説明

射撃訓練用模擬対抗装置

【課題】本発明の課題は、カメラ映像を基に画像処理して目標を自動追尾し、目標に射撃を模擬したレーザ光を照射する射撃訓練用模擬対抗装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、カメラ34から入力された映像データを基に目標を自動追尾するための画像処理をした駆動信号を駆動モータ32に出力してカメラ34とレーザ光を照射するプロジェクタ33を姿勢制御し、且つ被弾データ及び映像データを統制部に送信し、前記統制部から入力された射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データを基にレーザコードを発生してプロジェクタ33に出力する制御回路31を具備することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラから得られる映像データから目標を自動追尾し、目標に射撃を模擬したレーザ光を照射することにより模擬的な対抗射撃訓練を行うことを可能とした射撃訓練用模擬対抗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射撃訓練を行う場合は人間の形等を模擬した標的装置を使用するのが一般的であったが、標的部分の隠顕動作を行うために大掛かりな駆動制御機構が必要であり経済性(装置調達性)の面で問題があったとともに、標的装置の構造上訓練者が比較的容易に標的を発見できることから、実戦的な訓練を行うにあたって支障があった。
【0003】
従来の標的装置では、レーザの打ち返し機構は標的部分に一体化するのが基本であるが照準機能は具備されていないために、遠隔制御により正確に訓練者に対してレーザ光を照射することは困難であった。このため、解決策として射撃(実弾)の特性とは異なる幅の広いレーザビームを照射する必要があり、実戦的訓練の模擬実現に問題があった。
【0004】
従来の標的装置では、構造上大掛かりな装置となるため、標的装置の設置場所が限定されることと、消費電力の増加によるバッテリーの大型化、展開・撤収の困難さ、経済性(装置調達性)の悪化等をもたらすこととなっていた。
【0005】
また、一般的な対抗射撃訓練装置では、訓練者が訓練練度を向上させるためには、対抗訓練者を準備する必要があり、運用面でも支障があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、カメラ映像を基に画像処理して目標を自動追尾し、目標に射撃を模擬したレーザ光を照射することにより模擬的な対抗射撃訓練を行うことを可能とすると共に、努めて小型・軽量化・低消費電力化を図ることで、設置の容易性、操用性の向上他、調達時の経済性効果を期待できる射撃訓練用模擬対抗装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の射撃訓練用模擬対抗装置は、撮像した映像データを出力するカメラと、レーザ光を照射するプロジェクタと、前記カメラ及び前記プロジェクタを姿勢制御する駆動モータと、レーザ光を受光してレーザ受信信号を出力する受光器と、射撃と被弾を模擬表示する発光器と、発射模擬音を出力するスピーカと、前記カメラから入力された映像データを基に目標を自動追尾するための画像処理をした駆動信号を前記駆動モータに出力し、且つ前記受光器から入力されたレーザ受信信号による被弾データ及び映像データを統制部に送信し、前記統制部から入力された射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データを基にレーザコードを発生して前記プロジェクタに出力する制御回路とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の射撃訓練用模擬対抗装置は、カメラ映像を基に画像処理して目標を自動追尾し、目標に射撃を模擬したレーザ光を照射することにより、対抗訓練者を準備することなく簡単且つ軽易に模擬的な対抗訓練を実施することが可能となり、訓練効果の短縮化を図ることが可能となるだけでなく、訓練準備の容易性、製品調達時の経済性の効果等を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る模擬対抗装置を用いた射撃訓練システムを示す説明図である。図1において、11は射撃訓練用模擬対抗装置であるレーザ送受信部、12は統制部であるパソコン、13は統制部の構成である無線機(通常は無線LAN機器)、14は統制部の構成であるジョイスティック(またはマウス)、15はディテクタが装着された訓練者である移動目標、16はプロジェクタが装着された実銃または模擬銃、17はレーザ光、18はレーザ光、19は射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データ、20は映像データ及び被弾データ等、21は被弾データ等である。
【0011】
図1に示すように、移動目標(訓練者)15が所持した実銃または模擬銃16に搭載されたプロジェクタからレーザ光17を照射することができる。また、レーザ送受信部11に搭載されたプロジェクタからレーザ光18を照射することができる。レーザ送受信部11に搭載されたカメラで撮像された映像データ20は、常時無線系を通じて統制部無線機13によりパソコン12に表示される。
【0012】
