説明

対象液体を捕捉するための局在化区域を備える作業装置

【課題】小滴間の汚染を有効的に避けることを可能とし、当業者にとって現在既知である、集合的又は個別的に微量体を分析する全ての方法において、化学的、電気的若しくは光学的な方法又はそれらの方法の組み合わせを伴うかどうかに関係なく、非常に柔軟に使用し得る装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、対象液体に対して実質的に非湿潤性である活性表面(Sa)と;上記活性表面上に形成される、上記液体の小滴の少なくとも1つの局在化された捕捉区域(Zc)と;上記液体の小滴が捕捉区域によって捕捉される際に作業区域が液体の小滴によって少なくとも部分的に覆われるように、捕捉区域と共に配置される少なくとも1つの作業区域(Zt)と;上記液体の小滴を上記捕捉区域上に留める手段とを備えることを特徴とする作業装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象液体の小滴を捕捉するための局在化区域を備える操作装置、小板、システム及びチップに関する。
【0002】
本願は、2003年10月31日付けで出願された出願番号第03 50764号のフランス特許出願(参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張するものである。
【0003】
本発明は、対象液体を用いて、表面上の局在化された小滴の高密度配列を得ることを可能とする。本発明は、例えば、対象液体が流体チャンバから排出される場合、対象液体で満たされた密閉流体チャンバから、上記流体チャンバ内に設けられた表面上に完全に局在化される小滴の配列、すなわち微量体への移行を容易に保証することを可能とする。
【0004】
「小滴の配列」という用語は、要求される上記配列のどのような特定の幾何学的形状も有さない、上記小滴の所定配列を意味するように意図される。小滴の配列は、円、正方形、多角形及び無作為のものであってもよく、必要不可欠な特徴は、形成した小滴が、本発明により達成される目的に応じて、局在的な所定の方法で表面上に配置されていることである。「局在化(局在的)」という用語は、本発明の装置を用いて上記表面上に故意に捕捉される他の小滴と区切られ、個別化され且つ区別されることを意味する。
【0005】
各小滴に、対象液体中に存在するか又は存在する可能性のある1つ又は複数の検体、例えば、分子、オリゴヌクレオチド、タンパク質等を定性的且つ/又は定量的に分析するように意図される1つ又は複数の操作を行い得る。小滴中の検体の分析は、検体を、特に小滴ほどの少ない液量で分析を行う当業者に既知である任意の手法によって実行することができる。この分析は、生物学的チップ上で用いられる分析手法であってもよい。分析は、本発明の使用に応じて、本発明の装置の小滴で覆われる表面を伴っても、伴わなくてもよい。
【0006】
各小滴は、化学反応又は生化学反応が実行され得る容積を構成する。当業者にとって既知である任意の化学反応又は生化学反応はこの容積で実行され得る。これらの反応は、本発明の使用に応じて、小滴で覆われる本発明の装置の表面を伴っても、伴わなくてもよい。これらの反応が、小滴で覆われる本発明の装置の表面を伴う場合、反応は1つの小滴又はこの表面上に連続して付着した複数の小滴により行われてもよく、これらの連続的な小滴は、本発明の使用に従って、1つの又は数種類の異なる対象液体から成る。本発明の装置上で2つの異なる対象液体を伴う化学反応の例は、以下の通りである。すなわち、第1の対象液体の小滴を使用して、該小滴により覆われた表面上に有機ポリマーのフィルムを局在的に堆積させること、及び次いで、第2の対象液体の小滴を使用して、この表面上に堆積された有機ポリマーフィルムを官能化することである。
【0007】
本発明によると、分析及び化学/生化学反応は、本発明による装置上で排他的に実行(分析又は反応)、又は相補的に実行され得る。後者の場合、これは、同時(反応及び分析)、又は連続的(反応に続いて分析、又は分析に続いて反応)であってもよい。さらに、数種の分析及び/又は数種の反応が次々と連続してもよい。例えば、本発明の装置は、第一に、流体の取り扱い、化学反応及び/又は生化学反応、光学、電気及び/又は化学検出チップ等の、対象液体の定性分析及び定量分析に必要な全ての工程が組み込まれるカード、又はラボオンチップ(例えば、ポリマーを堆積させて、その後それを官能化することを可能とする化学反応による)の製造に有利に関係し、第二に、分析対象である対象液体の小滴における定性分析及び/又は定量分析(化学/生化学反応及び分析)を実行するための該カード、又は該ラボオンチップの使用に有利に関係する。
【0008】
このような非常に多数の用途を鑑みて、本発明の装置は本明細書中で「操作装置」と呼ばれる。
【0009】
本明細書において、[]内の符号は添付される参考文献リストを表す。
【背景技術】
【0010】
[従来技術]
先行の刊行物で、本発明の原理に関して報告しているものはない。しかしながら、検討された出願によると、本発明は、いくつかの特定の分野、小滴形成、微量体における操作、小滴又はスポットの高密度配列と類似する。
【0011】
液相を分離する局在化区域の形成は、生物学的チップ、特にDNAチップの分野で普及している。これらの用途に関して、反応量は、生物学的産物及び試薬を節約するため非常に少ないことがよくある。
【0012】
局在化された小滴及び小滴の高密度配列の形成に関して、プロトジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Protogene Laboratories Inc.)[1]及びアフィメトリックス・インコーポレイテッド(Affymetrix Inc.)[2]はそれぞれに、疎水性表面の中央に親水性区域を作成する方法を開発した。対象となる水性相は、自動分布システムにより微小液滴の形態で、続いて付着される。これらの方法は、小滴の再現性ある形成、及びスポット又は小滴の高密度配列の再現性のある形成もたらす。
【0013】
しかしながら、これらの方法は全て、正確な移動及び整列のための機器、並びに液体供給機器を備える小滴分布システムの使用を必要とする。この機器のコストは高い。さらに、配列の最大密度は、分布された小滴サイズと分布システムのスポット間の最小距離(minimum inter-spot step)との組み合わせにより限定される。最終的に、これらの文献に記載される親水性区域は常に、表面が操作区域をも表す円盤状である。さらに、これらのシステムは、これらの装置が電極を有していないため、電気的な手段による測定又は機能化の状況において用いることができない。
【0014】
マイクロカップの高密度配列の形成に関して、2つの重要な例を挙げることができる。すなわち、数ピコリッターという微量でPCRによりDNA増幅を実行するための、シリコンプレートにおけるエッチングにより微細加工されたカップのネットワークの形成、及びプラスチック基板に堆積した感光性樹脂上のフォトリソグラフィによる窪み又はチャネルの形成である[3]。これらの手法に関して、窪みの数は100〜9,600個の範囲であり、これらの窪みは60〜500μmの直径及び5〜300μmの深さを有する。
【0015】
しかしながら、これらのカップの縁は、カップ内の液相と外側の液相との間にいかなる物理的分離も残さないので、カップ間の連通及びカップ間の汚染を許してしまう。
【0016】
本発明の最も重要な用途の1つは、酵素的な蓄積によるシグナル増幅による、対象液体中に存在する生物学的分子の電気的又は電気化的な検出である。
【0017】
生物学的試験の、電気的又は電気化学的な検出に関して、文献に記載される多数の電気的又は電気化学的な検出システムは、検出限界、すなわち各ハイブリッドにより生成した少数の電子にしばしば起因する限度の観点から、ナノモルより低く下げることができない。
【0018】
酵素的な蓄積を伴うシステムは、反応媒体中に存在する検出対象である酸化還元種の数を大幅に増幅するため、この検出限界をピコモル程度まで下げることを可能とする[4]。しかしながら、この増幅法によって、酸化還元化合物が拡散し、それゆえ隣接スポットを汚染する可能性があるため、現在既知のマルチスポットシステムに問題が生じる。この問題を避けるために、それゆえそれぞれのスポットを限定することが必要である。
【0019】
この目的のために、最も一般的には、三次元構造の使用(区画の使用)が文献で推奨されている。例えば、インフィネオン(Infineon)[6]は、それぞれのスポットを規定容量に限定し、それによりスポット間の汚染を防止するための、ポリマー壁及び電力による分子移動用システムを提案している。残念ながら、例えば、非常に細かい液流において作用することを所望する場合、この種のアプローチは流体充填の問題に直面する可能性がある。ここでまた、小滴分布装置が必要不可欠となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
それゆえ、対象液体から小滴の高密度配列を容易に得る装置であって、いかなる小滴分布機器も用いずに使用することができ、製造し易く、小滴間の汚染を有効的に避けることを可能とし、且つ、当業者にとって現在既知である、集合的又は個別的に微量体を分析する全ての方法、例えばラボオンチップに、化学的、電気的若しくは光学的な方法又はそれらの方法の組み合わせを伴うかどうかに関係なく、非常に柔軟に使用し得る装置が真に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[発明の開示]
本発明は、操作装置であって、
対象液体に対して実質的に非湿潤性である活性表面を備える基板と、
上記活性表面上に形成され、上記対象液体の小滴の局在的な捕捉のための少なくとも1つの区域と、
上記小滴が上記捕捉区域によって捕捉される際に、操作区域が対象液体の小滴によって少なくとも部分的に覆われるように捕捉区域と共に配置される、少なくとも1つの操作区域と、
上記対象液体の小滴を上記捕捉区域上に残すことを可能とする、対象液体を供給する手段と
を備える操作装置を提供することによって、具体的には前述の要求、及び上記に説明される他の要求にも対応する。
【0022】
本発明は、実施の形態の観点から、本発明による複数の同一又は異なる操作装置を備える操作プレートを提供することによって、前述の要求をも満たす。
【0023】
本発明は、本発明による操作装置又は本発明によるプレートを備える生物学的チップを提供することによって、前述の要求をも満たす。
【0024】
本発明は、本発明による1つ又は複数の操作装置を備えるシステムを提供することによって、前述の要求をも満たす。
【0025】
本発明は、操作ボックスであって、
対象液体を容器内へ導入し且つ対象液体をこの容器から取り出す手段を備える容器と、
上記容器内に設けられる本発明による操作装置又は本発明によるプレートと、
