説明

対象歯をスキャンするスキャニング装置および対象歯をスキャンする方法

【課題】既知の対象歯をスキャンする装置を改善し、対象歯をスキャンする方法を改善する。
【解決手段】本発明は、対象歯をスキャンするためのスキャニング装置であって、対象歯が取り付けられることができるベース板と、光学スキャニングシステムが取り付けられるマウント板のようなマウント構造体とを備えるスキャニング装置に関し、スキャニング装置はマウント構造体を移動する手段をさらに備える。また、本発明は、対象歯をスキャンする方法であって、(a)ベース板の表面とマウント構造体の表面との間の第1の角度が挟まれてなり、本発明のスキャニング装置のベース板に対象歯を取り付けるステップ、(b)第1データセットを取得するために取り付けられた対象歯をスキャンするステップ、(c)第1角度を第2角度に変えるためにマウント構造体を移動する手段を用いるステップ、および、(d)第2データセットを取得するために取り付けられた対象歯をスキャンするステップを備えるスキャン方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象歯をスキャンするスキャニング装置および対象歯をスキャンする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯のモデルをデジタル表示するデータセットを取得するために歯のモデルをスキャンする装置は知られている。そのようなデータセットは、義歯素子の自動製造に使用できる。
【0003】
特許文献1は、三次元概略表示における歯のモデルをスキャンする装置を開示する。光学スキャニングシステム(レーザー照明およびカメラ)が上に取り付けられる第1板が、ベース板が上に設けられる第2板に対して20°〜80°の角度において配置される。歯のモデルはベース板上に配置されてもよく、このベース板は回転ディスクとして実行されてもよく、回転シャフトが設けられてもよい。回転シャフトは、スキャニング領域によって規定される面に対して横断方向である所定の方向、およびこの第1方向に垂直な第2方向に移動されてもよい。
【0004】
特許文献2は、回転板に取り付けることができる測定ポットの利用法を開示する。測定ポットには、例えば1つ以上の歯のモデルが取り付けられてもよい。測定ポットは、回転版を回転することによって測定領域内に移動することができる。測定ポットが測定領域到達すると、回転板が回転を停止し、測定ポット内の歯のモデルのスキャニングが測定テーブルの直線的な動作によって実行される。これは、レーザースキャナーが20°〜80°の所定角度において配置されると、スキャンされる歯の一方の側面を観察できる測定ラインを作り出す。追加的な観察角度から追加的な測定ラインを取得可能にするために、測定領域内に位置するポットを、各測定の合間にポット自体の軸を中心に、例えば、8枚の画像を取得するのに45度ずつ回転することができる。このようにして異なる角度からの8つの測定ラインを取得することができ、このようにして得られた表面データの一部分は、複数の測定ラインにおいて表れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0248929号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0032594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既知の対象歯をスキャンする装置を改善し、対象歯をスキャンする方法を改善することである。
【0007】
この目的は、請求項1の対象歯をスキャンするスキャンニング装置と、請求項10による対象歯をスキャンする方法とによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好適な実施形態が、従属項において開示されている。
【0009】
対象歯をスキャンする本発明に関するスキャニング装置は、少なくとも1つの対象歯を取り付けることができるベース板と、光学スキャニングシステムが取り付けられるマウント板のようなマウント構造体とを備え、スキャニング装置は、マウント構造体を移動する手段をさらに備える。光学スキャニングシステムによって、少なくとも1つの対象歯を、スキャニング領域内に位置する際に、スキャンすることができる。マウント構造体を移動する手段は、マウント構造体およびベース板を互いに対して移動することを可能にし、それにより、移動後は、ベース板とマウント構造体とは、移動前より異なる互いに対する別の相対的位置を有する。さらにそのような移動の結果、マウント構造体に取り付けられた光学スキャニングシステムがスキャンされる対象歯に対して別の位置を有することを可能にすることができる。このようにして、対象歯は、他の方向からスキャンされてもよい。そのような移動が有する1つの利点は、対象歯を置き直すことなく、対象歯の様々な側面をスキャンすることができる点である。
