説明

封止用材料をフィルタ装置に導入するための方法及び装置

本発明は、フィルタ装置に封止用材料を導入するための方法であって、封止用材料を供給するために封止用キャップを取り付け、この封止用キャップを介して、封止用チャンバからフィルタ装置の端部へ封止用材料を分散させる方法に関するものである。本発明によれば、封止用材料は、封止用チャンバから各封止用キャップの回転対称で且つ一端だけが固定された突起部へ送られ、この突起部から、封止用キャップの対応するスロットを介して筐体内へ入る。さらに、本発明は、フィルタ装置に封止用材料を導入するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用材料をフィルタ装置、好ましくは透析フィルタに導入するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透析フィルタなどのフィルタ装置は、2つの流れ空間を有し、これら空間のうちの第1空間は、中空糸の束からなる繊維の管状通路により形成され、第2空間は、前記中空糸の束を封入する筐体により形成され、前記繊維の端部領域は、封止後は封止用材料中に密閉されている。通常は、このために、まず中空糸の束を透析フィルタの筐体へ挿入し、前記中空糸の束の端部を、適切な方法によって封止用材料によって密閉する。
【0003】
封止用材料を導入するためのこのような方法は、特許文献1及び特許文献2により既に知られている。ここでは、フィルタ装置の筐体に特別な封止用キャップが設けられており、この封止用キャップを通して封止用材料が導入される。封止用材料のためのこの導入口は、径方向に設けられていても軸方向に設けられていてもよい。フィルタ装置を回転させることにより、例えば透析のために必要な、血液及び透析液のための2つの液体空間がフィルタ装置内に生じる。封止用材料が硬化した後、封止用キャップを引き抜き又は切り離し、透析に必要とされるような、相応の導入口を有するキャップに交換する。この場合、通常は、2つの液体空間を互いに分離するために、封止部がまた必要となる。
【0004】
封止用材料を挿入するための上記の方法、及び、この方法を実施するために必要な装置では、封止のために設けられた筐体の接続部を、封止用材料を供給する封止用チャンバに接続する必要がある。これは機械的な差込接続なので、筐体と封止用チャンバとの相互接続は、多くの手間がかかり、大部分は手動でしか実施できない。この接続を自動的に行うことは、論理的には可能であるが、技術的には極めて複雑でコストがかかる。
【0005】
特許文献3により、フィルタ装置の特別に設計された筐体が知られている。この筐体は、封止用材料のために、各端部に設けられた2つの導入口の孔を有する枠を備えている。封止用材料は、筐体の表面にセンタリングして供給される。回転時に、封止用材料は孔を通して筐体の内部へ分散される。しかしながら、この公知の方法によって導入された封止用材料は、ある非対称性を示す。この方法では所望の均一な回転対称性を達成できない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第305687号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10147907号明細書
【特許文献3】国際公開第03/006134号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、封止用材料をフィルタ装置に導入するための、簡単に自動化することのできる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の方法により達成される。2つの流れ空間を有するフィルタ装置に封止用材料を導入する方法であり、前記2つの流れ空間のうちの第1空間は、中空糸の束からなる繊維の管状通路により形成され、第2空間は、前記中空糸の束を封入する筐体により形成され、前記繊維の端部領域は、封止後は封止用材料中に密閉されている。このような構成は、封止用材料を導入するために封止用キャップを取り付けること、及び、この封止用キャップを介して、封止用チャンバからフィルタ装置の端部へ封止用材料を分散させるためにある。本発明によれば、封止用材料を、封止用チャンバから各封止用キャップの回転対称で且つ一端だけが固定された突起部へ導き、この突起部から、封止用キャップの対応するスロットを介して筐体内へ入れることが有利である。
【0008】
本発明の有利な観点は、従属請求項から導かれる。
【0009】
したがって、封止用チャンバとフィルタ装置とを回転させることで、封止用材料を遠心力によって注入することができる。封止用チャンバは、フィルタ装置と同期して回転する。封止用材料の注入を、接触させずに行うことができる。すなわち、フィルタ筐体と封止用チャンバとを互いに間隔を開けて回転させ、その後、封止用チャンバの出口がキャップの円周の突起部に整合するように同期させることができる。次に、封止用材料を注入する。封止用材料は、遠心力によりキャップに入り、キャップ内に適宜分散される。これにより、フィルタ筐体を支持して回転する遠心分離機と回転する封止用チャンバとの間に生じ得る公差又は芯ずれが何の問題も引き起こさなくなるようにすることができる、ということが有利である。公差は確実に補償される。
【0010】
