説明

導電性パタンの形成方法

【課題】本発明の課題は、生産性に優れ、かつ十分な導電性を有する微細な導電性パタンの形成が可能な導電性パタンの形成方法を提供することである。
【解決手段】絶縁性支持体の少なくとも一方の面に、写真製法により得られた銀薄膜層及び感光性レジスト層を少なくともこの順に有する導電性パタン前駆体を、パタン露光後に現像して銀薄膜層上に任意のパタンを有するレジスト画像を形成した後、電解めっき法により該レジスト画像で被覆されていない銀薄膜層上に金属を積層させ、その後レジスト画像を溶解除去し、更に金属が積層されていない部分の銀薄膜層を除去する導電性パタンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性に優れ、かつ十分な導電性を有する微細な導電性パタンの形成が可能な導電性パタンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高機能化に伴い、導電性回路のファインピッチ化が強く求められている。具体的にはチップ・オン・フィルム(COF)実装用途などで特徴的なように、現在量産ラインで40〜50μmのパタンピッチが最小であるが、数年後には25μm、将来的には15μmピッチが目標とされている。
【0003】
現在、導電性パタンの形成方法としては金属箔上に設けたレジスト層を用い、いわゆるフォトリソグラフィー法によりエッチングレジストパタンを形成し、エッチングにより金属箔をパタン状に加工するサブトラクティブ法が主に用いられているが、上記のようなファインピッチの要望から、エッチングする金属箔(主に銅箔)やレジスト層の薄層化が急務となっている。
【0004】
導電性回路形成用の材料としては、圧延銅箔あるいは電解銅箔を絶縁基材に接着層を介し貼り合わせたもの(通常「3層CCL」と呼ばれる)、銅箔を接着剤層を介さず直接加熱加圧等により貼り合わせたもの(通常「2層CCL」と呼ばれる)、絶縁基材上に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式めっき法または無電解めっき法により下地金属を形成し、電解銅めっきをしたもの(通常「銅メタライズド材料」と呼ばれる)などが用いられている。銅箔を貼り合わせるCCLの場合、密着強度確保の観点から、銅箔の貼り合わせ面側をあらかじめ化学的に粗化し、凹凸を形成させることが一般的に行われているが、その結果、エッチング後の絶縁支持体の透明性が失われる、あるいは高周波伝送時の損失が高くなるなどの問題がある。また金属箔の薄層化という点からも、より薄層化が可能な銅メタライズド材料が優れている。しかしながら銅メタライズド材の製造においては、乾式めっきあるいは無電解めっきなどの工程の生産性が低く、高価になる等の問題点が指摘されている。
【0005】
レジスト層の薄層化に関しては、一般に用いられる感光性ドライフィルムレジスト(以下DFRと記載)に替えて、液状レジスト、電着レジストなど薄層化が可能なレジストが用いられるようになっているが、これらはDFRに比べ、実際にパタン形成する場所において薄層のレジスト層を設ける設備、技術が必要となり、適用の妨げとなっている。この問題については特開2007−210157号公報(特許文献1)のように、あらかじめ金属箔上にレジスト層を塗布した形態で供給する技術などが開示されている。
【0006】
一方、ファインピッチ化の別の手段として、サブトラクティブ法に替えて、絶縁性支持体上に薄層の金属層を形成し、その上にレジストパタンを形成した後、電解めっき法によりレジスト開口部に金属層を積層し、最後にレジスト層およびレジスト層で保護された下地金属を除去することにより回路形成を行う、いわゆるセミアディティブ法が提案されている。例えば特開2007−287953号公報(特許文献2)では基板上の表面に第1金属層として、スパッタ金属層を形成し、上記セミアディティブ法を用い回路形成する方法が開示されている。しかしながら、下地金属層であるスパッタ金属層を除去するエッチング工程が数回必要であり、また基板表面のエッチングも行わなければならず、完全に除去するには、工程が多く生産性が低い。また、特開2007−287994号公報(特許文献3)では、基板上に金属塩と相互作用する官能基を有するポリマー層を設け、該金属塩を還元処理、さらに無電解めっきすることにより、10〜100kΩ/□のシート抵抗値を有する下地金属層を形成し、上記セミアディティブ法を用い回路形成する方法が開示されている。しかしながら、この下地金属層を除去する工程において、上記スパッタ金属層と比較すると工程数は減っているものの除去する時間が長くなっているため、やはり生産性が低い。このように下地金属層を完全に除去するためには工程数と除去時間が掛かってしまい生産性が低くなってしまうという問題があった。
【0007】
また従来、導電性パタンの用途としては、主に上記の如き材料を用いて形成される、電子回路配線板等の様な実際に電流を流す能動的用途以外に、アンテナやプレナー型電極、ITOや導電性ポリマーを用いた透明電極の集電材、導電パタンをメッシュ状に形成したタッチパネル用導電シートなどの準能動的用途、さらに透明基材上に、メッシュ状の導体部分と開口部を有するパタンを形成した透光性電磁波シールド材料、基材上に孤立したアンテナパタンを形成することにより周波数選択的に電磁波を透過、あるいは遮蔽するシートなどの受動的用途が知られている。この様な用途に好適な材料として、写真製法を用いて導電性パタンを形成することが開示されている。例えば、特開2003−77350号公報(特許文献4)では、支持体上に設けられた物理現像核層に、ハロゲン化銀感光層と可溶性銀錯塩形成剤および還元剤をアルカリ液中で作用させる写真製法によりパタン状銀薄膜を形成する方法が開示されている。また、特開2004−221564号公報(特許文献5)では、ハロゲン化銀感光層の銀/ゼラチン体積比を1/4以上として現像処理する写真製法によって導電性パタンを形成する方法が開示されている。