【0010】
すでに示したように、マウント構造体はマウント板であってもよい。そのような板は、例えば、照明装置や光検出装置のような光学スキャニングシステムの装置が取り付けられてもよい場所に十分な空間をもたらすことができる。しかしながら、マウント構造体は、例えば金属および/またはグラスファイバー補強プラスチックで作られたレールやロッドで構成されてもよい。これらのレールやロッドはフレームに取り付けられてもよく、好ましくは、フレームは、光学スキャニングシステムの光軸に平行に配置されてもよい。レールやロッドを使うことによって、例えばスキャニング装置の重量を削減できる。光学スキャニングシステムの照明装置および/または光検出装置、および/またはマウント構造体の位置を検出するセンサーが、レールやロッドに取り付けられてもよい。
【0011】
移動手段は、ベース板に対するマウント構造体の回転や傾斜に適応してもよい。また、移動手段は、ベース板の表面とマウント構造体の表面とに挟まれる角度を変えることに適応してもよい。
【0012】
回転は、マウント構造体が、ベース板の表面に平行に配置される回転軸を中心に回転可能であることを意味してもよく、同時に、傾斜は、マウント構造体が回転可能であってもよい軸を中心の回転軸が、ベース板の表面に対してある角度において配置されることを意味する。
【0013】
マウント板の使用時は、マウント構造体の表面は、板の表面によって定義される。マウント構造体にレールやロッド、または同構成の使用時は、表面は、例えばレールやロッド、または同類物が取り付けられてもよいマウント構造体のフレームを通過する面によって定義されてもよい。
【0014】
観察角度は、ベース板の表面と、光学スキャンニングシステム(照明装置および光検出装置)の光軸によって定義される面とによって定義されてもよい。一般的に、光学スキャニングシステムの光軸によって定義される面は、マウント構造体の表面に平行であり、それにより観察角度は、ベース板の表面とマウント構造体の表面とに挟まれる角度と同じ値を有する。ベース板の表面とマウント構造体の表面と間に挟まれる角度を変えることによって、少なくとも1つの対象歯上の観察角度も変えてもよい。このように、例えば2回の少なくとも1つの対象歯のスキャニング測定が実行されてもよく、それによって例えば、少なくとも1つの対象歯の別の観察角度から観察できない領域をスキャンすることを可能にする。
【0015】
マウント構造体を移動する手段が使用されると、光学スキャニングシステムのスキャニング領域内に位置する少なくとも1つの対象歯への観察角度を変えることができる。これは、対象歯の異なる領域の観察とスキャニングとを可能にする。このようにして、レーザー光の方向に位置する対象歯のある部分によって隠れてしまうだろう領域もスキャンすることができる。
【0016】
スキャニング領域は、好ましくは容易に、すなわち、対象歯を大部分移動する必要なく、対象歯が照明領域および観察領域も範囲内に位置する領域として定義することができる。好ましくは、ベース板の表面とマウント構造体の表面と間に挟まれる角度は、スキャニング測定の合間に変えられ、すなわち、スキャニング中は、角度が固定値を有する。別の実施形態では、スキャニング測定中に、挟まれる角度を連続的に変えることが好ましくてよい。
【0017】
移動手段は、ベース板の表面とマウント構造体の表面と間に挟まれる角度を20°〜90°の範囲で変えられるように適応してもよい。別の実施形態では、ベース板の表面とマウント構造体の表面と間に挟まれる角度の範囲は、10°〜90°、0°〜90°、または0°〜180°、あるいはこれらの値の間の別の角度範囲であってもよい。最低値、例えば角度を0°にした場合、光学スキャニングシステムは、一側面から直接対象歯をスキャンしてもよい。90°の角度においては、光学スキャニングシステムが、上部、例えば対象歯の咬合面から対象歯をスキャンしてもよい。
【0018】
