説明

寿命を最適化した原色を有するOLED表示装置の設計方法

【課題】改良されたカラーOLED表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】色度座標、経時輝度安定性及び輝度効率が異なる複数種のOLED材料を同定
し、所定の色度座標及び輝度を有する白色点を含むピクセルを得るために使用される複数
種のOLED材料からなる組合せの複数について表示寿命を概算し、そしてその寿命が最長と
なる組合せを選択する各工程を含む、改良されたカラーOLED表示装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命を向上させたカラー有機発光ダイオード(OLED)表示装置と、そのような表示装置の設計方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示技術に関する最近の進歩には、有機発光ダイオード(OLED)を使用して構築されたフラットパネル表示装置の出現が含まれる。このフラットパネル表示技術は、より一般的な液晶表示技術に基づくフラットパネル表示装置よりも有利な点が多い。大規模な均一バックライトからの光を変調するために液晶材料の配向を利用する液晶表示装置とは異なり、OLED表示装置は、光を放出する材料を利用する。フルカラー表示装置は、典型的には、それぞれ色の異なる光を放出する3種類の材料を基板上に付着させることにより構築されるが、単一の発光材料とカラーフィルターアレイを使用して構築されることもできる。これらの独立した発光要素を異なる空間位置に付着させることにより、原色の光が人間の目で統合されて3色以上の原色から大きな色域が知覚されると、フルカラー表示装置の構築が可能となる。この付着に際しては、基板上に原色の各々が、通常は等しい面積で付着される。
【0003】
残念ながら、現在利用可能なOLED材料を用いて表示装置を構築すると、当該表示装置の寿命が、OLED材料の1種、典型的には青色材料の寿命によって制限されることが多い。したがって、現在この種の表示装置では、寿命が差違を成す主要因子の一つとなる。このため、現在のOLED表示装置の内部に適用するため一般に選ばれるOLED材料は、主として、輝度の経時安定性が非常に良好であること及び/又は輝度効率が高いことを理由として選定されている。さらに、現在利用可能な、輝度の経時安定性が良好で輝度効率が良好な材料は、あまり飽和していないことが多い。したがって、輝度の経時安定性や輝度効率に基づいて材料を選択すると、当該表示装置の色域が制限されることとなる。さらに悩ましいことに、輝度の経時安定性や輝度効率の良さに基づいて材料を選定しても、当該材料が、当該表示装置の寿命を最長にするような材料の組合せとなる保証はない。
【0004】
実際、完成した表示装置の寿命は、当該OLED材料の輝度の経時安定性、輝度効率及び色座標のような因子と、当該表示装置の色温度及び輝度分布のような表示特性とが複雑に相互作用することにより決まる。例えば、赤、緑及び青の一組のOLED材料から、輝度の経時安定性及び/又は輝度効率は劣るが青原色の純度が高い青色OLED材料を選定することにより、寿命を顕著に向上させた表示装置を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第10/077270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、OLED表示装置の設計に際し、表示装置寿命と表示色域とのトレードオフが最適化された、或いは真に寿命の長い、完成した表示装置設計を提供する材料の選定を保証するように、OLED材料の選定方法を改良することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した必要性は、色度座標、経時輝度安定性及び輝度効率が異なる複数種のOLED材料を同定し、所定の色度座標及び輝度を有する白色点を含むピクセルを得るために使用される複数種のOLED材料からなる組合せの複数について表示寿命を概算し、そしてその寿命が最長となる組合せを選択する各工程を含む、改良されたカラーOLED表示装置の製造方法を提供することによって満たされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有利な効果は、表示装置の設計に際し、OLED材料の選定を最適化すること、すなわち当該表示装置に使用される材料の輝度効率、経時輝度安定性及び色度座標の差違並びに表示寿命及び色域についての全体的要件を考慮することによって、フルカラーOLED表示装置の色域と有効寿命を同時に最適化することである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術において知られているサブピクセルを有するフルカラー表示装置の上にピクセルを示す略図である。
【図2】本発明により最適なOLED材料セットを決定するために採用されるプロセスを示すフローチャートである。
【図3】典型的な従来型の有機発光表示装置構造を示す略横断面図である。
【図4】それぞれ赤色光、緑色光及び青色光を放出するOLED材料における輝度出力と電流密度との間の関係を示す、本発明を記述する上で有用なグラフである。
