説明

射撃訓練システム

【課題】種別が異なるシステム用のレーザ光発射装置も射撃訓練に使用可能とする。
【解決手段】レーザ光発射装置9で射撃訓練する前に、統制装置5でのシステムの種別指定により、標的装置1の制御部12にこの指定されたシステムの種別に応じたフォーマット情報や伝送速度が設定される。そして、射撃手8がレーザ光発射装置9を標的2に向けて射撃操作すると、このレーザ光発射装置9に該当するシステムの種別に応じたフォーマットや伝送速度のデータが重畳されたレーザ光線10が発射され、これが命中すると、このレーザ光線10が標的2で受光される。この受光による受信信号aは処理部13に供給され、クロック発振器16から出力される制御部12のシステムの種別に応じた周波数のクロックにより、処理回路15で受信信号aが処理されてデータbが抽出され、これが制御部12に供給されて、フォーマット情報を用いて解析される。その解析結果が統制装置5に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光発射装置を用いて射撃練習を行なうことができる射撃訓練システムに係り、特に、レーザ光発射装置からのレーザ光線に重畳されたデータ(レーザ光線データ)を標的側で認識できるようにした射撃訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ銃などのレーザ光発射装置を用いて射撃訓練を行なうための射撃訓練システムが知られている。
【0003】
図2はかかる射撃訓練システムのシステム構成を示す図であって、1a,1bは標的装置、2a,2bは標的、3a,3bはアンテナ、4は台車、5は統制装置、6は表示部、7はアンテナ、8は射撃手、9はレーザ銃、10a,10bはレーザ光線である。
【0004】
同図において、射撃訓練システムでは、標的が天井に吊り下げられて、射撃手8に対して、前後方向に往復移動できるようにしたものや台車に搭載されて地上を前後に移動するようにしたものが知られている。標的装置1aは前者の例であり、この標的装置1aには、標的2aやアンテナ3aなどが設けられている。また、標的装置1bは後者の例であり、射撃手8に対して前後方向に往復移動可能な台車4に搭載されている。この標的装置1bにも、標的2bやアンテナ3bなどが設けられている。
【0005】
射撃手8がレーザ銃9を標的2aまたは2bに向けて射撃操作することにより、レーザ銃9からこの標的2aまたは2bに向かってレーザ光線10aまたは10bが発射される。
【0006】
かかる射撃訓練システムでは、また、統制装置5が設けられており、この統制装置5は、そのアンテナ7とアンテナ3aとでもって標的装置1aとの間で、あるいはそのアンテナ7とアンテナ3bとでもって標的装置1bとの間で通信できるようにしている。これにより、統制装置5から標的装置1aまたは1bの動作を制御し、例えば、標的2aまたは2bを射撃手8と対面した状態(かかる状態を「顕」状態という)にしたり、標的2a,2bを水平状態にして射撃対象物が隠れたような状態(かかる状態を「隠」状態)にしたりする隠顕動作や高さの変更動作を行なわせることができる。
【0007】
また、レーザ光線10aまたは10bが標的2aまたは2bに命中したか否かの射撃結果情報も、標的装置1aまたは1bから統制装置5に送信される。統制装置5では、かかる射撃結果や標的2aまたは2bの状態(例えば、隠顕状態)などが表示部6で表示され、射撃手8などがこれをモニタできる。
【0008】
このように、統制装置5側から標的2aまたは2bの隠顕動作を、設定されたスケジュールに従って、自動的に制御するようにした技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8ー94296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のような射撃訓練システムでは、標的装置1aまたは1bにおいて、レーザ銃9からのレーザ光線10aまたは10bが標的2aまたは2bに当たったか否かを検出し、その結果を統制装置5に送信するのであるが、その結果を統制装置5に送信するにあたり、レーザ光線10aまたは10bに重畳されたデータの解析を行なう。
【0010】
かかるデータは、所定のフォーマットでレーザ光に重畳され、所定のデータ速度(bps)で発射される。ところで、射撃訓練システムは、その改良の過程などにより、レーザ光線に重畳されるデータのフォーマットや伝送速度が変更されることがある。例えば、改良が加えられることによる機能の変化に伴い、データのフォーマット(データ長)や伝送速度が変更される場合がある。このように、データのフォーマットや伝送速度が変更されると、この射撃訓練システムは、以前のシステムとは種別(型式)が異なる新たな種別のシステムとなり、以前のシステムに用いられていたレーザ銃は、新たな種別のシステムでは、使用することができなくなる。
