射出成形型
【課題】 本発明は、射出成形型の構成を簡素化することができ、簡便な構造により、可動側型板の型開き時に樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することである。
【解決手段】 ランナストリッパプレート4は、ランナロックピン10のアンダーカット部12と対応するピン挿入孔11の内周壁面に前記アンダーカット部12との間で前記樹脂材料残留部15を保持するアンダーカットタブ形成部14を有し、アンダーカットタブ形成部14は、前記アンダーカット部12の周囲に残留する前記樹脂材料残留部15の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定された第1のテーパ面14aと、第2のテーパ面14bとを有し、前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板2の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部15の収縮力を受ける抜け防止部20である。
【解決手段】 ランナストリッパプレート4は、ランナロックピン10のアンダーカット部12と対応するピン挿入孔11の内周壁面に前記アンダーカット部12との間で前記樹脂材料残留部15を保持するアンダーカットタブ形成部14を有し、アンダーカットタブ形成部14は、前記アンダーカット部12の周囲に残留する前記樹脂材料残留部15の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定された第1のテーパ面14aと、第2のテーパ面14bとを有し、前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板2の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部15の収縮力を受ける抜け防止部20である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランナ内で固化した樹脂材料の残留部を可動側型板の型開き時にランナロックピンによって固定側取付板に保持した後、ランナストリッパプレートによって樹脂材料残留部をランナロックピンから引き外す3プレートの射出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動側型板と、固定側型板と、ランナストリッパプレートと、固定側取付板と、を具備する可動部分が3プレートの射出成形型が示されている。可動側型板は、成形品を成形するキャビティを有する。固定側型板は、可動側型板に対向配置され、前記キャビティに溶融樹脂材料を供給するスプルとこのスプルの基端部に連結されたランナとを有する。スプルの先端にはゲートを介してキャビティが連結されている。
【0003】
固定側取付板には、固定側型板とランナストリッパプレートとがそれぞれ可動側型板の型開き方向に移動可能に設けられている。この固定側取付板には、ランナロックピンの基端部が固定されている。ランナロックピンの先端部は、ランナ内で固化した樹脂材料の残留部と係合するアンダーカット部を有する。ランナストリッパプレートは、前記固定側取付板と前記固定側型板との間に介挿され、かつ前記固定側取付板に対して接離可能に支持されている。ランナストリッパプレートは、ランナロックピンの先端部が挿入されるピン挿入孔を有する。さらに、ランナストリッパプレートには、ピン挿入孔の先端部にランナロックピンのアンダーカット部の周囲に配置される大径な凹部が形成されている。
【0004】
そして、射出成形型による射出成形時には、可動側型板と、固定側型板と、ランナストリッパプレートと、固定側取付板とが接合された型閉め位置で保持されている状態で、射出成形機から供給される溶融樹脂がランナおよびスプルの樹脂流路を通してスプルの先端のゲートからキャビティ内に流入される。その後、キャビティ内の溶融樹脂が固化してキャビティ内で成形品が形成されている。このとき、ランナおよびスプルの樹脂流路内にも溶融樹脂は残留している。そして、キャビティ内の成形品の形成時には、同時にランナおよびスプルの樹脂流路内に残留している溶融樹脂も固化してランナおよびスプルの樹脂流路内に残留される。このとき、ランナおよびスプルの樹脂流路内の樹脂材料残留部は、ランナロックピンの先端部のアンダーカット部と係合された状態で保持される。
【0005】
そして、キャビティ内の成形品の取り出し時には、ランナおよびスプルの樹脂流路内に残留されている樹脂材料残留部をキャビティ内の成形品から切り離す作業が次の通り行われる。まず、型閉め状態から、固定側型板および可動側型板が同時にランナストリッパプレートと、固定側取付板とから離れる方向(型開き方向)に移動する。これにより、ランナストリッパプレートおよび固定側型板間のランナ取出し面が開かれる。この型開き動作で、ランナおよびスプルの樹脂流路内に残留されている樹脂材料残留部がランナおよびスプルから引き抜かれ、同時にスプルの先端のゲートの部分でキャビティ内の成形品から切り離される。
【0006】
次に、可動側型板のみが更に同方向(型開き方向)へ移動して、固定側型板および可動側型板間の成形型分割面が開かれる。続いて、樹脂材料残留部を固定側取付板側から取り出すために、ランナストリッパプレートが固定側取付板から離れる方向(型開き方向)へ移動する。このランナストリッパプレートの移動動作により、ランナストリッパプレートに押されて樹脂材料残留部がランナロックピンのアンダーカット部から外される。その後、成形品および樹脂材料残留部が射出成形型内から取り出される。
【0007】
また、上記型開き動作の前半のランナストリッパプレートおよび固定側型板間のランナ取出し面が開かれる型開き動作の初期時には、ランナおよびスプルの樹脂流路内の樹脂材料残留部に次のような外力が作用する。すなわち、樹脂等の成形材料の粘着力、ゲートの切断力および樹脂材料残留部のスプル部分の収縮により発生する力によって型開き方向へ向けて第1の引っ張り力F1が作用するとともに、これと直交する方向へ向けて樹脂材料残留部のランナ部分の収縮により発生する第2の引っ張り力F2が作用する。そのため、樹脂材料残留部には、型開き方向への第1の引っ張り力F1と、これと直交する方向への第2の引っ張り力F2による引っ張り合力F3が型開き方向に対して斜め方向へ向けて作用する。このとき、型開き方向に対して斜め方向へ向けて作用する引っ張り合力F3により、樹脂材料残留部がアンダーカット部から簡単に外れて、固定側型板に付着してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、特許文献1では、ランナストリッパプレートにおけるランナとの対向面にランナロックピンのアンダーカット部の周囲の凹部の近傍にさらに複数のタブを設け、樹脂材料残留部のランナ部分の収縮により発生する型開き方向と直交する方向の第2の引っ張り力F2を複数のタブで受けることにより、樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着すること(ランナのトラレ)を防ぐ技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−141697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、ランナストリッパプレートにおけるランナとの対向面の限られた狭い範囲の箇所に複数のタブを新たに設ける必要があるので、射出成形型の構成が複雑になり、成形型の型設計が煩雑となる問題がある。さらに、複数のタブを新たに設けるために、ランナを伸ばす必要があるので、使用樹脂量が多くなる難点もある。
