封筒反り矯正装置
【課題】封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)すると共、封筒の先端部側に発生するシワを抑える。
【解決手段】封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Feを給紙方向の先頭に設定して、給紙台21上に複数枚積載された前記封筒Fを給紙ローラ23により一枚ずつ給紙する給紙部20と、給紙部20よりも下流に設置され、給紙部20で給紙された封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを矯正するデカール手段31〜33と、デカール手段31〜33に対して封筒Fの属性に応じて所定のタイミングで封筒Fへのデカール解除を制御する制御部80と、を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置1Aを提供する。
【解決手段】封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Feを給紙方向の先頭に設定して、給紙台21上に複数枚積載された前記封筒Fを給紙ローラ23により一枚ずつ給紙する給紙部20と、給紙部20よりも下流に設置され、給紙部20で給紙された封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを矯正するデカール手段31〜33と、デカール手段31〜33に対して封筒Fの属性に応じて所定のタイミングで封筒Fへのデカール解除を制御する制御部80と、を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置1Aを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙や、封筒に画像を印刷できる印刷装置に適用可能とされ、封筒を先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して給紙台上に複数枚積載したとき、封筒の後端部側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)できる封筒反り矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙や、封筒に画像を印刷(形成)する印刷装置(画像形成装置)は、インクジェット印刷装置,孔版印刷装置,レーザビームプリンタ,熱転写印刷装置などが家庭用又は業務用として多用されている。
【0003】
この種の印刷装置において、印刷媒体として封筒を用いたときに、封筒の硬い角部が孔版印刷装置内に設けた版胴上のマスタに傷をつけることのないように対策を施した封筒給紙装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された封筒給紙装置では、ここでの図示を省略するものの、装置内の封筒載置面上に複数枚積載した封筒を一枚ずつ分離して封筒搬送路に送り、この封筒搬送路中に設置した押圧機構により封筒の角部を押し潰すことで、封筒を孔版印刷装置内に設けた版胴に向けて給紙するときに、封筒の硬い角部が版胴上のマスタを傷つけることがない旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−162917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図1に示した如く、特許文献1に開示された封筒給紙装置に適用される封筒Sは、表紙と裏紙とを重ね合わせて袋状に形成されている。この封筒Sには、葉書や手紙などを挿入した後に封をするために表紙と連接してフラップ部Sbが形成されており、このフラップ部Sbを裏紙側に折り込んだときに、フラップ部Sbが表紙及び裏紙の上に重なり封筒Sの四隅の角部Saが厚くなるために、この四隅の角部Saを封筒給紙装置内の封筒搬送路中に設置した押圧機構により押し潰すことにより、印刷部となる版胴上のマスタに傷をつけることがなくなるが、上記した特許文献1では下記するような封筒に生じた反り(カール)に対して何等の対策も施されていない。
【0007】
一方、図2(a),(b)に示した如く、手紙などを封入する長方形状の封筒Fでは、表紙Faと裏紙Fbとを重ね合わせて袋状に形成した際に、封筒Fの先端部Fc側に形成したフラップ部Fd側とは反対の後端部Fe側を糊代Ffにより裏紙Fbに糊付けしているために後端部Fe近傍の厚みは紙3枚分となり、紙1枚のフラップ部Fdよりも厚くなってしまう。
【0008】
上記に伴って、図3(a),(b)に示した如く、長方形状の封筒Fの表紙Fa側を上にし、且つ、裏紙Fb側を下にして給紙台K上に複数枚積載すると、複数枚の封筒Fの厚みは、積載高さが高くなるほど複数枚のフラップ部Fd側よりも複数枚の後端部Fe側の方が顕著に厚くなるために、各封筒Fの後端部Fe側に上方に向かう反り(アップカール)が発生してしまう。
【0009】
この際、封筒Fの後端部Fe側に発生する反りの程度は、封筒Fの属性に起因するものであり、封筒Fの属性は、長手方向の長さ,長手方向と直交する幅,厚さ,材質などをパラメータとしている。
【0010】
尚、上記した長方形状の封筒Fを印刷装置により印刷する場合に、通常は封筒Fの表紙Fa上に宛名や住所を印刷するために表紙Fa側を上方に向けて給紙台K上に積載するが、このときに、封筒Fの後端部Feの方が先端部Fcに形成したフラップ部Fdよりも剛性があるので、この後端部Feを給紙方向の先頭に設定して給紙するようになっていると共に、フラップ部Fdを折り込まずに開いたまま給紙側とは反対側に向けている。
【0011】
この状態で給紙台K上に複数枚積載した封筒Fの後端部Feを給紙方向の先頭に設定して一枚ずつ給紙し、給紙した封筒Fを例えば不図示のインクジェット印刷装置内に設けたインクジェットヘッドに向けて搬送すると、封筒Fの搬送路とインクジェットヘッドとの隙間が狭いものとなっているので、封筒Fの後端部Fe側に上方に向かう反り(アップカール)が発生していると、封筒Fの後端部Fe側がインクジェットヘッドに衝突してしまい、インクジェットヘッドを破損してしまうという問題が発生してしまう。
【0012】
上記記載の問題点を解決するために、表裏二重の紙(表紙Fa及び裏紙Fb)で構成されている封筒Fに対して、封筒Fの反りを矯正するようにデカール処理を施そうとすると、最初のうち(封筒Fの後端部Fe側)は、表裏が一体となってデカールされるが、封筒Fの先端部Fc側に至ると、片方の面側に高い負荷がかかり、例えば、後述の図6(b)で説明するように、表紙面(Fa)の先端部Fc側だけ波うちした状態(シワ発生状態)になるという問題が発生する。この際、封筒Fではない普通の枚葉紙なら問題なく、表紙面(Fa)の先端部側にシワが発生する現象は封筒特有の問題となる。
【0013】
尚、長方形状の封筒Fの後端部Fe側に上記とは逆に下方に向かう反り(ダウンカール)が発生している場合には、封筒Fの後端部Fe側がインクジェットヘッドに衝突してないので何等の支障もきたさない。
【0014】
そこで、用紙や、封筒に画像を印刷できる印刷装置に適用可能とされ、封筒を使用した場合に封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して給紙台上に複数枚積載したとき、封筒の後端部側に生じた反りを矯正でき、且つ、封筒の先端部側に発生するシワも抑えることができる封筒反り矯正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記デカール手段に対して前記封筒の属性に応じて所定のタイミングで前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置である。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の封筒反り矯正装置において、
前記デカール手段は、デカールローラと押圧機構とで構成されており、前記デカールローラの前記封筒への押圧力を前記封筒の属性に応じて弱める方向に調整するために前記押圧機構に対して前記所定のタイミングを可変させることを特徴とする封筒反り矯正装置である。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記給紙部と前記デカール手段との間に設置され、前記封筒の後端部側に生じた前記反りを前記デカール手段で矯正したときに前記封筒の先端部側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部と、
前記封筒シワ検出部で前記シワの発生を検出したときに、前記デカール手段に対して前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の封筒反り矯正装置によると、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して給紙台上に封筒を複数枚積載したときに、封筒の後端部側に生じた反りをデカール手段により矯正する際に、封筒の後端部側に生じた反りは封筒の属性によって変化するために、制御部は、デカール手段に対して封筒の属性に応じて所定のタイミングで封筒へのデカール解除を制御しているので、封筒の後端部側に生じた反りを封筒の属性に応じて矯正することができると共に、封筒の後端部側に生じた反りを補正する際に封筒の先端部側に発生するシワを抑えることができる。
【0019】
また、請求項2記載の封筒反り矯正装置によると、デカール手段は、デカールローラと押圧機構とで構成されており、デカールローラの封筒への押圧力を封筒の属性に応じて弱める方向に調整するために押圧機構に対して前記所定のタイミングを可変させているので、請求項1記載と同様に、封筒の後端部側に生じた反りをしつかり矯正しつつ、封筒の先端部側までデカール処理を施し、更に、封筒の先端部側に発生するシワを抑えることができる。
【0020】
また、請求項3記載の封筒反り矯正装置によると、封筒の後端部側に生じた反りをデカール手段で矯正したときに封筒の先端部側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部を給紙部とデカール手段との間に設け、封筒の先端部側に発生したシワを封筒シワ検出部で検出したときに、制御部は、デカール手段に対して封筒へのデカール解除を制御しているので、封筒の先端部側におけるシワの発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1に示された封筒を示した図である。
【図2】(a),(b)は長方形状の封筒を示した裏面図,側面図である。
【図3】(a),(b)は長方形状の封筒を給紙台上に複数枚積載したときに、封筒の後端部側に反りが発生した状態を示した表面斜視図,側面図である。
【図4】本発明に係る実施例1の封筒反り矯正装置の全体構成を示した全体構成図である。
【図5】図4に示した制御部を拡大して示した図である。
