説明

導電性シールドおよび導電性シールドの配置方法

【課題】静電容量型のセンサが当該センサと検出対象物との対向距離を確実に検出できるようにすることが可能な導電性シールドを提供する。
【解決手段】本発明の導電性シールドは、複数の検知電極からなる、検出対象物との離隔距離を検出する静電容量型の検出部と、検出対象物との間に設けられた導電性部材であり、検出部により検出対象物を検出する位置に貫通孔が形成されている。これにより、貫通孔が形成された位置において、検知電極は検出対象物の位置に応じた静電容量値を示すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型のセンサと検出対象物との間に配置される導電性シールドおよび静電容量型のセンサに対する導電性シールドの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル等のようなユーザが指等で触れたパネル上の位置情報を検出する入力装置が普及している。このような入力装置は、例えばディスプレイの表示面上に積層して設けられ、ディスプレイの表示内容に対応した位置に指等を接触させることによって、ディスプレイの表示内容に応じた操作を行うことができる。キーボードやボタン操作に慣れていない人でも、直感的に操作を行うことができる。
【0003】
上記のような入力装置には、入力装置に対する指等の接触の有無のみを検出可能な感圧式のセンサを用いたものや、指等と入力装置との対向距離まで検出可能な静電容量型のセンサを用いたものもある。静電容量型のセンサは、指等との対向距離によって静電容量が変化する特性を利用して対向距離を検出する。対向距離が検出可能となることより、指等が入力装置に接触しない状態でも、対向距離に応じてディスプレイの表示内容を変化させるなどインタラクティブな入力装置を実現することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、静電容量型のセンサ手段を用いて表示パネル面に対する指先の接触位置および空間位置を静電容量の変化として検知する近接検知型情報表示装置が開示されている。かかる情報表示装置では、指先が表示パネル面に近づくにつれて、指先の検知分解能を高くし、検知感度を低くするように調整する。表示パネル面上の指先の位置が検知されると、指先の動きに応じて表示手段に表示される情報の表示状態が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に開示された近接検知型情報表示装置では、静電容量型のセンサによってセンサと指等の検出対象物との間で生じる静電容量の変化を検出することにより、これらの対向距離を取得する。しかし、センサと検出対象物との間にグランドに接続された導体が存在すると、センサは、導体とセンサとの間で生じる静電容量の変化を検出してしまう。このため、検出対象物との対向距離を検出することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、静電容量型のセンサが当該センサと検出対象物との対向距離を確実に検出できるようにすることが可能な、新規かつ改良された導電性シールドおよび導電性シールドの配置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の検知電極からなる、検出対象物との離隔距離を検出する静電容量型の検出部と、検出対象物との間に設けられた導電性部材であり、検出対象物を検出する検知電極に対応する所定の位置に貫通孔が形成されている、導電性シールドが提供される。
【0009】
本発明によれば、静電容量値の変化によって検出対象物の位置を検出可能な検知電極からなる検出部と検出対象物との間に設けられる導電性シールドに、貫通孔が形成される。これにより、貫通孔が形成された位置において、検知電極は検出対象物の位置に応じた静電容量値を示すことが可能となる。
【0010】
ここで、検出部を構成する複数の検知電極が、少なくとも1つの他の検知電極と交差するように配置されているとき、貫通孔は、検知電極の交点に対応する位置に形成されるようにしてもよい。複数の検知電極は、例えば格子状に配置することができる。
【0011】
また、隣接する検知電極の隣接方向において、貫通孔の幅は、隣接する検知電極間の距離よりも小さく形成してもよい。
【0012】
さらに、検知電極の幅方向において、貫通孔の幅は、検知電極の幅よりも大きく形成してもよい。また、導電性シールドは、複数の検知電極から所定の距離以上離隔されるように配置してもよい。
【0013】
