説明

対のトップ側CMDヤーンおよび単一のトップ側CMDヤーンが交互に配置された製紙機用多層フォーミング織物

製紙機用織物は、一連の繰返しユニットを備えている。繰返しユニットの各々は、一組のトップ側MDヤーンと、一組のトップ側CMDヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、一組のCMD縫合ヤーンであって、トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層およびボトム側織物層を互いに接合している、CMD縫合ヤーンと、を備えている。縫合ヤーンは、対になって配置されている。トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2008年10月31日に出願された仮特許出願第61/110,102号の優先権を主張するものであり、この開示内容は、その全体が、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本出願は、一般的に、製紙を対象とし、さらに詳細には、製紙に用いられる織物を対象とする。
【背景技術】
【0003】
従来の長網式製紙法では、(紙の「原料(stock)」として知られている)セルロース繊維の水スラリーまたは懸濁液が、2つ以上のロール間を走行する金網および/または合成材料からなるエンドレスベルトの上側走行部上に送給されるようになっている。「フォーミング織物(forming fwabric)」と呼ばれることも多いこのベルトは、その上側走行部の上面に、紙原料のセルロース繊維を水性媒体から分離し、これによって、湿った紙ウエブを形成するフィルタとして作用する製紙面をもたらしている。水性媒体は、重量によってまたは織物の上側走行部の下面(すなわち、「マシン側」)に用意された真空により、排出孔として知られているフォーミング織物のメッシュ開口を通って排出されることになる。
【0004】
フォーミング部を出た後、紙ウエブは、抄紙機のプレス部に移送され、該プレス部において、一般的に「プレスフェルト(press felt)」と呼ばれている他の織物によって被覆された一対以上のプレスローラのニップに通される。ローラによる圧力によって、ウエブからさらに水分が除去されることになるが、この水分除去は、プレスフェルトの「詰め綿(batt)」層の存在によって、高められるようになっている。次いで、紙は、さらなる水分除去のために、乾燥部に移送される。乾燥の後、紙は、二次加工および包装に供される準備が整ったことになる。
【0005】
本明細書に用いられる「マシン方向(MD)」および「マシン横断方向(CMD)という用語は、それぞれ、抄紙機上の製紙機用織物の走行方向と一致する方向、および織物表面と平行でかつ走行方向を横断する方向を指している。同様に、織物内におけるヤーンの垂直方向に関連する方向基準(例えば、上、下、トップ側、ボトム側、直下、など)は、織物の製紙面が織物の上面にあり、織物のマシン側面が織物の底面にあることを前提にしている。
【0006】
典型的には、製紙機用織物は、2つの基本的な製織技術の1つによって、エンドレスベルトとして製造されている。これらの内の第1の技術では、織物は、平織法によって平織りされ、平織りされた織物の両端が、多数の周知の接合方法、例えば、(継合わせ(splicing)として一般的に知られている)両端を解し、再び一緒に織り込む方法、またはピン継合せ可能なフラップまたは特別の折返しを各端に縫い付け、次いで、これらをピン継合せ可能なループ内に再び織り込む方法のいずれか1つによって互いに接合され、これによって、エンドレスベルトを形成している。今日、多くの自動接合機が、市販されているが、これらの自動接合機は、一部の織物に対して、接合プロセスの少なくとも一部を自動化するために用いられている。平織りされた製紙機用織物では、経糸がマシン方向に延びており、緯糸がマシン横断方向に延びている。
【0007】
第2の基本的な製織技術では、織物は、無端製織法によって、連続ベルトの形態に直接織られている。無端製織法では、経糸がマシン横断方向に延びており、緯糸がマシン方向に延びている。前述した製織方法は、いずれも、当技術分野においてよく知られており、本明細書に用いられる「エンドレスベルト(endless belt)」という用語は、いずれの方法によって作製されたベルトも指している。
【0008】
製紙において、特に、湿ったウエブが最初に形成されることになる抄紙機のフォーミング部における製紙工程において、効果的なシートおよび繊維の支持は、重要な検討事項である。加えて、フォーミング織物は、抄紙機上を高速度で走行するとき、良好な安定性を有しているべきであり、好ましくは、抄紙機のプレス部に移送されるときにウエブに残っている水分量を低減させるために、高浸透性を有しているとよい。ティッシュペーパおよび上質紙(すなわち、上質印刷、カーボン原紙、タバコ、蓄電池などに用いられる紙)の用途において、製紙面は、極めて繊細に織られた構造または繊細な金網構造を備えている。
【0009】
典型的には、上質紙およびティッシュペーパの用途に用いられるような繊細に織られた織物は、少なくとも何本かの比較的小径のマシン方向ヤーンまたはマシン横断方向ヤーンを含んでいる。しかし、残念ながら、このようなヤーンは、傷みやすく、織物の表面寿命が短い傾向にある。さらに、小径ヤーンの使用は、織物の機械的安定性(特に、歪み抵抗、狭幅傾向、および剛性に関する安定性)を悪化させる可能性があり、その結果、織物の耐用寿命および性能のいずれにも悪影響を及ぼすことになる。
【0010】
繊細に織られた織物に関連するこれらの問題に対処するため、紙形成を容易にするために紙形成面に微細メッシュ状ヤーンを有し、かつ強度および耐久性をもたらすためにマシン接触側に粗メッシュ状ヤーンを有する多層フォーミング織物が、開発されてきている。例えば、微細な紙形成面およびより耐久性のあるマシン側面を有する織物を形成するため、一組のマシン方向ヤーンが2組のマシン横断方向ヤーンに織り込まれた織物が作製されてきている。これらの織物は、一般的に「二層(double layer)」織物と呼ばれる織物の分類の一部をなすものである。同様に、2組のマシン方向ヤーンおよび2組のマシン横断方向ヤーンによって、微細メッシュ状紙側織物層および別の粗いマシン側織物層を形成する織物が作製されてきている。一般的に「3層(triple layer)」織物と呼ばれる織物の分類の一部をなすこれらの織物では、2つの織物層は、典型的には、別の縫合ヤーンによって、一緒に接結されている。しかし、これらの織物層は、一組以上のボトム側およびトップ側マシン横断方向ヤーンおよびマシン方向ヤーンからのヤーンを用いて、一緒に接合されていてもよい。2層織物および3層織物は、単層織物と比較して、追加的な組のヤーンを含んでいるので、これらの織物は、通常、比較し得る単一層織物よりも大きい「キャリパ(caliper)」(すなわち、大きい厚み)を有している。例示的な2層織物は、Thompsonに付与された特許文献1に示されており、例示的な3層織物は、Osterbergに付与された特許文献2、Vohringerに付与された特許文献3、Wardに付与された特許文献4,5、およびTroughtonに付与された特許文献6に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,423,755号明細書