【0011】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、射出成形型の構成を簡素化することができ、簡便な構造により、可動側型板の型開き時に樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面の態様は、成形品を成形するキャビティを有する可動側型板と、前記可動側型板に対向配置され、前記キャビティに溶融樹脂材料を供給するスプルとこのスプルの基端部に連結されたランナとを有する固定側型板と、先端部に前記ランナ内で固化した樹脂材料の残留部と係合するアンダーカット部を有するランナロックピンの基端部が固定された固定側取付板と、前記固定側取付板と前記固定側型板との間に介挿され、かつ前記固定側取付板に対して接離可能に支持され、前記ランナロックピンの先端部が挿入されるピン挿入孔を有するランナストリッパプレートと、を具備し、前記ランナロックピンの前記アンダーカット部と前記樹脂材料残留部との係合部によって固定側型板および可動側型板が同時にランナストリッパプレートと、固定側取付板とから離れる方向に移動する時に、前記樹脂材料残留部を前記固定側取付板側に保持し、前記固定側取付板から前記ランナストリッパプレートが離れる方向に移動する動作にともない前記アンダーカット部から前記樹脂材料残留部を引き外して前記アンダーカット部と前記樹脂材料残留部との係合を解除する射出成形型であって、前記ランナストリッパプレートは、前記アンダーカット部と対応する前記ピン挿入孔の内周壁面に前記アンダーカット部との間で前記樹脂材料残留部を保持するアンダーカットタブ形成部を有し、前記アンダーカットタブ形成部は、前記アンダーカット部の周囲に残留する前記樹脂材料残留部の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定され少なくとも2つのテーパ面を有し、前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部の収縮力を受ける抜け防止部であることを有する射出成形型である。
【0013】
好ましくは、前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部のテーパ面の傾斜角度が他方のテーパ面の傾斜角度よりも小さい。
好ましくは、前記アンダーカット部は、基端部側から先端部側に向かうにしたがって径が大きくなるテーパ面を有し、前記アンダーカットタブ形成部は、前記他方のテーパ面の傾斜角度が前記アンダーカット部の前記テーパ面の傾斜角度と同じ傾斜角度かそれよりも大きい傾斜角度に設定されている。
【0014】
好ましくは、前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部が前記ランナロックピンの前記アンダーカット部よりも前記固定側型板との接触面側に配置されている。
好ましくは、前記アンダーカットタブ形成部は、前記2つのテーパ面の少なくともいずれか一方の縦断面形状が曲線によって形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射出成形型の構成を簡素化することができ、簡便な構造により、固定側型板および可動側型板が同時にランナストリッパプレートと、固定側取付板とから離れる方向に移動する時に、樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態の射出成形型が型閉め位置で保持されている状態を示す射出成形型全体の縦断面図。
【図2】第1の実施の形態の射出成形型の型閉め位置でのランナロックピンのアンダーカット部の周囲の断面形状を示す要部の縦断面図。
【図3】第1の実施の形態の射出成形型の溶融樹脂の供給通路内に溶融樹脂が供給された状態を示す射出成形型全体の縦断面図。
【図4】図3のランナロックピンのアンダーカット部の周囲の拡大状態を示す要部の縦断面図。
【図5】第1の実施の形態の射出成形型におけるランナロックピンの引き抜き作業の途中の状態を示す要部の縦断面図。
【図6】第1の実施の形態の射出成形型におけるランナロックピンの引き抜き作業の完了時の状態を示す要部の縦断面図。
【図7】第1の実施の形態の射出成形型の型開き位置での樹脂材料残留部の取り出し作業の前のロボット待機状態を示す要部の縦断面図。
【図8】第1の実施の形態の射出成形型の型開き位置での樹脂材料残留部の取り出し作業時のロボットによる樹脂材料残留部のチャック状態を示す要部の縦断面図。
【図9】第1の実施の形態の射出成形型の型開き位置での樹脂材料残留部の取り出し作業時のロボットによる樹脂材料残留部の引き抜き状態を示す要部の縦断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の射出成形型が型閉め位置で保持されている状態を示す要部の縦断面図。
【図11】第2の実施の形態の射出成形型の型閉め位置でのランナロックピンのアンダーカット部の周囲の断面形状を示す要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1乃至図9は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は、1つの射出成形型1で複数個の成形品を得る多数個取りの射出成形型1の場合を示す。図1は、射出成形型1が型閉め位置で保持されている状態を示す射出成形型1の全体の縦断面図である。本実施の形態の射出成形型1は、可動側型板2と、固定側型板3と、ランナストリッパプレート4と、固定側取付板5と、を具備する可動部分が3プレートの射出成形型である。
【0018】
可動側型板2は、成形品17(図3参照)を成形するキャビティ6を有する。固定側型板3は、可動側型板2に対向配置され、前記キャビティ6に溶融樹脂材料を供給する供給路を形成するスプル7とこのスプル7の基端部に連結されたランナ8とを有する。ここで、スプル7は、固定側型板3内に可動側型板2の型開き方向に延設されている。また、ランナ8は、固定側型板3内に可動側型板2の型開き方向と直交する方向に延設されている。スプル7の先端には、ゲート9を介してキャビティ6が連結されている。
【0019】
固定側取付板5には、固定側型板3とランナストリッパプレート4とがそれぞれ可動側型板2の型開き方向に移動可能に設けられている。この固定側取付板5には、固定側型板3のスプル7と対応する位置にランナロックピン10の基端部が固定されている。なお、固定側取付板5およびランナストリッパプレート4のそれぞれの中央部分には中央スプル16が設けられている。この中央スプル16にランナ8の内端部が連結されている。
【0020】
ランナストリッパプレート4は、前記固定側取付板5と前記固定側型板3との間に介挿され、かつ前記固定側取付板5に対して接離可能に支持されている。ランナストリッパプレート4には、ランナロックピン10の先端部が挿入されるピン挿入孔11が形成されている。ランナロックピン10は、先端部にランナ8内で固化した後述する樹脂材料の残留部15と係合するアンダーカット部12を有する。
【0021】
図2は、第1の実施の形態の射出成形型1の型閉め位置でのランナロックピン10のアンダーカット部12の周囲の断面形状を示す要部の縦断面図である。本実施の形態のアンダーカット部12は、ランナロックピン10の他の部分よりも外径が小径な小径円柱部13を有する。この小径円柱部13の外周面には、基端部側(ランナロックピン10側)から先端部側に向かうにしたがって径が徐々に大きくなる傾斜角度αのアンダーカット部テーパ面13aが形成されている。
【0022】
また、ランナストリッパプレート4には、アンダーカット部12と対応する前記ピン挿入孔11の内周壁面にピン挿入孔11の内径よりも大径な円形凹部であるアンダーカットタブ形成部14が形成されている。そして、射出成形時には、図3に示すように固定側型板3のスプル7とランナ8などの溶融樹脂の流路内を流れる樹脂材料の一部がランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入する。そのため、射出成形後、固定側型板3のスプル7とランナ8などの溶融樹脂の流路内の樹脂材料が固化して一体化された樹脂材料残留部15が形成される際に、同時にランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂も固化する。このとき、図4に示すようにランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂がアンダーカット部12と係合した状態で、固化される。そして、可動側型板2の型開き時には、このアンダーカット部12との係合部15aにより、ランナ8内で固化した樹脂材料残留部15を保持するようになっている。なお、樹脂材料残留部15は、図3に示すように固定側型板3のスプル7内で固化されたスプル残留部15bと、ランナ8内で固化されたランナ残留部15cと、1つの射出成形型1で複数個の成形品17を得る多数個取りの射出成形型1の場合の中央スプル16内で固化された中央スプル残留部15dなどが一体化された状態で固化された一体物として成形される。
【0023】
