説明

導光レンズ及び車両用灯具

【課題】従来に比べ、輝度ムラを抑制する。
【解決手段】導光レンズ5は、長尺に形成されるとともに、略全長に亘る複数のプリズムカット50,…を後面に有し、長手方向Xの両端面51a,52aから入射した光を導光させつつプリズムカット50,…で反射させて前面から出射させる。導光レンズ5は、端面51aから所定長さに亘る第一直線部51と、第一直線部51に連なる第一湾曲部54と、端面52aから第一直線部51よりも短尺な長さに亘る第二直線部52と、第二直線部52に連なる第二湾曲部55とを有する。第二湾曲部55の曲率半径R2の方が第一湾曲部54の曲率半径R1よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光レンズ及びこれを備える車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ヘッドランプなどの車両用灯具として、長尺な導光レンズを発光させて主に装飾用の副配光を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の車両用灯具では、図5に示すように、長尺な導光レンズ80が、側方に開口するU字状をなすように2つの湾曲部80a,80aで湾曲した状態とされ、前面が開口したハウジング70の開口周縁に沿って配置されている。この導光レンズ80は、後面に形成された図示しないプリズムカットを全長に亘って有しているとともに、長手方向の両端面80b,80bが光源90,90と対向するように配置されている。
【0004】
このような構成により、上記の車両用灯具では、光源90,90が発光すると、その光が両端面80b,80bから導光レンズ80内に入射し、内部反射を繰り返して長手方向へ導光されつつ後面のプリズムカットで反射されて前面から出射する結果、導光レンズ80の前面が全長に亘って発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5984497号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、導光レンズ80では、端面80bから入射した光が内部反射を繰り返すに連れて、当該光がそのまま全反射を繰り返しつつ導光されていく一次光束成分が相対的に減少し、乱反射等によって一次光束成分とは異なる光路で導光されていく二次光束成分が相対的に増加する。ここで、導光レンズ80の端面80bからは当該端面80b周辺での導光レンズ80の長手方向(図5の略左右方向)に略沿って光が入射するため、一次光束成分は、この入射方向に対する進行方向の角度が比較的に小さい。一方、二次光束成分は、この入射方向に対する進行方向の角度が一次光束成分よりも大きい。したがって、端面80bから導光レンズ80内に入射した光は、端面80bから離れるに連れて、一次光束成分の占める割合が減少し、二次光束成分の占める割合が増加する。
【0007】
そのため、端面80bからの直線部を経て湾曲部80aに入射する光は、当該直線部の長さに応じて、一次光束成分と二次光束成分との比率が変化する。また、湾曲部80aでは導光方向が直線部から変化するため、この湾曲部80aに入射する光は、一次光束成分が多いほど当該湾曲部80aから導光レンズ80外への漏光量が増えやすく、二次光束成分が多いほど当該湾曲部80aに沿って滑らかに導光されやすい。したがって、湾曲部80aでの漏光を抑制するためには、端面80bからの直線部の長さに応じて適正に当該湾曲部80aを形成しなければならない。
【0008】
しかしながら、上記従来の導光レンズ80では、ハウジング70の開口形状に沿って単純に2つの湾曲部80a,80aを形成しているため、端面80bから湾曲部80aまでの2つの直線部の長さが異なる場合に、当該直線部の長さが短い湾曲部80aの方が相対的な漏光量が多くなってしまう恐れがある。その結果、2つの湾曲部80a,80a間の直線部のうち、漏光量が多い方の湾曲部80a周辺部が他の部分よりも低輝度になり、ひいては、導光レンズ80の発光態様が輝度ムラのあるものとなってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来に比べ、輝度ムラを抑制することができる導光レンズ,及びこれを備える車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
長尺に形成されるとともに、略全長に亘る複数のプリズムカットを後面に有し、長手方向の両端面から入射した光を導光させつつ前記複数のプリズムカットで反射させて前面から出射させる導光レンズにおいて、
前記両端面のうちの一端面から所定長さに亘る第一直線部と、
