説明

射出成形機における射出保圧制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形機の射出保圧制御方法に関するもので、射出速度による慣性力を無くし、滑らかに射出行程から保圧行程に切換えることを目的としたものである。
【0002】
【従来の技術】従来の射出成形機では、射出行程から保圧行程までのスクリュ2の定められた位置で、射出速度と射出圧力を多段に切換制御する油圧回路は、図3に見られるよう、射出シリンダ1入口側に電磁式流量調整弁6と電磁式圧力調整弁7を構成しているメーターイン回路であり、その方法は、射出行程と保圧行程までの全行程にわたって、制御装置11から送られてくる射出多段制御信号を、電磁式流量調整弁6と電磁式圧力調整弁7に送ることにより、多段で制御するものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の、射出行程から保圧行程までの射出速度と射出圧力をメーターイン制御回路で切換える方法の場合、1. スクリュや射出シリンダのピストンロッドの移動は、射出速度が早ければ早いほど慣性力が大きくなり、設定値と実際値である切換直後の射出速度に大きな差が出ていた。
2. そして、射出速度は、溶融樹脂がノズルより射出される負荷が作用して速度が制御されるが、溶融樹脂の粘度の変化等流動抵抗の違いにより負荷が変動する。 その為、いつも慣性力を一定に制御することは非常に困難であり、射出から保圧に切換った直後のスクリュ前進速度は、設定値と実測値の間に差が生じ、さらに、実測値も環境によって変動していた。本発明はこのような問題点を解決することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、射出成形機の射出シリンダ1入口側に設けられた電磁式流量調整弁6と電磁式圧力調整弁7により、射出行程から保圧行程までのスクリュ2の定められた位置で、射出速度と射出圧力を多段に切換制御する、射出成形機における射出保圧制御方法において、保圧切換点となる射出行程最終段(n段目)の1つ前の段(n−1段目)で射出成形機の前記射出シリンダ1出口側に設けられた方向切換弁8を作動させ、電磁式圧力調整弁9によって発生した圧力と前記電磁式圧力調整弁7によって発生した圧力との差圧により射出圧力を制御しながら射出行程から保圧行程への切換を行なうことにより、上記問題点を解決する。
【0005】
【作用】スクリュ2の前進に際し、背圧を与えることにより、射出速度が慣性力の影響をうけることなく制御することが出来る。すなわち、スクリュ2の位置切換直後では、前段の射出速度の影響をうけ、実際の射出速度と制御値の射出速度は誤差が生じる。 これは、射出シリンダ1のピストンロッド、スクリュ2の重量、摺動抵抗、溶融樹脂の流動抵抗等の不確実性による変動で発生するからである。
【0006】
【実施例】本発明による、射出成形機の射出行程から保圧行程に切換えるときの制御方法を図面と共に詳細に説明する。図1は、本発明による射出成形機の射出行程から保圧行程に切換えるときの制御を行う油圧系統図で、図2は、射出保圧行程における、スクリュの射出速度と射出圧力の切換位置を示した図である。この図から明らかなように、図1において、射出シリンダ1のX室入口側配管に電磁式流量調整弁6と電磁式圧力調整弁7が設けてある。 同じように、射出シリンダ1のY室出口側配管には方向切換弁8が設けられており、通常は通路は封鎖されているが、方向切換弁8の作動によって、Bの位置では電磁式流量調整弁9と固定絞り弁10を有する回路を経由して油圧タンクに戻ったり、Aの位置では直接油圧タンクに戻ったりしている。 制御装置11からは、電磁式流量調整弁6と電磁式圧力調整弁7と方向切換弁8と電磁式流量調整弁9に各種の制御信号が来るようになっている。
【0007】尚、スクリュ2はシリンダバレル3内部に配置されており、シリンダバレル3の先端には、ノズル4が配設されている。次に、このように構成された射出成形機における射出保圧制御方法の作用について説明する。射出開始信号と共に、スクリュ2は図2に見られるように、スクリュ2の位置切換信号により1段目、2段目・・・と各位置で順々に射出速度と射出圧力が制御される。 一般に、射出速度と射出圧力は多段で制御されており、この制御段数をn段とすると、n段目で射出から保圧に制御は移されそれと同時に流量制御から圧力制御に変わる。
【0008】ここで、n−1段目のスクリュ位置切換信号により、方向切換弁8をBの位置に作動させ、電磁式流量調整弁9によって発生した圧力と電磁式圧力調整弁7によって発生した圧力の差圧によりn−1段目からn段目までのスクリュ1の射出圧力を制御させることにより、n段目の射出から保圧に切換わった直後の樹脂の流動抵抗の不確実性、射出シリンダ、ピストンロッドの摺動抵抗の不確実性によって生じるスクリュ前進の慣性力の不安定さを解消される。 それによって、制御値と実際値が同じ制御を達成することができ、成形条件の安定した再現性が得ることができ、精密成形にとって有利な制御が行なうことが出来るようになる。
【0009】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明による、射出成形機における射出保圧制御方法は、射出速度を慣性力のバラツキ、流動抵抗の変動、摺動抵抗の不確実性に左右されることなく精密に制御することができ、精密成形条件の確保をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による射出成形機の射出行程から保圧行程に切換えるときの制御を行う油圧系統図
【図2】射出保圧行程における射出速度と射出圧力の切換位置を示した図である
【図3】従来の射出成形機の射出行程から保圧行程に切換えるときの制御を行う油圧系統図
【符号の説明】
1・・・・射出シリンダ
2・・・・スクリュ
3・・・・シリンダバレル
4・・・・ノズル
5・・・・油圧モータ
6・・・・電磁式流量調整弁
7・・・・電磁式圧力調整弁
8・・・・方向切換弁
9・・・・電磁式流量調整弁
10・・・固定絞り弁
11・・・制御装置
12・・・方向切換弁
13・・・固定絞り弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 射出成形機の射出シリンダ(1)入口側に設けられた電磁式流量調整弁(6)と電磁式圧力調整弁(7)により、射出行程から保圧行程までのスクリュ(2)の定められた位置で、射出速度と射出圧力を多段に切換制御する、射出成形機における射出保圧制御方法において、保圧切換点となる射出行程最終段(n段目)の1つ前の段(n−1段目)で射出成形機の前記射出シリンダ(1)出口側に設けられた方向切換弁(8)を作動させ、電磁式圧力調整弁(9)によって発生した圧力と前記電磁式圧力調整弁(7)によって発生した圧力との差圧により射出圧力を制御しながら射出行程から保圧行程への切換を行なうことを特徴とした射出成形機における射出保圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3057456号(P3057456)
【登録日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【発行日】平成12年6月26日(2000.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−106443
【出願日】平成3年4月12日(1991.4.12)
【公開番号】特開平4−314517
【公開日】平成4年11月5日(1992.11.5)
【審査請求日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【参考文献】
【文献】特開 平3−36014(JP,A)
【文献】特開 平4−197724(JP,A)