説明

導光機能付き観賞用カバーケース

【課題】観察・観賞の自由度が高く、且つ装飾性及び商品性が高い植物育成装置を実現する導光機能付き観賞用カバーケースを提供することにある。
【解決手段】導光機能付き観賞用カバーケース1を、透明材料により一方に閉塞部2を有し他方に開口部3を有する筒状に一体形成し、閉塞部2の形状をその断面形状が略M字状となるように中央部に開口部3側に向かう凸部6を備える構成とした。そして、開口部3の端面9から側壁11内に入射した光が側壁11の外壁面12と内壁面13との間で全反射を繰り返しながら側壁11内を導光されて凸部6の先端面14に至り、その端面か14ら導光機能付き観賞用カバーケース1で覆われた内部空間に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導光機能付き観賞用カバーケースに関するものであり、詳しくは、内部空間に配置された観賞物に、導光された光を照射することによって観賞の自由度を高めることが可能な導光機能付き観賞用カバーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物育成に対して自然環境の環境変化の影響を少なくして安定的な植物育成を行う方法、あるいは植物の成長を人工的に制御して適正な成長を促す方法として、蛍光ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ及びLEDランプ等の人工光源からの人工光による光環境下において植物育成を促進させる方法が知られている。
【0003】
そのうちLEDランプの光による植物育成は、LEDランプの特徴である小型軽量、低消費電力、低発熱及び長寿命等が有効に活用され、育成スペースの省スペース化及びランニングコストの低コスト化を図ることができる。
【0004】
このようなLEDランプの特徴は、室内における観賞用植物の育成には最適であり、従来、図5に示すような構造の植物育成装置50が提案されている。
【0005】
それは、透明筒状体51の内側の下部に土壌52を収容した土台53を設けて該土壌52に植物54を着床させ、透明筒状体51の内側の上部に、シャワー部55とパネルにLEDランプが実装されてなる光源部56を設けた蓋体57を取り付けて、下方の植物54に水や成長剤を散布すると共にLEDランプからの光を照射するようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−113160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記構造の植物育成装置50は、上方あるいは斜上方から内部の植物54を観察・観賞しようとすると透明筒状体51の上部に位置する蓋体57部で視界が遮られて視認できず、植物育成装置50に対する観察・観賞の方向が制限されて観察・観賞の自由度が制約されるものとなる。
【0008】
また、光源部56が透明筒状体51の上部に位置するために光源部56のLEDランプに電力供給を行う給電用配線の引き回しが見栄えを損なうことになり、植物育成装置50に対する装飾性及び商品性の低下を招くものとなる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、観察・観賞の自由度が高く、且つ装飾性及び商品性が高い植物育成装置を実現する導光機能付き観賞用カバーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、
透明材料で一体形成されて一方に閉塞部を有し他方に開口部を有する筒状の導光機能付き観賞用カバーケースであって、
前記閉塞部は前記導光機能付き観賞用カバーケースをその中心軸を含む平面で切断したときの切断面の形状が略M字状を呈すると共に中央部に前記開口部側に向かう凸部を有しており、
前記開口部の端面から前記導光機能付き観賞用カバーケースの側壁内に入射した光が前記側壁の外壁面と内壁面との間で全反射を繰り返しながら前記側壁内を導光されて前記凸部の端面に至り、前記端面から前記導光機能付き観賞用カバーケースで覆われた内部空間に照射されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記凸部の端面は拡散処理が施されており、前記導光機能付き観賞用カバーケースで覆われた内部空間には前記端面から拡散光が照射されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導光機能付き観賞用カバーケースは、透明材料によって一方に閉塞部を有し他方に開口部を有する筒状に一体形成し、閉塞部の形状をその断面形状が略M字状を呈すると共に中央部に開口部側に向かう凸部を有するようにした。そして、開口部の端面から導光機能付き観賞用カバーケースの側壁内に入射した光が側壁の外壁面と内壁面との間で全反射を繰り返しながら側壁内を導光されて凸部の端面に至り、端面から導光機能付き観賞用カバーケースで覆われた内部空間に照射される。