0°〜180°の角度範囲を有することによって、例えば、側部から上部(例えば咬合)の面、次いで初めの側部の反対側の側部まで対象歯をスキャンすることが可能である。
【0019】
ベース板は、第1方向および第2方向に直線的に移動されるように適応してもよい。少なくとも1つの対象歯がベース板に取り付けられると、対象歯も直線的に移動され、すなわち、光学スキャニングシステムに対して移動され、少なくとも1つの対象歯の異なる領域のスキャニングを可能にする。
【0020】
好ましくは、第1および第2の方向は互いに垂直であり、ベース板の表面の面に平行に位置する。
【0021】
スキャニング装置は、少なくとも1つの対象歯を保持する少なくとも1つの保持装置をさらに備えてもよい。少なくとも1つの保持装置は、ベース板に直接取り付けられてもよく、または、追加的な回転板に取り付けられてもよい。回転板は、ベース板に取り付けられてもよいのと供に、回転軸を中心に両方向(時計方向および反時計方向)または一方向のみに回転可能であってもよい。例えば、回転板は、スキャニング領域内に少なくとも1つの保持装置を回転するために使用されてもよい。
【0022】
保持装置は、少なくとも1つの対象歯が上にまたは中に取り付けられてもよいポットとして設けられてもよい。保持装置の内部または上に対象歯を固定するために、例えば成形粘土が使用されてもよい。顎全体の歯のような対象歯の保持装置は、例えば歯列弓の調整に提供するテンプレートを備えてもよい。
【0023】
少なくとも1つの保持装置は、回転軸を中心に回転可能にできる。保持装置を回転することによって、対象歯を異なる角度からスキャンすることができる。それにより、取得した対象歯の表面データの複数の部分が、複数のスキャニング帯体において現れ、マッチングソフトに使用されるこれらの重複領域によって、各スキャニング帯体を合体して対象歯の全体的な三次元表面画像を形成する。
【0024】
少なくとも1つの保持装置は、例えば対象歯から8つの異なる角度からのスキャニングストリップを取得できるように45度ずつ、各測定の合間に回転されてもよい。また、8枚より多いまたは少ないスキャニングストリップを記録できるように、他の回転角度が使用されてもよい。対象歯のこれら複数の測定重複領域それぞれが記録され、例えばマッチング方法を使用することによって対象歯の表面の正確な再構築を可能にする。
【0025】
光学スキャニングシステムは、照明装置および光検出装置を備えてもよい。照明装置は、レーザーであってよく、光検出装置は、CCDチップを備えるカメラまたはCCDチップ単体であってもよい。
【0026】
照明装置および光検出装置は、共にマウント構造体に取り付けられ、それにより、ベース板の表面とマウント構造体の表面との間の角度が変えられる場合、カメラの観察領域の角度と照明装置の照明領域の角度との両方が同量、すわなち、同角度ずつ変えられるが、光検出装置と照明装置との相対位置は変わらない。照明装置と観察領域との重複領域は記録ラインと呼ばれる。記録ラインにおいて、例えば対象歯の表面のデータ点が記録される。また、例えば記録ラインに垂直方向に対象歯を移動することによって、スキャニングストリップが記録されてもよく、すなわち、スキャニングストリップが覆う領域において対象歯の表面が記録される。
【0027】
マウント構造体は、例えばステッピングまたはサーボモーターであってよいモーターによって移動されてもよい。これは、マウント構造体の自動コンピューター制御動作を可能にする。
【0028】
スキャニング装置は、マウント構造体の位置を検出する、好ましくはベース板の表面とマウント構造体の表面との間の角度を検出するためのセンサーをさらに備えてもよい。例えば、いくつかの参照マークが、スキャニング装置の不動部品上に設けられてもよく、参照マークが、センサーによって検出されてもよく、それぞれの参照マークが角度の実値に関連するものであってもよい。関連物は、例えば参照マーク自体が数字で角度の値を記すこと、または、例えば、ある表および/または記録されたデータセットを引用できる参照マークと角度の値とのある相関が存在することを意味してもよい。
【0029】
マウント構造体の位置を検出することによって、スキャニングストリップの重複領域をマッチングするマッチング方法が簡易化される。
【0030】
対象歯をスキャンする方法は、(a)ベース板の表面とマウント構造体の表面との間の第1角度が挟まれてなり、発明したスキャニング装置のベース板に対象歯を取り付けるステップ、(b)第1データセットを取得するために取り付けられた対象歯をスキャンするステップ、(c)第1角度を第2角度に変えるためにマウント構造体を移動する手段を使用するステップ、および、(d)第2データセットを取得するために取り付けられた対象歯をスキャンするステップとを備える。
