説明

導電性アルミニウムペースト

【課題】ガラスフリットを利用せずに、下地基板に対して、良好な密着性を示す焼結体層の作製に利用可能な導電性アルミニウムペーストを提供する。
【解決手段】ガラスフリットを配合していない導電性アルミニウムペーストであって、該導電性アルミニウムペーストは、アルミニウム粉末、金属ナノ粒子、有機分散溶媒を含み、該アルミニウム粉末と、金属ナノ粒子が、有機分散溶媒中に分散されているペースト状の組成物であり、350℃以上500℃以下の温度に加熱することで、焼成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性アルミニウムペーストに関し、特には、ガラス基板、シリコン基板の基板面に対する接着性を付与する、ガラスフリットを添加していない導電性アルミニウムペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
無機材料基板の基板面に配線層や、電極層を形成する目的に、従来から、導電性金属ペーストが利用されている。
【0003】
例えば、p型シリコン基板を利用して作製される太陽電池では、その受光面となる基板表面に、n+型半導体層を形成し、該n+型半導体層上に、グリッド状のn側電極が作製される。一方、p型シリコン基板の裏面には、p側電極として、アルミニウム電極が作製される。このp型シリコン基板裏面のアルミニウム電極の作製に、導電性アルミニウムペーストが利用されている。
【0004】
前記の用途に広く利用されている、導電性アルミニウムペーストは、平均粒径1〜10μmのアルミニウム粉末と、ガラスフリット粉末とを、有機分散溶媒中に均一に分散させ、ペースト状組成物に調製されている。p型シリコン基板裏面に、所望の裏面電極パターンに従って、導電性アルミニウムペーストをスクリーン印刷して、ペースト塗布膜を形成する。該ペースト塗布膜を所望の塗布膜厚とし、その形状を保持する目的で、導電性アルミニウムペーストの粘度を増すため、通常、有機バインダー成分が添加されている。該ペースト塗布膜を所定の温度に加熱して、焼成処理を施すことで、アルミニウム電極を作製する。前記焼成処理の間に、p型シリコン基板裏面に接するアルミニウム粉末から、基板側にアルミニウム原子が熱拡散し、その界面にAl−Si合金層が形成される。また、基板中に拡散するアルミニウム原子は、p型不純物であるため、p+型半導体層も形成される。一方、導電性アルミニウムペースト中に配合されているガラスフリット粉末は、その軟化点より加熱温度を高く設定することで、焼成処理の間に軟化し、アルミニウム粉末の間隙に充填される。さらに、p型シリコン基板裏面と、軟化したガラスフリットが接触する。p型シリコン基板裏面には、自然酸化膜が存在しており、軟化したガラスフリットと前記自然酸化膜が融合する結果、p型シリコン基板裏面に対して、ガラスフリットは高い密着性を示す。
【0005】
導電性アルミニウムペースト中に含まれる有機分散溶媒、ならびに、有機バインダー成分は、焼成処理の間に、徐々に蒸散する。アルミニウム粉末は、相互に接触する部位において、焼結が進行する。軟化したガラスフリットは、焼結したアルミニウム粉末の層に残留する隙間を充填する結果、焼結したアルミニウム粉末の層全体の隙間に軟化したガラスフリットが均一に浸潤した状態となる。
【0006】
焼成処理を完了し、冷却すると、ガラスフリットの固化がなされる。作製されるアルミニウム電極は、p型シリコン基板裏面とガラスフリット粉末との間に形成されたAl−Si合金層と、p型シリコン基板裏面に密着するガラスフリットとによって、裏面に密着された状態となる。勿論、焼結したアルミニウム粉末の層全体の隙間に浸潤したガラスフリットは、焼結したアルミニウム粉末の層全体を結合させる機能も有しており、アルミニウム電極全体のp型シリコン基板裏面への密着性を大幅に向上させている。
【0007】
ガラス基板上に、従来の導電性アルミニウムペーストを利用して、アルミニウム配線層を形成する場合には、配合されているガラスフリットによって、ガラス基板面への接着性が付与されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の導電性アルミニウムペーストにおいては、該導電性アルミニウムペーストを利用して形成されるアルミニウム配線層の下地基板面に対する密着性を向上させる目的で、ガラスフリットが配合されている。従って、形成されるアルミニウム配線層は、焼結したアルミニウム粉末の層全体の隙間にガラスフリットが浸潤した状態となっている。従来の導電性アルミニウムペーストに配合されるガラスフリットは、粉末状の低融点ガラスである。従来の導電性アルミニウムペーストは、アルミニウム粉末と粉末状の低融点ガラスとを、有機分散溶媒中に分散させ、ペースト状組成物の形態に構成されており、該ペースト状組成物を下地基板面に塗布し、塗布膜を作製する。作製される塗布膜中に含まれる、アルミニウム粉末と粉末状の低融点ガラスは、概ね均一な分散を示すが、部分的に不均一な分布が形成される場合も少なくない。具体的には、一般にアルミニウム粉末の平均粒径に比較して、粉末状の低融点ガラスの平均粒径は小さく選択されているため、塗布膜の膜厚方向における、粉末状の低融点ガラスの分布は均一でない。また、塗布膜の面内においても、粉末状の低融点ガラスの分布は必ずしも、均一ではない。
【0009】
導電性アルミニウムペーストの塗布膜を作製した後、該塗布膜中に含まれる、有機分散溶媒を蒸散させる乾燥処理を施した後、焼成処理がなされる。該焼成処理では、乾燥処理済の塗布膜を加熱処理することで、含まれるアルミニウム粉末相互の焼結と、粉末状の低融点ガラスの溶融を行う。すなわち、該焼成処理の加熱温度は、ガラスフリットとして利用している、粉末状の低融点ガラスの融点を超える温度、通常、600℃以上の温度に選択される。アルミニウムの融点は、660.37℃であり、600℃以上の温度、例えば、650℃程度まで加熱すると、含まれるアルミニウム粉末相互の焼結が進行する。従って、ガラスフリットを配合する、従来の導電性アルミニウムペーストを利用して、下地基板面にアルミニウム配線層を形成する際には、焼成処理の加熱温度は、ガラスフリットとして利用する低融点ガラスの融点を超え、アルミニウムの融点に近い温度に選択する必要がある。
【0010】
一方、大気中において、アルミニウムの融点に近い温度に加熱すると、アルミニウム粉末の表面では、酸化皮膜の生成が進行する。そのため、形成されるアルミニウム配線層中では、アルミニウム粉末相互の焼結部位の界面に、生成した酸化皮膜が存在し、当該焼結部位の接触抵抗を上昇させる要因となっている。この当該焼結部位の接触抵抗の上昇は、形成されるアルミニウム配線層全体の平均抵抗率の上昇を引き起こす、主要な原因となっている。
【0011】
アルミニウム粉末の表面における、酸化皮膜の生成を抑制するためには、焼成処理の加熱温度を、少なくとも500℃以下に選択することが必要である。
【0012】
従来の導電性アルミニウムペーストを利用して、アルミニウム配線層を作製する際、焼成処理の加熱温度は、配合されているガラスフリットを溶融する温度に依存している。焼成処理の加熱温度を、少なくとも500℃以下に選択するためには、ガラスフリットを利用しなくとも、アルミニウム配線層の下地基板面に対する密着性を向上させる手段を開発することが必要である。
【0013】
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、ガラスフリットを利用することなく、アルミニウム配線層の下地基板面に対する密着性を向上させることが可能な、新規な組成の導電性アルミニウムペーストを提供することにある。特には、本発明の目的は、焼成処理の加熱温度を少なくとも500℃以下に選択することが可能であり、ガラスフリットを配合していない、アルミニウム配線層の下地基板面に対する密着性を向上させることが可能な、新規な組成の導電性アルミニウムペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、焼成処理の加熱温度を少なくとも500℃以下に選択する場合に、アルミニウム配線層の下地基板面に対する密着性を向上させることが可能な手段の探索を進めた。その結果、ガラスフリットに代えて、導電性アルミニウムペースト中に金属ナノ粒子を配合すると、該金属ナノ粒子は、少なくとも、500℃以下の加熱温度において、ガラス基板や、シリコンウエハ面上の酸化膜表面に存在するシラノール基(−Si−OH)と当該金属ナノ粒子表面の金属原子Mとの間で、−Si−O−M−型の結合を形成することによって、これらの下地基板面に対する密着性を示すことを見出した。また、少なくとも、500℃以下の加熱温度において、金属ナノ粒子相互の焼結が可能であり、さらに、アルミニウム粉末の表面のアルミニウム金属原子と、該金属ナノ粒子の表面の金属原子との間で金属結合を形成することによって、良好な密着性を示すことを見出した。すなわち、ガラス基板や、シリコンウエハ面上の酸化膜表面に接しているアルミニウム粉末に対して、その接触部位の周囲の隙間に金属ナノ粒子を充填すると、これら下地基板面と金属ナノ粒子との間で、−Si−O−M−型の結合を形成し、一方、アルミニウム粉末の表面のアルミニウム金属原子との間で金属結合を形成する結果、該金属ナノ粒子は、アルミニウム粉末の下地基板面に対する密着性を向上させる機能を発揮することを見出した。加えて、ガラス基板や、シリコンウエハ面上の酸化膜表面に接しているアルミニウム粉末の接触部位の周囲の隙間に充填されている、金属ナノ粒子相互は低温焼結が可能で、生成される金属ナノ粒子の焼結体が、アルミニウム粉末の下地基板面に対する密着性を向上させる接着剤層として機能することを見出した。
【0015】
さらには、アルミニウム粉末相互の接触部位の周囲の隙間に金属ナノ粒子が充填されると、生成される金属ナノ粒子の焼結体が、アルミニウム粉末相互の密着性を向上させる接着剤層として機能することを見出した。その結果、アルミニウム粉末相互の接触部位における実効的な接触面積が拡大し、該接触部位における接触抵抗を低減する効果を有することも見出した。
【0016】
すなわち、ガラスフリットに代えて、導電性アルミニウムペースト中に金属ナノ粒子を配合すると、それを利用して作製されるアルミニウム配線層は、焼成処理の加熱温度を少なくとも500℃以下に選択する場合、アルミニウム粉末表面の酸化皮膜の生成が抑制され、一方、アルミニウム粉末相互の密着性、アルミニウム粉末の下地基板面に対する密着性の向上がなされることを見出した。
【0017】
以上の一連の知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、
ガラスフリットを配合していない導電性アルミニウムペーストであって、
該導電性アルミニウムペーストは、
アルミニウム粉末、金属ナノ粒子、有機分散溶媒を含み、
該アルミニウム粉末と、金属ナノ粒子が、有機分散溶媒中に分散されているペースト状の組成物であり、
前記アルミニウム粉末の平均粒径は、1μm〜5μmの範囲に選択され、
前記金属ナノ粒子の平均粒子径は、5nm〜50nmの範囲に選択され、