【図6】(a)は長方形状の封筒の反りを矯正するために封筒をデカールローラ対で挟持搬送させることにより矯正前の封筒に対して逆方向に反らせる状態を示した斜視図であり、(b)は封筒全域をデカールローラ対で押圧したときに封筒の先端部側にシワが発生する状態を示した斜視図である。
【図7】(a),(b)は図4に示した封筒反り矯正部において、デカールローラ対のうちでスポンジローラを封筒を介して金属ローラに接離させる第1態様の押圧機構を説明するために模式的に示した図である。
【図8】(a),(b)は図4に示した封筒反り矯正部において、デカールローラ対のうちでスポンジローラを封筒を介して金属ローラに押圧させる第2態様の押圧機構を説明するために模式的に示した図である。
【図9】本発明に係る実施例2の封筒反り矯正装置の全体構成を示した全体構成図である。
【図10】図10に示した封筒シワ検出部を説明するための図である。
【図11】図10に示した封筒シワ検出部の動作を説明するための第1態様を模式的に示した図である。
【図12】図10に示した封筒シワ検出部の動作を説明するための第2態様を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明に係る封筒反り矯正装置の一実施例について、先に示した図2,図3及び新たな図4〜図12を参照して実施例1,実施例2の順に詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る封筒反り矯正装置は、普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙や、封筒に画像を印刷(形成)できる印刷装置(画像形成装置)に適用可能に構成されており、以下の実施例1,2では、印刷装置(画像形成装置)のうちで例えば印刷部にインクジェットヘッドを用いたインクジェット印刷装置に適用して、このインクジェット印刷装置内において、先に図3を用いて説明した長方形状の封筒Fを用いて、給紙台上に封筒を複数枚積載したときに、この封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Fe側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)した上でインクジェットヘッドから吐出させたインクにより画像を印刷する場合について説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る実施例1の封筒反り矯正装置1Aの全体構成について、図4を用いて説明する。
【0025】
上記した実施例1の封筒反り矯正装置1Aは、この装置全体を操作する操作パネル部10と、給紙台21上に複数枚積載された封筒Fを給紙ローラ23により一枚ずつ給紙する給紙部20と、給紙部20よりも搬送方向の下流に設置されて給紙された封筒Fの後端部Fe側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)するデカールローラ対31と押圧機構33とを有するデカール手段(以下、封筒反り矯正部と記す)30と、封筒反り矯正部30により反りを矯正された封筒Fの後端部Feを突き当てて後端位置を揃えた後に回転して封筒Fを下流に向けて搬送するレジストローラ対42と、レジストローラ対42により搬送された封筒Fを下記する印刷部60及びこの印刷部60よりも下流に向けて搬送するベルトプラテン部50と、ベルトプラテン部50の上方に設置され、インクIKを吐出するライン型インクジェットヘッド61を少なくとも一以上有して封筒F上に画像を印刷(形成)する印刷部(画像形成部)60と、印刷部60で印刷された印刷済みの封筒Fを排紙する排紙部70と、装置全体を制御する制御部80と、各部に電源を供給する電源部90とを備えることで、インクジェット印刷方式を適用して構成されている。
【0026】
ここで、実施例1の封筒反り矯正装置1Aの各部について順を追って具体的に説明すると、この封筒反り矯正装置1Aの外観を形成する筐体2は箱状に形成されている。
【0027】
まず、上記した操作パネル部10は、筐体2の上面2aに設置されており、ここでの詳細な図示を省略するが、封筒印刷キー,用紙印刷キー,スタートキー,ストップキー,数字を入力するテンキー,印刷枚数を設定する印刷枚数設定キー,ジャムの発生や各種の故障の発生などを警告するアラーム表示部,液晶パネルなどが設けられている。
【0028】
次に、上記した給紙部20は、複数枚の封筒Fを積載した給紙台21がエンコーダ付きモータ22により筐体2の左側面下方部位に設けた給紙台ガイド側板2bの外側に沿って上下動可能に配設されている。
【0029】
この際、給紙台21は、ここでの詳細な図示を省略するものの、封筒Fの他に普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙(図示せず)も積載可能になっており、且つ、封筒Fや用紙の幅方向を規制する一対のサイドフェンスや、封筒Fや用紙の有無を検出する用紙有無検出センサなどが設けられているが、給紙台21上には封筒又は用紙を混載せずに1種類だけ積載可能であり、この実施例1では封筒Fを複数枚積載している。
【0030】
そして、給紙台21上に封筒Fを積層する際に、封筒Fの表紙Fa側を上にし、且つ、剛性が強い後端部Feを給紙方向の先頭に設定して後述する印刷部60に向けて搬送していると共に、ユーザは、給紙台21上に積層した封筒F又は用紙に応じて操作パネル部10に設けた封筒印刷キーや用紙印刷キーを選択的に操作するようになっている。
【0031】
また、給紙台21の上方には給紙ローラ23が回転可能に設けられており、この給紙ローラ23は給紙台21が筐体2の給紙台ガイド側板2bに沿って上動することによって最上層の封筒Fに当接して、最上層の封筒Fを給紙している。
【0032】
また、給紙ローラ23により給紙された最上層の封筒Fは、給紙ローラ23よりも搬送方向の下流に設けた捌きローラ24と摩擦板25との間で挟持搬送されながら一枚ずつ分離されて重送が防止され、この後、最上層の封筒Fが下流に向って搬送される。
【0033】
この際、給紙部20内に設けた給紙ローラ23と捌きローラ24は、ギア列26を介してエンコーダ付きモータ27によって一定の搬送速度でそれぞれ反時計方向に回転駆動されており、この一定の搬送速度により封筒Fが所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0034】
また、給紙部20よりも下流側に実施例1の要部となる封筒反り矯正部(デカール手段)30が設置されている。この封筒反り矯正部30は、先に図3を用いて説明した長方形状の封筒Fを用いて給紙台21上に積載したときに、この封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Fe側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)する機能を有している。
【0035】
尚、この実施例1では、封筒反り矯正部30を後述するレジストローラ対42よりも上流側に設置したが、これに限ることなく、給紙部20で給紙された封筒Fが後述する印刷部60に至る前までに設ければ良ので、レジストローラ対42よりも下流側に設けても良い。更に、封筒反り矯正部30は印刷部60よりも上流側に必ず設置する必要もなく、外部に給紙部と封筒反り矯正部とを設けてここで反りを矯正しても良い。
【0036】
この際、上記した封筒反り矯正部30は、金属材を用いて小径に形成された駆動ローラ(以下、金属ローラと記す)31Aと、スポンジ材を用いて金属ローラ31Aよりも大径に形成された従動ローラ(以下、スポンジローラと記す)31Bとを対にしたデカールローラ対31が回転可能になっており、駆動側の金属ローラ31Aがエンコーダ付きモータ32によって一定の搬送速度で反時計方向に回転駆動され、一方、従動側のスポンジローラ31Bは押圧機構33により金属ローラ31Aに押圧可能になっていると共に、給紙部で給紙した封筒Fを金属ローラ31Aとスポンジローラ31Bとにより挟持搬送しながら封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを矯正できるようになっているが、封筒反り矯正部30については後で詳述する。
【0037】
尚、この実施例における封筒反り矯正部(デーカル手段)30では、デカールローラ対31と、エンコーダ付きモータ32と、押圧機構33とで構成されているが、これに限ることなく、ここでの図示を省略するが、駆動源と連結されていないデカールローラを押圧機構により搬送路上の封筒Fに対して接離可能に設けて、このデカールローラで封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを矯正しても良い。
【0038】
また、デカールローラ対31よりも下流側には、レジストローラ対42がエンコーダ付きモータ43によって回転駆動されている。そして、デカールローラ対31により反りを矯正された封筒Fの後端部Feは停止中のレジストローラ対42に突き当るが、レジストローラ対42よりも上流側に設置したレジストセンサ41で給紙中の封筒Fの後端部Feを検出した後に、給紙ローラ23及び捌きローラ24を更に一定時間に亘って回転させると、停止中のレジストローラ対42の上流側に二点鎖線で示したような封筒Fの後端部Feによる撓みTが所定量生じ、この撓みTにより封筒Fの後端位置がレジストローラ対42に対して揃うようになっている。
【0039】
また、レジストローラ対42を挟んで上流側にレジストセンサ41が設置され、且つ、下流側に第1トップエッジセンサ44が設置され、両センサ41,44は光透過型のフォトセンサを用いて封筒Fの通過状態を検出していると共に、第1トップエッジセンサ44は後述する印刷部60内に設けたインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能をも兼ね備えている。
【0040】
そして、封筒Fの後端部Feに発生した撓みTの量が所定量に至った後に、エンコーダ付きモータ43によりレジストローラ対42を搬送速度に応じて回転駆動させている。
【0041】
また、第1トップエッジセンサ44よりも搬送方向の下流には、光反射型の第2トップエッジセンサ45と、ベルトプラテン部50と、このベルトプラテン部50と対向した印刷部60とが設置されている。
【0042】
上記した第2トップエッジセンサ45は、ベルトプラテン部50の上方で且つ印刷部60よりも上流側に設けられているために光反射型のフォトセンサが用いられており、この第2トップエッジセンサ45は上流側に設けた第1トップエッジセンサ44と協働してインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能を備えている。
【0043】
