説明

封口装置、及び、ハニカム構造体の製造方法

【課題】封口長さの均一性に優れた封口装置及びハニカムフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】 封口装置100は、凹部20d及び凹部20dの内面に開口する連通路10eを有する本体部10と、凹部20dを覆うように本体部10に固定された弾性板20と、本体部10に固定された加振機140と、を備える。加振機140は、回転軸142を有するモータ141と、回転軸142に連結された偏心錘147と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封口装置、及び、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulatefilter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。そして、特許文献1には、このようなハニカムフィルタ構造体を製造する方法が開示されている。特許文献1では、シリンダ7内に配置したハニカム構造体1の一端に対して、ピストン8により封口材を押圧することにより、ハニカム構造体の貫通孔の端部に封口材を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、各貫通孔における封口材の封口長さの均一性が十分でなかった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、封口長さの均一性に優れた封口装置及びハニカムフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る封口装置は、凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部と、凹部を覆うように前記本体部に配置された弾性板と、前記本体部に固定された加振機と、を備える封口装置である。そして、加振機は、回転軸を有するモータと、回転軸に連結された偏心錘と、を有する。
【0007】
本発明によれば、次の手順によりハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給することが出来る。まず、連通路を介して本体部の凹部内の流体を排出することにより弾性板を本体部の凹部に沿うように変形させ、弾性板の凹部を形成する。次に、弾性板の凹部内に封口材を供給する。続いて、偏心錘を有する加振機により封口材に振動を与え、これによって、封口材を凹部内の全域にわたって広がらせることができる。続いて、凹部と対向する位置に、ハニカム構造体の一端面を配置する。続いて、連通路を介して、本体部と弾性板との間に流体を供給することにより弾性板をハニカム構造体の一端面に向かって移動させる。これにより、弾性板の凹部内の封口材がハニカム構造体の貫通孔内に供給される。
【0008】
その後、連通路を介して本体部と弾性板との間にさらに流体を供給することにより、弾性板を本体部の凹部とは逆方向に凸状に変形させることもできる。これにより、本体部から容易にハニカム構造体を引き離すことが出来る。
【0009】
ここで、弾性板は、ゴム板であることが好ましい。これにより、弾性板の変形が容易に行なえる。
【0010】
また、弾性板上に配置され、複数の貫通孔を有するマスクをさらに備えることが好ましい。
【0011】
これにより、ハニカム構造体の所望の貫通孔群に対して封口材を供給することが容易となる。
【0012】
本発明に係る端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法は、端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法であって、
凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部に対して、前記凹部を覆うように配置された弾性板を準備する工程、
前記連通路を介して前記凹部内の流体を排出することにより前記弾性板の凹部を形成する工程、
前記弾性板の凹部内に封口材を供給する工程、
前記弾性板の凹部内の封口材に振動を与える工程、
前記凹部と対向する位置に、複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面を配置する工程、及び
前記振動を与える工程の後に、前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間に流体を供給することにより、前記ハニカム構造体の一端面に向かって前記弾性板を移動させる工程を有する。
そして、前記振動を与える工程では、偏心錘が連結された回転軸を回転させることにより前記封口材に振動を与える。
【0013】
これによれば、偏心錘の回転に伴う振動によって、封口材を凹部内の全域にわたって広がらせると共に、厚みの均一性を高めることができる。
【0014】
ここで、前記弾性板の移動工程の後に、
前記弾性板を、前記一端面に向かって突出させることにより前記弾性板と前記一端面とを引き離す工程をさらに備えることが好ましい。
【0015】
これによれば、封口剤の充填によって板とハニカム構造体の一端面とが近接した状態となった後、板の一部が一端面に向かって突出するので、板からハニカム構造体を引き離すことが容易となる。したがって、生産効率に優れる。
【0016】
また、前記弾性板の移動工程では、前記一端面と前記弾性板との間にマスクを介在させ、前記マスクは、前記ハニカム構造体の複数の貫通孔の内の一部のみと連通する貫通孔を有することも好ましい、これによれば、一部の貫通孔の一端を封口することが容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封口長さの均一性に優れた封口装置等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る封口装置の概略断面図である。
【図2】図2は、図1の封口装置のII−II矢視図である。
【図3】図3の(a)は、図1の封口装置で用いるハニカム構造体の斜視図、図3の(b)は、図3の(a)の部分拡大図である。