導電性シールドは、検出部と検出対象物との間に設けられるデバイスと、検出部との間に設けることもできる。デバイスとしては、例えばキーボード等がある。このとき、検出部は、デバイスから発せられるノイズを除去するノイズ除去部を備えることもできる。ノイズ除去部は、例えば、検出部により検出された検出値を補正することにより、ノイズを除去することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、導電性部材からなる導電性シールドの、複数の検知電極からなる、検出対象物との離隔距離を検出する静電容量型の検出部によって検出対象物を検出する位置に、検知電極に対応して貫通孔を形成するステップと、検出部と検出対象物との間に、導電性シールドを配置するステップと、を含む、導電性シールドの配置方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、静電容量型のセンサが当該センサと検出対象物との対向距離を確実に検出できるようにすることが可能な導電性シールドおよび導電性シールドの配置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る導電性シールドを備えた入力デバイスをキーボード下部に設けたノートブック型コンピュータの外観を示す説明図である。
【図2】図1に示すキーボードと入力デバイスの構成を示す断面図である。
【図3】同実施形態に係る入力デバイスの構成を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係るシールドの一構成例を示す説明図である。
【図5】本実施形態に係るシールドの他の構成例を示す説明図である。
【図6】シールドの貫通孔と電極との関係を示す説明図である。
【図7】シールドの貫通孔による電極の検出対象物の検知状態を示す概念図である。
【図8】検出位置に応じて電極により検出された静電容量値の分布を示すグラフである。
【図9】同本実施形態に係る入力デバイスにおけるノイズ除去対策の一例を示す説明図である。
【図10】同実施形態に係るシールドの貫通孔と入力デバイスの電極との配置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.導電性シールドを備えた入力デバイスの概略構成
2.シールドの形状
3.貫通孔を有するシールドの作用
4.入力デバイスにおける検出値の補正
5.デバイスからのノイズ除去
6.シールドの使用形態
【0019】
[導電性シールドを備えた入力デバイスの概略構成]
まず、図1〜図3に基づいて、本発明の実施形態に係る導電性シールドを備えた入力デバイスの概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る導電性シールドを備えた入力デバイス130をキーボード110下部に設けたノートブック型のコンピュータ100の外観を示す説明図である。図2は、図1に示すキーボード110と入力デバイス130の構成を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る入力デバイス130の構成を示す平面図である。
【0020】
本実施形態にかかる導電性シールドを備える入力デバイス130は、図1に示すように、例えばコンピュータ100に設けることができる。入力デバイス130は、コンピュータ100のキーボード110の下部に設けられている。ユーザは、キーボード110上で指等を動かしたり、キーボード110に指等を近接させたりすることにより、表示部120に表示された表示内容の操作や情報の入力を行うことができる。これにより、スペースの制限の大きいノートブック型のコンピュータ100において、キーボード110の配置領域にて、キーボード110のキーの押下によるキー入力に加えて、キーボード110上での手や指の動きが位置に応じた情報の入力が可能となる。
【0021】
このようなキーボード110による情報の入力と、入力デバイス130による情報の入力とを可能とするため、図2に示すように、本実施形態にかかるコンピュータ100では、キーボード110の下部側に入力デバイス130が設けられる。
【0022】
キーボード110は、例えば、キートップ112と、スプリング114と、シート状のスイッチ116と、シールド118とからなる、ユニット化された入力装置の1つである。キートップ112は、情報を入力するためにユーザが指で押下する部品である。キートップ112は、1または2以上設けられ、スプリング114を介してスイッチ116上に載置される。スプリング114は、押圧されたキートップ112を押し戻す部材である。
【0023】