【図5】それぞれ赤色光、緑色光及び青色光を放出するOLED材料における経時材料輝度安定性と電流密度との間の関係を示す、本発明を記述する上で有用なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語「表示装置」は、ビデオ映像又はテキストを電子的に表示し得るスクリーンをさす。用語「ピクセル」は、当該技術分野で認識されている意味で用いられており、画像の一部を形成するためアドレスされ得る表示装置の要素をさす。用語「フルカラー」は、カラー画像を形成し得る多色表示装置をさす。一般に、赤、緑及び青が3原色を構成し、これらを適宜混合することによって他のすべての色を作り出すことができる。「フルカラー」表示装置は、4色以上からも形成し得ることが認識されている。色域とは、所与の表示装置において表示され得る全色の範囲を意味する。3色系装置の場合、「色域」とは、当該表示装置のピクセルを構成するために使用される3種のサブピクセルのCIE色座標の間に創出される三角形上又はその内部にある全色をさす。用語「色域内」とは、色域色セットに含まれる全色をさす。用語「サブピクセル」は、フルカラー表示装置において使用され、特定の色を放出させるため独立してアドレス可能なピクセルの一部をさす。例えば、青色サブピクセルは、青色光を放出させるためアドレスされ得るピクセルの一部である。フルカラー表示装置では、ピクセルは、一般に3原色のサブピクセル、すなわち青、緑及び赤、を含む。用語「ピクセル」又は「サブピクセル」は、一般に、表示装置におけるアドレス可能な最小単位をさす。
【0011】
本発明は、フルカラーOLED表示装置を設計するための方法において、サブピクセルを構成するのに使用される材料を、当該表示装置の有効寿命と色域とが同時に最適化されるように選択することに関する。本発明は、表示装置完成品の有効寿命を算出するに際し、当該表示装置のサブピクセルを構成する発光材料の色度座標、輝度効率及び相対経時輝度安定性から有効寿命を概算することによって達成される。本願明細書においては、表示装置の有効寿命とは、当該表示装置が表示輝度出力及び/又は白色点安定性のような要件を満たすことができる時間数を意味する。
【0012】
本法はOLED表示寿命のモデルを利用する。このモデルにより、サブピクセルを構成するのに使用されるどのOLED材料の色純度が高くなっても、当該サブピクセルの個々から色域内の色を創出するために要求される全表示輝度に対するパーセントが低下するという事実を利用することができる。この事実により、色純度の一層高い材料からサブピクセル、典型的には赤色又は青色のサブピクセル、を構築することによって、寿命を向上させた表示装置を製造することが可能となる。有効寿命のこのような延長は、当該サブピクセルを構築するのに使用されるOLED材料の輝度効率及び/又は経時輝度安定性が低い場合であっても実現可能である。
【0013】
本発明は、ほとんどのOLEDデバイス構成に採用することができる。これらには、単一アノードと単一カソードを含む非常に簡素な構造から、より一層複雑なデバイス、例えば、複数のアノードとカソードを直交配列させてピクセルを形成してなる単純マトリックス式表示装置や、各ピクセルを、例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立制御する、アクティブマトリックス式表示装置が含まれる。図1は、ピクセル12を配列したフルカラーOLED表示装置10の一部を示す略図である。各ピクセル12は、従来技術において知られているようにサブピクセル14を有する。サブピクセル14には、それぞれ赤色、緑色及び青色の各発光サブピクセルを表わす標識R、G及びBが付されている。
【0014】
図2を参照する。表示装置の赤色、緑色及び青色の各サブピクセルを構成するのに使用される最適な材料セットは、本発明の一態様によると、設計される表示装置の目標白色点及び輝度;赤色、緑色及び青色の各サブピクセルのフィルファクター(fill factor);並びに最終表示装置構成内のサブピクセルの光透過性を考慮することによって決定される。さらに、発光材料の輝度効率、発光材料の経時輝度安定性及び発光材料の色度座標をはじめとするサブピクセルの構築に使用されるのに利用できるOLED材料の特性を考慮する。
【0015】
本発明による表示装置におけるサブピクセルを構成するのに使用されるOLED材料の最適な組合せを決定するため、当該表示装置の目標白色点及び輝度を選定する(16)。次に、当該表示装置におけるサブピクセルを構成するのに使用され得るOLED材料の初期の組合せを選定する(18)。当該選定されたOLED材料について、代表的な表示装置におけるサブピクセルを構成するのに使用された場合の色度座標を取得する(20)。次いで、これらの値から、各サブピクセルから必要な目標輝度を算出する(22)。当該表示装置が3色の加法混色系によって特性決定される場合には、これらの値を下記の方程式で算出することができる。
【0016】
【数1】

【0017】
上式中、Ywは、最終表示装置の、電源を入れてその最大値にした時の輝度を表わし、xw及びywは、所望の表示白色点の色度座標を表わし、Yr、Yg及びYbは、赤色、緑色及び青色の各サブピクセルをそれらの最大値ですべて駆動した時に、選ばれた目標白色点及び輝度を発生させるために当該表示装置から出力されなければならない輝度値を表わし、xr、xg及びxbは、当該表示装置のサブピクセルを構成するのに使用されることになるそれぞれ赤色、緑色及び青色の各OLED材料のx色度座標を表わし、そしてyr、yg及びybは、当該表示装置のサブピクセルを構成するのに使用されることになるそれぞれ赤色、緑色及び青色の各OLED材料のy色度座標を表わす。
【0018】
