説明

導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路

【課題】 耐マイグレーション性を改良するものであり、なおかつ低コストの導電性ペーストを提供する。
【解決手段】 貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)、及び有機樹脂(B)を含む導電性ペーストに関する。特に貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)において、コア成分がアルミナであることを特徴とする導電性ペーストに関する。さらに貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)のレーザー光散乱法で測定した平均粒子径が0.5〜50μmであり、かつアスペクト比が2以上であることを特徴とする導電性ペーストに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペーストに関するものであり、さらに詳しくは導電性ペーストをフィルムまたは基板上に塗布または印刷、硬化することにより導電性を与え、回路を形成したり、電子部品の端子やリード線の接着を行ったり、電子装置を電磁波障害(EMI)から保護することに利用する導電性ペーストに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
PETフィルムなどに導電性ペーストを印刷したメンブレン回路は低コストで軽量であり、キーボードやスイッチなどに広く使用されている。しかしながら、印刷パターンのファイン化により、年々要求特性は厳しくなってきており、従来以上の耐マイグレーション性が望まれており、さらには近年低コスト化の要望が大きくなってきており、従来技術では充分でなく改良が望まれている。
【0003】
公知の導電性ペーストとしては特許文献1と2がある。特許文献1はフレーク状の銀粉とポリエステル系樹脂とブロック化イソシアネート化合物を結合剤に使用したメンブレン回路用の銀ペーストについて記載されている。しかしながらこの導電性は比較的良好であるが、銀粉を導電性フィラーに用いているため、耐マイグレーション性がファインパターン化した現代の要求に対しては不足しており、さらには、コストが高い問題がある。特許文献2は導電粉として3次元高次構造の銀粉を使用したメンブレン回路用の銀ペーストが提案されているが、耐マイグレーション性が現代の要求には不足しており、コストも高い。
【0004】
【特許文献1】特開平1−159906号公報
【特許文献2】特開平9−306240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、これら従来の導電性ペーストが抱えている耐マイグレーション性を改良するものであり、なおかつ低コストの導電性ペーストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような問題を解決するために、鋭意検討した結果、銀などの貴金属で表面をコートしたリン片状無機微粒子を主体とする導電粉を使用することにより、良好な導電性が得られ、驚くべきことに耐マイグレーション性が大幅に向上することを見出し本発明に到達した。さらには、公知の銀ペーストと比較して、使用する銀の量を大幅に低減できるため低コストであり、回路用の他、基低材フィルムにグラビア印刷などで薄く印刷し電磁波シールド用として有用である。
【0007】
すなわち、本発明は、貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)、及び有機樹脂(B)を含む導電性ペースト及び該導電性ペーストが基材上に印刷されている印刷回路に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性ペーストは良好な導電性を有し、さらには耐マイグーション性を大幅に向上できる。さらにはローコストで優れた回路材料を作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる貴金属で表面をコートしたリン片状無機微粒子(A)はその形状がフレーク状である必要がある。ここで言うフレーク状とは、レーザー光散乱法により測定した50%平均粒子径を後述する電子顕微鏡で測定した平均厚さで徐した値(アスペクト比)が2以上のものを示す。より具体的には、50%平均粒子径は該リン片状無機微粒子(A)をミクロスパテラで1〜2杯、100mlトールビーカーに採り、イオン交換水を60ml入れ、超音波ホモジナイザーで1分間分散し、粒度分布計(マイクロトラックFRA型(日機装(株))で測定することができる。測定時間は、30秒で2回測定して、50%の累積径の平均値を平均粒径とする。測定条件は、粒子の光透過性(T、P);YES、粒子の形状(S、P);NO、粒子屈折率(Pri);1.76、分散媒屈折率(Cri);1.33とする。平均厚さは、具体的には次の方法で測定できる。該リン片状無機微粒子(A)2gを水溶性エポキシ樹脂(Quetol651(日新EM(株)製))10ccとよく混合し、60℃の恒温槽中で1時間30分静置後、注射器(ニプロシリンジ1ml(ニプロ(株)製))でサンプルを吸い出し、注射器に入れたまま60℃の恒温槽中に8時間置く。硬化した樹脂を、注射器より取り出し、ミクロトームで面出し加工を行い、カーボン蒸着後、電解放射型走査型電子顕微鏡(日立(株)製S4500型)で5000倍又は10000倍の倍率で写真を撮影し、該リン片状無機微粒子(A)の厚みを測定する。測定個数50個の平均値で表す。
【0010】
本発明において用いられる貴金属で表面をコートしたリン片状無機微粒子(A)の50%平均粒子径は、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、最も好ましくは30μm以下である。下限は、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1μm以上である。平均粒子径が50μmを超えるとスクリーン印刷をする場合はスクリーンに目詰まりをおこしたり、該リン片状無機微粒子(A)の沈降によるペーストの貯蔵安定性が低下する可能性がある。平均粒子径が0.5μm以下では、導電性が低下したり、ペーストの粘度が高くなり、該リン片状無機微粒子(A)を充分充填できなくなる可能性がある。