【0008】
このような写真製法によって形成された導電性パタンはその後無電解めっきを施すことで、上記能動的用途や準能動的用途に好適な高い導電性を有する導電性パタンが得られるものの、ファインピッチな画像、とりわけ25μmピッチ以下の画像においては無電解めっきを施した場合、パタンのフリンジ部が増幅されて、意図した線幅に比べ太りやすく、線間がつまってしまい短絡しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2007−210157号公報
【特許文献2】特開2007−287953号公報
【特許文献3】特開2007−287994号公報
【特許文献4】特開2003−77350号公報
【特許文献5】特開2004−221564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、生産性に優れ、かつ十分な導電性を有する微細な導電性パタンの形成が可能な導電性パタンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の導電性パタンの形成方法により達成された。
1.絶縁性支持体の少なくとも一方の面に、写真製法により得られた銀薄膜層及び感光性レジスト層を少なくともこの順に有する導電性パタン前駆体を、パタン露光後に現像して銀薄膜層上に任意のパタンを有するレジスト画像を形成した後、電解めっき法により該レジスト画像で被覆されていない銀薄膜層上に金属を積層させ、その後レジスト画像を溶解除去し、更に金属が積層されていない部分の銀薄膜層を除去する導電性パタンの形成方法。
2.上記導電性パタン前駆体の感光性レジスト層が、塗布されたポジ型感光性レジスト層であることを特徴とする上記1に記載の導電性パタンの形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性パタンの形成方法によれば、生産性に優れ、かつ十分な導電性を有する微細な導電性パタンの形成が可能な導電性パタンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の導電性パタンの形成方法に用いられる導電性パタン前駆体は、絶縁性支持体の少なくとも一方の面に、写真製法により得られた銀薄膜層及び感光性レジスト層を少なくともこの順に有する。かかる絶縁性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ガラス板などが挙げられる。また、高周波特性に優れた絶縁性樹脂としては、液晶性ポリマー(例えばクラレ製「ベクスター」)やポリ4フッ化エチレン(PTFE)等のフッ素樹脂などが挙げられる。プラスチック樹脂フィルムを用いる場合には、塩化ビニリデンやポリウレタン等のポリマーラテックス層である易接着層を有する絶縁性支持体であることが好ましい。これらの絶縁性支持体は、写真製法(a)及び(b)のいずれの場合においても用いることができる。なお、ここでいう絶縁性支持体の絶縁性とは、上記、絶縁性支持体の導電性パタンを機能させるために必要な絶縁性を指し、具体的にはシート抵抗値として108Ω/□以上、好ましくは1011Ω/□以上であることを指す。
【0013】
また本発明に用いる導電性材料前駆体が有する、絶縁性支持体上の銀薄膜層は、写真製法により得られた銀薄膜層である。ここで写真製法により得られたとは、かかる銀薄膜層が絶縁性支持体上に設けられたハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子を還元することで得られた銀薄膜層であることを意味する。かかる写真製法としては、例えば下記の写真製法(a)、(b)に示す2つの方法が挙げられるが、後述の実施例においても示したように、導電性が良好な銀薄膜層を得られることや、銀薄膜層の除去性の観点から写真製法(b)の方法であることが好ましい。
(a)絶縁性支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する材料を、現像処理することにより、ハロゲン化銀を還元し銀薄膜層を析出させる写真製法。
(b)絶縁性支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する材料を、現像処理することにより、物理現像核上に銀薄膜層を析出させ、次いで不要となったハロゲン化銀乳剤層を水洗除去する写真製法(銀錯塩拡散転写法)。
【0014】
上記写真製法(a)の方法としては例えば、米国特許第6,706,165号明細書に記載される。一方、上記写真製法(b)の方法としては例えば特公昭42−23745号公報に記載される。また上記ハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀粒子としては、銀塩写真フィルムやカラーおよび白黒印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術を、本発明においてもそのまま用いることができる。
【0015】