前記第一直線部に連なる第一湾曲部と、
前記両端面のうちの他端面から前記第一直線部よりも短尺な長さに亘る第二直線部と、
前記第二直線部に連なる第二湾曲部と、
を有し、
前記第二湾曲部の方が前記第一湾曲部よりも曲率半径が大きいことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導光レンズにおいて、
前記複数のプリズムカットは、
前記長手方向に向かって後方へ狭窄する形状に形成された各プリズムカットを前記長手方向に沿って配列してなり、
隣り合うプリズムカット間のカットピッチが0.3mm以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、車両用灯具において、
請求項1又は2に記載の導光レンズと、
前記導光レンズの前記両端面に個別に対向配置された2つの光源と、
前面が開口した形状に形成されるとともに、その開口周縁に沿って前記導光レンズが配置されるように前記導光レンズ及び前記2つの光源を保持するハウジングと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導光レンズが、両端面のうちの一端面から所定長さに亘る第一直線部と、第一直線部に連なる第一湾曲部と、両端面のうちの他端面から第一直線部よりも短尺な長さに亘る第二直線部と、第二直線部に連なる第二湾曲部と、を有しており、第二湾曲部の方が第一湾曲部よりも曲率半径が大きいので、一端面から導光レンズ内に入射した光は、第二直線部よりも長尺な第一直線部を介すことにより漏光が抑制されつつ第一湾曲部を導光する一方、他端面から導光レンズ内に入射した光は、第二湾曲部の方が第一湾曲部よりも曲率半径が大きいことにより漏光が抑制されつつ当該第二湾曲部を導光する。
つまり、従来であれば、第一直線部よりも短尺な第二直線部に連なる第二湾曲部の方が第一直線部に連なる第一湾曲部よりも漏光量が多くなりやすいところ、第二湾曲部の方が第一湾曲部よりも曲率半径が大きいので、当該第二湾曲部に沿って漏光を抑制しつつ光を導光させることができる。
したがって、灯具形状に倣って単純に2つの湾曲部を形成していた従来に比べ、より短尺な第二直線部に連なる第二湾曲部での漏光を抑制することができ、ひいては導光レンズの輝度ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における車両用灯具の斜視図である。
【図2】実施形態における導光レンズの正面図である。
【図3】実施形態における導光レンズの長手方向に沿った部分断面図である。
【図4】実施形態における導光レンズ内での光線軌跡を示す図である。
【図5】従来の導光レンズ及びその光源の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における車両用灯具1の斜視図であり、図2は、車両用灯具1が備える導光レンズ5の正面図であり、図3は、導光レンズ5の長手方向に沿った部分断面図である。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載を、車両用灯具1から見た方向、ひいては車両用灯具1が搭載される図示しない車両から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0017】
図1に示すように、車両用灯具1は、図示しない車両の前部左側に搭載されるヘッドランプであり、前面が開口したハウジング2と、ハウジング2の前面開口を覆う図示しないアウターレンズとを備えている。ハウジング2の開口面は、右側(車両中央側)から左側(車両側方側)に向かって後方へ斜めに傾斜しており、アウターレンズの前面もこれに倣って同様に傾斜している。ハウジング2とアウターレンズとで形成される灯室内には、主配光を形成する主配光ユニット4が略中央に配置されるとともに、副配光を形成する長尺な導光レンズ5がハウジング2の開口周縁に沿うように配置されている。
【0018】
導光レンズ5は、図2に示すように、正面視で右方に開口する略U字状に形成されて、ハウジング2に保持されている。具体的には、導光レンズ5は、正面視で略左右方向に沿って延在する上側の第一直線部51と、第一直線部51に略平行な下側の第二直線部52とを有するとともに、第一直線部51の左端に連なって下方へ湾曲する第一湾曲部54と、第二直線部52の左端に連なって上方へ湾曲する第二湾曲部55とが、略上下方向に沿って延在する第三直線部53によって連結された形状に形成されている。第一直線部51は、その端面51aから所定長さに亘って延在しており、第二直線部52は、その端面52aから第一直線部51よりも短尺な長さに亘って延在している。また、第二湾曲部55の曲率半径R2の方が、第一湾曲部54の曲率半径R1よりも大きくなっている。
