説明

導電性ペースト組成物およびその製造方法

【課題】高い導電性、ならびに透明導電膜に対する良好な接着性、低い接触抵抗を備えるとともに耐湿性、耐候性に優れた高い信頼性を有する電極等の配線パターンを形成することのできる導電性ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】バインダー樹脂、溶剤、および銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有する導電性ペースト組成物であって、前記バインダー樹脂はフッ素原子の含有量が40質量%を超えて〜75質量%以下のフッ素樹脂を含有することを特徴とする導電性ペースト組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペースト組成物に関する。より詳しくは、電極または電気配線の形成に好適に使用される導電性ペースト組成物であって、太陽電池、タッチパネル、EL素子に利用されるフィルム、基板等の、透明導電膜を設けた基材に対して好適に用いることが出来、該基材上に塗布または印刷して塗膜を形成し、これを加熱硬化させることにより、優れた接着性と導電性を備えた導電性パターンを形成し、また信頼性の良好な電極を形成することのできる導電性ペースト組成物およびその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセント素子はITO(インジウムスズ酸化物)を蒸着した透明電極上に発光層、誘電層を順次設け、透明電極層および誘電層に導電性ペーストを塗布して引き出し電極を形成している。
また、太陽電池においては、たとえば結晶シリコン基板のような半導体基板の受光面に、半導体層、ついで必要に応じてITOのような透明電極、光反射防止膜などを設け、反対側に裏面電極を設けて、太陽光によって半導体層に生じた電位を両電極より取出している。また別の例では、ガラス等の透明基板に、透明電極層、非晶質半導体層、裏面電極および必要に応じて保護層を設けて太陽電池を形成している。更に別の例としては、ガラス等の透明基板に設けた透明電極(フッ化スズ酸化物)層、単分子色素を吸着したチタニアナノ粒子積層膜、およびヨウ素系レドックス電解質から構成される色素増感型太陽電池があげられる。
【0003】
これらの透明電極層から電位を引き出す集電電極の形成は導電性ペーストをスクリーン印刷により形成する方法が簡便であり、加熱硬化により導電性パターンを形成する方法が広く利用されている。しかし、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性ペーストを用いて形成される電極や電気配線等には、より低抵抗でより信頼性が高いことが要求され、その要求は年々厳しくなっている。また、導電性ペーストを用いてアモルファスシリコン層を有する太陽電池の集電電極を形成する場合のように、高温処理により特性が劣化するような電子部品等に導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、銀などの導電性金属粉末とエポキシ樹脂またはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する導電性ペーストを電子部品等に印刷し、これを比較的低温で加熱硬化する方法が行われている、そして、ペーストの接着性、導電性、および透明導電膜との接触抵抗が変換効率に与える影響が大きいことから、より変換効率を上げるために、低温下における加熱硬化でありながら、接着性に優れ、より低抵抗で、且つ低接触抵抗であることが要求されている。また、長期使用時や、特に太陽電池用の集電電極として用いられた場合の耐候性を確保するため、良好な耐水性、耐光性が要求されている。
【0004】
このような要求に応えるべく、透明導電膜への良好な密着性を示し、低抵抗で接触抵抗が低い導電性ペーストとして、次に説明するものが提案されている。
すなわち上記問題を解決する方法として、導電性ペーストのバインダー樹脂としてエポキシ樹脂を用いて高密着性の実現を図り、ブロック化ポリイソシアネート化合物および硬化剤との混合により、硬化熱収縮による銀粉同士の接触点の数を増加させて低抵抗を得る方法(特許文献1参照)が開示されている。また、基本的に同様の考えに基づくが、導電性粉末とバインダー樹脂としてシリコーン樹脂を用い、さらに特定の範囲のエポキシ等量を有するエポキシ樹脂を熱硬化成分として用い、さらに硬化剤と、溶剤とを含有した導電性ペースト組成物が開示されている(特許文献2参照)。
これら文献に記載の導電性ペーストにおいては、エポキシ樹脂の使用によって基材への接着性向上は達成するものの、さらに透明導電膜に接着性を持たせるには、銀粉重量に対するエポキシ樹脂重量を増加させる必要があり、比抵抗が増加する問題が生じる。特に特許文献2には、熱硬化性成分とシリコーン樹脂成分とを巧みな比率で配合することにより、硬化収縮の際に発生して残存する内部応力が緩和され、その結果エポキシ樹脂による接着性に耐湿性を持たせ得ることが開示されている。しかしながら本文献においては、あくまでガラス基板上への接着性、及び接触抵抗の減少を解決すべき課題としており、透明導電膜上への接着性、及び接触抵抗については一切述べられていない。
【0005】
さらに、透明導電膜上に設ける太陽電池用導電性ペーストにフッ素樹脂系の熱硬化性樹脂を用いることが提案されている(特許文献3)。
本文献によれば、フッ素樹脂系の熱硬化樹脂としては、たとえば分子中に活性水素原子を有する含フッ素樹脂を、加熱によりイソシアナト基を生ずる化合物で硬化させるものであり、使用するフッ素樹脂の固形分中のフッ素原子が3〜40重量%が好ましいとされている。3重量%未満では耐水性が低下するため耐候性が低く、40重量%を越えると、溶媒に対して不溶になり、たとえ懸濁状態で使用するとしても、精度よくファインパターンを形成することが困難になる。また、本文献におけるようにイソシアネート基を生ずる化合物で硬化させる場合、透明導電膜への接着性は改善されるものの、体積抵抗率が上昇する傾向があることが判明している。さらに本文献の方法では、耐候性は向上するものの依然としてその特性が不十分で、過酷な自然条件を想定した耐候性試験においては接着強度を維持できなかった。さらに樹脂系を工夫して硬化収縮による内部応力を緩和しても、イソシアネート基を生ずる化合物との反応硬化による内部応力の発生により、耐候性試験下における透明導電膜への接着性は大幅に低下する。
一方、良好な導電性の実現のためには、導電性粒子をより少ない樹脂バイダー中に良好に分散させる必要があり、高い剪断力をかけてバインダー樹脂と導電性粒子を混練するプロセスが有効と考えられる。しかしフッ素含有率の高いフッ素樹脂のように反応性の高い樹脂については、金属粉の微粒子、例えば銀粒子と高剪断力下で直接混練すると火災、爆発の危険性があり、製造工程における生産性を向上させる障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−161123号公報
【特許文献2】特開2007−224191号公報
【特許文献3】特開平7−15022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来の技術の有する上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、比較的低温の焼成で硬化可能であり、高い導電性、ならびに透明導電膜に対する良好な接着性、低い接触抵抗を備えるとともに耐湿性、耐候性に優れた高い信頼性を有する電極等の配線パターンを形成することのできる導電性ペースト組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、透明導電膜上に塗布、乾燥して導電膜からなる配線パターンを形成したときに、比較的低温の焼成で硬化可能であり、高い導電性、透明導電膜に対する良好な接着性、低い接触抵抗を備えるとともに、耐湿性、耐候性に優れた高い信頼性を有する配線パターンを形成することのできる導電性ペースト組成物の製造方法であって、しかも生産性が高く安全な製造方法を提供することである。
さらに本発明の目的は、太陽電池セル、エレクトロルミネッセント素子、およびタッチパネル用等の導電性ペースト組成物として、比較的低温の焼成条件で透明導電性膜上に電極用の塗膜を形成し、あるいは内部配線用の塗膜の形成が行われたときに、形成された塗膜による電極や配線の高い導電性と良好な耐湿性、耐候性、透明導電性膜との良好な接着性、低い接触抵抗を実現できる導電性ペースト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、フッ素樹脂、溶剤、および銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有し、前記フッ素樹脂は固形分中のフッ素原子の含有量が40質量%を超えて〜75質量%以下であることを特徴とする導電性ペースト組成物を提供する。電極が優れた接着性と耐候性を有し、長期間の使用中における電気、機械的物性が低下しないためには、フッ素樹脂の場合、固形分中のフッ素原子が40質量%を超えて75質量%以下であることが必要であり、50〜75質量%であることが好ましく、60〜75質量%であることが一層好ましい。

