、播種手段の動きは曲線的な動きである。このような動きはPREVITM Isolaシステムにおいて使用されているものである。特に、播種手段の動きは、ペトリ皿の縁に、後者が丸皿である場合に、追随する。さらに、播種手段が培養培地とのいくつかの接触面を有している場合、この曲線的な動きにより、展伸長さを増加させることが可能になる。
【0023】
有利には、本発明の方法は、自動化システムによって実施することができる。特に適したシステムは、出願人が販売しているPREVITM Isolaシステムである。
【0024】
好ましい一実施態様によれば、上記播種手段と寒天培養培地の表面との接触が中断され再開される回数は2〜6回である。
【0025】
他の好ましい実施態様によれば、寒天培養培地に付着される試料又は懸濁液の容積は、10〜1000μlである。
【0026】
特に有利な一実施態様によれば、展伸セグメントは長さが可変である。これは、同じ単離では、種々の長さの連続する展伸セグメントを作製することが有利である場合があるためである。これは特に、微生物が過剰に負荷されていることが疑われる試料の場合にしかりである。制限された長さを有するいくつかの展伸セグメントにより、培養培地の非常に小さな表面積上にわたって、非常に素早く、播種手段を枯渇させることができる。他方、続く展伸セグメントは、単離コロニーを得ることを可能にするために、より長くなっている。
【0027】
本発明に係る方法の目的及び利点は、以下の図面と関連して、以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、約10CFU/mlの細菌懸濁液の場合の、従来の方法に従い実施された単離と本発明の方法の様々な手順に従い実施された単離との間の比較分析の画像を表す。
【図2】図2は、約10CFU/mlの細菌懸濁液の場合の、従来の方法に従い実施された単離と本発明の方法の様々な手順に従い実施された単離との間の比較分析の画像を表す。
【図3】図3は、従来の方法に従い実施された単離と本発明の方法の様々な手順に従い実施された単離に、細菌コロニーの計数が続き、懸濁液が可変の細菌負荷を有する比較分析の画像を表す。
【図4】図4は、従来の方法に従い実施された細菌コロニーの計数と本発明の方法に従い実施された細菌コロニーの計数との間の比較分析の画像と、さらには各再接触後の細菌懸濁液の容積分配因子を表す。
【実施例】
【0029】
実施例1:減少した表面積の寒天への高度に汚染された溶液からの単離コロニーの収集
手順:
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が高度に負荷された100μlの溶液(10又は10CFU/ml)を寒天培養培地の皿の縁に付着させる。ついで、この容積を、特許出願WO-A-2005071055で保護されているPREVITM Isolaシステムと共に使用されるアプリケータからなる展伸手段を使用し、手作業で直線状に広げる。
【0030】
コントロールとなる展伸を、アプリケータを用いて如何なるジャンプもすることなく実施する。コントロール条件と同一の付着物を使用して、様々な展伸を、展伸中にジャンプの数を増加させながら並行して実施する。
−図1A:ジャンプなし(約10CFU/mlの懸濁液)
−図1B:ジャンプ5回(約10CFU/mlの懸濁液)
−図1C:ジャンプ6回(約10CFU/mlの懸濁液)
−図1D:ジャンプ7回(約10CFU/mlの懸濁液)
−図2A:ジャンプなし(約10CFU/mlの懸濁液)
−図2B:ジャンプ3回(約10CFU/mlの懸濁液)
−図2C:ジャンプ6回(約10CFU/mlの懸濁液)
インキュベート後、単離コロニーの探索を実施し、これらのコロニーを得るのに必要な展伸長さを測定する。
【0031】
結果:
約10CFU/mlの懸濁液に関しては、ペトリ皿の幅(10cm)が、一般的な方法による、すなわちジャンプをすることなく展伸手段を動かすことによる展伸で単離コロニーを得るには十分でない(図1A)。
培養培地において通常の方法で展伸手段を5回ジャンプさせた場合、最初に単離されたコロニーは7.5cmの展伸長さの後に出現する。
培養培地において通常の方法で展伸手段を6回ジャンプさせた場合、最初に単離されたコロニーは4.5cmの展伸長さの後に出現する。
培養培地において通常の方法で展伸手段を7回ジャンプさせた場合、最初に単離されたコロニーは1.5cmの展伸長さの後に出現する。
【0032】
約10CFU/mlの懸濁液に関しては、一般的な方法によって展伸すると、最初に単離されたコロニーは、7.2cmの展伸長さの後に出現する(図2A)。
培養培地において通常の方法で展伸手段を3回ジャンプさせた場合、最初に単離されたコロニーは3cmの展伸長さの後に出現する。