【0013】
その結果、観賞装置に用いる際に照明光源を導光機能付き観賞用カバーケースの下方に配設することにより導光機能付き観賞用カバーケースの周囲には視界を遮るものがなく、導光機能付き観賞用カバーケース内に収容された観賞物をあらゆる方向から該導光機能付き観賞用カバーケースを通して観賞することができる。そのため、昼夜を問わず又見る方向に制約を有しない観賞の自由度の高い観賞装置を実現させることができた。
【0014】
また、導光機能付き観賞用カバーケースの上部に光源を配置する必要がないために光源に電力供給を行う給電用配線の引き回しが不要となり、見栄えを損なうもののない装飾性及び商品性の良好な観賞装置を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施形態の説明図である。
【図2】本発明に係る実施形態の使用例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る実施形態の光線追跡図である。
【図4】本発明に係る実施形態の拡大説明図である。
【図5】従来例の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図4を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0017】
図1は本発明の導光機能付き観賞用カバーケースの説明図、図2は本発明の導光機能付き観賞用カバーケースの使用例を示す説明図、図3は本発明の導光機能付き観賞用カバーケースの光線追跡図、図4は本発明の導光機能付き観賞用カバーケースの拡大説明図である。
【0018】
本発明の導光機能付き観賞用カバーケース(以下、カバーケースと略称する)1は図1のように、ガラスや樹脂等の透明材料で一体形成されており一方に閉塞部2を有し他方に開口部3を有する筒状を呈している。
【0019】
閉塞部2の外面にはカバーケース1の略中心軸X上に、開口部3側に向かう凹部4が設けられている。この凹部4の形状は、前記中心軸X上あるいは中心軸X近傍を始点とし該始点から開口部3方向と反対方向に向かって中心軸Xと離れる方向に中心軸X側に凸状に開いた湾曲線を、中心軸Xを回転軸として回転させて得られる回転湾曲面5からなっている。
【0020】
一方、閉塞部2の内面にはカバーケース1の略中心軸X上に、開口部3側に向かう凸部6が設けられている。この凸部6は側面形状が、中心軸X近傍を始点とし該始点から開口部3方向と反対方向に向かって中心軸Xと離れる方向に中心軸X側に凸状に開いた湾曲線を、中心軸Xを回転軸として回転させて得られる回転湾曲面7からなっている。
【0021】
つまり、カバーケース1を中心軸Xを含む平面で切断したときの閉塞部2の切断面の形状が略M字状を有し、中央部に開口部3側に向かう凸部6を備える構成となっている。
【0022】
このような形状を呈する透明なカバーケース1を観賞用植物育成装置に用いた例を図2に示している。
【0023】
観賞用植物育成装置20の構成は、基板21上の所定の位置に光源となる複数のLEDランプ22が実装されると共に、同様に基板21上に該LEDランプ22の駆動(点灯・消灯制御あるいは点灯電流制御等)に係る駆動回路素子23が実装されている。
【0024】
LEDランプ22及び駆動回路素子23が実装された基板21は基台24内に収容され、夫々のLEDランプ22は基台24の各LEDランプ22に対応する位置に設けられたLEDランプ挿通孔25の内部に挿置されている。
【0025】
また、基台24のLEDランプ22の上方には略環状のカバーケース載置溝26が設けられており、このカバーケース載置溝26にカバーケース1の開口端部8を嵌め込むことにより基台24上にカバーケース1が載置されている。
【0026】
そして、透明なカバーケース1内には観賞及び育成用の植物30が該カバーケース1で覆われた状態で収容されている。そこで、日中の太陽光下や屋内照明下においては、それら外光が透明なカバーケース1を通して植物に照射されて植物30の成長を促進すると共に、観賞者は透明なカバーケース1を通して成長した植物30を観賞して楽しむことができる。
【0027】
但し、夜間や屋内照明が消灯状態にある場合等の外光が少ない環境下においては、植物30の成長が促進されず、また暗いために観賞することもできない。
【0028】
そこで、外光が少ない環境下においては、LEDランプ22を点灯することによってLEDランプ22の光で植物30の成長を促進すると共にLEDランプ22の光で照明された植物30を観賞して楽しむことができる。
【0029】