【図4】図4の(a)は、図1のマスクの斜視図、図4の(b)は、図4の(a)の部分拡大図である。
【図5】図5の(a)は、図1の封口装置の動作を説明する部分断面図であり、図5の(b)は、図5の(a)に続く部分断面図である。
【図6】図6の(a)は、図5の(b)に続く部分断面図であり、図6の(b)は、図6の(a)に続く部分断面図である。
【図7】図7の(a)は、図6の(b)に続く部分断面図であり、図7の(b)は、図7の(a)に続く部分断面図である。
【図8】図8の(a)は、図7の(b)に続く部分断面図であり、図8の(b)は、図7の(a)に続く部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る封口装置の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本実施形態の一例に係る封口装置100の概略断面図である。本実施形態に係る封口装置100は、主として、本体部10、弾性板20、ポンプ50、保持部80、及び、加振機140を備える。
【0021】
本体部10は、剛性材料から形成されている。剛性材料としては、ステンレス等の金属や、繊維強化プラスチック等のポリマー材料が挙げられる。本体部10の上面10aには、凹部10dが形成されている。本実施形態では、凹部10dの形状は、図1及び図2に示すように、円柱状とされている。そして、本体部10の上面10aに対して、凹部10dの側面10bが垂直、かつ、底面10cが平行とされている。凹部10dの直径は、例えば、100〜320mmとすることができる。凹部10dの深さは、例えば、0.2〜20mmとすることができる。
【0022】
弾性板20は、凹部10dの開口面を覆うように、本体部10の上面10a上に、配置されている。弾性板20は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板20としては、ゴム板が好ましい。ゴムとしては、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられる。弾性板20の厚みは特に限定されないが、例えば、0.3〜3.0mmとすることができる。
【0023】
弾性板20は、リング部材25、及び、ボルト31により本体部10に固定されている。リング部材25は、本体部10の凹部10dに対応する位置に開口25aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材25は、弾性板20における中央部(凹部10dとの対向部)が露出するように弾性板20上に配置されている。これにより、弾性板20の周辺部が、本体部10とリング部材25とにより挟まれている。リング部材25及び弾性板20には貫通孔hがそれぞれ形成され、本体部10には、これら貫通孔hに対応するねじ孔jが形成されており、ボルト31がこれらの貫通孔hを貫通して配置され、ねじ孔jにねじ込まれて固定されることにより、本体部10の上面10aにおける凹部10dのまわりの部分に、弾性板20の周辺部が密着して固定されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、リング部材25の開口25aの内径は、本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0025】
本体部10は、さらに、凹部10dの底面10cに開口する連通路10eを有している。なお、本実施形態では、連通路10eは凹部10dの底面10cに開口しているが、凹部10dの内面に開口していれば良く、例えば、凹部10dの側面10bに開口していてもよい。また、連通路10eの開口の形状や数も特に限定されない。
【0026】
連通路10eには、接続パイプ14を介してポンプ50が接続されている。
【0027】
ポンプ50は、シリンダ51、シリンダ51内に配置されたピストン53、及び、ピストン53に接続されたピストンロッド54を備える。ピストンロッド54には、ピストンロッド54を軸方向に往復移動させるモータ55が接続されている。なお、ピストンロッド54を手動で動かしてもよい。
【0028】
本実施形態では、弾性板20と、ピストン53と、の間には、本体部10、接続パイプ14、及び、シリンダ51により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、流体FLが充填されている。流体FLは、特に限定されないが、液体が好ましく、特に、スピンドルオイル等が好ましい。なお、流体FLは、空気等のガスでもよい。そして、ピストン53を移動させることにより、本体部10の凹部10d内から流体FLを排出することができ、また、凹部10d内に流体FLを供給することが出来る。
【0029】
本体部10の上には、保持部80が設けられている。保持部80は、ハニカム構造体70を保持する保持具81、及び保持具81が接続された空気圧シリンダ82を有する。
【0030】
保持具81は、ハニカム構造体70を、図1に示すように、貫通孔70aの一方側の開口面が弾性板20及び凹部10dと対向するように保持する。
【0031】
空気圧シリンダ82は、上下方向に延びるシリンダ82aと、シリンダ82a内に設けられたピストン82bとを有し、外部からの供給する圧力を調整することによりピストン82bの上下両側での圧力を調節可能となっている。そして、これにより空気圧シリンダ82は、保持具81を、ハニカム構造体70と弾性板20とが近づく方向及びこれらが互いに離れる方向にそれぞれ移動可能である。また、空気圧シリンダ82は、ピストン82bの前後のガスの供給圧力に応じて保持具81を下方に所定の力で押圧することにより、ハニカム構造体70を後述するマスク170に対して密着させることができる。さらに、空気圧シリンダ82は、ピストンの前後の圧力を開放することにより、保持具81が上下方向に自由に移動することを許可することもできる。すなわち、保持部80は、保持具81が保持したハニカム構造体70を上方向に自由に移動可能とする状態と、ハニカム構造体70を本体部10に対して固定する状態とを切替え可能である。
【0032】