操作員は、パソコン12に表示された映像を見てジョイスティック14の操作により、パソコン12から無線機13を介して無線系でレーザ送受信部11に射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データを送信し、レーザ送受信部11のプロジェクタから射撃を行うことができる。複数のレーザ送受信部11からの複数の映像データに基づく複数の画面のうちの1画面については、マニュアル操作により目標の照準と射撃の制御を行うことができる。
【0013】
図5は本発明の実施形態に係る統制部であるパソコン上の表示・操作画面例を示す説明図である。
【0014】
また、移動目標(訓練者)15から照射されたレーザ光17がレーザ送受信部11に命中した場合は、レーザ送受信部11からの被弾データ20が無線機13を介して無線系でパソコン12に送信され、パソコン12上の画面に結果が表示される。
【0015】
一方、レーザ送受信部11のプロジェクタからのレーザ光18が移動目標(訓練者)15に搭載されたディテクタの受光器に命中した場合は、移動目標(訓練者)15に搭載されたディテクタからの被弾データ21が無線機13を介して無線系でパソコン12に送信され、パソコン12上の画面に結果が表示される。
【0016】
図2(a),(b)は本発明の実施形態に係るレーザ送受信部を示す構成説明図及び斜視図である。図2(a),(b)において、30は無線機、31は制御回路、32は駆動モータ、33はプロジェクタ、34はカメラ、35は射撃・損耗現示LED(発光器)、36はスピーカ、37は受光器、38はバッテリー、39はAC/DC変換器、40は映像データ、41はレーザコード、42は駆動信号、43は表示信号、44は発射模擬音声信号、45はレーザ受信信号、46は制御データ、47は映像データまたは被弾データである。
【0017】
図2(a),(b)に示すように、カメラ34で撮像した映像データ40は常時制御回路31に出力される。制御回路31にはカメラ34から入力された映像データ40を基に目標を自動追尾するための画像処理用のアルゴリズム実行回路が実装されている。制御回路31はリアルタイムにカメラ34から入力された映像データ40を基に目標を自動追尾するための画像処理した駆動信号42を駆動モータ32に出力する。駆動モータ32は駆動信号42が入力され、駆動部分と一体化したプロジェクタ33及びカメラ34を目標方向に旋回して姿勢制御する。
【0018】
制御回路31はカメラ34で撮像した映像データ47を無線機30から無線系で統制部であるパソコン12に送信する。無線機30は無線系でパソコン12から射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データ46を受信して制御回路31に出力する。制御回路31は無線機30から入力された射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データ46を基にレーザコード41を生成してプロジェクタ33に出力する。プロジェクタ33はレーザコード41に基づいて実弾を模擬したレーザ光を照射する。
【0019】
制御回路31は、プロジェクタ33からのレーザ光の照射と同時に表示信号43を射撃・損耗現示LED(発光器)35に出力すると共に発射模擬音声信号44をスピーカ36に出力する。射撃・損耗現示LED(発光器)35は射撃動作を現示するために発光(点滅動作)して模擬表示すると共にスピーカ36は射撃音を模擬した発射模擬音を出力する。
【0020】
一方、移動目標(訓練者)15から照射されたレーザ光17がレーザ送受信部11の受光部37に命中した場合は、受光部37からレーザ受信信号45が制御回路31に出力される。制御回路31は内部の受信回路において受光部37から入力されたレーザ受信信号45のうち一定の閾値を超えた信号を抽出し命中の判定を行って即座に被弾データ47を無線機30を介して無線系で統制部であるパソコン12に送信する。
【0021】
制御回路31は被弾と同時に表示信号43を射撃・損耗現示LED(発光器)35に出力し、被弾現示のために点灯(常時点灯)して模擬表示する。
【0022】
レーザ送受信部11の内部で使用する電源は、バッテリー38または商用電源をAC/DC変換器39で変換した電源から供給される。
【0023】
図6は本発明の実施形態に係る目標を自動追尾するための画像処理用のアルゴリズムを示すフローチャートである。図6に示すように、ステップS1で制御回路31のアルゴリズム実行回路に画像データ(映像データ)が入力される。ステップS2で画像データが2値化される。ステップS3で2値化された画像データから背景を除去し、ステップS4で目標を抽出する。この場合、ステップS5の前フレームデータを用いて背景を除去する。ステップS6で抽出した目標の面積・重心を算出する。ステップS7で算出した目標の面積・重心から目標を判定し、ステップS8で目標を検出しない場合にはステップ1に戻る。ステップS8で目標を検出した場合には、ステップS9で目標指示角(方位/高低)を算出し、ステップS10で算出した目標指示角(方位/高低)になるように駆動モータを駆動する。ステップS11で駆動した駆動モータの現在の指向角(方位/高低)を検出し、ステップS12で駆動モータの現在指向角(方位/高低)が目標指示角(方位/高低)になっていない場合はステップS10に戻り、駆動モータの現在指向角(方位/高低)が目標指示角(方位/高低)になっている場合はステップS1に戻る。
【0024】
図3(a),(b)は本発明の実施形態に係るプロジェクタを示す構成説明図及び斜視図である。図3(a),(b)において、51はプロジェクタ、52はレーザ駆動回路、53は引金センサ、54はレーザダイオード、55は光学系、56はバッテリーである。
【0025】