スイッチ116は、押圧されることにより情報を出力する検出部であり、例えばメンブレンスイッチ等を用いることができる。メンブレンスイッチは、接点と接点との間に絶縁体を挟んで構成され、押圧されて接点同士が接触すると電流が流れるものである。キートップ112が押下されるとスプリング114が圧縮され、さらにスイッチ116が押圧される。そして、スイッチ116の接点同士が接触して電流が流れると、かかるキーに対応する情報が入力される。なお、図2では、キーボード110の入力デバイスとしての機能を実現するキートップ112、スプリング114およびスイッチ116を、キーボード機能部117として示している。
【0024】
このようなキーボード110には、スイッチ116の動作に影響するノイズを遮断するとともに、キーボード110の強度を高めるため、スイッチ116の下側にシールド118が設けられる。シールド118は、例えば鉄等の導電性部材からなり、グランドに接続されている。本実施形態にかかるシールド118は、入力デバイス130による検出位置に応じた1または2以上の貫通孔が形成されている。シールド118の詳細な構成については後述する。
【0025】
入力デバイス130は、例えば電極部132と、透明なガラス板等の誘電体136、138とからなる。電極部132は、図2に示すように、誘電体136、138によって挟持されている。
【0026】
電極部132は、図3に示すように、所定の間隔を有して図3紙面の縦方向(第1の方向)に配列された複数の縦電極132Aと、所定の間隔を有して図3紙面の横方向(第2の方向)に配列された複数の横電極132Bとからなる。すなわち、電極部132は、検知電極である縦電極132Aおよび横電極132Bが格子状に配列されたものである。縦電極132Aおよび横電極132Bは、例えば透明電極や透明導電層等から形成される。複数の縦電極132Aは共通端子134Aに接続されており、誘電体136、138の外部に導出される。また、複数の横電極132Bは共通端子134Bに接続されており、誘電体136、138の外部に導出される。これらの共通端子134A、134Bに位置検出用の高周波信号がそれぞれ印加される。
【0027】
電極部132を構成する各電極の周波数の変化(すなわち、静電容量値)により、その上方に位置する検出対象物の位置および距離を特定することができる。静電容量値は、電極部132と検出対象物との対向距離に応じて変化する。対向距離が大きいと静電容量値は小さいが、対向距離が小さくなるにつれて静電容量値は大きくなる。また、縦電極132Aにより第2の方向における検出対象物の位置が特定され、横電極132Bにより第1の方向における検出対象物の位置が特定される。
【0028】
[シールドの形状]
本実施形態では、キーボード110の下部に静電容量型のセンサとして機能する電極部132を備える入力デバイス130を設ける。この場合、シールド118の影響を受けずに、電極部132が検出対象物の位置変化に応じた静電容量の変化を検出可能となるようにキーボード110のシールド118を構成する必要がある。本実施形態では、シールド118に貫通孔を形成することにより対応する。以下、図4〜図6に基づいて、本実施形態に係るシールド118の形状について説明する。なお、図4は、本実施形態に係るシールド118の一構成例を示す説明図である。図5は、本実施形態に係るシールド118の他の構成例を示す説明図である。図6は、シールド118の貫通孔と電極との関係を示す説明図である。
【0029】
シールド118は、グランド接続された導電性部材であって、スイッチ116がコンピュータ100の筐体内部に設けられている他のデバイスから生ずるノイズの影響を受けないようにするとともに、キーボード110の強度を高めるために設けられる。さらに、シールド118は、入力デバイス130の電極部132がキーボード110上方の検出対象物を検知可能とするために、検出対象物を検出したい検出位置に対応して貫通孔が形成されている。シールド118において、貫通孔が形成されていない部分では、電極部132は当該シールド118と電極部132との間の静電容量値の変化を検出してしまう。しかし、シールド118に貫通孔を形成することにより、電極部132と検出対象物とがキーボード機能部117を介して対峙することになり、電極部132は検出対象物との間の静電容量値の変化を検出することができるようになる。
【0030】
例えば、図4に示すようにシールド118を形成することができる。シールド118は、縦電極132Aおよび横電極132Bを覆う縦シールド部118aおよび横シールド部118bと、縦シールド部118aと横シールド部118bとが交差する位置に設けられた環状シールド部118cとからなる。各部118a、118b、118cは一体に形成された導電性部材である。環状シールド部118cの貫通孔118dは、縦電極132Aと横電極132Bとの交点位置に対応する。すなわち、縦電極132Aと横電極132Bとの交点位置のみが開口して電極部132とキーボード110のスイッチ116とが対向した状態となる。