また、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部には、アンダーカット部12の周囲に残留する樹脂材料残留部15の係合部15aの抜き勾配が前記アンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの傾斜角度αと同じ傾斜角度αかそれよりも大きい傾斜角度θ1の第1のテーパ面14aと、前記第1のテーパ面14aとは異なる傾斜角度θ2に設定され、前記可動側型板2の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部15のランナ残留部15cの収縮力を受ける第2のテーパ面14bとが形成されている。これにより、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部の第2のテーパ面14bの部分によって前記樹脂材料残留部15の係合部15aの抜けを防止する抜け防止部20が形成されている。
【0024】
なお、ピン挿入孔11の中心線方向に対する第2のテーパ面14bの傾斜角度θ2は、ピン挿入孔11の中心線方向に対して0°以上で、第1のテーパ面14aの傾斜角度θ1よりも小さい角度に設定されている。さらに、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部は、第1のテーパ面14aと対応する部分の深さL1がアンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの長さよりも大きく設定されている。これにより、アンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bは、アンダーカット部12よりも固定側型板3とランナストリッパプレート4との接合面側に配置されている。また、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部は、第2のテーパ面14bと対応する部分の深さL2は、L1よりも小さい。
【0025】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の射出成形型1の駆動時には、まず、図1に示すように可動側型板2と、固定側型板3と、ランナストリッパプレート4と、固定側取付板5とが接合された型閉じ状態にセットされる。この状態で、図示しない射出成形機から供給される溶融樹脂が固定側取付板5およびランナストリッパプレート4の中央スプル16から固定側型板3のランナ8およびスプル7を経てゲート9を介して可動側型板2のキャビティ6内に供給される。このとき、固定側型板3のスプル7とランナ8などの溶融樹脂の流路内を流れる樹脂材料の一部は、ランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入する。
【0026】
その後、射出された樹脂は、圧力を保たれたまま冷却される。これにより、図3に示すようにキャビティ6内に充填された溶融樹脂が冷却されて、成形品17が形成される。このとき、溶融樹脂の供給通路である固定側取付板5およびランナストリッパプレート4の中央スプル16、固定側型板3のランナ8、スプル7、ゲート9内に残る溶融樹脂も同時に冷却される。そのため、射出成形後、ランナストリッパプレート4の中央スプル16、固定側型板3のランナ8、スプル7、ゲート9内に残る残存樹脂の塊も成形品17と一緒に一体的に接合された状態で、固化される。これにより、図3に示すように固定側型板3のスプル7内で固化されたスプル残留部15bと、ランナ8内で固化されたランナ残留部15cと、1つの射出成形型1で複数個の成形品17を得る多数個取りの射出成形型1の場合の中央スプル16内で固化された中央スプル残留部15dなどが一体化された状態で樹脂材料残留部15の一体物が成形される。さらに、樹脂材料残留部15が形成される際に、同時にランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂も固化する。このとき、図4に示すようにランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂がアンダーカット部12と係合した状態で、固化される。このアンダーカット部12との係合部15aにより、ランナ8内で固化した樹脂材料残留部15が保持される。
【0027】
次に、図3の型閉じ状態から、先ず、固定側型板3および可動側型板2が同時に図3中で左方向へ移動して、ランナストリッパプレート4および固定側型板3間のランナ取出し面が開かれる。このとき、樹脂材料残留部15は、アンダーカット部12との係合部15aにより、ランナロックピン10のアンダーカット部12に保持された状態で、ランナストリッパプレート4側に残されている。そのため、可動側型板2のキャビティ6内の成形品17と樹脂材料残留部15との間がゲート9の部分で切断される。
【0028】
また、上記可動側型板2の型開き動作時には、固定側型板3がランナストリッパプレート4から離れる方向に移動する際に、樹脂材料残留部15には次の通り引っ張り力が作用する。まず、溶融樹脂の流路内を流れる樹脂材料の粘着力、ゲート9の切断力およびスプル7内で固化されたスプル残留部15bの収縮により発生する力によって型開き方向(図4中で、左方向)へ向けて第1の引っ張り力F1が作用するとともに、ランナ8内で固化されたランナ残留部15cの収縮により発生する力によって上記引っ張り力F1と直交する方向(図4中で上下方向)へ向けて第2の引っ張り力F2、F3が作用する。この第2の引っ張り力F2、F3は、アンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bで受けることにより、相殺されるため、ランナロックピン10のアンダーカット部12へ生じる力は主に型開き方向の第1の引っ張り力F1のみとなる。
【0029】
この型開き方向の第1の引っ張り力F1に対してはランナロックピン10のアンダーカット部12により、抜止め効果を得ることができる。したがって、固定側型板3がランナストリッパプレート4から離れる方向に移動する際に、アンダーカット部12から樹脂材料残留部15の係合部15aが外れることを防止することでき、樹脂材料残留部15をランナストリッパプレート4側に付着させた状態で確実に保持することができる。
【0030】
続いて、可動側型板2のみが更に図3中で左方向へ移動して、固定側型板3および可動側型板2間のPL面(パーティングライン面)が開かれる。
その後、樹脂材料残留部15のアンダーカット部12と樹脂材料残留部15との係合を解除する作業が行われる。この樹脂材料残留部15の取り出し作業時には、図5に示すように固定側取付板5からランナストリッパプレート4が同図中で左方向へ移動する。このとき、ランナストリッパプレート4が固定側取付板5から離れる方向に移動する動作にともない樹脂材料残留部15は、ランナストリッパプレート4に押されてアンダーカット部12から前記樹脂材料残留部15の係合部15aを引き外してアンダーカット部12と樹脂材料残留部15との係合を解除する。そのため、樹脂材料残留部15は、ランナロックピン10のアンダーカット部12から外される。その後、可動側型板2のキャビティ6内の成形品17および樹脂材料残留部15が射出成形型1から取り出される。
【0031】
図6は、ランナロックピン10の引き抜き作業の完了時の状態を示す。また、射出成形型1の近傍位置には図7に示すように取り出しロボット18が待機状態で配置されている。取り出しロボット18には、例えば樹脂材料残留部15のスプル残留部15bを把持する把持部19が設けられている。そして、ランナロックピン10の引き抜き作業の完了後、図8に示すように取り出しロボット18が駆動され、取り出しロボット18の把持部19によって樹脂材料残留部15のスプル残留部15bが把持される。
【0032】
続いて、図9に示すように樹脂材料残留部15全体が、取り出しロボット18によって射出成形型1から引き抜かれる。さらに樹脂材料残留部15の引き抜き後、取り出しロボット18は、上昇して射出成形型1の外に移動され、樹脂材料残留部15の取り出し作業が完了する。