対象液体が容器内へ導入される際に、少なくとも1つの捕捉区域を覆い、その後対象液体が容器から取り出される際に、対象液体の小滴が上記捕捉区域により捕捉されたままとなるように配置される、対象液体を容器内へ導入し且つ対象液体を容器から取り出す手段と
を備える操作ボックスを提供することによっても前述の要求を満たす。
【0026】
本発明は、本発明による操作ボックスを備えるシステムを提供することによっても前述の要求を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による種々の装置を図式的に示す。
【図2】本発明による種々の装置を図式的に示す。
【図3】本発明による装置の種々の実施形態を図式的に示す。
【図4】操作区域が電気化学マイクロシステムである本発明の装置を図式的に示す。
【図5】(a)は、対象液体の小滴の捕捉以前の、操作区域が電気化学マイクロセルである本発明による装置の写真である。(b)は、対象液体の小滴の捕捉後の、操作区域が電気化学マイクロセルである本発明による装置の写真である。
【図6】操作区域において、本発明による装置内のこの操作区域に対応する捕捉区域によって捕捉される小滴における、酵素反応の生成物の検出を示す図である。
【図7】本発明による操作ボックスの可能な実施形態の横断面を示す。
【図8】本発明による操作ボックスの種々の可能な実施形態の図示の横断面を示し、特に本発明による種々の操作ボックスにおける対象液体用の注入口及び排出口の配置例を示す。
【図9】アレイに配列される本発明による複数の装置を備える本発明によるプレートの図示である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の状況において、液体が、本発明による装置の1つ又は複数の捕捉区域によって捕捉される、例えばこの液体の小滴の配列を形成するように意図されるのであれば、この液体は「対象」であると言える。
【0029】
「対象液体」という用語は、例えば、分析目的、並びに/又は化学的目的及び/若しくは生化学的目的で、支持体上に小滴の配列として配置されることを必要とし得る任意の液体を意味するように意図される。「化学的目的及び/若しくは生化学的目的」という表現は、液体中で実行され得る任意の化学反応及び/又は生化学反応を意味するよう意図される。「分析目的」という用語は、液体中で実行され得る任意の定性分析及び/又は定量分析を意味するように意図される。
【0030】
対象液体は、有機又は水性であってもよい。それは、実験室又は産業界、例えばラボオンチップにおいて現在取り扱われる液体のいずれか1つであってもよい。それは、例えば、溶液、溶媒、試薬、試料、細胞抽出液、動物生体又は植物生体から取り出される試料、自然又は産業から取り出される試料等から選択される液体であってもよい。それは、生物学的又は化学的な液体であってもよい。この対象液体は、ラボオンチップに用いられ得るような、本発明の装置と共に用いるために、必要であれば、希釈される液体であってもよい。固体産物を溶解して本発明の目的の対象液体を構成することも可能である。この固体産物は、例えば、化学的産物又は生化学的産物、試薬、分析対象材料、動物生体又は植物生体から取り出される試料、自然又は産業から取り出される試料等から選択されてもよい。当業者は、このような産物及び対象液体の取り扱い方を理解している。
【0031】
本発明の操作装置の基板は実際には、活性表面、少なくとも1つの捕捉区域及び少なくとも1つの操作区域が形成される支持体を構成する。基板は、本発明を実施するのに好適な任意の材料から成っていてもよい。任意の材料は、例えば、ラボオンチップ、生物学的チップ、マイクロシステム等を製造するのに使用される基材の1つであってもよい。任意の材料は、例えば、シリコン;酸化ケイ素;ガラス;窒化ケイ素;及びポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリクロロビフェニル及びシクロオレフィンコポリマーから成る群より選択される有機ポリマー:並びに例えばAl、Au又はステンレス鋼から選択される金属又は合金から成る群より選択される材料であってもよい。
【0032】
「活性表面」という用語は、少なくとも1つの捕捉区域及び該捕捉区域と共に配置される少なくとも1つの操作区域が形成される基板の表面を意味するように意図される。本発明によると、基板は1つ又は複数の活性表面を備えていてもよい。本発明によると、各活性表面は、1つ又は複数の操作区域に関してそれぞれ配置される複数の捕捉区域を備えていてもよい。
【0033】
活性表面は、対象液体に対して実質的に非湿潤性で且つ本発明を実施するのに好適な任意の材料から成っていてもよい。実際、本発明の装置の操作は、活性表面が対象液体を保持しないか又は非常に少量で保持するという事実にある程度基づいており、これは、表面上にいかなる対象液体も保持せず且つ乾燥させることなく、容易で完全な非湿潤を可能にする。活性表面は、少なくとも60°である対象液体との接触角を形成する。したがって、対象液体の小滴は、捕捉区域によって選択的且つ排他的に捕捉され、これらの区域内に包含されており、このため、小滴間、それゆえ操作区域間の汚染のいかなる問題も回避される。
【0034】
それゆえ、活性表面の材料は小滴の配列を形成すべき対象液体に応じて選択されるが、基板、並びに操作区域及び捕捉区域に応じても選択される。材料は、化学変性又は堆積によって、基板上に設けられてもよい。また、材料は、性質上、対象液体に対して実質的に非湿潤性である材料から成るのであれば、基板本体であってもよい。後者の場合には、さらなる化学変性は必要ない。
【0035】
例えば、対象液体が水性である場合、活性表面を形成する材料は、好適には疎水性である。例えば、基板を構成する材料の上述の例では、基板表面は、化学変性、例えば疎水性官能基を有するシラン、例えば1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリクロロシランを用いたシラン処理により、非湿潤性、つまりここでは疎水性とされ得る。それはまた、例えば、回転盤上の液体テフロン(登録商標)の堆積、疎水性シランの気相シラン処理、ハイドロカーボン系シラン、例えばオクタデシルトリクロロシラン型のシランの使用を伴っていてもよい。このような化学変性を実施するのに使用され得る材料及び方法は、当業者にとって既知である。実施態様の例を以下に示す。
【0036】
基板表面を対象液体に対して非湿潤性とする処理が、捕捉区域及び/又は対応する操作区域の形成前又は形成後に行われ得る。上記処理が操作区域の形成後に行われる場合、操作区域は保護されるであろう。
【0037】
したがって、この活性表面、活性表面が形成される基板の形状及びサイズは、本発明の装置の操作に関して重要ではない。それらは、例えば、活性表面上に形成される操作区域に対する捕捉区域の数、随意この表面上の配置、且つまた、使用される際の装置の所望のサイズ及びコスト設計に応じて確定され得る。しかしながら、表面上の対象液体の予期せぬ保持を避けるために、表面は好ましくは平面となるように選択される。例えば、活性表面は、ラボオンチップ、並びに当業者にとって既知である分析マイクロシステム及び検出マイクロシステムの製造に使用されるプレートに相当する形状及びサイズを有することができる。
【0038】
本発明によると、活性表面、又は該表面が形成される基板は、本発明の装置の捕捉区域及び操作区域を作成するために、構造化又は表面処理によって変性される。
【0039】
捕捉区域は、対象液体に対して湿潤性である、すなわち、この対象液体に対して高い親和力を有する非常に局在的な区域である。「局在的」という用語は上記に規定される。例えば、装置の基本使用では、少量の対象液体を活性表面上に流すことによって、捕捉区域は、対象液体の小滴を捕捉又は保持するのに対して、対象液体に対して実質的に非湿潤性である活性表面は、対象液体を非常に少量保持するか又は全く保持しない。流れを止めることによって、捕捉区域によって局在的に保持される対象液体の小滴のみが、活性表面上に保持される。
【0040】
本発明によると、少なくとも1つの捕捉区域は、対象液体の小滴の、化学的、電気的又は物理的な捕捉を有する区域であり得る。
【0041】
例えば、本発明の装置の第1の実施形態によると、捕捉区域は支持材料から成り、この支持材料は、所定の方法で上記活性表面又は基板上に設けられており、且つ必要であれば、対象液体に対して湿潤性となるように、例えば、対象液体に対して湿潤性である化学官能基をその上にグラフト化することによって化学的に変性され得る。
【0042】
例えば、この支持材料は、シリコン;酸化ケイ素(SiO2);ガラス;窒化ケイ素(Si34);ポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリクロロビフェニル及びシクロオレフィンコポリマーから成る群より選択される有機ポリマー:並びに例えばAl、Au又はステンレス鋼から選択される金属又は合金から成る群より選択される材料から成り得る。
【0043】
例えば、水性の対象液体に対して湿潤性である化学官能基は、アルコール、アルコキシド、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、オキシアミン、ヒドラジン、アミン及びアンモニウム官能基から成る群より選択され得る。
【0044】
一例として、下記の2つの方法(1)及び(2)が、この種の捕捉区域を製造するのに使用され得る。
【0045】
(1)上述の材料(例えば、絶縁材料)から選択される表面上で、以下の工程が実行され得る。
i)必須最終層であるAuを有する、Ti、Pt、Au、Pd、Ni、Al等から選択される1つ又は複数の金属層(支持体)の、気化又は噴霧による堆積。しかしながら、操作区域が電気化学マイクロセル(下記参照)であれば、このマイクロセルの電極が金から作成されることは好ましくない。
ii)捕捉区域を形成するための、フォトリソグラフィ及びその後の例えば化学エッチング浴槽中又はプラズマを含む気相中での金属のエッチングによる、金属層におけるユニットの確定。
iii)基板全体における絶縁材料(SiO2又はSi34)の堆積、並びにその後の、対象液体と接触すべき区域から絶縁材料を除去するための、フォトリソグラフィ及び化学エッチング浴槽中又はプラズマを含む気相中での局在的なエッチングによるユニットの確定。
iv)基板全体における、例えば基板を疎水性にするための、疎水性官能基を有するシラン、例えば1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリクロロシランを用いたSiO2又はSi34のシラン処理による、対象液体に対して非湿潤性である活性表面の製造。次いで、得られた捕捉区域は、例えば、化学的に、例えばNaOH溶液で、電気化学的に、例えば1.2Vの電位を10秒間印加して、又は酸素プラズマによって洗浄される。操作区域が既に表面上に形成されていれば、必要に応じて、捕捉区域に使用されるのと同様の方法で続いて洗浄される。