更に、本発明は銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を、界面活性剤とともに分散用溶液中に分散させて分散液を作製する分散工程、および前記分散液を乾燥させる乾燥工程を経て、前記銀、または銀化合物を主成分とする導電性粉末を表面処理し、前記銀、または銀化合物を主成分とする導電性粉末と、固形分中のフッ素原子が40質量%を超えて75質量%以下のフッ素樹脂とを含む混合物を、溶剤中に分散させることを特徴とする導電性ペースト組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性ペースト組成物は、固形分中のフッ素原子の含有量が40質量%を超えて75質量%以下のフッ素樹脂を含有しているため、比較的低温による焼成によって塗膜を形成するにもかかわらず、透明導電膜に対する良好な接着性、低い接触抵抗を有しており、また優れた耐湿性、耐候性を有しているため、良好な接着性、低い接触抵抗が長期に安定的に保持されうる。従って過酷な使用環境下にあっても信頼性の高い導電性膜、配線パターンを形成することが可能である。特に戸外に長期に渉って設置される太陽電池の電極形成用導電性ペーストとしての適用は、優れた耐候性、耐湿性を利用でき最適と考えられる。
さらに本発明の導電性ペースト組成物の製造方法としては、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を、界面活性剤とともに分散用溶液中に分散させて分散液を作製する分散工程、および前記分散液を乾燥させる乾燥工程を経て、前記銀、または銀化合物を主成分とする導電性粉末を表面処理し、しかるのちに前記銀、または銀化合物を主成分とする導電性粉末と、固形分中のフッ素原子が40質量%を超えて〜75質量%以下のフッ素樹脂とを含む混合物を、溶剤中に分散させて製造する製造方法を用いることができる。
界面活性剤で表面処理された銀または銀化合物を主成分とする導電性ペーストは、活性の高いフッ素樹脂と導電性粉末の反応で、ペーストの硬化時に導電性粉末の融着が進行しやすく、導電性が向上しやすい、しかも導電性粉末が予め界面活性剤で表面処理されているため、フッ素樹脂の添加量を低減しても、分散性、保存安定性の良好な導電性ペーストを作製することが可能である。このため導電性ペースト中の銀または銀化合物を主成分とする導電性粉の比率を高く保つことができ、導電性の良好な導電性ペーストを作製することができる。
さらに本発明の導電性ペースト組成物の製造方法において、活性の高い銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の表面が、予め界面活性剤で表面処理されると、導電性ペースト組成物の製造時に仮にフッ素樹脂と共に高い剪断力で混練されたとしても、発火等の危険を招く恐れがない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電性ペースト組成物はバインダー樹脂としてのフッ素樹脂、溶剤、および銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有し、前記フッ素樹脂は固形分中のフッ素原子が40質量%を超えて75質量%以下であることを特徴とする導電性ペースト組成物である。本発明の導電性ペースト組成物を構成するバインダー樹脂はフッ素樹脂であることが好ましく、フッ素樹脂のみからなることがさらに好ましい。以下、本発明の導電性ペースト組成物に使用される各種原料について詳細に説明するとともに、それらを用いた本発明の導電性ペースト組成物を作製する好ましい製造方法について、各工程を詳細に説明し、必要に応じて各工程において使用する各種材料についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の導電性ペースト組成物にバインダー樹脂として使用しうるフッ素樹脂は、フッ素化された炭化水素ポリマーであり、フッ素原子の含有率は40質量%を超えて75質量%以下である。フッ素原子の含有量としては50質量%〜75質量%が好ましく、60質量%〜75質量%が特に好ましい。フッ素樹脂は活性が高い。このためペーストの焼成時には、銀及び銀化合物を主体とする導電性粉末とフッ素樹脂との特有の反応から、銀または銀化合物粒子同士の融着が発生しやすいと考えられ、フッ素原子含有量が高いほどその傾向が著しくなると考えられる。また、フッ素原子の含有量が40質量%以下であると、耐候性が低下する傾向がある。一方フッ素原子の含有量が75質量%を超えると通常は溶解性が低下するため、導電性ペーストが均一な塗膜を形成できなくなる傾向にある。フッ素樹脂はフッ素化された一種のオレフィンを重合しても得られるが、CF単位からなる剛直なポリマー構造を有する硬い樹脂に異種コモノマーを導入し、規則的な構造を乱して柔軟な構造を有する熱可塑性フッ素樹脂としたものが好ましい。本発明で使用するフッ素樹脂の具体例としては、ビニリデンフロライド、ヘキサフロロピロピレン、テトラフロロエチレン、パーフロロメチルビニルエーテル等のフッ素系モノマーを2種以上共重合させたもの、あるいはこれら少なくとも1種以上のフッ素系モノマーの組合せに、必要に応じて炭化水素系モノマーを加えた共重合体があげられる。この樹脂にはゴム弾性、あるいは接着性をさらに付与させるために加硫剤、イソシアネート官能基を有するポリマー、カップリング剤等を加えてもよい。
本発明の導電性ペースト組成物におけるフッ素樹脂の配合量としては、配合量が少ないほど体積抵抗率、及び接触抵抗は低くなるが、逆に基体への接着強度が低下する。このため、導電性ペースト組成物を印刷して、電極や導電性の配線パターンを形成するべき基体、およびその使用目的によって、双方の特性のバランスを勘案して調整することが必要である。本発明で使用する、フッ素原子含有率が40質量%を超えて70質量%以下のフッ素樹脂を用いることにより、体積抵抗率、接触抵抗は従来使用されていた樹脂を用いた場合よりも下がる傾向にあり、また接着強度は向上する傾向にあるため、従来の導電性ペーストより低い抵抗率を維持しつつ、接着強度を低下させないことが可能であると考えられる。通常、電極や配線パターンの作製に用いられる場合には、樹脂/導電性粉末の比率で0.05〜0.50の範囲が好ましく、0.05〜0.30の範囲がより好ましく、0.05〜0.10の範囲がさらにより好ましい。最適比率は導電性粉末である銀粒子の粒径に依存しており、粒径が大きくなれば該比率を下げる方が好ましく、粒径が小さくなれば該比率を上げる方が好ましい。
【0012】
従来、耐水性、耐候性を向上させるためには、外界からの遮断性を重視して例えばシール剤等には熱硬化性のフッ素樹脂が使用される。このため架橋性の官能基を導入するために、例えば水酸基含有のビニルエーテルを上記フッ素系モノマーと共重合させたフッ素樹脂を用い、イソシアネートによって架橋させることが行われているが、このような場合、多くはフッ素原子の含有量自体が40質量%以下へと低下して、耐水性、耐候性の向上を達成することが逆に困難となる。また硬化時の内部応力の発生により基体との接着力、接触抵抗が低下しやすい。
一方、例えば本発明の実施例で用いたような、通常は加硫剤を加えてフッ素ゴムとして用いられる、2元系以上の共重合体からなるフッ素樹脂、例えばビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体等は、ゴム成分による粘着性を有しているため、基体との密着性が良好で接触抵抗も低下させることができる。これらの共重合体を未架橋で用いることが良好である。さらに前述のような共重合体はフッ素原子の含有量も容易に40質量%を超えるため、耐水性、耐候性についてもより優れた特性を示す。具体的な製品名としては、ダイニオンFC−2211(住友3M社製)、バイトンA−500(デュポン社製)等をあげることができる。
なお本発明の導電性ペースト組成物のバインダー樹脂としては、フッ素原子の含有量が40質量%を超えて75質量%以下であるフッ素樹脂の他に、本発明の導電性ペースト組成物の特性を著しく低下させない範囲で他の樹脂を含有させてもよい。このように樹脂を混合させた場合にあっても、樹脂の全固形分中のフッ素原子の含有量は40質量%を超えて75質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の導電性ペースト組成物に使用される溶剤としては、フッ素樹脂の溶解性が良好で、均一な塗膜を作製可能な導電性ペーストを形成しうる溶剤を使用することが好ましい。フッ素樹脂のフッ素原子含有量が40質量%を超える場合は、樹脂の溶解性が低下するために溶剤の選定は極めて重要となる。好適に使用できる溶剤の具体的としては、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン系溶剤や、4−ブチロラクトン、酢酸ブチル、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートをあげることができる。メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、2−ブトキシエチルアセタート(ブチルセルソルブアセタート)、4−ブチロラクトン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが特に溶解性が高く好ましい。これら溶剤から選択される1つ又は2つ以上の溶剤の組み合わせを用いることにより、フッ素樹脂のフッ素原子含有量が40質量%を超える場合であっても、それらの溶解性、分散性を維持し、均一な印刷塗膜を形成可能な導電性ペーストを製造することが可能となる。