【特許文献2】米国特許第4,501,303号明細書
【特許文献3】米国特許第5,152,326号明細書
【特許文献4】米国特許第5,437,315号明細書
【特許文献5】米国特許第5,967,195号明細書
【特許文献6】米国特許第6,745,797号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
織物設計者は、絶えず、性能特性のさまざまなバランスをもたらすことができる設計を探し求めている。例えば、織物によっては、高度の繊維支持および浸透性が極めて望まれる場合がある。このような場合、これらの分野において強力な性能を有すると共に、製織が比較的容易および/または安価である織物を提供することが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物に向けられている。繰返しユニットの各々は、一組のトップ側MDヤーンと、一組のトップ側CMDヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、一組のCMD縫合ヤーンであって、トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層およびボトム側織物層を互いに接合している、CMD縫合ヤーンと、を備えている。縫合ヤーンは、対になって配置されている。トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されている。
【0014】
第2の態様として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物であって、繰返しユニットの各々が、一組のトップ側MDヤーンと、一組のトップ側CMDヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、一組のCMD縫合ヤーンであって、トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層およびボトム側織物層を互いに接合している、一組のCMD縫合ヤーンと、を備えている、製紙機用織物に向けられている。縫合ヤーンは、対になって配置されている。トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、次いで、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されている。これらトップ側MDヤーン、トップ側CMDヤーン、および縫合ヤーンの一部は、トップ側織物層上に平織製紙面を形成するように、織り合されている。ボトム側CMDヤーンは、ボトム側MDヤーンの下に浮糸を形成している。
【0015】
第3の態様として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物であって、繰返しユニットの各々が、一組のトップ側MDヤーンと、一組のトップ側CMDヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、一組のCMD縫合ヤーンであって、トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層およびボトム側織物層を互いに接結している、一組のCMD縫合ヤーンと、を備えている製紙機用織物に向けられている。縫合ヤーンは、対になって配置されている。トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、次いで、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されている。これらトップ側MDヤーン、トップ側CMDヤーン、および縫合ヤーンの一部は、トップ側織物層上に平織製紙面を形成するように、織り合されている。ボトム側CMDヤーンは、ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成している。
【0016】
第4の態様として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物であって、繰返しユニットの各々が、一組のトップ側MDヤーンと、一組のトップ側CMDヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、一組のCMD縫合ヤーンであって、トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層およびボトム側織物層を互いに接合している、一組のCMD縫合ヤーンと、を備えている製紙機用織物に向けられている。縫合ヤーンは、対になって配置されている。トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されている。ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDヤーンおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2である。
【0017】
第5の態様として、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物であって、前記繰返しユニットの各々が、一組のトップ側MDヤーンと、一組のトップ側CMDヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、トップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、一組のCMD縫合ヤーンであって、トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層およびボトム側織物層を互いに接合している、CMD縫合ヤーンと、を備えている製紙機用織物に向けられている。縫合ヤーンは、対になって配置されており、ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDヤーンおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による織物の繰返しユニットのトップ側層の上面図である。