v)例えば文献[10]に記載される方法でのチオールの物理吸着による、この装置が意図される対象液体に対して湿潤性である官能基を有する、ここでは金から作成される捕捉区域上の親水性障壁の製造。
【0046】
(2)基板がSiO2又はSi34から選択される場合、例えば、以下の工程を実行することも可能である。
x)基板全体における、例えば基板を疎水性とするための、疎水性官能基を有するシラン、例えば1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリクロロシランを用いたSiO2又はSi34のシラン処理による、対象液体に対して非湿潤性である活性表面の製造。
y)捕捉区域(すなわち、湿潤性の帯(wetting band))が形成される区域を形成するための、フォトリソグラフィ及びその後の疎水性シランの化学的な、例えばNaOH溶液を用いた、又はプラズマを用いた分解による、ユニットの確定。
z)例えば、この装置が意図される対象液体に対して湿潤性である官能基を有するシラン、例えば上記の水溶液に対して湿潤性である官能基を有するシラン、例えばシランγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いたシラン処理による、捕捉区域の製造。文献[9]は、使用され得る方法を開示している。
【0047】
例えば、本発明の装置の第2の実施形態によると、特に、本発明の装置が水性の対象液体を用いて使用されるよう意図される場合、及び活性表面又は基板がシリコンベースである場合、捕捉区域は、このような表面上にエッチングによって大変容易に形成され得る親水性ブラックシリコンから成り得る。したがってエッチングされた区域は、水性の対象液体に対して特に湿潤性となる。エッチングされた区域は、湿潤性であるために、他のどのような化学変性も必要としない。それゆえこの実施形態は、非常に経済的である。文献[11]は、この種の捕捉区域を製造するのに用いられ得る実験室用プロトコルの例を開示している。
【0048】
例えば、本発明の装置の第3の実施形態によると、捕捉区域は、ウェッティングによる捕捉のための電極であり得る。本発明のこの実施形態によると、捕捉区域、この場合電極は、例えば、貴金属、例えばAu,Pt、Pd、Ti、Ni、Al等、又は貴金属の合金;カーボン;グラファイト;及びインジウム錫酸化物(ITO)から成る群より選択される材料から成り得る。上記材料は、対象液体に対して湿潤性である化学官能基と結合する導電性ポリマーの電着によって湿潤性となる。
【0049】
本発明によると、導電性ポリマーは、ラボオンチップの製造に使用されるポリマーの1つであり得る。導電性ポリマーは、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリフラン及びポリフルオレンから成る群より選択され得る。湿潤性化学官能基は、例えば、上述の湿潤性化学官能基の1つであってもよい。重合前のモノマーへの、又はポリマーが形成された後の該ポリマーへの官能基の結合は、従来の化学的な手法で行われ得る。
【0050】
この種の捕捉区域の製造のための方法の例は、下記の方法で要約され得る。
【0051】
(3)SiO2、Si34、ガラス又はポリマー等の材料から選択される基板(絶縁基板)上で、以下の工程が実行され得る。
α)最終層であるPt及びAuから選択される金属若しくは任意の他の貴金属、又はこれらの金属の合金から選択される金属を有する、上述の金属から選択される1つ又は複数の金属層(支持体)の気化又は噴霧による堆積。これはまた、カーボン、グラファイト、ITO等の堆積であってもよい。
β)1つ又は複数の電極及び1つ又は複数の電流インレット金属バンドを形成するための、例えば化学エッチング浴槽中又はプラズマを含むガス相中での金属のエッチングによる、金属層におけるユニットの確定。
γ)絶縁材料(SiO2又はSi34)の堆積、並びにその後の、官能化されるべき又は対象液体と接触すべき区域から絶縁材料を除去するための、フォトリソグラフィ及びその後の化学エッチング浴槽中又はプラズマを含む気相中での局在的なエッチングによるユニットの確定による、電流インレット金属バンドの製造。
σ)基板全体における、例えば基板を疎水性にするための、疎水性官能基を有するシラン、例えば1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリクロロシランを用いたSiO2又はSi34のシラン処理による、対象液体に対して非湿潤性である活性表面の製造。電極は次に、例えば、化学的に、例えばNaOH溶液で、電気化学的に、例えば1.2Vの電位を10秒間印加して、又はプラズマによって洗浄される。操作区域が既に表面上に形成されていれば、必要に応じて、例えば電極に使用されるのと同様の方法で続いて洗浄される。
ε)装置が意図される対象液体に対して湿潤性である官能基を有する導電性ポリマーの、定電位型、定電流型又は反復走査型(repeated scanning)の電解重合による、(操作区域が電気化学マイクロセルである場合に)本発明による1つの装置当たり複数の電極が存在するのであれば最も外側の、電極上の親水性障壁の製造。湿潤性ポリマー及び湿潤性官能基の例は上記に挙げられる。
【0052】
例えば、本発明の装置の第4の実施形態によると、捕捉区域は、化学官能基の電気活性による捕捉のための電極であってもよい。この実施形態は、使用される湿潤性化学官能基を、それらが電気活性化又は電気非活性化され得るように選択するという事は別にして、上述の第3の実施形態と実質的に一致している。このように、例えば電気活性化学官能基の場合、この電極の湿潤性化学官能基が活性化され且つ対象液体の小滴を捕捉するために、捕捉区域を構成する電極に電流を付与する必要がある。電流の付与を妨げることによって、湿潤性官能基は非活性化され、対象液体の小滴が解放される。この実施形態は好適には、操作区域上に、対象液体の第1の小滴の後に、例えば、第1の対象液体中に本来存在する検体又は構成成分の化学分析又は化学変性を行う化学試薬を洗浄又は含有する、第2の対象液体の小滴(及びその他)を設け、次に操作区域に固定されるプローブと結合することを可能にする。操作区域はそのため、様々な溶液を用いるプロトコルの連続工程を実行することが可能な純正のマイクロリアクタを構成することができる。
【0053】
第5の実施形態によると、捕捉区域は、エレクトロウェッティングによる捕捉のための区域であってもよい。この実施形態では、対象液体の小滴を捕捉することを可能にするエレクトロウェッティングは、2つの電極間に電位を印加することであり、電極の1つは非湿潤性の絶縁材料で覆われている。これらの2つの電極間に設けられる液体の小滴は、非湿潤性表面を濡らすようになる。2つの反対の電極を有する電流システムでは、このシステムのために、液体を局所的に保持することが可能である。参考文献[7]は、本発明の第5の実施形態を実施するのに用いられ得るプロトコルを開示している。
【0054】
例えば、本発明の装置の第6の実施形態によると、捕捉区域は、毛管力によって小滴を捕捉することを可能とする活性表面のエッチング又は凸部であってもよい。これらのエッチング又は凸部は、例えば、基板の直接エッチングによって;例えば、コーティング、気化、噴霧又は電気化学付着による平面基板表面における材料の堆積、次いで例えば、樹脂コーティング、絶縁化及びユニットの確定、又はエッチングによる従来のフォトリソグラフィ法と組み合わせたエッチングによって;例えば感光性樹脂の場合には、感光性ポリマーにおけるフォトリソグラフィによるユニットの直接的な確定によって;プラスチックを成形又はスタンピングすることによって、製造され得る。重要な点は、区域を形成するこれらのエッチング又は凸部が、毛細管現象によって、この区域に局在化的に、対象液体の小滴を捕捉することを可能とすること、及びこの小滴が少なくとも部分的に操作区域を覆うことである。
【0055】
いかなる実施形態が選択されても、対象液体が水性である場合、捕捉区域は最も好ましくは親水性区域であり、実質的に非湿潤性である活性表面は最も好ましくは疎水性である。
【0056】
いかなる実施形態が選択されても、好適には、捕捉区域及び対応する操作区域は、活性表面に対する凹部(すなわちカップ)内又は凸部(すなわちスポット)上に設けられ得る。それゆえ、捕捉区域及び対応する操作区域は、スポット上又はカップ内のいずれかに存在する活性表面に対する起伏部である。このことは、各捕捉区域によって捕捉される小滴のより良好な包含を得ること、及びまた操作区域間の非汚染に関して、本発明の装置の特性をさらに改善することを可能とする。この種の凹部又は凸部は、例えば最新のラボオンチップに実在する。しかしながら、本発明では、これらの凹部及び凸部は、特に凸部が展開される場合には、互いに十分離れており、特に凹部を伴う場合には、十分な直径を有し、その結果、対象液体は、凸部間又は凹部内での毛細管現象による、凹部及び凸部によって捕捉されないが、これらの凸部上又はこれらの凹部内に局在化される捕捉区域によって捕捉される。凹部及び凸部を、スタンピング、成形、エッチング、又は当業者に既知の、本発明の活性表面が形成される基板を構成する材料にとって好適な、他の任意の手法によって得ることができる。
【0057】
本発明によると、捕捉区域は、任意の形状を有することができる。この区域は、一例として、環状形、星型、矩形、正方形、三角形、楕円形若しくは4〜20個の辺を有する多角形、又は本発明の実施態様に好適な他の任意の形状から選択され得る。好ましくは、形状は、環状、開口型又は閉鎖型である。一般的に、それは帯状である。通常、この帯は、装置全体(捕捉区域+操作区域)のサイズに応じた幅及び厚みを有する。事実、この幅及びこの厚みは、対象液体の小滴の捕捉を可能にする。サイズの例を以下に挙げる。いずれにせよ、本発明によると、捕捉区域は、対象液体の小滴を上記捕捉区域によって捕捉する際に、この小滴が少なくとも部分的に操作区域を覆うように、操作区域と共に配置される。好ましくは、本発明によると、捕捉区域は操作区域を連続的又は不連続的に取り囲む。
【0058】
さらに、本発明の装置の特定の実施形態によると、対象液体の小滴が捕捉区域によって捕捉される際に、この小滴がこの捕捉区域によって取り囲まれる全ての操作区域を少なくとも部分的に覆うという条件で、対象液体の小滴のための捕捉区域は、複数の操作区域、例えば2〜4以上を取り囲むことができる。
【0059】
「操作区域」という用語は、物理操作及び/又は化学操作及び/又は光学操作が、操作区域が配置される捕捉区域によって捕捉された小滴において実施され得る区域を意味するように意図される。したがって、本発明に従って、少なくとも1つの操作区域は、捕捉される対象液体の上記小滴との電気的、化学的、機械的若しくは光学的相互作用を有する区域、又は数種類のこれらの相互作用が同時に又は連続的に用いられる区域から選択される相互作用を有する区域であり得る。
【0060】
それゆえ、本発明の第1の実施形態に従って、操作区域は、電気的相互作用を有する区域、例えば電気化学マイクロセルであってもよい。