【0019】
導光レンズ5の両端面、つまり第一直線部51の端面51a及び第二直線部52の端面52aに対向する位置には、当該導光レンズ5を発光させる光源6,6が個別に配置されている。この光源6,6は、図示しないエクステンションによって前方から遮蔽された状態で、ハウジング2に保持されている。
【0020】
また、導光レンズ5は、断面略四角形状に形成されるとともに、図3に示すように、略全長に亘って形成された複数のプリズムカット50,…を後面に有している。各プリズムカット50は、導光レンズ5の長手方向Xと直交する方向(後面の幅方向)へ延在しつつ、長手方向Xに向かって後方へ狭窄する三角柱状に形成されている。当該プリズムカット50,…は、このような各プリズムカット50が長手方向Xに沿って配列された断面鋸刃状に形成されている。また、プリズムカット50,…は、隣り合うプリズムカット50,50間の長手方向Xに沿ったカットピッチPが0.3mm以下となっている。
【0021】
続いて、導光レンズ5の発光態様について説明する。
図4は、導光レンズ5内での光線軌跡を示す図である。
この図に示すように、2つの光源6,6が発光すると、当該光源6,6から出射した光が端面51a及び端面52aから導光レンズ5内に入射する。導光レンズ5内に入射した光は、内部反射を繰り返して長手方向Xへ導光されつつ、プリズムカット50,…で前方へ反射されて前面から出射する。こうして導光レンズ5の前面が全長に亘って発光することにより、車両用灯具1の周縁を発光させる副配光が形成される。
【0022】
このとき、導光レンズ5内を導光する光は、第一直線部51及び第二直線部52の延在方向に略沿って端面51a及び端面52aから入射した後、導光に伴う内部反射を繰り返すに連れて、当該延在方向に対する進行方向の角度がより小さな一次光束成分が相対的に減少する一方、当該延在方向に対する進行方向の角度がより大きな二次光束成分が相対的に増加する。
【0023】
そのため、上側の端面51aから導光レンズ5内に入射した光は、第二直線部52よりも長尺な第一直線部51を介すことにより、二次光束成分の占める割合が比較的に多い状態で第一湾曲部54に入射する結果、漏光が抑制されつつ当該第一湾曲部54を滑らかに導光する。
一方、下側の端面52aから導光レンズ5内に入射した光は、第二直線部52が第一直線部51よりも短尺なために、二次光束成分の占める割合が第一湾曲部54への入射光よりも少ない状態で第二湾曲部55に入射するものの、当該第二湾曲部55の曲率半径R2が第一湾曲部54の曲率半径R1よりも大きいことにより、漏光が抑制されつつ当該第二湾曲部55を滑らかに導光する。
【0024】
また、導光レンズ5では、図3に示すように、光源6からの光を前方へ反射させるプリズムカット50が長手方向Xに向かって後方へ狭窄する形状に形成されているため、当該導光レンズ5内を長手方向Xへ導光する光は、プリズムカット50の頂角部50aには入射しにくい。そのため、点灯時の導光レンズ5を正面から見ると、複数のプリズムカット50,…の各頂角部50a近傍が他の部分よりも暗いダーク部となってしまうものの、隣り合うプリズムカット50,50間のカットピッチPが0.3mm以下となっているので、以下に説明するように、ダーク部が縞模様状に見える点灯フィーリングではなく、均一感のある良好な点灯フィーリングを得ることができる。
【0025】
ここで、カットピッチPを0.3mm以下とすることによる点灯フィーリングの向上効果について説明する。
このカットピッチPの設定にあたっては、C字状のランドルト環を用いた視力検査の考え方を応用している。当該視力検査では、最小視角[分]の逆数を視力と定義し、5mの距離から1.5mmの切れ目幅を判別できると視力1.0(視角1/60[deg]≒0.017[deg])となる。これより、視力1.0の人間が1mの距離から判別可能な最小の切れ目幅は、(1.5[mm]/5[m]×1[m]=)0.3mmとなる。
【0026】
この考え方によれば、視力1.0の人間が1mの距離から導光レンズ5を見たときに、判別可能な最小のダーク部の幅が0.3mmということになる。但し、ダーク部の幅はカットピッチP以上にはなり得ないので、カットピッチPを0.3mm以下としておけば、実際のダーク部の幅はこれよりも小さくなる。
したがって、カットピッチPを0.3mm以下とすることにより、視力1.0の人間が1mの距離から導光レンズ5を見たときであっても、プリズムカット50の頂角部50a近傍に形成されるダーク部を判別することが困難となり、ひいては均一感のある良好な点灯フィーリングを得ることができる。しかも、実用上は、車両の脇を歩く歩行者であっても導光レンズ5(車両用灯具1)を1mの近距離から見ることは殆どなく、また、点灯光学系である導光レンズ5ではダーク部が不明瞭に見えるため、カットピッチPを0.3mm以下としておけば、良好な点灯フィーリングを確実に得ることができる。
