説明

導波路型合波器

【課題】温度変化によるレーザダイオードの波長シフト(温度ドリフト)が生じた場合でも、光損失を低く抑えることができる導波路型合波器を提供する。
【解決手段】導波路型合波器20は、マッハツェンダ干渉計20bを構成する導波路50,52を用いて異なる波長λ,λの光信号を合波する。ある波長λに対応する第1ポート200aに着目すると、導波路型合波器20の透過中心波長は材料の屈折率によって変化することが分かる。したがって、温度条件の変化に応じて屈折率が変化する材料を予め選定しておけば、レーザダイオードの発振波長に温度ドリフトが生じても、導波路型合波器20の透過中心波長を追従して変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路型合波器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長の異なる複数の光信号を1本の光ファイバで伝送する光波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。複数の光信号は、それぞれ単波長光源器から出力され、合波器で合波(多重化)されて多波長光信号となる。また多波長光信号は受信側の分波器で分波され、複数の単波長光信号として受信される。
【0003】
上記の先行技術において、単波長光源器としては半導体レーザが用いられており、合波器や分波器としてはアレイ導波路型のものが用いられている。通常、半導体レーザは、素子温度の変化によって発振波長がシフトしていくが、上記の先行技術では、予め合波器や分波器の透過帯域を発振波長のシフト幅以上に確保しておくとともに、透過帯域の中心波長を標準的なグリッド波長よりも長波長側にずらしている。これにより、使用温度の変化に伴う発振波長のシフトが生じた場合であっても、合波器や分波器の透過帯域幅内で波長シフトを許容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−297559号公報(段落0027〜0029、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、たとえ合波器の透過帯域幅を予め広めに確保しておいたとしても、透過帯域の中心波長から半導体レーザの発振波長がずれていくと、それだけ合波器での光透過率は低下する。このため先行技術(特許文献1)の手法では、温度変化によって半導体レーザの発振波長がシフトした場合に光損失が大きくなり、光出力が変動しやすくなるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、温度変化による波長シフト(温度ドリフト)が生じた場合でも、光損失を低く抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明は、マッハツェンダ干渉計を構成する複数の導波路を用いて、複数の光源から出力された互いに波長の異なる複数の光を合波する導波路型合波器を一態様とする。光源は、温度条件の変化に応じて出力する光の波長が変化する特性を有しており、導波路は、温度条件の変化に伴う光源からの光の波長の変化に追従して、光損失を極小化する透過中心波長が変化する温度依存特性を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導波路型合波器によれば、温度変化による波長のシフトが生じても、光損失を低く抑えて光出力を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】波長多重伝送システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】導波路型合波器の構成例を概略的に示す図である。
【図3】導波路型合波器の基本的な分光特性を示す図である。
【図4】第1実施形態の導波路型合波器を構成するマッハツェンダ干渉計を概略的に示す平面図である。
【図5】第2実施形態の導波路型合波器を構成するマッハツェンダ干渉計を概略的に示す平面図である。
【図6】図5に示すマッハツェンダ干渉計の概略的な分解図である。
【図7】第1及び第2実施形態の導波路型合波器の分光特性(波長λ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
〔導波路型合波器の適用例〕
図1は、波長多重伝送システムの構成を概略的に示す図である。導波路型合波器は、例えば図1に示される波長多重伝送システムに適用することができる。ただし、以下は1つの適用例として示すものであり、導波路型合波器の適用範囲は以下の適用例に限られるものではない。
【0012】
