説明

導管収容装置

【課題】煙ガス密を保証するよう構造部に形成した貫通孔に導管を収容するための装置を得る。
【解決手段】構造部9に形成した貫通孔8に、少なくとも1個の貫通開口15を設けた弾性封鎖体13を介して導管10を収容する導管収容装置において、貫通開口15に取り外し可能な案内スリーブ14を設け、この案内スリーブの外径を、無負荷状態での貫通開口15の内径よりも大きくする。案内スリーブ14を、例えば、2部分構成のような多部分構成とする。弾性封鎖体13を、膨大可能な材料により形成するとよい。さらに、弾性封鎖体13は複数個の案内スリーブを設けてもよい。案内スリーブ14に導管を挿通する前には、この案内スリーブ14に、 煙ガスを遮断する 少なくとも1個の取り外し可能な閉鎖素子33を設けておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部に形成した貫通孔に、少なくとも1個の貫通開口を設けた弾性封鎖体を介して導管を収容する導管収容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルまたは配管等の導管を、壁、天井等の構造部に貫通するため、構造部に貫通孔を設け、火災の際に火炎またはガスがこの貫通孔を経て伝播するのを防止するよう、防火安全性のためまた煙・ガス密となるよう貫通孔を封鎖する。防火安全性のためまた煙・ガス密となるようにするため、少なくとも1個の貫通開口を設けた弾性封鎖体とともに、構造部に設けた貫通孔に導管を挿通する種々の導管収容装置が知られている。
【0003】
例えば、2部分構成の封鎖体を設け、一方の部分を他の部分に互いに対向させる半円筒形の収容部を構成した封鎖体によって導管を密に貫通案内するモジュール式の装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)これら半円筒形の収容部によって構成される空間で、円筒形の収容部よりも小さい直径の円筒形の貫通開口を生ずる。残りの空間は、長手方向にほぼ等しい中空半円筒体に分割した中空円筒体で充填し、これら中空円筒体は、互いに分離可能の複数個の層によって構成する。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第429916号明細書
【0004】
互いに同心状に分離可能な複数個の層として構成した2部分構成の封鎖体および中空円筒体よりなる他のモジュール式の導管収容装置も知られている。(例えば、特許文献2参照。)この封鎖体は、船舶構造における流体密封鎖にも使用できるような押圧補助装置によって空間内に配置する。
【特許文献2】独国特許公開第2186443号公報
【0005】
このような既知の従来例は、導管収容装置を構成するのに個別の素子を多数必要とし、封鎖を生ずるのに互いに積層させる必要があるという欠点を有する。さらに、導管収容装置を構成する際に、予め導管を挿入しておかねばならない。形成する導管収容装置内に導管部分のみを配置するのは、構造部の両側で接続部をもることを必要とし、このことは構造上および美的外観上でも好ましくない。
【0006】
構造部、フレーム部、及び型枠部に導管貫通開口を防火密閉する装置がある。(例えば、特許文献3参照。)型枠部には、打ち抜きで形成した貫通開口を設け、この打ち抜き部分を閉鎖する。導管を挿通するためには、打ち抜き部分の閉鎖部分を除去して導管を挿通する。導管と型枠体との間の隙間は、填隙材で閉鎖する。
【特許文献3】独国特許公開第3943165号公報
【0007】
しかし、この従来技術は、隙間を閉鎖する必要があるという欠点がある。貫通開口の内形寸法を挿通する導管の外形寸法にさせ、または挿通する導管の外形寸法を貫通開口の内形寸法よりも大きい寸法にすると、導管収容装置に導管を挿通する際に相当大きな摩擦抵抗が発生し、導管の挿通を阻害し、枠体が導管挿通によって破損する恐れがある。破損した場合に煙ガス密を保証するためには、生じた隙間に填隙材で再度閉鎖しなければならない。
【0008】
さらに、導管の周りに弾性封鎖体を2個の押圧プレートによって押し付け合い、貫通孔の内面及び導管の外面を密着させて構造部に防火遮断するように導管を収容する装置がある。(例えば、特許文献4参照。)しかし、この従来技術は、多額の費用をかけることなく簡単にアクセスできる貫通孔でしか押圧プレートによる押圧をすることができないという欠点がある。さらに、この装置は、貫通孔に1個の導管を挿通することにしか適用できない。
【特許文献4】独国実用新案公開第29818819号公報
【0009】
封鎖体を構造部に注入するか、または埋設することにより、構造部に形成した貫通孔に防火及び煙ガス密にして導管を挿通する装置がある。(例えば、特許文献5参照。)この装置は、中空円筒形であり、とがったとげとげを設けた突き工具を使用し、導管を挿通するための貫通開口に封鎖体をセットする。とげを取り外し、中空円筒形の突き工具により生じた貫通開口に導管を挿通する。この後、中空円筒形の突き工具を据え付け方向とは反対方向に封鎖体から抜き出し、このとき膨張した封鎖体が導管に密着する。円筒形の突き工具は、例えば、2個のハーフシェルにより構成し、この突き工具は、挿通した導管から簡単に取り外すことができる。