次いで、表示装置の各サブピクセルについて、光透過係数を決定する(24)。この光透過係数は、各サブピクセルの輝度のうち当該表示装置が放出することとなる比率を示す。光透過係数には、当該表示装置構造内の偏光子その他の層において起こる吸収や、当該表示装置構造内の異なる光学層間の界面で起こる反射といったような因子が含まれ得る。次いで、先に算出した輝度値にこの比率の逆数を掛け算して、望ましくない吸収が起こる前の各サブピクセルの目標輝度を決定することにより、カラーサブピクセルの各々について輝度値を計算する(26)。
【0019】
次に、各サブピクセルについてフィルファクターを選定する(28)。このフィルファクターは、全ピクセル面積のうち単一色の光を放出することとなる比率、すなわち、サブピクセルの発光面積を全ピクセル面積で割り算した値である。次いで、26で決定された輝度値にこのフィルファクターの逆数を掛け算することにより、各カラーサブピクセルについて必要な表面輝度値を算出する(30)。
【0020】
次に、各サブピクセルを構築するのに使用されるOLED材料について、出力輝度を入力電流密度に対して関係付ける特性曲線(図4参照)を取得する(32)。ほとんどのOLED材料について、この特性曲線は一次関数となり、電流密度を輝度の関数として計算することが可能である。これらの関数は下記の式で表わすことができる。
I=(L−b)/a (4)
上式中、Iは各サブピクセルを駆動するのに要する電流密度を表わし、Lは先に30で算出した表面輝度を表わし、そしてaとbはOLED材料毎に異なる定数である。次いで、これらの関数を使用して、選ばれた目標白色点及び輝度を表示するため各サブピクセルを駆動するのに要する目標電流密度を算出する(34)。
【0021】
次に、各サブピクセルを構築するのに使用される材料について、電流密度を各OLED材料の経時輝度安定性に対して関係付ける特性曲線(図5参照)を取得する(36)。例えば、下記の式:
T=cId (5)
の冪関数を使用して、サブピクセルの初期輝度が半減するまでの時間を推定することができる。上式中、Tは時間であり、そしてcとdは各OLED材料毎に異なる定数である。これらの特性曲線は、当該表示装置を製造するのに用いられる方法を使用して作られた試験ピクセルからの光出力を測定することによって実験的に決定される。次いで、これらの特性関数を使用して、当該表示装置内の各サブピクセルの寿命を算出する(38)。
【0022】
次に、サブピクセル表示寿命の最短時間から選択することにより、当該表示装置の有効寿命を決定する(40)。すなわち、当該表示装置を構成するサブピクセルのいずれかが最終用途の要件を満たすことができない場合には当該表示装置は最終用途の要件を満たすことができないこととなるため、当該表示装置の有効寿命は当該サブピクセルの寿命の最も短いものと等しくなる。上記のプロセスをOLED材料の組合せの複数について繰り返して(50)、当該表示装置について最適な寿命を有する材料セットを選択する(52)。
【0023】
以下の工程42〜46は任意である。次いで、一組の最適CIE座標を選択する(42)。この最適CIE座標セットは、最終表示装置について要件を満たす、又はこれを上回る、いずれのサブピクセルセットについてのCIE座標であってもよい。特に有用な色度座標セットの一つは、Comite' Consultatif Internationale des Radiocommunications Recommendation 709においてStudio及びInternationale Programme ExchangeについてのHDTV Standardと題して発表されている座標である。
【0024】
20で取得した色度座標及び16で選択した表示の目標白色点を適用することにより、色域の有用性を代表する値を算出することができる。例えば、関数:
【0025】
【数2】

【0026】
を使用して色域の有用性を算出することができる(44)。上式中、dr-gopt、dg-bopt、db-roptは、42で選ばれた最適な赤色-緑色、緑色-青色、青色-赤色の原色セットのCIE座標間のユークリッド距離であり、dr-wopt、dg-wopt、db-woptは、最適な赤色、緑色及び青色の各原色のCIE座標と、選定された白色点のCIE座標との間のユークリッド距離であり、dr-g、dg-b、db-rは、赤色、緑色及び青色の各発光材料の赤-緑、緑-青及び青-赤の各CIE座標間のユークリッド距離であり、dr-w、dg-w、dg-bは、赤色、緑色、青色の各発光材料のCIE座標と、選定された表示白色点のCIE座標との間のユークリッド距離であり、a, b, c, d, e, f, h及びjはすべて比例按分定数であり、そしてg, i及びkは定数であって、白色点に近い単一原色の選択を妨害するため通常は1より大きい。
【0027】
次に、最適化基準を算出することができる(46)。この基準は、先に40で決定した表示寿命を、44で算出した色域有用性と結び付けるものである。例えば、下式の関数:
C=aG+bS (7)
を特定することができる。上式中、Cは最適化基準であり、a及びbは定数であり、Gは先に44で決定した色域有用性であり、そしてSは40で算出した表示装置寿命である。当該表示装置の有効寿命又は色域のみを最適化したい場合には、定数a及びbを0及び1又は1及び0に設定することにより、これらの基準の一方のみが最終結果に寄与するように示すことができる点に留意されたい。
【0028】