【0031】
シールド118の貫通孔118dに対応する位置の電極部132は、シールド118の影響を受けず、キーボード110上方に位置する検出対象物との対向距離に応じた静電容量値を有する。電極部132は、貫通孔118dに対応する位置においてのみ検出対象物の位置を検出することができるため、貫通孔118dは、検出対象物の第1の方向および第2の方向をともに確実に取得できる縦電極132Aと横電極132Bとの交点位置に形成するとよい。
【0032】
また、例えば、図5に示すようにシールド118を形成することもできる。かかるシールド118は、板状の導電性部材に貫通孔118dが形成されてなる。貫通孔118dは、図4と同様に縦電極132Aと横電極132Bとの交点位置に形成することができる。これにより、貫通孔118dに対応する位置の電極部132によって、キーボード110上方に位置する検出対象物との対向距離に応じた静電容量値を取得することができる。
【0033】
図5に示すシールド118は、電極部132によって検出対象物の位置を検出するために必要最小限の部分のみに貫通孔118dが形成されたときの形状である。シールド118の存在する部分が図4に示す形状とする場合よりも多いため、図4のシールド118と比較してノイズ除去性能が高い構成となっている。したがって、キーボード110の周囲にノイズ発生源が存在する場合には、図5の形状を適用するのがよい。また、図5に示すシールド118は、板状の導電性部材に貫通孔を形成すればよいため、製造が容易であるという利点もある。
【0034】
なお、図4および図5のシールド118の貫通孔118dは、縦電極132Aと横電極132Bとのすべての交点位置に形成されているが、本発明はかかる例に限定されず、検出対象物の位置を検出したい所望の位置に形成すればよい。必ずしも縦電極132Aと横電極132Bとの交点位置に形成しなくともよく、貫通孔118dに対応する位置に縦電極132または横電極132Bのいずれか一方のみが存在するようにしてもよい。
【0035】
シールド118に形成される貫通孔118dの形状は、図4および図5に示すように、円形状でもよく、四角形等の多角形状や、楕円形であってもよい。また、貫通孔118dの大きさは、電極部132の構成によって規定される。ここで、図6に示すように、隣接する縦電極132Aの電極間距離をw、縦電極132Aの幅をwと規定する。なお、本実施形態では、隣接する横電極132Bの電極間距離および横電極132Bの幅は、縦電極132Aの電極間距離wおよび縦電極132Aの幅wと同一であるとする。
【0036】
まず、貫通孔118dの幅は、隣接する電極間距離より小さくなるように形成される。ここで、貫通孔118dの幅とは、比較する電極の隣接方向における幅を指す。例えば図6に示すように、貫通孔118dの第1の方向(図6紙面の縦方向)の長さは、縦電極132Aの電極間距離wよりも小さくする。同様に、貫通孔118dの第2の方向(図6紙面の横方向)の長さも、横電極132Bの電極間距離wよりも小さくする。なお、貫通孔118dの長さの中心は、縦電極132Aと横電極132Bとの交点にあるとする。貫通孔118dがこのように規定される大きさよりも大きくなると、隣接する貫通孔118dが結合してしまい、シールド118のノイズを遮断する機能が低下してしまうためである。
【0037】
また、貫通孔118dの幅は、電極部132が検出対象物の位置に応じて変化する静電容量を取得可能な程度以上の大きさとする。ここで、貫通孔118dの幅とは、比較する電極の幅方向における幅を指す。検出対象物の位置が検出できなければ、入力デバイス130が機能しないためである。例えば、貫通孔118dの幅は、電極の幅よりも大きくなるように形成することができる。図6に示すように、貫通孔118dの第1の方向の幅は、縦電極132Aの幅より大きく、貫通孔118dの第2の方向の幅は、横電極132Bの幅より大きくなるように貫通孔118dを形成する。このとき、電極132A、132Bの幅が小さすぎると電極部132による検出対象物の検知能力が低下することもある。このような場合には、電極132A、132Bの幅を大きくして、電極部132の検知能力を高くするのがよい。
【0038】
このように、シールド118により電極部132を覆うとともに、電極部132によって検出対象物を検出したい位置にシールド118に貫通孔118dを形成する。これにより、入力デバイス130は、シールド118に遮断されることなく、キーボード110上方に位置する検出対象物の位置を検出できるようになる。
【0039】
[貫通孔を有するシールドの作用]