【図2】図1の織物のボトム側層の底面図である。
【図3A】典型的なCMDヤーンを示す図1の織物の線3A−3Aに沿った断面図である。
【図3B】典型的なCMDヤーンを示す図1の織物の線3B−3Bに沿った断面図である。
【図3C】典型的なCMDヤーンを示す図1の織物の線3C−3Cに沿った断面図である。
【図3D】典型的なCMDヤーンを示す図1の織物の線3D−3Dに沿った断面図である。
【図3E】典型的なCMDヤーンを示す図1の織物の線3E−3Eに沿った断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態による織物の繰返しユニットのトップ側層の上面図である。
【図5】図4の織物のボトム側層の底面図である。
【図6】本発明の実施形態による織物の繰返しユニットのトップ側層の上面図である。
【図7】図6の織物のボトム側層の底面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態による織物の繰返しユニットのトップ側層の上面図である。
【図9】図8の織物のボトム側層の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、例示されている実施形態に制限されることを意図せず、むしろ、これらの実施形態は、本発明を当業者に詳細かつ完全に開示することを意図している。図面において、同様の番号は、全体を通して、同様の要素を指すものとする。構成部品によっては、明瞭にするために、それらの厚みおよび寸法が誇張されていることがある。
【0020】
よく知られている機能または構造は、簡潔および/または明瞭にするために、詳細には説明しないことがある。
【0021】
特に他の規定がない限り、本明細書に用いられる(技術用語および科学用語を含む)用語は、いずれも、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有している。一般的に用いられている辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有していると解釈されるべきであり、本明細書に明示的に規定されない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味に解釈されるべきではないことをさらに理解されたい。
【0022】
本明細書に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図していない。本明細書に用いられる単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他の意味を指定しない限り、複数形も含むことを意図している。「備える(comprises)および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書では、記述された特徴、完全体、段階、操作、要素、および/または構成部品の存在を特定することになるが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、段階、操作、要素、構成部品、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。本明細書に用いられる「および/または(and/or)」という表現は、1つまたは複数の互いに関連して記載されている事項のいずれかおよび全ての組合せを含んでいる。
【0023】
以下の図面は、本明細書において説明する織物の単一の繰返しユニットしか示していないが、当業者であれば、商業的な用途では、製紙機に用いられるのに適する大きい織物を形成するために、図示されている繰返しユニットが、マシン方向およびマシン横断方向の両方において多数回繰り返されることを理解するだろう。
【0024】
図1〜図3Bを参照すると、100で総称的に示されている本発明の実施形態によるフォーミング織物の繰返しユニットが例示されている。繰返しユニット100は、10本のトップ側MDヤーン101〜110、30本のトップ側CMDヤーン111〜140、10本のボトム側MDヤーン161〜170、20本のボトム側CMDヤーン171〜190、および20対の縫合ヤーン141a,141b〜160a,160bを備えている。以下、これらのヤーンの織合わせについて説明する。
【0025】
図1をまず参照すると、ここには、織物100の上面が示されている。トップ側CMDヤーン111〜140は、2本のトップ側CMDヤーンが縫合ヤーン対と縫合ヤーン対との間に位置し、次いで、単一のトップ側CMDヤーンが縫合ヤーン対と縫合ヤーン対との間に位置する、交互パターンに配置されている。図1に例示されているように、トップ側CMDヤーン111,112が、縫合ヤーン対141a,141bと縫合ヤーン対142a,142bとの間に位置しており、トップ側CMDヤーン113が、縫合ヤーン対142a,142bと縫合ヤーン対143a,143bとの間に位置している。「縫合ヤーン対/2本のトップ側CMDヤーン/縫合ヤーン対/1本のトップ側CMDヤーン」のこのパターンは、繰返しユニットの全体にわたって続いている。
【0026】
トップ側CMDヤーン111〜140の各々は、「上1/下1」の順序でトップ側MDヤーンに織り込まれている。2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーン間に位置している箇所では、これらのトップ側CMDヤーンは、1つおきのトップ側MDヤーンの上を通っている。このパターンは、図3Bおよび図3Cに示されている。図示されているように、トップ側CMDヤーン111は、トップ側MDヤーン102,104,106,108,110の上を通っており、トップ側CMDヤーン112は、トップ側MDヤーン101,103,105,107,109の上を通っている。単一のトップ側CMDヤーンが2対の縫合ヤーン間に位置している箇所では、このトップ側CMDヤーンは、その両側の隣接するトップ側CMDヤーンが上を通っているのと同じトップ側MDヤーンの上を通っている。図3Eに示されているように、トップ側CMDヤーン113は、トップ側CMDヤーン112,114が上を通っているのと同じように、トップ側MDヤーン101,103,105,107,109の上を通っている。
【0027】