この最適化基準が算出された後、可能なすべての組合せのOLED材料について上記計算を実行したかどうかについて決定を行う(48)。この計算が、利用可能なすべての組合せのOLED材料について実行されていない場合には、次の組合せのOLED材料を選択し(50)、そしてこの新規の組合せについて、算出22、26、30、34、38、40、44及び46を繰り返す。可能なすべての組合せについて上記計算が完了した場合には、46で最高基準値が算出された材料の組合せを、OLED材料の最良の組合せとして選択し(52)、これからフルカラーOLED表示装置のサブピクセルを構築する。
【0029】
本発明を成功裏に実施することができる有機層の構成はいくつかある。典型的な従来構造は、図3に示したように、基板60、アノード層62、正孔注入層64、正孔輸送層66、発光層68、電子輸送層70及びカソード層72を含む。これらの層については、以下に詳述する。別法として基板をカソードに隣接するように配置できること、また基板が実際にアノード又はカソードを構成し得ることに、留意されたい。アノードとカソードの間の有機層を、便宜上、有機発光層と称する。有機発光層の全体厚は500nm未満であることが好ましい。
【0030】
本発明のOLEDデバイスは、カソード又はアノードのいずれが接触していてもよい支持基板60の上に設けられることが典型的である。基板に接している電極を、便宜上、底部電極と称する。底部電極をアノードにすることが慣例的であるが、本発明はそのような構成に限定されるものではない。基板は、意図される発光方向に依存して、透光性又は不透明のいずれかであることができる。基板を介してEL発光を観察する場合には透光性が望まれる。このような場合、透明なガラス又はプラスチックが通常用いられる。EL発光を上部電極を介して観察する用途の場合には、底部支持体の透過性は問題とならないため、透光性、吸光性又は光反射性のいずれであってもよい。この場合の用途向け支持体には、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミックス及び回路基板材料が含まれるが、これらに限定はされない。もちろん、このようなデバイス構成には、透光性の上部電極を提供する必要はある。
【0031】
EL発光をアノード62を介して観察する場合には、当該アノードは当該発光に対して透明又は実質的に透明であることが必要である。本発明に用いられる一般的な透明アノード材料はインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)及び酸化錫であるが、例示としてアルミニウム又はインジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウムインジウム酸化物及びニッケルタングステン酸化物をはじめとする他の金属酸化物でも使用することができる。これらの酸化物の他、窒化ガリウムのような金属窒化物、セレン化亜鉛のような金属セレン化物、及び硫化亜鉛のような金属硫化物をアノードとして使用することもできる。EL発光をカソード電極のみを介して観察する用途の場合には、アノードの透過性は問題とならず、透明、不透明又は反射性を問わずいずれの導電性材料でも使用することができる。このような用途向けの導体の例として、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム及び白金が挙げられるが、これらに限定はされない。典型的なアノード材料は、透過性であってもそうでなくても、4.1 eV以上の仕事関数を有する。望ましいアノード材料は、一般に、蒸発法、スパッタ法、化学的気相成長(CVD)法又は電気化学法のような適当な手段のいずれかによって付着される。アノードは、周知のフォトリソグラフ法によってパターン化することもできる。
【0032】
アノード60と正孔輸送層66との間に正孔注入層64を設けることがしばしば有用となる。正孔注入性材料は、後続の有機層のフィルム形成性を改良し、かつ、正孔輸送層への正孔注入を促進するのに役立つことができる。正孔注入層に用いるのに好適な材料として、米国特許第4720432号明細書に記載されているポルフィリン系化合物、及び米国特許第6208075号明細書に記載されているプラズマ蒸着フルオロカーボンポリマーが挙げられる。有機ELデバイスに有用であることが報告されている別の代わりの正孔注入性材料が、欧州特許出願公開第0891121号及び同第1029909号明細書に記載されている。
【0033】
正孔輸送層66は、芳香族第三アミンのような正孔輸送性化合物を少なくとも一種含有する。芳香族第三アミン類は、少なくとも一つが芳香環の員である炭素原子にのみ結合されている3価窒素原子を少なくとも1個含有する化合物であると理解されている。一態様として、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えば、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン又は高分子アリールアミン基であることができる。単量体トリアリールアミンの例がKlupfelらの米国特許第3180730号明細書に記載されている。Brantleyらの米国特許第3567450号及び同第3658520号明細書には、1個以上の活性水素含有基を含み、かつ/又は、1個以上のビニル基で置換されている、他の適当なトリアリールアミンが開示されている。
【0034】
より好ましい種類の芳香族第三アミンは、米国特許第4720432号及び同第5061569号に記載されているような芳香族第三アミン部分を2個以上含有するものである。正孔輸送層は、芳香族第三アミン化合物の単体又は混合物で形成することができる。以下、有用な芳香族第三アミンを例示する。