【0011】
本発明において用いられる貴金属で表面をコートしたリン片状無機微粒子(A)は、平均厚さが2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1μm以下である。下限は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。2.0μm超では、アスペクト比が小さくなり導電性が低下する可能性がある。0.1μm未満では該リン片状無機微粒子の吸油量が大きくなる傾向があり、密着性が低下したり、印刷性が悪化するおそれがある。
【0012】
本発明において用いられる貴金属で表面をコートしたリン片状無機微粒子(A)のアスペクト比は、5以上が好ましく、より好ましくは10以上である。上限は特に定めるものではないが、200以下が好ましく、より好ましくは150以下である。
【0013】
本発明において用いられる貴金属で表面をコートしたリン片状無機微粒子(A)を作成する際に用いるベースとなるリン片状無機微粒子としては、アルミナ、タルク、マイカ、グラファイトが挙げられるが、この内、へき開性が無いか少ないリン片状の合成アルミナが特に好ましい。リン片状アルミナとしては、セラフYFA10030、0525、05070(いずれもキンセイマテック(株)製)などの合成アルミナが挙げられる。リン片状合成アルミナは、水酸化アルミニウムを高温・高圧条件のもとに水と作用させる「水熱合成法」などにより製造される。これらのベース微粒子に貴金属を無電解めっき、スパッタリング、蒸着などの公知の方法により表面コートして作製できる。貴金属の種類としては、Ag、Au、Pt、Pdなどが挙げられるが、導電性とコスト面よりAgが最も好ましい。また、貴金属の目付量としては、該リン片状無機微粒子(A)に対して10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。上限は特に限定しないが、コスト面より60%以下が好ましく、より好ましくは50%以下である。
【0014】
本発明に使用するその他の導電粉としては、特性を低下しない範囲で公知のフレーク状銀粉、球状銀粉、3次元高次構造の銀粉、樹枝状銀粉、グラファイト粉、カーボン粉、ニッケル粉、銅粉、金粉、パラジウム粉、アルミ粉、インジウム粉などを併用しても良いが、貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)を少なくとも全導電粉量の20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、最も好ましくは70重量%以上含むことが好ましい。この内好ましい導電フィラーとしては、公知のフレーク状銀粉、グラファイト粉、導電性カーボンブラックが挙げられる。この他、ペースト粘性を調整する目的などでシリカ粉、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、タルク、硫酸バリウムなどの非導電性フィラーを少量配合しても良い。
【0015】
本発明の導電性ペーストは、貴金属を表面コートしたリン片状無機微粒子(A)とバインダー樹脂として有機樹脂(B)を組み合わせて使用される。有機樹脂(B)はその種類に制限はないが、耐屈曲性の面から数平均分子量が3000以上が好ましく、より好ましくは8000以上である。数平均分子量が3000未満であると良好な耐屈曲性が得にくく、また、ペースト粘度が低下し、印刷性の低下するおそれがある。
【0016】
また、有機樹脂(B)の種類としては、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステルなどの各種変性ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。
【0017】
このうち、可撓性の不要な導電性接着剤、リジット基板の回路用導電ペースト、スルーホール用導電性ペーストなどの用途にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂でも使用できるが、PETフィルム、ITO(インジウムチンオキシド)蒸着PETフィルム、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルで比較的難接着性の基材を用いる場合は、耐屈曲性と基材に対する密着性の面から、ポリエステル樹脂、上記の変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などが好ましく、最も好ましくは、共重合ポリエステル樹脂および/または変性ポリエステル樹脂(C)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体であり、特にこのようなフレキシブルな基材に用いた時にその特徴が発揮できる。
【0018】
有機樹脂としては、さらに具体的には、数平均分子量3000以上のポリエステル樹脂及び/又は変性ポリエステル樹脂(C)を用いることが好ましく、非常に優れた耐屈曲性、基材への密着性が得られる。耐屈曲性の観点から数平均分子量は8000以上が好ましく、より好ましくは10000以上である。数平均分子量が3、000未満であると良好な耐屈曲性が得られないことがあり、また、ペースト粘度が低下し、印刷性に劣る場合がある。耐屈曲性と硬度の面からガラス転移点温度は−20℃以上が好ましく、より好ましくは−5℃以上である。密着性の観点から好ましい上限は70℃以下である。本発明のポリエステル樹脂は公知の方法により常圧または減圧下で重縮合して得られたものを使用できる。ポリエステル樹脂は飽和ポリエステルが好ましい。また、ポリエステル樹脂を重合後、180〜230℃でε−カプロラクトンなどの環状エステルを後付加(開環付加)してブロック化したり、無水トリメリット酸、無水フタル酸などの酸無水物を後付加してカルボキシル基をポリエステル分子末端に付与してもよい。