本実施形態で用いる一例のハニカム構造体70は、図3の(a)に示すように、多数の貫通孔70aが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70aの断面形状は、図3の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70aは、ハニカム構造体70において、端面から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。
【0033】
また、ハニカム構造体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0034】
ハニカム構造体70の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このような、ハニカム構造体70は通常多孔質である。
【0035】
また、ハニカム構造体70は、後で焼成することにより上述のようなセラミック材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)であってもよい。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0036】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0037】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0038】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0039】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0040】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。
【0041】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0042】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0043】
マスク170は、弾性板20上におけるリング部材25の開口25a内に配置されるものである。マスク170の材料は特に限定されず、例えば、金属や樹脂が挙げられる。
【0044】
図4の(a)に、本実施形態で用いるマスク170の一例を示す。マスク170は、円形の板状部材であり、厚み方向に伸びる多数の貫通孔170aを有する。貫通孔170aの断面形状は、図4の(b)に示すように、ハニカム構造体70の貫通孔70a(図3の(b)参照)に対応する正方形である。これらの複数の貫通孔170aは、図4の(b)に示すように、千鳥配置されており、各貫通孔170aは、図3の(b)の正方配置された複数の貫通孔70aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数の貫通孔70aiのみに対向して配置される。なお、マスク170の貫通孔170aの位置決めを容易にすべく、マスク170には、オリエンテーションフラット170bが形成され、これに対応してリング部材25にもオリエンテーションフラットに対応する突起25bを設けてもよい。図1に示すように、マスク170の外径は、本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0045】
加振機140は、本体部10に固定されている。具体的には、加振機140は、モータ141を有している。モータ141は、鉛直方向に配置された回転軸142を有し、この回転軸142を回転させる。回転軸142には、偏心錘147が固定されている。
【0046】
偏心錘147は、回転軸142の軸方向から見て、回転軸142の中心と、偏心錘147の重心とが不一致となるような構造を有する。中心と重心との距離である偏心距離rは、例えば、5〜30mmとすることができる。偏心錘147の重量mは、例えば、0.5〜2kgとすることができる。また、回転軸142の回転数は、例えば、100〜400rpmとすることができる。これらのパラメータは、加振機140により発生させる加振力(mrω、ここでωは角速度)や振幅が、それぞれ、5〜20N、5〜30mmとなるように設定することが好ましい。
【0047】
さらに、加振機140は、本体部10の側面に固定された台座144、モータ141と台座144とを固定する固定具143、回転軸142におけるモータ141と偏心錘との間の部分を回転自在に支持するベアリング146、及び、ベアリング146を台座144に固定する固定具145を備えている。
【0048】
なお、モータ141は、回転軸142の回転速度を調節するためのギア等を有することができる。
【0049】
(使用方法)
つづいて、上述の封口装置100の使用方法及び、封口されたハニカム構造体の製造方法について説明する。まず、図1の状態から、予め、空気圧シリンダ82を駆動して、ハニカム構造体70を保持する保持具81上方に引き上げておくと共に、マスク170を弾性板20上から外し、本体部10に対して弾性板20が凹部10dを覆うように配置された状態とする。次に、ポンプ50のピストン53を下方に引くことにより、本体部10の凹部10dから流体FLを下方に排出させる。これにより、図5の(a)に示すように、弾性板20が変形して凹部10dの側面10b及び底面10cに密着し、これによって、弾性板20の凹部20dが形成する。
【0050】
続いて、弾性板20の凹部20d内に封口材130を供給する。
【0051】
(封口材)
封口材130は、ハニカム構造体70の貫通孔70aの端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。例えば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、好ましくは潤滑剤と、溶媒とを含むスラリーが例示できる。セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。