培養培地において通常の方法で展伸手段を6回ジャンプさせた場合、最初に単離されたコロニーは4cmの展伸長さの後に出現する。
【0033】
得られた結果は、培養培地上での試料の展伸中、播種手段を用いてジャンプを実施すると、細菌に関して枯渇がより効果的になり、よって寒天培養培地の低減した表面積上に単離コロニーを得ることが可能になることを示している。さらに、ジャンプの数を多くすればする程、単離コロニーを得るのに必要とされる試料の展伸長さが短くなる。
【0034】
実施例2:寒天培地上の試料の微生物負荷の信頼性のある計数のためのモデルを作製するためのジャンプ展伸の利点
手順:
連続的な10倍希釈により得られる様々な濃度で黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) が負荷された100μlの溶液を、寒天培養培地の皿の縁に付着させる。ついで、この容積を、PREVITM Isolaシステムで使用されるアプリケータを使用して、手作業で直線状に広げる。
コントロールとなる展伸を、アプリケータを用いてジャンプをすることなく実施する。コントロール条件と同一の付着物を使用して、4回の連続ジャンプを含む展伸を並行して実施し、これら4回のジャンプがゾーン1からゾーン5と標記した5つの異なるゾーンを定める。
得られた結果を図3に示すが、左手側のカラムはコントロールとなる展伸に対応し、右手側のカラムは、連続ジャンプを伴う本発明の方法による展伸に対応する。
さらに、A列は、80000〜130000CFUの細菌負荷で得られた結果に対応する。
B列は、8000〜13000CFUの細菌負荷で得られた結果に対応する。
C列は、800〜1300CFUの細菌負荷で得られた結果に対応する。
D列は、80〜130CFUの細菌負荷で得られた結果に対応する。
培養培地のインキュベート後、展伸中に実施されるコームジャンプにより画成された各ゾーンについて単離コロニーの計数を実施する。
【0035】
結果:
まず、非単離コロニーの近接により、所定のゾーンが計数できないようである。
コントロール結果(ジャンプなし)は、一般的な展伸では、計数は、最も低い細菌負荷(約100CFU)の場合でのみ実施することができることを示している。よって、分かるように、図3の左手側カラムのD列では、約80のコロニーが単離される。
ジャンプ(この実施例では4回)を伴う展伸の最適化により、同じ初期負荷で、いくつかのゾーンに明確に区切ることが可能になり、そのうちのいくつかが単離コロニーのみを示し、よって計数が可能である。
而して、A列の右手側のカラムにおいて、ゾーン4及び5は、それぞれ67及び34の単離コロニーの数を示す。
B列において、ゾーン3、4及び5は、それぞれ116、24及び6の単離コロニーの数を示す。
C列において、ゾーン2、3及び5は、それぞれ113、11及び2の単離コロニーの数を示す。ゾーン4はコロニーを含まない。
D列において、ゾーン1、2及び3は、それぞれ115の単離コロニー、14の単離コロニー及び1の単離コロニーの数を示す。負荷がかなり少ない場合、ゾーン4及び5は細菌を含まない。
【0036】
この実施例では、懸濁液の細菌負荷と最初の計数可能なゾーンとの間に密接な関連性がこのように観察される。事実、微生物負荷が10倍増加すると、最初の計数可能なゾーンにおけるシフトが見られる。分布を以下の表1にまとめる。

【0037】
よって、一又は複数の計数可能なゾーンの読み取りに基づき、溶液の最初の微生物負荷の比較的正確な評価を得ることを可能にする数学的モデルを、直ぐに作製することができると思われる。
【0038】
実施例3:ジャンプ展伸法による溶液量分布因子の評価
手順:
1000CFU/mlの理論的細菌負荷で較正された溶液から出発し、100μlの溶液を付着ゾーンに付着させ、場合によってはジャンプを実施しながら、PREVITM Isolaシステムで使用されるアプリケータで広げる。実施されるジャンプの回数は5〜8回である。インキュベート後、ジャンプにより画成されるゾーンの各々について計数を実施する。結果を図4にまとめる。A列はジャンプのない展伸に相当する。B、C、D及びE列は、それぞれ5、6、7及び8回のジャンプを伴う展伸に相当する。
【0039】
結果:
各ゾーンについての単離コロニーの数を以下の表2に報告する。

【0040】
懸濁液中の細菌の分布が均一であるとして、簡単な三数法を実施することにより、各ゾーンに広げられた懸濁液の量を決定することができる。

【0041】