封止用プロセスを簡単に自動化できる。このことは、特に、フィルタ装置に設けられる封止用キャップが、フィルタの回転状態を任意に選択できるように、回転対称で且つ一端だけが固定された突起部をそれぞれ有しているからである。このことにより自動化が可能となる。封止用チャンバを、封止用ヘッドの領域に一体化してもよい。封止用材料は、フィルタ装置の端部領域へ、均一に放射状に流入することができる。さらに、封止用チャンバを繰り返し使用できる。なぜなら、封止用チャンバは、その都度1回しか使われない封止用キャップに接続されているのではないからである。
【0011】
ほかの有利な観点によれば、この封止用チャンバを用いて、互いに交差する2つのフィルタ装置へ封止用材料を同時に注入することができる。このために、封止用チャンバは、4つの放出開口部を有していてもよい。
【0012】
交差させた2つのフィルタの代わりに、3つ、4つ、又はそれ以上のフィルタを、これらが封止される間、互いに重ねて配置してもい。基本的には、フィルタは、互いに対してどのような角度で配置されていてもよい。対称性の理由により、及び、回転時の不均衡を回避するため、重ねる2つのフィルタを互いに対して90°の角度で配置することが推奨される。例えば、角度は、フィルタが3つの場合は60°、フィルタが4つの場合は45°となってもよい。フィルタが互いに対して平行に配置されている場合、フィルタを何個でも封止することができる。
【0013】
さらに、封止用材料を注入する前に、封止用チャンバを、電気的な同期化により、動作中の遠心分離機に結合してもよい。
【0014】
さらに、本発明は、流れ空間を有するフィルタ装置に封止用材料を導入するための装置であり、前記流れ空間のうちの第1空間は、中空糸の束からなる繊維の管状通路により形成され、第2空間は、前記中空糸の束を封入する筐体により形成され、前記繊維の端部領域は密閉されている装置に関するものである。本発明によれば、この装置は、筐体の端部に差し込み可能な封止用キャップを有し、回転対称で且つ一端だけが固定された突起部は、筐体壁を越えて突出している。さらに、水平に配置された封止用チャンバがその都度設けられ、この封止用チャンバの放出開口部は、封止用キャップの回転対称の突起部に対向している。
【0015】
封止用キャップには、筐体の端部に設けられたスロット又は開口部を介して筐体の内部に連通するスロットが設けられていることが有利である。この接続により、封止用材料は装置の各端部領域へ流れる。
【0016】
封止用チャンバの各放出開口部と、回転対称の突起部との間に、隙間形の遊びが残っていてもよい。
【0017】
重ね合わされた交差する2つのフィルタ装置を、保持装置により保持することが特に有利である。このようにして、2つのフィルタ装置の同時充填を小型形状で行える。
【0018】
最後に、本発明は、回転対称で且つ一端だけが固定された突起部を有する、上記のような装置のための封止用キャップに関するものである。鍔形の突起部により取り囲まれている領域には、スロットが外周のまわりに均一に分散して配置されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の更なる詳細及び利点を、図面の実施形態を参照して詳しく説明する。
【0020】
図1に、フィルタ装置10を示す。図1には、簡単化のため、細長い円筒形の筐体12のみを示す。知られている方法では、筐体12は、その各端部領域にタブ14を有している。タブ14の間には、空間16が残っている(図2参照)。
【0021】
ポリウレタンからなることが有利である封止用材料を導入するために、筐体12の各端部に封止用キャップ18を差し込む。なお、これらのキャップの各々は、回転対称で且つ一端だけが固定された突起部20を有している。この突起部20は、特に図2から分かるように、面取りされた外側端部を有している。筐体12に差し込まれる封止用キャップの壁は、この一端だけが固定された突起部20の下側に、外周のまわりに均一に分散されたスロット21を有している。図1及び図2では、スロット21をハッチングなしで示す。図示した変形例では、封止用キャップを、その外側端部においてキャップ22によって閉じてもよい。
【0022】
図1に、筐体12に沿って実質的に水平に延びる封止用チャンバ24を示す。この封止用チャンバは、封止用材料が充填される中央窪み26を有している。封止用チャンバ24及び筐体12を、回転軸Aを中心として回転動作させる。封止用チャンバ24の回転動作を、フィルタ筐体を保持する遠心分離機(図示せず)の回転動作に同期させる。チャンバ26に入る封止用材料は、通路28を介して、封止用チャンバ内の放出開口部30へ運ばれる。出口開口部30において封止用材料は放出され、封止用チャンバ24と封止用キャップ18の一端だけが固定された突起部20との間の隙間32を架橋する。封止用材料は、傾斜した突起部20において止められる。そして、この傾斜した突起部20は回転対称に構成されているので、封止用材料は、筐体12の外周全体に分散される。依然として作用している遠心力により、封止用材料は、封止用キャップのスロットと筐体の空間16とを通って、筐体内部に入り、筐体内部に均一に分散される。
【0023】
こうして、封止用材料を自動的に且つ均一に分散することができる。
【0024】
図3から図5に、本発明の特別な実施形態を示す。ここでは、2つのフィルタ装置10は、90°の角度で交差するように重なり合って、図示していない保持装置内に収容されている。交差するように重なり合ったフィルタ装置10を、保持装置によって回転させる。並行して、封止用チャンバ36を回転させる。なお、開口部30が封止用キャップ18の一端だけが固定された突起部20に対向するように、双方の回転速度を同期させる。この同期した回転中に、封止用部材をフィルタ装置に注入する。