【0031】
第1および第2測定(スキャニング)との合間に角度を変えることによって、対象歯への観察角度を変えることができ、それにより対象歯の異なる領域をスキャンできる。上述の方法において、ステップb)および/またはステップd)の後に、対象歯は、直線的に移動され、かつ/または回転され、次いで1つまたは2つのさらなるデータセットを取得するためにスキャンされてもよい。
【0032】
さらなる直線的に対象歯を移動することにより、2つの角度それぞれにおいて、2つの異なるスキャニングストリップが記録される。
【0033】
対象歯は1つの歯のモデルであってもよく、例えば分離された成形モデル、または2つまたは複数の隣接した歯や顎全体の歯からのものでもあってもよい。1つ以上の歯は、歯全部、または歯科治療や儀歯において歯科医によって用意された歯を含んでもよい。
【0034】
上記以上に、本発明は、特定の構成に基づいてまたは概論の形式において本明細書および添付図に開示された追加的な変形および態様を含む。本装置の有利な実施形態は、図に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】対象歯をスキャンするスキャン装置の三次元図を示す。
【図2】スキャン装置の概略図を示し、マウント構造体は、ベース板に対して異なる2つの角度において配置される。
【図3a】2つの高さh1、h2において設けられた対象歯を示す。
【図3b】2つの高さh1、h2において設けられた対象歯を示す。
【図4】部分的に重なる、対象歯上の3つのスキャンストリップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
各図において、同一または同類、あるいは、全く同じまたは同じように作動する部品は、同じ符号が付されているか、比較できるように示されており、よって、部品、それらの組み合わせ、それらの機能、およびそれらの作動モードは、必要に応じて、特定の図と図との間、および/または、図と文章との間の言及が、明確に示されないか、またはしめされていない場合であっても、当業者であれば、図を見ることだけから、図を比較することから、および、以下の記載だけからでも直ちに理解できる。
【0037】
図1においては、対象歯2a, 2bをスキャンするスキャン装置1の三次元図が示される。スキャン装置1には、例えば、レーザー照明装置3a(以後、レーザーと称する)および光検出装置3bを備える光学スキャンシステム3a、3bが設けられ、ここで光検出装置3bは、カメラ(CCDチップを有するカメラが使用されてもよいし、CCDチップ単体も可能である)であり、この実施形態ではマウント板4として設けられているマウント構造体4に取り付けられている。レーザー3aは、対象歯2a、2b、例えば、顎2bまたは1つ以上の歯2a、を限定照明領域5内において照明し、カメラ3bは、カメラ3bによって観察される限定観察領域6内のデータを記録してもよく、カメラ3bは、レーザー3aの照明領域5を観察してもよい。レーザーは、例えば(細い)線にレーザービームをフォーカスする円柱レンズを使うことによって、例えば(細い)線形状領域を照明するように構成することができる。照明領域5と観察領域6との重複領域を、記録ライン7と称する。この記録ライン7においては、例えば、対象歯2a、2bの表面のデータ点を記録することができる。
【0038】
レーザー3aのレーザー光で対象歯2a、2bを照明することにより、対象歯2a、2b上の線形状領域を照明することができる。カメラ3bは、いくつかの角度において線形状領域を撮影してもよく、例えば、カメラ3bに備えられたCCDチップが、記録ライン7内の対象歯2a、2bの表面から反射したレーザー光を検出してもよい。次々に様々な記録ラインを記録することによって、対象歯2a、2bの表面形状を、スキャンし、すなわち、測定することができる。
【0039】
図に示めすように、異なる対象歯2a、2bは、これら対象歯2a、2bを保持する異なる保持装置8a、8bに取り付けられてもよい。保持装置8a、8bは、回転板9に取り付けられており、この回転板は、図中においては円状であるが、別の形状を有してもよく、それ自体はベース板10に取り付けられている。回転板9は、回転軸を中心に両方向(時計回りおよび反時計回り)または一方向に回転可能とすることができる。保持装置8a、8bのそれら自体も、それらの回転軸を中心に回転可能である。