上記ハロゲン化銀粒子として用いられるハロゲン化銀のハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよいが、塩化物比率が60質量%以上であることが好ましい。ハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、当業界では周知の方法が用いられる。中でも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径の揃ったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。またハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができる。
【0016】
ハロゲン化銀乳剤の製造において、必要に応じて、ハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩若しくはその錯塩を共存させてもよい。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0017】
また、ハロゲン化銀乳剤は必ずしもネガ感光性でなくてもよく、必要に応じてポジ感光性を持つ直接反転乳剤であってもよい。これにより、前記(a)及び(b)の写真製法において、ネガ型をポジ型、ポジ型をネガ型に変換することができる。写真製法(a)において、ネガ感光性を有するハロゲン化銀乳剤層を使用する場合は露光が必要であり、ポジ感光性のハロゲン化銀乳剤層を利用する場合は未露光で現像処理することにより、ハロゲン化銀を還元し銀薄膜層を形成することができる。また、必要に応じて、不要なハロゲン化銀を溶解除去するために定着処理を施すこともできる。一方、写真製法(b)においては、ネガ感光性のハロゲン化銀乳剤を使用する場合は未露光で物理現像核上に銀薄膜層を析出させることが可能であり、ポジ感光性の場合は露光した後に現像処理することにより、物理現像核上に銀薄膜層を析出させることが可能となる。そして(b)の方法においては、現像処理の後に不要となったハロゲン化銀乳剤層を水洗除去することで、絶縁性支持体上に銀薄膜層が形成される。なお上記ポジ感光性のハロゲン化銀乳剤(直接反転乳剤)に関しては、特開平8−17120号公報、特開平8−202041号公報に記載されている方法によって作製することができる。
【0018】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤層は水溶性バインダーを含むことが好ましい。好ましい水溶性バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質類、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これら水溶性ポリマーの中でもゼラチン等の蛋白質が好ましい。
【0019】
また本発明においてハロゲン化銀乳剤層は、上記水溶性バインダーに加えて、更に非水溶性ポリマーをバインダーとして利用することも可能である。一般にこれらの非水溶性ポリマーは水系分散物として使用され、各種モノマーの単独重合体や共重合体など公知のものを用いることができる。単独重合体としては、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンの重合体などがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、スチレン・p−メトオキシスチレン、スチレン・酢酸ビニル、酢酸ビニル・塩化ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル、メチルメタクリレート・アクリロニトリル、メチルメタクリレート・ブタジエン、メチルメタクリレート・スチレン、メチルメタクリレート・酢酸ビニル、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン、メチルアクリレート・アクリロニトリル、メチルアクリレート・ブタジエン、メチルアクリレート・スチレン、メチルアクリレート・酢酸ビニル、アクリル酸・ブチルアクリレート、メチルアクリレート・塩化ビニル、ブチルアクリレート・スチレンの共重合体等がある。
【0020】
本発明に用いる導電性パタン前駆体が有するハロゲン化銀乳剤層の塗布量は、ハロゲン化銀(銀換算)で0.5〜7g/m2であることが好ましく、特に好ましくは3〜5g/m2である。また、ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀量とバインダー量の比率は、写真製法(a)においてはハロゲン化銀(銀換算)とバインダーとの質量比(銀/ゼラチン)が3.5以上であることが好ましい。一方、写真製法(b)においてはハロゲン化銀(銀換算)とバインダーとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上である。ハロゲン化銀量とバインダー量の比率の上限は写真製法(a)、(b)何れにおいても20以下とすることが好ましく、より好ましくは10以下である。上記範囲とすることで、銀薄膜層上に電解めっきを施す際に、望ましい導電性を銀薄膜層に付与することが可能となるため好ましい。
【0021】
上記写真製法(a)に用いるハロゲン化銀乳剤層は、架橋剤により架橋されることが望ましい。かかる架橋剤(硬膜剤)としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド誘導体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN、N、N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。
【0022】