図1、図3Aおよび図3Dから分かるように、対応する対の縫合ヤーンは、以下のパターンに従って、トップ側MDヤーンおよびボトム側MDヤーンに織り込まれている。繰返しユニットの縫合ヤーンの各々は、2つの部分、すなわち、トップ側MDヤーンに織り込まれる繊維支持部分と、トップ側MDヤーンの下方を通って、例示されている実施形態では、ボトム側MDヤーンに織り込まれる接合部分と、にさらに分割されている。これらの部分は、「移行(transitional)」トップ側MDヤーンにおいて分けられ、該移行トップ側MDヤーンの下で、対の一方の縫合ヤーンが該対の他方の縫合ヤーンと交差している。各対の縫合ヤーンは、該対の一方のヤーンの繊維支持部分が該対の他方のヤーンの接合部分の上に位置するように、互いに対して織り込まれている。各対の一方の縫合ヤーンの繊維支持部分は、3本のトップ側MDヤーンに交互に織り込まれており(2本の奇数番号のトップ側MDヤーンの上および1本の偶数番号のトップ側MDヤーンの下を交互に通っており)、該対の他方のヤーンの繊維支持部分は、繰返しユニットの他の2本の奇数番号のトップ側MDヤーンの上およびそれらの2本のMDヤーン間に位置する奇数番号のトップ側MDヤーンの下を通っている。これらの縫合ヤーンは、いずれも、移行トップ側MDヤーンの下を通っている。従って、各対のこれらの縫合ヤーンは、一緒になって、トップ側CMDヤーンのパターンと同様の「上1本/下1本」のパターンで5本のトップ側MDヤーンの上および5本のトップ側MDヤーンの下を通っていることになる。
【0028】
各縫合ヤーン141a,141b〜160a,160bの繊維支持部分は、隣接するトップ側CMDヤーンが下を通っているトップ側MDヤーンの上および隣接するトップ側CMDヤーンが上を通っているトップ側MDヤーンの下を通っている。例えば、図3Aおよび図3Bに示されているように、縫合ヤーン141aの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン109,101の上を通っており、トップ側MDヤーン110の下を通っている。一方、縫合ヤーン141bの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン103,105,107の上を通っており、トップ側MDヤーン104,106の下を通っている。縫合ヤーン141a,141bは、いずれも、移行トップ側MDヤーン102,108の下を通っている。前述したように、隣接するトップ側CMDヤーン111は、トップ側MDヤーン102,104,106,108,110の上を通っている。残りの縫合ヤーン対は、隣接する縫合ヤーン対から1本または複数本のトップ側MDヤーン分だけ位置ずれしているが、同じように織り込まれている。このようにして、縫合ヤーン141a,141b〜160a,160bおよびトップ側CMDヤーン111〜140は、トップ側MDヤーン101〜110と一緒になって、平織パターンを形成している(図1参照)。
【0029】
図2を参照すると、ここには、織物の底面が示されている。ボトム側MDヤーン161〜170は、「上4本/下1本」のパターンでボトム側CMDヤーン171〜190に織り込まれている(図2は、図1と反対の側から見た織物100の底面図であり、「ボトム側MDヤーンがボトム側CMDヤーンの「上4本」を通っている」という記述は、図2よりもむしろ、図2に対して「上」と「下」が逆になっている図1および図3A〜図3Eの図に基づいていることに留意されたい)。例えば、ボトム側MDヤーン161は、ボトム側CMDヤーン171〜174の上、ボトム側CMDヤーン175の下、ボトム側CMDヤーン176〜179の上、ボトム側CMD180の上を通って、以下、同じようにボトム側CMDヤーンの下および上を交互に通って、最後に、ボトム側CMDヤーン190の下を通っている。残りのボトム側MDヤーンは、各ボトム側MDヤーンがその隣接するボトム側MDヤーンから2本のボトム側CMDヤーン分だけ位置ずれしているが、同様のパターンで織り込まれている。例えば、ボトム側MDヤーン162は、ボトム側CMDヤーン177の下を通っているが、このボトム側CMDヤーン177は、ボトム側MDヤーン161が下を通っているボトム側CMDヤーン175から2本のボトム側CMDヤーン分だけ位置ずれしている。ボトム側CMDヤーンが4本の「浮糸(float)」をボトム側MDヤーンの下に形成しているこのパターンは、繰返しユニットの全体にわたって繰り返されている。
【0030】
また、各縫合ヤーン141a,141b〜160a,160bの各々の接合部分は、1本のボトム側MDヤーンの下に縫合されている。また、一対の縫合ヤーンは、5本のボトム側MDヤーン分だけ互いに分離したボトム側MDヤーンの下に縫合されている。例えば、図3Aに示されているように、縫合ヤーン141aは、ボトム側MDヤーン165の下を通っており、縫合ヤーン141bは、ボトム側MDヤーン170の下を通っている。縫合ヤーン141a,141b〜160a,160bの互いに隣接する対は、2本のボトム側MDヤーン分だけ、互いに位置ずれしている。
【0031】
図1〜図3Eに示されているような織りパターン、具体的には、CMD縫合ヤーン対間の2本のトップ側CMDヤーンおよびCMD縫合ヤーン対間の1本のトップ側CMDヤーンが交互に配置されている、織りパターンによって、いくつかの先行技術による織物と比較して、製紙における繊維保持およびシート品質を改良するさらなる繊維支持をもたらすことができ、かつ製造コストを高めることなく、このような繊維支持をもたらすことができる。本質的に、2本のボトム側CMDヤーンごとに5本の有効トップ側CMDヤーン(実際のトップ側CMDヤーンまたは一対の縫合ヤーンの繊維支持部分によって形成された「複合」CMDヤーンのいずれか)が設けられており、これによって、前述の繊維支持をもたらすことができる。
【0032】
効果的なトップ側CMDヤーン/ボトム側CMDヤーンの比率(5:2)を利用する織物の他の実施形態の繰返しユニットが、図4,5において、200で総称的に示されている。織物200は、8本のトップ側MDヤーン201〜208、18本のトップ側CMDヤーン211〜228、12本のボトム側MDヤーン251〜262、12本のボトム側CMDヤーン271〜282、および12対の縫合ヤーン231a,231b〜242a,242bを備えている。以下、これらのヤーンの織合わせについて説明する。
【0033】
図4をまず参照すると、ここには、織物200の上面が示されている。トップ側CMDヤーン211〜228は、織物100に対して前述したのと同じ交互パターンで配置されている。すなわち、2本のトップ側CMDヤーンが縫合ヤーン対と縫合ヤーン対との間に位置しており、単一のトップ側CMDヤーンが縫合ヤーン対と縫合ヤーン対との間に位置している。図4に例示されているように、トップ側CMDヤーン212,213が縫合ヤーン対231a,231bと縫合ヤーン対232a,232bとの間に位置しており、1本のトップ側CMDヤーン214が縫合ヤーン対232a,232bと縫合ヤーン対233a,233bとの間に位置している。「縫合ヤーン対/2本のトップ側CMDヤーン/縫合ヤーン対/1本のトップ側CMDヤーン」のこのパターンは、繰返しユニットの全体にわたって続いている。
【0034】