【0033】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の射出成形型1のランナストリッパプレート4は、アンダーカット部12と対応するピン挿入孔11の内周壁面のアンダーカットタブ形成部14に、前記アンダーカット部12の周囲に残留する前記樹脂材料残留部15の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定された第1のテーパ面14aと、第2のテーパ面14bとを有し、前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板2の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部15の収縮力を受ける抜け防止部20である。そのため、射出成形型1の型開き時に固定側型板3がランナストリッパプレート4から離れる方向に移動する際に、抜け防止部20の第2のテーパ面14bによってアンダーカット部12から樹脂材料残留部15の係合部15aが外れることを防止することでき、樹脂材料残留部15をランナストリッパプレート4側に付着させた状態で確実に保持することができる。したがって、樹脂材料残留部15がアンダーカット部12から外れて、固定側型板3に付着すること(ランナのトラレ)を防ぐことができる。その結果、ランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14に第1のテーパ面14aと、第2のテーパ面14bとを加工するのみのため、従来に比べて射出成形型1のランナ8の構成を簡素化することができるので、簡便な構造により、可動側型板2の型開き時に樹脂材料残留部15がアンダーカット部12から外れて、固定側型板3に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することができる。
【0034】
また、本実施の形態の射出成形型1では、従来のようにランナストリッパプレート4におけるランナ8との対向面の限られた狭い範囲の箇所に複数のタブを新たに設ける場合のようにランナ8を伸ばしてタブを形成する必要がない。そのため、従来例と比較して使用樹脂量を抑えることができる効果がある。
【0035】
さらに、本実施の形態ではアンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bは、アンダーカット部12よりも固定側型板3とランナストリッパプレート4との接合面側に配置されている。そのため、図5に示すように固定側取付板5からランナストリッパプレート4が同図中で左方向へ移動して、ランナロックピン10が樹脂材料残留部15の係合部15aから引き抜かれる。このとき、樹脂材料残留部15の係合部15aはランナロックピン10により、係合部15aの樹脂が内側から外側に押し広げられる。押し広げられた係合部15aの樹脂は、樹脂材料残留部15をランナストリッパプレート4側に固着するように作用するが、本実施の形態では樹脂が押し広げられる係合部15aは抜き勾配の大きな傾斜角度θ1の第1のテーパ面14aの部分であるので、樹脂材料残留部15の係合部15aがランナストリッパプレート4の第1のテーパ面14aの部分へ、過度に固着することが無い。したがって、ロボット18による樹脂材料残留部15の取り出しをより確実に行うことができる効果がある。
【0036】
また、本実施の形態ではアンダーカットタブ形成部14の第1のテーパ面14aの傾斜角度θ1は、アンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの傾斜角度αと同じ傾斜角度αかそれよりも大きい傾斜角度に設定されている。そのため、ランナロックピン10とアンダーカットタブ形成部14の第1のテーパ面14aとの間の樹脂材料残留部15の係合部15aに薄肉の部分が無いため、樹脂材料残留部15の係合部15aの強度が高まる。したがって、図5に示すように固定側取付板5からランナストリッパプレート4が同図中で左方向へ移動して、ランナロックピン10が樹脂材料残留部15の係合部15aから引き抜かれる際、樹脂材料残留部15の係合部15aが破損することがないので、樹脂材料残留部15がアンダーカット部12から外れて、固定側型板3に付着すること(ランナのトラレ)を確実に防止することができる。
【0037】
[第2の実施の形態]
(構成)
図10および図11は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図9参照)の射出成形型1のランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14の構成を次の通り変更した変形例である。
【0038】
すなわち、本実施の形態のランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14は、第1のテーパ面14a2と、第2のテーパ面14b2の縦断面形状が曲線によって形成されている点が第1の実施の形態とは異なる。ここで、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部は、第1のテーパ面14a2と対応する部分の深さL1がアンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの長さよりも大きく設定されている。これにより、アンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bは、アンダーカット部12よりも固定側型板3とランナストリッパプレート4との接合面側に配置されている。
【0039】
本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果が得られる。なお、本実施の形態では、ランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14は、第1のテーパ面14a2と、第2のテーパ面14b2の両方の縦断面形状が曲線によって形成されている構成を示したが、第1のテーパ面14a2と、第2のテーパ面14b2のいずれか一方の縦断面形状が曲線によって形成されている構成にしてもよい。
【0040】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) 3プレートの射出成形型において、ランナストリッパプレートのアンダーカットタブ形成部が、抜き勾配の異なる少なくとも二つのテーパ面から成ることを特徴とする射出成形型。
【0041】
(付記項2) 前記アンダーカットタブ形成部は前記ランナ取出し面に最も近いテーパ面が、ランナロックピンのアンダーカット部よりもランナ取出し面側に構成されたことを特徴とする射出成形型。
(付記項3) 前記テーパ面のうち、ランナ取出し面に最も近いテーパ面の抜き勾配が、最も小さいことを特徴とする射出成形型。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ランナストリッパプレートを備えた3プレートの射出成形型を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0043】
2…可動側型板、3…固定側型板、4…ランナストリッパプレート、5…固定側取付板、6…キャビティ、7…スプル、8…ランナ、10…ランナロックピン、11…ピン挿入孔、12…アンダーカット部、13a…アンダーカット部テーパ面、14…アンダーカットタブ形成部、14a…第1のテーパ面、14b…第2のテーパ面、15…樹脂材料残留部、15a…係合部、20…抜け防止部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランナ内で固化した樹脂材料の残留部を可動側型板の型開き時にランナロックピンによって固定側取付板に保持した後、ランナストリッパプレートによって樹脂材料残留部をランナロックピンから引き外す3プレートの射出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動側型板と、固定側型板と、ランナストリッパプレートと、固定側取付板と、を具備する可動部分が3プレートの射出成形型が示されている。可動側型板は、成形品を成形するキャビティを有する。固定側型板は、可動側型板に対向配置され、前記キャビティに溶融樹脂材料を供給するスプルとこのスプルの基端部に連結されたランナとを有する。スプルの先端にはゲートを介してキャビティが連結されている。
【0003】
固定側取付板には、固定側型板とランナストリッパプレートとがそれぞれ可動側型板の型開き方向に移動可能に設けられている。この固定側取付板には、ランナロックピンの基端部が固定されている。ランナロックピンの先端部は、ランナ内で固化した樹脂材料の残留部と係合するアンダーカット部を有する。ランナストリッパプレートは、前記固定側取付板と前記固定側型板との間に介挿され、かつ前記固定側取付板に対して接離可能に支持されている。ランナストリッパプレートは、ランナロックピンの先端部が挿入されるピン挿入孔を有する。さらに、ランナストリッパプレートには、ピン挿入孔の先端部にランナロックピンのアンダーカット部の周囲に配置される大径な凹部が形成されている。