波長多重伝送システムは、例えば送信側の光トランシーバ10から4波長多重化した光信号を出力し、1芯の光ファイバ22を伝送路として光信号を伝送する。伝送区間が長距離に及ぶ場合、伝送路の途中には中継器24を設置することができ、中継器24は光増幅器24aで光信号を増幅しながら伝送する。伝送された光信号は、受信側の光トランシーバ40で4つの単波長光信号に分波される。なお、ここでは送信側、受信側としてそれぞれ簡略化しているが、双方の光トランシーバ10,40には、光送信機能と光受信機能とが合わせて装備されていてもよい。
【0013】
送信側の光トランシーバ10は、光源器12及び導波路型合波器20を備えている。光源器12には、例えば光源としての4つのレーザダイオード(LD:Laser Diode)12a〜12dが含まれており、これら4つのレーザダイオード12a〜12dは、それぞれ異なる波長(λ,λ,λ,λ)の光信号を出力する。
【0014】
なお光源器12には、図示しない変調(駆動)回路やAPC(Automatic Power Control)回路が接続されている。変調回路は、レーザダイオード12a〜12dに対し変調信号(振幅変調電流)を供給して光信号を直接変調する。またAPC回路は、レーザダイオード12a〜12dの後方出力をモニタし、出力誤差をフィードバックしてLDバイアス電流をフィードバック制御する。
【0015】
導波路型合波器20は、上記のように4つの異なる波長λ,λ,λ,λの光信号を合波して出力する。なお、導波路型合波器20の具体的な形態(第1実施形態及び第2実施形態)についてはさらに後述する。
【0016】
受信側の光トランシーバ40は、導波路型分波器30及び受光器32を備えている。導波路型分波器30は、光ファイバ22を通じて入力された多重化信号を4つの単波長λ,λ,λ,λの光信号に分波する。
【0017】
また受光器32には、例えば4つのフォトダイオード(PD:Photo Diode)32a〜32dが含まれており、これら4つのフォトダイオード32a〜32dは、それぞれ単波長λ,λ,λ,λに分波された光信号を電気信号に変換する。
【0018】
〔導波路型合波器の構成〕
次に図2は、導波路型合波器20の構成例を概略的に示す図である。導波路型合波器20は、例えば3つのマッハツェンダ干渉計20a〜20cを多段に接続して構成されている。具体的には、光信号の入力段に2つのマッハツェンダ干渉計20b,20cが位置し、残る1つのマッハツェンダ干渉計20aが出力段に位置している。3つのマッハツェンダ干渉計20a〜20cは、いずれも構造的には同等(ただし分光特性は個別に異なる)の光導波路素子であるが、配置によって機能が異なる。
【0019】
入力段に位置する2つのマッハツェンダ干渉計20b,20cは、導波路型合波器20全体としての入力ポート200を形成している。入力ポート200には、第1ポート200a〜第4ポート200dまでの4つが含まれる。このうち第1ポート200a及び第2ポート200bが1つのマッハツェンダ干渉計20bで構成されており、第3ポート200c及び第4ポート200dがもう1つのマッハツェンダ干渉計20cで構成されている。
【0020】
4つある入力ポート200のうち、第1ポート200aには波長λの光信号が入力され、第2ポート200bには波長λの光信号が入力されるものとなっている。また第3ポート200cには波長λの光信号が入力され、第4ポート200dには波長λの光信号が入力されるものとなっている。なお、同一のマッハツェンダ干渉計20bに入力される2つの光信号(波長λ,λ)の間には、標準グリッドよりも大きい波長間隔が確保されている。同様に、同一のマッハツェンダ干渉計20cに入力される2つの光信号(波長λ,λ)の間にも、標準グリッドより大きい波長間隔が確保されているものとする。
【0021】
出力段に位置する1つのマッハツェンダ干渉計20aは、導波路型合波器20全体としての出力ポート210を形成している。マッハツェンダ干渉計20aと他の2つのマッハツェンダ干渉計20b,20cとは、それぞれ中間導波路200e,200fで接続されている。入力段のマッハツェンダ干渉計20bで合波された光信号(波長λ,λ)は、中間導波路200eを通じて出力段のマッハツェンダ干渉計20aに入力され、また、別の入力段のマッハツェンダ干渉計20cで合波された光信号(波長λ,λ)は、中間導波路200fを通じて出力段のマッハツェンダ干渉計20aに入力されている。
【0022】
出力段のマッハツェンダ干渉計20aは、入力された2つの光信号(波長λ,λが合波されたものと波長λ,λが合波されたもの)をさらに合波し、4波長多重化した光信号(波長λ〜λ)を出力ポート210から出力する。
【0023】
〔基本分光特性〕
図3は、導波路型合波器20の基本的な分光特性を示す図である。導波路型合波器20は、短波長域から長波長域に向かって波長λ,λ,λ,λの順に、各透過中心波長がほぼ一定間隔で配置された分光特性を有している。なお、ここでは透過中心波長の間隔を一定としているが、波長間隔は一定でなくてもよい。
【0024】