織物100の場合と同じように、トップ側CMDヤーン211〜228の各々は、「上1本/下1本」の順序でトップ側MDヤーンに織り込まれている。2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーン間に位置している箇所では、これらのCMDヤーンは、一つおきのトップ側MDヤーンの上を通っており、単一のトップ側CMDヤーンが2対の縫合ヤーン間に位置している箇所では、このCMDヤーンは、その両側の隣接するトップ側CMDヤーンが上を通っているのと同じトップ側MDヤーンの上を通っている。このパターンは、図4に示されている。図示されているように、トップ側CMDヤーン211がトップ側MDヤーン202,204,206,208の上を通っており、トップ側CMDヤーン212もトップ側MDヤーン202,204,206,208の上を通っている。一方、トップ側CMDヤーン213は、トップ側MDヤーン201,203,205,207の上を通っている。
【0035】
織物100におけるのと同じように、各縫合ヤーン231a,231b〜242a,242bの繊維支持部分は、隣接するトップ側CMDヤーンが下を通っているトップ側MDヤーンの上および隣接するトップ側CMDヤーンが上を通っているトップ側MDの下を通っている。例えば、図4に示されているように、縫合ヤーン231aの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン205,207の上を通っており、トップ側MDヤーン206の下を通っている。一方、縫合ヤーン231bの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン201,203の上を通っており、トップ側MDヤーン202の下を通っている。縫合ヤーン231a,231bは、いずれも、移行トップ側MDヤーン204,208の下を通っている。前述したように、隣接するトップ側CMDヤーン211は、トップ側MDヤーン202,204,206,208の上を通っている。残りの縫合ヤーン対は、隣接する縫合ヤーン対から1本または複数本のトップ側MDヤーン分だけ位置ずれしているが、同じように織り込まれている。このようにして、縫合ヤーン231a,231b〜242a,242bおよびトップ側CMDヤーン211−228は、トップ側MDヤーン201〜208と一緒になって、平織パターンを形成している(図4参照)。
【0036】
図5を参照すると、ボトム側MDヤーン251〜262は、各ボトム側MDヤーンがボトム側CMDヤーンの下に1つ、2つ、または3つのナックル(knuckle)のいずれかを形成するように、ボトム側CMDヤーン271〜282に織り込まれている。例えば、ボトム側MDヤーン251は、「上3本/下1本/上7本/下1本」の順序で織り込まれ、2つのボトム側MDナックルを形成している。ボトム側MDヤーン253,257,259は、ボトム側MDヤーン253,259が1本のボトム側CMDヤーン分だけ位置ずれしているが、同じ順序で織り込まれている。ボトム側MDヤーン252,255,258,261は、各々、「上3本/下1本/上3本/下1本/上3本/下1本」のパターンに織り込まれ、ボトム側CMDヤーンの下に3つのボトム側MDナックルを形成している。ボトム側MDヤーン254,256,260,262は、各々、「上1本/下1本」のパターンでボトム側CMDヤーンに織り込まれ、ボトム側CMDヤーンの下に1つのボトム側MDナックルを形成している。
【0037】
図5を再び参照すると、縫合ヤーン231a,231b〜242a,242bの各々は、ボトム側MDヤーンの下で一回縫合されている。縫合位置によって、縫合ヤーンは、1本のボトム側MDヤーンの下に縫合されることがあり(例えば、縫合ヤーン232aは、ボトム側MDヤーン251の下に縫合されており)、または2本の互いに隣接するボトム側MDヤーンの下に縫合されることがある(例えば、縫合ヤーン231aは、ボトム側MDヤーン253,254の下に縫合されている)。例示されている実施形態では、対の縫合ヤーンは、いずれもが1本のボトム側MDヤーンの下に縫合されているか、またはいずれもが2本のボトム側MDヤーンの下に縫合されている。
【0038】
本発明の実施形態による他の織物の繰返しユニットが、図6および図7において、300で総称的に示されている。織物300は、16本のトップ側ヤーン301〜316、12本のトップ側CMDヤーン321〜332、8本のボトム側MDヤーン351〜358、8本のボトム側CMDヤーン361〜368、および8対の縫合ヤーン341a,341b〜348a,348bを備えている。以下、これらのヤーンの織合わせについて説明する。
【0039】
図6をまず参照すると、ここには、織物300の上面が示されている。トップ側CMDヤーン321〜332は、織物100,200に対して前述したのと同じ交互パターンで配置されている。すなわち、2つのトップ側CMDヤーンが縫合ヤーン対と縫合ヤーン対との間に位置しており、単一のトップ側CMDヤーンが縫合ヤーン対と縫合ヤーン対との間に位置している。図6に例示されているように、トップ側CMDヤーン322,323が縫合ヤーン対341a,341bと縫合ヤーン対342a,342bとの間に位置しており、トップ側CMDヤーン324が縫合ヤーン対342a,342bと縫合ヤーン対343a,343bとの間に位置している。「縫合ヤーン対/2本のトップ側CMDヤーン/縫合ヤーン対/1本のCMDヤーン」のこのパターンは、繰返しユニットの全体にわたって続いている。
【0040】
織物100,200の場合と同じように、トップ側CMDヤーン321〜332の各々は、「上1本/下1本」の順序でトップ側MDヤーンに織り込まれている。2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーン間に位置している箇所では、これらのトップ側CMDヤーンは、1つおきのトップ側MDヤーンの上を通っている。一方、単一のトップ側CMDヤーンが2対の縫合ヤーン間に位置している箇所では、このCMDヤーンは、その両側の隣接するトップ側CMDヤーンが上を通っているのと同じトップ側MDヤーンの上を通っている。このパターンは、図6に示されている。図示されているように、トップ側CMDヤーン321は、トップ側MDヤーン302,304,306,308,310,312,314,316の上を通っており、トップ側CMDヤーン322もトップ側MDヤーン302,304,306,308,310,312,314,316の上を通っている。一方、トップ側CMDヤーン323は、トップ側MDヤーン301,303,305,307,309,311、313,315の上を通っている。
【0041】