なお、これら上記の溶剤に、通常の塗料用溶剤として使用される溶剤を添加して用いることも出来るが、少なくとも50質量%は上記溶剤から選択される1種または2種以上の組み合わせから構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明で使用する銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末としては、銀または銀化合物を全導電性粉末の質量の50質量%より多く含有するものが好ましく、70質量%以上含有するものがより好ましく、85質量%以上含有するものがさらに好ましく、95質量%以上含有するものがさらにより好ましい。そして銀または銀化合物のみからなるものが最も好ましい。導電性粉末中で銀またな銀化合物と併用される金属粉末としては、一般的な導体として扱われる金属の粉末は全て利用することができる。例えばニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、プラチナ、パラジウム、タングステン、モリブデン等、及びこれら2種以上の合金、あるいはこれら金属の化合物で良好な導電性を有するもの等が挙げられる。
導電性粉末が銀または銀化合物のみからなる粒子の場合は、安定した導電性を実現し易く、また熱伝導特性も良好なため最も好ましい。
【0015】
本発明で使用する銀粒子としては、純銀粒子、銀化合物粒子、銀で表面被覆された金属粒子、またはこれらの混合物を用いることができる。これら銀粒子としては、粒子形状が、球状、鱗片状、針状、樹枝状など任意の形状のものを用いることができる。銀粒子の製造方法も特に制限されず、機械的粉砕法、還元法、電解法、気相法など任意である。銀で表面被覆された金属粒子は、銀以外の金属からなる粒子の表面に、めっきなどの方法により銀の被覆層を形成したものである。例えば、銅粒子の表面を銀で被覆したものなどが市販されている。銀粒子としては、導電性とコスト面から見て、銀のみからなる球状銀粒子及び鱗片状銀粒子が好ましい。
球状銀粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm程度である。鱗片状銀粒子の場合は、鱗片の面の長径が0.05〜100μmの範囲が好ましい。
銀粉末として、体積平均粒径が異なる大小2種類またはそれ以上の粒子を組み合わせて、銀粒子の充填密度を向上させることにより、導電性膜の導電性を向上させてもよい。
【0016】
銀化合物粒子としては、酸化銀や、脂肪族カルボン酸銀、脂環式カルボン酸銀、芳香族カルボン酸銀等の含銀有機化合物の粒子等を使用することができる。これらの銀化合物粒子(粒子状銀化合物)は、工業生産されたものを用いることができるほか、銀化合物を含む水溶液からの反応によって得られたものを用いてもよい。特に、平均粒径が0.5μm以下の銀化合物粒子を用いると還元反応の速度が速くなり好ましい。平均粒径が0.5μm以下の銀化合物粒子は、銀化合物と他の化合物との反応によって生成したものを用いることができ、例えば硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を撹拌下に滴下し、反応させて酸化銀粒子を得る方法によって製造したものを用いることができる。
本発明の導電性ペースト組成物及び導電性ペースト組成物の製造方法においては、低温焼成導電性ペーストを作製したときに、含有される銀ペーストの加熱によって銀粒子が融着する焼成温度を300℃以下にし得る銀または銀化合物の粒子を用いることが好ましい。焼成温度がこのように低い低温焼成型の導電性ペーストは、例えばポリイミドフィルムやPETフィルム上に形成された配線パターンをそのまま焼成することが可能となる。一般に導電性ペースト中に導電性粒子が微細に分散されていればされているほど、導電性ペーストの熱容量が低下して、導電性ペーストの焼成温度が導電性粒子自体の固有の焼結温度に近くなる。さらに導電性粒子が微細に分散されるに従ってその充填密度が向上するため、一般に高分散であるほど焼成後の導電性が良好となる。
【0017】
焼結温度の低い銀粒子としては、体積平均粒径が0.05〜10μmの銀粒子を用いることができる。銀粒子の体積平均粒径は0.05〜5μmのものを使用することが一層好ましい。本発明の導電性ペーストの製造方法で使用する表面処理方法では、液相中で銀粒子または銀化合物粒子を製造した場合に、これら体積平均粒径が小さく活性の高い粒子を効果的に表面処理することができ、しかも、それら粒子が製造されたときの液相中に分散したままの状態で、界面活性剤を添加し該界面化成剤の存在下で銀または銀化合物の粒子を表面処理することができる。そのため、活性の高い粒子表面を大気中に露出させずに処理が容易であり、処理済みの銀または銀化合物粒子をフッ素樹脂と安全に混合することができ、これら焼結温度の低い粒子本来の特性を充分に発揮させることができる。銀の微粒子の製造方法としては例えば、ガス中蒸発法(特開平3−34211号公報)や、還元にアミン化合物を用いる還元析出法(特開平11−319538号公報)がある。
【0018】
さらに、焼結温度の低い銀粒子としては、結晶化度の低い銀粒子を用いることができる。銀粒子の結晶化度が低いと通常結晶子径は小さくなる。そのため、結晶化度を低くし結晶子径を小さくすることで、銀粒子間の融着温度(焼結温度)を著しく低下させることができる。銀ペーストの焼成可能温度を300℃以下に低下させるには、結晶子径は0.1〜20nmとすることが好ましく、0.1〜10nmとすることが一層好ましい。
【0019】
また、焼結温度の低い銀または銀化合物の粒子として、粒子の一部が酸化銀処理された銀粒子を用いることができる。酸化銀処理された銀粒子は、銀粒子の表面の部分的な酸化処理により銀粒子の表面を銀から酸化銀へと酸化する方法のほか、銀粒子の表面上に酸化銀の層を被覆形成する方法などによって得ることができる。
銀粒子表面の酸化処理により、粒子表面の銀は酸化第1銀、酸化第2銀、などに酸化される。粒子表面が酸化銀で被覆された銀粒子において、粒子表面の酸化銀は、酸化第1銀、酸化第2銀、などが混合した状態にあってもよい。これら粒子表面が酸化銀で被覆された銀粒子は、還元剤不存在下または還元剤存在下の還元反応で表層の酸化銀が銀となり、低温度で隣接する粒子同士が融着する。表面が酸化銀処理された銀粒子は、還元反応条件;加熱温度、還元剤の有無、還元剤の還元力などに応じて、組成、形状の異なったものを適宜選択することができる。酸化銀処理された銀粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm程度である。特に、平均粒径が0.05〜0.5μmの粒子を用いると還元反応の速度が速くなり好ましい。
【0020】
酸化銀で表面処理された銀粒子を用いると、酸化銀から銀への還元に伴って放出された酸素により粒子の周囲の有機物が酸化され、発熱が得られるため、銀粉及び銀ペーストの見掛けの焼成温度を下げる効果が得られる。そこで、酸化銀で表面処理された銀粒子の酸化銀含有率は1質量%以上(銀含有率99質量%以下)が好ましく、酸化銀含有率は5質量%以上(銀含有率95質量%以下)が特に好ましい。また、銀粒子の融着を容易にする観点からは、粒子の内部に一定量の金属銀を有することが望ましく、酸化銀含有率は30質量%以下(銀含有率は70質量%以上)が好ましく、酸化銀含有率は20質量%以下(銀含有率80質量%以上)が特に好ましい。酸化銀で表面処理された銀粒子の酸化銀含有率の好ましい範囲は1〜30質量%、より好ましい範囲は5〜20質量%である。
【0021】
本発明の導電性ペースト組成物を製造するには、上記のフッ素樹脂、及び銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を、既述の配合量範囲で配合し、さらに、必要に応じて各種添加剤を任意構成成分として添加した混合物を、撹拌、分散、あるいは、必要に応じて前処理として混練を行ってペースト化し製造することができる。
【0022】
本発明の導電性ペースト組成物の構成成分の混合物をペースト化するために使用しうる混練、分散手段としては、例えば、二本ロール、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられ、これらを用いて混練、分散することができる。
【0023】
このように本発明の導電性ペースト組成物を構成する成分を、上記装置を用いて一度に混合して混合物を作製し、それらの混練、分散を行っても良いが、分散が困難な場合、それらの構成成分の一部に対しては、分散性を高めるために予め前処理を施し、あるいはこれらの材料を予め混練、分散した分散体を作製しておき、その後、該分散体を残りの他の構成成分と混合して、本発明の導電性ペースト組成物を作製してもよい。特に、本発明において使用する導電性粉末の中でも、銀粒子は比重が高く分散処理に困難を伴うので、このように分散性を高める手法を用いることが好ましい。
【0024】
分散性を高める手法として本発明で用いる導電性ペースト組成物の製造方法においては、導電性粉末を予め良好に表面処理して用いることができる。このように予め導電性粉末の表面処理を行っておくことによって、樹脂被覆を良好に進行させることが可能であり、少ない樹脂によって導電性粉末の分散を安定化させることが可能であるため、ペーストの抵抗率を低下させる効果がある。また特にフッ素原子の含有量の高いフッ素樹脂を、銀または銀化合物を主成分とする活性の高い導電性粉末と高剪断力下で混練を行う場合に、発火の危険性がなく製造上の安全性が高い。
さらに導電性粉末の表面処理を予め行うことによって、表面状態を安定させ、またその表面状態の制御を通じて導電性ペーストの粘度、流動性、チキソ性等、該ペーストの印刷に係わる物性を制御することができる。
【0025】
本発明の導電性ペースト組成物及び導電性ペースト組成物の製造方法においては、銀または銀化合物の粒子を表面処理した銀含有粉末を用いることにより、分散性に優れかつ導電性の良好な銀ペーストを製造することができ好ましい。特に、焼結温度の低い銀または銀化合物の粒子、例えば超微細な微小粒径の銀または銀化合物の粒子、結晶性の低い(結晶子径の小さな)銀または銀化合物の粒子、酸化銀処理した銀粒子にたいして表面処理を適用した場合には一層好ましい。これら銀または銀化合物の粒子は、もともと従来の高温焼成型の導電性ペーストよりはるかに低温で焼成可能で(焼成可能温度が低く)、かつ焼成後に良好な導電性を有する配線パターンを形成することが可能であるが、それに加え、表面処理を行うことにより、該銀含有粉末を用いた銀ペーストは、樹脂成分を低減でき、銀または銀化合物の粒子を被覆する樹脂の膜厚が薄いため、焼成後に隣接する銀または銀化合物の粒子同士が一層容易に融合しやすい。
