説明

導電性ブラシローラの製造装置

【課題】 導電性ブラシローラ製造の際に、倒れたパイル糸を安定的に起立させることが可能な導電性ブラシローラ製造装置の提供。
【解決手段】 導電性ブラシローラを保持して回転させるブラシローラ保持回転部と、該ブラシローラのパイル糸先端部分をカットする先端カット部と、パイル糸を起毛するための櫛状の起毛部とを設けたことを特徴とする導電性ブラシローラの製造装置。好ましくは、さらに、集塵部と、ブラシローラのブラシ先端部分にエアーを吹き付けるための、エアーブロー部と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の電子写真プロセスで用いられる導電性ブラシローラを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ装置、あるいはプリンタ等の電子写真装置には、感光体を帯電させる導電性ブラシローラを設けているものがある。
導電性ブラシローラは、導電糸をパイル糸としてパイル織りして生地に起毛させ、リボン状に切断したのち、金属製の軸(丸棒)に巻き付けてローラ形状にし、その後パイル糸をカットして、導電性ブラシローラの外径を所定の寸法に加工することで製造されている。
前記工程中、パイル糸が起毛された生地を軸に巻き付ける際に、導電性ブラシローラの外径が所定の寸法よりも大きくなるようなパイル糸の長さを持つパイル生地を予め軸に巻き付け、その後パイル糸をカットすることで導電性ブラシローラの外径を所定の寸法に加工している。
しかしながら、パイル糸が起毛された生地を取り扱う際に、該生地を重ねて置く場合があり、また、導電性ブラシローラを製造する際の、該生地を軸に巻き付ける工程では、該生地にゆがみが出ないように、該生地を保持して押さえながら軸に巻き付ける作業を行うため、該生地に起毛されたパイル糸が倒れることがある。そのため、導電性ブラシローラ製造の際には、倒れたパイル糸を起立させる工程が必要となる。
特許文献1では、エアーブロー装置を備え、それにより倒れたパイル糸を起立させている。エアーブローは、パイル糸を起立させる際に導電性ブラシローラの長手方向全体に渡って同時に行うが、このエアーブローのみではパイル糸が波立ってしまうため安定的に起立させることができず、従って所定の寸法に加工(カット)しにくいという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−109239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、導電性ブラシローラ製造の際に、倒れたパイル糸を安定的に起立させることが可能な導電性ブラシローラ製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、パイル糸を起毛するための櫛状の起毛部を設けることで、倒れたパイル糸を安定的に起立させることが可能になることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば、以下の1及び2が提供される。
1. 電子写真プロセスで用いられる導電性ブラシローラを製造する装置であって、前記導電性ブラシローラを保持して回転させるブラシローラ保持回転部と、該ブラシローラのパイル糸の先端部分をカットする先端カット部と、パイル糸を起毛するための櫛状の起毛部とを設けたことを特徴とする導電性ブラシローラの製造装置。
2. さらに、集塵部と、ブラシローラのブラシ先端部分にエアーを吹き付けるための、エアーブロー部と、を設けたことを特徴とする、1に記載の導電性ブラシローラの製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性ブラシローラの製造装置を用いると、櫛状の起毛部により倒れたパイル糸を安定的に起立させることが可能になるため、導電性ブラシローラの寸法精度が高くなり、そのため不良品率が低くなるので効率的に導電性ブラシローラを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の一実施形態例である導電性ブラシローラの製造装置2の構成を示す概略図である。
本発明の導電性ブラシローラの製造装置2は、電子写真プロセスで用いられる導電性ブラシローラの外径を所定寸法に加工する装置である。
【0009】
前記製造装置2は、導電性ブラシローラ4の軸部6を保持して回転させる保持回転部8と、ブラシ先端部分を所定の長さにカットするブラシ先端カット部10を構成する回転刃12及び固定刃14と、ブラシのパイル糸を起毛するための櫛状の起毛部16とから構成される。
【0010】