【0019】
本発明に用いられる樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂(C)に共重合するジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、炭素数12〜28の2塩基酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。また、発明の内容を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価のカルボン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸、さらに、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩などのスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸を併用してもよい。具体的には、全ジカルボン酸量を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸を50モル%以上共重合されたものが、硬度、密着性などの塗膜物性および耐湿性の点より好ましい。またより好ましくは60モル%以上である。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂(C)に使用されるグリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオールなどが挙げられる。また、発明の内容を損なわない範囲でトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンなどの多価ポリオールを併用してもよい。これらのうち、耐湿性の面より、全グリコール成分量100モル%としたとき、ネオペンチルグリコール、脂環族グリコール、主鎖の炭素数5〜10の脂肪族ジオールから選ばれる少なくとも1種以上を20モル%以上共重合されたものが耐加水分解性の点より好ましい。またより好ましくは30モル%以上、最も好ましくは40モル%以上である。ここで言う主鎖の炭素数5〜10のグリコールとしては具体的には、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0021】
また、本発明の導電ペーストに使用するポリエステル樹脂はウレタン変性、エポキシ変性、(メタ)アクリレート変性、(メタ)アクリルグラフト変性など公知の方法により変性して使用できる。このうち、耐屈曲性、密着性の面よりウレタン変性が特に好ましい。ウレタン変性樹脂は公知の方法により、ポリエステルポリオールと必要に応じて鎖延長剤を用いてイソシアネート化合物と反応させて合成したものを使用できる。
【0022】
ウレタン変性ポリエステル樹脂に使用するポリオールには前述したポリエステルポリオールを使用するが、この他にポリエーテルポリオール、(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、その他のポリオールを併用してもよい。その他のポリオールとしては、接着性、耐屈曲性、耐久性よりポリカーボネートジオールが特に好ましい。鎖延長剤として使用するポリオールとしてはネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、HPN(ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル)、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの公知のポリオールが挙げられる。さらにジメチロールプロピオン酸のようなカルボキシル基含有ポリオールなども鎖延長剤として使用できる。
【0023】
ウレタン変性に使用するジイソシアネート化合物は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
変性ポリエステル樹脂(C)としてのポリエステルウレタン樹脂のウレタン基濃度は下限は、密着性、耐屈曲性の面から500当量/106g以上が好ましく、上限は溶解性の面から4000当量/106g以下が好ましい。
【0025】
本発明の導電性ペーストには、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂(C)の他の樹脂を併用してもよい。その他の樹脂としては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が特に好ましく、公知の市販品を使用することができる。溶解性と塗膜物性よりポリマー中の塩化ビニルの含有量は85〜95%のものが好ましい。また、塩化ビニル、酢酸ビニル以外のモノマーとして、マレイン酸、ビニルアルコールなどを少量共重合して極性基を導入してもよい。マレイン酸によりカルボキシル基を導入すると金属に対する密着性が向上し、ビニルアルコールにより水酸基を導入するとイソシアネート化合物を硬化剤として使用できる。
【0026】
本発明に使用する有機樹脂(B)、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂(C)は硬化剤を配合して使用しても良い。これらの樹脂に反応し得る硬化剤は、種類は限定しないが接着性、耐屈曲性、硬化性などからイソシアネート化合物が特に好ましい。さらに、これらのイソシアネート化合物はブロック化して使用することが貯蔵安定性から好ましい。イソシアネート化合物以外の硬化剤としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、ベンゾグアナミン、尿素樹脂などのアミノ樹脂、酸無水物、イミダゾール類、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの公知の化合物が挙げられる。
