説明

寝台搬送車の寝台載置構造

【課題】寝台の車両内への搬入を容易とし、ストレッチャーはもちろんとして棺やその他の寝台も搬入可能とし、病人や怪我人の病院への送り向かい、寝たきりの要介護者の介護施設への送り向かい、棺の搬送等、様々な用途に適用可能な寝台搬送車の寝台載置構造を提供する。
【解決手段】ローラーコンベア20の両フレームの外側に沿って側台12を設け、ローラーコンベア20が側台12の間を前後にスライド可能且つ昇降可能とし、ローラーコンベア20が前方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より低い位置とし、ローラーコンベア20が後方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より高い位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人や怪我人の患者、要介護者、棺等の寝台を搬送するための寝台搬送車の寝台載置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病人や怪我人の病院への送り向かい、寝たきりの要介護者の介護施設への送り向かい、棺の搬送に寝台搬送車が用いられる。この寝台搬送車の一般的な構造は、バン形やステーションワゴン形の車両の助手席後方に寝台収容スペースを設け、バックドアを跳ね上げて寝台を車両内へ搬入するものである。寝台としては、折り畳み可能な支持脚を設けたパイプ構造のストレッチャーが用いられ、ストレッチャーの台板に寝た患者等をストレッチャーごと搬入することが行われている(特許文献1参照)。また、霊柩車、霊送車などでは、棺の載置台としてローラーコンベアを用いて乗せ降ろしを容易とした構造も一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−171145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献に示した軽形霊柩車のように、寝台収容スペースに板や台を設けただけの構造では、搬入可能な寝台が折り畳み自在のストレッチャーに限られる。また、寝台の載置台としてローラーコンベアを用いた場合、金具や金属板を用いて寝台を固定する必要があり、搬送中の振動で金属音を生じるなどの課題がある。
【0005】
この発明は、これらの課題を解決することを目的とするもので、寝台の車両内への搬入を容易とし、ストレッチャーはもちろんとして棺やその他の寝台も搬入可能とし、病人や怪我人の病院への送り向かい、寝たきりの要介護者の介護施設への送り向かい、棺の搬送等、様々な用途に適用可能な寝台搬送車の寝台載置構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明は、病人や怪我人の患者、要介護者、棺等の寝台を搬送するための寝台搬送車の寝台載置構造であって、ローラーコンベア20の両フレーム21の外側に沿って側台12を設け、ローラーコンベア20が側台12の間を前後にスライド可能且つ昇降可能とし、ローラーコンベア20が前方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より低い位置とし、ローラーコンベア20が後方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より高い位置としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の寝台搬送車の寝台載置構造は、ローラーコンベア20を後方へスライドさせ、ローラーコンベア20が後方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より高い位置としたので、ローラーコンベア20が外側へせり出し、且つローラー22が回転自在となり、ローラー22に当接する寝台の搬入が極めて容易である。また、寝台を搬入後、ローラーコンベア20を前方へスライドさせ、ローラーコンベア20が前方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より低い位置としたので、寝台がローラー22に当接することがなく、寝台を側台12で安定して支持することができ、固定用の金具類が不要となり、搬送中の不快な金属音も軽減される。
【0008】
また、寝台としてストレッチャーを用いれば、ストレッチャーのキャスターが側台12上を転がり、そのまま搬入可能であるとともに、ストレッチャー以外の寝台も、ローラーコンベア20により容易に車両内に搬入し、安定して載置することができる。したがって、病人や怪我人の病院への送り向かい、寝たきりの要介護者の介護施設への送り向かいの他、遺体や棺の搬送のための霊柩車、霊送車等、様々な用途に適用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図面はこの発明の実施例で、寝台搬送車のルーフを破断した平面図。
【図2】寝台搬送車の側面図。
【図3】基台の(イ)平面図、(ロ)正面図。
【図4】ローラーコンベアの(イ)平面図、(ロ)正面図。
【図5】ローラーコンベアが前方に位置した状態の寝台載置台の平面図。
【図6】ローラーコンベアが後方に位置した状態の寝台載置台の平面図。
【図7】寝台載置台の作動の説明図で、(イ)図5中、A−A線断面の拡大断面図、(ロ)図6中、B−B線断面の拡大後方部分を示す断面図。
【図8】ストレッチャーを車両内へ搬入する状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下にこの発明の実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。