【0040】
2つのタイプの保持装置8aが示されている。1つのタイプは、好ましくは1つの歯2aが取り付けられるポット8のように形成され、もう一つのタイプは、顎の歯が取り付けられるテンプレート8のように形成される。回転板9には、1つ以上の保持装置8a、8bが備えられてもよく、これらの装置8a、8bは全て、同一のタイプでも、異なるタイプであってもよい。
【0041】
示されるベース板10は、2つの方向11、12に移動することができ、図示されている場合では、2つの方向11、12は互いに垂直であり、かつベース板10の表面に平行な面内に位置する。移動は、例えば動作を伝達するために物理的軸13、14に取り付けられる1つ以上のステッピングモーターの使用により制御されてもよい。ベース板10を第1方向に移動することにより、対象歯2a、2bをこの方向に移動することができ、このように対象歯2a、2bの領域をスキャンすることができる。ベース板10を第2方向に移動することにより、第1方向に移動している間にスキャンされる領域は変えられる。1つ以上のステッピングモーターおよび軸13、14は、スキャン装置1が使用位置にある際に、ベース板の下に位置してもよい。
【0042】
1つ以上のステッピングモーターおよびこれらステッピングモーターが取り付けられる軸13、14を保護するために、底板17が設けられる。スキャン装置は、脚15を備えてもよく、脚15は、高さ調整可能であり、底板17に取り付けられてもよい。
【0043】
保持装置8a、8bと記録ライン7のそれらの間の関係は、対象歯2a、2bが位置する高さを変えることにより変えることができる。例えば、高さは、保持装置8a、8bの高さを変えることにより調整されてもよい。保持装置8a、8bは、その高さを増減するように伸縮自在であってもよく、かつ/または、違う高さのソケットが、ベース板10と8a、8bを保持する装置との間に配置されてもよい。このように、スキャンされる対象歯2a、2bは異なる高さに位置する。このことは、照明光学系または記録光学系の焦点調節に関しては適切である。さらに保持装置8a、8bと記録ライン7との関係は、それぞれの高さによって変えられる。例えば、対象歯2a、2bの中央より外側の対象歯2a、2bの所定領域がスキャンされてもよい。もし次に、対象歯2a、2bがより低い高さ、すなわち、以前の高さよりベース板10により近くに位置する場合、スキャニング領域7は、対象歯2a、2bのさらに内側(回転板9の中央に対して)に位置する領域をスキャンするだろう(図3aおよび図3bも参照)。
【0044】
図示されている場合においては、マウント板4は、ベース板10の表面に平行に位置する回転軸24を中心に回転されてもよい。対象歯2a、2bがスキャンされることを保証するために、対象歯2a、2bが、記録ライン7の範囲の領域内に位置するマウント板4の第一位置の測定領域に位置する際、またマウント板が第2位置にある際、好ましくは、回転軸はスキャンされる対象歯がある領域内に位置し(図2も参照)、さらに、図1に示すように、マウント板4は、回転軸24が通過する領域内にスキャンされる対象歯を位置させるいくつかの凹部25を有してもよい。マウント板は、凹所25が設けられる場所とスキャニング装置1、特にスキャニング装置の一サイドフレームに、マウント板4を回転できる方法で固定させる場所との間に2つの延長部26を有する。
【0045】
スキャニング装置1のサイドフレーム19に取り付けられる移動手段23を用いて、マウント板4は、ベース板10の表面に対して異なる角度αにおいて配置されてもよい。それにより、マウント手段は、回転や傾斜が可能になる。そのため、レーザー3aおよびカメラ3bの光学軸も、双方がマウント板4に取り付けられるとベース板10の表面に対して角度αにおいて傾斜され得る。
【0046】
例えば回転板9に取り付けられる対象歯2a、2bを保護するためのカバー(図示せず)が、カバーが取り付けられる連結フレーム18によって移動されてもよい。連結フレーム18は、スプロケット20によって移動可能であってもよく、スプリング21によっていくらかの置き直す力が働く。連結フレームはサイドフレーム19に(回転可能に)取り付けられてもよい。
【0047】