織物100におけるのと同じように、各縫合ヤーン341a,341b−348a,348bの繊維支持部は、隣接するトップ側CMDヤーンが下を通っているトップ側MDヤーンの上を通っており、隣接するトップ側CMDヤーンが上を通っているトップ側MDヤーンの下を通っている。例えば、図6に示されているように、縫合ヤーン341aの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン303,305,307,309の上を通っており、トップ側MDヤーン304,306,308の下を通っている。一方、縫合ヤーン341bは、トップ側MDヤーン311,313,315,301の上を通っており、トップ側MDヤーン312,314,316の下を通っている。縫合ヤーン341a,341bは、いずれも、移行トップ側MDヤーン302,310の下を通っている。前述したように、隣接するトップ側CMDヤーン321,322は、トップ側MDヤーン302,304,306,308,310,312,314,316の上を通っている。残りの縫合ヤーン対は、隣接する縫合ヤーン対から1本または複数本のトップ側MDヤーン分だけ位置ずれしているが、同じように織り込まれている。このようにして、縫合ヤーン341a,341b〜348a,348bおよびトップ側CMDヤーン321〜332は、トップ側MDヤーン301〜316と一緒になって、平織パターンを形成している(図6参照)。
【0042】
図7を参照すると、ボトム側MDヤーン351〜358は、「下1本/上3本」の順序でボトム側CMDヤーン361〜368に織り込まれている。例えば、ボトム側MDヤーン351は、ボトム側CMDヤーン361の下、ボトム側CMDヤーン362〜364の上、ボトム側CMDヤーン365の下、およびボトム側CMDヤーン366〜368の上を通っている。残りのボトム側MDヤーンは、ナックルが4枚(4−harness)繻子織パターンを形成するように隣接ボトム側MDヤーンから位置ずれしているが、同じ織りパターンで織られている。
【0043】
縫合ヤーン314a,341b〜348a,348bの各々は、1本のボトム側MDヤーンの下に縫合されている。下で縫合されているボトム側MDヤーンは、3本のボトム側MDヤーン分だけ、互いに分離されている。例えば、縫合ヤーン341aは、ボトム側MDヤーン357の下に縫合されており、縫合ヤーン341bは、ボトム側MDヤーン353の下方に縫合されている。ボトム側MDヤーンの下に形成された縫合ナックルは、4枚繻子織りパターンに配置されている。
【0044】
本発明の実施形態による他の織物の繰返しユニットが、図8および図9において、400で総称的に示されている。織物400は、16本のトップ側ヤーン401〜416、12本のトップ側CMDヤーン421〜432、8本のボトム側MDヤーン451〜458、8本のボトム側CMDヤーン461〜468、および8対の縫合ヤーン441a,441b〜448a,448bを備えている。図8から分かるように、トップ側MDヤーン401〜416、トップ側CMDヤーン421〜432、および縫合ヤーンの織合わせは、実質的に織物300の織合わせと同じである。しかし、図9から分かるように、織物400の底面は、ボトム側MDヤーン451〜458が、「上1本/下3本/上1本/下3本」の順序でボトム側CMDヤーン461〜468に織り込まれている(すなわち、ボトム側MDヤーンは、ボトム側CMDヤーンの下に3本の「浮糸」を形成している)点において、異なっている。例えば、ボトム側MDヤーン451は、ボトム側CMDヤーン461の上、ボトム側CMDヤーン462〜464の下、ボトム側CMDヤーン465の上、およびボトム側CMDヤーン466〜468の下を通っている。ボトム側CMDヤーン461〜468によって形成されたボトム側ナックルは、4枚繻子織りパターンを形成している。縫合ヤーン441a,441b〜448a,448bは、ボトム側CMDヤーンに隣接するボトム側MDヤーンの下に縫合されている。例えば、ボトム側CMDヤーン461は、隣接する縫合ヤーン441a,441bと同じように、ボトム側MDヤーン451,455の下にナックルを形成している。ボトム側CMDヤーンのナックルに対して縫合ヤーンナックルをこのように近接して配置することによって、縫合ヤーンの摩耗の保護を助長することができる。
【0045】
これらの織物の各々は、同様の織物を上回る(ベランの繊維支持指数によって測定される)改良された繊維支持および浸透性を有することができる。また、高密度の縫合ヤーン対を有する織物よりも製造コストを低減させることができる。
【0046】
本発明の織物に利用されるヤーンの形態は、最終的な製紙機用織物の所望の特性に応じて変更可能である。例えば、ヤーンは、モノフィラメント糸、前述したような扁平モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、マルチフィラメント撚糸またはモノフィラメント撚糸、スパンヤーン、またはそれらの任意の組合せのいずれであってもよい。しかし、いくつかの実施形態では、モノフィラメントが好ましい。また、本発明の織物に用いられるヤーンをなす材料は、製紙機用織物に一般的に用いられるものであればよい。例えば、ヤーンは、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、アラミド、などのいずれから形成されていてもよい。加えて、これらのポリマーは、フォーミング織物の性能を高めることを目的とし、特別の性質、例えば、汚染、伸縮、磨滅の改良および/または耐薬品性をモノフィラメントに与えるために、添加物を含んでいてもよいし、または他のポリマーと混合されていてもよい。熟練の職人であれば、最終的な織物の特定の用途に応じて、ヤーン材料を選択することになるだろう。特に、ポリエステルまたはポリアミドから形成された丸形モノフィラメントヤーンが適しており、前述したように、ボトム側MDヤーンとしてのモノフィラメントヤーンの使用は、特に適している。
【0047】
当業者であれば、種々の寸法のヤーンが本発明の織物の実施形態に用いられてもよいことを理解するだろう。前述したように、トップ側MDヤーンおよびボトム側MDヤーンの両方を含んでいる実施形態では、トップ側MDヤーンは、ボトム側MDヤーンの直径よりも小さい直径を有しているとよい。例えば、トップ側MDヤーン、トップ側CMDヤーン、および縫合ヤーンは、約0.10mmから0.20mmの間の直径を有しているとよい。ボトム側MDヤーンは、約0.12mmから0.34mmの直径を有しているとよい。ボトム側CMDヤーンは、約0.20mmから0.30mmの間の直径を有しているとよい。本発明の実施形態による織物のメッシュもまた変更可能である。例えば、上面のメッシュは、約20×20から40×50(cm当たりの経糸数×cm当たりのピック数(epcm × ppcm))の間で変更可能であり、メッシュの全体は、約40×35から90×90の間で変更可能である。
【0048】