図面はこの発明の実施例で、5ドア、ハイルーフタイプの軽乗用車をベースとした寝台搬送車に、この発明の寝台載置構造を適用したものである。この寝台搬送車には、前席として運転席1、助手席2が設けられ、助手席2の後方を寝台収容スペースとして寝台載置台3が設置され、運転席後方に後席としての座席4が設けられている。この軽規格の寝台搬送車は、バックドア5を車内側から開成可能とされ、乗員の乗降口が右側面以外に設けられているので保安基準を満たし、座席4に乗員可能とされている。
【0011】
寝台載置台3は、基台10とローラーコンベア20とで構成される。基台10は金属板の板金加工で形成され、底部11の両側端に沿って側台12を突設し、この側台12間で凹部スペースが形成されている。ローラーコンベア20は、両側フレーム21の間に所定の間隔で複数のローラー22を回転自在に軸支した一般的なもので、両フレーム21の内側面に、その下辺に沿って複数の小ローラー23が回転自在に取り付けられている。この小ローラー23と係合するカム山13が、基台10の底部11に突設した状態で接合され、小ローラー23に対応する位置に配設されている。
【0012】
基台10の凹部スペース内にローラーコンベア20を上方から嵌挿して寝台載置台3が形成され、ローラーコンベア20の両フレーム21の外側に沿って側台12が設けられ、ローラーコンベア20は側台12の間を前後にスライド可能とされている。同時に、カム山13には斜面13aとこれに連続する山面13bが形成され、小ローラー23がカム山13を登り降りすることで、ローラーコンベア20は昇降可能とされている。
【0013】
ローラーコンベア20が前方に位置した状態を図5に示す。この状態で、小ローラー23はカム山13の斜面13aの始端位置に位置し、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より低い位置とされている(図7、イ参照)。この位置からローラーコンベア20を前方へスライドさせると、小ローラー23がカム山13の斜面13aを登ってローラーコンベア20が上昇する。ローラーコンベア20が後方に位置した状態を図6に示す。この状態で、小ローラー23はカム山13の山面13bに至り、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より高い位置とされている(図7、ロ参照)。
【0014】
ローラーコンベア20のスライド操作は、レバー15で行われる。ローラーコンベア20の両フレーム21に両端を固定し、連結板24が横架して取り付けられ、連結板24にY字の腕金具25を揺動可能に取り付け、腕金具25の基部に支持金具26が取り付けられている。基台10の底部11には支持金具26を納める切り欠き18が形成され、基台10の外側から底部11に挿通されたレバー15の軸16が支持金具26に連結され、レバー15の操作で回転する軸16に連動し、支持金具26が円弧軌道を描きながら切り欠き18内を移動するように構成されている。支持金具26の移動に伴い、連結板24が駆動されてローラーコンベア20が前後にスライドし、レバー15を前方へ倒した状態がローラーコンベア20の前方位置で、180度回転させて後方へ倒した状態がローラーコンベア20の後方位置である。
【0015】
図8は、この寝台搬送車にストレッチャー30を搬入する状態を示した説明図である。ストレッチャー30は、患者等を寝かせる台板31に、前後一対の折り畳み可能な支持脚32、33を設けたパイプ構造の一般的なもので、支持脚32、33にキャスター34が取り付けられ、バックドア5付近に患者等を搬送する。そして、バックドア5を跳ね上げ、レバー15を後方へ倒してローラーコンベア20を後方へスライドさせる。ローラーコンベア20が後方に位置し、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より高い位置となり、したがって、ローラーコンベア20が外側へせり出し、且つローラー22が回転自在となり、寝台が搬入可能な状態となる。側台12の間隔はストレッチャー30の前方の補助キャスター35の間隔に適合し、補助キャスター35を側台12に乗せ、支持脚22、23を折り畳みながら車両内へ搬入する。ストレッチャー30の搬入後、レバー15を前方へ倒してローラーコンベア20を前方へスライドさせる。ローラーコンベア20が前方に位置し、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より低い位置となり、寝台載置台3にストレッチャー30が載置される。目的地に到着したならば、逆の手順でストレッチャー30を車両から降ろす。
【0016】
以上、実施例について説明したが、この発明の寝台搬送車の寝台載置構造は、病人や怪我人、要介護者の送向用の他、霊柩車、霊送車としても適用するものである。また、ローラーコンベア20のスライド及び昇降機構は実施例に限定されるものではなく、操作を電動としてもよい。
【符号の説明】
【0017】
12 側台
20 ローラーコンベア
21 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病人や怪我人の患者、要介護者、棺等の寝台を搬送するための寝台搬送車の寝台載置構造であって、
ローラーコンベア20の両フレーム21の外側に沿って側台12を設け、ローラーコンベア20が側台12の間を前後にスライド可能且つ昇降可能とし、
ローラーコンベア20が前方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より低い位置とし、ローラーコンベア20が後方に位置した状態で、ローラー22の弧面上端が側台12の上面より高い位置としたことを特徴とする寝台搬送車の寝台載置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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