前記金属ナノ粒子の表面は、被覆剤分子により被覆されており、
前記被覆剤分子は、炭素数10〜18の脂肪族モノカルボン酸、および炭素数8〜14の脂肪族モノアミンまたはジアミンからなる群から選択される、前記有機分散溶媒に対して親和性を有する化合物であり、
前記有機分散溶媒は、沸点が150℃〜350℃の範囲の非極性有機溶媒であり、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記金属ナノ粒子の含有量は、100質量部〜230質量部の範囲に選択され、
前記有機分散溶媒の含有量は、15質量部〜35質量部の範囲に選択されており、
前記金属ナノ粒子の表面を被覆する被覆剤分子の含有量は、
前記金属ナノ粒子100質量部当たり、8質量部〜15質量部の範囲に選択されており、
該導電性アルミニウムペーストは、350℃以上500℃以下の温度に加熱することで、焼成することが可能である
ことを特徴とする導電性アルミニウムペーストである。
【0019】
その際、前記導電性アルミニウムペーストは、
前記金属ナノ粒子に加えて、
加熱分解によって、金属原子の生成が可能な、金属塩、金属錯体からなる群から選択される金属含有化合物を1種以上含み、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記金属含有化合物の含有量の総和は、1質量部〜20質量部の範囲に選択されている形態を選択することができる。
【0020】
なお、前記金属含有化合物に含まれる金属種は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、チタン、ケイ素、ビスマス、タングステン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アンチモン、セリウム、セシウム、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、タリウム、バナジウム、イットリウム、ジルコニウムからなる群から選択される、一種の金属種または、二種以上の金属種であることが好ましい。
【0021】
また、上記の本発明にかかる導電性アルミニウムペーストにおいては、
前記金属ナノ粒子は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、タングステン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム、イットリウム、ジルコニウムからなる群から選択される、一種の金属種からなる金属ナノ粒子、または、二種以上の金属種からなる金属ナノ粒子混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金のナノ粒子であることが好ましい。
【0022】
特には、前記金属ナノ粒子は、金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種からなる金属ナノ粒子、または、二種以上の金属種からなる金属ナノ粒子混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金のナノ粒子であることがより好ましい。
【0023】
また、前記アルミニウム粉末は、
フレーク状アルミニウム粉末、粒状アルミニウム粉末、不定形状アルミニウム粉末からなる群から選択される一種以上のアルミニウム粉末であることができる。
【0024】
さらには、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、
前記アルミニウム粉末、金属ナノ粒子に加えて、
サブミクロンの平均粒子径を有する金属微細粉末を含み、
前記金属微細粉末の平均粒子径は、0.1μm〜1μmの範囲に選択され、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記金属微細粉末の含有量の総和は、10質量部〜50質量部の範囲に選択されている形態とすることもできる。
【0025】
その際、前記金属微細粉末は、
金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種からなる金属微細粉末、または、二種以上の金属種からなる金属微細粉末混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金の微細粉末であることが好ましい。
【0026】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、
大気中において、350℃〜450℃の範囲に選択される温度に加熱することで、焼成することが可能であることが望ましい。
【0027】
勿論、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、
還元性雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において、350℃〜450℃の範囲に選択される温度に加熱することで、焼成することが可能であることも望ましい。
【0028】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストでは、
前記有機分散溶媒は、沸点150℃〜350℃の範囲の非芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。
【0029】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、
沸点200℃〜400℃の範囲のモノカルボン酸をさらに含み、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記モノカルボン酸の含有量は、1質量部〜10質量部の範囲に選択されている形態とすることもできる。
【0030】
一方、本発明にかかる導電性アルミニウムペースト中に含有される、
前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率は、100:25〜100:60の範囲に選択されていることが好ましい。
【0031】
また、前記導電性アルミニウムペースト中に含有される、
前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率の合計は、50体積%〜66体積%の範囲に選択されていることが好ましい。
【0032】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストの粘度は、5Pa・s〜100Pa・s(25℃)の範囲に選択されていることが好ましい。
【0033】
なお、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、
樹脂成分を含まない形態とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、ガラスフリットに代えて、金属ナノ粒子を配合しているため、該導電性アルミニウムペーストを利用して、ガラス基板や、シリコンウエハなどの表面にシラノール基が存在する下地基板上に作製されるアルミニウム配線層は、焼成処理の加熱温度を少なくとも500℃以下に選択する場合、アルミニウム粉末表面の酸化皮膜の生成が抑制され、一方、アルミニウム粉末相互の密着性、アルミニウム粉末の下地基板面に対する密着性の向上がなされる。すなわち、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、ガラス基板やシリコンウエハ等の表面に良好な密着性を示すアルミニウム配線層の作製に利用でき、配線用、太陽電池電極用、接合用材料として、好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストに関して、より詳しく説明する。
【0036】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、従来の導電性アルミニウムペーストにおいて、無機のバインダー成分として、広く利用されている、ガラスフリットを配合していない点に特徴がある。本発明にかかる導電性アルミニウムペーストを利用して作製されるアルミニウム配線層、電極層は、その下地基板面との密着性を向上するため、ガラスフリットの利用に代えて、配合されている金属ナノ粒子を利用している。
【0037】
従って、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、必須成分として、アルミニウム粉末、金属ナノ粒子、有機分散溶媒を含み、該アルミニウム粉末と、金属ナノ粒子が、有機分散溶媒中に分散されているペースト状の組成物の形態されている。
【0038】
まず、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストの必須成分として使用される、アルミニウム粉末、金属ナノ粒子、有機分散溶媒について、以下に説明する。
【0039】
本発明の導電性アルミニウムペーストを利用して作製されるアルミニウム配線層、電極層の厚さtlayerは、通常、5μm〜15μmの範囲に選択される。このアルミニウム配線層、電極層は、導電性アルミニウムペースト中に含有されるアルミニウム粉末、金属ナノ粒子を加熱焼成することによって形成している。その際、アルミニウム配線層、電極層の厚さは、積層されたアルミニウム粉末が焼結された焼結体の厚さに相当するため、形成されるアルミニウム配線層、電極層の厚さのバラツキ、ならびに、表面の凹凸は、使用するアルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderに依存する。一般に、形成されるアルミニウム配線層、電極層の厚さのバラツキΔtlayerは、使用されるアルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderの1/2程度、また、表面の凹凸δtlayerは、使用されるアルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderの1/4程度になる。
【0040】
作製されるアルミニウム配線層、電極層の厚さtlayerに対して、厚さのバラツキΔtlayerは、通常、大きくとも、(Δtlayer/tlayer)<1/4、より好ましくは、(Δtlayer/tlayer)≦1/10の範囲とすることが望ましい。その際、Δtlayer≒1/2・dAl-powderとすると、(1/2・dAl-powder/tlayer)<1/4、より好ましくは、(1/2・dAl-powder/tlayer)≦1/10の範囲となるように、アルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderを選択することが望ましい。従って、作製されるアルミニウム配線層、電極層の厚さtlayerに対して、アルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderは、(dAl-powder/tlayer)<1/2、より好ましくは、(dAl-powder/tlayer)≦1/5の範囲となるように選択することが望ましい。