【0035】
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[4(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラ-1-ナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラ-2-ナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4”-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-ターフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-ターフェニル
4,4’-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(8-フルオルアンテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’-テトラ(2-ナフチル)-4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル
4,4’-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4’-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
【0036】
別の種類の有用な正孔輸送性材料として、欧州特許第1009041号に記載されているような多環式芳香族化合物が挙げられる。さらに、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン及びPEDOT/PSSとも呼ばれているポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)のようなコポリマー、といった高分子正孔輸送性材料を使用することもできる。
【0037】
米国特許第4769292号及び同第5935721号に詳述されているように、有機EL要素の発光層(LEL)68は発光材料又は蛍光材料を含み、その領域において電子-正孔対が再結合する結果として電場発光が生じる。発光層は、単一材料で構成することもできるが、より一般的には、ホスト材料に単一又は複数種のゲスト化合物をドーピングしてなり、そこで主として当該ドーパントから発光が生じ、その発光色にも制限はない。発光層に含まれるホスト材料は、後述する電子輸送性材料、上述した正孔輸送性材料、又は正孔-電子再結合を支援する別の材料もしくはその組合せ、であることができる。ドーパントは、通常は高蛍光性色素の中から選ばれるが、リン光性化合物、例えば、国際公開第98/55561号、同第00/18851号、同第00/57676号及び同第00/70655号に記載されているような遷移金属錯体も有用である。ドーパントは、ホスト材料中、0.01〜10質量%の範囲内で塗被されることが典型的である。ホスト材料として、ポリフルオレンやポリビニルアリーレン(例、ポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV)のような高分子材料を使用することもできる。この場合、高分子ホスト中に低分子量ドーパントを分子レベルで分散させること、又はホストポリマー中に二次成分を共重合させることによりドーパントを付加すること、が可能である。
【0038】
ドーパントとしての色素を選定するための重要な関係は、当該分子の最高被占軌道と最低空軌道との間のエネルギー差として定義されるバンドギャップポテンシャルの対比である。ホストからドーパント分子へのエネルギー伝達の効率化を図るためには、当該ドーパントのバンドギャップがホスト材料のそれよりも小さいことが必須条件となる。
【0039】
有用性が知られているホスト及び発光性分子として、米国特許第4769292号、同第5141671号、同第5150006号、同第5151629号、同第5405709号、同第5484922号、同第5593788号、同第5645948号、同第5683823号、同第5755999号、同第5928802号、同第5935720号、同第5935721号及び同第6020078号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0040】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)及び類似の誘導体の金属錯体は、電場発光を支援することができる有用なホスト化合物の一種である。以下、有用なキレート化オキシノイド系化合物の例を示す。
【0041】
CO-1:アルミニウムトリスオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)〕
CO-2:マグネシウムビスオキシン〔別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)〕
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム〕
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)〔別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)〕
CO-7:リチウムオキシン〔別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)〕