この際、反りを矯正された封筒Fの後端部Feが第1,第2トップエッジセンサ44,45をそれぞれ通過したときに、後述するベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54からのエンコーダパルス数を制御部80内に設けた第1,第2カウンタ80d,80e(図5)により計数を開始して、ここで計数したエンコーダパルス数が各色のインクジェットヘッド61ごとに予め設定した各パルス数に至ったときに各色のインクIKの吐出を開始するようになっているが、第1トップエッジセンサ44よりも下流に設置した第2トップエッジセンサ45が主としてインク吐出制御を行い、一方、第1トップエッジセンサ44は第2トップエッジセンサ45によるインク吐出制御が不能となったときの予備として準備されている。
【0044】
この理由は、第2トップエッジセンサ45がベルトプラテン部50内のエンドレスベルトプラテン52の上方に設置され且つインクジェットヘッド61に近い位置に設置されており、且つ、印刷時に封筒Fはエンドレスベルトプラテン52上にエアー吸引されて一定速度で搬送されているために、第2トップエッジセンサ45で封筒Fの後端部Feを検出したときの方が精度の良いインク吐出タイミングが得られるために、この第2トップエッジセンサ45を主として用いている。
【0045】
しかしながら、第2トップエッジセンサ45は、エンドレスベルトプラテン52の上方に設置されているために光反射型のフォトセンサを用いなければならないので、エンドレスベルトプラテン52と封筒F(又は用紙)との反射率が近い場合、例えば黒色のエンドレスベルトプラテン52上に黒色の封筒F(又は用紙)を搭載したときに封筒F(又は用紙)を検出できない場合があり、この場合には光透過型のフォトセンサを用いた第1トップエッジセンサ44で封筒F(又は用紙)を確実に検出できるために第1トップエッジセンサ44に切替えている。
【0046】
また、上記したベルトプラテン部50は、箱体51内に複数のエアー吸引孔(図示せず)を有して帯状に形成されたエンドレスベルトプラテン52が従動プーリ53とエンコーダ付きモータ54により一定の搬送速度で回転駆動される駆動プーリ55との間に2個の中間プーリ56を介してエンドレスに掛け渡されており、且つ、従動プーリ53及び駆動プーリ55に紙押えローラ57,58が添接して、エンドレスベルトプラテン52上に搬送された少なくとも一枚以上の封筒Fをエンドレスベルトプラテン52の内側に設置したエアー吸引部59でエアー吸引しながら印刷部60及び後述する排紙部70に向けて搬送している。
【0047】
この際、ベルトプラテン部50は、エンドレスベルトプラテン52と後述するインクジェットヘッド61との間の間隔(ギャップ)を封筒Fや用紙(図示せず)に応じて調整できるように、不図示の上下動手段により箱体51ごと上下動可能に設けられており、ユーザが操作パネル部10に設けた封筒印刷キーを操作したときにギャップが例えば3mmに設定され、一方、用紙印刷キーを操作したときにギャップが例えば1.5mmに設定されている。
【0048】
また、印刷部60は、ベルトプラテン部50の上方でこのベルトプラテン部50と僅かに間隔を離して対向して設けられており、筐体2内の略中央部位に位置している。
【0049】
この印刷部60では、複数色のインクIKと対応して複数のライン型インクジェットヘッド(以下、インクジェットヘッドと記す)61が封筒Fの搬送方向の上流側から下流側に向かってC(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の順に固定設置されていると共に、各インクジェットヘッド61間に封筒Fをエンドレスベルトプラテン52上に押し付ける紙押えローラ62が設けられている。
【0050】
尚、この実施例1では、4色(CKMY)のインクIKに対応して4個のインクジェットヘッド61を設置した例で説明するが、例えば文字だけを印刷する場合には1色(K)だけで良いので、インクジェットヘッド61は少なくとも一以上設置すれば良いものである。
【0051】
ここで、各色用のインクジェットヘッド61は、詳細な図示を省略するが、複数のノズルを紙面と垂直な主走査方向に沿って配列させたヘッドブロックが、主走査方向に沿った一のライン上に沿って複数個配置され、且つ、主走査方向と直交する副走査方向に計2ラインに分けて配置されていると共に、隣り合うラインでは各ヘッドブロックが一部重なりあうように互い違いに千鳥状に配置されている。
【0052】
そして、封筒Fをエアー吸引によりエンドレスベルトプラテン52上に固定した状態でエンドレスベルトプラテン52の回転より封筒Fを副走査方向(矢印方向)に搬送しながら4個のインクジェットヘッド61により印刷データD(図5)に基いてカラー画像を印刷している。
【0053】
また、ベルトプラテン部50及び印刷部60の下流に排紙部70が設けられており、この排紙部70は、印刷部60で印刷が終了した封筒Fを排紙ローラ対71を介して筐体2の右側面2c側に着脱可能に設けた排紙トレイ72上に排紙することが可能になっている。
【0054】
また、上記した制御部80は、図5に拡大して示したように、各部を制御するCPU80aと、封筒反り矯正装置1Aの動作プログラムなど予め固定された情報を格納するROM80bと、封筒反り矯正装置1Aの動作時に変更可能な情報などを一時的に格納するRAM80cと、給紙部20で給紙した封筒Fが第1,第2トップエッジセンサ44,45を通過したときにインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御するためにベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54(図4)からのエンコーダパルスを計数する第1,第2カウンタ80d,80eとを有している。
【0055】
また、制御部80は、パソコンPCなどで作成した印刷データDがインターフェース81を介して入力されると共に、操作パネル部10と、給紙台21や給紙ローラ23とか捌きローラ24を含めた給紙部20と、デカールローラ対31及び押圧機構33を含めた封筒反り矯正部30と、レジストローラ対42と、ベルトプラテン部50と、インクジェット印刷方式を適用した印刷部(画像形成部)60と、排紙ローラ対71を含めた排紙部70と、搬送路中に設けた各種の光センサ41,44,45とを制御している。
【0056】
ここで、上記のように構成した実施例1の封筒反り矯正装置1Aにおいて、実施例1の要部となる封筒反り矯正部(デカール手段)30の具体的な構成及び動作について、図6〜図8を用いて詳述する。
【0057】
上記した封筒反り矯正部(デカール手段)30は、先に図3を用いて説明した長方形状の封筒Fの後端部Fe側に生じた反り(アップカール)を矯正するために、この封筒Fをデカールローラ対31を構成する駆動側の金属ローラ31Aと従動側のスポンジローラ31Bとの間で挟持搬送することで、図6(a)に示したように、長方形状の封筒Fの後端部Fe側が矯正前の封筒Fの後端部Fe側の状態とは逆方向に反るように矯正される。言い換えると、長方形状の封筒Fの後端部Fe側に下方に向かう反り(ダウンカール)を発生させることで、図3(a)に示したアップカール状態に図6(a)に示したダウンカール状態が加わることにより互いの反りが相殺されて、封筒Fの後端部Fe側が平坦(フラット)に矯正される。
【0058】
この際、図6(b)に示したように、長方形状の封筒Fの後端部Feを給紙方向の先頭に設定して、封筒F全域をデカールローラ対31で押圧して強いデカール効果を得ようとしたときに、後端部Fe側とは反対側の先端部Fc側にシワが幅方向の中央部位に沿って発生する場合があり、封筒Fの長手方向の全長をLとするとシワは長手方向の全長Lが長いほど発生し易く、且つ、先端部Fc側で全長Lに対して略30%程度の範囲(略0.3L)に発生する。
【0059】
このシワが発生する理由を説明すると、デカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aと従動側のスポンジローラ31Bとの間に封筒Fを押し付けたときに、ニップ点を中心して搬送方向の上流側と下流側とに引張力が働くために、搬送方向と直交する方向に圧縮力が加わりシワが発生することがある。
【0060】
そこで、実施例1における封筒反り矯正部30では、デカールローラ対31のうちで従動側のスポンジローラ31Bを封筒Fを介して駆動側の金属ローラ31Aに押圧機構33を用いて押圧させるときに、押圧機構33は制御部80を介して封筒Fの後端部Fe側に生じた反り(カール)の矯正範囲に応じて押圧力を可変可能になっている。
【0061】
この実施例1において、押圧機構33を制御部80(図5)を介して制御する際に、図7(a),(b)に示した第1態様、又は、図8(a),(b)に示した第2態様のうちいずれか一方を採用している。
【0062】
まず、図7(a),(b)に示した如く、第1態様の押圧機構33A(33)では、デカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに対して封筒Fを介して従動側のスポンジローラ31Bが接離するように設けられており、スポンジローラ(従動ローラ)31Bを封筒Fを介して金属ローラ(駆動ローラ)31Aに接離させる際に両ローラ31A,31Bのニップタイミングを封筒の属性に応じて設定している。
【0063】
即ち、第1態様の押圧機構33Aにおいて、スポンジローラ31Bは、軸34を中心にして回動自在な逆L字状アーム35の一端側に軸着されており、且つ、軸34を介した他端側にソレノイド36のロッド36aが圧縮バネ37を介してナット38を用いて連結されている。尚、Sは逆L字状アーム35に対するストッパである。
【0064】
そして、上記のように構成した第1態様の押圧機構33Aを動作させる場合に、図7(a)に示したように、長方形状の封筒Fの裏紙Fb側をデカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに添接させる一方、封筒Fの表紙Fa側を従動側のスポンジローラ31Bに添接させて、制御部80(図5)を介してソレノイド36を通電すると、逆L字状アーム35が軸34を中心にして反時計方向に回動するので、封筒Fの後端部Feから先端部Fc側に向って反りの矯正範囲となる第1の距離L1の範囲までスポンジローラ31Bを圧縮バネ37の付勢力に抗して一定の押圧力で押圧することにより、封筒Fを金属ローラ31Aとスポンジローラ31Bとにより挟持搬送しながら封筒Fの後端部Fe側に発生した上向きの反り(図3)を逆に反らせて矯正している。
【0065】
この際、先に[発明が解決しようとする課題]の欄で述べたように、封筒Fの後端部Fe側に発生する反りの程度は封筒Fの属性(長手方向の長さ,長手方向と直交する幅,厚さ,材質)に起因しているので、スポンジローラ31Bを押圧する第1の距離L1の範囲も当然封筒Fの属性によって決定される。とくに、封筒Fの属性を示すパラメータのうちで長手方向の長さ,長手方向と直交する幅,材質などは1乗に比例するが、曲げ強さの観点から厚さは3乗に比例するので、これらの点を考慮して反りの矯正範囲となる第1の距離L1の範囲を設定すれば良いものである。
【0066】