【0041】
その点を考慮して、作製されるアルミニウム配線層、電極層の厚さtlayerが5μm〜15μmの範囲である際、本発明にかかる導電性アルミニウムペースト中に含有される、アルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderは、1μm〜5μmの範囲、より好ましくは、1μm〜3μmの範囲に選択することが望ましい。
【0042】
また、使用されるアルミニウム粉末の形状は、フレーク状アルミニウム粉末、粒状アルミニウム粉末、不定形状アルミニウム粉末からなる群から選択される。一般に、形成されるアルミニウム配線層、電極層の厚さのバラツキ、表面の凹凸を抑制する目的では、粒状アルミニウム粉末を使用することが望ましい。形成されるアルミニウム配線層、電極層内の電気伝導度を高める目的では、粒状アルミニウム粉末と、フレーク状アルミニウム粉末、不定形状アルミニウム粉末とを併用することが望ましい。粒状アルミニウム粉末が積層した構造中に、フレーク状アルミニウム粉末、あるいは、不定形状アルミニウム粉末が挿入されると、アルミニウム粉末の積層構造全体として、隙間空間は減少し、同時に、アルミニウム粉末相互の接触部位の平均密度の向上がなされる。
【0043】
例えば、粒状アルミニウム粉末と、フレーク状アルミニウム粉末、不定形状アルミニウム粉末とを併用する際には、粒状アルミニウム粉末100質量部当たり、フレーク状アルミニウム粉末、不定形状アルミニウム粉末を5質量部〜20質量部の範囲、好ましくは5質量部〜15質量部の範囲で混合した状態とすることが望ましい。
【0044】
本発明にかかる導電性アルミニウムペースト中に含有される、金属ナノ粒子は、該導電性アルミニウムペーストを下地基板面上に塗布して、塗布膜を形成した際、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間、下地基板面とアルミニウム粉末の積層構造との間に存在する隙間に、有機分散溶媒中に均一に分散した状態で充填される状態とする。すなわち、有機分散溶媒中に、金属ナノ粒子が均一に分散した状態を維持するため、金属ナノ粒子の表面は、被覆剤分子により被覆された状態とする。前記被覆剤分子として、炭素数10〜18の脂肪族モノカルボン酸、および炭素数8〜14の脂肪族モノアミンまたはジアミンからなる群から選択される、前記有機分散溶媒に対して親和性を有する化合物を利用する。この被覆剤分子は、有機分散溶媒に対して親和性を有するため、該被覆剤分子で表面が被覆されている金属ナノ粒子は、有機分散溶媒中において、高い分散性を示す。
【0045】
金属ナノ粒子は、塗布膜を形成した際、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間、下地基板面とアルミニウム粉末の積層構造との間に存在する隙間に充填された状態とするため、金属ナノ粒子の平均粒子径dnanoparticleは、5nm〜50nmの範囲、好ましくは、5nm〜30nmの範囲に選択することが望ましい。
【0046】
具体的には、アルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderに対して、金属ナノ粒子の平均粒子径dnanoparticleは、dnanoparticle/dAl-powderが、1/1000〜10/1000の範囲、好ましくは、2/1000〜7/1000の範囲、より好ましくは、2/1000〜5/1000の範囲となるように選択することが望ましい。前記の比率に選択することで、アルミニウム粉末相互の接触部位の周囲の狭い隙間、あるいは、下地基板面とアルミニウム粉末の接触部位の周囲の狭い隙間に、金属ナノ粒子を均一に充填することが可能となる。
【0047】
すなわち、塗布膜を形成した際、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間、下地基板面とアルミニウム粉末の積層構造との間に存在する隙間には、有機分散溶媒が浸潤している。その後、有機分散溶媒の蒸散が進行すると、最終的には、アルミニウム粉末相互の接触部位の周囲の狭い隙間、あるいは、下地基板面とアルミニウム粉末の接触部位の周囲の狭い隙間に残余する有機分散溶媒が凝集する状態となる。その際、該有機分散溶媒中に均一に分散されている金属ナノ粒子も、アルミニウム粉末相互の接触部位の周囲の狭い隙間、あるいは、下地基板面とアルミニウム粉末の接触部位の周囲の狭い隙間に集中的に充填される状態となる。
【0048】
本発明の導電性アルミニウムペーストを利用して作製されるアルミニウム配線層、電極層は、アルミニウム粉末相互の接触部位の周囲の狭い隙間、あるいは、下地基板面とアルミニウム粉末の接触部位の周囲の狭い隙間に、金属ナノ粒子が集中的に充填される状態を達成した後、焼成処理を行うことで形成されている。
【0049】
前記金属ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、タングステン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム、イットリウム、ジルコニウムからなる群から選択される、一種の金属種からなる金属ナノ粒子、または、二種以上の金属種からなる金属ナノ粒子混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金のナノ粒子であることが好ましい。特には、金属ナノ粒子は、金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種からなる金属ナノ粒子、または、二種以上の金属種からなる金属ナノ粒子混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金のナノ粒子であることがより好ましい。
【0050】
上記の狭い隙間に集中的に充填されている金属ナノ粒子は、加熱処理を施すと、その表面を被覆している被覆剤分子の離脱が進み、隣接する金属ナノ粒子は、その金属表面が直接接する状態となる。金属ナノ粒子の表面の金属原子は、表面マイグレーションを起こすため、接触した金属ナノ粒子相互の融着、低温焼成が進行する。また、アルミニウム粉末のアルミニウム金属表面に接触している金属ナノ粒子は、該接触部分のアルミニウム金属表面上で表面拡散を起こし、金属結合を形成して接合する。この接合部位では、相互拡散も進行するため、部分的に合金化も起こる。
【0051】
また、下地基板の表面、例えば、ガラス基板や、シリコンウエハ面上の酸化膜表面にはシラノール基(−Si−OH)が存在している。下地基板の表面に接する、金属ナノ粒子は、該金属ナノ粒子の表面の金属原子Mと、下地基板の表面に存在するシラノール基(−Si−OH)との間で、−Si−O−M−型の結合を形成することで下地基板の表面に密着性を示す。下地基板面とアルミニウム粉末の接触部位の周囲の狭い隙間に集中的に充填される金属ナノ粒子は、前記の過程を介して、下地基板の表面に密着される。また、この隙間に充填される金属ナノ粒子全体が低温焼結する結果、該金属ナノ粒子の低温焼結体を介して、アルミニウム粉末の下地基板の表面への密着性の向上がなされる。
【0052】
本発明の導電性アルミニウムペーストを利用して作製されるアルミニウム配線層、電極層において、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間、下地基板面とアルミニウム粉末の積層構造との間に存在する隙間に、金属ナノ粒子の低温焼結体が密に充填されている状態となることが望ましい。
【0053】
従って、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストでは、前記アルミニウム粉末100質量部当たり、前記金属ナノ粒子の含有量を、100質量部〜230質量部の範囲、より好ましくは、100質量部〜200質量部の範囲に選択することが好ましい。
【0054】
より具体的には、本発明にかかる導電性アルミニウムペースト中に含有される、前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率(アルミニウム粉末:金属ナノ粒子)を、100:25〜100:60の範囲、より好ましくは、100:25〜100:50の範囲に選択されていることが好ましい。
【0055】
例えば、使用される平均粒径dAl-powderのアルミニウム粉末の形状が、球状である場合、該球状のアルミニウム粉末が最密充填状態で積層している構造中に、隙間空間は、全体の嵩の20体積%〜40体積%占めている。この隙間空間を完全に、金属ナノ粒子の低温焼結体が充填されている状態を達成する上では、前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率を、80:20〜60:40の範囲に選択する必要がある。
【0056】
アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率(アルミニウム粉末:金属ナノ粒子)を、100:25〜100:60の範囲、より好ましくは、100:25〜100:50の範囲に選択することで、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間、下地基板面とアルミニウム粉末の積層構造との間に存在する隙間の相当部分に、金属ナノ粒子の低温焼結体が充填されている状態を達成できる。
【0057】
有機分散溶媒中に、金属ナノ粒子が均一に分散した状態を維持するため、金属ナノ粒子の表面は、被覆剤分子により被覆された状態とする。前記被覆剤分子として、炭素数10〜18の脂肪族モノカルボン酸、および炭素数8〜14の脂肪族モノアミンまたはジアミンからなる群から選択される、前記有機分散溶媒に対して親和性を有する化合物を利用する。特には、被覆剤分子は、炭素数10〜18の直鎖脂肪族モノカルボン酸、および炭素数8〜14の直鎖脂肪族モノアミンからなる群から選択することがより好ましい。
【0058】
前記金属ナノ粒子の表面を被覆する被覆剤分子の含有量は、前記金属ナノ粒子100質量部当たり、8質量部〜15質量部の範囲、より好ましくは、8質量部〜13質量部の範囲に選択することが望ましい。また、体積比率に換算すると、前記金属ナノ粒子とその表面を被覆する被覆剤分子の体積比率(金属ナノ粒子:被覆剤分子)は、100:90〜100:180の範囲、より好ましくは、100:90〜100:150の範囲に選択することが望ましい。
【0059】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストを利用して作製されるアルミニウム配線層、電極層では、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間、下地基板面とアルミニウム粉末の積層構造との間に存在する隙間に、金属ナノ粒子の低温焼結体が密に充填されている状態とする。
【0060】
その際、導電性アルミニウムペースト中に、前記金属ナノ粒子に加えて、