【0025】
図6は、封止用材料を充填中のフィルタ装置10の代替配置を示す。簡単化のために、互いに対して平行に並び、軸Aを中心として矢印の方向にまとめて回転されるこれらのフィルタ装置のみを示す。この平行な配置では、どのような数のフィルタでも封止することができる。このために、封止用材料を注入するために、図示していない封止用チャンバを、同期化の後、フィルタ装置に対して平行に備える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の封止用キャップと封止用チャンバとが取り付けられたフィルタ装置の筐体の概略的縦断面図である。
【図2】封止用キャップに端部キャップも取り付けた図1の拡大断面図である。
【図3】フィルタ装置に封止用材料を導入するための装置の断面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3に示す装置の斜視図である。
【図6】封止用材料を導入するためのフィルタ装置の代替配置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの流れ空間を有するフィルタ装置に封止用材料を導入するための方法であり、前記2つの流れ空間のうちの第1空間は、中空糸の束からなる繊維の管状通路により形成され、第2空間は、前記中空糸の束を封入する筐体により形成され、前記繊維の端部領域は、封止後は封止用材料内に密閉されており、前記封止用材料を導入するために、封止用キャップを取り付け、前記封止用キャップを介して、封止用チャンバから前記フィルタ装置の端部へ前記封止用材料を分散させる方法であって、
前記封止用材料を、前記封止用チャンバから、前記各封止用キャップの回転対称で且つ一端だけが固定された突起部に導入する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記封止用材料を、前記封止用キャップの対応するスロットを介して前記筐体に入り込ませる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記封止用材料が遠心力により注入されるように、前記封止用チャンバと前記フィルタ装置とを回転させる
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法において、
前記封止用チャンバと前記封止用キャップとの間の隙間を乗り越えて前記封止用材料を注入する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法において、
前記封止用チャンバを用いて、前記封止用材料を、重ね合わせた、好ましくは交差させた少なくとも2つのフィルタ装置に同時に注入する
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法において、
前記封止用材料を注入する前に、前記封止用チャンバを動作中の遠心分離機に電気的な同期化によって結合する
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
2つの流れ空間を有するフィルタ装置に封止用材料を導入するための装置であり、前記2つの流れ空間のうちの第1空間は、中空糸の束からなる繊維の管状通路により形成され、第2空間は、前記中空糸の束を封入する筐体により形成されている装置であって、
前記筐体の端部に差し込み可能な封止用キャップと、
水平に設けられた封止用チャンバとを備え、
回転対称で且つ一端だけが固定された突起部が、筐体壁を越えて突出し、
前記封止用チャンバの放出開口部は、前記封止用キャップの前記回転対称の突起部に対向している
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記封止用キャップに、前記筐体の内部に連通するスロットが設けられている
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
前記封止用チャンバの前記各放出開口部と前記回転対称の突起部との間に、隙間形の遊びが残っている
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の装置において、
保持装置は、重ね合わせた、好ましくは交差させた少なくとも2つのフィルタ装置を収容し、
前記封止用チャンバは、少なくとも4つの放出開口部を有している
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の装置用の封止用キャップであって、
回転対称で且つ一端だけが固定された突起部を有する
ことを特徴とする封止用キャップ。
【請求項12】
請求項11に記載の装置用の封止用キャップにおいて、
鍔形の突起部により取り囲まれる領域に配置され、外周のまわりに均一に分散されているスロット
を特徴とする封止用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−536089(P2009−536089A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508182(P2009−508182)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003766
【国際公開番号】WO2007/128440
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】