このように、界面活性剤による表面処理に供される銀または銀化合物の粒子として、焼結温度が300℃以下の低温焼結タイプの銀または銀化合物の粒子を用いると、その本来の低温焼結性を充分に発揮させてフッ素樹脂と混合させ低温焼成型の銀ペーストを得ることができ、また銀ペーストとして焼成後に導電性の良好な配線パターンを得ることができる。
【0026】
特に上述の酸化銀処理された銀粒子に対して、本発明の導電性ペースト組成物の製造方法で使用した表面処理方法を適用することが好ましい。このような方法を用いることによって、良好な導電性を有する焼成温度の低い銀ペーストを製造出来、また乾燥時には非常に還元しやすい性質を持つこれら粒子、また活性の強いフッ素樹脂をこれら粒子と混合して作成した銀ペーストを安定に保存することができる。
【0027】
以上のように、本発明で使用する銀及び銀化合物を主成分とする導電性粉末は、予め界面活性剤で表面処理を行ったものを使用することによって、導電性ペーストの良好な特性を実現させることができる。また製造工程上も分散がより行いやすく有利である。
【0028】
これら銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末に対する前処理である表面処理は公知の方法で行うことが出来るが、導電性粉末等と界面活性剤を前処理のための分散用の溶媒に分散する分散工程で、導電性粉末の分散液を作製後、該分散液を乾燥させる乾燥工程で溶剤を揮散させて行う方法を用いることが好ましく、乾燥工程で真空凍結乾燥法を用いることが特に好ましい。
上記の方法を用いると、特に、この導電性粉末が液相中で製造された場合、これら活性の高い導電性粉末等を効果的に、しかも場合により、それら導電性粉末等が製造されたときの液相のままで界面活性剤を添加し表面処理することができるため、処理が容易な上、これら導電性粉末等の本来の特性を充分に発揮させることができ好ましい。
【0029】
本発明の導電性ペースト組成物の製造方法で、フッ素樹脂とともに使用される銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の、表面処理に使用する界面活性剤としては、通常使用される多くの種類の界面活性剤の中から選択して用いることができ、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を例示することが出来る。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、アルケニルコハク酸塩、アルカンスルフォン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのリン酸エステルおよびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルのリン酸エステルおよびその塩、等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、等が挙げられる。
【0030】
これらの界面活性剤の中で、本発明の導電性ペースト組成物の製造方法に特に好適に用いることができるものとして、非イオン系界面活性剤であるアルキルミン系の界面活性剤、カチオン系界面活性剤であるアルミルアミン塩系の界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤であるリン酸エステル系の界面活性剤、が挙げられ、本発明においてはこれらの界面活性剤から選択される1つ、または2つ以上の組み合わせを用いることが好ましい。
【0031】
(アルキルアミンおよびアルキルアミン塩の界面活性剤)
本発明でフッ素樹脂とともに使用される、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の表面処理に使用される界面活性剤としては、アルキルアミンおよびアルキルアミン塩を好適に用いることができる。アルキルアミン系の非イオン性界面活性剤、およびアルキルアミン塩系の陽イオン性界面活性剤はそれぞれ単独で使用しても有効であるが、特に併用することによって分散性がより良好となり効果が顕著である。
アルキルアミン系の界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルアミン型の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルアミン型の界面活性剤がさらに好ましい。中でも以下の一般式(1)を有するものがさらに好ましい。
【0032】
【化1】

(1)
(a,bはそれぞれ1〜20の整数であり、Rは炭素数8〜20のアルキル基またはアルキルアリール基を表す。)
【0033】
一方アルキルアミン塩系の界面活性剤としては、アルキルアミンの酢酸塩が好ましく、中でも以下の一般式(2)を有するものがさらに好ましい。
【0034】
【化2】

(2)
(Rは炭素数8〜20のアルキル基またはアルキルアリール基を表す。)
【0035】
一般式(1)及び一般式(2)において、炭素数8〜20のアルキル基としては、直鎖アルキル基でも分枝アルキル基でもよく、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ラウリル基、テトラデシル基、ミリスチル基、ヘキサデシル基、セチル基、オクタデシル基、ステアリル基、エイコシル基などが挙げられる。炭素数8〜20のアルキルアリール基としては、例えばオクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基などのアルキルフェニル基が挙げられる。アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖アルキル基でも分枝アルキル基でもよい。
【0036】
非イオン性界面活性剤であるアルキルアミン系界面活性剤および陽イオン性界面活性剤であるアルキルアミン塩系界面活性剤を単独、または混合して使用するときの、銀または銀化合物の粒子に対する界面活性剤の全配合量は、銀または銀化合物の粒子の種類により適宜調整する必要があるが、例えば銀または銀化合物の粒子100質量部に対して0.01〜3.00質量部が好ましく、0.05〜1.50質量部が更に好ましい。界面活性剤の全配合量が0.01質量部以上であると、充分な分散性が得易くなる傾向がある。一方、3.00質量部以下であると、銀または銀化合物の粒子の表面が界面活性剤の有機成分に被覆されたときの被覆層の厚さが厚くなりすぎず、乾燥後の粒子同士の接触が得易くなり、導電性が向上する傾向がある。
特に粉末粒子の一部が酸化銀処理された銀粒子を主成分として用いる導電性粉末を用いる時は、アルキルアミン系の界面活性剤とアルキルアミン塩系の界面活性剤とを併用することが好ましく、アルキルアミン系の界面活性剤とアルキルアミン塩系界面活性剤とを併用する場合は、アルキルアミン系とアルキルアミン塩系との混合比率は1:20〜1:5の範囲が好ましい。
【0037】
(リン酸エステル系の界面活性剤)
本発明でフッ素樹脂とともに使用される、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の表面処理に使用される界面活性剤として、リン酸エステル系の界面活性剤もまた好適に使用できる。特に導電性粉末に銀粉末を用いるときはより効果的である。
本発明において使用されるリン酸エステル系界面活性剤は、リン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステル等を主成分とする界面活性剤である。主成分としてのリン酸エステル系界面活性剤はポリオキシアルキレンアルキルエーテルのリン酸エステルであることが好ましく、以下の一般式(3)で表される化学構造を有することがさらに好ましい。
【0038】
【化3】

(3)
ただし式(3)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基またはアルキルアリール基を表し、nは1〜20の整数、xは1または2である。
【0039】
式(3)において、炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖アルキル基でも分枝アルキル基でもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ラウリル基、テトラデシル基、ミリスチル基、ヘキサデシル基、セチル基、オクタデシル基、ステアリル基、エイコシル基などが挙げられる。炭素数20以下のアルキルアリール基としては、例えばオクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基などのアルキルフェニル基が挙げられる。アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖アルキル基でも分枝アルキル基でもよい。
【0040】
なお、式(3)において、Rの炭素数は1〜10、nは1〜10、ならびに、Rの炭素数とnの和が7〜15であることが好ましい。リン酸エステル系界面活性剤の重量平均分子量は、100〜1万であることが好ましく、150〜5000であることが更に好ましい。本発明において使用されるリン酸エステル系界面活性剤のリン含有率(Pの含有量)は0.5%〜10%が好ましく、2%〜6%が特に好ましい。