加熱分解によって、金属原子の生成が可能な、金属塩、金属錯体からなる群から選択される金属含有化合物を1種以上を添加し、該金属含有化合物の加熱分解によって、金属原子を生成させ、さらに狭い隙間に生成した金属原子を充填した状態とすることがより好ましい。金属ナノ粒子に加えて、前記金属含有化合物を併用する際には、前記アルミニウム粉末100質量部当たり、前記金属含有化合物の含有量の総和は、1質量部〜20質量部の範囲、より好ましくは、1質量部〜10質量部の範囲に選択することが望ましい。
【0061】
添加される金属含有化合物は、有機分散溶媒中に均一に溶解している状態であることが好ましい。従って、添加される金属含有化合物の体積の総和と、前記有機分散溶媒の体積の比(金属含有化合物:有機分散溶媒)は、10:100〜40:100の範囲、好ましくは、20:100〜30:100の範囲に選択することが好ましい。あるいは、該金属含有化合物の前記有機分散溶媒に対する溶解度(20℃)は、0.1g/cm3〜0.2g/cm3の範囲、好ましくは、0.1g/cm3〜0.15g/cm3の範囲であることが好ましい。
【0062】
該金属含有化合物は、加熱処理を施すと、分解的還元反応によって、含有される金属原子を生成する。従って、前記アルミニウム粉末100質量部当たり、含有されている該金属含有化合物から生成される金属原子の重量の総和は、0.1質量部〜3質量部の範囲、より好ましくは、0.1質量部〜2.5質量部の範囲に選択されることが望ましい。
【0063】
金属ナノ粒子に加えて、前記金属含有化合物を添加する場合、前記金属含有化合物から生成する金属原子の重量の合計と、金属ナノ粒子の重量の合計との比率(金属原子:金属ナノ粒子)は、0.1:100〜3:100の範囲、好ましくは、0.1:100〜2.5:100の範囲に選択することが望ましい。
【0064】
金属ナノ粒子に加えて、前記金属含有化合物を添加する場合、金属ナノ粒子と生成する金属原子の重量の合計は、アルミニウム粉末100質量部当たり、100質量部〜233質量部の範囲、好ましくは、100質量部〜203質量部の範囲に選択することが望ましい。また、体積比率に換算すると、アルミニウム粉末の体積総和と、金属ナノ粒子と生成する金属原子の体積合計の比(アルミニウム粉末:(金属ナノ粒子と生成する金属原子))は、100:25〜100:61の範囲、好ましくは、100:30〜100:51の範囲に選択することが望ましい。
【0065】
なお、前記金属含有化合物に含まれる金属種は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、チタン、ケイ素、タングステン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アンチモン、セリウム、セシウム、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、タリウム、バナジウム、イットリウム、ジルコニウムからなる群から選択される、一種の金属種または、二種以上の金属種であることが好ましい。特には、前記金属含有化合物に含まれる金属種は、金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種または、二種以上の金属種であることがより好ましい。
【0066】
金属塩、金属錯体からなる群から選択される金属含有化合物として、例えば、有機物アニオン種ならびに該金属のカチオン種を含んでなる金属化合物を用いることで、有機分散溶媒中に容易に溶解することが可能となる。特には、有機物アニオン種ならびに金属のカチオン種を含む金属化合物は、有機酸由来の有機物アニオン種を含んでなる有機酸の該金属塩、または、有機物アニオン種を配位子とする該金属の錯化合物の形態であることが好ましい。
【0067】
その際、有機アニオン種としては、カルボン酸由来のカルボキシラト(−COO-)、アセチルアセトン(CH3COCH2COCH3)由来の2,4−ペンタンジオナト([CH3COCHCOCH3-)など、有機酸の金属塩、または、有機物アニオン種を配位子とする金属の錯化合物を形成可能なアニオン種が利用される。酸化数2以上の金属カチオン種と、これらの有機酸の金属塩、金属の有機錯化合物は、有機分散溶媒中において、通常、イオン解離することなく溶解可能である。すなわち、カルボン酸由来のカルボキシラト(−COO-)、アセチルアセトン(CH3COCH2COCH3)由来の2,4−ペンタンジオナト([CH3COCHCOCH3-)は、二座配位の配位子として、中心の金属カチオン種に配位している。その場合、室温近傍では、有機分散溶媒中において、通常、イオン解離することなく、この二座配位子複数を含む複合体化合物として溶解している。カルボン酸由来のカルボキシラト(−COO-)、アセチルアセトン(CH3COCH2COCH3)由来の2,4−ペンタンジオナト([CH3COCHCOCH3-)などの炭化水素鎖部分を利用して、有機分散溶媒中に溶解可能である。
【0068】
さらには、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、前記アルミニウム粉末、金属ナノ粒子に加えて、サブミクロンの平均粒子径を有する金属微細粉末を含有する組成物とすることができる。例えば、このサブミクロンの平均粒子径を有する金属微細粉末の平均粒子径dfine-powderを、前記アルミニウム粉末の平均粒径dAl-powderの1/4以下に選択すると、アルミニウム粉末の積層構造中に存在する隙間空間に、金属微細粉末が挿入された状態とすることが可能である。
【0069】
前記金属微細粉末の平均粒子径dfine-powderは、0.1μm〜1μmの範囲、より好ましくは、0.2μm〜0.8μmの範囲に選択することが望ましい。
【0070】
前記アルミニウム粉末、金属ナノ粒子に加えて、サブミクロンの平均粒子径を有する金属微細粉末を配合する際には、前記アルミニウム粉末100質量部当たり、前記金属微細粉末の含有量の総和は、5質量部〜50質量部の範囲、より好ましくは、5質量部〜30質量部の範囲に選択することが望ましい。
【0071】
その際、前記金属微細粉末は、金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種からなる金属微細粉末、または、二種以上の金属種からなる金属微細粉末混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金の微細粉末であることが好ましい。
【0072】
金属ナノ粒子に加えて、前記金属微細粉末を添加する場合、金属ナノ粒子と金属微細粉末の重量の合計は、アルミニウム粉末100質量部当たり、100質量部〜230質量部の範囲、好ましくは、100質量部〜200質量部の範囲に選択することが望ましい。また、体積比率に換算すると、アルミニウム粉末の体積総和と、金属ナノ粒子と金属微細粉末の体積の合計の比(アルミニウム粉末:(金属ナノ粒子と金属微細粉末))は、100:25〜100:60の範囲、好ましくは、100:25〜100:60の範囲に選択することが望ましい。
【0073】
さらには、金属ナノ粒子に加えて、前記金属微細粉末を添加する場合、導電性アルミニウムペースト中に含有される、前記アルミニウム粉末、金属微細粉末、金属ナノ粒子の体積比率の合計は、50体積%〜70体積%の範囲、より好ましくは、50体積%〜66体積%の範囲に選択することが望ましい。
【0074】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストに含有される、有機分散溶媒は、上述するように、被覆剤分子により表面が被覆されている金属ナノ粒子を均一に分散させる分散溶媒として利用されている。なお、焼成処理を行う際には、その加熱温度では、該有機分散溶媒は蒸散する必要があり、前記有機分散溶媒としては、沸点が150℃〜350℃の範囲、好ましくは、200℃〜350℃の範囲の非極性有機溶媒、より好ましくは、沸点が250℃〜350℃の範囲の非極性有機溶媒を利用する。例えば、前記有機分散溶媒は、沸点250℃〜350℃の範囲の非芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。
【0075】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストでは、前記アルミニウム粉末100質量部当たり、前記有機分散溶媒の含有量は、15質量部〜35質量部の範囲、より好ましくは、20質量部〜35質量部の範囲に選択することが望ましい。
【0076】
また、体積比率に換算すると、金属アルミニウムの密度、2.699g/cm3(20℃)に対して、該有機分散溶媒の密度を0.9g/cm3(20℃)と仮定すると、アルミニウム粉末の体積総和と有機分散溶媒の体積の比率(アルミニウム粉末:有機分散溶媒)は、100:45〜100:100の範囲、より好ましくは、100:60〜100:130の範囲に選択することが望ましい。
【0077】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストに含有される、アルミニウム粉末は、種々の製造法で作製されるが、その製造法によっては、アルミニウム粉末の表面に、相当の膜厚の酸化皮膜が存在する場合がある。このアルミニウム粉末の表面に存在する酸化皮膜を除去する目的で、モノカルボン酸を添加する形態とすることもできる。
【0078】
具体的には、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、沸点が200℃〜400℃の範囲、より好ましくは、200℃〜350℃の範囲のモノカルボン酸をさらに含むこともできる。その際、前記アルミニウム粉末100質量部当たり、前記モノカルボン酸の含有量は、10質量部〜30質量部の範囲、より好ましくは、15質量部〜30質量部の範囲に選択することが望ましい。
【0079】
また、体積比率に換算すると、金属アルミニウムの密度、2.699g/cm3(20℃)に対して、該モノカルボン酸の密度を1.0g/cm3(20℃)と仮定すると、アルミニウム粉末の体積総和とモノカルボン酸の体積の比率(アルミニウム粉末:モノカルボン酸)は、100:27〜100:81の範囲、より好ましくは、100:40〜100:81の範囲に選択することが望ましい。
【0080】
添加されるモノカルボン酸は、前記有機分散溶媒と均一に混合された状態とする。その際、添加されるモノカルボン酸の体積の総和と、前記有機分散溶媒の体積の比(モノカルボン酸:有機分散溶媒)は、70:100〜110:100の範囲、好ましくは、70:100〜100:100の範囲に選択することが好ましい。
【0081】
モノカルボン酸として、例えば、沸点が200℃〜400℃の範囲、より好ましくは、200℃〜350℃の範囲のアルカン酸を好適に利用することができる。