図2は、スキャニング装置1の側面図を示し、マウント板4は、ベース板10の面とマウント板4の面(または、示される光学スキャニングシステムの光学軸)との間の角度α1、α2が異なる値を有するように2つの異なる位置P1、P2に配置されている。図を見るものの側にあるフレーム連結18、サイドフレーム19、およびスプリング21は、明瞭さの目的のために図示しない。対象歯2a、2bは、例えばマウント板4の第1位置P1から、歯2aの表面の一部の領域には、レーザー光が届かないかもしれず、一方、マウント板4の第2位置においては、表面のより広域部分に、レーザー光が届くことができるような形状を有してもよい。
【0048】
図3aおよび図3bは、2つの異なる高さh1およびh2に設けられた、虫歯22を有する対象歯2aを示し、h1の絶対値は、h2の絶対値よりも大きい。
【0049】
対象歯のスキャニングが実行されてもよい高さを変えることによって、照明領域5および/または観察領域6は、対象歯の頂部が両領域の邪魔になる位置にいないように対象歯に対して傾斜されてもよい。図3aおよび図3bの記録ライン7の位置を比較することによって、図3bにおいて記録ライン7が図3aの記録ライン78に比べて右にシフトされることがわかる。同様の効果が図3aに示す対象歯2aを左に移動することによって、その高さh1を変えることなく、達成されてもよい。
【0050】
図3aに示す配置では、対象歯2aの各部が照明領域5および/または観察領域6の方向に位置すると、限られた一部しか虫歯22の右側面をスキャンできず、そのため両領域は遮蔽されて、虫歯の中に伝播することができない。
【0051】
例えば、仮に保持装置8aの回転軸を中心に対象歯を回転できたとしても、虫歯の底部は記録ライン7が届く範囲内ではなく、そのため虫歯の底部の面はスキャンされえない。しかしながら、ベース板10の面とマウント板4との間の角度が、より大きい値、例えば80°または90°に変えられれば、虫歯22の底部は、記録ライン7が届く範囲内になるだろう。
【0052】
図4では、虫歯22を有する対象歯上の隣接する3つのスキャニング帯域L1、L2、L3が示される。スキャニング帯域は、複数の平行な記録ライン7からなる。スキャニング帯域L1およびL2は領域A1において重複し、スキャニング帯域L2およびL3は領域A2において重複する(ハッチングされた領域)。重複領域A1、A2は、対象歯2aの全体画像を形成するマッチング法によって各スキャニング帯域L1、L2、L3のデータを合体することを可能にする。
【0053】
例えば、先ず、対象歯2aが、記録ライン7が対象歯2aに亘って横断することによって、x方向(第1移動方向)にベース板10と一緒に移動されてもよい。次いで、ベース板10と供に対象歯2aがy方向(第2移動方向)にΔyだけ移動され、再び対象歯2aが、記録ライン7が対象歯2aに亘って横断することよって、x方向(第1移動方向)にベース板10と一緒に移動されてもよい。y方向における重複領域A1、A2の幅は、Δyの値により制御されてもよい。
【0054】
異なるスキャニング帯域L1およびL2は、例えば異なる角度αと供に記録されてもよい。例えば、スキャニング帯域L1は、40°の角度αで、帯域L2は、虫歯の中をより深く見ることができ、それによって虫歯の底をスキャンする90°の角度において記録されてきた。異なるスキャニング帯域は、異なる観察角度でスキャンされてもよい。
【0055】
特に、上記の実施形態は、実施形態と請求項とでの専門用語の関係がすぐに把握できるように、請求項に特定される構成に言及し、請求する構成の明確な装置特性を表しており、特性の組合せは、例えば請求項の記載を表し、単に例示するだけで、請求項を限定することはない。
【0056】
本発明は、実用例に基づいた記述および図において説明され、それらのことで限定することなく、当業者が本願、特に、請求項と、本明細書の導入部と実施例と図におけるそれについての説明の記述とにおける一般的説明とから収集でき、また、彼または彼女の専門知識および従来技術に基づいて、特に本明細書において引用する先行出願の全開示事項を含む際に、組み合わせることができる、あらゆる変形、変更、代用、および組合せを含む。特に、本発明の実施形態および実施例の全ての各特長および可能性は、互いに組み合わせられることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 スキャニング装置
2a、2b 対象歯
3a スキャニングシステム、照明装置
3b スキャニングシステム、光検出装置
4 マウント板 マウント構造体
8a、8b 保持装置