【0010】
しかし、この従来技術は、封鎖体に貫通開口を形成するために、突き工具と、この突き工具を動作させるのに適合する装置とを必要とするという欠点がある。
【特許文献5】米国特許第4,302,917号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、構造部の状況に無関係に導管を簡単にカバーすることができ、とくに、煙ガス密を保証するよう構造部に形成した貫通孔に導管を収容するための装置を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明導管収容装置は、貫通開口に取り外し可能な案内スリーブを設け、この案内スリーブの外径を、無負荷状態での貫通開口の内径よりも大きくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明導管収容装置によれば、貫通開口における取り外し可能な案内スリーブの外径寸法は、無負荷状態における貫通開口の内径寸法よりも大きいため、案内スリーブの周りにおける少なくとも弾性封鎖体の領域は、圧縮される。挿通すべき導管は、少なくとも1個の案内スリーブに簡単に挿通することができる。導管を挿通うか後には、案内スリーブを弾性封鎖体から抜き出し、このとき弾性的に復元可能な封鎖体は膨張し、導管の外壁に密着する。これにより、構造部の貫通孔は挿通した導管とともに煙ガス密に閉鎖され、何ら付加的な工具を使用することなく、また煙ガス密遮蔽を保証する填隙材を使用することも不要になる。
【0014】
弾性封鎖体は、場合によっては、補助装置により構造部の貫通孔に圧縮させた状態で装填することができる。封鎖体は、任意の断面にすることができ、例えば、円形、卵形、方形、または多角形断面とすることができる。案内スリーブも、例えば、円形、卵形、方形、または多角形断面とすることができ、挿通すべき導管の断面形状に適合させると好適である。
【0015】
好適な実施例においては、弾性封鎖体に枠体を設ける。本発明導管収容装置は、構造部に注入するか、または埋設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好適には、案内スリーブを多部分構成とする。案内スリーブを抜き出した後には、案内スリーブの各部分を挿入した導管から取り外すことができ、挿通した導管の遊端まで案内スリーブを抜き出す必要はない。案内スリーブの断面形状に基づいて、案内スリーブは、2個、3個、4個またはそれ以上の部分を組み合わせて形成することができる。好適な実施例においては、案内スリーブを2部分構成とし、丸い、または卵形の断面形状にすることができる。
【0017】
好適には、封鎖体に複数個の案内スリーブを設け、複数個の導管を封鎖体に挿通できるようにする。案内スリーブは、異なる大きさの断面、および異なる断面形状にすることができる。案内スリーブは、小さい断面、例えば、1.5cmよりも小さい直径の丸い断面であっても、封鎖体から取り外すことができる。弾性を有して復元可能な封鎖体は、案内スリーブを取り外したときに膨張し、貫通開口を封鎖して装置の煙ガス密封鎖を保証することができる。
【0018】
好適には、弾性封鎖体を、膨大可能な材料により形成し、火災を生じた場合に膨張し、防火遮蔽を確実にするようにする。膨大可能な材料の代わりに、弾性封鎖体を他の防火材料、例えば、少なくとも所定時間にわたり不燃性を示す材料により形成してもよい。
【0019】
好適には、少なくとも1個の取り外し可能な閉鎖素子を案内スリーブに設ける。大きな断面を有して埋め込まれない案内スリーブの場合、弾性封鎖体から案内スリーブを取り外す際には封鎖体が弾性復元するにもかかわらず、煙ガスが通過する恐れのある開口が残存する。案内スリーブに配置する少なくとも1個の取り外し可能な閉鎖素子により、埋め込まれないで封鎖体内に案内スリーブが残存する場合でも、装置の煙ガス密の遮断を行うことができ、その後完全に埋め込むこともできる。
【0020】
次に、図面につき本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図1及び図2に示す本発明による導管収容装置1は、断面が円筒形であり、貫通開口5を有する弾性封鎖体3を設ける。貫通開口5には2部分構成の分割可能な案内スリーブ4を挿入することを意図する。2部分構成の案内スリーブ4の外径D1は、無負荷状態の貫通開口5の内径D2よりも大きくし、したがって、弾性封鎖体3は、少なくとも案内スリーブ4を包囲する領域で圧縮される。案内スリーブ4は、2個のハーフシェル6により構成し、弾性封鎖体3から取り外し可能とする。導管収容装置1は、全体として隔壁における貫通開口に挿入する。
【実施例2】
【0022】