本実施形態に係るシールド118のように貫通孔118dを形成することにより、シールド118のない状態と比較して、入力デバイス130の電極部132から取得される静電容量値が変化する。図7に、シールド118の貫通孔118dによる電極132A(132B)の検出対象物の検知状態の概念図を示す。検出対象物が電極132A(132B)に近接すると、電極132A(132B)の静電容量値が増加する。まず、シールド118がない状態で、電極132A(132B)の上方に検出対象物(例えば、指)を位置させる。このとき、電極132A(132B)により検出された静電容量値の分布が図8の破線に示す波形のようになったとする。静電容量値が最大である検出位置において、検出対象物が電極132A(132B)に最も近接している。
【0040】
次に、図7に示すように、貫通孔118dが形成されたシールド118を、電極132A(132B)と検出対象物との間に配置する。シールド118がない場合と同様に、検出対象物をシールド118の上方に位置させたとき、入力デバイス130の電極132A(132B)により検出される静電容量値の分布は、図8の実線で示す波形のようになる。シールド118がない場合の波形と比較して、波形がシャープになる。すなわち、シールド118の貫通孔118dに対応する位置にある検出対象物による静電容量値の変化のみが検出された状態となる。
【0041】
これは、図7に示すように、電極132A(132B)による検出の直進性が増したことによるものと考えられる。電極132A(132B)の静電容量値が検出対象物の存在によって変化する範囲は、波の進行する形状と同様に考えられ、電極132A(132B)を中心とした円弧状に広がっている。したがって、電極132A(132B)の鉛直上方に位置する検出対象物だけでなく、取得される静電容量値は小さくなるがその周囲に位置する検出対象物の位置も電極132A(132B)によって検出することが可能である。このため、シールド118がない状態では、図8の破線で示すようになだらかな波形が得られる。
【0042】
一方、貫通孔118dが形成されたシールド118を配置することにより、電極132A(132B)は、貫通孔118dに対応する位置において貫通孔118dの開口面積よりも僅かに大きい程度の領域に存在する検出対象物しか検出できなくなる。すなわち、電極132A(132B)の、貫通孔118dの上方に存在しない検出対象物による静電容量値が検出されなくなる。このため、図8の実線で示すような、シャープな波形が得られる。かかる状態を、電極132A(132B)による検出の直進性が増した状態という。
【0043】
このように、電極132A(132B)から取得される静電容量値の分布がシャープになることにより、特定の位置(すなわち、貫通孔118dに対応する位置)における検出対象物の存在を明確に認識することができる。なお、かかる効果を得るためには、シールド118と電極132A(132B)との間の距離dが所定の値以上離れている必要がある。シールド118と電極132A(132B)とが近接し過ぎていると、電極132A(132B)による検出の直進性は得られず、シールド118がない状態と同様の状況となってしまうためである。距離dは電極132A(132B)の幅にもよるが、例えば電極132A(132B)の幅が約5mmであるとき、距離dは数mm程度の大きさに設定するのがよい。
【0044】
[入力デバイスにおける検出値の補正]
ここで、入力デバイス130の電極部132の各電極132A(132B)の検出範囲は、各電極132A(132B)を中心とした円弧状に広がっているため、電極132A(132B)と対向する検出対象物以外の物体も検出する可能性がある。例えば、電極132A(132B)の斜め上方に位置する物体によって静電容量値が変化する。そうすると、電極部132は、電極132A(132B)の鉛直上方に位置する検出対象物を高精度に検出することができない。このため、入力デバイス130では、検出値に対して、検出対象物以外の物体を検出することによる影響を除去する補正を行うことにより、検出対象物の位置を高精度に検出できるようにする。
【0045】
図9は、本実施形態に係る入力デバイス130におけるノイズ除去対策の一例を示す説明図である。図9に示すように、例えば、入力デバイス130の上方に、検出対象物である手がかざされているとする。このとき、検出対象物は、その鉛直下方にある電極Bと、電極Bに隣接する電極A、Cとに検出される。入力デバイス130では、電極部132の各電極が、それぞれの鉛直上方にある物体にのみ影響を受けて静電容量値を変化させることが、検出対象物の位置を正確に検出できるため望ましい。図9の例では、電極Bのみが検出対象物の存在によって静電容量値を変化させ、電極A、Cの静電容量値は当該検出物によっては変化しないようにするのがよい。同様に、電極Bも、隣接する電極A、Cが検出すべき検出対象物の存在によって静電容量値が変化しないようにするのがよい。