【0082】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストを利用して、下地基板上にアルミニウム配線層、電極層を作製する際、所望の塗布形状で、該導電性アルミニウムペーストの塗布膜を形成する。この導電性アルミニウムペーストの塗布膜の膜厚tdrawingは、作製されるアルミニウム配線層、電極層の厚さtlayerに応じて、選択される。すなわち、作製されるアルミニウム配線層、電極層の厚さtlayerと塗布膜の膜厚tdrawingの比、tlayer/tdrawingは、導電性アルミニウムペースト中に含有される、前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率の合計に依存する。
【0083】
本発明にかかる導電性アルミニウムペースト中に含有される、アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率の合計は、50体積%〜66体積%の範囲、好ましくは、52体積%〜66体積%の範囲に選択されていることが望ましい。
【0084】
また、所望の塗布形状で、該導電性アルミニウムペーストの塗布膜を形成する際、例えば、スクリーン印刷法を適用する場合、該導電性アルミニウムペーストの液粘度は、スクリーン印刷法に適する粘度とする必要がある。スクリーン印刷法を適用する場合、該導電性アルミニウムペーストの液粘度は、5Pa・s〜100Pa・s(25℃)の範囲、より望ましくは、20Pa・s〜70Pa・s(25℃)の範囲に選択されていることが好ましい。
【0085】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストを利用して、下地基板上にアルミニウム配線層、電極層を作製する際、アルミニウム配線層、電極層の下地基板の表面への密着性の向上は、金属ナノ粒子を利用することで達成されている。
【0086】
そのため、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストでは、ガラスフリットを配合していない。勿論、接着剤として機能する、各種の樹脂成分も配合していない。
【0087】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストにおいては、ガラスフリットを配合していないので、焼成処理において、該ガラスフリットを溶融する温度まで加熱する必要はない。配合されている金属ナノ粒子の低温焼結、ならびに、有機分散溶媒の蒸散は可能であり、アルミニウム粉末の焼成が進行する加熱温度において、焼成を行うことが可能である。具体的には、350℃以上500℃以下の温度に加熱することで、焼成することが可能である。
【0088】
例えば大気中において、350℃〜450℃の範囲に選択される温度に加熱することで、焼成することが可能である。勿論、還元性雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において、350℃〜450℃の範囲に選択される温度に加熱することで、焼成することも可能である。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定を受けるものではない。
【0090】
(実施例1)
本実施例1の導電性アルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0091】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0092】
金属ナノ粒子分散液として、ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液を利用する。該分散液中に分散されている、Agナノ粒子の平均粒子径は、10nmである。このAgナノ粒子の表面には、被覆剤分子ドデシルアミン(沸点:247℃;密度:0.7841g/cm3(40℃))の表面被覆分子層が形成されている。該ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを60.8質量部、Agナノ粒子を35質量部、被覆剤分子ドデシルアミンを4.2質量部含んでいる。
【0093】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF5号ソルベント(沸点:275−306℃;流動点:−30℃;密度:0.815g/cm3(15℃))を使用する。
【0094】
高沸点モノアルカン酸として、2エチルヘキサン酸(沸点:227℃;密度:0.90g/cm3(20℃))を使用する。
【0095】
ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液14.3質量部(Ag固形分で5質量部)、ミナルコ(株)製Al粉#900F 2.5質量部、2エチルヘキサン酸 0.5質量部、新日本石油製AF5号ソルベント 0.5質量部を均一に混合する。得られる分散液中に含まれる、ヘプタンを、ロータリーエバポレーターで脱溶剤する。
【0096】
ヘプタンを除去した後、得られるペースト状の分散液を、攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、導電性アルミニウムペーストを得る。
【0097】
調製された導電性アルミニウムペーストの液粘度は、30Pa・s(25℃)であった。該導電性アルミニウムペーストは、AF5号ソルベント 0.5質量部、2エチルヘキサン酸 0.5質量部、Al粉#900F 2.5質量部、Agナノ粒子 5質量部と、その被覆剤分子ドデシルアミンを0.6質量部を含んでいる。
【0098】
該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の体積比率、Al粉#900F:Agナノ粒子は、Alの密度:2.699g/cm3(20℃)、Agの密度:10.49g/cm3(20℃)から、(2.5/2.699):(5/10.49)≒100:51と算出される。
【0099】
また、該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の合計(Al粉#900FとAgナノ粒子)と、有機物成分の合計(AF5号ソルベント、2エチルヘキサン酸と被覆剤分子)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=55体積%:45体積%に選択されている。
【0100】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF5号ソルベントが20質量部、2エチルヘキサン酸が20質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF5号ソルベントの体積、2エチルヘキサン酸の体積の比(Al粉#900F:AF5号ソルベント:2エチルヘキサン酸)は、(2.5/2.699):(0.5/0.815):(0.5/0.90)≒100:66:60と算出される。
【0101】
Agナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子ドデシルアミンが12質量部含まれている。該Agナノ粒子に対する被覆剤分子ドデシルアミンと、AF5号ソルベントの体積比、(ドデシルアミン:AF5号ソルベント)は、(0.6/0.7841):(0.5/0.815)≒125:100と算出される。
【0102】
調製された導電性アルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、10μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0103】
得られた焼成物の平均膜厚は、5.7μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率を算出した。算出された体積固有抵抗率は、7μΩ・cmであった。
【0104】
得られた焼成物の体積固有抵抗率、7μΩ・cmは、Alの抵抗率:2.655μΩ・cmの約3倍、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約5倍となっている。
【0105】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物の剥離は生じなかった。
【0106】
(実施例2)
本実施例2の導電性アルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0107】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0108】
金属ナノ粒子分散液として、ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液と、ハリマ化成製Cuナノ粒子ヘプタン分散液を利用する。該Agナノ粒子ヘプタン分散液中に分散されている、Agナノ粒子の平均粒子径は、10nmである。Agナノ粒子の表面には、被覆剤分子ドデシルアミン(沸点:247℃)の表面被覆分子層が形成されている。該Agナノ粒子ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを60.8質量部、Agナノ粒子を35質量部、被覆剤分子ドデシルアミン(沸点:247℃)を4.2質量部含んでいる。また、Cuナノ粒子ヘプタン分散液中に分散されている、Cuナノ粒子の平均粒子径は、18nmである。Cuナノ粒子の表面には、被覆剤分子 オレイン酸(沸点:195℃/100Pa;密度:0.895g/cm3(25℃))の表面被覆分子層が形成されている。該Cuナノ粒子ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを67質量部、Cuナノ粒子を30質量部、被覆剤分子オレイン酸を3質量部含んでいる。
【0109】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF5号ソルベント(沸点:275−306℃;流動点:−30℃;密度:0.815g/cm3(15℃))を使用する。
【0110】
高沸点モノアルカン酸として、2エチルヘキサン酸(沸点:227℃;密度:0.90g/cm3(20℃))を使用する。
【0111】
ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液14.3質量部(Ag固形分で5質量部)、ハリマ化成製Cuナノ粒子ヘプタン分散液0.3質量部(Cu固形で0.1質量部)、ミナルコ(株)製Al粉#900F 2.5質量部、2エチルヘキサン酸 0.5質量部、新日本石油製AF5号ソルベント 0.5質量部を均一に混合する。得られる分散液中に含まれる、ヘプタンを、ロータリーエバポレーターで脱溶剤する。
【0112】
ヘプタンを除去した後、得られるペースト状の分散液を、攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、導電性アルミニウムペーストを得る。
【0113】