この後、図7(b)に示したように、封筒Fがデカールローラ対31を第1の距離L1の範囲に亘って通過した後に、制御部80(図5)を介してソレノイド36を非通電にすると、圧縮バネ37の付勢力により逆L字状アーム35が軸34を中心にして時計方向に回動するので、スポンジローラ31Bが封筒Fから離間して押圧力が零となるために、第1の距離L1の範囲を超えて先端部Fcに至るまでの第2の距離L2の範囲内で封筒Fの先端部Fc側にシワが発生することがない。
【0067】
従って、第1態様の押圧機構33Aを動作させたときに、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒Fの属性に応じて矯正することができると共に、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生ない。
【0068】
次に、図8(a),(b)に示した如く、第2態様の押圧機構33B(33)では、デカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに対して封筒Fを介して従動側のスポンジローラ31Bが常時当接しているが、押圧機構33Bでスポンジローラ(従動ローラ)31Bの金属ローラ(駆動ローラ)31Aへの押圧力を封筒の属性に応じて可変できるように設けられている。
【0069】
即ち、第2態様の押圧機構33Bにおいて、スポンジローラ31Bは、軸34を中心にして回動自在な逆L字状アーム35の一端側に軸着されており、且つ、軸34を介した他端側に積層型圧電素子39の一端側が固着されており、且つ、積層型圧電素子39の他端側も固着されている。
【0070】
そして、上記のように構成した第2態様の押圧機構33Bを動作させる場合に、図8(a)に示したように、長方形状の封筒Fの裏紙Fb側をデカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに添接させる一方、封筒Fの表紙Fa側を従動側のスポンジローラ31Bに添接させて、制御部80(図5)を介して積層型圧電素子39に大きな電圧を印加すると、逆L字状アーム35を介してスポンジローラ31Bに大きな押圧力が印加されるので、封筒Fの後端部Feから先端部Fcに向って反りの矯正範囲となる第1の距離L1の範囲までスポンジローラ31Bを大きな押圧力で押圧することにより、封筒Fの後端部Fe側に発生した上向きの反り(図3)を逆に反らせて矯正している。
【0071】
ここでも、スポンジローラ31Bを押圧する第1の距離L1の範囲は、前述したと同様に封筒Fの属性によって決定されるものである。
【0072】
この後、図8(b)に示したように、封筒Fがデカールローラ対31を第1の距離L1の範囲に亘って通過した後に、制御部80(図5)を介して積層型圧電素子39に小さな電圧を印加すると、逆L字状アーム35を介してスポンジローラ31Bに小さな押圧力が印加されるために、第1の距離L1の範囲を超えて先端部Fcに至るまでの第2の距離L2の範囲で小さな押圧力が印加されるので封筒Fの先端部Fc側にシワが発生することがない。
【0073】
従って、第2態様の押圧機構33Bを動作させたときにも、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒Fの属性に応じて矯正することができると共に、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生ない。
【0074】
上記したように、実施例1の封筒反り矯正装置1Aによれば、デカールローラ対31と、第1,第2態様の押圧機構33A,33Bのうちのいずれか一方とを用いて封筒Fの後端部Feに生じた反りを矯正する際に、制御部80は、封筒反り矯正部(デカール手段)30に対して封筒Fの属性に応じて所定のタイミングで封筒Fへのデカール解除を制御しているので、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒Fの属性に応じて矯正することができると共に、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを補正する際に封筒Fの先端部Fc側に発生するシワを抑えることができる。
【0075】
この際、封筒反り矯正部(デカール手段)30は、デカールローラ対31の封筒Fへの押圧力を封筒Fの属性に応じて弱める方向に調整するために押圧機構33(33A,33B)に対して前記所定のタイミングを可変させているので、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りをしつかり矯正しつつ、封筒の先端部Fc側までデカール処理を施し、更に、封筒Fの先端部Fc側に発生するシワを抑えることができる。
【実施例2】
【0076】
図9に示した実施例2の封筒反り矯正装置1Bは、先に図4を用いて説明した実施例1の封筒反り矯正装置1Aと一部を除いて同様の構成であり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、実施例1に対して異なる構成部材に新たな符号を付して説明する。
【0077】
上記した実施例2の封筒反り矯正装置1Bでは、図9に示したように、給紙部20と封筒反り矯正部30との間に封筒シワ検出部100が設けられている点のみが実施例1に対して異なっている。
【0078】
上記した封筒シワ検出部100は、先に図6(b)を用いて説明したように、長方形状の封筒Fの後端部Fe側に発生した反りを封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により矯正する際に、封筒Fの先端部Fc側に封筒Fの属性に応じてシワが発生することがあり、このシワの高さによりシワの発生を検出してシワの発生に応じて制御部80を介して封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31を制御する機能を備えている。
【0079】
ここで、封筒シワ検出部100の構成を具体的に説明すると、図10に示した如く、給紙部20と封筒反り矯正部30との間の搬送路の上方にレバー101が軸102を支点にして回動自在に設置されており、初期時には実線で示したようにレバー101が重力により搬送路に向って垂下し、動作時にはレバー101が軸102を中心に反時計方向に回動してスイッチ103に当接するようになっている。
【0080】
上記のように構成した実施例2において、給紙部20で給紙した長方形状の封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により矯正する際に、封筒シワ検出部100の検出結果に応じてデカールローラ対31のうちでスポンジローラ(従動ローラ)31Bの金属ローラ(駆動ローラ)31Aへの押圧力が可変可能になっているので、実施例1で説明した反りの矯正範囲は封筒Fの後端部Feからシワが検出されるまでの範囲となる。
【0081】
上記に伴って、封筒シワ検出部100を動作させる際に、図11に示した第1態様、又は、図12に示した第2態様のうちいずれか一方を採用している。
【0082】
まず、図11に示した如く、封筒シワ検出部100を動作させるときの第1態様では、長方形状の封筒Fの後端部Fe側を封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により反り方向とは逆方向に反らせて矯正しているときに、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生した場合に、発生したシワの高さにより封筒シワ検出部100内に設けたレバー101を軸102を中心にして反時計方向に回動させ、スイッチ103によりシワの発生を検出したときに、制御部80は封筒反り矯正部30内に設けた第1態様の押圧機構33A(33)を動作させて、デカールローラ対31のスポンジローラ31Bを封筒Fから離間させるので押圧力が零となり、封筒Fの先端部Fc側でのシワの発生を低減させることができる。
【0083】
次に、図12に示した如く、封筒シワ検出部100を動作させるときの第2態様では、長方形状の封筒Fの後端部Fe側を封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により反り方向とは逆方向に反らせて矯正しているときに、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生した場合に、発生したシワの高さにより封筒シワ検出部100内に設けたレバー101を軸102を中心にして反時計方向に回動させ、スイッチ103によりシワの発生を検出したときに、制御部80は封筒反り矯正部30内に設けた第2態様の押圧機構33B(33)を動作させて、デカールローラ対31のスポンジローラ31Bの押圧力を強い押圧力から小さい押圧力に調整しているので、封筒Fの先端部Fc側でのシワの発生を低減させることができる。
【0084】
上記したように、実施例2の封筒反り矯正装置1Bによれば、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒反り矯正部(デカール手段)30により矯正した際に封筒Fの先端部Fc側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部100を給紙部20と封筒反り矯正部(デカール手段)30との間に設け、封筒Fの先端部Fc側に発生したシワを封筒シワ検出部100で検出したときに、制御部80は、封筒反り矯正部(デカール手段)30に対して封筒Fへのデカール解除を制御しているので、封筒Fの先端部Fc側におけるシワの発生を低減させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1A…実施例1の封筒反り矯正装置、1B…実施例2の封筒反り矯正装置、2…筐体、
10…操作パネル部
20…給紙部、21…給紙台、23…給紙ローラ、24…捌きローラ、25…摩擦板、
30…デカール手段(封筒反り矯正部)、31…デカールローラ対、
31A…駆動ローラ(金属ローラ)、31B…従動ローラ(スポンジローラ)、
33(33A,33B)…押圧機構、
41…レジストセンサ、42…レジストローラ対、44…第1トップエッジセンサ、
45…第2トップエッジセンサ、
50…ベルトプラテン部、51…箱体、52…エンドレスベルトプラテン、
60…印刷部(画像形成部)、61…インクジェットヘッド、
70…排紙部、71…排紙トレイ、
80…制御部、80a…CPU、80b…ROM、80c…RAM、
80d…第1カウンタ、80e…第2カウンタ、
90…電源部、100…封筒シワ検出部、101…レバー、103…スイッチ、
D…印刷データ、F…封筒、Fa…表紙、Fb…裏紙、Fc…先端部、
Fd…フラップ部、Fe…後端部、Ff…糊代、IK…インク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙や、封筒に画像を印刷できる印刷装置に適用可能とされ、封筒を先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して給紙台上に複数枚積載したとき、封筒の後端部側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)できる封筒反り矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙や、封筒に画像を印刷(形成)する印刷装置(画像形成装置)は、インクジェット印刷装置,孔版印刷装置,レーザビームプリンタ,熱転写印刷装置などが家庭用又は業務用として多用されている。