【0004】
そして、射出成形型による射出成形時には、可動側型板と、固定側型板と、ランナストリッパプレートと、固定側取付板とが接合された型閉め位置で保持されている状態で、射出成形機から供給される溶融樹脂がランナおよびスプルの樹脂流路を通してスプルの先端のゲートからキャビティ内に流入される。その後、キャビティ内の溶融樹脂が固化してキャビティ内で成形品が形成されている。このとき、ランナおよびスプルの樹脂流路内にも溶融樹脂は残留している。そして、キャビティ内の成形品の形成時には、同時にランナおよびスプルの樹脂流路内に残留している溶融樹脂も固化してランナおよびスプルの樹脂流路内に残留される。このとき、ランナおよびスプルの樹脂流路内の樹脂材料残留部は、ランナロックピンの先端部のアンダーカット部と係合された状態で保持される。
【0005】
そして、キャビティ内の成形品の取り出し時には、ランナおよびスプルの樹脂流路内に残留されている樹脂材料残留部をキャビティ内の成形品から切り離す作業が次の通り行われる。まず、型閉め状態から、固定側型板および可動側型板が同時にランナストリッパプレートと、固定側取付板とから離れる方向(型開き方向)に移動する。これにより、ランナストリッパプレートおよび固定側型板間のランナ取出し面が開かれる。この型開き動作で、ランナおよびスプルの樹脂流路内に残留されている樹脂材料残留部がランナおよびスプルから引き抜かれ、同時にスプルの先端のゲートの部分でキャビティ内の成形品から切り離される。
【0006】
次に、可動側型板のみが更に同方向(型開き方向)へ移動して、固定側型板および可動側型板間の成形型分割面が開かれる。続いて、樹脂材料残留部を固定側取付板側から取り出すために、ランナストリッパプレートが固定側取付板から離れる方向(型開き方向)へ移動する。このランナストリッパプレートの移動動作により、ランナストリッパプレートに押されて樹脂材料残留部がランナロックピンのアンダーカット部から外される。その後、成形品および樹脂材料残留部が射出成形型内から取り出される。
【0007】
また、上記型開き動作の前半のランナストリッパプレートおよび固定側型板間のランナ取出し面が開かれる型開き動作の初期時には、ランナおよびスプルの樹脂流路内の樹脂材料残留部に次のような外力が作用する。すなわち、樹脂等の成形材料の粘着力、ゲートの切断力および樹脂材料残留部のスプル部分の収縮により発生する力によって型開き方向へ向けて第1の引っ張り力F1が作用するとともに、これと直交する方向へ向けて樹脂材料残留部のランナ部分の収縮により発生する第2の引っ張り力F2が作用する。そのため、樹脂材料残留部には、型開き方向への第1の引っ張り力F1と、これと直交する方向への第2の引っ張り力F2による引っ張り合力F3が型開き方向に対して斜め方向へ向けて作用する。このとき、型開き方向に対して斜め方向へ向けて作用する引っ張り合力F3により、樹脂材料残留部がアンダーカット部から簡単に外れて、固定側型板に付着してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、特許文献1では、ランナストリッパプレートにおけるランナとの対向面にランナロックピンのアンダーカット部の周囲の凹部の近傍にさらに複数のタブを設け、樹脂材料残留部のランナ部分の収縮により発生する型開き方向と直交する方向の第2の引っ張り力F2を複数のタブで受けることにより、樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着すること(ランナのトラレ)を防ぐ技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−141697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、ランナストリッパプレートにおけるランナとの対向面の限られた狭い範囲の箇所に複数のタブを新たに設ける必要があるので、射出成形型の構成が複雑になり、成形型の型設計が煩雑となる問題がある。さらに、複数のタブを新たに設けるために、ランナを伸ばす必要があるので、使用樹脂量が多くなる難点もある。
【0011】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、射出成形型の構成を簡素化することができ、簡便な構造により、可動側型板の型開き時に樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面の態様は、成形品を成形するキャビティを有する可動側型板と、前記可動側型板に対向配置され、前記キャビティに溶融樹脂材料を供給するスプルとこのスプルの基端部に連結されたランナとを有する固定側型板と、先端部に前記ランナ内で固化した樹脂材料の残留部と係合するアンダーカット部を有するランナロックピンの基端部が固定された固定側取付板と、前記固定側取付板と前記固定側型板との間に介挿され、かつ前記固定側取付板に対して接離可能に支持され、前記ランナロックピンの先端部が挿入されるピン挿入孔を有するランナストリッパプレートと、を具備し、前記ランナロックピンの前記アンダーカット部と前記樹脂材料残留部との係合部によって固定側型板および可動側型板が同時にランナストリッパプレートと、固定側取付板とから離れる方向に移動する時に、前記樹脂材料残留部を前記固定側取付板側に保持し、前記固定側取付板から前記ランナストリッパプレートが離れる方向に移動する動作にともない前記アンダーカット部から前記樹脂材料残留部を引き外して前記アンダーカット部と前記樹脂材料残留部との係合を解除する射出成形型であって、前記ランナストリッパプレートは、前記アンダーカット部と対応する前記ピン挿入孔の内周壁面に前記アンダーカット部との間で前記樹脂材料残留部を保持するアンダーカットタブ形成部を有し、前記アンダーカットタブ形成部は、前記アンダーカット部の周囲に残留する前記樹脂材料残留部の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定され少なくとも2つのテーパ面を有し、前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部の収縮力を受ける抜け防止部であることを有する射出成形型である。
【0013】
好ましくは、前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部のテーパ面の傾斜角度が他方のテーパ面の傾斜角度よりも小さい。
好ましくは、前記アンダーカット部は、基端部側から先端部側に向かうにしたがって径が大きくなるテーパ面を有し、前記アンダーカットタブ形成部は、前記他方のテーパ面の傾斜角度が前記アンダーカット部の前記テーパ面の傾斜角度と同じ傾斜角度かそれよりも大きい傾斜角度に設定されている。
【0014】
好ましくは、前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部が前記ランナロックピンの前記アンダーカット部よりも前記固定側型板との接触面側に配置されている。
好ましくは、前記アンダーカットタブ形成部は、前記2つのテーパ面の少なくともいずれか一方の縦断面形状が曲線によって形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射出成形型の構成を簡素化することができ、簡便な構造により、固定側型板および可動側型板が同時にランナストリッパプレートと、固定側取付板とから離れる方向に移動する時に、樹脂材料残留部がアンダーカット部から外れて、固定側型板に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態の射出成形型が型閉め位置で保持されている状態を示す射出成形型全体の縦断面図。
【図2】第1の実施の形態の射出成形型の型閉め位置でのランナロックピンのアンダーカット部の周囲の断面形状を示す要部の縦断面図。
【図3】第1の実施の形態の射出成形型の溶融樹脂の供給通路内に溶融樹脂が供給された状態を示す射出成形型全体の縦断面図。
【図4】図3のランナロックピンのアンダーカット部の周囲の拡大状態を示す要部の縦断面図。
【図5】第1の実施の形態の射出成形型におけるランナロックピンの引き抜き作業の途中の状態を示す要部の縦断面図。
【図6】第1の実施の形態の射出成形型におけるランナロックピンの引き抜き作業の完了時の状態を示す要部の縦断面図。
【図7】第1の実施の形態の射出成形型の型開き位置での樹脂材料残留部の取り出し作業の前のロボット待機状態を示す要部の縦断面図。