調製された導電性アルミニウムペーストの液粘度は、35Pa・s(25℃)であった。該導電性アルミニウムペーストは、AF5号ソルベント 0.5質量部、2エチルヘキサン酸 0.5質量部、Al粉#900F 2.5質量部、Agナノ粒子 5質量部とその被覆剤分子ドデシルアミンを0.6質量部、ならびに、Cuナノ粒子 0.1質量部とその被覆剤分子オレイン酸を0.03質量部含んでいる。
【0114】
該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の体積比率、Al粉#900F:Agナノ粒子:Cuナノ粒子は、Alの密度:2.699g/cm3(20℃)、Agの密度:10.49g/cm3(20℃)、Cuの密度:8.95g/cm3(20℃)から、(2.5/2.699):(5/10.49):(0.1/8.95)≒100:51:1.2と算出される。また、該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の合計(Al粉#900F、Agナノ粒子とCuナノ粒子)と、有機物成分の合計(AF5号ソルベント、2エチルヘキサン酸と被覆剤分子)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=56体積%:44体積%に選択されている。
【0115】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF5号ソルベントが20質量部、2エチルヘキサン酸が20質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF5号ソルベントの体積、2エチルヘキサン酸の体積の比(Al粉#900F:AF5号ソルベント:2エチルヘキサン酸)は、(2.5/2.699):(0.5/0.815):(0.5/0.90)≒100:66:60と算出される。
【0116】
Agナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子ドデシルアミンが12質量部含まれている。該Agナノ粒子に対する被覆剤分子ドデシルアミンと、AF5号ソルベントの体積比、(ドデシルアミン:AF5号ソルベント)は、(0.6/0.7841):(0.5/0.815)≒125:100と算出される。
【0117】
Cuナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子オレイン酸が30質量部含まれている。該Cuナノ粒子に対する被覆剤分子オレイン酸と、AF5号ソルベントの体積比、(オレイン酸:AF5号ソルベント)は、(0.03/0.895):(0.5/0.815)≒5.5:100と算出される。
【0118】
調製された導電性アルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、9μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0119】
得られた焼成物の平均膜厚は、5.1μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率を算出した。算出された体積固有抵抗率は、10μΩ・cmであった。
【0120】
得られた焼成物の体積固有抵抗率、10μΩ・cmは、Alの抵抗率:2.655μΩ・cmの約4倍、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約6倍となっている。
【0121】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物の剥離は生じなかった。
【0122】
(比較例1)
本比較例1のアルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0123】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0124】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF5号ソルベント(沸点:275−306℃;流動点:−30℃;密度:0.815g/cm3(15℃))を使用する。
【0125】
高沸点モノアルカン酸として、2エチルヘキサン酸(沸点:227℃;密度:0.90g/cm3(20℃))を使用する。
【0126】
ミナルコ(株)製Al粉#900F 2.5質量部、2エチルヘキサン酸 0.5質量部、新日本石油製AF5号ソルベント 0.5質量部を均一に混合する。攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、導電性アルミニウムペーストを得る。
【0127】
調製されたアルミニウムペーストの液粘度は、38Pa・s(25℃)であった。該アルミニウムペーストは、AF5号ソルベント 0.5質量部、2エチルヘキサン酸 0.5質量部、Al粉#900F 2.5質量部を含んでいる。
【0128】
該アルミニウムペースト中に含まれる金属成分(Al粉#900F)と、有機物成分の合計(AF5号ソルベント、2エチルヘキサン酸と被覆剤分子)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=44体積%:56体積%に選択されている。
【0129】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF5号ソルベントが20質量部、2エチルヘキサン酸が20質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF5号ソルベントの体積、2エチルヘキサン酸の体積の比(Al粉#900F:AF5号ソルベント:2エチルヘキサン酸)は、(2.5/2.699):(0.5/0.815):(0.5/0.90)≒100:66:60と算出される。
【0130】
調製されたアルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、12μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0131】
得られた焼成物の平均膜厚は、6μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率の算出を試みた。該焼成物のシート抵抗値は、測定限界を超えており、少なくとも、その体積固有抵抗率は、>5000 μΩ・cmであると、推定された。
【0132】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物は容易に剥離した。また、焼成物自体、脆く、アルミニウム粉末の焼結が十分になされていないと判断される。
【0133】
(実施例3)
本実施例4の導電性アルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0134】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0135】
金属ナノ粒子分散液として、ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液を利用する。該分散液中に分散されている、Agナノ粒子の平均粒子径は、11nmである。このAgナノ粒子の表面には、被覆剤分子ドデシルアミン(沸点:247℃)の表面被覆分子層が形成されている。該ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを60.8質量部、Agナノ粒子を35質量部、被覆剤分子ドデシルアミンを4.2質量部含んでいる。
【0136】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF7号ソルベント(沸点:259−282℃;流動点:−30℃;密度:0.820g/cm3(15℃))を使用する。
【0137】
ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液14.3質量部(Ag固形分で5質量部)、ミナルコ(株)製Al粉#900F 5質量部、新日本石油製AF7号ソルベント 1質量部を均一に混合する。得られる分散液中に含まれる、ヘプタンを、ロータリーエバポレーターで脱溶剤する。
【0138】
ヘプタンを除去した後、得られるペースト状の分散液を、攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、導電性アルミニウムペーストを得る。
【0139】
調製された導電性アルミニウムペーストの液粘度は、45Pa・s(25℃)であった。該導電性アルミニウムペーストは、AF7号ソルベント 1質量部、Al粉#900F 5質量部、Agナノ粒子 5質量部と、その被覆剤分子ドデシルアミンを0.6質量部を含んでいる。
【0140】
該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の体積比率、Al粉#900F:Agナノ粒子は、Alの密度:2.699g/cm3(20℃)、Agの密度:10.49g/cm3(20℃)から、(5/2.699):(5/10.49)≒100:26と算出される。また、該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の合計(Al粉#900FとAgナノ粒子)と、有機物成分の合計(AF7号ソルベントと被覆剤分子)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=65体積%:35体積%に選択されている。
【0141】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF7号ソルベントが20質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF7号ソルベントの体積の比(Al粉#900F:AF5号ソルベント)は、(5/2.699):(2/0.820)≒100:66と算出される。
【0142】
Agナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子ドデシルアミンが12質量部含まれている。該Agナノ粒子に対する被覆剤分子ドデシルアミンと、AF7号ソルベントの体積比、(ドデシルアミン:AF5号ソルベント)は、(0.6/0.7841):(1/0.820)≒63:100と算出される。
【0143】
調製された導電性アルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、15μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0144】
得られた焼成物の平均膜厚は、10.7μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率を算出した。算出された体積固有抵抗率は、7μΩ・cmであった。
【0145】
得られた焼成物の体積固有抵抗率、7μΩ・cmは、Alの抵抗率:2.655μΩ・cmの約3倍、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約5倍となっている。