さらに本発明の製造方法に用いるリン酸エステル系界面活性剤としては、HLBが10以上のものを用いるか、または塩基性化合物を添加して酸価を中和して用いることが好ましい。
【0041】
リン酸エステル系界面活性剤の種類と配合量は、導電性粉末の種類により適宜選択することができる。リン酸エステル系界面活性剤の例えば銀粉に対する配合量は、銀粉100質量部に対して0.01〜3.00質量部が好ましく、0.05〜0.50質量部が更に好ましい。界面活性剤が0.01質量部未満では、充分な分散性が得にくくなる傾向がある。一方3.00質量部を越えると銀表面が厚く界面活性剤の有機成分に被覆され、乾燥後の銀粒子同士の接触が得にくくなり、導電性が低下する傾向がある。
上記の界面活性剤は銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末と同時に溶剤に添加して、導電性ペーストの他の構成成分と混合、撹拌しながら、導電性粉末の表面に界面活性剤を吸着させてもその機能を発揮させることは可能であるが、特に導電性粉末の活性が高く、また使用する樹脂がフッ素樹脂のように活性の高いものである場合には、導電性粉末を予め界面活性剤で表面処理を行ってから溶剤中に添加するほうが、導電性粉末の表面に界面活性剤が強固に吸着し、導電性粉末と樹脂との混合時に発火等の危険性が無く好ましい。
【0042】
以下に界面活性剤によって予め導電性粉末の表面を処理する好ましい方法を記載する。
界面活性剤によって予め導電性粉末の表面を処理するには、乾式法によって行うことも可能であるが、表面処理の効率の点で湿式法が好ましく、例えば界面活性剤と導電性粉末を分散用溶剤に分散させた後、該分散用溶剤を乾燥させて界面活性剤を導電性粉末の表面に吸着させることによって行うことが好ましい。該乾燥方法としては真空凍結乾燥法を用いることがさらに好ましい。以下好ましい湿式法による表面処理の方法について詳細を記載する。
【0043】
(分散用の溶剤)
本発明の導電性ペーストの製造方法において、予め銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の表面を界面活性剤で処理するには、まず銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末と界面活性剤との混合物を分散用の溶剤中に添加し、攪拌機または分散機にかけて、導電性粉末の微細粉への解砕と界面活性剤との混合を行う。そして分散用溶液中に前記混合物を分散させる。
このように、例えば銀粉と、溶剤と、界面活性剤とを所望の割合で混合して、分散手段により分散させた銀粉の分散液を得る分散工程を経ることで、銀粉の表面に均一に界面活性剤を行き渡らせることができるが、次工程における乾燥を凍結乾燥で行う場合には、銀粉の分散液中の固形分濃度の範囲は、0.5〜80%が好ましく、特に、1〜50%が好ましい。
【0044】
ここで銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の分散に用いる溶剤としては、水、水溶性溶剤、または水と水溶性溶剤との混合物(水溶液)が用いられる。水溶性溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
これら溶剤はここに挙げたものに限定されるものではなく、その使用に際しては単独、或いは2種類以上混合して用いることができる。
使用可能な攪拌機または分散機としては、後述の公知の攪拌機または分散機の中から適宜選択して使用することができる。
【0045】
本発明に使用する導電性粉末に対する界面活性剤による分散処理は、前記溶剤に界面活性剤を配合して十分溶解させた後に、導電性粉末を配合することが好ましい。必要に応じて、界面活性剤の中和(例えばリン酸エステル系界面活性剤の場合は、アルカリ等によるリン酸エステル塩の生成)により溶剤への界面活性剤の溶解度を上げることができる。
配合後0.5〜4.0時間分散すると、銀粉等の導電性粉末が1次粒子へと解砕され、界面活性剤と導電性粉末とが吸着平衡に達する。
本発明において、リン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、分散液を酸性条件(例えばpH1〜3)とすることが好ましい。これにより、界面活性剤を介して、導電性粉末の粒子表面に界面電気2重層が生じ、分散安定性が向上する。
【0046】
前記溶媒中で、銀または銀化合物の粉末と界面活性剤とを充分に攪拌混合してのち、次工程の乾燥工程で該混合物から溶媒の除去を行う。
本発明の導電性ペースト組成物の製造方法においては、乾燥法として真空凍結乾燥を使用するときには、上記溶剤のなかから凍結し易い溶剤を選択して使用することが好ましく、その凝固点が−40℃以上であることが好ましい。
【0047】
(2)乾燥工程
分散工程の終了した、銀粉と界面活性剤を含有する分散液から、乾燥工程を経て溶剤の除去を行う。乾燥工程においては、界面活性剤が熱変化や化学変化を受けないものであれば公知の方法がいずれも適用できる。一例としては熱風乾燥であって、より具体的にはデカンテーション等によって銀粉濃度を高めた後、溶剤を揮散させる方法、濾過によって銀粉を濾別したのち乾燥させる方法、衝撃波による乾燥、スプレイドライ法、真空凍結乾燥法等があげられる。特に真空凍結乾燥法による乾燥方法は、分散液を高温にすることなく溶剤を昇華させるため、導電性粉末や無機微粒子が凝集することが少なく、また界面活性剤が偏在することも少ない点で好ましい。
【0048】
界面活性剤による導電性粉末の表面処理において、真空凍結乾燥法を使用する場合には、基本的に低温状態で凍結した分散液から、水系溶剤のみが昇華除去される。水系溶剤に溶出して失われる界面活性剤がないため、添加した界面活性剤のほとんど全てが処理後の導電性粉末中に残留する。界面活性剤は導電性粉末の粒子の表面付近に局在しており、水系溶剤のみが除去される真空凍結乾燥の実施時に、該界面活性剤が導電性粉末の粒子の表面に一様に吸着した状態で取り出せる可能性が高く、しかも、真空凍結乾燥以外の通常の方法にて水系溶剤を除去する時のように導電性粉末の粒子や表面処理された導電性粉末の粒子同士が凝集することがなく、極めて効率的な処理方法といえる。このように使用した界面活性剤全てが導電性粉末の粒子の表面に残留して、表面処理された導電性粉末を収率良く与えるため、界面活性剤の効果と使用量の関係を把握し易く、使用量に対する最適化が行いやすい。
界面活性剤の分子は、親水基側の末端で導電性粉末の粒子の表面に吸着するため、疎水基側の末端が粒子の外側を向く。これにより、バインダー樹脂との親和性が向上し、表面処理された導電性粉末の分散性が改善される。また、粒子同士の凝集が抑制され、1次粒子に分散された状態を持続することができる。
【0049】
凍結真空乾燥は、例えば、銀粉、水、及び界面活性剤を含む銀粉の分散液の場合は、大気圧で0℃以下に予備凍結し、理論上は0℃における水の蒸気圧4.5mmHg (=600Pa)を越えないよう真空度をコントロールすれば良い。乾燥速度、コントロールのやり易さを加味すれば1mmHg (=133.32Pa)以下の真空度を保ちつつ、その蒸気圧での融点(凝固点)まで、温度を上げて真空凍結乾燥を行うことが好ましい。
このように真空凍結乾燥による乾燥方法では、液体分を真空中で昇華蒸発させ、乾燥するため、乾燥による収縮がわずかであり、被乾燥物の組織や構造が破壊しにくい。また、熱風乾燥のように、高温で試料内での例えば水などの液体成分の移動による乾燥ではなく、固体の凍った状態で低温乾燥するため、液体成分の移動を伴う乾燥のような部分的成分濃縮、部分的成分変化、変形がほとんど無く好ましい。
【0050】
上記の銀または銀化合物を主成分とする導電性ペースト、または上記の前記分散工程と乾燥工程によって界面活性剤が表面に吸着した銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を用いて導電性ペースト組成物を製造するためには、例えば前記導電性粉末または表面処理済みの導電性粉末と溶剤と、バインダー樹脂である固形分中のフッ素原子が40質量%を超えて〜75質量%以下のフッ素樹脂とを混合して、既述の適当な分散機を用いて銀または銀化合物の粉末を含む混合物を分散させる。
前記銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末、または前記分散工程と乾燥工程で界面活性剤により表面処理された銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末は、既述の溶剤と混合されるとともに、バインダー樹脂であるフッ素樹脂等を添加され、あるいは予めフッ素樹脂を溶解した溶剤等と混合されて分散され、また基体への印刷性、接着性を付与されて導電性ペースト組成物に調整され使用される。
前記バインダー樹脂の使用量は、銀粉等の導電性粉末100質量部あたり0.01〜30質量部の範囲が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、5〜10質量部が最も好ましい。
また、溶剤の使用量は塗布方法、印刷方法により異なり、使用する印刷方法に応じて適宜使用量を選択すればよい。通常は導電性ペーストの固形分が50〜95質量%となる範囲で適宜調整される。
【0051】
通常バインダー樹脂、溶剤、導電性粉末を用いて導電性ペースト組成物を作製するには、前記混練装置または分散装置を用いて、上記導電性ペースト組成物の材料を含む混合物の混練または分散を行う。しかし前記分散工程および乾燥工程によって界面活性剤で表面処理された導電性粉末(例えば銀粉末)を原料とすれば、使用する際に、溶剤もしくは溶剤とバインダー樹脂とを用いて攪拌等の簡単な分散処理をするだけで、導電性ペースト組成物(例えば銀ペースト)が得られる。従ってバインダー樹脂を含めた導電性ペーストの配合に自由度が大きく、導電性粉末の分散性を維持しつつバインダー樹脂の添加量を低減することが可能である。
