説明

導電性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法

【課題】導電性、靭性、ウエルド伸度、及び外観に優れたポリアセタール樹脂組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、ポリアセタール樹脂(A)とスチレン系エラストマー(B)とを溶融混練する工程1と、該工程1の後、さらにエポキシ化合物(D)を添加して溶融混練する工程2と、を含む。また、該工程1の後に、さらに導電性カーボンブラック(C)を添加して溶融混練する工程を含むことが好ましい。さらに、導電性カーボンブラック(C)を、エポキシ化合物(D)を添加した後に添加することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつその加工性が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲にわたって用いられている。特に、ポリアセタール樹脂は、電気機器、自動車部品、ギア及びカムといった精密機構部品に用いられることが多い。しかしながら、ポリアセタール樹脂は他の樹脂と同様に電気絶縁体であるため、摺動の際に発生する静電気の除去性能あるいは導電性に劣るため、高度な導電性を要求される用途には通常使われない。
【0003】
従来より、カーボンブラックやその他の導電性フィラーによって導電性を付与させた組成物を得ることは知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、カーボンブラックなどの導電性フィラーの添加により、ポリアセタール樹脂が本来持つ靭性が大きく損なわれることが多い。
【0004】
そこで、ポリアセタール樹脂が本来持つ靭性を保持しながら導電性を付与させる試みが行われている。例えば、特許文献2には、ポリアセタール樹脂にポリウレタン重合体とエチレン系重合体とを添加して、耐衝撃性と耐熱性とを付与させたポリアセタール樹脂組成物が開示されている。また、特許文献3には、ポリアセタール樹脂にポリエーテルエステルアミドと酸変性ポリオレフィン系樹脂とを添加して、衝撃性と摺動性とを付与させたポリアセタール樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−210161号公報
【特許文献2】特開平1−201356号公報
【特許文献3】特開2004−10803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法によると、ポリアセタール樹脂に耐衝撃性は付与できるものの、導電性が充分でなかったり、得られる成形品の外観が劣る場合がある。また、複雑な形状を得るための射出成形では成形品にウエルド部が生じ、ウエルド部を起点とする破壊が起こりやすくなるため、電気機器や自動車の機構部品としては充分実用に応えられるポリアセタール樹脂組成物が得られていないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、導電性、靭性、ウエルド強度、及び外観に優れたポリアセタール樹脂組成物を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に対して、スチレン系エラストマー、エポキシ樹脂を配合するポリアセタール樹脂組成物を製造するにあたり、特定の製造方法をとることによって、ポリアセタール樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は下記の通りである。
【0010】
〈1〉
ポリアセタール樹脂(A)とスチレン系エラストマー(B)とを溶融混練する工程1と、
該工程1の後、さらにエポキシ化合物(D)を添加して溶融混練する工程2と、を含むことを特徴とするポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0011】
〈2〉
該工程1の後に、さらに導電性カーボンブラック(C)を添加して溶融混練する工程を含むことを特徴とする前記〈1〉に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0012】
〈3〉
導電性カーボンブラック(C)を、エポキシ化合物(D)を添加した後に添加することを特徴とする前記〈2〉に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0013】
〈4〉
該工程1で得られた溶融混練物をペレタイズしてマスターバッチペレットを得る工程を、さらに含むことを特徴とする前記〈1〉〜〈3〉いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0014】
〈5〉
ポリアセタール樹脂(A)及びスチレン系エラストマー(B)成分の合計100質量部に対して、
ポリアセタール樹脂(A)の配合量が70〜95質量部であり、
スチレン系エラストマー(B)の配合量が5〜30質量部であり、
導電性カーボンブラック(C)の配合量が5〜15質量部であり、
エポキシ化合物(D)の配合量が0.05〜10質量部であることを特徴とする前記〈2〉に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0015】
〈6〉
ポリアセタール樹脂(A)が、下記一般式(1)で表されるポリアセタールブロック共重合体であることを特徴とする前記〈1〉〜〈5〉いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0016】
H−R1−O−R3−O−R1−H (1)
(式(1)中、
1は、下記一般式(2a)で表されるオキシメチレン単位と下記一般式(2b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位とが互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量が95〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つのR1の平均の数平均分子量が5000〜250000であり、
3は、下記一般式(3a)で表されるエチレン単位と下記一般式(3b)で表されるn−ブチレン単位と下記一般式(3c)で表わされる水素添加1,2−ポリブタジエン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位とが互いにランダムまたはブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量が1〜98モル%、前記n−ブチレン単位の含有量が1〜98モル%、前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位の含有量が1〜98モル%であり、数平均分子量が500〜10000であり、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。
【0017】
【化1】