CO-8:ガリウムオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)〕
CO-9:ジルコニウムオキシン〔別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)〕
【0042】
有用なホスト材料の別の種類として、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン及びその誘導体のようなアントラセン誘導体、米国特許第5121029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、並びに2,2’,2”-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]のようなベンズアゾール誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0043】
有用な蛍光性ドーパントとして、例えば、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン及びキナクリドンの各誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0044】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機EL要素の電子輸送層70を形成するのに用いられる好適な薄膜形成性材料は、オキシン(通称8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリン)自体のキレートをはじめとする、金属キレート化オキシノイド系化合物である。当該化合物は、電子の注入・輸送を助長し、高い性能レベルを発揮すると共に、薄膜加工が容易である。オキシノイド系化合物の例は既述した通り。
【0045】
他の電子輸送性材料として、米国特許第4356429号明細書に記載されている各種ブタジエン誘導体、及び米国特許第4539507号明細書に記載されている各種複素環式蛍光増白剤が挙げられる。ベンズアゾール及びトリアジンもまた有用な電子輸送性材料である。
【0046】
場合によっては、必要に応じて、層70及び層68を、発光と電子輸送の両方を支援する機能を発揮する単一層にすることが可能である。これらの層は、低分子型OLEDシステム及び高分子型OLEDシステムのどちらにおいても一体化することが可能である。例えば、高分子型システムの場合、PEDOT-PSSのような正孔輸送層をPPVのような高分子発光層との組合せで採用することが通例である。このシステムにおいては、PPVが発光と電子輸送の両方を支援する機能を発揮する。
【0047】
発光をアノードのみを介して観察する場合には、本発明に用いられるカソード72は、ほとんどすべての導電性材料を含んでなることができる。望ましい材料は、下部の有機層との良好な接触が確保されるよう良好なフィルム形成性を示し、低電圧での電子注入を促進し、かつ、良好な経時輝度安定性を有する。有用なカソード材料は、低仕事関数金属(<4.0eV)又は合金を含むことが多い。好適なカソード材料の1種に、米国特許第4885221号明細書に記載されているMg:Ag合金(銀含有率1〜20%)を含むものがある。別の好適な種類のカソード材料として、有機層(例、ETL)に接している薄い電子注入層(EIL)に、これより厚い導電性金属層をキャップしてなる二層形が挙げられる。この場合、EILは低仕事関数の金属又は金属塩を含むことが好ましく、その場合には、当該より厚いキャップ層は低仕事関数を有する必要はない。このようなカソードの一つに、米国特許第5677572号明細書に記載されている、薄いLiF層にこれより厚いAl層を載せてなるものがある。その他の有用なカソード材料のセットとして、米国特許第5059861号、同第5059862号及び同第6140763号明細書に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0048】
カソードを介して発光を観察する場合には、当該カソードは透明又はほぼ透明でなければならない。このような用途の場合、金属が薄くなければならないか、又は透明導電性酸化物もしくはこれら材料の組合せを使用しなければならない。透光性カソードについては、米国特許第4885211号、米国特許第5247190号、JP3,234,963、米国特許第5703436号、米国特許第5608287号、米国特許第5837391号、米国特許第5677572号、米国特許第5776622号、米国特許第5776623号、米国特許第5714838号、米国特許第5969474号、米国特許第5739545号、米国特許第5981306号、米国特許第6137223号、米国特許第6140763号、米国特許第6172459号、欧州特許第1076368号及び米国特許第6278236号に詳しく記載されている。カソード材料は、蒸発法、スパッタ法又は化学的気相成長法により付着させることが典型的である。必要な場合には、例えば、マスク介在蒸着法、米国特許第5276380号及び欧州特許出願公開第0732868号明細書に記載の一体型シャドーマスク法、レーザーアブレーション法及び選択的化学的気相成長法をはじめとする多くの周知の方法により、パターンを形成させてもよい。
【0049】