【0011】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、種別が異なるシステム間でも、レーザ光発射装置の共用を可能とした射撃訓練システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、所定のフォーマットからなるデータが重畳されたレーザ光を所定の通信速度で発射するレーザ光発射装置と、該発射されたレーザ光を受光してそれらに重畳された該データの解析を行なう標的装置と、該標的装置と通信可能な統制装置とを備え、該統制装置は、該レーザ光発射装置の夫々の種別を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されている該種別の中のレーザ光を発射させる該レーザ光発射装置の種別を示す情報を該標的装置に送信する送信手段とを備え、該標的装置は、該レーザ光発射装置の夫々の種別に対応した該データのフォーマットと該レーザ光の通信速度との情報を記憶する記憶手段と、該統制装置から送信された該種別情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信された該種別情報に対応する該データのフォーマット情報と該レーザ光の通信速度情報とを該記憶手段に記憶されている該フォーマット情報と通信速度情報の中から選択する選択手段と、該選択手段で選択した該通信速度に応じたクロックを生成するクロック生成手段と、該クロック生成手段で生成した該クロックに従って該レーザ光を受光する受光手段と、該受光手段で受光したレーザ光に重畳されているデータを該選択手段で選択した該フォーマット情報に従って解析するデータ解析手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、所定のフォーマットからなるデータが重畳されたレーザ光を所定の通信速度で発射するレーザ光発射装置と、該発射されたレーザ光を受光してそれらに重畳された該データの解析を行なう標的装置と、該標的装置と通信可能な統制装置とを備え、該統制装置は、該レーザ光発射装置の夫々の種別に対応した該データのフォーマットと該レーザ光の通信速度との情報を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されている該フォーマット情報と通信速度情報の中のレーザ光を発射させる該レーザ光発射装置の種別に対応したフォーマット情報と通信速度情報を該標的装置に送信する送信手段とを備え、該標的装置は、該統制装置から送信された該フォーマット情報と該通信速度情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信した該通信速度情報に応じたクロックを生成するクロック生成手段と、該クロッシ生成手段で生成した該クロックに従って該レーザ光を受光する受光手段と、該受信手段で受光した該レーザ光に重畳されているデータを該受信手段で受信した該フォーマット情報に従って解析するデータ解析手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、異なる種別の射撃訓練システムでのレーザ銃などのレーザ光発射装置も用いることが可能となり、射撃訓練にレーザ光発射装置を選択するといった手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明による射撃訓練システムの一実施形態の要部を示すブロック構成図であって、1は標的装置、2は標的、3はアンテナ、10はレーザ光線、11は無線通信部、12は制御部、12aは記憶部、13は処理部、14は受信回路、15は処理回路、16はクロック発振器、17はPLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路であり、図2に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0017】
なお、以下では、レーザ光発射装置として、レーザ銃を用いるものとするが、これのみに限るものではない。
【0018】
同図において、表示装置1の制御によって隠顕動作や高さ変更動作を行なう標的2は、全体として、レーザ光線の受光部をなしており、レーザ銃9からのレーザ光線10が命中すると、このレーザ光線10を受光し、受光信号aを標的装置1に供給する。
【0019】
標的装置1は、アンテナ3によって統制装置5と送受信を行なう無線通信部11と、その送受信データを処理し、また、各部の制御を行なうマイコンなどからなる制御部12と、標的2からの受光信号aを受信して処理し、制御部12に供給する各種回路からなる、FPGA(Field Programmable Gate Array)からなる処理部13などを備えている。この処理部13は、FPGAによって形成された受信回路14や受信した受光信号aの処理回路15,クロック発振器16,このクロック発振器16から出力されるクロックの周波数,位相を所定に設定するPLL回路17などから構成されている。
【0020】