【0046】
かかる対応として、例えば図9に示すように、電極Bに対して、隣接する電極の検出値と反対の波形を入力し、本来は検出すべきではない検出対象物の存在による静電容量値の変化を除去する。例えば、電極Bから電極Cが検出すべき検出対象物の存在による静電容量値の変化を除去するには、電極Cの静電容量値の値を電極Bの静電容量値から減ずる。同様に、電極Aにより検出すべき検出対象物の存在による静電容量値の変化についても、電極Aの静電容量値の値を電極Bの静電容量値から減ずる。このように、隣接する電極により検出されるべき静電容量値を除去することにより、各電極による検出値の精度を高めることができる。
【0047】
[デバイスからのノイズ除去]
シールド118に貫通孔118dを形成することにより、キーボード110のスイッチ116がシールド118によって遮断されるべきノイズの影響を受ける可能性がある。このため、キーボード110が受けるノイズの影響を低減するようにシールド118を配置することが望ましい。以下、図10に基づいて、本実施形態に係る貫通孔118dを有するシールド118を用いた場合の入力デバイス130によるノイズ除去について説明する。
【0048】
図10に、本実施形態に係るシールド118の貫通孔118dと入力デバイス130の電極132A(132B)との配置関係を示す。なお、図10では、説明のため、シールド118の貫通孔118dおよび電極132A(132B)を誇張して記載している。また、入力デバイス130は、電極部132を構成する一の電極132A(132B)のみを記載している。
【0049】
例えば、キーボード110に影響を与えるノイズの発生源であるデバイス(例えば、コンピュータ100の情報処理部等)140がキーボード140の下部に設けられているとする。デバイス140から発せられるノイズは、通常、シールド118によって遮断され、キーボード110のユニット内部へは入らない。しかし、シールド118に貫通孔118dが形成されていると、ノイズが貫通孔118dを通過して、内部のスイッチ116等に影響する可能性がある。そこで、キーボード110とデバイス140との間に設けられている入力デバイス130の電極部132によって、シールド118の貫通孔118dをふさぐようにする。
【0050】
デバイス140から発せられるノイズは出力された方向に直進する。このため、ノイズは、シールド118の貫通孔118dに到達する前に入力デバイス130の電極部132に当たり、キーボード110まで到達しない。これにより、キーボード110が受けるノイズは低減される。
【0051】
一方、入力デバイス130は、デバイス140からのノイズの影響を受けることになる。このような場合、入力デバイス130には、ノイズの影響によって電極部132による検出対象物の検出精度が低下しないように、ノイズを除去する対応をとるのがよい。入力デバイス130のノイズ除去対策としては、例えば、センシングしている電極以外の電極をグランドに落としたり、ノイズを除去可能なハイパスフィルタを設定して電極部132から取得された検出信号にフィルタをかけたりすることが考えられる。また、電極部132がデバイス140から受けると考えられるノイズの波形を電極部132から取得された検出信号と重複させて、ノイズを相殺する対応も有効である。
【0052】
以上、本発明の実施形態にかかる貫通孔118dを備えるシールド118の構成とこれによる作用について説明した。本実施形態によれば、静電容量値の変化によって検出対象物の位置を検出可能な電極部132を備える入力デバイス130と検出対象物との間に設けられるシールド118に、貫通孔118dを形成する。これにより、貫通孔118dが形成された位置において、電極部132は検出対象物の位置に応じた静電容量値を示すことが可能となる。
【0053】
また、シールド118の貫通孔が形成された位置においてのみ電極部132による検出が可能となることから、電極132A(132B)による検出の直進性が増し、電極部132から取得される検出値の波形がシャープになる。これにより、入力デバイス130によって検出対象物の位置を明確に認識することが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態のようにキーボード110の外部に他のデバイス140が配置されている場合、シールド118の貫通孔118dの大きさを対応する電極132の幅に合わせて形成することにより、キーボード110に影響するノイズを低減することができる。
【0055】
[シールドの使用形態]