【0027】
イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0028】
イソシアネート基のブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第三級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。このうち、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類がとくに好ましい。
【0029】
これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。
【0030】
本発明の導電性ペーストに用いるに溶剤はその種類に制限はなく、エステル系、ケトン系、エーテルエステル系、塩素系、アルコール系、エーテル系、炭化水素系などが挙げられる。このうち、スクリーン印刷する場合はエチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、イソホロン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどの高沸点溶剤が好ましい。
【0031】
本発明の導電性ペーストはスクリーン印刷、グラビア印刷、転写印刷、ロールコート、フローコート、スプレー塗装等公知の方法で、PETフィルム(シート)を始めとするプラスチックフィルムに印刷してキーボードやスイッチに用いられるメンブレン回路に使用できる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるものは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0033】
1.分子量
GPCによりポリスチレン換算の数平均分子量を測定した。測定溶媒はテトラヒドロフランを使用した。
【0034】
2.ガラス転移点温度(Tg)
サンプル5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0035】
3.酸価
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。
【0036】
4.レーザー光散乱法による平均粒子径(50%D)の測定
貴金属で表面コートしたリン片状微粒子をミクロスパテラで1〜2杯、100mlトールビーカーに採り、イオン交換水を約60ml入れ、超音波ホモジナイザーで1分間分散し、粒度分布計(マイクロトラックFRA型(日機装(株))で測定した。測定時間は、30秒で2回測定して、50%の累積径の平均値を平均粒径とした。測定条件は、
粒子の光透過性(T、P);YES
粒子の形状 (S、P);NO
粒子屈折率 (Pri);1.76
分散媒屈折率 (Cri);1.33
とした。
【0037】
5.貴金属で表面コートしたリン片状微粒子の平均厚さの測定
貴金属で表面コートしたリン片状微粒子2gを水溶性エポキシ樹脂(Quetol651(日新EM(株)製))10ccとよく混合し、60℃の恒温槽中で1時間30分静置後、注射器(ニプロシリンジ1ml(ニプロ(株)製))でサンプルを吸い出し、注射器に入れたまま60℃の恒温槽中に8時間置いた。硬化した樹脂を、注射器より取り出し、ミクロトームで面出し加工を行い、カーボン蒸着後、電解放射型走査型電子顕微鏡(日立(株)製S4500型)で5000倍又は10000倍の倍率で写真を撮影し、銀粉の厚みを測定した。測定個数50個の平均値で表した。
【0038】
6.密着性
厚み100μmのアニール処理をしたPETフィルムに導電性ペーストをスクリーン印刷し、25×200mmのパターンを印刷し、150℃で30分乾燥、硬化したものをテストピースとした。乾燥膜厚は6〜8μmになるように調整した。このテストピースを用いてJIS K5400 6−15に準じて評価した。粘着テープは、セロハンテープCT−12(ニチバン(株)製)を用いた。
【0039】
7.比抵抗
6.で作製したテストピースを用いてシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。尚、シート抵抗は4端子式のデジタルマルチメーターを用いて測定した。
【0040】
8.耐マイグレーション性
厚み100μmのアニ−ル処理ポリエステルフィルム上に導電性銀ペーストを図1に示す中央に1.5mmのギャップのある線幅2.0mm、長さ85mmのパターンを、乾燥膜厚が6〜8μmになるようにスクリーン印刷し150℃/30分加熱硬化(加熱乾燥)したものを試料とした。ついで上記ギャップ間に注射器(ニプロシリンジ1ml(ニプロ(株)製)で蒸留水0.04mlをゆるやかに滴下し定電圧電源(高砂製作所(株)製)で10V印加し、デジタルマルチメーター(武田理研(株)製)で電流値を測定、電流値が0.1mAになるまでの時間を測定し、5回の測定値の平均値で評価した。数値が大きいほど耐マイグレーション性は良好である。
【0041】
合成例.1(ポリエステル樹脂I)
グビリュー精留塔を具備した四口フラスコにジメチルテレフタル酸101部、ジメチルイソフタル酸35部、エチレングリコール93部、ネオペンチルグリコール73部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換を行なった。ついで、セバシン酸61部を仕込み、さらにエステル化反応を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1時間重合した。得られた共重合ポリエステルの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=52/18/30//55/45(モル比)、数平均分子量22、000、酸価1.5mgKOH/g、Tg7℃であった。結果を表1に示す。