【0052】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。バインダの使用量は、封口材を100質量%とした時、例えば、0.1〜10質量%とすることができる。
【0053】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤の添加量は、封口材の100質量%に対して、通常、0〜10質量%であり、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0054】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、封口材を100質量%とした時、例えば、15〜40質量%とすることができる。
封口材の粘度は、好ましくは、回転粘度計による共軸二重円筒法において、23℃で5〜50Pa・sである。
【0055】
このような封口材130を凹部20d内に供給すると、通常、図5の(a)に示すように、凹部20d内において水平方向にあまり広がらず、厚みが不均一となりやすい。これは、溶媒濃度を下げ、封口材の乾燥工程を迅速に行おうとするとより一層顕在化する。このまま封口工程を行うと、封口部の長さが不均一となったり、封口不良が出やすくなったりする。
【0056】
そこで、加振機140のモータ141を駆動し、回転軸142を回転させる。回転軸142には、偏心錘147が固定されているので、回転軸142が回転すると回転軸142には振動が発生する。本実施形態では、回転軸142が鉛直に配置されているので、振動方向は水平面内方向である。この振動は、ベアリング146、固定具145、143等を介して本体部10に伝達され、弾性板20上の封口材130に伝達され、封口材130が水平方向に加振される。これにより、図5の(b)に示すように、封口材130が凹部20d内に全体に広がらせることができる。また、封口材130の表面の平坦性も高められる。
【0057】
続いて、図6の(a)に示すように、本体部10の凹部10dを覆うように弾性板20上にマスク170をセットし、次いで、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に移動させてハニカム構造体70をマスク170に接触させることにより、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70aと、マスク170の貫通孔170aとを連通させ、さらに、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に押圧し、ハニカム構造体70をマスク170及び本体部10に対して固定する。
【0058】
次いで、ポンプ50のピストンを上方に移動させることにより、連通路10eを介して凹部10dと弾性板20との間に流体FLを供給し、これによって、図6の(b)に示すように、弾性板20をマスク170に向かって移動させる。この工程は、図7の(a)に示すように、弾性板20がマスク170に接触し、弾性板20の変形が解消するまで行なうことが好ましい。
【0059】
これにより、封口材130がマスク170の貫通孔170aを介して、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に供給され、封口部70pが形成する。
【0060】
続いて、空気圧シリンダ82によるハニカム構造体70の下方向への押圧を停止してハニカム構造体70が上方に自由に移動できるようした後、ピストン53をさらに上昇させ弾性板20と本体部10との間にさらに流体FLを供給する。これにより、図7の(b)に示すように、弾性板20は、上方向に凸状に変形し、マスク170及びハニカム構造体70が上方に移動する。このとき、凸状に変形する弾性板20の周辺部はマスク170から離れるので、これにより、マスク170及びハニカム構造体70を、本体部10から容易に引き離すことが出来る。この場合、生産効率を高めることができ、封口されたハニカム構造体を低コスト化で製造することが可能となる。
【0061】
続いて、ハニカム構造体70を保持具81から外した後、天地をひっくり返したうえで再びハニカム構造体70を保持具81に保持する。次いで、マスク170と貫通孔170aの配置が正反対の千鳥配置とされたマスク170’を用いて、同様の操作を行なう。これにより、図8の(a)に示すように、残りの貫通孔70aの他端側が封口材で封口され、封口部70pが形成する。続いて、上述と同様にして弾性板20を上に凸状に変形させることにより、マスク170’及びハニカム構造体70を容易に本体部10及び弾性板20から引き離すことが出来る。
【0062】
そしてこのようにして、貫通孔70aの両端が封口されたハニカム構造体70を乾燥、焼成等することにより、ハニカムフィルタを製造することが出来る。
【0063】
本発明によれば、偏心錘147を有する加振機140による振動を弾性板20上の封口材130に付与しているので、封口材130を凹部20d内に全体に行き渡らせることが可能である。これにより、封口部70pの封口長さの均一性を高めることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、様々な変形態様が可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、弾性板20が、リング部材25、及び、ボルト31により、本体部10に対して固定されているが、固定方法は特に限定されない。例えば、弾性板20が接着剤によって、本体部10の上面10aに固定されていてもよい。また、封口装置100が、弾性板20を容易に交換可能な構造でもよい。
【0066】
また、上述では、連通路10eが、本体部10及び接続パイプ14により形成されているが、接続パイプ14を有さずに本体部10に直接ポンプ50が接続されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ポンプ50として、シリンダ51、ピストン53、及び、ピストンロッド54を備えたピストンポンプを採用しているが、凹部10d内への流体の供給及び排出を制御できるものであれば他のものでもよい。例えば、圧力源と接続され、圧力源からの流体の供給を制御可能なバルブ、及び、真空ポンプ等の真空源と接続され、真空源への流体の排出を制御可能なバルブを有するものでもよい。