本発明の製造装置2において、それにより製造される導電性ブラシローラ4の材料等には、特に制限がなく、公知のものを使用できる。導電性ブラシローラ4は、例えば、以下に述べる方法により、パイル糸の先端部分を所定の長さにカットする前の段階のものを好適に製造することができる。はじめに、ナイロン−6などのポリアミドにカーボンブラックなどの導電性物質を溶融混練し、押出機で糸状に押し出して導電糸を作成する。それをポリエステルなどの生地にパイル織りした後、糸の中間部分で2つに切断し、アクリルエステル系などの高分子のエマルジョンにカーボンブラックなどの導電性物質を混合した導電性エマルジョンを生地の裏側(糸の起立していない側)から塗布し、乾燥して、導電性起毛布を得る。それをテープ状に裁断した後、金属製の軸6に巻きながら両面テープで貼り付ける。以上の方法が好適な製造方法として示される。
【0011】
導電性ブラシローラ4においてはパイル糸が生地から起立した状態でなければならないため、パイル糸が起毛された生地(導電性起毛布)を軸に巻き付けた後に、櫛状の起毛部16で倒れたパイル糸を起立する工程を経た後に、先端をカットする工程を行う。
パイル糸の太さが10デニール以上と比較的太い場合は、パイル糸の弾性が高く、パイル糸が倒れ難いため起立工程が不要な場合がある。また、一旦パイル糸を起立する工程を経た後は、パイル糸をカットする工程でパイル糸が倒れにくいため、所定の寸法に加工しやすい。
しかし、パイル糸が10デニール未満と比較的細い場合は、カット工程においてパイル糸が倒れやすいため、起立工程、カット工程を数回繰り返し所定の寸法に合わせる方法を取ることがある。
【0012】
また、導電性ブラシローラの外径の寸法を精度良く加工するために、パイル糸をカットした後、水蒸気等を用いて加熱しながらパイル糸を斜毛する工程を経て、ブラシローラを製造する方法がある。この方法は、パイル糸の先端部あるいは、全体を曲げて導電性ブラシローラの外径寸法を調整する方法であるために、カットしたパイル糸の寸法に少々のばらつきがあっても良いという利点がある一方、設備・工程は煩雑になるという好ましくない面を有する。
【0013】
導電性ブラシローラ4の軸部6の先端部には、導電性ブラシローラ4を保持して回転させるための、本発明の構成要素の一つであるブラシローラ保持回転部8が取り付けられる。ブラシローラ保持回転部8は、ブラシローラ保持部とブラシローラ回転部とからなり、ブラシローラ保持部にて導電性ブラシローラ4を保持すると共に、ブラシローラ回転部の主構成部位である電動性モーターによって、導電性ブラシローラ4を回転させる。回転する方向は、導電性ブラシローラ4が上からブラシ先端カット部10へ向かう方向であり、下から櫛状の起毛部16へ向かう方向である。導電性ブラシローラ4は、ブラシ先端カット部10と櫛状の起毛部16との間に位置する。導電性ブラシローラ4の、ブラシ先端カット時の回転速度は、通常、0.1〜300rpmであり、好ましくは、5〜200rpmである。導電性ブラシローラ4の回転速度が上記範囲より遅すぎると、櫛状の起毛部で起こした毛が再度倒れやすくなるため、櫛状の起毛部で毛を起こした効果が小さく、逆に上記範囲より速すぎると、ブラシ外径が波打ちしやすくなり、導電性ブラシローラ4の外径が均一になりにくいといった問題が生じる。
【0014】
本発明の製造装置2を構成するものの一つであるブラシ先端カット部10は、回転刃12及び固定刃14からなる。
【0015】
回転刃12は、通常、3〜8枚、好ましくは5〜6枚の刃が、軸に略円筒状に等間隔に配置されてなり、その略円筒状の回転刃12の外径は、通常、導電性ブラシローラ4の外径の1〜50倍、好ましくは2〜10倍の大きさである。回転刃12の外径が、上記範囲より小さいと、糸のカット時の食い込み量が小さいためカット時間がかかりすぎ、逆に上記範囲より大きいと、装置が大きくなりすぎるといった問題が生じる。また、回転刃12の回転速度は、通常、100〜10000rpm、好ましくは、200〜5000rpmであり、導電性ブラシローラ4とは反対方向に回転する。回転刃12の回転速度が上記範囲より遅すぎると、カットする刃にかかる力が大きくなりすぎて刃の寿命が短くなり、逆に上記範囲より速すぎると、回転刃が振動し易くなり、導電性ブラシローラ4の外径の精度が悪くなるといった問題が生じる。
【0016】
固定刃14は、図1に示すように、略楔形をしているものが好ましい。また、パイル糸は、矢印方向に回転する回転刃12と固定刃14との間に挟まれることによりカットされる。
【0017】
ブラシ先端カット部10は、その水平方向の位置をずらすことができ、それにより、導電性ブラシローラ4への各刃の食い込み量を調節し、導電性ブラシローラ4を好みの大きさにカットすることができる。
【0018】