図3(a),(b)に示すように、プロジェクタ51は移動目標(訓練者)15が所持した実銃または模擬銃16に装着され、プロジェクタ51の引金センサ53を操作することによりレーザ光17を照射することができる。
【0026】
プロジェクタ51のレーザ駆動回路52において、内部スイッチまたは外部からの通信(光または電波)に基づく初期設定信号により、個別番号(ID)の初期設定を行う。IDデータは、レーザ駆動回路52で生成されるレーザコードに付与される。
【0027】
引金センサ53により引金を引いたことを検出すると、検出信号がレーザ駆動回路52に出力される。
【0028】
レーザ駆動回路52において生成されたレーザコードはレーザ駆動信号としてレーザダイオード54に出力される。レーザ駆動信号が入力されてレーザダイオード54より出力されるレーザ出力光は光学系55の光学レンズにより集光され外部に放射される。プロジェクタ51の内部回路に必要な電源はバッテリー56より供給される。
【0029】
図4(a),(b)は本発明の実施形態に係るディテクタを示す構成説明図、前面図及び後面図である。図4(a),(b)において、61は受光器、62はレーザ受光回路、63は制御回路、64は無線機、65はブザー、66は発光器、67はバッテリー、68は初期設定データである。
【0030】
図4(a),(b)に示すように、受光器61は移動目標(訓練者)15の胴体に着用された訓練用衣服の前面及び後面にそれぞれ複数個取付けられると共に、頭部のヘルメットの前部及び後部にそれぞれ取付けられる。移動目標(訓練者)15の胴体に着用された訓練用衣服にはレーザ受光回路62、制御回路63、無線機64、ブザー65、発光器66、バッテリー67が装着される。
【0031】
受光器61はレーザ送受信部11より照射されたレーザ光を受信する。受光器61は受信されたレーザ光に基づいてレーザ受光信号をレーザ受光回路62に出力する。レーザ受光回路62は入力されるレーザ受光信号に対して一定の閾値を超えた信号を抽出し命中の判定を行う。命中の結果は制御回路63に出力される。
【0032】
制御回路63において命中結果の被弾データ21を即座に無線機64を介して無線系で統制部であるパソコン12に送信すると共に、命中現示のためブザー65に対してブザー鳴動信号を出力して鳴動し、同時に、発光(点灯)信号を発光器66に出力して発光する。ディテクタの内部回路に必要な電源はバッテリー67により供給される。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る模擬対抗装置を用いた射撃訓練システムを示す説明図である。
【図2】(a),(b)は本発明の実施形態に係るレーザ送受信部を示す構成説明図及び斜視図である。
【図3】(a),(b)は本発明の実施形態に係るプロジェクタを示す構成説明図及び斜視図である。
【図4】(a),(b)は本発明の実施形態に係るディテクタを示す構成説明図、前面図及び後面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る統制部であるパソコン上の表示・操作画面例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る目標を自動追尾するための画像処理用のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
11…射撃訓練用模擬対抗装置であるレーザ送受信部、12…統制部であるパソコン、13…統制部の構成である無線機(通常は無線LAN機器)、14…統制部の構成であるジョイスティック(またはマウス)、15…ディテクタが装着された訓練者である移動目標、16…プロジェクタが装着された実銃または模擬銃、17…レーザ光、18…レーザ光、30…無線機、31…制御回路、32…駆動モータ、33…プロジェクタ、34…カメラ、35…射撃・損耗現示LED(発光器)、36…スピーカ、37…受光器、38…バッテリー、39…AC/DC変換器、51…プロジェクタ、52…レーザ駆動回路、53…引金センサ、54…レーザダイオード、55…光学系、56…バッテリー、61…受光器、62…レーザ受光回路、63…制御回路、64…無線機、65…ブザー、66…発光器、67…バッテリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像した映像データを出力するカメラと、
レーザ光を照射するプロジェクタと、
前記カメラ及び前記プロジェクタを姿勢制御する駆動モータと、
レーザ光を受光してレーザ受信信号を出力する受光器と、
射撃と被弾を模擬表示する発光器と、
発射模擬音を出力するスピーカと、
前記カメラから入力された映像データを基に目標を自動追尾するための画像処理をした駆動信号を前記駆動モータに出力し、且つ前記受光器から入力されたレーザ受信信号による被弾データ及び映像データを統制部に送信し、前記統制部から入力された射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データを基にレーザコードを発生して前記プロジェクタに出力する制御回路と
を具備することを特徴とする射撃訓練用模擬対抗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−168332(P2009−168332A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7009(P2008−7009)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】