標的2からの受光信号aは、処理部13において、その受信回路14で受光され、処理回路15で処理されてレーザ光線10に重畳されたデータが検出される。このデータの検出に際しては、クロック発振器16からのクロックが使用される。このクロックの周波数は、受信されたこのデータの伝送速度(ビットレート:bps)に一致する。検出されたデータbは制御部12に供給され、マイコンによってデータ内容(例えば、レーザ銃9のIDコードなど)が解析される。そして、その解析結果により、このときの使用されたレーザ銃9のIDコードなどが判定され、このIDコードなどとともに標的2に命中したことを表わす通知データcが無線通信部11で処理されて、アンテナ3から統制装置5に送信される。
【0021】
ところで、射撃訓練システムとして、種別(型式)が異なる複数のシステムがあり(以下、これらを夫々システムA,B,Cとする)、システムA,B,C毎にレーザ光線に重畳されるデータのフォーマットや伝送速度(ビットレート(bps))が異なると、以下のような不具合が生ずる。
【0022】
例えば、システムAにシステムB用のレーザ銃9を使用した場合、このレーザ銃9からのレーザ光線10に重畳したデータのフォーマットや伝送速度がこれとは種別が異なるシステムAでのフォーマットや伝送速度と異なるため、例えば、処理部13での処理回路15に使用されるクロックは、システムAでの周波数のクロックであって、システムB用のレーザ銃9によるデータの伝送速度とは異なるものであり、従って、受信信号からはデータを抽出することができなくなる。また、仮にクロック周波数が受信したレーザ光線10のデータの伝送速度と等しいものであったとしても、このデータのフォーマット(データ長やデータ内容の形式)がシステムAのものと異なると、例え処理部13でデータが抽出されたとしても、制御部12で解析できないことになる。従って、このレーザ銃9からのレーザ光線10が標的2に命中したとしても、このことを統制装置5に通知することができないし、レーザ光線10が標的2に命中したときのこの標的2の隠顕動作を行なわせるなどの制御を行なうことができないことになる。
【0023】
そこで、この実施形態では、かかる問題を解消するために、制御部12の記憶部12aに、種別が異なるシステムA,B,C夫々に毎に、伝送速度に関する情報(処理部13での分周回路の分周比)やデータのフォーマット情報が設定されたリストやデータの変換情報を格納して事前に設定しておき、統制装置5からのシステムの種別指示操作に応じて指示されるシステムに該当するフォーマット情報を使用し、いずれのシステムのレーザ銃9を使用しても、受光信号aからデータを抽出し、解析できるようにする。
【0024】
そこで、いま、一例として、使用する射撃訓練システムをシステムAとし、これで射撃訓練するのに用いるレーザ銃9をシステムB用のものとすると、射撃訓練を開始する前に、射撃手8もしくはオペレータが統制装置5を操作して「システムB」を指示する。これにより、システム種別指示情報が統制装置5から標的装置1に送信される。
【0025】
標的装置1では、このシステム種別指示情報dがアンテナ3から無線受信部11で受信され、制御部12に供給される。この制御部12では、取得したこのシステム指示情報Dで指示されるシステムBに対するフォーマット情報が上記のリストから選択され、このフォーマット情報での分周比eが処理部13に供給される。処理部13では、PLL回路17の分周回路でこの分周比eが設定され、この分周比eに応じた周波数(即ち、システムBでのクロック周波数)のクロックがクロック発振器16から出力される。
【0026】
システムB用のレーザ銃9からのレーザ光線10が標的2に命中し、これによる受光信号aが処理部13に供給され、その受信回路14で受信されると、この受信された受光信号aが処理回路15に供給され、クロック発振器16からのクロックを用いて処理される。このとき、クロック発振器16は、分周回路の分周比が上記のシステムBに対する分周比eに設定されたPLL回路17によって制御されているから、システムBでの周波数のクロックを発生しており、また、このPLL回路17により、このクロックが受信された受光信号aでのデータに位相同期している。このために、処理回路15では、受光信号aが正常に処理され、システムB用のレーザ銃9からのデータが確実に検出されて抽出される。
【0027】
このようにして抽出されたデータbは、制御部12に供給される。この制御部12では、上記の選択されたシステムBに対するフォーマット情報を用いてこのデータbが解析され、その解析結果が上記の変換情報によってシステムAのフォーマットに変換され、通知データcとして無線通信部11に供給されてアンテナ3から統制装置5に送信される。統制装置5では、受信した通知データcを表示部6に表示し、あるいは図示しないメモリに記憶する。
【0028】
なお、制御部12は、データbを正常に解析し、そのデータ内容を判定すると、そのデータ内容に応じて各部の制御を行なう。例えば、制御部12は、レーザ光線10が標的2に命中したとして、標的2を制御して隠顕動作を行なわせる。