本発明の製造装置2を構成するものの一つである櫛状の起毛部16は、多数の金属線を布に植えた針布を、軸にロール状に巻き付けた、針ロールブラシ形状のものが、回転することで均一に効率よく糸を起立させることができるために好ましく用いられる。形状としては、他にベルト形状のものも用いられる。
【0019】
櫛状の起毛部16のうち好適に用いられる針ロールブラシ形状のものの回転方向は、導電性ブラシローラ4の回転方向と同方向であり、回転数は、通常、10〜1000rpmである。回転速度が上記範囲より遅すぎると、パイル糸を起こすことが不十分となり、逆に上記範囲より速すぎると、パイル糸が抜け易いといった問題が生じる。
【0020】
本発明の製造装置2は、好ましくは、図2に示すように、さらに導電性ブラシローラ4のブラシ部分にエアーを吹き付けるエアーブロー部18及び導電性ブラシローラ4のブラシ部分の先端部をカットした際に生じる切りくずを集塵するための集塵部20を有する。また、回転刃12を取り囲むようにケース22が設けられている方が集塵の効率が高く、また安全のためにより好ましい。
【0021】
導電性ブラシローラ4においては、パイル糸自体が導電性を有するため、パイル糸の切りくずが完全に除去できていないと、感光体表面を汚染して画像品質が低下したり、電子写真装置内部に飛散し回路を短絡させてしまう等の問題が発生する可能性がある。そこで、パイル糸をカットした際に発生する切りくずを除去するために、カット工程でカット直後にエアーブローを行うことにより、カットとほぼ同時に切りくずの除去(及び集塵機による集塵)を行うことが好ましい。
【0022】
エアーブロー部18は、エアーノズルが、導電性ブラシローラ4のパイル糸の起立している方向に対し斜めにエアーが当たる位置に、導電性ブラシローラ4のブラシ先端から5〜200mmの距離をおいて配設してあり、そのエアーノズルから0.5〜5kgf/cm、好ましくは0.8〜2kgf/cmのエアーを導電性ブラシローラ4のブラシ先端部分に対して吹き付ける。エアーブロー部18から吹き付けるエアーにより、導電性ブラシローラ4のブラシ先端部分に付着している切りくずが吹き飛ばされる。エアーブロー圧力が上記範囲より弱いと、パイル糸の切りくずか残り易くなり、逆に強すぎると、パイル糸を倒し易くなり問題である。
【0023】
集塵部20としては、バッグフィルター方式や、サイクロン方式等の公知のものが用いられる。吸引により切りくず等を集めることのできるものが好ましい。集塵部20の位置は、導電性ブラシローラ4のブラシ先端部分がカットされる位置の近傍が好ましい。回転刃12のケース22を設置すると、回転刃から手などを保護するのみならず、集塵力がブラシ先端部分に集中するようになるため効率良く集塵でき、集塵の面からも好ましい。
【0024】
ブラシ先端部分をカットした際に生成する切りくずが付着し汚れた導電性ブラシローラ4は、エアーブロー部18によるエアー吹き付けにより清掃され、また、除去された切りくずが集塵部20に集められるため、再汚染を防止でき、導電性ブラシローラ4の効率の良い製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る導電性ブラシローラの製造装置の概略図である。
【図2】図2は本発明の好ましい一実施形態に係る導電性ブラシローラの製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0026】
2… 導電性ブラシローラの製造装置
4… 導電性ブラシローラ
6… 導電性ブラシローラの軸部
8… ブラシローラ保持回転部
10… ブラシ先端カット部
12… 回転刃
14… 固定刃
16… 櫛状の起毛部
18… エアーブロー部
20… 集塵部
22… ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真プロセスで用いられる導電性ブラシローラを製造する装置であって、前記導電性ブラシローラを保持して回転させるブラシローラ保持回転部と、該ブラシローラのパイル糸の先端部分をカットする先端カット部と、パイル糸を起毛するための櫛状の起毛部とを設けたことを特徴とする導電性ブラシローラの製造装置。
【請求項2】
さらに、集塵部と、ブラシローラのブラシ先端部分にエアーを吹き付けるための、エアーブロー部と、を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の導電性ブラシローラの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−39436(P2006−39436A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222561(P2004−222561)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】