上述した有機材料は、昇華法のような蒸気相法により適宜付着されるが、流体から、例えば、フィルム形成性を高める任意のバインダーと共に溶剤から、付着させてもよい。当該材料がポリマーである場合には、溶剤付着法が好適であるが、スパッタ法やドナーシートからの感熱転写法のような別の方法を利用することもできる。昇華法により付着すべき材料は、例えば、米国特許第6237529号明細書に記載されているように、タンタル材料を含むことが多い昇華体「ボート」から気化させてもよいし、当該材料をまずドナーシート上にコーティングし、その後これを基板に接近させて昇華させてもよい。複数材料の混合物を含む層は、独立した複数の昇華体ボートを利用してもよいし、予め混合した後単一のボート又はドナーシートからコーティングしてもよい。パターン化付着は、シャドーマスク、一体型シャドーマスク(米国特許第5294870号明細書)、ドナーシートからの空間画定型感熱色素転写(米国特許第5851709号及び同第6066357号明細書)及びインクジェット法(米国特許第6066357号明細書)を利用して達成することができる。
【0050】
ほとんどのOLEDデバイスは湿分もしくは酸素又はこれら双方に対して感受性を示すため、窒素又はアルゴンのような不活性雰囲気において、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、クレー、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、スルフェート、金属ハロゲン化物及び金属過塩素酸塩のような乾燥剤と一緒に、封止されることが一般的である。封入法及び乾燥法として、米国特許第6226890号明細書に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定はされない。さらに、当該技術分野では、封入用として、SiOx、テフロン(登録商標)及び無機/高分子交互層のようなバリア層が知られている。
【0051】
本発明によるOLEDデバイスは、所望によりその特性を高めるため、周知の各種光学効果を採用することができる。これには、透光性を極大化するための層厚の最適化、誘電体ミラー構造の付与、反射性電極の吸光性電極への交換、表示装置への遮光又は反射防止コーティングの付与、表示装置への偏光媒体の付与、又は表示装置への着色、中性濃度もしくは色変換フィルタの付与が包含される。具体的には、フィルタ、偏光子及び遮光又は反射防止コーティングを、カバーの上に、又はカバーの一部として、設けることができる。
【0052】
上述した装置構成に加え、各有機発光層を、2002年2月15日出願のLiaoらの同時係属米国特許出願第10/077270号明細書(本明細書の一部とする)に記載されているような一連の有機堆積体として構成することもできる。
【実施例】
【0053】
本明細書に記載したシステム及び方法が従来技術とは異なることをさらに例証するため、一例を提供する。本例では、3種のカラーサブピクセルのうちのいずれかがその初期輝度の50%にまで減衰するのに要した時間を、寿命と定義するものと仮定する。本法を利用するためには、当該表示装置を構築するOLED材料の具体的輝度効率及び経時輝度安定性を確立し、かつ、表示装置の目標特性を確立することが重要である。
【0054】
本例では、表示装置に使用すべきOLED材料候補を使用して調製されたいくつかのOLED試験セルが利用可能であるものと仮定する。これらの試験セルは、可能な限り最終表示装置と同様に駆動され、また構成される。各試験セルの効率及び色度座標は、一連の異なる電流密度で試験セルを駆動して各試験セルについて輝度及び色度座標を測定することによって決定される。測定データからこれらの試験セルの平均性能を計算して、赤色、緑色及び青色の各サブピクセルの輝度効率を決定する。次いで、このデータに方程式を当てはめて、各材料について効率曲線を決定する。OLED材料の一系統例について、試料データセット及び線形適合を図4に示す。本図に示した線形適合は、下記表1に示した輝度効率の傾き及び偏りを使用して記述することができる。
【0055】
次に、各OLED材料について試験セルのサブセットを選び、それらを単一の電流密度で駆動させながら当該材料の輝度の経時減衰を測定することによって、各OLED材料の経時輝度安定性を測定することができる。もう一度、同一のOLED材料を用いて調製し、可能な限り最終表示装置と同様に駆動し、構成した試験セルの一群から、平均性能を決定することができる。同一の系統例のOLED材料について、試料データセット及びこのデータに当てはめた冪関数を図5に示す。経時輝度安定性の特性を決めるこれらの方程式の乗法及び指数因数を下記表1に示す。
【0056】
当該表示装置及び材料の残りの特性を、同様に実験的に決定した。表1に、最終表示装置を構築するのに使用される赤色、緑色及び青色のサブピクセルの重要な特性を記載する。この表に示したように、各サブピクセルについて色度座標、輝度効率特性、経時輝度安定性及び光透過率が含まれている。
【0057】
本例を実施するためには、表示装置の赤色、緑色又は青色のサブピクセルの少なくとも1種を構築するために使用することができるOLED材料候補を数種類用意することが必要である。表2に、さらに3種の仮の青色OLED材料の特性を示す。本例を単純化するため、青色OLED材料#2を、その輝度効率が低いことを除き、青色OLED材料#1と同等になるようにした。最後に、青色OLED材料#4の特性を、青色OLED材料#2のより低い輝度効率を有し、かつ、青色OLED材料#3のより低い経時輝度安定性を有するようにした。しかしながら、青色OLED材料#4には、その色度座標が最適青色に若干近いため、最終表示装置構成において発生すべき所要輝度が低くて済むという別の利点がある。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