【0003】
この種の印刷装置において、印刷媒体として封筒を用いたときに、封筒の硬い角部が孔版印刷装置内に設けた版胴上のマスタに傷をつけることのないように対策を施した封筒給紙装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された封筒給紙装置では、ここでの図示を省略するものの、装置内の封筒載置面上に複数枚積載した封筒を一枚ずつ分離して封筒搬送路に送り、この封筒搬送路中に設置した押圧機構により封筒の角部を押し潰すことで、封筒を孔版印刷装置内に設けた版胴に向けて給紙するときに、封筒の硬い角部が版胴上のマスタを傷つけることがない旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−162917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図1に示した如く、特許文献1に開示された封筒給紙装置に適用される封筒Sは、表紙と裏紙とを重ね合わせて袋状に形成されている。この封筒Sには、葉書や手紙などを挿入した後に封をするために表紙と連接してフラップ部Sbが形成されており、このフラップ部Sbを裏紙側に折り込んだときに、フラップ部Sbが表紙及び裏紙の上に重なり封筒Sの四隅の角部Saが厚くなるために、この四隅の角部Saを封筒給紙装置内の封筒搬送路中に設置した押圧機構により押し潰すことにより、印刷部となる版胴上のマスタに傷をつけることがなくなるが、上記した特許文献1では下記するような封筒に生じた反り(カール)に対して何等の対策も施されていない。
【0007】
一方、図2(a),(b)に示した如く、手紙などを封入する長方形状の封筒Fでは、表紙Faと裏紙Fbとを重ね合わせて袋状に形成した際に、封筒Fの先端部Fc側に形成したフラップ部Fd側とは反対の後端部Fe側を糊代Ffにより裏紙Fbに糊付けしているために後端部Fe近傍の厚みは紙3枚分となり、紙1枚のフラップ部Fdよりも厚くなってしまう。
【0008】
上記に伴って、図3(a),(b)に示した如く、長方形状の封筒Fの表紙Fa側を上にし、且つ、裏紙Fb側を下にして給紙台K上に複数枚積載すると、複数枚の封筒Fの厚みは、積載高さが高くなるほど複数枚のフラップ部Fd側よりも複数枚の後端部Fe側の方が顕著に厚くなるために、各封筒Fの後端部Fe側に上方に向かう反り(アップカール)が発生してしまう。
【0009】
この際、封筒Fの後端部Fe側に発生する反りの程度は、封筒Fの属性に起因するものであり、封筒Fの属性は、長手方向の長さ,長手方向と直交する幅,厚さ,材質などをパラメータとしている。
【0010】
尚、上記した長方形状の封筒Fを印刷装置により印刷する場合に、通常は封筒Fの表紙Fa上に宛名や住所を印刷するために表紙Fa側を上方に向けて給紙台K上に積載するが、このときに、封筒Fの後端部Feの方が先端部Fcに形成したフラップ部Fdよりも剛性があるので、この後端部Feを給紙方向の先頭に設定して給紙するようになっていると共に、フラップ部Fdを折り込まずに開いたまま給紙側とは反対側に向けている。
【0011】
この状態で給紙台K上に複数枚積載した封筒Fの後端部Feを給紙方向の先頭に設定して一枚ずつ給紙し、給紙した封筒Fを例えば不図示のインクジェット印刷装置内に設けたインクジェットヘッドに向けて搬送すると、封筒Fの搬送路とインクジェットヘッドとの隙間が狭いものとなっているので、封筒Fの後端部Fe側に上方に向かう反り(アップカール)が発生していると、封筒Fの後端部Fe側がインクジェットヘッドに衝突してしまい、インクジェットヘッドを破損してしまうという問題が発生してしまう。
【0012】
上記記載の問題点を解決するために、表裏二重の紙(表紙Fa及び裏紙Fb)で構成されている封筒Fに対して、封筒Fの反りを矯正するようにデカール処理を施そうとすると、最初のうち(封筒Fの後端部Fe側)は、表裏が一体となってデカールされるが、封筒Fの先端部Fc側に至ると、片方の面側に高い負荷がかかり、例えば、後述の図6(b)で説明するように、表紙面(Fa)の先端部Fc側だけ波うちした状態(シワ発生状態)になるという問題が発生する。この際、封筒Fではない普通の枚葉紙なら問題なく、表紙面(Fa)の先端部側にシワが発生する現象は封筒特有の問題となる。
【0013】
尚、長方形状の封筒Fの後端部Fe側に上記とは逆に下方に向かう反り(ダウンカール)が発生している場合には、封筒Fの後端部Fe側がインクジェットヘッドに衝突してないので何等の支障もきたさない。
【0014】
そこで、用紙や、封筒に画像を印刷できる印刷装置に適用可能とされ、封筒を使用した場合に封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して給紙台上に複数枚積載したとき、封筒の後端部側に生じた反りを矯正でき、且つ、封筒の先端部側に発生するシワも抑えることができる封筒反り矯正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記デカール手段に対して前記封筒の属性に応じて所定のタイミングで前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置である。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の封筒反り矯正装置において、
前記デカール手段は、デカールローラと押圧機構とで構成されており、前記デカールローラの前記封筒への押圧力を前記封筒の属性に応じて弱める方向に調整するために前記押圧機構に対して前記所定のタイミングを可変させることを特徴とする封筒反り矯正装置である。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記給紙部と前記デカール手段との間に設置され、前記封筒の後端部側に生じた前記反りを前記デカール手段で矯正したときに前記封筒の先端部側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部と、
前記封筒シワ検出部で前記シワの発生を検出したときに、前記デカール手段に対して前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の封筒反り矯正装置によると、封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して給紙台上に封筒を複数枚積載したときに、封筒の後端部側に生じた反りをデカール手段により矯正する際に、封筒の後端部側に生じた反りは封筒の属性によって変化するために、制御部は、デカール手段に対して封筒の属性に応じて所定のタイミングで封筒へのデカール解除を制御しているので、封筒の後端部側に生じた反りを封筒の属性に応じて矯正することができると共に、封筒の後端部側に生じた反りを補正する際に封筒の先端部側に発生するシワを抑えることができる。
【0019】
また、請求項2記載の封筒反り矯正装置によると、デカール手段は、デカールローラと押圧機構とで構成されており、デカールローラの封筒への押圧力を封筒の属性に応じて弱める方向に調整するために押圧機構に対して前記所定のタイミングを可変させているので、請求項1記載と同様に、封筒の後端部側に生じた反りをしつかり矯正しつつ、封筒の先端部側までデカール処理を施し、更に、封筒の先端部側に発生するシワを抑えることができる。
【0020】
また、請求項3記載の封筒反り矯正装置によると、封筒の後端部側に生じた反りをデカール手段で矯正したときに封筒の先端部側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部を給紙部とデカール手段との間に設け、封筒の先端部側に発生したシワを封筒シワ検出部で検出したときに、制御部は、デカール手段に対して封筒へのデカール解除を制御しているので、封筒の先端部側におけるシワの発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1に示された封筒を示した図である。
【図2】(a),(b)は長方形状の封筒を示した裏面図,側面図である。
【図3】(a),(b)は長方形状の封筒を給紙台上に複数枚積載したときに、封筒の後端部側に反りが発生した状態を示した表面斜視図,側面図である。
【図4】本発明に係る実施例1の封筒反り矯正装置の全体構成を示した全体構成図である。
【図5】図4に示した制御部を拡大して示した図である。
【図6】(a)は長方形状の封筒の反りを矯正するために封筒をデカールローラ対で挟持搬送させることにより矯正前の封筒に対して逆方向に反らせる状態を示した斜視図であり、(b)は封筒全域をデカールローラ対で押圧したときに封筒の先端部側にシワが発生する状態を示した斜視図である。
【図7】(a),(b)は図4に示した封筒反り矯正部において、デカールローラ対のうちでスポンジローラを封筒を介して金属ローラに接離させる第1態様の押圧機構を説明するために模式的に示した図である。
【図8】(a),(b)は図4に示した封筒反り矯正部において、デカールローラ対のうちでスポンジローラを封筒を介して金属ローラに押圧させる第2態様の押圧機構を説明するために模式的に示した図である。
【図9】本発明に係る実施例2の封筒反り矯正装置の全体構成を示した全体構成図である。
【図10】図10に示した封筒シワ検出部を説明するための図である。
【図11】図10に示した封筒シワ検出部の動作を説明するための第1態様を模式的に示した図である。
【図12】図10に示した封筒シワ検出部の動作を説明するための第2態様を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明に係る封筒反り矯正装置の一実施例について、先に示した図2,図3及び新たな図4〜図12を参照して実施例1,実施例2の順に詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る封筒反り矯正装置は、普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙や、封筒に画像を印刷(形成)できる印刷装置(画像形成装置)に適用可能に構成されており、以下の実施例1,2では、印刷装置(画像形成装置)のうちで例えば印刷部にインクジェットヘッドを用いたインクジェット印刷装置に適用して、このインクジェット印刷装置内において、先に図3を用いて説明した長方形状の封筒Fを用いて、給紙台上に封筒を複数枚積載したときに、この封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Fe側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)した上でインクジェットヘッドから吐出させたインクにより画像を印刷する場合について説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明に係る実施例1の封筒反り矯正装置1Aの全体構成について、図4を用いて説明する。