この場合の樹脂の樹脂/導電性粉末の質量比は0.5以下が好ましい。本発明の導電性ペースト組成物の製造方法における塗料化の工程の段階では、導電性粉末が予め界面活性剤で良好に表面処理されているため、少ない樹脂量で導電性粉末を分散させることができる。
すなわち、印刷直前に添加溶剤、もしくは添加溶剤と添加結着剤の添加とそれらとの簡単な撹拌操作を行うことで、良好な銀ペースト等の導電性ペーストが得られるため、印刷装置に付随する塗料調整用設備は簡単なもので良い。
また、分散をより確実に行うために以下の分散機を用いて、通常の導電性ペースト組成物を作製するときと同様に、混練あるいは分散処理を行っても良い。
使用しうる分散手段としては、例えば、二本ロール、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等により、混練、分散することができる。
【0052】
分散が完了した分散液(本発明によって製造された導電性ペースト)は、ペーストとして公知慣用の塗布方法、または印刷法によって電子素子上または絶縁基板上に印刷し、これを加熱して導電性塗膜や導体回路を形成することができる。
塗布方法としては、種々の塗布方法により塗布物として形成することができる。例えば、ディップコート、あるいは公知のロール塗布方法等、具体的には、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含侵コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート等により電子素子や基体上に塗布物を形成することができる。
また、各種印刷方法を適用することも可能である。印刷法にはまた、凹版印刷のように最適粘度領域が比較的低粘度領域にあるものと、スクリーン印刷のように高粘度領域にあるものとが存在する。具体的には、スクリーン印刷方法、孔版印刷方法、凹版印刷方法、平版印刷方法などを用いて基体上に所定の大きさに塗布物を印刷することができる。
【0053】
本発明の導電性ペースト組成物は太陽電池用のシリコンウエハー、タッチパネル用フィルム、EL素子用ガラス等の各種基体上に直接、あるいは必要に応じてこれら基体上にさらに透明導電膜を設けたその膜上に、塗布または印刷して導電性の塗膜を好適に形成することができる。
ガラス、シリコンウエハー、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基体上に透明導電層を形成する透明導電膜としては、インジウム・スズ混合酸化物(ITO)、酸化スズ、フッ素・スズ混合酸化物(FTO)、酸化カドミウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、クロムなどの金属、導電性高分子などの導電性薄膜を用いることができる。中でも、透明性、比抵抗などの諸特性を考慮した場合、ITO、FTO、あるいはその複合化物を好ましく用いることができる。ITO膜、FTO膜、あるいはその複合化膜などの金属酸化物薄膜、金属薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、コーティング法、スプレイ法など公知の方法を用いることができる。成膜時の基板温度は、透明性、低抵抗化の程度、接着性、耐熱性、耐薬品性を考慮し適宜選択される。また、これら透明導電膜の組成比は、透明導電膜として要求される、表面抵抗値、比抵抗、透明性等によって決定される。透明導電膜の膜厚は、特に限定されないが、導電性と成膜時間の観点から、150〜5000Åの範囲から適宜選択されることが好ましい。
【0054】
透明導電膜を設けた基体上に本発明の導電性ペースト組成物を塗布もしくは印刷する場合、基体上に導電性ペースト組成物を用いて所定のパターンに印刷を行い、印刷物の乾燥後、加熱硬化処理を行うことができる。例えば、約160℃で約5分乾燥し、次いで150℃〜250℃の範囲の熱処理工程によってバインダー樹脂の硬化を行う。印刷物或いは塗布物の厚さは、印刷法によって異なるが、印刷物の湿時厚さが1〜20μmの範囲が好ましく、特に1〜10μmの厚さが好ましい。以上のようにして、例えば太陽電池用の各種集電電極あるいはタッチパネル用の引き出し電極を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例として、導電性粉末が銀粉である場合を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
以下に表1に実施例、比較例で使用するフッ素樹脂についてまとめて示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例1)
平均粒子径400nmの10%酸化銀処理した銀粉 50g
(三井金属社製 FHD 結晶子径10nmより小さい)
ココナットアミンアセテートの10質量%水溶液 5g
(アルキルアミン塩タイプの陽イオン性界面活性剤)、
ポリオキシエチレンココナットアルキルアミンエーテルの10質量%水溶液 0.5g
(アルキルアミンタイプの非イオン性界面活性剤)
水 50g
以上に加え、2mm径のジルコニアビーズ400gを容積250mlのポリ瓶に入れて混合し、回転機(ボールミル)を用いて4時間練肉して、銀粒子の分散液(a)を得た。
【0058】
この銀粉の分散液(a1)を底面の寸法200mmL×150mmWの平型トレイに100g移し、予備凍結乾燥した後、日本真空(株)製の「DFM−05AS」を用いて真空凍結乾燥を行った。予備凍結した銀粉の分散液(a1)を、あらかじめ約−40℃に冷却した棚にのせて、真空凍結乾燥機を用い、真空度7〜10Paで20時間の凍結真空乾燥後、嵩高のスポンジ状乾燥物として銀粉の表面処理物(b1)50gを得た。
次に、上記銀粉の表面処理物(b1)50gと、フッ素含有量65.9%の「ダイニオンFC−2211」(住友3M(株)製)3.5gを、ブチルセルソルブアセテートおよび2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの50:50混合溶媒6gに溶解したワニス溶液とを、250ccのポリ瓶に入れて混合し、振とう機(ペイントコンディショナー)を用いて0.5時間混合攪拌して、銀ペースト(B1)を得た。
【0059】
(測定方法)
上記のように作製した導電性ペースト組成物に対して以下の方法でその特性の評価を行った。
(1)スクリーン印刷適性
スクリーン印刷機LS−34TVAを用いて、厚さ約50μmのPET上に10mm×30mmの長方形の印刷塗膜を形成し、印刷精度および連続印刷性を評価した。 印刷後の乾燥条件は150℃で10分間乾燥し、190℃で30分間焼成した。10回繰り返して印刷を行い以下の評価基準により評価を行った。
○・・・かすれ、色むらの無い、同等の色調を有する塗膜の印刷を繰り返し行うことが出来た。
△・・・かすれ、色むらは発生しないが繰り返し印刷中にわずかに塗膜の色調が変化した。
×・・・かすれ、または色むらが発生した。
【0060】
(2)体積抵抗率
繰り返し印刷を行った10mm×30mmの印刷パターンの中央の膜厚を、膜厚計402B(アンリツ製)を用いて10点測定して平均値を求めた。
印刷膜厚を測定した印刷パターンの中央部の抵抗値を、四端子測定法の低抵抗率計ロレスターEP(三菱化学(株)製)にて測定し、先に測定した試験片の導電性膜の膜厚から体積抵抗率を求めた。
(3)ITO印刷適正
上記のスクリーン印刷機を用いて、10mm×30mmの長方形の印刷塗膜ををITO蒸着したガラス板に5回連続して形成したときの印刷適正を評価した。
○・・・かすれ、色むらの無い、同等の色調を有する塗膜の印刷を、パターン精度良く繰り返し行うことが出来た。
△・・・かすれ、色むらは発生しないが繰り返し印刷中にわずかに塗膜の色調が変化するか、あるいは印刷パターンのわずかな乱れが発生した。
×・・・かすれ、または色むらが発生した。
【0061】
(4)接触抵抗
上記のスクリーン印刷機を用いて、Line幅50mm、Line/Space=1.2mm/0.8mmの印刷パターンをITO蒸着したガラス板に形成し、150℃で10分間乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、TLM法にて接触抵抗を測定した。
【0062】
以下に、本願発明においたITO膜上に形成された導電性塗膜の接触抵抗を、TLM法によって評価する方法の概略を述べる。ITO膜上に形成された3つ以上の等形、等大の短冊状の導電性塗膜において、まず第1の塗膜1と第2の塗膜2との間に電圧V1を印加する(図1参照)。このとき、2つの導電性塗膜とITO膜との接触抵抗をRc、ITO塗膜4の表面抵抗率をRs、流れる電流をi1とすると、
【0063】
【数1】

となる。ここで、L1は上記したように第1の塗膜1と第2の塗膜2との間の距離であり、WはITO塗膜とその上に形成された導電性塗膜の接触長さである。
次に、第2の塗膜2と第3の塗膜3との間に電圧V2を印加する。このとき、上記と同じく、2つの塗導電性塗膜とITO膜の間の接触抵抗はRc、ITO塗膜4の表面抵抗率はRsであるから、流れる電流をi2、第2の塗膜と第3の塗膜間の距離の間隔がL2で、接触長さをWとすると、
【0064】
【数1】

となる。
シート抵抗Rsが既知であれば、これら式(1)または(2)よりコンタクト抵抗Rcを容易に求めることができる。