【0146】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物の剥離は生じなかった。
【0147】
(実施例4)
本実施例4の導電性アルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0148】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0149】
金属ナノ粒子分散液として、ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液と、ハリマ化成製Cuナノ粒子ヘプタン分散液を利用する。該Agナノ粒子ヘプタン分散液中に分散されている、Agナノ粒子の平均粒子径は、11nmである。Agナノ粒子の表面には、被覆剤分子ドデシルアミン(沸点:247℃)の表面被覆分子層が形成されている。該Agナノ粒子ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを57.4質量部、Agナノ粒子を38質量部、被覆剤分子ドデシルアミンを4.6質量部含んでいる。また、Cuナノ粒子ヘプタン分散液中に分散されている、Cuナノ粒子の平均粒子径は、18nmである。Cuナノ粒子の表面には、被覆剤分子オレイン酸(沸点:195℃/100Pa)の表面被覆分子層が形成されている。該Cuナノ粒子ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを67質量部、Cuナノ粒子を30質量部、被覆剤分子オレイン酸を3質量部含んでいる。
【0150】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF7号ソルベント(沸点:259−282℃;流動点:−30℃;密度:0.820g/cm3(15℃))を使用する。
【0151】
ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液13.2質量部(Ag固形分で5質量部)、ハリマ化成製Cuナノ粒子ヘプタン分散液0.33質量部(Cu固形で0.1質量部)ミナルコ(株)製Al粉#900F 5質量部、新日本石油製AF7号ソルベント 1質量部を均一に混合する。得られる分散液中に含まれる、ヘプタンを、ロータリーエバポレーターで脱溶剤する。
【0152】
ヘプタンを除去した後、得られるペースト状の分散液を、攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、導電性アルミニウムペーストを得る。
【0153】
調製された導電性アルミニウムペーストの液粘度は、37Pa・s(25℃)であった。該導電性アルミニウムペーストは、AF7号ソルベント 1質量部、Al粉#900F 5質量部、Agナノ粒子 5質量部とその被覆剤分子ドデシルアミンを0.6質量部、Cuナノ粒子 0.1質量部とその被覆剤分子オレイン酸を0.01質量部を含んでいる。
【0154】
該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の体積比率、Al粉#900F:Agナノ粒子:Cuナノ粒子は、Alの密度:2.699g/cm3(20℃)、Agの密度:10.49g/cm3(20℃)、Cuの密度:8.95g/cm3(20℃)から、(5/2.699):(5/10.49):(0.1/8.95)≒100:26:0.6と算出される。また、該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の合計(Al粉#900F、Agナノ粒子とCuナノ粒子)と、有機物成分の合計(AF7号ソルベントと被覆剤分子)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=66体積%:34体積%に選択されている。
【0155】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF5号ソルベントが20質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF7号ソルベントの体積の比(Al粉#900F:AF7号ソルベント)は、(5/2.699):(1/0.820)≒100:66と算出される。
【0156】
Agナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子ドデシルアミンが12質量部含まれている。該Agナノ粒子に対する被覆剤分子ドデシルアミンと、AF7号ソルベントの体積比、(ドデシルアミン:AF7号ソルベント)は、(0.6/0.7841):(1/0.820)≒63:100と算出される。
【0157】
Cuナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子オレイン酸が10質量部含まれている。該Cuナノ粒子に対する被覆剤分子オレイン酸と、AF7号ソルベントの体積比、(オレイン酸:AF5号ソルベント)は、(0.01/0.895):(1/0.820)≒0.9:100と算出される。
【0158】
調製された導電性アルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、16μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0159】
得られた焼成物の平均膜厚は、11.5μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率を算出した。算出された体積固有抵抗率は、8μΩ・cmであった。
【0160】
得られた焼成物の体積固有抵抗率、8μΩ・cmは、Alの抵抗率:2.655μΩ・cmの約3倍、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約5倍となっている。
【0161】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物の剥離は生じなかった。
【0162】
(実施例5)
本実施例5の導電性アルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0163】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0164】
金属サブミクロン粒子として、湿式法で作製される銀微細粉末である、三井金属(株)製SPQ−03S(平均粒子径0.5μm)を使用する。
【0165】
金属ナノ粒子分散液として、ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液を利用する。該Agナノ粒子ヘプタン分散液中に分散されている、Agナノ粒子の平均粒子径は、12nmである。Agナノ粒子の表面には、被覆剤分子ドデシルアミン(沸点:247℃)の表面被覆分子層が形成されている。該Agナノ粒子ヘプタン分散液の組成は、ヘプタンを55.2質量部、Agナノ粒子を40質量部、被覆剤分子ドデシルアミンを4.8質量部含んでいる。
【0166】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF7号ソルベント(沸点:259−282℃;流動点:−30℃;密度:0.820g/cm3(15℃))を使用する。
【0167】
ハリマ化成製Agナノ粒子ヘプタン分散液7.5質量部(Ag固形分で3質量部)、三井金属(株)製SPQ−03S 2質量部、ミナルコ(株)製Al粉#900F 5質量部、新日本石油製AF7号ソルベント 1.5質量部を均一に混合する。得られる分散液中に含まれる、ヘプタンを、ロータリーエバポレーターで脱溶剤する。
【0168】
ヘプタンを除去した後、得られるペースト状の分散液を、攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、導電性アルミニウムペーストを得る。
【0169】
調製された導電性アルミニウムペーストの液粘度は、58Pa・s(25℃)であった。この段階における該導電性アルミニウムペーストは、AF7号ソルベント 1.5質量部、Al粉#900F 5質量部、銀微細粉末SPQ−03S 2質量部、Agナノ粒子 3質量部とその被覆剤分子ドデシルアミンを0.36質量部含んでいる。
【0170】
該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の体積比率、Al粉#900F:Agナノ粒子:銀微細粉末は、Alの密度:2.699g/cm3(20℃)、Agの密度:10.49g/cm3(20℃)から、(5/2.699):(3/10.49):(2/10.49)≒100:15:10と算出される。また、該導電性アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の合計(Al粉#900F、Agナノ粒子と銀微細粉末)と、有機物成分の合計(AF7号ソルベントと被覆剤分子)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=56体積%:44体積%に選択されている。
【0171】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF7号ソルベントが30質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF7号ソルベントの体積の比(Al粉#900F:AF7号ソルベント)は、(5/2.699):(1.5/0.820)≒100:99と算出される。
【0172】
Agナノ粒子の100質量部当たり、その被覆剤分子ドデシルアミンが12質量部含まれている。該Agナノ粒子に対する被覆剤分子ドデシルアミンと、AF7号ソルベントの体積比、(ドデシルアミン:AF7号ソルベント)は、(0.36/0.7841):(1.5/0.820)≒25:100と算出される。
【0173】
調製された導電性アルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、15μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0174】
得られた焼成物の平均膜厚は、9.2μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率を算出した。算出された体積固有抵抗率は、13μΩ・cmであった。
【0175】
得られた焼成物の体積固有抵抗率、13μΩ・cmは、Alの抵抗率:2.655μΩ・cmの約5倍、Agの抵抗率:1.59μΩ・cmの約9倍となっている。
【0176】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物の剥離は生じなかった。
【0177】
(比較例2)
本比較例2のアルミニウムペーストは、下記の原料を用いて調製されている。
【0178】
アルミニウム粉末として、ミナルコ(株)製Al粉#900F(アトマイズ粉、平均粒子径2.4μm)を使用する。