上記ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。これらのハロゲン化銀乳剤の製造方法は、写真製法(a)及び(b)のどちらの場合においても用いることができる。
【0023】
本発明の導電性パタン前駆体における写真製法(a)及び(b)には、必要に応じて絶縁性支持体上に下引き層や、絶縁性支持体上のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗層、ハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層等を設けることができる。さらに、写真製法(b)においては、上記下引き層、裏塗り層、オーバー層の他に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間に中間層を設けることができる。
【0024】
写真製法(b)において絶縁性支持体上に設ける物理現像核層は、少なくとも物理現像核を含有する。かかる物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によって絶縁性支持体上に設けることができるが生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1m2当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0025】
物理現像核層をコーティング法により設ける場合には、物理現像核層は親水性バインダーを含有することが好ましい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜500質量%程度とすることが好ましい。かかる親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。その中でも好ましい親水性バインダーとしては、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。また、物理現像核層は架橋剤を含有することが好ましい。
【0026】
かかる架橋剤(硬膜剤)としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド誘導体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、物理現像核層に含まれる合計の親水性バインダー量に対して0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0027】
上記写真製法(a)及び(b)において構成する各層の塗布は、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができ、その塗布方式に合わせて、界面活性剤及び増粘剤等の各種塗布助剤を用いることができる。
【0028】
次に、写真製法(a)及び(b)において、銀薄膜層を形成するための方法について説明する。銀薄膜層を形成するには上述のように、写真製法(a)、(b)それぞれにおいて、ネガ型かポジ型の何れかの感光性を有するハロゲン化銀乳剤を選択するかで、露光が必要な場合と不必要な場合がある。露光が必要な場合は、露光し、現像処理を行う。露光方法としては、様々な方法が使用できる。上記ハロゲン化銀乳剤層を設けた後に密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いて走査露光する方法等がある。
【0029】
写真製法(a)及び(b)の方法において、ハロゲン化銀粒子を還元して銀薄膜層を形成させる処理(現像処理)で用いる現像液は、ハロゲン化銀を還元するための現像主薬と、pHをアルカリ性に保つためのアルカリ剤を含有する。かかる現像主薬としては、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0030】
アルカリ剤もまた、写真現像の分野で公知の化合物を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩等が挙げられる。現像液のpHは、10以上が好ましく、更に11〜14の範囲が好ましい。また、現像液には、現像速度をコントロールするための現像抑制剤、現像主薬の保恒剤等、写真現像の分野で公知の化合物を含有させることができる。
【0031】
上記写真製法(b)の現像液には、現像主薬及びアルカリ剤の他に、感光していないハロゲン化銀を溶解するための可溶性銀錯塩形成剤が含まれる。可溶性銀錯塩形成剤もまた、写真現像の分野で公知の化合物を用いることができ、例えば、チオ硫酸アンモニウム及びチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475頁(1977年)に記載されている化合物が挙げられる。
【0032】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特にチオ硫酸塩、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、例えばN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2′−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。またこれらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記写真製法(a)の現像液には、現像主薬及びアルカリ剤の他に、臭化物イオン、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなどの現像抑制剤を含有させることが好ましい。