【図8】第1の実施の形態の射出成形型の型開き位置での樹脂材料残留部の取り出し作業時のロボットによる樹脂材料残留部のチャック状態を示す要部の縦断面図。
【図9】第1の実施の形態の射出成形型の型開き位置での樹脂材料残留部の取り出し作業時のロボットによる樹脂材料残留部の引き抜き状態を示す要部の縦断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の射出成形型が型閉め位置で保持されている状態を示す要部の縦断面図。
【図11】第2の実施の形態の射出成形型の型閉め位置でのランナロックピンのアンダーカット部の周囲の断面形状を示す要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1乃至図9は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は、1つの射出成形型1で複数個の成形品を得る多数個取りの射出成形型1の場合を示す。図1は、射出成形型1が型閉め位置で保持されている状態を示す射出成形型1の全体の縦断面図である。本実施の形態の射出成形型1は、可動側型板2と、固定側型板3と、ランナストリッパプレート4と、固定側取付板5と、を具備する可動部分が3プレートの射出成形型である。
【0018】
可動側型板2は、成形品17(図3参照)を成形するキャビティ6を有する。固定側型板3は、可動側型板2に対向配置され、前記キャビティ6に溶融樹脂材料を供給する供給路を形成するスプル7とこのスプル7の基端部に連結されたランナ8とを有する。ここで、スプル7は、固定側型板3内に可動側型板2の型開き方向に延設されている。また、ランナ8は、固定側型板3内に可動側型板2の型開き方向と直交する方向に延設されている。スプル7の先端には、ゲート9を介してキャビティ6が連結されている。
【0019】
固定側取付板5には、固定側型板3とランナストリッパプレート4とがそれぞれ可動側型板2の型開き方向に移動可能に設けられている。この固定側取付板5には、固定側型板3のスプル7と対応する位置にランナロックピン10の基端部が固定されている。なお、固定側取付板5およびランナストリッパプレート4のそれぞれの中央部分には中央スプル16が設けられている。この中央スプル16にランナ8の内端部が連結されている。
【0020】
ランナストリッパプレート4は、前記固定側取付板5と前記固定側型板3との間に介挿され、かつ前記固定側取付板5に対して接離可能に支持されている。ランナストリッパプレート4には、ランナロックピン10の先端部が挿入されるピン挿入孔11が形成されている。ランナロックピン10は、先端部にランナ8内で固化した後述する樹脂材料の残留部15と係合するアンダーカット部12を有する。
【0021】
図2は、第1の実施の形態の射出成形型1の型閉め位置でのランナロックピン10のアンダーカット部12の周囲の断面形状を示す要部の縦断面図である。本実施の形態のアンダーカット部12は、ランナロックピン10の他の部分よりも外径が小径な小径円柱部13を有する。この小径円柱部13の外周面には、基端部側(ランナロックピン10側)から先端部側に向かうにしたがって径が徐々に大きくなる傾斜角度αのアンダーカット部テーパ面13aが形成されている。
【0022】
また、ランナストリッパプレート4には、アンダーカット部12と対応する前記ピン挿入孔11の内周壁面にピン挿入孔11の内径よりも大径な円形凹部であるアンダーカットタブ形成部14が形成されている。そして、射出成形時には、図3に示すように固定側型板3のスプル7とランナ8などの溶融樹脂の流路内を流れる樹脂材料の一部がランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入する。そのため、射出成形後、固定側型板3のスプル7とランナ8などの溶融樹脂の流路内の樹脂材料が固化して一体化された樹脂材料残留部15が形成される際に、同時にランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂も固化する。このとき、図4に示すようにランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂がアンダーカット部12と係合した状態で、固化される。そして、可動側型板2の型開き時には、このアンダーカット部12との係合部15aにより、ランナ8内で固化した樹脂材料残留部15を保持するようになっている。なお、樹脂材料残留部15は、図3に示すように固定側型板3のスプル7内で固化されたスプル残留部15bと、ランナ8内で固化されたランナ残留部15cと、1つの射出成形型1で複数個の成形品17を得る多数個取りの射出成形型1の場合の中央スプル16内で固化された中央スプル残留部15dなどが一体化された状態で固化された一体物として成形される。
【0023】
また、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部には、アンダーカット部12の周囲に残留する樹脂材料残留部15の係合部15aの抜き勾配が前記アンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの傾斜角度αと同じ傾斜角度αかそれよりも大きい傾斜角度θ1の第1のテーパ面14aと、前記第1のテーパ面14aとは異なる傾斜角度θ2に設定され、前記可動側型板2の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部15のランナ残留部15cの収縮力を受ける第2のテーパ面14bとが形成されている。これにより、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部の第2のテーパ面14bの部分によって前記樹脂材料残留部15の係合部15aの抜けを防止する抜け防止部20が形成されている。
【0024】
なお、ピン挿入孔11の中心線方向に対する第2のテーパ面14bの傾斜角度θ2は、ピン挿入孔11の中心線方向に対して0°以上で、第1のテーパ面14aの傾斜角度θ1よりも小さい角度に設定されている。さらに、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部は、第1のテーパ面14aと対応する部分の深さL1がアンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの長さよりも大きく設定されている。これにより、アンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bは、アンダーカット部12よりも固定側型板3とランナストリッパプレート4との接合面側に配置されている。また、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部は、第2のテーパ面14bと対応する部分の深さL2は、L1よりも小さい。
【0025】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の射出成形型1の駆動時には、まず、図1に示すように可動側型板2と、固定側型板3と、ランナストリッパプレート4と、固定側取付板5とが接合された型閉じ状態にセットされる。この状態で、図示しない射出成形機から供給される溶融樹脂が固定側取付板5およびランナストリッパプレート4の中央スプル16から固定側型板3のランナ8およびスプル7を経てゲート9を介して可動側型板2のキャビティ6内に供給される。このとき、固定側型板3のスプル7とランナ8などの溶融樹脂の流路内を流れる樹脂材料の一部は、ランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入する。
【0026】
その後、射出された樹脂は、圧力を保たれたまま冷却される。これにより、図3に示すようにキャビティ6内に充填された溶融樹脂が冷却されて、成形品17が形成される。このとき、溶融樹脂の供給通路である固定側取付板5およびランナストリッパプレート4の中央スプル16、固定側型板3のランナ8、スプル7、ゲート9内に残る溶融樹脂も同時に冷却される。そのため、射出成形後、ランナストリッパプレート4の中央スプル16、固定側型板3のランナ8、スプル7、ゲート9内に残る残存樹脂の塊も成形品17と一緒に一体的に接合された状態で、固化される。これにより、図3に示すように固定側型板3のスプル7内で固化されたスプル残留部15bと、ランナ8内で固化されたランナ残留部15cと、1つの射出成形型1で複数個の成形品17を得る多数個取りの射出成形型1の場合の中央スプル16内で固化された中央スプル残留部15dなどが一体化された状態で樹脂材料残留部15の一体物が成形される。さらに、樹脂材料残留部15が形成される際に、同時にランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂も固化する。このとき、図4に示すようにランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14とランナロックピン10のアンダーカット部12との間に流入した溶融樹脂がアンダーカット部12と係合した状態で、固化される。このアンダーカット部12との係合部15aにより、ランナ8内で固化した樹脂材料残留部15が保持される。