【0042】
合成例.2〜4(ポリエステル樹脂II〜IV)
合成例.1と同様に合成した。結果を表1に示す。合成例IVは、ウレタン変性用のベースポリエステルである。
【0043】
合成例.6(ウレタン変性ポリエステル樹脂V)
温度計、攪拌機、冷却器を具備した反応容器中に合成例のポリエステル樹脂IV100部、鎖延長剤としてのネオペンチルグリコール3部、溶剤として酢酸エチルカルビトールを仕込み、80℃で溶解後、ジフェニルメタンジイイソシアネート(MDI)19.4部及びジブチル錫ジラウレート0.05部を仕込み、固形分濃度50%、70〜80℃で3時間以上かけて残存イソシアネートが無くなるまで反応させた後、酢酸エチルカルビトールで固形分濃度30%に希釈し、ウレタン変性ポリエステル樹脂Vを得た。数平均分子量は25000、酸価1.0mgKOH/g、ガラス転移点温度15℃であった。
【0044】
貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子aの調整
セラフYFA10030−50AG(キンセイマテック(株)製)をそのまま用いた。平均粒子径(50%D)は15μm、平均粒子径と平均厚みより求めたアスペクト比は30であった。銀の目付量は50%であった。
【0045】
貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子bの調整
セラフ05070(キンセイマテック(株)製)にAgを無電解めっきしたものを用いた。平均粒子径(50%D)は7.5μm、平均粒子径と平均厚みより求めたアスペクト比は70であった。銀の目付量は30%であった。
【0046】
実施例.1
貴金属で表面コートしたリン片状微粒子a85部、有機樹脂としてポリエステル樹脂IIの酢酸ジエチレンモノエチルエーテル溶解品15固形部、レベリング剤としてのポリフローS(共栄社化学(株))0.5部を配合し、充分プレミックスした、ついで、チルド3本ロールで3回分散して、導電性ペーストを得た。得られた導電性ペーストは、やや黄みのある銀灰色で良好な粘性であった。比抵抗は、7.6×10-4Ω・cmであり、同一フィラー充填量でAgを導電性フィラーに用いた比較例1と比較して良好であった。これは、本発明のリン片状微粒子aがAgと比較してバルクの比重が低いためと考えられる。また、マイグレーション性は573秒で、比較例1〜4で示したAgペーストと比較して非常に良好であった。この導電性ペーストで作製した線幅0.4mmの回路を、印刷面を内折りにして指折りで5回折り曲げたところ、ほとんど抵抗値の上昇はなく、良好な耐屈曲性であった。また、このペーストは、良好な電磁波シールド性を有した。
【0047】
実施例.2〜4
実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0048】
比較例1〜4
実施例1と同様に作成した。結果を表3に示す。
【0049】
本発明の導電性ペーストは良好な導電性、密着性、耐屈曲性などの基本物性を有し、従来のAgペーストと比較して非常に優れた耐マイグレーション性を有している。さらには、Ag含有量を大幅に低減できるので、低コストで省資源である。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の導電性ペーストは良好な導電性を有し、さらには耐マイグーション性を大幅に向上できる。さらにはローコストで優れた回路材料を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】耐マイグレーション評価用のテストパターンである。
【符号の説明】
【0055】
1.PETフィルム
2.スクリーン印刷パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)、及び有機樹脂(B)を含む導電性ペースト。
【請求項2】
貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)において、コア成分がアルミナであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
貴金属で表面コートしたリン片状無機微粒子(A)のレーザー光散乱法で測定した平均粒子径が0.5〜50μmであり、かつアスペクト比が2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
さらにカーボンブラックおよび/またはグラファイト微粉末を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
有機樹脂(B)が、分子量3000以上のポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂(C)を含むことを特徴とする1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
全ジカルボン酸、グリコール成分の合計をそれぞれ100モル%としたとき、ポリエステル樹脂及び/または変性ポリエステル樹脂(C)が、酸成分として芳香族ジカルボン酸及び/または脂環族ジカルボン酸を50モル%以上、かつグリコール成分としてネオペンチルグリコール、炭素数5〜10の脂肪族ジオールから選ばれる少なくとも1種以上を20モル%以上共重合されていることを特徴とする請求項5に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
有機樹脂(B)が、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項8】
さらに、有機樹脂(B)と反応し得る硬化剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ペーストが基材上に印刷されていることを特徴とする印刷回路。

【図1】
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