【0025】
上記した実施例1の封筒反り矯正装置1Aは、この装置全体を操作する操作パネル部10と、給紙台21上に複数枚積載された封筒Fを給紙ローラ23により一枚ずつ給紙する給紙部20と、給紙部20よりも搬送方向の下流に設置されて給紙された封筒Fの後端部Fe側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)するデカールローラ対31と押圧機構33とを有するデカール手段(以下、封筒反り矯正部と記す)30と、封筒反り矯正部30により反りを矯正された封筒Fの後端部Feを突き当てて後端位置を揃えた後に回転して封筒Fを下流に向けて搬送するレジストローラ対42と、レジストローラ対42により搬送された封筒Fを下記する印刷部60及びこの印刷部60よりも下流に向けて搬送するベルトプラテン部50と、ベルトプラテン部50の上方に設置され、インクIKを吐出するライン型インクジェットヘッド61を少なくとも一以上有して封筒F上に画像を印刷(形成)する印刷部(画像形成部)60と、印刷部60で印刷された印刷済みの封筒Fを排紙する排紙部70と、装置全体を制御する制御部80と、各部に電源を供給する電源部90とを備えることで、インクジェット印刷方式を適用して構成されている。
【0026】
ここで、実施例1の封筒反り矯正装置1Aの各部について順を追って具体的に説明すると、この封筒反り矯正装置1Aの外観を形成する筐体2は箱状に形成されている。
【0027】
まず、上記した操作パネル部10は、筐体2の上面2aに設置されており、ここでの詳細な図示を省略するが、封筒印刷キー,用紙印刷キー,スタートキー,ストップキー,数字を入力するテンキー,印刷枚数を設定する印刷枚数設定キー,ジャムの発生や各種の故障の発生などを警告するアラーム表示部,液晶パネルなどが設けられている。
【0028】
次に、上記した給紙部20は、複数枚の封筒Fを積載した給紙台21がエンコーダ付きモータ22により筐体2の左側面下方部位に設けた給紙台ガイド側板2bの外側に沿って上下動可能に配設されている。
【0029】
この際、給紙台21は、ここでの詳細な図示を省略するものの、封筒Fの他に普通紙,厚紙,薄紙,マット紙などの用紙(図示せず)も積載可能になっており、且つ、封筒Fや用紙の幅方向を規制する一対のサイドフェンスや、封筒Fや用紙の有無を検出する用紙有無検出センサなどが設けられているが、給紙台21上には封筒又は用紙を混載せずに1種類だけ積載可能であり、この実施例1では封筒Fを複数枚積載している。
【0030】
そして、給紙台21上に封筒Fを積層する際に、封筒Fの表紙Fa側を上にし、且つ、剛性が強い後端部Feを給紙方向の先頭に設定して後述する印刷部60に向けて搬送していると共に、ユーザは、給紙台21上に積層した封筒F又は用紙に応じて操作パネル部10に設けた封筒印刷キーや用紙印刷キーを選択的に操作するようになっている。
【0031】
また、給紙台21の上方には給紙ローラ23が回転可能に設けられており、この給紙ローラ23は給紙台21が筐体2の給紙台ガイド側板2bに沿って上動することによって最上層の封筒Fに当接して、最上層の封筒Fを給紙している。
【0032】
また、給紙ローラ23により給紙された最上層の封筒Fは、給紙ローラ23よりも搬送方向の下流に設けた捌きローラ24と摩擦板25との間で挟持搬送されながら一枚ずつ分離されて重送が防止され、この後、最上層の封筒Fが下流に向って搬送される。
【0033】
この際、給紙部20内に設けた給紙ローラ23と捌きローラ24は、ギア列26を介してエンコーダ付きモータ27によって一定の搬送速度でそれぞれ反時計方向に回転駆動されており、この一定の搬送速度により封筒Fが所定の搬送速度で搬送されるようになっている。
【0034】
また、給紙部20よりも下流側に実施例1の要部となる封筒反り矯正部(デカール手段)30が設置されている。この封筒反り矯正部30は、先に図3を用いて説明した長方形状の封筒Fを用いて給紙台21上に積載したときに、この封筒Fの先端部Fcに形成したフラップ部Fdとは反対側の後端部Fe側に生じた反り(カール)を矯正(デカール)する機能を有している。
【0035】
尚、この実施例1では、封筒反り矯正部30を後述するレジストローラ対42よりも上流側に設置したが、これに限ることなく、給紙部20で給紙された封筒Fが後述する印刷部60に至る前までに設ければ良ので、レジストローラ対42よりも下流側に設けても良い。更に、封筒反り矯正部30は印刷部60よりも上流側に必ず設置する必要もなく、外部に給紙部と封筒反り矯正部とを設けてここで反りを矯正しても良い。
【0036】
この際、上記した封筒反り矯正部30は、金属材を用いて小径に形成された駆動ローラ(以下、金属ローラと記す)31Aと、スポンジ材を用いて金属ローラ31Aよりも大径に形成された従動ローラ(以下、スポンジローラと記す)31Bとを対にしたデカールローラ対31が回転可能になっており、駆動側の金属ローラ31Aがエンコーダ付きモータ32によって一定の搬送速度で反時計方向に回転駆動され、一方、従動側のスポンジローラ31Bは押圧機構33により金属ローラ31Aに押圧可能になっていると共に、給紙部で給紙した封筒Fを金属ローラ31Aとスポンジローラ31Bとにより挟持搬送しながら封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを矯正できるようになっているが、封筒反り矯正部30については後で詳述する。
【0037】
尚、この実施例における封筒反り矯正部(デーカル手段)30では、デカールローラ対31と、エンコーダ付きモータ32と、押圧機構33とで構成されているが、これに限ることなく、ここでの図示を省略するが、駆動源と連結されていないデカールローラを押圧機構により搬送路上の封筒Fに対して接離可能に設けて、このデカールローラで封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを矯正しても良い。
【0038】
また、デカールローラ対31よりも下流側には、レジストローラ対42がエンコーダ付きモータ43によって回転駆動されている。そして、デカールローラ対31により反りを矯正された封筒Fの後端部Feは停止中のレジストローラ対42に突き当るが、レジストローラ対42よりも上流側に設置したレジストセンサ41で給紙中の封筒Fの後端部Feを検出した後に、給紙ローラ23及び捌きローラ24を更に一定時間に亘って回転させると、停止中のレジストローラ対42の上流側に二点鎖線で示したような封筒Fの後端部Feによる撓みTが所定量生じ、この撓みTにより封筒Fの後端位置がレジストローラ対42に対して揃うようになっている。
【0039】
また、レジストローラ対42を挟んで上流側にレジストセンサ41が設置され、且つ、下流側に第1トップエッジセンサ44が設置され、両センサ41,44は光透過型のフォトセンサを用いて封筒Fの通過状態を検出していると共に、第1トップエッジセンサ44は後述する印刷部60内に設けたインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能をも兼ね備えている。
【0040】
そして、封筒Fの後端部Feに発生した撓みTの量が所定量に至った後に、エンコーダ付きモータ43によりレジストローラ対42を搬送速度に応じて回転駆動させている。
【0041】
また、第1トップエッジセンサ44よりも搬送方向の下流には、光反射型の第2トップエッジセンサ45と、ベルトプラテン部50と、このベルトプラテン部50と対向した印刷部60とが設置されている。
【0042】
上記した第2トップエッジセンサ45は、ベルトプラテン部50の上方で且つ印刷部60よりも上流側に設けられているために光反射型のフォトセンサが用いられており、この第2トップエッジセンサ45は上流側に設けた第1トップエッジセンサ44と協働してインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御する機能を備えている。
【0043】
この際、反りを矯正された封筒Fの後端部Feが第1,第2トップエッジセンサ44,45をそれぞれ通過したときに、後述するベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54からのエンコーダパルス数を制御部80内に設けた第1,第2カウンタ80d,80e(図5)により計数を開始して、ここで計数したエンコーダパルス数が各色のインクジェットヘッド61ごとに予め設定した各パルス数に至ったときに各色のインクIKの吐出を開始するようになっているが、第1トップエッジセンサ44よりも下流に設置した第2トップエッジセンサ45が主としてインク吐出制御を行い、一方、第1トップエッジセンサ44は第2トップエッジセンサ45によるインク吐出制御が不能となったときの予備として準備されている。
【0044】
この理由は、第2トップエッジセンサ45がベルトプラテン部50内のエンドレスベルトプラテン52の上方に設置され且つインクジェットヘッド61に近い位置に設置されており、且つ、印刷時に封筒Fはエンドレスベルトプラテン52上にエアー吸引されて一定速度で搬送されているために、第2トップエッジセンサ45で封筒Fの後端部Feを検出したときの方が精度の良いインク吐出タイミングが得られるために、この第2トップエッジセンサ45を主として用いている。
【0045】
しかしながら、第2トップエッジセンサ45は、エンドレスベルトプラテン52の上方に設置されているために光反射型のフォトセンサを用いなければならないので、エンドレスベルトプラテン52と封筒F(又は用紙)との反射率が近い場合、例えば黒色のエンドレスベルトプラテン52上に黒色の封筒F(又は用紙)を搭載したときに封筒F(又は用紙)を検出できない場合があり、この場合には光透過型のフォトセンサを用いた第1トップエッジセンサ44で封筒F(又は用紙)を確実に検出できるために第1トップエッジセンサ44に切替えている。
【0046】
また、上記したベルトプラテン部50は、箱体51内に複数のエアー吸引孔(図示せず)を有して帯状に形成されたエンドレスベルトプラテン52が従動プーリ53とエンコーダ付きモータ54により一定の搬送速度で回転駆動される駆動プーリ55との間に2個の中間プーリ56を介してエンドレスに掛け渡されており、且つ、従動プーリ53及び駆動プーリ55に紙押えローラ57,58が添接して、エンドレスベルトプラテン52上に搬送された少なくとも一枚以上の封筒Fをエンドレスベルトプラテン52の内側に設置したエアー吸引部59でエアー吸引しながら印刷部60及び後述する排紙部70に向けて搬送している。
【0047】