以下に得られた結果を分析すると、容積の分布に所定の均一性が示される。特に、展伸が手作業で実施され、従って限られた再現性であるという事実を考慮すると、実質的に同様な懸濁液量の分布プロファイルがゾーン1〜3において観察される。よって、100μlの懸濁液が付着されるゾーンであるゾーン1においては、最初の量の約80%が残る。ゾーン2においては、付着した容積は最初の容積の約15%である。最後に、ゾーン3において、付着された容積の1%から2%である。このようにして一つのゾーンから他方のゾーンまでで得られた値は対数分布にかなり近似している。換言すれば、一つのゾーンから次のゾーンまで、コロニーの数はおよそ10で割られる。
【0042】
ゾーン当たりの溶液の容積の分布のデータと、対応する計数値を組合せることにより、簡単な数学的アプローチにより、基本の試料中に存在する最初の微生物負荷を評価することを可能にする算出モデルを設計することが可能となる。さらに、播種の自動化によりもたらされうる改善を考慮すると、この方法により、単一の播種手段によって、広い微生物負荷範囲に対して溶液の微生物負荷を精確に計数することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天培養培地上に微生物を単離する方法において、
・上記微生物を場合によっては含む分析される試料又は上記微生物の懸濁液の予め定まった容積を上記寒天培養培地に付着させ、
・該容積の試料又は懸濁液と接触させて上記寒天培養培地に播種手段を適用し、
・播種手段を移動させて、試料又は懸濁液の該容積を寒天培養培地の表面にわたって全体的又は部分的に広げ、上記播種手段の移動が不連続で、該移動中に、上記播種手段と寒天培養培地の表面との接触が、少なくとも一回中断され再開され、連続的な展伸セグメントを生じ、試料又は懸濁液に関して播種手段の枯渇に至り、
・微生物の増殖を可能にする条件下で上記寒天培養培地をインキュベートする、
ことからなる工程を含む方法。
【請求項2】
寒天培養培地上の微生物を計数する方法において、
・上記微生物を場合によっては含む分析される試料又は上記微生物の懸濁液の予め定まった容積を上記寒天培養培地に付着させ、
・該容積の試料又は懸濁液と接触させて上記寒天培養培地に播種手段を適用し、
・播種手段を移動させて、試料又は懸濁液の該容積を寒天培養培地の表面にわたって全体的又は部分的に広げ、上記播種手段の移動が不連続で、該移動中に、上記播種手段と寒天培養培地の表面との接触が、少なくとも一回中断され再開され、連続的な展伸セグメントを生じ、試料又は懸濁液に関して播種手段の枯渇に至り、
・微生物の増殖を可能にする条件下で上記寒天培養培地をインキュベートし、
・寒天培養培地の表面に存在する微生物のコロニーを計数する、
ことからなる工程を含む方法。
【請求項3】
播種手段が、上記培養培地との複数の接触面を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
播種手段が、上記培養培地との単一の接触面を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
播種手段の動きが直線的な動きである請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
播種手段の動きが曲線的な動きである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
自動化システムにより実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記播種手段と寒天培養培地の表面との接触が中断され再開される回数が、2〜6回である請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
寒天培養培地に付着される容積が10〜1000μlである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
展伸セグメントの長さが変化する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−516144(P2012−516144A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546924(P2011−546924)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050146
【国際公開番号】WO2010/086565
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(304043936)ビオメリュー (26)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
【Fターム(参考)】