導波路型合波器20は3つのマッハツェンダ干渉計20a〜20cで構成されているため、波長毎の光損失は比較的小さい。すなわち各波長λ〜λの光信号は、それぞれレーザダイオード12a〜12dの発振波長が透過中心波長に一致したとき、光損失が最小値(Lm)に抑えられるものとなっている。
したがって、各マッハツェンダ干渉計20a〜20cに形成された導波路(図3には示されていない)には、基本的に入力される光信号の波長λ〜λに対し、それぞれの透過中心波長を一致させる分光特性が与えられている。
【0025】
上記の基本分光特性において、光トランシーバ10の動作時の温度条件が常温(例えば25°C程度)域にある場合、導波路型合波器20は全体として、期待した設計値(Lm)の通りに各光信号(波長λ〜λ)の光損失を最小化することができる。
ただし、光トランシーバ10の動作中は様々な要因により温度条件が変化していくため、レーザダイオード12a〜12dの発振波長は常温設計値で安定せず、各光信号(波長λ〜λ)で温度ドリフトが生じてくる。
【0026】
例えば波長λの光信号で考えると、光トランシーバ10の起動時に温度条件が常温域にある場合、レーザダイオード12aの発振波長が導波路型合波器20の透過中心波長と略一致するため、光損失は設計最小値(Lm)に抑えられる。そこから温度条件が高温域に変化した場合、レーザダイオード12aの発振波長が透過中心波長から長波長側にドリフトする(図中λ’)。あるいは温度条件が低温域に変化した場合、発振波長は短波長側にドリフトする(図中λ”)。いずれの場合も、常温域に比較して光損失が大きくなる(Lm→Lh)ため、それだけ光出力が変動することになる。
【0027】
そこで本発明では、各マッハツェンダ干渉計20a〜20cに対し、温度条件の変化に応じて導波路の透過中心波長が変化する温度依存特性を持たせ、発振波長の温度ドリフトに追従して透過中心波長を変化させる手法を採用した。以下に具体的な手法として、2つの実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)を提示する。
【0028】
〔第1実施形態〕
図4は、第1実施形態の導波路型合波器20を構成するマッハツェンダ干渉計20bを概略的に示す平面図である。図4に示されるマッハツェンダ干渉計20bは、導波路型合波器20の入力段に位置し、第1ポート200a及び第2ポート200bに対応するものである。なお図中、導波路50,52はクラッド54に内層された状態にあるため表出していないが、発明の理解を容易にするため、ここでは便宜的に実線で示している。
【0029】
マッハツェンダ干渉計20bは2系統の導波路50,52を有しており、これら導波路50,52は、上記のようにクラッド54に内層されている。
一方の導波路50は第1ポート200aを入力端とし、反対の出力端200gは上述した中間導波路200e(図4には示さず)に接続されている。また、他方の導波路52は第2ポート200bを入力端としているが、反対の出力端200hは開放されており、実際の光出力は出力端200gに統合されている。
【0030】
一方の導波路50は大きく蛇行して形成されており、途中の2箇所が他方の導波路52に近接されて方向性結合部56,58を形成している。なお、ここでは他方の導波路52が直線状に示されているが、他方の導波路52は曲線状に形成されていてもよい。
【0031】
このようなマッハツェンダ干渉計20bにおいて、波長λの光信号に対応する第1ポート200aに着目すると、第1ポート200aから出力端200gに至る区間に2つ(2本)の光路L1,L2が形成されている。このうち1つの光路L1は、全ての区間で導波路50に沿った形態であり、この光路L1の長さ(光路長)は導波路50の全長に依存している。また、もう1つの光路L2は、2つの方向性結合部56,58の外側区間では一方の導波路50に沿った形態であるが、方向性結合部56,58の内側区間では他方の導波路52に沿った形態であり、内側区間での差が2つの光路L1,L2の光路長差L(=L1−L2)となる。
【0032】
ここで、第1ポート200aの分光特性(損失曲線)は以下の式で表される。
1−sin(π/λ・n1・L)
上式において、
λ :透過中心波長
n1:屈折率
L :光路差
である。
【0033】
上式より、損失を極小化するための透過中心波長は、屈折率n1によって変化することが分かる。屈折率n1は、導波路50,52の材料に依存する値であるが、材料の屈折率n1に温度依存特性があれば、温度条件の変化に応じて屈折率n1は変化する。
よって、レーザダイオード12aによる発振波長の温度ドリフトに対応して材料の屈折率n1が変化していけば、発振波長の温度ドリフトに透過中心波長を追従して変化させることができる。
【0034】
〔検証例〕
以下に、具体的な検証例をもって説明する。以下の検証例において、光トランシーバ10の動作環境下で、温度条件は低温域0°Cから高温域85°Cまでの間で変化するものとする。なお、温度条件の設定はこれ以外でもよい。
【0035】
温度条件より、温度変化幅ΔT=85°C・・・(1)である。