加えて、ある種類のヤーンの数に対する他の種類のヤーンの数が変更されてもよい。例えば、図示されている実施形態のいくつかにおいて、ボトム側MDヤーンの数に対するトップ側MDヤーンの数の比率は、1:1であり、他の実施形態では、ボトム側MDヤーンの数に対するトップ側MDヤーンの数の比率は、2:1または2:3であるが、他の比率が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、「有効(effective)」トップ側CMDヤーンの数(すなわち、トップ側CMDの数+CMD縫合ヤーン対の数)は、5:2であるが、他の比率、例えば、1:1および2:1が用いられてもよい。
【0049】
最後に、実施形態の各々は、平織りの上面を含んでいるが、他の実施形態として、綾織、繻子織、などを含む異なる織パターンを有する上面を備えていてもよい。加えて、織物の底面の長いMD浮糸パターンは、繻子織、綾織、などを含む他の織パターンであってもよい。
【0050】
本発明の他の態様によれば、紙を作製する方法が提供されることになる。これらの方法によれば、本明細書に記載されている例示的な製紙機用フォーミング織物の1つが準備され、次いで、紙原料を該フォーミング織物に施し、紙原料から水分を除去することによって、紙が作製されることになる。紙原料がフォーミング織物に施される方法および水分が紙原料から除去される方法の詳細は、当業者によってよく理解されていることであり、本発明のこの態様に関するさらなる詳細については、本明細書ではこれ以上説明しないことにする。
【0051】
前述の実施形態は、本発明の例示にすぎず、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態について説明してきたが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、これらの例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するだろう。従って、このような修正の全ては、特許請求項に記載されている本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、以下の特許請求項によって規定され、特許請求の範囲の等価物は、特許請求の範囲に含まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々が、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
一組のCMD縫合ヤーンであって、前記トップ側CMDヤーンおよび前記ボトム側CMDヤーンに織り込まれ、前記トップ側織物層および前記ボトム側織物層を互いに接合している、CMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記縫合ヤーンは、対になって配置されており、
前記トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、次いで、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されていることを特徴とする製紙機用織物。
【請求項2】
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーンの一部は、前記トップ側織物層上に平織製紙面を形成するように織り合されていることを特徴とする、請求項1に記載の製紙機用織物。
【請求項3】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の製紙機用織物。
【請求項4】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の製紙機用織物。
【請求項5】
前記ボトム側CMDヤーンは、前記ボトム側MDヤーンの下に浮糸を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の製紙機用織物。
【請求項6】
前記縫合ヤーンは、互いに隣接するボトム側CMDヤーンによって形成された互いに隣接する浮糸の部分間において、前記ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成していることを特徴とする、請求項5に記載の製紙機用織物。
【請求項7】
前記ボトム側CMDヤーンは、前記ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成していることを特徴とする、請求項1に記載の製紙機用織物。
【請求項8】
前記縫合ヤーンは、ボトム側CMDヤーンによって形成されたナックルにごく隣接するナックルを形成していることを特徴とする、請求項7に記載の製紙機用織物。
【請求項9】
ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDヤーンおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2であることを特徴とする、請求項2に記載の製紙機用織物。
【請求項10】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々が、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
一組のCMD縫合ヤーンであって、前記トップ側CMDヤーンおよび前記ボトム側CMDヤーンに織り込まれ、前記トップ側織物層および前記ボトム側織物層を互いに接合している、一組のCMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記縫合ヤーンは、対になって配置されており、
前記トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、(b)2本のトップ側CMDヤーンが1対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されており、
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーンの一部は、前記トップ側織物層上に平織製紙面を形成するように織り合されており、
前記ボトム側CMDヤーンは、前記ボトム側MDヤーンの下に浮糸を形成していることを特徴とする製紙機用織物。
【請求項11】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数と同じであることを特徴とする、請求項10に記載の製紙機用織物。
【請求項12】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数よりも大きいことを特徴とする、請求項10に記載の製紙機用織物。
【請求項13】
