説明

対象物への示温体の仮固定方法

【課題】 プリント基板などの対象物の表面に示温インクをスポット的に塗布して示温体を形成し、耐熱試験や加熱試験に供することがあるが、これら試験後に、示温体を撤去する際、対象物の表面にスルーホールや凹凸部がある場合には、示温体の撤去が容易ではなく、対象物の表面を傷付けてしまう場合もあった。
【解決手段】 温度試験等をすべき対象物の表面に、食品用ラップフィルムを付着させ、該ラップフィルム上の所望箇所に示温インクを塗布乾燥させて示温体を形成せしめ、温度実験等を行った後、該ラップフィルムを対象物表面から剥がすことにより、その上に付着している示温体を対象物から撤去する様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物への示温体の仮固定方法、詳しくは各種製品の温度試験などの際に、示温体を対象物に仮固定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種製品の試作や製造の過程では、耐熱試験や加熱試験を必要とする場合があり、最近では、これら試験には、温度による物性変化を利用した示温体を用いることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、設定温度超過によって変色したり、透明化する石油系ワックス加工品や化学物質加工品を主材料とした示温インクを対象物の所望箇所に塗布して示温体とし、対象物に熱を加えて設定温度超過の際の示温体の不可逆変化によって、設定温度超過の事実を知り、その際の対象物の状態を検査することなどが、各種製品の試作や製造の過程において行われている。
【0006】
この際に多く用いられる示温インクは、どの様な形状の対象物に対しても簡単に示温体を形成することが出来、しかも高精度かつ不可逆的に温度感知が可能な為、この種の温度試験には最適な資材であるが、対象物表面に塗布して示温体とするので、耐熱試験や加熱試験完了後に対象物表面から撤去する際、対象物の表面の形状や材質によっては、その表面に強固に貼り付いてしまい、剥がすのに手間がかかることがあった。特に、プリント基板などの様に、スルーホールが形成されていたり、表面に凹凸が形成されている対象物の場合、示温インクから構成された示温体の剥ぎ取りには手間がかかり、対象物を傷付けてしまう場合もあった。
【0007】
本発明者は、各種製品の試作や製造の過程において行われる耐熱試験や加熱試験の際に、対象物に形成される示温インクからなる示温体の剥ぎ取りに関する上記問題点を解決すべく研究を行った結果、対象物を傷付けることなく、示温体を簡単に除去することが出来る示温体の仮固定方法を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである、
【課題を解決するための手段】
【0008】
温度試験等をすべき対象物の表面に、食品用ラップフィルムを付着させ、該ラップフィルム上の所望箇所に示温インクを塗布乾燥させて示温体を形成せしめ、温度実験等を行った後、該ラップフィルムを対象物表面から剥がすことにより、その上に付着している示温体を対象物から撤去する様にして、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
温度試験終了後に、示温体が付着した状態の食品用ラップフィルムを対象物から剥がし取れば、示温体も対象物から分離し、対象物はもとの状態に復する。この際、食品用ラップフィルムは、それ自体の接着力によって対象物の表面に付着しているだけなので、対象物からの剥離は極めて容易で、これを剥がし取る際に対象物の表面を傷付けるおそれは全くない。
【0010】
つまり、食品用ラップフィルムを介して示温体を対象物の表面に形成するので、対象物の表面にスルーホールや凸部が形成されていたり、その表面が凹凸状を呈していても、撤去は極めて容易であり、示温インクの利用範囲、用途を拡大し、そのすぐれた特性を更に活用出来るすぐれた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係る対象物への示温体の仮固定方法の一実施例において、対象物へ食品用ラップフィルムを付着させる前の状況の斜視図。
【図2】同じく、対象物への食品用ラップフィルムを付着させた状態の斜視図。
【図3】同じく、対象物から食品用ラップフィルムを剥ぎ取った状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
食品用ラップフィルムを介して、温度試験対象物表面に、示温インクを用いた示温体を形成する様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0013】
以下、図面を参照しながらこの発明に係る対象物への示温体の仮固定方法の実施例について説明する。
【0014】
図中1は耐熱試験や加熱試験を行おうとする対象物で、その表面にはスルーホール2や凸部3などが形成されている。そして、この対象物1の表面に、食品用ラップフィルム4を被せる。食品用ラップフィルム4は、食品の保存や電子レンジによる加熱などの際に用いるポリエチレン、ポリプロプレン、ポリ塩化ビニールなどを素材とした市販されているものである。
【0015】
これら食品用ラップフィルム4は、それ自体、適度な接着性及び伸縮性を有しているので、対象物1に被せると、その表面に吸い付く様にピッタリと付着する。この食品用ラップフィルム4を被せた状態において、対象物1の表面の所望箇所に、食品用ラップフィルム4の上から示温インクの適量をスポット状に塗布して、示温体5を形成する。示温インクにはいくつかのタイプが存在するが、この実施例においては、所望の設定温度で溶解する固形の石油系ワックスを粉砕して粉状にしたものに、適量の溶剤と粘稠剤とを混ぜ合わせたもので、常温では白濁して白く不透明な外観を呈しているが、設定温度の超過の際に透明化することによって設定温度の超過の事実を不可逆的に表示するタイプのものを用いた。この示温インク自体は公知であり、既に市販されている。この示温インクは、食品用ラップフィルム4に塗布されると、その中に含まれている溶剤が蒸発し、食品用ラップフィルム4上に固形状態で安定的に付着して示温体5となる。
【0016】
この状態において、対象物1に対して耐熱試験や加熱試験を行なう。そして、これら試験が終了した後は、図3に示す様に、示温体5が付着した状態の食品用ラップフィルム4を対象物1から剥がし取れば、示温体5も対象物1から分離し、対象物1はもとの状態に復する。なお、食品用ラップフィルム4は、それ自体の接着力によって対象物1の表面に付着しているだけなので、対象物1からの剥離は極めて容易で、これを剥がし取る際に対象物1の表面を傷付けるおそれは全くない。
【0017】
この様に、食品用ラップフィルム4を介して示温体5を対象物1の表面に形成するので、対象物1の表面にスルーホール2や凸部3が形成されていたり、その表面が凹凸状を呈していても、温度試験後の撤去は極めて容易である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
プリント基板などの電子部品分野だけではなく、食品をはじめとして温度試験を必要とするすべての産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1.対象物
2.スルーホール
3.凸部
4.食品用ラップフィルム
5.示温体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度試験等をすべき対象物の表面に、食品用ラップフィルムを付着させ、該ラップフィルム上の所望箇所に示温インクを塗布乾燥させて示温体を形成せしめ、温度実験等を行った後、該ラップフィルムを対象物表面から剥がすことにより、その上に付着している示温体を対象物から撤去することを特徴とする対象物への示温体の仮固定方法。
【請求項2】
示温インクが石油系ワックスを主原料とすることを特徴とする請求項1記載の対象物への示温体の仮固定方法。
【請求項3】
食品用ラップフィルムがポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリ塩化ビニールを原料とするものであることを特徴とする請求項1記載の対象物への示温体の仮固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−137364(P2012−137364A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289486(P2010−289486)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(599140781)株式会社ジークエスト (16)
【Fターム(参考)】