【0061】
電気化学マイクロセルは、作用電極及び対電極を形成する、少なくとも2つの電極が好ましくは同一平面上にある装置である。それはまた、参照電極を有し得る。これらの構成要素は当業者にとって既知である。当業者に既知の製造方法、例えば参考文献[8]に記載される方法が、この操作区域を製造するために用いられ得る。
【0062】
この実施形態のために、本発明の装置は、反応媒体として、より詳細には電気化学媒体として補足区域により捕捉された、対象液体の小滴を使用する純正の電気化学マイクロリアクタを構成することができる。本発明のこの第1の実施形態による電気化学リアクタを使用して、当業者にとって既知である任意の電気化学反応及び/又は電気化学分析を実施することが可能である。
【0063】
このリアクタは、例えば、マイクロセルの電極の1つ上における、対象液体の小滴中に存在する1つ又は複数のモノマーの局在的電解重合(重合又は共重合)、及び/又は小滴中に存在する1つ又は複数の化学分子の局在的電解グラフトから成る反応を実行するのに使用することができる。この例では、対象液体は、所望の電解重合又は電解グラフトに必要な試薬を含有する液体である。重合及びグラフトは好適に、補足区域により捕捉された対象液体の小滴に局在化され得る。このような局在的な電解重合反応又はグラフト反応を用いて、例えば、生物学的チップ又は分析システムを製造することが可能である。
【0064】
この電気化学マイクロリアクタはまた、例えば、補足区域により捕捉された対象液体の小滴中に存在する検体の定性的及び/又は定量的な電気化学分析を実行するのに使用できる。電気化学マイクロリアクタはまた、例えば、プローブ/標的分子識別の定性的及び/又は定量的な電気化学分析を実行するのにも使用できる。ここで、プローブは操作区域に固定されており、標的は捕捉された対象液体の小滴中に存在している。
【0065】
特定の例では、本発明の装置の電気化学マイクロセルを使用して、まず、操作区域を「製造」し、次いでこの操作区域を対象液体の小滴の分析に用いることができる。例えば、操作区域が、プローブ、例えば生物学的プローブによって官能化された有機ポリマーを含む必要のある場合、操作区域は、プローブによって官能化された導電性ポリマーの電解重合によって、例えば参考文献[5]に記載される方法に従って製造されることができる。本発明の装置の使用に関連する特殊性は、捕捉区域を使用して、電解重合に必要な試薬(有機モノマー)を含有する第1の対象液体の第1の小滴を、操作区域上に局在的に捕捉することである。プローブによる官能化を、電解重合と同時に達成することが可能であり、第1の対象液体はまたプローブを含有する(例えば、モノマーはこのプローブによって官能化される)。官能化はまた、電解重合の後に、同一の捕捉区域により捕捉され且つ結果として同一の操作区域上に局在化された(プローブを含有する)第2の対象液体の第2の小滴を用いて実行することができる。さらに、このように製造された操作区域をその後乾燥させて、また、操作区域が共に配置される捕捉区域のために、プローブ(例えば、相補的オリゴヌクレオチド)と相互作用する標的を含有する、分析対象である第3の対象液体の小滴を捕捉するのに使用することができる。また、第4の対象液体を使用して、上記操作区域上のプローブ−標的相互作用等を分析(検出及び/又はアッセイ)することもできる。
【0066】
特定の例では、本発明の装置の電気化学マイクロセルを使用して、液体試料に存在する標的を、例えば、検出対象である標的と操作区域に固定された特定のプローブとの相互作用を伴うことによって検出する場合、上記の相互作用を、例えば、この操作区域と共に配置される補足区域により捕捉された酵素基質を含有する、対象液体の小滴中の酵素的な蓄積によるシグナル増幅によって、電気化学的に検出することが可能である。文献[4]は、本発明の装置を用いた、この種の検出に使用可能な操作プロトコルを開示している。
【0067】
操作区域上のプローブ/標的相互作用の検出は、電気化学セル以外、例えば光学法以外の、当業者にとって既知である手段の1つを伴っていてもよい。電気化学マイクロセルはそれゆえ、この場合、操作区域を「製造」するためのみに使用可能であり、プローブ/標的相互作用の検出はその後、別の手段によって実行される。
【0068】
これらの例において、様々な対象液体から成る様々な小滴はそれゆえ、種々の目的のため、例えば操作区域を製造するプロトコルの連続工程を実行するため、例えばまた、対象液体中の検体の検出及び/又はアッセイの連続工程を実行するために、本発明の装置の同一捕捉区域によって連続的に捕捉される。本発明に関連する利点は、対象液体の小滴の連続的な捕捉の対象物がいかなるものでも、連続的に捕捉される小滴が全て、それぞれの捕捉区域により操作区域上に局在化されることである。
【0069】
電気化学マイクロセルの存在を特徴とするこの実施形態の使用がいかなるものであっても、操作区域を官能化するプローブは、例えば、酵素、酵素基質、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、真核細胞又は原核細胞の膜受容体、抗体、抗原、ホルモン、生体の代謝物、生体の毒、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド及び相補的DNAから成る群より選択され得る。プローブはむろん相互作用すべき標的に応じて選択される。
【0070】
好適には、本発明の装置の第1の実施形態に従って、マイクロセルの最外電極を使用して、本発明の装置の湿潤性捕捉区域又は湿潤性捕捉帯を形成することができる。この場合には、上記されるように、捕捉区域を形成するよう意図される湿潤性官能基を有する導電性ポリマーがこの電極上に堆積される。この堆積に関して、ポリマーは、操作区域を形成している電気化学セルのために、電極上に電着され得る。導電性ポリマーを堆積し、湿潤性化学官能基を結合させるのに用いられ得る方法は、本発明による捕捉区域の第3の実施形態に上述されている。この電極が本発明による操作区域を取り囲んでいれば、電極の形状は重要ではない。
【0071】
本発明によると、対象液体の小滴の捕捉区域を形成している電極は、完全に操作区域とは関係なく作用し得る。電極はまた、電気化学マイクロセルの操作に続けて使用されることによって依存的に作用し、例えば捕捉された小滴における電気化学測定及び/又は電気化学反応を実施し得る。本発明の装置の捕捉区域はそれゆえ、本発明の装置の使用の選択に応じて活性又は不活性であり得る。
【0072】
また好適には、対象液体の小滴のための捕捉電極は、標的と相互作用するよう意図されるプローブによって官能化され得る。例えば、捕捉区域が、本発明の第3の実施形態に従って形成される場合、対象液体に対して湿潤性である化学官能基によって官能化される導電性ポリマーはまた、さらに、標的と相互作用するよう意図されるプローブによって官能化され得る。プローブは、操作区域に対して上記のように規定される。当業者にとって既知である、生物学的チップの製造のためのプローブによって導電性ポリマーを官能化する方法は、本発明のこの特定の捕捉区域の製造に使用され得る。それらは、一例として、上述の文献に開示されている方法である。
【0073】
本発明の第2の実施形態に従って、操作区域は、電気化学マイクロセルを有さない、捕捉される対象液体の小滴との化学的相互作用を有する区域であり得る。操作区域は、例えば、対象液体中に存在する、これらの官能基又はこれらの試薬の標的と直ちに反応し得る、官能基、又は化学試薬若しくは生物学的試薬を含む。第1の実施形態に関して、本発明の装置は、まず操作区域上にこれらの官能基又はこれらの試薬を置き、次いで乾燥させた後、これらの官能基又はこれらの試薬の標的を含有する対象液体の小滴を捕捉して分析するのに使用される。第1の実施形態に関して、数種類の対象液体が、例えば、操作区域を製造するプロトコルの連続工程を実行するため、例えばまた、対象液体中の検体を検出及び/又はアッセイする連続工程を実行するために、本発明の装置上で次々と続いてもよい。利点は上述されるとおりである。
【0074】
この操作区域は、生物学的チップ(アジレント社(AGILENT)、サイファージェン社(CIPHERGEN)、ユーロジェンテック社(EUROGENTEC)により販売されるチップ)の分野における当業者に既知のものから選択され得る。本発明の装置とこれらの従来技術のチップとの相違点は特に、上記操作区域と共に配置される対象液体の小滴のための捕捉区域の存在にある。この操作区域は、例えば参考文献[12]に記載されるような、シラン処理及びその後の生物学的プローブの固定化によって製造され得る。
【0075】
この操作区域は、対象液体中に存在し得る対応する標的を結合し、例えば光学的に標的を検出する目的で、上述されるような生物学的プローブによって官能化されるポリマーを含む区域であってもよい。例えば、上述される基板上に、この操作区域を参考文献[13]に記載される方法に従って得ることができる。このように官能化されたチップはその後、本発明の装置の捕捉区域のために、分析対象である試料の小滴を捕捉し、次いで任意に、プローブ/標的相互作用を実証するために別の対象液体の小滴を捕捉するのに使用され得る。
【0076】
本発明の第3の実施形態によると、操作区域は、センサ又はアクチュエータのような活性装置又は測定装置を有し得る。この実施形態は、上述の実施形態及び変形形態に追加されるか、又は、本発明の使用の意図される目的に応じて限定される可能性がある。活性装置又は測定装置は好適に捕捉区域の中心に局在化される。
【0077】
操作区域がセンサを備える場合、センサは例えば、電気センサ、磁気センサ、静電気センサ、機械センサ(例えば圧力センサ)、熱センサ(例えば温度センサ)、光学センサ(例えば光検知装置)及び化学センサから成る群より選択され得る。
【0078】
操作区域がアクチュエータを備える場合、アクチュエータは例えば、光学アクチュエータ(光源)、電気アクチュエータ、磁気アクチュエータ、静電気アクチュエータ、機械アクチュエータ(機械的変位)、熱アクチュエータ(耐熱性)及び化学アクチュエータから成る群より選択され得る。
【0079】
本発明を実施するのに使用され得るこのようなセンサ及びアクチュエータ、並びにそれらの製造方法は、特にマイクロシステム分野における当業者にとって既知である。ここでもまた、本発明の装置と従来技術のチップとの相違点は特に、上記操作区域と共に配置される、対象液体用の捕捉区域の存在にある。
【0080】
どのような実施形態であっても、本発明によると、少なくとも1つの操作区域は、対象液体に対して実質的に非湿潤性又は湿潤性である区域であり得る。本発明者等は実際に、それらの実験の過程において、操作区域の湿潤性が本発明の装置の作用に関して影響を及ぼさないことを示した。彼等は実際に、全く予想に反して、捕捉された小滴が少なくとも部分的に上記操作区域を覆う場合には、操作区域が対象液体に対して非湿潤性であっても本発明の装置が作用し得ることを示した。
【0081】