【0034】
上記した写真製法(b)の銀薄膜層の形成方法において、現像液中に用いられる可溶性銀錯塩形成剤及び現像主薬は、写真製法(b)の構成層中に含有させてもよいし、現像液中に含有させてもよい。更に両方に含有してもよいが、現像液中に含有させるのが好ましい。現像液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。現像処理の温度としては、温度が高すぎると、現像中にハロゲン化銀乳剤が溶け出してしまうので、30℃以下が好ましく、特に25℃以下が好ましい。また、現像時間としては、生産効率を考慮して、120秒以下が好ましい。
【0035】
また上記した写真製法(a)の銀薄膜層の形成方法においても、現像液中に用いられる現像主薬は、写真製法(a)の構成層中に含有させてもよいし、現像液中に含有させてもよい。更に両方に含有してもよい。
【0036】
写真製法(b)において、銀薄膜層を形成する方法としては、上記絶縁性支持体上に物理現像核層を塗布し、その後ハロゲン化銀乳剤層をこの順に塗布し設ける方法、あるいは別の紙やプラスチック樹脂フィルム等の支持体上に設けられたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する方法がある。コスト及び生産効率の面からは前者の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を一体的に設けるのが好ましい。
【0037】
写真製法(a)の現像処理には、ハロゲン化銀を還元する現像処理工程の他に、必要に応じて不要なハロゲン化銀を溶解除去するための定着処理工程を設け、実施することができる。また、現像処理工程と定着処理工程との間に、例えば、酢酸、クエン酸等を含有する酸性水溶液を用いて現像停止処理工程、現像処理または定着処理で生成した不要な塩を除去するための水洗処理工程を設け、実施することもできる。一方、写真製法(b)の現像処理には、ハロゲン化銀を溶解させ、物理現像核上で銀を還元、析出させるための現像処理工程と、物理現像核層より上の不要となった層を洗い流すための水洗処理工程がある。
【0038】
写真製法(a)において必要に応じて使用される定着処理には、少なくとも、感光していないハロゲン化銀を溶解するためのハロゲン化銀溶剤が含まれる。かかるハロゲン化銀溶剤としては、写真現像の分野で公知の化合物、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、アルカノールアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩等が挙げられる。また、現像後の膜を硬化させるための硫酸アルミニウム等の硬膜剤等を含有させてもよい。定着処理の温度としては、温度が高すぎると、現像中に構成層が溶け出してしまい、処理液を汚染するので、40℃以下が好ましい。また、定着時間としては、生産効率を考慮して、300秒以下が好ましい。
【0039】
上記、写真製法(b)において水洗処理は、現像後、物理現像核層より上の不要な層を洗い流すために行われるので、30℃から50℃の温水を用いることが好ましい。水洗方式としては、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。水洗液には、洗い流された膜が蓄積し、汚染されるので、水洗後に、水または温水で再度水洗することも好ましく実施することができる。
【0040】
上記写真製法(a)及び(b)において現像を行うための現像液の供給方式は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流された現像液中に、前記露光済みの前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上に現像液を1m2当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0041】
上記の方法にて形成された銀薄膜層の厚みとしては、ハロゲン化銀乳剤層の銀量や現像液組成、現像条件等により変化しうるが、500nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。下限は80nm以上である。銀薄膜層の導電性としての表面抵抗値は100Ω/□以下、より好ましくは10Ω/□以下であることが特に好ましい。
【0042】
本発明に用いる導電性パタン前駆体は、絶縁性支持体上に上記写真製法によって形成された銀薄膜層上に感光性レジスト層を有するものである。該感光性レジスト層は、ドライフィルムレジストをラミネートすることにより設けても良いが、パタンの微細化の観点から、感光性液状レジストが塗布された感光性レジスト層であることが好ましい。また銀薄膜層との接触による経時変化の観点から、ポジ型感光性レジスト層であることがより好ましい。
【0043】
ポジ型感光性レジスト層としては、感光して溶解可能となった部分を、アルカリ水溶液を主成分とする現像液で溶解除去できる水処理可能なものが好ましく用いられる。特にキノンジアジド系ポジ型フォトレジスト層が好ましい。キノンジアジド系ポジ型フォトレジスト層は、アルカリ可溶性樹脂と光分解成分であるフォトセンシタイザーを含有する。アルカリ可溶性樹脂としてはクレゾールノボラック樹脂が好ましく、フォトセンシタイザーとしてはナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが好ましい。本発明において、ポジ型感光性レジスト層には、例えば強度を向上させるなどの目的で、アルカリ可溶性樹脂と相溶性のあるエポキシ樹脂やアクリル樹脂、可塑剤としてのポリビニルエーテル類、その他安定剤、レベリング剤、染料、顔料などを含有させても良い。前記ポジ型感光性レジスト層の塗設は、スプレーコート、ロールコート、カーテンコート、ディップコート、グラビアコートなど公知の方法により行うことができる。