またシート抵抗が未知の場合でも、上記したような2つの塗膜間距離Lを異ならせた塗膜を2組以上形成することにより、Transfer Length Method(TLM法)を用いてコンタクト抵抗を算出することが可能である(図2参照)。
上記(1)式を変換すると、
【0065】
【数2】

となる。また、上記(2)式を変換すると、
【0066】
【数4】

となる。ここで、この2つの式(3)(4)の関係から、図2に示すように、横軸に塗膜間距離L、縦軸に測定した抵抗値Rをプロットし、この2点をつないだ線のY軸切片を求めると2Rcとなる。よって、(3)式と(4)式とから、接触抵抗の値Rcを求めることができる。
【0067】
(5)耐候性
上記試験片を飽和食塩水に120時間浸漬し以下の評価を行った。
5−1.表面状態の変化
表面状態の変化を以下の評価基準によって評価した。
○・・・表面の色、状態に変化が見られない。
△・・・表面の色、または状態のどちらかににわずかな変化が認められる。
×・・・表面の色、状態の双方に明らかな変化が認められる。
5−2.剥離試験
幅18mmの粘着テープ(ニチバン社製)を、飽和食塩水に浸積後の試験片表面に約5cmにわたってのせた後、指の腹で均一に接着させ、テープの一端を持って90度方向に勢いよく引きはがし、試料の剥離の状況を観察した。以下の基準で評価を行った。
○・・・試料は全く剥離しない。
△・・・試料の一部がわずかに剥離した。
×・・・試料の半分以上の大きな面積にわたって剥離が発生した。
5−3.接触抵抗
上記接触抵抗の測定方法を用いて、浸漬後の試験片の接触抵抗を測定した。
【0068】
銀ペースト(B1)を用いてPET上にスクリーン印刷を行ったところ、かすれや色むらのない印刷を繰り返し行うことができた。体積抵抗率は2.07×10−5Ωcmであった。
銀ペースト(B1)を用いてスクリーン印刷により、ITOを蒸着したガラス板上に長方形の印刷パターンを繰り返して印刷を行い、印刷不良の発生状態を確認し、形成される印刷塗膜の再現性を確認した結果、印刷不良は見られず再現性の良好な印刷塗膜を形成することができた。形成された長方形の印刷塗膜の平均厚さは14.9μmであった。さらに体積抵抗率を測定したところ2.07×10−5Ω・cmを示した。その後、TLM法にて接触抵抗を測定したところ0.413Ωを示した。
上記塗膜を室温下で飽和食塩水に120時間浸せきしたところ、変色を含む表面状態の変化は見られなかった。浸せき後の接触抵抗は0.403Ωを示し抵抗増大は生じなかった。その後、粘着テープによる剥離試験を行った結果、塗膜表面の剥離は見られなかった。
【0069】
(実施例2)
フッ素樹脂として、実施例1でのダイニオンFC−2211に換えて、フッ素含有量66%のフッ素樹脂「バイトンA−500」(デュポン(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、銀ペースト(B2)を得た。PET上へのスクリーン印刷を行ったところ、かすれや色むらのない印刷を繰り返し行うことができた。体積抵抗率は2.08×10−5Ωcmであった。印刷パターンを形成したマスクフィルムと銀ペースト(B2)を用いたスクリーン印刷により、実施例1と同様にITOを蒸着したガラス板上に繰り返し印刷をおこない、長方形の印刷塗膜と接触抵抗測定用の印刷パターンを得た。印刷不良は見られなかった。長方形の印刷塗膜の平均厚さは11.9μmであった。体積抵抗率を測定したところ平均で2.08×10−5Ω・cmを示した。また、TLM法にて接触抵抗を測定したところ0.411Ωを示した。上記塗膜を室温下で飽和食塩水に120時間浸せきしたところ、変色を含む表面状態の変化は見られなかった。浸せき後の接触抵抗は0.394Ωを示し抵抗増大は生じなかった。その後、粘着テープによる剥離試験を行った結果、塗膜表面の剥離は見られなかった。
【0070】
(比較例1)
フッ素樹脂として、実施例1でのダイニオンFC−2211に換えて、フッ素含有量25%のフッ素樹脂「ルミフロンLF−200」(固形分60%キシレン溶液 水酸基価 53重量平均分子量約50000 旭硝子社製 5.88g(固形分3.50g)を用い、ブチルセルソルブアセテートを3.62g混合する以外は、実施例1と同様の方法にて、銀ペースト(B3)を得た。PET上へのスクリーン印刷を行ったところ、かすれや色むらのない印刷を繰り返し行うことができた。体積抵抗率は3.00×10−5Ωcmであった。
印刷パターンを形成したマスクフィルムと銀ペースト(B3)を用いたスクリーン印刷により、実施例1,2と同様にITO蒸着したガラス板上に繰り返し印刷をおこない、長方形の印刷塗膜と接触抵抗測定用の印刷パターンを得た。印刷不良は見られなかった。長方形の印刷塗膜の平均厚さは22.2μmであった。
【0071】
長方形の印刷塗膜を150℃で10分間予備乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、体積抵抗率を測定したところ平均で3.00×10−5Ω・cmを示した。
Line幅50mm、Line/Space=1.2mm/0.8mmの印刷パターンををITO蒸着したガラス板に形成した。150℃で10分間乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、TLM法にて接触抵抗を測定したところ0.423Ωを示した。
上記塗膜を室温下で飽和食塩水に120時間浸せきしたところ、変色を含む表面状態の変化は見られなかった。浸せき後の接触抵抗は0.409Ωを示し抵抗増大は生じなかった。その後、粘着テープによる剥離試験を行った結果、塗膜表面が剥離した。
【0072】
(比較例2)
フッ素樹脂として、実施例1でのダイニオンFC−2211に換えて、フッ素含有量25%のフッ素樹脂「ルミフロンLF−200」(旭硝子社製)4.41g(固形分2.62g)、ブチルセルソルブアセテート4.21g、ならびに、架橋剤としてイソシアネート「バーノックDN−980S」(DIC社製)0.88gを混合する以外は、実施例1と同様の方法にて、銀ペースト(B4)を得た。PET上へのスクリーン印刷を行ったところ色むらが発生した。体積抵抗率は8.05×10−5Ωcmであった。印刷パターンを形成したマスクフィルムと銀ペースト(B4)を用いたスクリーン印刷により、ITO蒸着したガラス板上に実施例1,2と同様に繰り返し印刷をおこない、長方形の印刷塗膜と接触抵抗測定用の印刷パターンを得た。印刷状態は不良だった。長方形の印刷塗膜の平均厚さは21.9μmであった。
【0073】
長方形の印刷塗膜を150℃で10分間予備乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、体積抵抗率を測定したところ平均で8.05×10−5Ω・cmを示した。
Line幅50mm、Line/Space=1.2mm/0.8mmの印刷パターンををITO蒸着したガラス板に形成した。150℃で10分間乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、TLM法にて接触抵抗を測定したところ0.542Ωを示した。
上記塗膜を室温下で飽和食塩水に120時間浸せきしたところ、表面縁のにじみが若干悪化した。浸せき後の接触抵抗は0.526Ωを示し抵抗増大は生じなかった。その後、粘着テープによる剥離試験を行った結果、塗膜表面が剥離した。
【0074】
(比較例3)
フッ素樹脂として、実施例1でのダイニオンFC−2211に換えて、フッ素含有量35%のフッ素樹脂「ゼッフルGK−570」(固形分65質量%酢酸ブチル溶液 水酸基価 60 ダイキン社製)5.39g(固形分3.50g)およびブチルセルソルブアセテート4.11gを用いる以外は、実施例1と同様の方法にて、銀ペースト(B5)を得た。PET上へのスクリーン印刷を行ったところ色むらが発生した。体積抵抗率は3.58×10−5Ωcmであった。
印刷パターンを形成したマスクフィルムと銀ペースト(B5)を用いたスクリーン印刷により、実施例1、2と同様にITOを蒸着したガラス基板上に繰り返し印刷をおこない、長方形の印刷塗膜と接触抵抗測定用の印刷パターンを得た。印刷状態は不良だった。長方形の印刷塗膜の平均厚さは15.6μmであった。
長方形の印刷塗膜を150℃で10分間予備乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、体積抵抗率を測定したところ平均で3.58×10−5Ω・cmを示した。
【0075】
Line幅50mm、Line/Space=1.2mm/0.8mmの印刷パターンをITO蒸着したガラス板に形成した。150℃で10分間乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、TLM法にて接触抵抗を測定したところ0.468Ωを示した。
上記塗膜を室温下で飽和食塩水に120時間浸せきしたところ、表面縁のにじみが若干悪化した。浸せき後の接触抵抗は0.532Ωを示し抵抗増大が生じた。その後、粘着テープによる剥離試験を行った結果、塗膜表面が剥離した。
【0076】
(比較例4)
フッ素樹脂として、実施例1でのダイニオンFC−2211に換えて、フッ素含有量35%のフッ素樹脂「ゼッフルGK−570」(ダイキン社製)3.75g、ブチルセルソルブアセテートを溶媒として4.68g、ならびに、架橋剤としてイソシアネート「バーノックDN−980S」(DIC社製)1.07gを混合する以外は、実施例1と同様の方法にて、銀ペースト(B6)を得た。PET上へのスクリーン印刷を行ったところ、かすれや色むらのない印刷を繰り返し行うことができた。体積抵抗率は8.40×10−5Ωcmであった。
印刷パターンを形成したマスクフィルムと銀ペースト(B6)を用いたスクリーン印刷により、実施例1,2と同様にITO蒸着を行ったガラス板上に繰り返し印刷をおこない、長方形の印刷塗膜と接触抵抗測定用の印刷パターンを得た。印刷は良好だった。長方形の印刷塗膜の平均厚さは15.4μmであった。