本発明はまた、本発明の装置を製造する方法であって、
活性表面となるように選択される表面を備える基板を準備する工程と、
操作区域を、基板の選択された表面上に形成するために、基板の選択された表面を構造化する工程と、
装置が意図される対象液体に対して実質的に非湿潤性とするために、選択された表面に処理を適用する工程と、
対象液体の小滴用の捕捉区域を形成するために、選択された表面を構造化する工程と
を含み、
操作区域を形成するために表面を構造化する工程、及び捕捉区域を形成するために表面を構造化する工程を実行して、その結果、操作区域は、捕捉区域が対象液体の小滴を捕捉する際、操作区域が上記小滴によって少なくとも部分的に覆われるように、捕捉区域と共に配置される、本発明の装置を製造する方法に関する。
【0082】
基板、操作区域を形成するための構造化、実質的に基板表面を湿潤性とするよう意図される基板表面の処理、及び対象液体の小滴用の捕捉区域を形成するよう意図される基板表面の構造化は、上記に規定される。
【0083】
したがって、例えば、捕捉区域を形成するために表面を構造化する工程は、捕捉区域を形成するよう意図される電極を形成すること、及びこの電極上に1つ又は複数の湿潤性化学官能基を有する導電性ポリマーを電着することである。
【0084】
したがって、例えば、操作区域を形成するために表面を構造化する工程は、この表面上に、センサ、アクチュエータ、電気化学マイクロセル、対象液体中に存在し得る標的を認識するよう意図されるプローブによって官能化されるか又は官能化され得るポリマーの層を製造することであり得る。
【0085】
これらの工程及び使用可能な材料は、上記されている。
【0086】
また、本発明は、いくつかの同一又は異なる本発明による作業装置を備える作用プレートにも関する。事実、本発明の装置は上述されるように、例えば配列を形成するようにプレート上に直列に配置され得る。操作区域は、例えば、同時に又は連続的に、区域によって異なるマルチパラメトリック分析、並びに化学反応及び生化学反応を行うことができるように、プレート全体に亘って同一又は異なっていることも可能である。プレートは、本明細書で規定される活性表面を備える基板から成り得る。「配列」という用語は上記に規定される。本発明による操作プレートの装置の数は、特にこのプレート上で行われる分析の数によって決まる。例えば、プレートが本発明による装置を1,000個備える場合、それは、1,000個の操作区域上で対象液体の小滴を1,000個、又は、1つの捕捉区域が複数の操作区域を取り囲む場合にはそれ以上の小滴を捕捉し、それによって、対象液体の少なくとも1,000の分析を同時に行うことを可能とする。作用プレートはそれゆえ、例えば対象液体の同時マルチパラメトリック分析を行うのに有用である。作用プレートは、特にラボオンチップ、例えば、生物学的チップ及び分析マイクロシステムを製造することを可能にする。
【0087】
本発明はそれゆえまた、本発明による装置又はプレートを備える生物学的チップに関する。このチップは、例えば、核酸チップ、抗体チップ、抗原チップ、タンパク質チップ、細胞チップ、又はこれらの機能のいくつか、例えば、核酸チップ及び核酸チップ、抗体チップ及び核酸チップ等を含むチップであり得る。
【0088】
本発明の装置は、ミリメートル又はマイクロメートルのスケール、一例として5μm〜5mmに小型化され得る。本発明はまた、1つ又は複数の同一又は異なる本発明による操作装置を備えるシステム、又は本発明によるプレートに関する。システムは、分析マイクロシステム、例えばミクロ全分析システム(μTAS)であり得る。
【0089】
本発明によるプレート及びシステムの製造は、本発明の装置の製造に関して上述される同様の方法で行われ得る。本発明と異なる一部のこれらのチップ及びシステムに対して、当業者に既知の方法が使用され得る。実際に、本発明の装置、プレート、ラボオンチップ及びシステムと、それらの従来技術の相当物との差は基本的には、各操作区域と共に配置される、対象液体用の捕捉区域の存在にある。どのような制限も材料の選択に課されることない。この選択は基本的に、予想される用途及びコスト設計によって導かれ、例えば、マイクロシステムに使用される従来のマイクロエレクトロニクス材料(シリコン、ガラス、酸化ケイ素、窒化ケイ素等)、印刷回路等に利用可能なテクニカルポリマータイプの複合材料が挙げられる。
【0090】
マイクロシステムの分野では、本発明の装置の特徴的なサイズは100μmに近く、重力が、短距離間の相互作用に起因する捕捉区域による小滴の捕捉力と比べて取るに足らないため、装置の配向は重要ではない。他方で、本発明の実施態様に関してより大きなサイズスケールで目的とされる用途に関して、本発明の装置はむろん好ましくは、活性表面の構造化では水平に置かれて、上方を向く捕捉区域及び操作区域を形成する。
【0091】
本発明の使用において、捕捉区域の寸法は、それが意図される使用及び実施形態(捕捉区域当たり1つ又は複数の操作区域、活性表面上の本発明による1つ又は複数の装置)に応じて、大きく変化する。例えば、マイクロシステムに関して、捕捉区域は5μm〜5mmの範囲の直径を有し得る。捕捉区域が帯状である場合、この帯は、1μm〜500μmの幅、及び0〜500μmの、活性表面と相関する厚みを有し得る。操作区域の寸法は特に捕捉区域によって決定され(捕捉された小滴が少なくとも部分的にこの操作区域を覆わなければならない)、この操作区域は、例えば、捕捉区域の上述の寸法に関して、操作区域が取り囲んでいても又は取り囲んでいなくてもよい捕捉区域と接触するような直径を有し得る。例えば、操作区域は5μm〜5mmの直径を有し得る。
【0092】
捕捉区域が対象液体を捕捉するために、対象液体を上記捕捉区域と接触させることが必要である。このため、例えば、対象液体を捕捉区域上に流すか、又は対象液体中に捕捉区域を浸漬させることが可能である。本発明によると、対象液体の小滴を上記局在的な捕捉区域上に残す手段は、シリンジ、ピペット、マイクロピペット、対象液体を含有し、そこに本発明の装置又はプレートを浸漬し得る容器等であり得る。それはまた、捕捉区域当たり対象液体一滴とするディスペンサでもあり得る。実際、この場合、本発明の装置は、操作区域間の汚染が無いことを保証し得る。使用可能なディスペンサは、例えば、ラボオンチップ及びマイクロシステムの分野で通常使用されるものであり得る。
【0093】
本発明はまた、上記に規定されるような操作ボックスに関する。
【0094】
この操作ボックスにおいて、容器は、開いていても、閉じていてもよい。この容器は、本発明の装置又は本発明のプレートを対象液体中に浸漬させるのに特に使用することができ、又は、本発明の装置又はプレートを入れておく(confine)こと、及び/又は操作区域上に捕捉された小滴上又は小滴において分析を実行することを可能にする容器であり得る。後者の2つの場合には、容器は好ましくは閉じられ、本発明の操作ボックスはそれゆえ、純正の小型ラボを構成する。それは、分析マイクロシステム等のシステムに使用されてもよく、又は、例えば、核酸チップ、抗体チップ、抗原チップ、タンパク質チップ及び細胞チップから成る群より選択される生物学的チップを形成してもよい。
【0095】
容器の寸法は、特に容器内に入れられる必要のある本発明の装置又は本発明のプレートの寸法によって決定するが、適切であれば、上記容器内に共に組み立てられ得る他の分析機器又は分析システム、例えば他のラボオンチップの寸法によっても決定される。ボックスの寸法は、容器の最長の辺についてacm未満であってもよい。
【0096】
容器は、例えば、有機ポリマー、弾性プラスチック、ガラス、金属、シリコン、感光性樹脂、又は当業者にとって既知であり且つ本発明の使用を可能とする任意の材料から成る群より選択される材料から作成され得る。例えば、容器は、本発明の操作装置の基板を形成する上記の材料の1つであってもよい。容器の材料は通常、導入される対象液体の種類、容器の使用(装置又はプレートの単純な浸漬、又は浸漬及び分析)との関係(function of)に応じて、且つ製造のコスト設計との関係に応じて選択される。容器の材料は、本発明の装置の活性表面と同一又は異なる材料であってもよい。
【0097】
容器は好ましくは十分に耐漏洩性であり、例えば、対象液体中の本発明による装置又はプレートの、上記容器内での浸漬時の漏洩を防止する。特に、容器が閉じている場合には、好ましくは十分に耐漏洩性であり、例えば、汚染、例えば細菌汚染、化学汚染等が容器に入ることを防ぎ、且つ/又は容器からの対象液体の取り出し後に、捕捉区域により捕捉された小滴の蒸発を防ぐ。当業者は、本発明を為す使用に従って、耐漏洩性を適合し、適切な材料を使用することができるであろう。
【0098】
本発明の操作ボックスの特定の実施形態によると、基板及び容器が同一材料から成る場合、基板は容器を構成する壁の1つを構成し得る。
【0099】
容器を構成する壁はまた、本発明の装置の活性表面から且つその上に、例えば接着又は加圧により構築され得る。
【0100】
容器は、その構築のために、また、特定の用途において開閉するために、特に、本発明の装置又はプレートを対象液体と接触させた後に、又は小滴における分析又は反応後に、容器から装置又はプレートを取り出せるように、カバーを備えてもよい。実際、1つの容器はまた、同時又は連続的に、本発明による1つ、又はその設計に応じて複数の装置又はプレートを浸漬するのにも使用することができる。容器はそれゆえ、その内側に装置及び/又はプレートを固定する着脱式手段、例えばクリップを備え得る。容器がカバーを備えれば、容器は好ましくは、上記に説明されるように、本発明の装置又はプレートの浸漬を妨げないような十分な耐漏洩性を示す。
【0101】
カバーは、容器に関して記されるような材料から作成され得る。カバーは、例えば成形、スタンピング、エッチング又は機械的侵食等によって製造され得る。カバーは、例えば、接着、加圧、めっき、又は当業者にとって既知であり且つカバーの使用に必要な性能及び耐漏洩性を保証するその他の任意の手段によって、永久的に容器に固定されて、容器を閉じることができる。カバーはまた、カバーの使用に必要な性能及び耐漏洩性を提供しながら、容器に着脱可能に固定されており、その結果、このように形成された同様の容器は、同一又は異なっていてもよい本発明による装置又はプレートの連続的な浸漬に、且つ/又は対象液体と共に使用することができる。
【0102】
好ましくは、容器の材料及び、適切であれば、そのカバーの材料は、上記容器の内側(すなわち、基板及びその活性表面の向かい側)において、対象液体に対して実質的に非湿潤性である。実際、これは、対象液体を取り出した後に、小滴が容器の内部表面へ付着すること、活性表面上へ落下して、捕捉区域により捕捉された小滴における操作区域上の分析及び反応を阻害することを妨げ得る。表面処理が、本発明の装置の活性表面に関して、こうした結果を得るために必要となるかもしれない。これらの処理は、例えば、活性表面の製造で上述される処理であってもよい。
【0103】