【0044】
上記ポジ型感光性レジスト層の膜厚としては、15μm以下であることが好ましく、12μm以下、さらには6μm以下であることがより好ましい。下限は必要なレジスト性能を確保する点、塗布を均一に欠点無く行うという観点から、1μm以上であることが好ましい。
【0045】
本発明の導電性パタン前駆体を用いて導電性パタンを形成する方法において、導電性パタンを得るためのパタン露光の方法としては、前記感光性レジスト層と任意のパタンを有するフォトマスクを密着して露光する。特に微細パタンの露光においては平行光源を用いた平行光露光を行うことが好ましい。また感光性レジスト層の感光領域のレーザー光を用いて任意のパタンで走査露光する方法等もある。現像については、環境負荷低減の観点から、アルカリ性水溶液を使用することが好ましい。任意のパタンに露光された感光性レジスト層を現像処理することで、銀薄膜層上に任意のパタンを有するレジスト画像が形成される。
【0046】
次に、本発明の導電性パタン形成方法は、レジスト画像で被覆されていない領域の銀薄膜層上に電解めっきを施すことで金属を積層させる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法は、硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法などが好ましい。
【0047】
めっき厚については特に制限はないが、実用的に求められる導電性を確保できる厚さにめっきされることが好ましい。めっきの陰極電流密度としては、生産性の面から1A/dm2以上、好ましくは2A/dm2以上である。一般的なめっき層の厚みは、3〜10μm程度である。
【0048】
本発明の導電性パタン形成方法において、上記電解めっき後に残ったレジスト画像は用いた感光性レジスト層に適した剥離液を用いて除去する。一般的にはレジスト画像を膨潤させる有機溶剤、あるいはアルカリ性水溶液をスプレーにより吹き付け、レジスト画像を膨潤させることにより除去するが、環境負荷低減の観点からは、アルカリ性水溶液を使用することが好ましい。かかるアルカリ水溶液としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等含有するアルカリ性水溶液を使用することができる。更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもでき、pHが11〜14であるアルカリ水溶液を例示することが出来る。なお、これらアルカリ水溶液は、前述の感光性レジスト層の現像にも利用される。
【0049】
本発明の導電性パタン形成方法において、レジスト画像の除去に引き続き、電解めっきにより金属が積層されていない領域の銀薄膜層を溶解し除去する。かかる溶解除去に用いる液としては、過酸化水素、過酸(次亜塩素酸、過硫酸など)、鉄EDTA塩、セリウム塩などの酸化性金属塩などを含有する液が挙げられる。中でも過酸化水素液を用いることが好ましく、このような液の市販品としては、例えばメルテックス(株)より「アグリップ940」として市販されている液を用いることができる。
【0050】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお部数は特に断りのない限り全て固形分質量換算であり、%は特に断りのない限り質量基準である。
【実施例1】
【0051】
<導電性パタン前駆体A1の作製>
絶縁性支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に下記の易接着層を設けた。
易接着層:塩化ビニリデンラテックス(旭化成工業製、L−536B、ビニリデン含有率90%以上)、100部、乾燥膜厚0.3μm。
この絶縁性支持体のシート抵抗値をダイアインスツルメント(株)ハイレスタUP MCP−HT450型を用いて測定したところ、1011Ω/□であった。
【0052】
この易接着層上に、下記ベース層を設けた後、硫化パラジウムを含有する塗液を塗布・乾燥し、硫化パラジウムの固形分で0.4mg/m2の物理現像核層を設けた。続いてコントロールドダブルジェット法により得られた平均粒径が0.1μmである立方体形状の塩化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤(銀1gに対してゼラチンを0.5g含有)1g(銀換算)に対して、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを3.0mg/m2、界面活性剤(S1)を20mg/m2加えたハロゲン化銀乳剤層の塗液を、銀換算量で3.0g/m2となるように、上記物理現像核層の上に塗布乾燥し、ハロゲン化銀乳剤層を設けた。
ベース層:石灰処理ゼラチン、80部、自己乳化性イソシアネート化合物(旭化成工業社製、デュラネートWB40−100)、20部、乾燥膜厚0.15μm。
【0053】
【化1】

【0054】
上記シートを、露光することなく下記の組成の現像液で20℃、60秒間現像した後、40℃の温水で不要になったハロゲン化銀乳剤層を水洗除去することで、絶縁性支持体上の全面に約100nmの厚みの銀薄膜層を有するシートを得た。また、銀薄膜層の表面抵抗値は三菱化学社製Loresta−GP MCP−T610で測定したところ、10Ω/□であった。