この場合、点灯されたLEDランプ22から出射した光は、図3に示すようにLEDランプ22の上方に位置する、カバーケース1の開口端面9を光入射面10として該光入射面10からカバーケース1の側壁11内に入射する。
【0030】
カバーケース1の側壁11内に入射した光のうち、側壁11の一方の面、例えば図3のように外壁面12に臨界角以上の角度で入射した光は該外壁面12で全反射されて反射光が他方の面(内壁面)13に向かう。そして、内壁面13に向かう光のうち内壁面13に臨界角以上の角度で入射した光は該内壁面13で全反射されて反射光が外壁面12に向かう。このように、LEDランプ22から出射して光入射面10から側壁11内に入射した光は、外壁面12と内壁面13との間で全反射を繰り返しながら側壁11内を導光されて閉塞部2側に向かい、閉塞部2の凸部6の先端面14に至る
【0031】
凸部6の先端面14は図4に示すように、例えば、シボ加工やブラスト処理等の拡散処理が施されて光拡散面となっており、側壁11内を導光されて先端面14に至った光は、この光拡散面を光出射面15として該光出射面15から出射された拡散光16が下方に位置する植物30に照射される。
【0032】
すると、植物30には全体的に略均一な光量が照射され、植物30の自然な成長を促すと共に違和感のない照明によって魅力的な観賞環境を演出する。
【0033】
ところで、LEDランプには白色光を含めて種々の色調の光を出射するものがあり、使用するLEDランプの種類を適宜選択し、場合によってはそれらを組み合わせることにより様々な照明環境下においてインテリアとしての趣のある雰囲気を醸し出すことができる。
【0034】
また、植物は照射するLEDランプの光の波長によって成長速度を速めたり、開花時期を設定したり、あるいは開花期間を延長するといった成長に係る制御が可能である。そのため、複数種のLEDランプを配設しておいて適宜必要な時期に必要な波長の照射光を単色光又は混色光で形成することにより、植物育成装置としても優れた機能を発揮するものとなる。
【0035】
本発明のカバーケースは透明材料で一体に形成されており、観賞装置に用いる際に照明光源となるLEDランプをカバーケースの下方に配設することによりカバーケースの周囲には視界を遮るものがなく、カバーケース内に収容された観賞物をあらゆる方向から該カバーケースを通して観賞することができる。そのため、昼夜を問わない又見る方向に制約を有しない観賞の自由度の高い観賞装置を実現させるものとなる。
【0036】
またカバーケースに上部に光源を配置する必要がないために光源に電力供給を行う給電用配線の引き回しが不要となり、見栄えを損なうもののない装飾性及び商品性の良好な観賞装置を実現するものとなる。
【0037】
なお、カバーケース内に収容する観賞物は植物に限られるものではなく、それが各種フィギュアや各種貴金属等の観賞の対象とされるものであれば上記効果が十分に発揮される。
【符号の説明】
【0038】
1 導光機能付き観賞用カバーケース
2 閉塞部
3 開口部
4 凹部
5 回転湾曲面
6 凸部
7 回転湾曲面
8 開口端部
9 開口端面
10 光入射面
11 側壁
12 外壁面
13 内壁面
14 先端面
15 光出射面
16 拡散光
20 観賞用植物育成装置
21 基板
22 LEDランプ
23 駆動回路素子
24 基台
25 LEDランプ挿通孔
26 カバーケース載置溝
30 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料で一体形成されて一方に閉塞部を有し他方に開口部を有する筒状の導光機能付き観賞用カバーケースであって、
前記閉塞部は前記導光機能付き観賞用カバーケースをその中心軸を含む平面で切断したときの切断面の形状が略M字状を呈すると共に中央部に前記開口部側に向かう凸部を有しており、
前記開口部の端面から前記導光機能付き観賞用カバーケースの側壁内に入射した光が前記側壁の外壁面と内壁面との間で全反射を繰り返しながら前記側壁内を導光されて前記凸部の端面に至り、前記端面から前記導光機能付き観賞用カバーケースで覆われた内部空間に照射されることを特徴とする導光機能付き観賞用カバーケース。
【請求項2】
前記凸部の端面は拡散処理が施されており、前記導光機能付き観賞用カバーケースで覆われた内部空間には前記端面から拡散光が照射されることを特徴とする請求項1に記載の導光機能付き観賞用カバーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−207188(P2010−207188A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59611(P2009−59611)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】