【0179】
金属サブミクロン粒子として、湿式法で作製される銀微細粉末である、三井金属(株)製SPQ−03S(平均粒子径0.5μm)を使用する。
【0180】
高沸点の非極性有機溶媒として、石油系ノンアロマ炭化水素溶媒である、新日本石油製AF7号ソルベント(沸点:259−282℃;流動点:−30℃;密度:0.820g/cm3(15℃))を使用する。
【0181】
ミナルコ(株)製Al粉#900F 5質量部、三井金属(株)製SPQ−03S 2質量部、新日本石油製AF7号ソルベント 1.5質量部を均一に混合する。攪拌脱泡機で攪拌して、アルミニウム粉末を均一に分散させ、アルミニウムペーストを得る。
【0182】
調製されたアルミニウムペーストの液粘度は、45Pa・s(25℃)であった。該アルミニウムペーストは、AF7号ソルベント 1.5質量部、銀微細粉末SPQ−03S 2質量部、Al粉#900F 5質量部を含んでいる。
【0183】
該アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の体積比率、Al粉#900F:銀微細粉末は、Alの密度:2.699g/cm3(20℃)、Agの密度:10.49g/cm3(20℃)から、(5/2.699):(2/10.49)≒100:10と算出される。また、該アルミニウムペースト中に含まれる金属成分の合計(Al粉#900Fと銀微細粉末SPQ−03S)と、有機物成分(AF7号ソルベント)の体積比率は、金属成分の合計:有機物成分の合計=53体積%:47体積%に選択されている。
【0184】
Al粉#900Fの100質量部当たり、AF7号ソルベントが30質量部含有されている。なお、体積比に換算すると、Al粉#900Fの体積合計と、AF7号ソルベントの体積の比(Al粉#900F:AF5号ソルベント)は、(5/2.699):(1.5/0.820)≒100:99と算出される。
【0185】
調製されたアルミニウムペーストを、スライドガラス上に、5mm×30mmの矩形パターンで塗布した。該ペースト塗布膜の平均厚さは、18μmであった。該ペースト塗布膜を、大気下、450℃、10min、加熱処理して、含まれているアルミニウム粉末とAgナノ粒子の焼成を行った。
【0186】
得られた焼成物の平均膜厚は、10.7μmであった。該焼成物を前記平均膜厚の均一は導電体と仮定して、測定したシート抵抗値から、体積固有抵抗率を算出した。算出された体積固有抵抗率は、1200μΩ・cmであった。
【0187】
得られた焼成物について、スコッチテープで剥離試験を行った。該剥離試験条件では、スライドガラス表面から、焼成物は容易に剥離した。また、焼成物自体、脆く、アルミニウム粉末の焼結が十分になされていないと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、従来のガラスフリットを配合する導電性アルミニウムペーストが利用される用途に利用できる。具体的には、本発明にかかる導電性アルミニウムペーストは、ガラス、シリコンウエハ等に良好な密着性を示すため、配線用、太陽電池電極用、接合用材料として、好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフリットを配合していない導電性アルミニウムペーストであって、
該導電性アルミニウムペーストは、
アルミニウム粉末、金属ナノ粒子、有機分散溶媒を含み、
該アルミニウム粉末と、金属ナノ粒子が、有機分散溶媒中に分散されているペースト状の組成物であり、
前記アルミニウム粉末の平均粒径は、1μm〜5μmの範囲に選択され、
前記金属ナノ粒子の平均粒子径は、5nm〜50nmの範囲に選択され、
前記金属ナノ粒子の表面は、被覆剤分子により被覆されており、
前記被覆剤分子は、炭素数10〜18の脂肪族モノカルボン酸、および炭素数8〜14の脂肪族モノアミンまたはジアミンからなる群から選択される、前記有機分散溶媒に対して親和性を有する化合物であり、
前記有機分散溶媒は、沸点が150℃〜350℃の範囲の非極性有機溶媒であり、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記金属ナノ粒子の含有量は、100質量部〜230質量部の範囲に選択され、
前記有機分散溶媒の含有量は、15質量部〜35質量部の範囲に選択されており、
前記金属ナノ粒子の表面を被覆する被覆剤分子の含有量は、
前記金属ナノ粒子100質量部当たり、8質量部〜15質量部の範囲に選択されており、
該導電性アルミニウムペーストは、350℃以上500℃以下の温度に加熱することで、焼成することが可能である
ことを特徴とする導電性アルミニウムペースト。
【請求項2】
前記導電性アルミニウムペーストは、
前記金属ナノ粒子に加えて、
加熱分解によって、金属原子の生成が可能な、金属塩、金属錯体からなる群から選択される金属含有化合物を1種以上含み、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記金属含有化合物の含有量の総和は、1質量部〜20質量部の範囲に選択されている
ことを特徴とする請求項1に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項3】
前記金属含有化合物に含まれる金属種は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、チタン、ケイ素、ビスマス、タングステン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アンチモン、セリウム、セシウム、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、タリウム、バナジウム、イットリウム、ジルコニウムからなる群から選択される、一種の金属種または、二種以上の金属種である
ことを特徴とする請求項2に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子は、
金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、タングステン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム、イットリウム、ジルコニウムからなる群から選択される、一種の金属種からなる金属ナノ粒子、または、二種以上の金属種からなる金属ナノ粒子混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金のナノ粒子である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子は、
金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種からなる金属ナノ粒子、または、二種以上の金属種からなる金属ナノ粒子混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金のナノ粒子である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項6】
前記アルミニウム粉末は、
フレーク状アルミニウム粉末、粒状アルミニウム粉末、不定形状アルミニウム粉末からなる群から選択される一種以上のアルミニウム粉末である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項7】
前記導電性アルミニウムペーストは、
前記アルミニウム粉末、金属ナノ粒子に加えて、
サブミクロンの平均粒子径を有する金属微細粉末を含み、
前記金属微細粉末の平均粒子径は、0.1μm〜1μmの範囲に選択され、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記金属微細粉末の含有量の総和は、5質量部〜50質量部の範囲に選択されている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項8】
前記金属微細粉末は、
金、銀、銅からなる群から選択される、一種の金属種からなる金属微細粉末、または、二種以上の金属種からなる金属微細粉末混合物、あるいは、二種以上の金属種からなる合金の微細粉末である
ことを特徴とする請求項7に記載の導電性アルミニウムペースト。
【請求項9】
前記導電性アルミニウムペーストは、
大気中において、350℃〜450℃の範囲に選択される温度に加熱することで、焼成することが可能である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項10】
前記導電性アルミニウムペーストは、
還元性雰囲気下または不活性ガス雰囲気下において、350℃〜450℃の範囲に選択される温度に加熱することで、焼成することが可能である
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項11】
前記有機分散溶媒は、沸点150℃〜350℃の範囲の非芳香族炭化水素溶媒である
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項12】
前記導電性アルミニウムペーストは、
沸点200℃〜400℃の範囲のモノカルボン酸をさらに含み、
前記アルミニウム粉末100質量部当たり、
前記モノカルボン酸の含有量は、1質量部〜10質量部の範囲に選択されている
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項13】
前記導電性アルミニウムペースト中に含有される、
前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率は、100:25〜100:60の範囲に選択されている
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項14】
前記導電性アルミニウムペースト中に含有される、
前記アルミニウム粉末と金属ナノ粒子の体積比率の合計は、50体積%〜66体積%の範囲に選択されている
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項15】
前記導電性アルミニウムペーストの粘度は、5Pa・s〜100Pa・s(25℃)の範囲に選択されている
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。
【請求項16】
前記導電性アルミニウムペーストは、
樹脂成分を含まない
ことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のアルミニウムペースト。

【公開番号】特開2011−119340(P2011−119340A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273453(P2009−273453)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】