<現像液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸ナトリウム 30g
モノメチルエタノールアミン 10g
全量を水で1000mlに合わせた。
(pH=13.0)
【0055】
このようにして得られた銀薄膜層上に、クレゾールノボラック樹脂、およびナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含有するポジ型感光性レジストである光陽化学工業社製「KRP−30」を用いて、厚み4μmになるように塗布、乾燥し、導電性パタン前駆体A1を得た。
【0056】
<導電性パタン前駆体B1の作製>
導電性パタン前駆体A1と同様に作製した絶縁性支持体上のベース層上に、ハロゲン化銀乳剤層を塗布した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀60モル%と臭化銀40モル%で、平均粒径が0.15μmの立方体になるようにコントロールドダブルジェット法により調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を、定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用いて金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3.6gあたり0.6gのゼラチンを含む。
【0057】
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.6g
ハロゲン化銀乳剤 3.6g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S1) 20mg
グリオキサール(40%水溶液) 50mg
【0058】
このようにして得たシートの全面を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し露光した。
【0059】
続いて、Gekkol現像液(三菱製紙社製)に20℃で90秒間浸漬した後、続いて2%酢酸溶液に20℃で30秒浸漬させ停止処理し、その後、定着液としてN−(β−アミノエチル)エタノールアミンを300g/L含有する定着液(pH=10.5)にて20℃180秒浸漬させて、その後水洗し、絶縁性支持体上の全面に約400nmの厚みの銀薄膜層を有するシートを得た。また、この銀薄膜層の表面抵抗値は三菱化学社製Loresta−GP MCP−T610で測定したところ、70Ω/□であった。
【0060】
このようにして得られた銀薄膜層上に、導電性パタン前駆体A1と同様のポジ型感光性レジストを塗布、乾燥し、導電性パタン前駆体B1を得た。
【0061】
<導電性パタン前駆体C1の作製>
特開2007−287953号公報を参考にし、絶縁性支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値1011Ω/□)表面をプラズマ処理した後に、厚さ10nm以上、30nm以下のNi:Cr=80:20の合金膜をスパッタにて形成した後に100nmの厚さでCuスパッタ層を形成した下地金属層を有するシートを得た。また、Cuスパッタ膜層の表面抵抗値は0.2Ω/□であった。
【0062】
このようにして得られたCuスパッタ層上に、導電性パタン前駆体A1と同様のポジ型感光性レジストを塗布、乾燥し、導電性パタン前駆体C1を得た。
【0063】
<導電性パタン前駆体D1の作製>
特開2007−287994号公報の実施例1を参考に、絶縁性支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(シート抵抗値1011Ω/□)を用いてグラフトポリマー層(厚み0.8μm)を作製し、得られたグラフトポリマー層を、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に10分間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記無電解めっき浴でめっき処理を行い、無電解めっき銅薄膜層を得た。この銅薄膜層は厚みが100nmであり、銅薄表面抵抗値は5Ω/□であった。
【0064】
<無電解めっき浴成分>
硫酸銅 0.3g
酒石酸NaK 1.7g
水酸化ナトリウム 0.7g
ホルムアルデヒド 0.2g
水 48g
【0065】
このようにして得られた銅薄膜層上に、導電性パタン前駆体A1と同様のポジ型感光性レジストを塗布、乾燥し、導電性パタン前駆体D1を得た。
【0066】
<導電性パタン前駆体E1の作製>
絶縁性支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム表面をプラズマ処理した後に、真空蒸着法により100nmの厚みに銀薄膜層を形成した。またこの銀薄膜層の表面抵抗値は0.4Ω/□であった。
【0067】
このようにして得られた銀薄膜層上に、導電性パタン前駆体A1と同様のポジ型感光性レジストを塗布、乾燥し、導電性パタン前駆体E1を得た。
【0068】
<導電性パタンの形成>
上記のようにして得られた導電性パタン前駆体A1〜E1それぞれの感光性レジスト層表面に、線幅10μm(遮光部)、間隔10μm(透光部)のライン/スペース画像と、線幅100μm×長さ3cm(透光部)の孤立画像とを有するガラスマスクを真空密着させ、感光性レジスト層の感光域の波長を有する光(超高圧水銀灯)を集光させ、コリメーターレンズを通して平行光露光した。露光後の導電性パタン前駆体A1〜E1は、それぞれ30℃の1%の炭酸ナトリウム水溶液中で揺動させながら40秒間現像し、レジスト画像を得た。露光量はレジスト画像部の線幅を光学顕微鏡で観察し、10μmとなる様に設定した。