上記(1)の温度変化に対し、レーザダイオード12aの発振波長(1271nm:25°Cのとき)は8.5nm変化するものとする(0.1nm/°C:DFB−LDの場合)。なおDFB−LDは、分布帰還型レーザダイオード(Distributed Feed Back Laser Diode)である。
上記より、発振波長変化幅Δλ=8.5nm・・・(2)である。
【0036】
導波路50,52の材料の屈折率n1,光路長差Lをそれぞれ以下とする。
n1=1.4498(25°Cのとき)
L =14470.18nm
以上より、損失を最小化する透過中心波長λは以下となる。
λ =1271nm(25°Cのとき)
【0037】
上記(2)より、温度ドリフトによる変化幅に合わせて透過中心波長λを8.5nm変化させるためには、同じ温度変化幅ΔTの条件において、材料の屈折率n1は以下の変化幅を有する必要がある。
屈折率変化幅Δn=0.0095・・・(3)
【0038】
上記(1)と(3)より、材料の屈折率に関する温度依存特性を表す式として、以下が得られる。
Δn/ΔT=0.0095/85=1.12×10−4
なお上式は、光トランシーバ10を使用する環境下での温度変化幅(例えば増加方向)に対し、材料の屈折率が変化する必要のある範囲(同じく増加方向)を示している。
【0039】
以上の検証例から、屈折率n1=1.4498(25°Cのとき)であり、かつ、Δn/ΔT=0.0095/85=1.12×10−4で表される温度依存特性を有する材料を第1実施形態に適用するものとする。これにより、発振波長の温度ドリフトに追従して導波路型合波器20の透過中心波長を変化させることができる。
【0040】
第1実施形態の導波路型合波器20によれば、予め導波路50,52の材料の特性を適切に選択しておくだけで、使用時の温度条件の変化に応じて透過中心波長を最適に変化させ、発振波長の温度ドリフト分を確実に補償することができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に図5は、第2実施形態の導波路型合波器20を構成するマッハツェンダ干渉計20bを概略的に示す平面図である。また図6は、図5に示すマッハツェンダ干渉計20bの概略的な分解図である。
図5及び図6に示されるマッハツェンダ干渉計20bもまた、第1実施形態と同様に、導波路型合波器20の入力段に位置し、第1ポート200a及び第2ポート200bに対応する。
【0042】
第2実施形態では、1つのマッハツェンダ干渉計20bを2つの導波路材料20b−1,20b−2で構成している。このため図5では、2つの材料の識別を容易にするため、それぞれのクラッド54に向きの異なるハッチングを付している。その他の構成については第1実施形態と同じであるため、以下では共通の構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、重複した説明を省略するものとする。
【0043】
図6に示されているように、第2実施形態では、予め屈折率の特性が異なる2つの導波路材料20b−1,20b−2を別々に用意するものとする。そして一方の導波路材料20b−1には一方の導波路50を形成し、他方の導波路材料20b−2には他方の導波路52を形成する。これら2つの導波路材料20b−1,20b−2を相互に光学接着することで方向性結合部56,58を適切に形成し、第2実施形態に適用可能なマッハツェンダ干渉計20bを得ることができる。なお導波路50,52は、導波路材料20b−1,20b−2の接着後に形成してもよい。
【0044】
以上のように第2実施形態では、屈折率の特性が異なる2つの導波路材料20b−1,20b−2を用いているため、第1ポート200aの分光特性(損失曲線)は以下の式で表される。
1−sin(π/λ・(n2・L1−n3・L2))
上式において、
λ :透過中心波長
n2:導波路材料20b−1の屈折率(温度依存特性を有するもの)
n3:導波路材料20b−2の屈折率(温度依存特性を有しない)
L1:光路L1の長さ
L2:光路L2の長さ
【0045】
〔基本パターン〕
上式より、損失を極小化するための透過中心波長は、屈折率n3を一定とすると、屈折率n2によって変化することが分かる。よって、レーザダイオード12aによる発振波長の温度ドリフトに対応して、導波路材料20b−1の屈折率n2が変化していけば、発振波長の温度ドリフトに透過中心波長を追従して変化させることができる。
【0046】
〔別パターン〕
なお第2実施形態において、以下の別パターンを適用することができる。
λ :透過中心波長
n2:導波路材料20b−1の屈折率(温度依存特性を有するもの)
n3:導波路材料20b−2の屈折率(温度依存特性を有するが、n2の変化幅より小さい)
L1:光路L1の長さ
L2:光路L2の長さ
【0047】