【0027】
以上のように、導光レンズ5によれば、上側の端面51aから当該導光レンズ5内に入射した光は、第二直線部52よりも長尺な第一直線部51を介すことにより、漏光が抑制されつつ第一湾曲部54を導光する。一方、下側の端面52aから当該導光レンズ5内に入射した光は、第二湾曲部55の曲率半径R2の方が第一湾曲部54の曲率半径R1よりも大きいことにより、漏光が抑制されつつ当該第二湾曲部55を導光する。つまり、従来であれば、第一直線部51よりも短尺な第二直線部52に連なる第二湾曲部55の方が第一直線部51に連なる第一湾曲部54よりも漏光量が多くなりやすいところ、第二湾曲部55の曲率半径R2の方が第一湾曲部54の曲率半径R1よりも大きいので、当該第二湾曲部55に沿って漏光を抑制しつつ光を導光させることができる。
したがって、灯具形状に倣って単純に2つの湾曲部を形成していた従来に比べ、より短尺な第二直線部52に連なる第二湾曲部55での漏光を抑制することができ、ひいては導光レンズ5の輝度ムラを抑制することができる。
【0028】
また、長手方向Xに向かって後方へ狭窄する形状にそれぞれ形成されたプリズムカット50,…は、隣り合う当該プリズムカット50,50間のカットピッチPが0.3mm以下であるので、導光レンズ5を正面から見たときに、プリズムカット50の頂角部50a近傍に形成されるダーク部を判別困難なものとして、均一感のある良好な点灯フィーリングを得ることができる。
【0029】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、車両用灯具1を車両の前部左側に搭載されるヘッドランプとして説明したが、本発明を適用可能な車両用灯具は、車両の前部右側に搭載されるヘッドランプであってもよいし、車両の後部左側又は右側に搭載されるリヤランプであってもよい。但し、本発明を適用可能な車両用灯具は、車両の前部右側に搭載されるヘッドランプである場合には、上記実施形態における車両用灯具1とは左右を反転させた形状になり、リヤランプである場合には、ヘッドランプである場合の当該車両用灯具とは車両との方向関係が一致せず、前後左右が逆向きになる。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用灯具
2 ハウジング
5 導光レンズ
50 プリズムカット
50a 頂角部
P カットピッチ
51 第一直線部
51a 端面(一端面)
52 第二直線部
52a 端面(他端面)
53 第三直線部
54 第一湾曲部
R1 曲率半径
55 第二湾曲部
R2 曲率半径
X 長手方向
6 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成されるとともに、略全長に亘る複数のプリズムカットを後面に有し、長手方向の両端面から入射した光を導光させつつ前記複数のプリズムカットで反射させて前面から出射させる導光レンズにおいて、
前記両端面のうちの一端面から所定長さに亘る第一直線部と、
前記第一直線部に連なる第一湾曲部と、
前記両端面のうちの他端面から前記第一直線部よりも短尺な長さに亘る第二直線部と、
前記第二直線部に連なる第二湾曲部と、
を有し、
前記第二湾曲部の方が前記第一湾曲部よりも曲率半径が大きいことを特徴とする導光レンズ。
【請求項2】
前記複数のプリズムカットは、
前記長手方向に向かって後方へ狭窄する形状に形成された各プリズムカットを前記長手方向に沿って配列してなり、
隣り合うプリズムカット間のカットピッチが0.3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導光レンズ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導光レンズと、
前記導光レンズの前記両端面に個別に対向配置された2つの光源と、
前面が開口した形状に形成されるとともに、その開口周縁に沿って前記導光レンズが配置されるように前記導光レンズ及び前記2つの光源を保持するハウジングと、
を備えることを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−243539(P2012−243539A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111959(P2011−111959)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】