本例の表示特性を下記表3に示す。表3に、表示白色点の輝度及び色度座標、並びに目標フィルファクター(すなわち、最終表示装置におけるピクセル面積に対する各色光を放出する部分の比率)を記載する。本例では、各サブピクセルの面積が同一であると仮定しているが、面積の異なるサブピクセルを有する表示装置を開発してもよいことに留意されたい。
【0061】
【表3】

【0062】
本例をさらに単純化するため、方程式(7)における定数a及びbを、それぞれ0と1にする。すなわち、当該表示装置の最終色域については考慮せず、当該表示装置の寿命の最適化のみを求めるものとする。このように単純化した例では、本最適化を実施するために方程式(6)又は(7)に示した計算を実行する必要はない。
【0063】
表1、表2及び表3のデータを採用し、そして上述した本発明の方法を使用することにより、表1に示した赤色及び緑色OLED材料を表1に示した青色OLED材料#1と組み合わせて構築される表示装置における各サブピクセルの寿命を決定することができる。この計算によると、寿命が最も短いサブピクセルは青色サブピクセルであって、その寿命が約3900時間であることが示される。青色OLED材料#1の代わりに、輝度効率がより低い青色OLED材料#2を使用して同じ計算を実行すると、当該青色サブピクセルの寿命が縮まってわずか3539時間になる。再度、青色OLED材料#2の代わりに、輝度効率は青色OLED材料#1と同等であるが、経時輝度安定性がより低い青色OLED材料#3を使用して同じ計算を実行すると、当該青色サブピクセルの寿命は3672時間にしかならない。最後に、青色OLED材料#3の代わりに、輝度効率が青色OLED材料#2より低く、また経時輝度安定性が青色OLED材料#3より低いが、青色の色度座標の純度がより高い青色OLED材料#4を使用して同じ計算を実行すると、当該青色サブピクセルの寿命は3974時間になる。これらの各計算において、青色サブピクセルの寿命は、3種のサブピクセルの中で常に最短である。したがって、本例の範囲内では、当該表示装置の有効寿命は当該青色サブピクセルの寿命によって制限される。本例では、青色OLED材料#4が好適な青色OLED材料として選択され、そして上記の表示装置に使用した場合には、装置寿命が3974時間となるであろう。本例では検討していないが、青色OLED材料#4には、青原色の純度がより高いため、他のいずれの青色OLED材料よりも表示の色域が向上するという追加の利点があることに留意する価値がある。
【0064】
表示装置を設計する際のOLED材料の選択に対する従来の方法は、効率が最も高い材料セットを選択する方法である。本例の範囲内でこの従来基準を採用したならば、青色OLED材料#1又は青色OLED材料#3のいずれかを選択することとなり、その結果表示装置の寿命はそれぞれ3900時間及び3672時間となるであろう。この従来法によれば、本発明の方法に比べ色域の小さい表示装置が得られることにもなろう。
【0065】
表示装置を設計する際のOLED材料の選択に対する別の従来法は、経時輝度安定性が最も高い材料セットを選択する方法である。本例の範囲内でこの従来基準を採用したならば、青色OLED材料#1又は青色OLED材料#2のいずれかを選択することとなり、その結果表示装置の寿命はそれぞれ3900時間及び3579時間となるであろう。この従来法によれば、本発明の方法に比べ色域の小さい表示装置が得られることにもなろう。
【0066】
このように、本発明の方法によると、材料選択に対する従来法と比較して、表示装置の有効寿命と表示の色域との間のトレードオフが改良されることが容易にわかる。
【符号の説明】
【0067】
10 OLED表示装置
12 ピクセル
14 サブピクセル
16 選択工程
18 選択工程
20 取得工程
22 算出工程
24 測定工程
26 算出工程
28 選択工程
30 算出工程
32 取得工程
34 算出工程
36 取得工程
38 算出工程
40 測定工程
42 選択工程
44 算出工程
46 算出工程
48 決定工程
50 選択工程
52 選択工程
60 基板
62 アノード層
64 正孔注入層
66 正孔輸送層
68 発光層
70 電子輸送層
72 カソード層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)色度座標、経時輝度安定性及び輝度効率が異なる複数種のOLED材料を同定し、
b)所定の色度座標及び輝度を有する白色点を含むピクセルを得るために使用される複数種のOLED材料からなる組合せの複数について表示寿命を概算し、そして
c)該寿命が最長となる組合せを選択する
工程を含む、改良されたカラーOLED表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−18660(P2011−18660A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241014(P2010−241014)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【分割の表示】特願2003−352533(P2003−352533)の分割
【原出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】