【0027】
次に、図3の型閉じ状態から、先ず、固定側型板3および可動側型板2が同時に図3中で左方向へ移動して、ランナストリッパプレート4および固定側型板3間のランナ取出し面が開かれる。このとき、樹脂材料残留部15は、アンダーカット部12との係合部15aにより、ランナロックピン10のアンダーカット部12に保持された状態で、ランナストリッパプレート4側に残されている。そのため、可動側型板2のキャビティ6内の成形品17と樹脂材料残留部15との間がゲート9の部分で切断される。
【0028】
また、上記可動側型板2の型開き動作時には、固定側型板3がランナストリッパプレート4から離れる方向に移動する際に、樹脂材料残留部15には次の通り引っ張り力が作用する。まず、溶融樹脂の流路内を流れる樹脂材料の粘着力、ゲート9の切断力およびスプル7内で固化されたスプル残留部15bの収縮により発生する力によって型開き方向(図4中で、左方向)へ向けて第1の引っ張り力F1が作用するとともに、ランナ8内で固化されたランナ残留部15cの収縮により発生する力によって上記引っ張り力F1と直交する方向(図4中で上下方向)へ向けて第2の引っ張り力F2、F3が作用する。この第2の引っ張り力F2、F3は、アンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bで受けることにより、相殺されるため、ランナロックピン10のアンダーカット部12へ生じる力は主に型開き方向の第1の引っ張り力F1のみとなる。
【0029】
この型開き方向の第1の引っ張り力F1に対してはランナロックピン10のアンダーカット部12により、抜止め効果を得ることができる。したがって、固定側型板3がランナストリッパプレート4から離れる方向に移動する際に、アンダーカット部12から樹脂材料残留部15の係合部15aが外れることを防止することでき、樹脂材料残留部15をランナストリッパプレート4側に付着させた状態で確実に保持することができる。
【0030】
続いて、可動側型板2のみが更に図3中で左方向へ移動して、固定側型板3および可動側型板2間のPL面(パーティングライン面)が開かれる。
その後、樹脂材料残留部15のアンダーカット部12と樹脂材料残留部15との係合を解除する作業が行われる。この樹脂材料残留部15の取り出し作業時には、図5に示すように固定側取付板5からランナストリッパプレート4が同図中で左方向へ移動する。このとき、ランナストリッパプレート4が固定側取付板5から離れる方向に移動する動作にともない樹脂材料残留部15は、ランナストリッパプレート4に押されてアンダーカット部12から前記樹脂材料残留部15の係合部15aを引き外してアンダーカット部12と樹脂材料残留部15との係合を解除する。そのため、樹脂材料残留部15は、ランナロックピン10のアンダーカット部12から外される。その後、可動側型板2のキャビティ6内の成形品17および樹脂材料残留部15が射出成形型1から取り出される。
【0031】
図6は、ランナロックピン10の引き抜き作業の完了時の状態を示す。また、射出成形型1の近傍位置には図7に示すように取り出しロボット18が待機状態で配置されている。取り出しロボット18には、例えば樹脂材料残留部15のスプル残留部15bを把持する把持部19が設けられている。そして、ランナロックピン10の引き抜き作業の完了後、図8に示すように取り出しロボット18が駆動され、取り出しロボット18の把持部19によって樹脂材料残留部15のスプル残留部15bが把持される。
【0032】
続いて、図9に示すように樹脂材料残留部15全体が、取り出しロボット18によって射出成形型1から引き抜かれる。さらに樹脂材料残留部15の引き抜き後、取り出しロボット18は、上昇して射出成形型1の外に移動され、樹脂材料残留部15の取り出し作業が完了する。
【0033】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の射出成形型1のランナストリッパプレート4は、アンダーカット部12と対応するピン挿入孔11の内周壁面のアンダーカットタブ形成部14に、前記アンダーカット部12の周囲に残留する前記樹脂材料残留部15の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定された第1のテーパ面14aと、第2のテーパ面14bとを有し、前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板2の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部15の収縮力を受ける抜け防止部20である。そのため、射出成形型1の型開き時に固定側型板3がランナストリッパプレート4から離れる方向に移動する際に、抜け防止部20の第2のテーパ面14bによってアンダーカット部12から樹脂材料残留部15の係合部15aが外れることを防止することでき、樹脂材料残留部15をランナストリッパプレート4側に付着させた状態で確実に保持することができる。したがって、樹脂材料残留部15がアンダーカット部12から外れて、固定側型板3に付着すること(ランナのトラレ)を防ぐことができる。その結果、ランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14に第1のテーパ面14aと、第2のテーパ面14bとを加工するのみのため、従来に比べて射出成形型1のランナ8の構成を簡素化することができるので、簡便な構造により、可動側型板2の型開き時に樹脂材料残留部15がアンダーカット部12から外れて、固定側型板3に付着するランナのトラレを防ぐことができる射出成形型を提供することができる。
【0034】
また、本実施の形態の射出成形型1では、従来のようにランナストリッパプレート4におけるランナ8との対向面の限られた狭い範囲の箇所に複数のタブを新たに設ける場合のようにランナ8を伸ばしてタブを形成する必要がない。そのため、従来例と比較して使用樹脂量を抑えることができる効果がある。
【0035】
さらに、本実施の形態ではアンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bは、アンダーカット部12よりも固定側型板3とランナストリッパプレート4との接合面側に配置されている。そのため、図5に示すように固定側取付板5からランナストリッパプレート4が同図中で左方向へ移動して、ランナロックピン10が樹脂材料残留部15の係合部15aから引き抜かれる。このとき、樹脂材料残留部15の係合部15aはランナロックピン10により、係合部15aの樹脂が内側から外側に押し広げられる。押し広げられた係合部15aの樹脂は、樹脂材料残留部15をランナストリッパプレート4側に固着するように作用するが、本実施の形態では樹脂が押し広げられる係合部15aは抜き勾配の大きな傾斜角度θ1の第1のテーパ面14aの部分であるので、樹脂材料残留部15の係合部15aがランナストリッパプレート4の第1のテーパ面14aの部分へ、過度に固着することが無い。したがって、ロボット18による樹脂材料残留部15の取り出しをより確実に行うことができる効果がある。
【0036】
また、本実施の形態ではアンダーカットタブ形成部14の第1のテーパ面14aの傾斜角度θ1は、アンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの傾斜角度αと同じ傾斜角度αかそれよりも大きい傾斜角度に設定されている。そのため、ランナロックピン10とアンダーカットタブ形成部14の第1のテーパ面14aとの間の樹脂材料残留部15の係合部15aに薄肉の部分が無いため、樹脂材料残留部15の係合部15aの強度が高まる。したがって、図5に示すように固定側取付板5からランナストリッパプレート4が同図中で左方向へ移動して、ランナロックピン10が樹脂材料残留部15の係合部15aから引き抜かれる際、樹脂材料残留部15の係合部15aが破損することがないので、樹脂材料残留部15がアンダーカット部12から外れて、固定側型板3に付着すること(ランナのトラレ)を確実に防止することができる。