図3に示す実施例の導管収容装置11は、とくに、火災の延焼を防止するようまたガス密に導管10を挿通するため、構造部9に形成した貫通孔8に、図1及び図2に示す装置1の周囲を枠体12により包囲し、この枠体12には、貫通開口15を有して膨大可能材料で形成した弾性封鎖体13を配置する。貫通開口15には、2部分構成でありかつ封鎖体13から取り外すことができる案内スリーブ14を設け、この案内スリーブ14は2個のハーフシェル16により構成する。
【0023】
つぎに、図3につき導管収容装置11の使用方法を詳細に説明する。他の図面に記載の実施例の理解のためにも、以下の説明は役立つ。
【0024】
導管収容装置11は、構造部9のための、例えば、コンクリート壁のための型枠内に挿入し、構造部9の製造の際にコンクリートを注入する。構造部9が仕上がると、導管収容装置11は構造部9内に埋設される。例えば、電気ケーブルのような導管10を導管収容装置11に挿通する際、この導管10を、例えば、矢印17の引き出し方向に、貫通開口15に設けた案内スリーブ14から引き出すことができる。その後、案内スリーブ14の双方のハーフシェル16を矢印18の方向に封鎖体13から引っ張り出し、これにより、少なくとも案内スリーブ14の領域で圧縮されていた封鎖体13は再び膨張し、導管10の外面19に密着する。
【実施例3】
【0025】
図4及び図5に示す実施例の導管収容装置21は、方形の枠体22を有し、この枠体22内に複数個の貫通開口25,26,27および28を有する矩形断面形状の弾性封鎖体23を配置する。貫通開口25,26,27および28は、それぞれ異なる断面形状及び寸法とすることができる。貫通開口25および26は、それぞれ丸い断面形状にし、それぞれ2部分構成の案内スリーブ29または30を設ける。貫通開口27は六角形断面にし、多部分構成の案内スリーブ32を設ける。貫通開口28は方形断面にし、多部分構成の案内スリーブ31を設ける。案内スリーブ29において、取り外し可能な閉鎖素子33を設け、貫通開口25の埋め込みの際には閉鎖素子33を取り外す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による装置の第1実施例の縦断面であり、図2のI‐I線上の断面図である。
【図2】図1の装置のII‐II線上から見た端面図である。
【図3】本発明による装置の第2実施例の組み立て状態の縦断面である。
【図4】本発明による装置の第3実施例の縦断面であり、図5のIV‐IV線上の断面図である。
【図5】図4に示す装置のV‐V線上の端面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 導管収容装置
3 弾性封鎖体
4 案内スリーブ
5 貫通開口
6 ハーフシェル
8 貫通孔
9 構造部
10 導管
11 導管収容装置
12 枠体
13 弾性封鎖体
14 案内スリーブ
15 貫通開口
16 ハーフシェル
17 引き出し方向
18 引っ張り出し方向
19 導管の外面
21 導管収容装置
22 枠体
23 弾性封鎖体
25 貫通開口
26 貫通開口
27 貫通開口
28 貫通開口
29 案内スリーブ
30 案内スリーブ
31 案内スリーブ
32 案内スリーブ
33 閉鎖素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部(9)に形成した貫通孔(8)に、少なくとも1個の貫通開口(5;15;25,26,27,28)を設けた弾性封鎖体(3;13;23)を介して導管(10)を収容する導管収容装置において、前記貫通開口(5;15;25,26,27,28)に取り外し可能な案内スリーブ(4;14;29,30,31,32)を設け、この案内スリーブの外径を、無負荷状態での貫通開口(5;15;25,26,27,28)の内径よりも大きくしたことを特徴とする導管収容装置。
【請求項2】
前記案内スリーブ(4;14;29,30,31,32)を多部分構成とした請求項1記載の導管収容装置。
【請求項3】
案内スリーブ(4;14;29,30)を、2部分構成とした請求項2記載の導管収容装置。
【請求項4】
弾性封鎖体(23)に複数個の案内スリーブ(29,30,31,32)を設けた請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の導管収容装置。
【請求項5】
弾性封鎖体(13)を、膨大可能な材料により形成した請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の導管収容装置。
【請求項6】
少なくとも1個の取り外し可能な閉鎖素子(33)を案内スリーブ(29)に設けた請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の導管収容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−77988(P2006−77988A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263819(P2005−263819)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】