容器は、対象液体を上記容器内へ導入する手段、及び上記容器から取り出す手段を備え、少なくとも2つの開口を備える。容器が閉じられている場合、下記のもの以外、これらの開口の位置、形状、及び機能に関する制限はない。これらの開口は、対象液体の容器内への導入、その後の容器からの取り出しを可能とし、対象液体が容器内へ導入される際に、捕捉区域を覆うように、且つ対象液体が容器から取り出される際に、1つの捕捉区域当たり、対象液体が一滴捕捉されるように、配置されていなければならない。対象液体は、2つの異なる開口を介して容器に入り、出ることが可能である。それはまた、2つの開口の1つのみを介してボックスに入り、出ることも可能であり、第2の開口は取り出すことにより集められた(summoned)空気を通過させることによって、又は、対象液体を容器から押し出すことを可能にするガス流体を、第2の開口を介して注入することによって、対象液体の取り出しを可能とするのに使用される。
【0104】
対象液体を容器内へ導入し且つ容器から取り出す開口は、例えばエッチング、スタンピング、成形、感光性樹脂の場合には露光、機械的な穴開け等によって、カバー、又は容器の壁に設けられ得る。
【0105】
対象液体の容器内への導入は、当業者にとって既知である、液体を容器内へ注入する任意の適切な手段、特にラボオンチップ及びマイクロシステムの分野で用いられる手段によって行われ得る。この注入手段は、例えば、シリンジ、ピペット、マイクロピペット、注入ポンプ等であってもよい。対象液体の取り出しは、当業者にとって既知である、液体を容器から取り出す任意の適切な手段によって行われ得る。重要な点は、捕捉区域により捕捉された小滴が、対象液体の取り出し中に取り除かれないことである。
【0106】
例えば、本発明によると、対象液体を取り出す手段は、注入口を介してガス流体を注入して、その結果排出口を介して容器から対象液体を追いやることで対象液体を取り出すポンプから成り得る。好適には、容器の注入口を介してガス流体を注入するポンプはそれゆえ、注入されるガス流体を対象液体の蒸気で飽和させる機器を備え得る。この飽和は、捕捉区域により捕捉された小滴の蒸発を防止又は制限することを可能にする。
【0107】
また、例として、対象液体を容器から取り出すポンプは、排出口を介して対象液体を吸い出すことによって対象液体を容器から取り出すように設けられる吸引ポンプから成り得る。
【0108】
本発明の操作ボックスを使用する、本発明の装置及びプレートの捕捉区域当たり対象液体を一滴捕捉する方法の操作は、以下の方法、
捕捉区域を覆うための、容器、すなわち流体チャンバの、対象液体による完全又は部分的な充填、次いで
液体のチャンバからの取り出し、
で概略的に示され得る。
【0109】
活性表面は非湿潤性であり、捕捉区域のみがそれぞれ、対象液体の小滴を保持する。
【0110】
本発明の装置、プレート又は操作ボックスの使用はそれゆえ、1つ又は複数の同一又は異なる対象液体を用いて集合的に行われる、1つ又は複数の操作、次いで形成される各小滴における個別的な操作を連続的に含み得る。
【0111】
このため、例えば、集合的とみなされる第1の操作において、本発明の装置は、例えば操作ボックス内へと注入される対象液体の流体流れを、互いに独立した小滴の配列又は微小体にする。次に、当業者とって既知である、検出方法、及び/又は化学反応若しくは生化学反応は、捕捉区域により捕捉された各小滴において、個別的に(個別的な操作)、並行して又は連続的に実施され得る。
【0112】
本発明の装置を用いる複数の工程を有する方法では、全ての工程が小滴形成を導く必要は無い。実際、全ての補足区域及び操作区域を液体で覆い、次いで、例えば加圧ガスのボックス中への注入又は強力な攪拌等で、捕捉区域により捕捉された小滴が残らないようにこの液体のボックスを空にすることによって、特定の工程は何にも妨げられずに実行される。
【0113】
本発明の装置の同一操作区域上に、操作区域を取り囲む捕捉区域のよって、1つ又は複数の対象液体の様々な小滴を連続的に捕捉することが可能である。各対象液体は、例えば化学的又は生化学的な方法の複数の工程の1つを実行するために、例えば操作区域を製造するために、且つ/又は分析を実行するために必要な1つ又は複数の試薬を含有し得る。結果として、同一操作区域上の一連の様々な小滴は、実施される方法の連続工程を実行することを可能とする。全てのこれらの方法の工程は、それゆえ好適には、捕捉区域のためにこの操作区域上に局在化されるであろう。
【0114】
本発明の使用に関連付けられる実験において、本発明者等は、本発明の装置が、従来技術の手法と比較して、ラボオンチップ、生物学的チップ及びマイクロシステムの分野における他の技術的な問題を解決することを見出した。特に、従来技術には、生物学的チップの表面を官能化させるための、生物学的分子の局在的な共有結合グラフトのいくつかの方法がある。この局在化は通常、化学的、光化学的そうでなければ電気的に実行される。化学的に、生物学的要素(プローブ)の固定化が、局在的付着(「スポッティング」)によって、又はin situ合成によって行われ、時間の点で制約が課される。光化学的に、感光性基を用いてオリゴヌクレオチドを合成することが可能である[4]。ここでまた、合成時間及び高価な試薬の容量の点における制限に直面することがよくある。さらに、非選択的フリーラジカル反応を行い得る。電気的に、感電性基(electro-labile)による固体支持体上のオリゴヌクレオチドの合成も同様の制限に直面する。電気化学的に[3]、金属電極におけるピロール及び生物学種を有しているピロールの共重合が行われてもよい。後者の手法は、高価な試薬(生物学種を有しているピロール)を大量に必要とするという欠点を有する。
【0115】
本発明の装置は、従来技術のこれらの数多くの問題を解決することを可能にする。実際、それは、操作区域上の対象液体の急速且つ正確な局在化、及び固定化されたプローブ密度の正確な制御の結果、本発明において操作区域となった生物学的チップの表面を急速且つ正確に官能化することを可能にする。さらに、従来技術の方法と比較して、使用される試薬の容量は、捕捉区域により捕捉される試薬の小滴容量での反応の正確な局在化のために、明らかに少ない。その上、本発明者等の実験は、本発明の装置が、検出スポット間で相互汚染せずに、互いに独立した微量体において処理を行い、それにより分析の正確さ及び再現性を著しく増すことを可能にすることを示した。
【0116】
したがって、本発明は、とりわけ、捕捉区域により捕捉される小滴における限定された媒体での電気化学測定又は光学測定を可能とするが、また電気化学的又は化学的に、高価な試薬を使用した操作区域上での局在的官能化も可能とする(試薬の量は、本発明による捕捉区域により取り囲まれる操作区域により形成される実際に有用な区域にまで制限される)。
【0117】
本発明は現在のところ、閉じられた装置の場合、例えばラボオンチップ用途及びマイクロシステム用途における最高の利点を有する。しかしながら、本発明を、対象液体を完全に局在化させておくための自動装置による液体の分布の場合にもまた適用し得るということに留意されたい。
【0118】
本発明によると、対象液体中に存在し得る様々な分子の検出は、ボックス内の上記活性表面上に捕捉される対象液体の様々な小滴において、並行して、同時に又は連続的に行われ得る。
【0119】
本発明によると、検出対象である少なくとも1つの検体は、例えば、生物学的分子又は化学分子から選択され得る。生物学的分子は、例えば、酵素、酵素基質、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、真核細胞又は原核細胞の膜受容体、ウィルス、抗体、抗原、ホルモン、生体の代謝物、生体の毒、ヌクレオチド、ヌクレオシド及び相補的DNAから成る群より選択され得る。化学分子は、定性的に且つ/又は定量的に分析される必要のある任意の分子であってもよい。
【0120】
他の特徴及び利点は、添付される図面を参照の上、限定されない例示として与えられる以下の実施例を読むことで当業者にとってさらに明らかとなるであろう。
【実施例】
【0121】
実施例1:本発明による非湿潤性活性表面の製造
300nmの酸化ケイ素(SiO2)の上層を有するシリコン(Si)基板を疎水性シラン(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシル−トリクロロシラン)で処理して、表面を疎水性とする。
【0122】
プロトコルは以下の通りである。シラノール部位を生成するため、3.5Mの水酸化ナトリウム/水/エタノールの混合物中で2時間、常温で処理後、基板を9mMのシラン濃度を有する無水トルエン/疎水性シランの混合物中に10分間、常温で放置する。それを次にトルエン、次いでアセトン、次いでエタノールで洗浄し、最後にエタノール中で5分間超音波により洗浄する。基板はその後、インキュベータ内に1時間、110℃で放置される。水で測定された接触角は110°である。
【0123】
実施例2:活性表面上に設けられる、支持材料から成る捕捉区域の製造
300nmのSiO2層を有するSiの基板上で、マイクロエレクトロニクス分野の熟練者にとっては基本的な工程、
噴霧による白金(Pt)の300nmの堆積、
電流インレットバンドと連結する円形ユニットの穴形状(opening)を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのPtの完全なイオンエッチング、
硝酸浴中での樹脂の除去、
プラズマリアクタにおける、SiO2の500nmの化学蒸着、
円形ユニットの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのSiO2の500nmの完全なイオンエッチング、及び
硝酸浴中での樹脂の除去
が実行される。
【0124】
図3aは、支持材料から成り且つ操作区域を取り囲む円形捕捉区域の図示である。
【0125】
実施例3:ブラックシリコンから成る捕捉区域の製造
Siの基板上で、工程(これらの工程は全てマイクロエレクトロニクス分野の熟練者にとって既知である)、
リングの形をとるユニットの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、ブラックシリコンを形成するための、文献[11]に記載されるプロトコルによるシリコンの約3μmのイオン反応性エッチング、
Plassys MDS 150プラズマリアクタ(Plassis社、フランス)内の通過による、以下の条件、電力500W、反応時間4分、圧力21.33Pa(160mTorr)、酸素流速25cm3/min.、常温でのエッチングの最後における表面の洗浄、及び
硝酸浴中での樹脂の除去
が実行される。
【0126】
これらの所定区域に形成されるブラックシリコンは高い親水性を示すが、このシリコンは水性の対象液体(試料)に対して実質的に非湿潤性である。
【0127】