【0037】
[第2の実施の形態]
(構成)
図10および図11は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図9参照)の射出成形型1のランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14の構成を次の通り変更した変形例である。
【0038】
すなわち、本実施の形態のランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14は、第1のテーパ面14a2と、第2のテーパ面14b2の縦断面形状が曲線によって形成されている点が第1の実施の形態とは異なる。ここで、アンダーカットタブ形成部14の円形凹部は、第1のテーパ面14a2と対応する部分の深さL1がアンダーカット部12のアンダーカット部テーパ面13aの長さよりも大きく設定されている。これにより、アンダーカットタブ形成部14の第2のテーパ面14bは、アンダーカット部12よりも固定側型板3とランナストリッパプレート4との接合面側に配置されている。
【0039】
本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果が得られる。なお、本実施の形態では、ランナストリッパプレート4のアンダーカットタブ形成部14は、第1のテーパ面14a2と、第2のテーパ面14b2の両方の縦断面形状が曲線によって形成されている構成を示したが、第1のテーパ面14a2と、第2のテーパ面14b2のいずれか一方の縦断面形状が曲線によって形成されている構成にしてもよい。
【0040】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) 3プレートの射出成形型において、ランナストリッパプレートのアンダーカットタブ形成部が、抜き勾配の異なる少なくとも二つのテーパ面から成ることを特徴とする射出成形型。
【0041】
(付記項2) 前記アンダーカットタブ形成部は前記ランナ取出し面に最も近いテーパ面が、ランナロックピンのアンダーカット部よりもランナ取出し面側に構成されたことを特徴とする射出成形型。
(付記項3) 前記テーパ面のうち、ランナ取出し面に最も近いテーパ面の抜き勾配が、最も小さいことを特徴とする射出成形型。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ランナストリッパプレートを備えた3プレートの射出成形型を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0043】
2…可動側型板、3…固定側型板、4…ランナストリッパプレート、5…固定側取付板、6…キャビティ、7…スプル、8…ランナ、10…ランナロックピン、11…ピン挿入孔、12…アンダーカット部、13a…アンダーカット部テーパ面、14…アンダーカットタブ形成部、14a…第1のテーパ面、14b…第2のテーパ面、15…樹脂材料残留部、15a…係合部、20…抜け防止部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を成形するキャビティを有する可動側型板と、
前記可動側型板に対向配置され、前記キャビティに溶融樹脂材料を供給するスプルと当該スプルの基端部に連結されたランナとを有する固定側型板と、
先端部に前記ランナ内で固化した樹脂材料残留部と係合するアンダーカット部を有するランナロックピンの基端部が固定された固定側取付板と、
前記固定側取付板と前記固定側型板との間に配置され、前記ランナロックピンの先端部が挿入されるピン挿入孔を有するランナストリッパプレートと、を具備し、
前記ランナストリッパプレートは、前記アンダーカット部と対応する前記ピン挿入孔の内周壁面に、前記アンダーカット部との間で前記樹脂材料残留部を保持するアンダーカットタブ形成部を有し、
前記アンダーカットタブ形成部は、前記アンダーカット部の周囲に残留する前記樹脂材料残留部の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定された少なくとも2つのテーパ面を有し、
前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部の収縮力を受ける抜け防止部であることを有する射出成形型。
【請求項2】
前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部のテーパ面の傾斜角度が他方のテーパ面の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項3】
前記アンダーカット部は、基端部側から先端部側に向かうにしたがって、径が大きくなるテーパ面を有し、
前記アンダーカットタブ形成部は、前記他方のテーパ面の傾斜角度が前記アンダーカット部の前記テーパ面の傾斜角度と同じ傾斜角度かそれよりも大きい傾斜角度に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形型。
【請求項4】
前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部が前記ランナロックピンの前記アンダーカット部よりも前記固定側型板との接触面側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項5】
前記アンダーカットタブ形成部は、前記2つのテーパ面の少なくともいずれか一方の縦断面形状が曲線によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項1】
成形品を成形するキャビティを有する可動側型板と、
前記可動側型板に対向配置され、前記キャビティに溶融樹脂材料を供給するスプルと当該スプルの基端部に連結されたランナとを有する固定側型板と、
先端部に前記ランナ内で固化した樹脂材料残留部と係合するアンダーカット部を有するランナロックピンの基端部が固定された固定側取付板と、
前記固定側取付板と前記固定側型板との間に配置され、前記ランナロックピンの先端部が挿入されるピン挿入孔を有するランナストリッパプレートと、を具備し、
前記ランナストリッパプレートは、前記アンダーカット部と対応する前記ピン挿入孔の内周壁面に、前記アンダーカット部との間で前記樹脂材料残留部を保持するアンダーカットタブ形成部を有し、
前記アンダーカットタブ形成部は、前記アンダーカット部の周囲に残留する前記樹脂材料残留部の抜き勾配が異なる傾斜角度に設定された少なくとも2つのテーパ面を有し、
前記2つのテーパ面のうちの一方は前記可動側型板の型開き方向と直交する方向に作用する前記樹脂材料残留部の収縮力を受ける抜け防止部であることを有する射出成形型。
【請求項2】
前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部のテーパ面の傾斜角度が他方のテーパ面の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項3】
前記アンダーカット部は、基端部側から先端部側に向かうにしたがって、径が大きくなるテーパ面を有し、
前記アンダーカットタブ形成部は、前記他方のテーパ面の傾斜角度が前記アンダーカット部の前記テーパ面の傾斜角度と同じ傾斜角度かそれよりも大きい傾斜角度に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形型。
【請求項4】
前記アンダーカットタブ形成部は、前記抜け防止部が前記ランナロックピンの前記アンダーカット部よりも前記固定側型板との接触面側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項5】
前記アンダーカットタブ形成部は、前記2つのテーパ面の少なくともいずれか一方の縦断面形状が曲線によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−131093(P2012−131093A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284397(P2010−284397)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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