上記では、ノートブック型のコンピュータ100のキーボード110の下部に入力デバイス130を配置して、コンピュータ100に2つの入力手段を持たせる例について説明した。このように、入力デバイス130と検出対象物との間に貫通孔118dを有するシールド118を配置する構成は、上記使用形態以外にも適用することができる。
【0056】
例えば、上記例では、入力デバイス130の一側の面に対してのみシールド118を設けたが、他側の面に対してもシールド118を設けるようにしてもよい。本実施形態に係る入力デバイス130は、その両面に存在する検出対象物の位置を検出することが可能である。入力デバイス130により検出したい位置に貫通孔118dが形成されたシールド118を入力デバイス130と検出対象物との間に設けることにより、電極部132から取得される静電容量値の波形がシャープになる。これにより、検出対象物の位置を明確に認識することができ、入力デバイス130による位置検出の精度を高めることができる。また、本実施形態に係るシールドは、キーボード110以外にも、例えばリモートコントローラ等のコンピュータ以外の単体製品、静電容量型の検出部を備えるパネルや机等にも適用可能である。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、上記実施形態では、電極部132は格子状に形成したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、電極部132は、1つの電極のみから形成されていてもよく、所定の方向に配列された複数の電極から形成されていてもよい。本発明の導電性のシールドは、電極部132の配置によらず、入力デバイス130によって検出対象物を検出した位置に応じて貫通孔118dが形成されていればよい。
【符号の説明】
【0059】
100 コンピュータ
110 キーボード
116 スイッチ
117 キーボード機能部
118 シールド
118d 貫通孔
120 表示部
130 入力デバイス
132 電極部
136、138 誘電体
140 デバイス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知電極からなる、検出対象物との離隔距離を検出する静電容量型の検出部と、前記検出対象物との間に設けられた導電性部材であり、
前記検出対象物を検出する前記検知電極に対応する所定の位置に貫通孔が形成されている、導電性シールド。
【請求項2】
前記検出部を構成する複数の前記検知電極が、少なくとも1つの他の前記検知電極と交差するように配置されているとき、
前記貫通孔は、前記検知電極の交点に対応する位置に形成される、請求項1に記載の導電性シールド。
【請求項3】
複数の前記検知電極は、格子状に配置される、請求項2に記載の導電性シールド。
【請求項4】
隣接する前記検知電極の隣接方向において、
前記貫通孔の幅は、隣接する前記検知電極間の距離よりも小さく形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性シールド。
【請求項5】
前記検知電極の幅方向において、
前記貫通孔の幅は、前記検知電極の幅よりも大きく形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性シールド。
【請求項6】
前記導電性シールドは、前記複数の検知電極から所定の距離以上離隔される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性シールド。
【請求項7】
前記導電性シールドは、前記検出部と前記検出対象物との間に設けられるデバイスと、前記検出部との間に設けられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性シールド。
【請求項8】
前記デバイスは、キーボードである、請求項7に記載の導電性シールド。
【請求項9】
前記検出部は、前記デバイスから発せられるノイズを除去するノイズ除去部を備える、請求項7または8に記載の導電性シールド。
【請求項10】
前記ノイズ除去部は、前記検出部により検出された検出値を補正する、請求項9に記載の導電性シールド。
【請求項11】
導電性部材からなる導電性シールドの、複数の検知電極からなる、検出対象物との離隔距離を検出する静電容量型の検出部によって前記検出対象物を検出する位置に、前記検知電極に対応して貫通孔を形成するステップと、
前記検出部と前記検出対象物との間に、前記導電性シールドを配置するステップと、
を含む、導電性シールドの配置方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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