【0069】
上記レジスト画像を得た後、下記組成の硫酸銅めっき浴で、電解めっきにより2A/dm2の電流量で7分間行った。その後40℃の3%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付けることにより、レジスト画像を溶解除去した後、水洗、乾燥した。これによりレジスト画像で被覆されていなかった部分には厚み3μmの銅を積層させ、A1、B1の銀薄膜層上、C1の銅スパッタ膜層上および、D1の無電解めっき銅薄膜層上に銅パタンを形成させた。なお導電性パタン前駆体E1を用いた場合、レジスト画像の溶解除去中に銅パタンが真空蒸着法により得られた銀薄膜層から剥がれてしまったため、以降の工程に進めなかった。
【0070】
<硫酸銅めっき浴>
硫酸銅・5水和物 75g/L
硫酸 190g/L
光沢剤 適量
塩化物イオン 50mg/L
浴温 25℃
光沢剤として、ローム・アンド・ハース社製、カパーグリーム CLXを用いた。
【0071】
次に、銅パタンが積層されていない部分のA1、B1の銀薄膜層、C1の銅スパッタ膜層および、E1の無電解めっき銅薄膜層を除去するためメルテックス社製アグリップ940使用液(過酸化水素液17.5%含有)に25℃でそれぞれ1分、3分、5分間浸積させて銀薄膜層を除去し、線幅10μm、線間10μmのライン/スペース画像、および線幅100μm×長さ3cmの孤立画像(何れも銅パタン)を有する導電性パタンを得た。なお、前駆体A1〜D1の薄膜層が除去されているかを確認するため、共焦点顕微鏡(レーザーテック社製、オプテリクスC130)で線間10μmのスペースを観察し、完全に除去されているものを○、少し残っているものを△、除去できていないものを×として評価した。この結果を表1に示す。また、薄膜層が除去され絶縁性支持体が露出した部分の絶縁性を確認するためシート抵抗値を測定した結果と、線間100μm×長さ3cmの孤立銅パタンの導通性をテスターにて測定した結果を、併せて表1に示す。
【0072】
【表1】

【実施例2】
【0073】
実施例1において硫酸銅めっき浴を下記組成のニッケルワットめっき浴に変更した以外は実施例1同様にしてニッケルパタンを有する導電性パタンを得た。これらを実施例1同様に評価した結果を表2に示す。なお、導電性パタン前駆体E1を用いた場合、実施例1と同様、レジスト画像の溶解除去中にニッケルパタンが真空蒸着法により得られた銀薄膜層から剥がれてしまったため、以降の工程に進めなかった。
【0074】
<ニッケルワットめっき浴>
硫酸ニッケル 240g/L
塩化ニッケル 45g/L
ホウ酸 30g/L
浴温 50℃
【0075】
【表2】

【実施例3】
【0076】
実施例2において、ニッケルパタンが積層されていない部分のA1、B1の銀薄膜層、C1の銅スパッタ膜層および、E1の無電解めっき銅薄膜層を除去するためのメルテックス社製アグリップ940使用液をソフトエッチング液(35%過酸化水素液と62.5%硫酸を含有)の10倍希釈液に変更して、40℃で処理時間を5分、10分、20分にした以外は実施例2と同様にして実施し評価した。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【実施例4】
【0078】
実施例2において、ニッケルパタンが積層されていない部分のA1、B1の銀薄膜層、C1の銅スパッタ膜層および、E1の無電解めっき銅薄膜層を除去するためのメルテックス社製アグリップ940使用液を硫酸セリウムが含有する中外写真薬品社製マイクリーン液の2倍希釈液に変更して40℃の処理で実施した以外は実施例2と同様にして実施した。この結果、導電性パタン前駆体A1およびB1を用いた場合は、銀薄膜層の除去が1分以上で可能であったが、導電性パタン前駆体C1およびD1である比較を用いた場合は5分でも薄膜層を除去することができなかった。
【0079】
以上の結果より、比較である導電性パタン前駆体のC1およびD1では効率良く薄膜層を除去することが困難であり、また、導電性パタン前駆体E1においては上記の処理工程では、電解めっきにより積層された金属が銀薄膜層から剥がれてしまう結果であった。以上の結果より判るように、本発明の導電性パタンの形成方法は、銀薄膜層の除去が容易であり生産性に優れ、十分な導電性を有する微細な導電性パタンの形成が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性支持体の少なくとも一方の面に、写真製法により得られた銀薄膜層及び感光性レジスト層を少なくともこの順に有する導電性パタン前駆体を、パタン露光後に現像して銀薄膜層上に任意のパタンを有するレジスト画像を形成した後、電解めっき法により該レジスト画像で被覆されていない銀薄膜層上に金属を積層させ、その後レジスト画像を溶解除去し、更に金属が積層されていない部分の銀薄膜層を除去する導電性パタンの形成方法。
【請求項2】
該導電性パタン前駆体の感光性レジスト層が、塗布されたポジ型感光性レジスト層であることを特徴とする請求項1に記載の導電性パタンの形成方法。

【公開番号】特開2010−45227(P2010−45227A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208748(P2008−208748)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】