前記縫合ヤーンは、互いに隣接するボトム側CMDヤーンによって形成された互いに隣接する浮糸間において、前記ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成していることを特徴とする、請求項10に記載の製紙機用織物。
【請求項14】
ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDヤーンおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2であることを特徴とする、請求項10に記載の製紙機用織物。
【請求項15】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々が、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組 のボトム側CMDヤーンと、
一組のCMD縫合ヤーンであって、前記トップ側CMDヤーンおよび前記ボトム側CMDヤーンに織り込まれ、前記トップ側織物層および前記ボトム側織物層を互いに接合している、一組のCMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記縫合ヤーンは、対になって配置されており、
前記トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されており、
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーンの一部は、前記トップ側織物層上に平織製紙面を形成するように織り合されており、
前記ボトム側CMDヤーンは、前記ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成していることを特徴とする製紙機用織物。
【請求項16】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数と同じであることを特徴とする、請求項15に記載の製紙機用織物。
【請求項17】
前記縫合ヤーンは、ボトム側CMDヤーンによって形成されたナックルにごく隣接するナックルを形成していることを特徴とする、請求項15に記載の製紙機用織物。
【請求項18】
ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2であることを特徴とする、請求項15に記載の製紙機用織物。
【請求項19】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々が、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、一組のトップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
一組のCMD縫合ヤーンであって、前記トップ側CMDヤーンおよび前記ボトム側CMDヤーンに織り込まれ、前記トップ側織物層および前記ボトム側織物層を互いに接合している、一組のCMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記縫合ヤーンは、対になって配置されており、
前記トップ側CMDヤーンは、第1に、(a)単一のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置し、(b)2本のトップ側CMDヤーンが一対の縫合ヤーンと隣接する対の縫合ヤーンとの間に位置する、交互パターンに配置されており、
ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDヤーンおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2であることを特徴とする製紙機用織物
【請求項20】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数と同じであることを特徴とする、請求項19に記載の製紙機用織物。
【請求項21】
前記一対の縫合ヤーンの一方は、前記トップ側MDヤーンの上に第1の数のナックルを形成し、前記一対の縫合ヤーンの他方は、前記トップ側MDヤーンの上に第2の数のナックルを形成しており、前記第2の数は、前記第1の数よりも大きいことを特徴とする、請求項19に記載の製紙機用織物。
【請求項22】
前記ボトム側CMDヤーンは、前記ボトム側MDヤーンの下に浮糸を形成していることを特徴とする、請求項19に記載の製紙機用織物。
【請求項23】
前記縫合ヤーンは、互いに隣接するボトム側CMDヤーンによって形成された互いに隣接する浮糸の部分間において、前記ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成していることを特徴とする、請求項22に記載の製紙機用織物。
【請求項24】
前記ボトム側CMDヤーンは、前記ボトム側MDヤーンの下にナックルを形成していることを特徴とする、請求項19に記載の製紙機用織物。
【請求項25】
前記縫合ヤーンは、ボトム側CMDヤーンによって形成されたナックルにごく隣接するナックルを形成していることを特徴とする、請求項24に記載の製紙機用織物。
【請求項26】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々が、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、トップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
一組のCMD縫合ヤーンであって、前記トップ側CMDヤーンおよび前記ボトム側CMDヤーンに織り込まれ、前記トップ側織物層および前記ボトム側織物層を互いに接合している、CMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記縫合ヤーンは、対になって配置されており、
ボトム側CMDヤーンに対するトップ側CMDヤーンおよび縫合ヤーン対の比率は、5:2であることを特徴とする製紙機用織物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−507639(P2012−507639A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534655(P2011−534655)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062020
【国際公開番号】WO2010/051243
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(500048074)ウィーヴェックス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (10)
【Fターム(参考)】