10 ベース板
11 第1方向
12 第2方向
23 移動手段
α 角度、第1角度、第2角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象歯(2a、2b)をスキャンするためのスキャニング装置(1)であって、
前記対象歯(2a、2b)が取り付けられるベース板(10)と、
光学スキャニングシステム(3a、3b)が取り付けられるマウント板(4)のようなマウント構造体(4)と、
を備え、
前記マウント構造体(4)の移動手段(23)によって特徴付けられるスキャニング装置。
【請求項2】
前記移動手段(23)が、前記ベース板(10)に対して前記マウント板(4)を回転または傾斜するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のスキャニング装置。
【請求項3】
前記移動手段(23)が、前記ベース板(10)の表面と前記マウント板(4)の表面との間に挟まれる角度(α)および/または前記光学スキャニングシステム(3a、3b)の観察角度を変えるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスキャニング装置。
【請求項4】
前記移動手段(23)(が、前記ベース板(10)の表面と前記マウント板(4)の表面との間に挟まれる前記角度(α)を40°〜90°又は40°〜80°のような20°〜90°の範囲内において変えるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスキャニング装置。
【請求項5】
前記ベース板(10)は、第1方向(11)および第2方向(12)に直線的に移動されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスキャニング装置。
【請求項6】
前記スキャニング装置が、少なくとも1つの前記対象歯(2a、2b)を保持するための少なくとも1つの保持装置(8a、8b)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスキャニング装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの保持装置(8a、8b)は、回転軸を中心に回転可能であることを特徴とする請求項6に記載のスキャニング装置。
【請求項8】
前記光学スキャニングシステム(3a、3b)は、照明装置(3a)および光検知装置(3b)を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のスキャニング装置。
【請求項9】
前記マウント板(4)の位置を検知するセンサーによって特徴付けられている請求項1〜8のいずれか一項に記載のスキャニング装置。
【請求項10】
対象歯(2a、2b)をスキャンする方法であって、
a)請求項1〜9のいずれか一項に記載のスキャニング装置(1)の前記ベース板(10)に前記対象歯(2a、2b)を取り付けるステップであって、前記ベース板(10)の表面と、前記マウント構造体(4)の表面または前記スキャニング装置の光学軸によって定義される平面と、の間に、第1角度(α)が挟まれて形成されている、ステップと;
b)第1データを取得するために取り付けられた前記対象歯(2a、2b)をスキャンするステップと;
c)前記マウント構造体の前記移動手段(23)を用いて前記第1角度(α)を第2角度(α)に変えるステップと;
d)第2データを取得するために取り付けられた前記対象歯(2a、2b)をスキャンするステップと;
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
ステップb)の後および/またはステップd)の後に、前記対象歯(2a、2b)は、直線的に移動され、次いでさらに1つまたは2つのデータセットを取得するためにスキャンされることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−83607(P2011−83607A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−232545(P2010−232545)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(506427727)シュトラウマン ホールディング アーゲー (7)
【Fターム(参考)】