長方形の印刷塗膜を150℃で10分間予備乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、体積抵抗率を測定したところ平均で8.40×10−5Ω・cmを示した。
【0077】
Line幅50mm、Line/Space=1.2mm/0.8mmの印刷パターンををITO蒸着したガラス板に形成した。150℃で10分間乾燥後、190℃のオーブン中で30分乾燥した。その後、TLM法にて接触抵抗を測定したところ0.715Ωを示した。
上記塗膜を室温下で飽和食塩水に120時間浸せきしたところ、表面縁のにじみが若干悪化した。浸せき後の接触抵抗は0.583Ωを示し抵抗増大は見られなかった。その後、粘着テープによる剥離試験を行った結果、塗膜表面が剥離した。
以上の実施例、比較例の配合と、その特性を表2にまとめて示す。
【0078】
【表2】

【0079】
表2に示すようにフッ素含有量が40質量%を超えて70質量%以下であるフッ素樹脂を用いた実施例1、実施例2においては、PET上においても、またITOを蒸着したガラス板上においても良好な印刷性を示し、体積抵抗、接触抵抗のそれぞれがともに低い値を示す。またガラス板を飽和食塩水に浸漬後も良好な印刷性を示し、良好な接着力、浸漬前と同様の低い接触抵抗を示す。
これに対して比較例1〜4においては、いずれも体積抵抗が上昇し、特にイソシアネートで架橋した比較例2、比較例4においては体積抵抗の上昇が著しい。印刷性に関しては比較例の中ではフッ素原子含有量が低く、かつイソシアネートで架橋をしていないフッ素樹脂を用いた比較例2が最も悪く、フッ素原子含有量が35質量%で架橋している樹脂を用いた比較例4が比較例のなかでは良好であった。食塩水浸漬後の試料については、比較例1〜4のいずれについても接着性が低下し、また接触抵抗は食塩水への浸漬の有無にかかわらず、実施例1、2より高い値を示した。
【0080】
上記の実施例、比較例よりフッ素含有量が40質量%を超えて70質量%以下であるフッ素樹脂を用いることにより、食塩水浸漬試験の結果に見られるように耐候性の向上が著しいことがわかる。これら樹脂はまた導電性粉末、特に表面を酸化銀処理した銀粉末と共に導電性ペースト組成物を形成し、PET上やITO塗膜上への良好な印刷性を示すとともに、低い焼成温度で熱硬化させた場合であっても、低い体積抵抗率、ITOとの低い接触抵抗を示している。
銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末として、表面を酸化銀処理した活性の高い銀粉末を、同じく活性の高いフッ素含有量が40質量%を超えて70質量%以下であるフッ素樹脂とともに用いる時は、界面活性剤で銀粉末表面を予め表面処理し、銀粉末表面を界面活性剤で被覆しておくことが好ましい。このような表面処理は、製造工程の安全性を高めると共に、使用されるバインダー樹脂量の低減も可能にするため、導電性ペーストから形成された導電性膜の体積抵抗率の低減に極めて効果が高いと考えられる。
一方表面が酸化銀処理されていない銀粉のような通常の導電製粉末を使用する場合には、安全性確保のための表面処理は必ずしも必須ではなく、導電性ペーストの分散性に特に問題が無ければ表面処理工程を省くことによって製造工程の簡略化が可能である。このような通常の銀粉からなる導電性粉末を用いて導電性ペースト組成物を製造し、該ペーストを用いて導電性塗膜を作製したときに得られる導電性ペーストの分散性と、体積抵抗率の確認のために以下の実験を行った。
【0081】
(実施例3) 体積平均粒径1.26μmの銀粉(TC−38S 徳力化学社製)33gと、フッ素含有率65.9質量%のフッ素樹脂(ダイニオンFC−2211 住友3M社製)7gを、ブチルセルソルブアセテートおよび2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの50:50混合溶液11.5g中に溶解したワニス溶液とを、2mm径のジルコニアビーズ400gとともに250ccのポリ瓶に入れ、振とう機で4時間混合撹拌して、銀ペーストを得た。
この銀ペーストを厚さ50μmのPET上に、アプリケータによる塗布を行い、形成された塗膜を230℃30分の条件で焼成して膜厚と体積抵抗率を測定した。
(実施例4)
銀粉を鱗片の面の長径が6〜9μmの鱗片状銀粉(TC−25A 徳力化学社製)に変更する他は実施例3と同様にして銀ペーストを作製し、実施例3と同様の条件で塗膜を作製してその膜厚と体積抵抗率を測定した。
上記実施例3及び4の測定結果を表3に示す。
(比較例5)
バインダー樹脂をブチラール樹脂(エスレックBX−L 積水化学社製)に変更する他は、実施例3と同様にして銀ペーストを作製し、実施例3と同様の条件で塗膜を作製してその膜厚と体積抵抗率を測定した。
上記実施例3及び4の測定結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
上記実施例3、実施例4の結果より明らかなように、酸化銀処理を行っていない通常の銀粉を使用したとしても、良好に分散が行えれば、フッ素含有量が40質量%を超えて70質量%以下であるフッ素樹脂をバインダー樹脂として用いることにより、ほぼ同様の体積抵抗率が得られることが判る。但し表面処理を行ったものに比較すると焼成時間がより高い温度となっており、より低温による焼成という点で、実施例1、実施例2の方がより優れている。これは実施例1、2のものがより活性の高い酸化銀処理をした銀粉を用いていることと、界面活性剤で銀粉の表面処理を行っているためバインダー樹脂をより減少させた配合が可能であることによる。一方バインダー樹脂をフッ素樹脂からブチラール樹脂に変更すると、体積抵抗率の上昇が著しく、本願発明で用いたフッ素樹脂が体積抵抗率の低下に大きく寄与していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】導電性膜とITO膜との接触抵抗を求める、TLO法による測定方法の概念図である。
【図2】TLO法によるグラフを用いた接触抵抗の求め方を示した図である。
【符号の説明】
【0085】
1 導電性塗膜1
2 導電性塗膜2
3 導電性塗膜3
4 ITO蒸着膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、溶剤、および銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有する導電性ペースト組成物であって、前記バインダー樹脂はフッ素原子の含有量が40質量%を超えて〜75質量%以下のフッ素樹脂を含有することを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末は、予め界面活性剤で表面処理が行われたものである請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の表面処理は、前記銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を、前記界面活性剤とともに分散用溶液中に分散させて分散液を作製する分散工程、および該分散液を乾燥させる乾燥工程を経て行われたものである請求項2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記乾燥工程は真空凍結乾燥によって行われる請求項3に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末の表面処理に用いる界面活性剤は、リン酸エステル系界面活性剤、アルキルアミン系界面活性剤、アルキルアミン塩系界面活性剤からなる群から選択された1つ、または2つ以上の界面活性剤である請求項2〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
前記銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末は、酸化銀処理を行った銀粉末である請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項7】
前記溶剤は、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、2−ブトキシエチルアセタート、及び2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオールジイソブチレートからなる群から選定される1つ、または2つ以上の化合物の組み合わせである請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項8】
銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を、界面活性剤とともに分散用溶液中に分散させて分散液を作製する分散工程、および前記分散液を乾燥させる乾燥工程を経て、前記銀、または銀化合物を主成分とする導電性粉末を表面処理し、前記銀、または銀化合物を主成分とする導電性粉末と、固形分中のフッ素原子が40質量%を超えて〜75質量%以下のフッ素樹脂とを含む混合物を、溶剤中に分散させることを特徴とする導電性ペースト組成物の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥工程は真空凍結乾燥によって行われる請求項8に記載の導電性ペースト組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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