図1及び図2は、それらの操作区域の周囲に形成される種々の捕捉区域を図式的に示す。微細構造化が実現され、操作区域(Zt)を形成するよう意図される区域の周囲に、捕捉区域(Zc)を構成するブラックシリコンの開口型又は閉鎖型の帯を作成した。図2において、捕捉区域は、2つ(右側)又は4つ(左側)の操作区域の周囲に配置される。
【0128】
エッチングされた区域は他のどのような化学変性も必要としない。本発明のこの装置は、水性の対象液体と共に使用されるよう意図される。
【0129】
実施例4:ウェッティングによる捕捉のための電極の形態をとる捕捉区域の製造
4.1 捕捉電極の形態をとる捕捉区域:
300nmのSiO2層を有するSiの基板上で、以下の工程が実行される。
α)実施例2と同様の工程が実行され、電極(支持材料)を活性表面上に設ける。
β)対象液体に対して非湿潤性である活性表面が基板表面全体に亘って製造され、実施例1と同様に表面を疎水性とする。電極は続いて化学的に水酸化ナトリウム/水/エタノールの溶液によって洗浄される。これを行うために、3.5Mの水酸化ナトリウム/水/エタノールの混合物の小滴を電極上に2時間、常温で付着させる。電極は次に水によって洗浄され、その後乾燥される。
γ)付加実験では、親水性障壁を電極上に、3位にアルコール官能基(水性の対象液体に対して湿潤性である官能基)を有するピロールの定電圧電解重合によって製造した。このポリピロールは100mMのピロール−3−エタノールと0.5Mの過塩素酸リチウム(LiClO4)との溶液から生成される。Ag/AgCl/Cl-の電位に対して1Vの電位が5秒間印加される。電極上の水で測定された接触角は53°である。
【0130】
図3aは、本実施例のプロトコルを用いて得られた本発明による装置の図示である。この図において、操作区域(Zt)を取り囲む捕捉区域(Zc)は、湿潤性官能基(アルコール官能基)を有するポリピロールにより被覆された電極で形成される。
【0131】
4.2 湿潤性の帯の形態をとる捕捉区域:
300nmのSiO2層を有するSiの基板上で、以下の工程が実行された。
α)対象液体に対して非湿潤性である活性表面が基板全体に亘って製造され、実施例1と同様に表面を疎水性とする。
β)捕捉区域(すなわち湿潤性の帯)を形成するための、リングの形をとるユニットの穴形状を有するネガ型感光性樹脂(参考品は供給者シップレー社(Shipley)のNFR−015)を用いるフォトリソグラフィ。
γ)Plassys MDS 150プラズマリアクタ(Plassys社、フランス)内の通過による、以下の条件、電力500W、反応時間4分、圧力21.33Pa(160mTorr)、酸素流速25cm3/min.、常温での感光性樹脂のオープンユニットにおける疎水性シランの分解。
δ)アミン官能基(対象液体に対して湿潤性である官能基)を有するシランを用いたシラン処理による捕捉区域の製造。基板は、エタノール中の体積比で10%のγ−アミノプロピルトリエトキシシランの溶液中に放置される。一晩常温で放置した後、基板をエタノールで洗浄し、最後にインキュベータ内に110℃、3時間放置した。
【0132】
実施例5:本発明によるプローブによって官能化される操作区域の製造
本実施例において、4つの電極を備えるチップが製造され、使用される。300nmのSiO2層を有するSi基板上に、マイクロエレクトロニクス分野の熟練者にとっては基本的な工程、
噴霧による白金(Pt)の300nmの堆積、
マイクロセル、捕捉電極及び電流インレットバンドのユニットの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのPtの完全なイオンエッチング、
硝酸浴中での樹脂の除去、
プラズマリアクタにおける、SiO2の500nmの化学蒸着、
マイクロセルの電極及び捕捉電極のユニットの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのSiO2の500nmの完全なイオンエッチング、及び
硝酸浴中での樹脂の除去
が実行される。
【0133】
捕捉区域(Zc)を形成するのに用いられる作用電極(We)、対電極(CE)及び補助電極は、白金(約5,000Åの堆積)から作成される(図4参照)。
【0134】
Ag/AgCl/Cl-の参照電極(Rf)も存在する。この電極は、白金上に銀を堆積することによる以下のプロトコルにより得られる。
10mlの0.2MのAgNO3、2MのKcl、0.5mMのNa223を含有する溶液の調製、
飽和カロメル電極(SCE)の電位に対して−0.65Vの電位が、参照電極に(クロノアンペロメトリに従って)90秒間印加される。灰色/白の堆積物が得られる。操作区域は次いで水で洗浄され、且つ
事前に改質された電極を有する操作区域は0.1MのHCl溶液中に浸漬され、SCEの電位に対して0.5Vの電位を30秒間印加して、銀の堆積物を塩素化処理する。基板は続いて水で洗浄される。
【0135】
全ての操作区域は、実施例1に記載されるプロトコルに従って疎水性シランを用いてシラン処理された。
【0136】
親水性障壁は、実施例4.1−(γ)に記載されるプロトコルに従って捕捉電極上に製造される。
【0137】
対電極(CE)は次に、ピロール/1位を生物学官能基によって官能化されたピロールの導電性コポリマー(この場合、プローブオリゴヌクレオチド)によって官能化される[5]。電解重合は操作区域の対電極上に局在化される。
【0138】
この操作区域を試験するために、プローブオリゴヌクレオチドは、酵素標識(HRP、すなわちホースラディッシュペルオキシダーゼ)を有する標的オリゴヌクレオチド(100pM)と緩衝液(1MのNaCl/10mMのTris/1mMのEDTA/0.05%のTriton X100)中でハイブリダイズされる。同じ緩衝液だがトリトンを含まない液中で洗浄後、視覚化溶液(OPD+H22+50mMのクエン酸−リン酸緩衝液)が本発明の装置上へ導入され、その後吸い出される。液体の画分は明らかに、図5の写真に示されるように、操作区域上に局在的に残される。
左側には、装置が視覚化溶液によって覆われる前の、小滴を含まない本発明の装置が識別され、且つ
右側には、視覚化溶液が吸い出された後の、捕捉区域(親水性帯)によって視覚化溶液の小滴が捕捉された本発明の装置が識別される。
【0139】
5分間の視覚化の後、酵素産物が測定電極(WE)上で微分パルスボルタンペロメトリ(voltamperometry)によって検出される。この検出の結果を添付される図6のグラフに示す。
【0140】
図4は、本実施例のプロトコルを用いて得られた本発明による装置の電気化学マイクロセルの図示である。この図では、操作区域が測定電極すなわち作用電極(WE)、対電極(CE)上に堆積されるオリゴヌクレオチドを有する導電性ポリマー(Po)、及びアルコール官能基を有するポリマーが堆積された最外電極(Pm)により形成される捕捉区域(Zc)から構成される。組立体全体は非湿潤性活性表面(Sa)上に製造される。
【0141】
実施例6:高価な試薬を用いた本発明によるチップ操作区域の局在的官能化
本実施例において、実施例5のように表面を疎水性とした4つの電極を有するシステムが利用される。親水性障壁及び生物学分子のグラフトが、以下のプロトコルによって製造される。
A)捕捉区域を構成する親水性障壁の製造。親水性障壁は実施例4.1のように製造される。
B)ピロール、オリゴヌクレオチドによって官能化されたピロール及び0.1MのLiClO4支持電解質を含有する電解液の構成部材上への導入。溶液が吸い出された後、操作区域(電気化学マイクロセル)上にうまく局在化された電解液の小滴が残り、図5の右側の写真に示されるのと同様の結果を与える。定電圧電解重合がその後、対電極(Ag/AgCl/Cl-に対して1V)上で2秒間行われる。オリゴヌクレオチドを有するポリピロールが次いで、操作区域上に排他的に堆積される。
【0142】
本発明の装置はそれゆえ明らかに、特にいくつかの独立した電気化学装置が表面全体に分配される大きい表面が官能化される場合に、試薬を節約することを可能とし、そのため本発明による完全なチップの電極区域上に試薬を制限するようにも働く。
【0143】
それはまた、このため、湿潤性の帯(捕捉区域)が電気化学マイクロセルの組、すなわち、例えば図2のように複数の操作区域を取り囲むシステムを製造することも可能である。
【0144】
実施例7:本発明によるボックスの製造、及びこのボックスの操作
7.1 ボックスの製造
ポリジメチルシロキサン(PDMS)の中空カバーが、1mmのオーバーフィット(overfit)を有する正方形ユニットのガラスの型上で成形によって製造される。
【0145】
この中空カバーは、紫外線による放射によって硬化する接着剤(Vitralit 6181)で接着することによって、先行の実施例で得られるような本発明の平面装置に密封した状態で取り付けられる。流体注入口及び排出口の連通部は、小径を有するニードルを用いてカバーに穴を開けることによって製造される。注入口用ニードルは、流体輸送管、及び対象液体で満たされたシリンジに連通される。液体が連通目的で備えられた連通部のみを通るということを考慮して、最終組立体を試験し、可能性のあるいかなる漏洩も検出する。
【0146】
図7は本実施例で得られるようなボックスの図示である。注入口連通部及び排出口連通部の他の配置は容易に作成可能であり、図8は、本実施例に記載されるプロトコルによって得ることが可能なボックスの図示を繰り返し示す。
【0147】
この図8において、B1、B2及びB3は、注入口(o)及び排出口(s)が別個に設けられる本発明による3種類のボックスを示す。Sb、Sa、Zc及びZtは、上述された図と同様の意味を有する。本発明のボックスを構成する様々な構成要素は3つの図に同様に示される。
【0148】
図9は、本発明によるボックスを製造するのに用いられる本発明によるプレートPの上方から見た図示である。このプレートは、本発明による非湿潤性活性表面上に配置される81個の捕捉区域及び対応する操作区域を備える。
【0149】
7.2 ボックスの操作及び結果
上記のボックスの操作が試験される。図7は、図8のボックスB1の操作を示す。対象液体Eは、開口の1つ(o)を介してボックス内へ注入されて(7a)ボックスを満たさし(7b)、その後他方の開口(s)を介して取り出される。用いられる注入手段は、シリンジであり、用いられる排出手段もシリンジである。
【0150】
ボックスが満たされることは必須ではなく、重要な点は様々な捕捉区域が対象液体によって覆われることである。
【0151】
本実施例は、様々な捕捉区域上にうまく局在化される小滴(g)の配列が本発明によるこの装置によって得られることを示す。
【0152】
[参考文献リスト]
[1]国際公開第02/16023号パンフレット:プロトジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Protogene Laboratories Inc.)
[2]米国特許第6,040,193号明細書:アフィメトリックス インコーポレイテッド(Affymetrix Inc.)