この際、ベルトプラテン部50は、エンドレスベルトプラテン52と後述するインクジェットヘッド61との間の間隔(ギャップ)を封筒Fや用紙(図示せず)に応じて調整できるように、不図示の上下動手段により箱体51ごと上下動可能に設けられており、ユーザが操作パネル部10に設けた封筒印刷キーを操作したときにギャップが例えば3mmに設定され、一方、用紙印刷キーを操作したときにギャップが例えば1.5mmに設定されている。
【0048】
また、印刷部60は、ベルトプラテン部50の上方でこのベルトプラテン部50と僅かに間隔を離して対向して設けられており、筐体2内の略中央部位に位置している。
【0049】
この印刷部60では、複数色のインクIKと対応して複数のライン型インクジェットヘッド(以下、インクジェットヘッドと記す)61が封筒Fの搬送方向の上流側から下流側に向かってC(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の順に固定設置されていると共に、各インクジェットヘッド61間に封筒Fをエンドレスベルトプラテン52上に押し付ける紙押えローラ62が設けられている。
【0050】
尚、この実施例1では、4色(CKMY)のインクIKに対応して4個のインクジェットヘッド61を設置した例で説明するが、例えば文字だけを印刷する場合には1色(K)だけで良いので、インクジェットヘッド61は少なくとも一以上設置すれば良いものである。
【0051】
ここで、各色用のインクジェットヘッド61は、詳細な図示を省略するが、複数のノズルを紙面と垂直な主走査方向に沿って配列させたヘッドブロックが、主走査方向に沿った一のライン上に沿って複数個配置され、且つ、主走査方向と直交する副走査方向に計2ラインに分けて配置されていると共に、隣り合うラインでは各ヘッドブロックが一部重なりあうように互い違いに千鳥状に配置されている。
【0052】
そして、封筒Fをエアー吸引によりエンドレスベルトプラテン52上に固定した状態でエンドレスベルトプラテン52の回転より封筒Fを副走査方向(矢印方向)に搬送しながら4個のインクジェットヘッド61により印刷データD(図5)に基いてカラー画像を印刷している。
【0053】
また、ベルトプラテン部50及び印刷部60の下流に排紙部70が設けられており、この排紙部70は、印刷部60で印刷が終了した封筒Fを排紙ローラ対71を介して筐体2の右側面2c側に着脱可能に設けた排紙トレイ72上に排紙することが可能になっている。
【0054】
また、上記した制御部80は、図5に拡大して示したように、各部を制御するCPU80aと、封筒反り矯正装置1Aの動作プログラムなど予め固定された情報を格納するROM80bと、封筒反り矯正装置1Aの動作時に変更可能な情報などを一時的に格納するRAM80cと、給紙部20で給紙した封筒Fが第1,第2トップエッジセンサ44,45を通過したときにインクジェットヘッド61に対してインクIKの吐出開始を制御するためにベルトプラテン部50内に設けたエンコーダ付きモータ54(図4)からのエンコーダパルスを計数する第1,第2カウンタ80d,80eとを有している。
【0055】
また、制御部80は、パソコンPCなどで作成した印刷データDがインターフェース81を介して入力されると共に、操作パネル部10と、給紙台21や給紙ローラ23とか捌きローラ24を含めた給紙部20と、デカールローラ対31及び押圧機構33を含めた封筒反り矯正部30と、レジストローラ対42と、ベルトプラテン部50と、インクジェット印刷方式を適用した印刷部(画像形成部)60と、排紙ローラ対71を含めた排紙部70と、搬送路中に設けた各種の光センサ41,44,45とを制御している。
【0056】
ここで、上記のように構成した実施例1の封筒反り矯正装置1Aにおいて、実施例1の要部となる封筒反り矯正部(デカール手段)30の具体的な構成及び動作について、図6〜図8を用いて詳述する。
【0057】
上記した封筒反り矯正部(デカール手段)30は、先に図3を用いて説明した長方形状の封筒Fの後端部Fe側に生じた反り(アップカール)を矯正するために、この封筒Fをデカールローラ対31を構成する駆動側の金属ローラ31Aと従動側のスポンジローラ31Bとの間で挟持搬送することで、図6(a)に示したように、長方形状の封筒Fの後端部Fe側が矯正前の封筒Fの後端部Fe側の状態とは逆方向に反るように矯正される。言い換えると、長方形状の封筒Fの後端部Fe側に下方に向かう反り(ダウンカール)を発生させることで、図3(a)に示したアップカール状態に図6(a)に示したダウンカール状態が加わることにより互いの反りが相殺されて、封筒Fの後端部Fe側が平坦(フラット)に矯正される。
【0058】
この際、図6(b)に示したように、長方形状の封筒Fの後端部Feを給紙方向の先頭に設定して、封筒F全域をデカールローラ対31で押圧して強いデカール効果を得ようとしたときに、後端部Fe側とは反対側の先端部Fc側にシワが幅方向の中央部位に沿って発生する場合があり、封筒Fの長手方向の全長をLとするとシワは長手方向の全長Lが長いほど発生し易く、且つ、先端部Fc側で全長Lに対して略30%程度の範囲(略0.3L)に発生する。
【0059】
このシワが発生する理由を説明すると、デカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aと従動側のスポンジローラ31Bとの間に封筒Fを押し付けたときに、ニップ点を中心して搬送方向の上流側と下流側とに引張力が働くために、搬送方向と直交する方向に圧縮力が加わりシワが発生することがある。
【0060】
そこで、実施例1における封筒反り矯正部30では、デカールローラ対31のうちで従動側のスポンジローラ31Bを封筒Fを介して駆動側の金属ローラ31Aに押圧機構33を用いて押圧させるときに、押圧機構33は制御部80を介して封筒Fの後端部Fe側に生じた反り(カール)の矯正範囲に応じて押圧力を可変可能になっている。
【0061】
この実施例1において、押圧機構33を制御部80(図5)を介して制御する際に、図7(a),(b)に示した第1態様、又は、図8(a),(b)に示した第2態様のうちいずれか一方を採用している。
【0062】
まず、図7(a),(b)に示した如く、第1態様の押圧機構33A(33)では、デカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに対して封筒Fを介して従動側のスポンジローラ31Bが接離するように設けられており、スポンジローラ(従動ローラ)31Bを封筒Fを介して金属ローラ(駆動ローラ)31Aに接離させる際に両ローラ31A,31Bのニップタイミングを封筒の属性に応じて設定している。
【0063】
即ち、第1態様の押圧機構33Aにおいて、スポンジローラ31Bは、軸34を中心にして回動自在な逆L字状アーム35の一端側に軸着されており、且つ、軸34を介した他端側にソレノイド36のロッド36aが圧縮バネ37を介してナット38を用いて連結されている。尚、Sは逆L字状アーム35に対するストッパである。
【0064】
そして、上記のように構成した第1態様の押圧機構33Aを動作させる場合に、図7(a)に示したように、長方形状の封筒Fの裏紙Fb側をデカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに添接させる一方、封筒Fの表紙Fa側を従動側のスポンジローラ31Bに添接させて、制御部80(図5)を介してソレノイド36を通電すると、逆L字状アーム35が軸34を中心にして反時計方向に回動するので、封筒Fの後端部Feから先端部Fc側に向って反りの矯正範囲となる第1の距離L1の範囲までスポンジローラ31Bを圧縮バネ37の付勢力に抗して一定の押圧力で押圧することにより、封筒Fを金属ローラ31Aとスポンジローラ31Bとにより挟持搬送しながら封筒Fの後端部Fe側に発生した上向きの反り(図3)を逆に反らせて矯正している。
【0065】
この際、先に[発明が解決しようとする課題]の欄で述べたように、封筒Fの後端部Fe側に発生する反りの程度は封筒Fの属性(長手方向の長さ,長手方向と直交する幅,厚さ,材質)に起因しているので、スポンジローラ31Bを押圧する第1の距離L1の範囲も当然封筒Fの属性によって決定される。とくに、封筒Fの属性を示すパラメータのうちで長手方向の長さ,長手方向と直交する幅,材質などは1乗に比例するが、曲げ強さの観点から厚さは3乗に比例するので、これらの点を考慮して反りの矯正範囲となる第1の距離L1の範囲を設定すれば良いものである。
【0066】
この後、図7(b)に示したように、封筒Fがデカールローラ対31を第1の距離L1の範囲に亘って通過した後に、制御部80(図5)を介してソレノイド36を非通電にすると、圧縮バネ37の付勢力により逆L字状アーム35が軸34を中心にして時計方向に回動するので、スポンジローラ31Bが封筒Fから離間して押圧力が零となるために、第1の距離L1の範囲を超えて先端部Fcに至るまでの第2の距離L2の範囲内で封筒Fの先端部Fc側にシワが発生することがない。
【0067】
従って、第1態様の押圧機構33Aを動作させたときに、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒Fの属性に応じて矯正することができると共に、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生ない。
【0068】
次に、図8(a),(b)に示した如く、第2態様の押圧機構33B(33)では、デカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに対して封筒Fを介して従動側のスポンジローラ31Bが常時当接しているが、押圧機構33Bでスポンジローラ(従動ローラ)31Bの金属ローラ(駆動ローラ)31Aへの押圧力を封筒の属性に応じて可変できるように設けられている。
【0069】
即ち、第2態様の押圧機構33Bにおいて、スポンジローラ31Bは、軸34を中心にして回動自在な逆L字状アーム35の一端側に軸着されており、且つ、軸34を介した他端側に積層型圧電素子39の一端側が固着されており、且つ、積層型圧電素子39の他端側も固着されている。
【0070】
そして、上記のように構成した第2態様の押圧機構33Bを動作させる場合に、図8(a)に示したように、長方形状の封筒Fの裏紙Fb側をデカールローラ対31のうちで駆動側の金属ローラ31Aに添接させる一方、封筒Fの表紙Fa側を従動側のスポンジローラ31Bに添接させて、制御部80(図5)を介して積層型圧電素子39に大きな電圧を印加すると、逆L字状アーム35を介してスポンジローラ31Bに大きな押圧力が印加されるので、封筒Fの後端部Feから先端部Fcに向って反りの矯正範囲となる第1の距離L1の範囲までスポンジローラ31Bを大きな押圧力で押圧することにより、封筒Fの後端部Fe側に発生した上向きの反り(図3)を逆に反らせて矯正している。
【0071】
ここでも、スポンジローラ31Bを押圧する第1の距離L1の範囲は、前述したと同様に封筒Fの属性によって決定されるものである。
【0072】