【0068】
また、凹部10dの形状は特に限定されず、封口対象となるハニカム構造体70にあわせて適宜設定できる。
例えば、凹部10dを上から見た平面形状は、円形以外に楕円形、矩形、正方形等とすることもできる。この場合、矩形や正方形の場合の大きさは、例えば、一辺50〜300mmとすることができる。また、本体部10の上面10aに対して、側面10bが垂直、かつ、底面10cが平行である必要は無く、例えば、斜面であったり曲面であってもよい。また、底面10c上に、凹凸を有しても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、保持部80は空気圧シリンダ82を備えるがこれに限られず、たとえば、歯車機構等の種々の機構に代替することが出来る。
【0070】
また、保持部80は必ずしも必須ではない。例えば、封口材を供給するときには錘をハニカム構造体70の上に載せることによりハニカム構造体を本体部10に対して固定し、ハニカム構造体70を本体部から離れさせる際には、錘を除去してハニカム構造体を移動可能としてもよい。また、ハニカム構造体がある程度の重量を有する場合には、自重によって固定されるので特段の固定手段を有さない態様も可能である。
【0071】
また、加振機140の構成も、モータ141の回転軸142に偏心錘147が連結している物であれば特に限定されない。例えば、上記実施形態では、回転軸142が鉛直方向に配置されているが、回転軸が水平方向や、鉛直方向及び水平方向に対して斜めに配置されていても実施は可能である。また、加振機140を、本体部10に対して複数配置してもよい。例えば、回転軸142を水平に配置する場合には、二つの回転軸142を直交するように配置してもよい。また、本体部10への固定方法も特に限定されず、上記実施例では、モータ141とは別に設けられたベアリング146を利用して、回転軸142を本体部10に固定しているが、回転軸142の長さが短い場合等には、ベアリング146が無くても実施可能である。
【0072】
ハニカム構造体70の形状や構造も上述に限定されない。例えば、ハニカム構造体70の外形形状も円柱でなくてもよく、例えば、四角柱等の角柱でもよい。また、ハニカム構造体70の貫通孔70aの断面形状は、正方形でなくてもよく、例えば、長方形、三角形、多角形、円形等でも構わない。さらに、貫通孔70aの配置も、正方形配置でなくてもよく、例えば、3角配置、千鳥配置等でも構わない。
【0073】
また、上記実施形態では、多数の貫通孔を有する板状のマスク170を採用しているが、マスクにより遮蔽する場所も任意である。さらに、このようなマスク170を用いなくても実施可能である。例えば、封口処理の前に、ハニカム構造体70の一部の貫通孔70a内に加熱すると分解する材料により栓をしておき、封口後に栓を熱分解等すればよい。本発明では、マスクを使用しない場合であっても、封口処理後に凸状に変形する弾性板20によって、ハニカム構造体70を本体部10や弾性板20から容易に引き離すことが出来るという効果がある。
【0074】
また、上記実施形態では、本体部10の底面10cが水平であり、凹部10dの開口が上方に向けられているが、これに限られず、例えば、底面10cが水平面に対して傾斜し凹部10dの開口が斜め上方に向けられていても良いし、底面10cが垂直面であり凹部10dの開口が水平方向に向けられていてもよい。このように底面10cが傾斜面あるいは垂直面となった封口装置は、特に、粘度の高い、例えば、10〜50Pa・s程度の封口材を用いる場合に好適であり、偏芯錘の回転に伴う力に加えて、重力によっても封口材のペーストを凹部10d内に拡げる効果を与えることができる。
このような場合でも、回転軸142は、底面10cに対して垂直でもよく、傾斜していてもよく、底面と平行に配置されていてもよい。また、回転軸が底面と平行である場合には、二つの回転軸を直交するように配置してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…本体部、10e…連通路、20…弾性板、30…凹部、50…ポンプ、70…ハニカム構造体、80…保持部、100…封口装置、140…加振機、142…回転軸、147…偏心錘、170…マスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部と、
前記凹部を覆うように前記本体部に設けられた弾性板と、
前記本体部に固定された加振機と、を備え、
前記加振機は、回転軸を有するモータと、前記回転軸に連結された偏心錘と、を有する封口装置。
【請求項2】
前記弾性板は、ゴム板である請求項1記載の封口装置。
【請求項3】
凹部及び前記凹部の内面に開口する連通路を有する本体部に対して、前記凹部を覆うように配置された弾性板を準備する工程と、
前記連通路を介して前記凹部内の流体を排出することにより前記弾性板の凹部を形成する工程と、
前記弾性板の凹部内に封口材を供給する工程と、
前記弾性板の凹部内の封口材に振動を与える工程と、
前記凹部と対向する位置に、複数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面を配置する工程と、
前記振動を与える工程の後に、前記連通路を介して前記本体部と前記弾性板との間に流体を供給することにより、前記ハニカム構造体の一端面に向かって前記弾性板を移動させる工程と、
を備え、
前記振動を与える工程では、偏心錘が連結された回転軸を回転させることにより前記封口材に振動を与える、端部が封口された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184159(P2012−184159A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31965(P2012−31965)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】