上式より、損失を極小化するための透過中心波長は、屈折率n2の変化幅Δn2と屈折率n3の変化幅Δn3との差によって変化することが分かる。よって、レーザダイオード12aによる発振波長の温度ドリフトに対応して、2つの導波路材料20b−1,20b−1の屈折率n2,n3がそれぞれ変化し、これに伴って変化幅の差(Δn2−Δn3)が変化していけば、同じく発振波長の温度ドリフトに透過中心波長を追従して変化させることができる。
【0048】
第2実施形態の導波路型合波器20によれば、2つの導波路50,52を構成する導波路材料20b−1,20b−2の特性を予め適切に選択しておくことにより、同じく使用時の温度条件の変化に応じて透過中心波長を最適に変化させ、発振波長の温度ドリフト分を確実に補償することができる。
【0049】
図7は、第1及び第2実施形態の導波路型合波器20の分光特性(波長λ)を示す図である。ここでは第1ポート200aに対応する波長域を例示しているが、第1及び第2実施形態で挙げた手法を適用すれば、他の波長λ,λ,λに対応する第3ポート200c、第2ポート200b及び第4ポート200dについても同様に、分光特性に温度依存特性を持たせることができる。
【0050】
図7に示されているように、第1及び第2実施形態の導波路型合波器20によれば、例えば常温域(25°C)で透過中心波長がλ(常温)の分光特性を示していても、高温域(85°C)に温度条件が変化すると、分光特性が長波長側の透過中心波長λ’(高温)にシフトする。このときの透過中心波長λ’(高温)は、レーザダイオード12aによる発振波長の温度ドリフト(高温時)に追従している。また低温域(0°C)に温度条件が変化すると、分光特性が短波長側の透過中心波長λ”(低温)にシフトする。このときの透過中心波長λ”(低温)もまた、レーザダイオード12aによる発振波長の温度ドリフト(低温時)に追従している。
【0051】
なお、図7には透過中心波長のシフト限度として高温時及び低温時を示しているが、例えば常温と高温の間の中高温域(40°C程度)や、常温と低温の間の中低温域(10°程度)であっても、それぞれの温度条件の温度ドリフトに対して、透過中心波長の変化が高精度に追従することができる。
【0052】
以上のように、第1及び第2実施形態の導波路型合波器20によれば、導波路50,52の材料に関する特性を予め適切に選定しておくことで、使用時の温度条件の変化による光トランシーバ10の出力変動を抑え、波長多重化伝送システムによるデータ伝送の安定化に大きく寄与することができる。
【0053】
なお導波路型合波器20は、4波長よりチャンネル数が多い形態(例えば10チャンネル)であってもよい。この場合であっても、第1及び第2実施形態で挙げた手法を適用することにより、チャンネル毎にレーザダイオードの発振波長の温度ドリフトに対して、導波路型合波器20の透過中心波長を適切に追従させることができる。
【0054】
第1及び第2実施形態で挙げたマッハツェンダ干渉計20bの構成は、特に図示のものに限られず、導波路50,52のパターンや光路L1,L2の長さが適宜に異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10,40 光トランシーバ
20 導波路型合波器
20a,20b,20c マッハツェンダ干渉計
20b−1,20b−2 導波路材料
22 光ファイバ
30 導波路型分波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッハツェンダ干渉計を構成する複数の導波路を用いて、複数の光源から出力された互いに波長の異なる複数の光を合波する導波路型合波器において、
前記光源は、温度条件の変化に応じて出力する光の波長が変化する特性を有しており、
前記導波路は、温度条件の変化に伴う前記光源からの光の波長の変化に追従して、光損失を極小化する透過中心波長が変化する温度依存特性を有する、導波路型合波器。
【請求項2】
請求項1に記載の導波路型合波器において、
前記導波路は、温度条件の変化に応じて屈折率が変化する材料で構成されている、導波路型合波器。
【請求項3】
請求項1に記載の導波路型合波器において、
マッハツェンダ干渉計を構成する2系統の前記導波路のうち、一方は温度条件の変化に応じて屈折率が変化する材料で構成されている、導波路型合波器。
【請求項4】
請求項3に記載の導波路型合波器において、
2系統の前記導波路のうち、他方は温度条件に関わらず一定の屈折率を有する材料で構成されている、導波路型合波器。
【請求項5】
請求項3に記載の導波路型合波器において、
2系統の前記導波路のうち、一方は温度条件の変化に応じて屈折率が変化する材料で構成されており、他方は、前記一方に比較して屈折率の変化量が小さい材料で構成されている、導波路型合波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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