[3]国際公開第99/03684号パンフレット:イーペン・セイジ(Eapen Saji)他
[4]アゼック(Azek)他著、Analytical Biochemistry, 2000年, 284, 107〜113頁
[5]国際公開第00/36145号パンフレット:コミッサリア ア レネルジー アトミーク(Commissariat a l'Energie Atomique)[原子力委員会(Atomic Energy Commission)]
[6]国際公開第02/090573号パンフレット:インフィネオン(Infineon)
[7]ジョンフン・リー(Junghoon Lee)他著「マイクロスケール液体の取り扱いのためのエレクトロウェッティング及び誘電体上のエレクトロウェッティング(Electrowetting and Electrowetting-on-dielectric for microscale liquid handling)」、Sensor and Actuators A 95, 2002年, 259〜268頁
[8]J.クーパー(J. Cooper)他著、「サブナノリッタ容量での電気化学測定用マイクロマシニングセンサ(Micromachining Sensor for Electrochemical Measurement in Subnanoliter Volumes)」、Anal. Chem. 1997年, 69, 253〜258頁
[9]メングス・ヤン(Mengsu Yang)他著、「固相DNAハイブリダイゼーション及び増幅のための改質ガラス/シリコン表面上のオリゴヌクレオチドの共有結合固定(Covalent Immobilisation of Oligonucleotides on Modified Glass/Silicon Surfaces for Solid-Phase DNA Hybridization and Amplification)」、Chemistry Letters 1998年, 257〜258頁
[10]ミラ・ボンチェヴァ(Mila Boncheva)他著、「インターフェースにおけるヌクレオチド配列の設計(Design of Oligonucleotide Arrays at Interfaces)」、Langmuir 1999年, 15, 4317〜4320頁
[11]H.ヤンセン(H. Jansen)他著、「ブラックシリコン法:プロファイル制御によりディープシリコントレンチエッチングにおけるフッ素系反応性イオンエッチャーのパラメータ設定を確定する汎用法(The black silicon method: a universal method for determining the parameter setting of a fluorine-based reactive ion etcher in deep silicon trench etching with profile control)」、J. Micromech. Microeng. 5, 1995年, 115〜120頁
[12]仏国特許出願公開第2,818,662号明細書
[13]欧州特許第561,722号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作装置であって、
対象液体に対して実質的に非湿潤性である活性表面(Sa)を備える基板と、
前記活性表面上に形成され、前記対象液体の小滴の局在的な捕捉のための少なくとも1つの区域(Zc)と、
前記捕捉区域と共に配置される少なくとも1つの操作区域(Zt)であって、前記小滴が該捕捉区域によって捕捉される際に、前記操作区域が前記対象液体の前記小滴によって少なくとも部分的に覆われるように、前記捕捉区域が前記操作区域を連続的又は不連続的に取り囲む、少なくとも1つの操作区域(Zt)と、
前記対象液体の小滴を前記捕捉区域上に残すことを可能とする、前記対象液体を供給する手段と
を備える操作装置。
【請求項2】
少なくとも1つの捕捉区域が、環状形、星型、矩形、正方形、三角形、楕円形又は4〜20個の辺を有する多角形から選択される、開放形状又は閉形状を有し、且つ少なくとも1つの操作区域を取り囲む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
対象液体の小滴のための捕捉区域が、複数の操作区域を取り囲む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記捕捉区域が、対象液体の小滴の化学的、電気的又は物理的な捕捉のための区域である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記捕捉区域が、毛管力によって前記小滴を捕捉することを可能とする前記活性表面上の凹部又は凸部である請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの捕捉区域が、ウェッティングによる捕捉のための電極である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの捕捉区域が、ブラックシリコンから成る請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの捕捉区域が、エレクトロウェッティングによる捕捉のための電極である請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ウェッティングによる捕捉のための電極は、貴金属、貴金属合金、カーボン、グラファイト及びITOから成る群より選択される材料から成り、該材料は前記対象液体に対して湿潤性である化学官能基が結合される導電性ポリマー材料上への電着によって湿潤性となる請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記捕捉区域は、前記対象液体に対して湿潤性である化学官能基の材料上へのグラフト化より湿潤性となる材料から成る請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記材料が、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素及び有機ポリマー、並びに金属又は合金から成る群より選択される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記材料への前記グラフト化が、前記湿潤性化学官能基を有するシランによるシラン処理によって実行される請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ウェッティングによる捕捉のための電極が、前記対象液体に対して湿潤性である化学官能基が結合されるチオールの物理吸着によって湿潤性となる金電極である請求項6に記載の装置。
【請求項14】
前記対象液体は水性であるため、該対象液体に対して湿潤性である前記化学官能基が、アルコール、アルコキシド、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、オキシアミン、ヒドラジン、アミン及びアンモニウム官能基から成る群より選択される請求項9〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記対象液体は水性であるため、前記少なくとも1つの捕捉区域が親水性区域であり、且つ前記実質的に非湿潤性である活性表面が疎水性である請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記捕捉区域及び該捕捉区域と共に配置される前記操作区域が、前記活性表面に対して凹部内又は凸部上に設けられ得る請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの操作区域が、前記対象液体の小滴との電気的相互作用及び/又は化学的相互作用を有する区域である請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの操作区域が、電気化学マイクロセルである請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの操作区域が、前記対象液体が捕捉される際に、該対象液体の小滴中に存在し得る少なくとも1つの化学種又は生物学種の検出のための区域である請求項1〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの操作区域が、前記対象液体が捕捉される際に、該対象液体の小滴中に存在し得る標的と相互作用するよう意図されるプローブによって官能化される区域である請求項1〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記ウェッティングによる対象液体の小滴の捕捉のための電極が、前記操作区域である前記電気化学マイクロセルの操作のための電極としても使用される請求項6、9〜14のいずれか1項に基づく場合、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記ウェッティングによる対象液体の小滴の捕捉のための電極が、前記操作区域である前記電気化学マイクロセルの操作のための電極としても使用され、且つ前記電極が、前記対象液体の小滴中に存在し得る標的と相互作用するよう意図されるプローブによって官能化される請求項9に基づく場合、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項23】
前記プローブが、前記湿潤性官能基を有する導電性ポリマーと結合される請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記導電性ポリマーが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリフラン及びポリフルオレンから成る群より選択される請求項9、22又は23に記載の装置。
【請求項25】
前記プローブが、酵素、酵素基質、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、真核細胞又は原核細胞の膜受容体、抗体、抗原、ホルモン、生体の代謝物、生体の毒、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド及び相補的DNAから成る群より選択される請求項20、22〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの操作区域が、光学センサ、電気センサ、磁気センサ、静電気センサ、機械センサ、熱センサ及び化学センサから成る群より選択されるセンサである請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つの操作区域が、光学アクチュエータ、電気アクチュエータ、磁気アクチュエータ、静電気アクチュエータ、機械アクチュエータ、熱アクチュエータ及び化学アクチュエータから成る群より選択されるアクチュエータである請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの操作区域が、前記対象液体に対して実質的に非湿潤性である区域である請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記活性表面が、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素、有機ポリマー、金属又は合金から成る群より選択される材料から成る表面である請求項1〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の、複数の同一又は異なる操作装置を備える操作プレート。
【請求項31】
前記操作装置が配列を形成する請求項30に記載の操作プレート。
【請求項32】
前記局在的な捕捉区域上に対象液体の小滴を残す前記手段が、捕捉区域当たり対象液体一滴とするディスペンサである請求項1〜29のいずれか1項に記載の装置、又は請求項30又は31に記載のプレート。
【請求項33】
操作ボックスであって、
対象液体を容器内へ導入し且つ対象液体を該容器から取り出す手段を備える容器と、
前記容器内に設けられる請求項1に記載の操作装置、又は請求項30又は31に記載のプレートと、
前記象液体が前記容器内へ導入される際に、該対象液体が前記少なくとも1つの捕捉区域を覆い、その後前記対象液体が該容器から取り出される際に、対象液体の小滴が前記捕捉区域により捕捉されたままとなるように配置される、前記対象液体を前記容器内へ導入し且つ該対象液体を該容器から取り出す手段と
を備える操作ボックス。
【請求項34】
前記対象液体を前記容器から取り出す前記手段が、注入口を介してガス流体を注入して、それによって前記対象液体を排出口を介して前記容器から追い出すことによって取り出すポンプから成る請求項33に記載の操作ボックス。
【請求項35】
前記容器の前記注入口を介して前記ガス流体を注入するための前記ポンプが、注入される前記ガス流体を前記対象液体の蒸気で飽和させる機器を備える請求項34に記載の操作ボックス。
【請求項36】
前記対象液体を前記容器から取り出す前記手段が、該対象液体を吸引することによって該容器から取り出すように設けられる吸引ポンプから成る請求項33に記載の操作ボックス。
【請求項37】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の1つ以上の操作装置、又は請求項30又は31に記載のプレートを備えるシステム。
【請求項38】
請求項33〜36のいずれか1項に記載の操作ボックスを備えるシステム。
【請求項39】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の操作装置、又は請求項30又は31に記載のプレートを備える生物学的チップ。
【請求項40】
前記チップが、核酸チップ、抗体チップ、抗原チップ、タンパク質チップ及び細胞チップから成る群より選択される請求項39に記載の生物学的チップ。
【請求項41】
請求項39又は40に記載の生物学的チップを備えるボックス。
【請求項42】
請求項1に記載の装置を製造する方法であって、
前記活性表面となるように選択される表面を備える基板を準備する工程と、
操作区域を、前記基板の選択された表面上に形成するために、前記基板の選択された表面を構造化する工程と、
前記装置が意図される前記対象液体に対して実質的に非湿潤性とするために、前記選択された表面に処理を適用する工程と、
対象液体の小滴のための捕捉区域を形成するために、前記選択された表面を構造化する工程と
を含み、
前記操作区域を形成するために前記表面を構造化する工程及び前記捕捉区域を形成するために前記表面を構造化する工程を実行し、その結果、該捕捉区域が対象液体の小滴を捕捉する際に、該操作区域が該小滴によって少なくとも部分的に覆われるように、該捕捉区域が該操作区域を連続的又は不連続的に取り囲むように該操作区域を該捕捉区域と共に配置する、装置を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−73269(P2012−73269A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259651(P2011−259651)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2006−537380(P2006−537380)の分割
【原出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(500348697)コミッサリア ア レネルジー アトミーク (21)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L´ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblance, Batiment le Ponant D 7501 5 Paris, France
【出願人】(506138889)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX SA
【住所又は居所原語表記】Chemin de l’Orme,69280 MARCY L’ETOILE, France