この後、図8(b)に示したように、封筒Fがデカールローラ対31を第1の距離L1の範囲に亘って通過した後に、制御部80(図5)を介して積層型圧電素子39に小さな電圧を印加すると、逆L字状アーム35を介してスポンジローラ31Bに小さな押圧力が印加されるために、第1の距離L1の範囲を超えて先端部Fcに至るまでの第2の距離L2の範囲で小さな押圧力が印加されるので封筒Fの先端部Fc側にシワが発生することがない。
【0073】
従って、第2態様の押圧機構33Bを動作させたときにも、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒Fの属性に応じて矯正することができると共に、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生ない。
【0074】
上記したように、実施例1の封筒反り矯正装置1Aによれば、デカールローラ対31と、第1,第2態様の押圧機構33A,33Bのうちのいずれか一方とを用いて封筒Fの後端部Feに生じた反りを矯正する際に、制御部80は、封筒反り矯正部(デカール手段)30に対して封筒Fの属性に応じて所定のタイミングで封筒Fへのデカール解除を制御しているので、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒Fの属性に応じて矯正することができると共に、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを補正する際に封筒Fの先端部Fc側に発生するシワを抑えることができる。
【0075】
この際、封筒反り矯正部(デカール手段)30は、デカールローラ対31の封筒Fへの押圧力を封筒Fの属性に応じて弱める方向に調整するために押圧機構33(33A,33B)に対して前記所定のタイミングを可変させているので、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りをしつかり矯正しつつ、封筒の先端部Fc側までデカール処理を施し、更に、封筒Fの先端部Fc側に発生するシワを抑えることができる。
【実施例2】
【0076】
図9に示した実施例2の封筒反り矯正装置1Bは、先に図4を用いて説明した実施例1の封筒反り矯正装置1Aと一部を除いて同様の構成であり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付し、且つ、先に示した構成部材は必要に応じて適宜説明し、実施例1に対して異なる構成部材に新たな符号を付して説明する。
【0077】
上記した実施例2の封筒反り矯正装置1Bでは、図9に示したように、給紙部20と封筒反り矯正部30との間に封筒シワ検出部100が設けられている点のみが実施例1に対して異なっている。
【0078】
上記した封筒シワ検出部100は、先に図6(b)を用いて説明したように、長方形状の封筒Fの後端部Fe側に発生した反りを封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により矯正する際に、封筒Fの先端部Fc側に封筒Fの属性に応じてシワが発生することがあり、このシワの高さによりシワの発生を検出してシワの発生に応じて制御部80を介して封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31を制御する機能を備えている。
【0079】
ここで、封筒シワ検出部100の構成を具体的に説明すると、図10に示した如く、給紙部20と封筒反り矯正部30との間の搬送路の上方にレバー101が軸102を支点にして回動自在に設置されており、初期時には実線で示したようにレバー101が重力により搬送路に向って垂下し、動作時にはレバー101が軸102を中心に反時計方向に回動してスイッチ103に当接するようになっている。
【0080】
上記のように構成した実施例2において、給紙部20で給紙した長方形状の封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により矯正する際に、封筒シワ検出部100の検出結果に応じてデカールローラ対31のうちでスポンジローラ(従動ローラ)31Bの金属ローラ(駆動ローラ)31Aへの押圧力が可変可能になっているので、実施例1で説明した反りの矯正範囲は封筒Fの後端部Feからシワが検出されるまでの範囲となる。
【0081】
上記に伴って、封筒シワ検出部100を動作させる際に、図11に示した第1態様、又は、図12に示した第2態様のうちいずれか一方を採用している。
【0082】
まず、図11に示した如く、封筒シワ検出部100を動作させるときの第1態様では、長方形状の封筒Fの後端部Fe側を封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により反り方向とは逆方向に反らせて矯正しているときに、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生した場合に、発生したシワの高さにより封筒シワ検出部100内に設けたレバー101を軸102を中心にして反時計方向に回動させ、スイッチ103によりシワの発生を検出したときに、制御部80は封筒反り矯正部30内に設けた第1態様の押圧機構33A(33)を動作させて、デカールローラ対31のスポンジローラ31Bを封筒Fから離間させるので押圧力が零となり、封筒Fの先端部Fc側でのシワの発生を低減させることができる。
【0083】
次に、図12に示した如く、封筒シワ検出部100を動作させるときの第2態様では、長方形状の封筒Fの後端部Fe側を封筒反り矯正部30内に設けたデカールローラ対31により反り方向とは逆方向に反らせて矯正しているときに、封筒Fの先端部Fc側にシワが発生した場合に、発生したシワの高さにより封筒シワ検出部100内に設けたレバー101を軸102を中心にして反時計方向に回動させ、スイッチ103によりシワの発生を検出したときに、制御部80は封筒反り矯正部30内に設けた第2態様の押圧機構33B(33)を動作させて、デカールローラ対31のスポンジローラ31Bの押圧力を強い押圧力から小さい押圧力に調整しているので、封筒Fの先端部Fc側でのシワの発生を低減させることができる。
【0084】
上記したように、実施例2の封筒反り矯正装置1Bによれば、封筒Fの後端部Fe側に生じた反りを封筒反り矯正部(デカール手段)30により矯正した際に封筒Fの先端部Fc側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部100を給紙部20と封筒反り矯正部(デカール手段)30との間に設け、封筒Fの先端部Fc側に発生したシワを封筒シワ検出部100で検出したときに、制御部80は、封筒反り矯正部(デカール手段)30に対して封筒Fへのデカール解除を制御しているので、封筒Fの先端部Fc側におけるシワの発生を低減させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1A…実施例1の封筒反り矯正装置、1B…実施例2の封筒反り矯正装置、2…筐体、
10…操作パネル部
20…給紙部、21…給紙台、23…給紙ローラ、24…捌きローラ、25…摩擦板、
30…デカール手段(封筒反り矯正部)、31…デカールローラ対、
31A…駆動ローラ(金属ローラ)、31B…従動ローラ(スポンジローラ)、
33(33A,33B)…押圧機構、
41…レジストセンサ、42…レジストローラ対、44…第1トップエッジセンサ、
45…第2トップエッジセンサ、
50…ベルトプラテン部、51…箱体、52…エンドレスベルトプラテン、
60…印刷部(画像形成部)、61…インクジェットヘッド、
70…排紙部、71…排紙トレイ、
80…制御部、80a…CPU、80b…ROM、80c…RAM、
80d…第1カウンタ、80e…第2カウンタ、
90…電源部、100…封筒シワ検出部、101…レバー、103…スイッチ、
D…印刷データ、F…封筒、Fa…表紙、Fb…裏紙、Fc…先端部、
Fd…フラップ部、Fe…後端部、Ff…糊代、IK…インク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記デカール手段に対して前記封筒の属性に応じて所定のタイミングで前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置。
【請求項2】
前記デカール手段は、デカールローラと押圧機構とで構成されており、前記デカールローラの前記封筒への押圧力を前記封筒の属性に応じて弱める方向に調整するために前記押圧機構に対して前記所定のタイミングを可変させることを特徴とする請求項1記載の封筒反り矯正装置。
【請求項3】
封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記給紙部と前記デカール手段との間に設置され、前記封筒の後端部側に生じた前記反りを前記デカール手段で矯正したときに前記封筒の先端部側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部と、
前記封筒シワ検出部で前記シワの発生を検出したときに、前記デカール手段に対して前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置。
【請求項1】
封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記デカール手段に対して前記封筒の属性に応じて所定のタイミングで前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置。
【請求項2】
前記デカール手段は、デカールローラと押圧機構とで構成されており、前記デカールローラの前記封筒への押圧力を前記封筒の属性に応じて弱める方向に調整するために前記押圧機構に対して前記所定のタイミングを可変させることを特徴とする請求項1記載の封筒反り矯正装置。
【請求項3】
封筒の先端部に形成したフラップ部とは反対側の後端部を給紙方向の先頭に設定して、給紙台上に複数枚積載された前記封筒を給紙ローラにより一枚ずつ給紙する給紙部と、
前記給紙部よりも下流に設置され、前記給紙部で給紙された前記封筒の後端部側に生じた反りを矯正するデカール手段と、
前記給紙部と前記デカール手段との間に設置され、前記封筒の後端部側に生じた前記反りを前記デカール手段で矯正したときに前記封筒の先端部側に発生したシワを検出する封筒シワ検出部と、
前記封筒シワ検出部で前記シワの発生を検出したときに、前記デカール手段に対して前記封筒へのデカール解除を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする封筒反り矯正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−162339(P2012−162339A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22423(P2011−22423)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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