【0029】
このようにして、射撃訓練を開始する際し、統制装置5から使用するレーザ銃9の専用システムを指定することにより、いずれのシステムのレーザ銃9を用いても、標的装置1が同じ正常な動作を行なうことになり、正常に射撃訓練をすることが可能となる。
【0030】
なお、この実施形態では、制御部12に各システムのフォーマット情報のリストが予め設定されているものとしたが、かかるリストを統制装置5に予め設定しておき、射撃手8あるいはオペレータが統制装置5でレーザ銃9に該当するシステムを指定することにより、このリストから該当するフォーマット情報を選択し、システム種別指示情報とともに標的装置1に送信し、このフォーマット情報を制御部12に設定するようにし、射撃手8あるいはオペレータが統制装置5でシステムを指定する毎に、この指定されたシステムのフォーマット情報が制御部12に設定されて使用されるようにしてもよい。
【0031】
また、標的装置1としては、図2に示すように、天井に釣り下げられたものであってもよいし、移動可能な台車に搭載されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による射撃訓練システムの一実施形態の要部を示すブロック構成図である。
【図2】射撃訓練システムのシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 標的装置
2 標的
3 アンテナ
5 統制装置
6 表示部
7 アンテナ
8 射撃手
9 レーザ銃
10 レーザ光線
11 無線通信部
12 制御部
12a 記憶部
13 処理部
14 受信回路
15 処理回路
16 クロック発振器
17 PLL回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のフォーマットからなるデータが重畳されたレーザ光を所定の通信速度で発射するレーザ光発射装置と、
該発射されたレーザ光を受光してそれらに重畳された該データの解析を行なう標的装置と、
該標的装置と通信可能な統制装置と
を備え、
該統制装置は、
該レーザ光発射装置の夫々の種別を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶されている該種別の中のレーザ光を発射させる該レーザ光発射装置の種別を示す情報を該標的装置に送信する送信手段と
を備え、
該標的装置は、
該レーザ光発射装置の夫々の種別に対応した該データのフォーマットと該レーザ光の通信速度との情報を記憶する記憶手段と、
該統制装置から送信された該種別情報を受信する受信手段と、
該受信手段で受信された該種別情報に対応する該データのフォーマット情報と該レーザ光の通信速度情報とを該記憶手段に記憶されている該フォーマット情報と通信速度情報の中から選択する選択手段と、
該選択手段で選択した該通信速度に応じたクロックを生成するクロック生成手段と、
該クロック生成手段で生成した該クロックに従って該レーザ光を受光する受光手段と、
該受光手段で受光したレーザ光に重畳されているデータを該選択手段で選択した該フォーマット情報に従って解析するデータ解析手段と
を備えたことを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
所定のフォーマットからなるデータが重畳されたレーザ光を所定の通信速度で発射するレーザ光発射装置と、
該発射されたレーザ光を受光してそれらに重畳された該データの解析を行なう標的装置と、
該標的装置と通信可能な統制装置と
を備え、
該統制装置は、
該レーザ光発射装置の夫々の種別に対応した該データのフォーマットと該レーザ光の通信速度との情報を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶されている該フォーマット情報と通信速度情報の中のレーザ光を発射させる該レーザ光発射装置の種別に対応したフォーマット情報と通信速度情報を該標的装置に送信する送信手段と
を備え、
該標的装置は、
該統制装置から送信された該フォーマット情報と該通信速度情報を受信する受信手段と、
該受信手段で受信した該通信速度情報に応じたクロックを生成するクロック生成手段と、
該クロッシ生成手段で生成した該クロックに従って該レーザ光を受光する受光手段と、
該受信手段で受光した該レーザ光に重畳されているデータを該受信手段で受信した該フォーマット情報に従って解析するデータ解析手段と
を備えたことを特徴とする射撃訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−19807(P2009−19807A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182221(P2007−182221)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】