(式(2b)中、R2は、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基を示し、jは2〜6の整数を示す。))
〈7〉
ポリアセタール樹脂(A)の数平均分子量が10000〜500000であることを特徴とする前記〈1〉〜〈6〉いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0018】
〈8〉
スチレン系エラストマー(B)のスチレン量が30質量%以下であることを特徴とする前記〈1〉〜〈7〉いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0019】
〈9〉
導電性カーボンブラック(C)のフタル酸ジブチル吸油量が350ml/100g以上であることを特徴とする前記〈2〉に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0020】
〈10〉
前記〈1〉〜〈9〉いずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、導電性、靭性、ウエルド強度、及び外観に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例で用いた2軸押出機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0024】
≪ポリアセタール樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、ポリアセタール樹脂(A)とスチレン系エラストマー(B)とを溶融混練する工程1と、該工程1の後、さらにエポキシ化合物(D)を添加して溶融混練する工程2と、を含む。
【0025】
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、該工程1の後に、さらに導電性カーボンブラック(C)を添加して溶融混練する工程を含むことが好ましい。該工程を含むことにより、導電性、靭性、ウエルド強度及び外観がより優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、導電性カーボンブラック(C)を、エポキシ化合物(D)を添加した後に添加することがより好ましい。該添加順序とすることにより、導電性、靭性、ウエルド強度及び外観がさらに優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
またさらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、該工程1で得られた溶融混練物をペレタイズしてマスターバッチペレットを得る工程を、さらに含むことが好ましい。該工程を含むことにより、導電性、靭性、ウエルド強度及び外観が極めて優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
さらにまた、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、ポリアセタール樹脂(A)及びスチレン系エラストマー(B)成分の合計100質量部に対して、ポリアセタール樹脂(A)の配合量が70〜95質量部であり、スチレン系エラストマー(B)の配合量が5〜30質量部であり、導電性カーボンブラック(C)の配合量が5〜15質量部であり、エポキシ化合物(D)の配合量が0.05〜10質量部であることが好ましい。
【0029】
[ポリアセタール樹脂(A)]
本実施形態に用いられるポリアセタール樹脂(A)は、下記一般式(1)で表されるポリアセタールブロック共重合体(A)であることが好ましい。また、ポリアセタール樹脂(A)の数平均分子量は10000〜500000であることが好ましく、15000〜300000であることがより好ましく、20000〜150000であることがさらに好ましい。
【0030】
ポリアセタールブロック共重合体(A)は、例えば、特許第4560261号に示す方法により製造することが可能である。
【0031】
H−R1−O−R3−O−R1−H (1)
ここで、式(1)中、R1は、下記一般式(2a)で表されるオキシメチレン単位と下記一般式(2b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位とが互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量が95〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つのR1の平均の数平均分子量が5000〜250000であり、
3は、下記一般式(3a)で表されるエチレン単位と下記一般式(3b)で表されるn−ブチレン単位と下記一般式(3c)で表わされる水素添加1,2−ポリブタジエン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位とが互いにランダムまたはブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量が1〜98モル%、前記n−ブチレン単位の含有量が1〜98モル%、前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位の含有量が1〜98モル%であり、数平均分子量が500〜10000であり、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。
【0032】
上記一般式(1)中の両端の水素原子は、下記一般式(2a)又は(2b)における酸素原子と結合する。
【0033】
【化2】

式(2b)中、R2は、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基を示し、jは2〜6の整数を示す。
【0034】
上記置換アルキル基及び置換アリール基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基が挙げられる。
【0035】
本実施形態において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるPMMA(ポリメチルメタクリレート)換算の分子量である。
【0036】
<ポリアセタールブロック共重合体の製造方法>
ポリアセタールブロック共重合体は、R3セグメントを連鎖移動剤として用い、例えば、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)と、1,3−ジオキソランとを、共重合させて得ることができる。
【0037】
このポリアセタールブロック共重合体を得る場合、上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーの配合量は、一般的には、トリオキサン100molに対して0.1〜60molであることが好ましく、0.3〜50molであることがより好ましく、0.5〜30molであることがさらに好ましい。
【0038】
ポリアセタールブロック共重合体の重合工程においては、所定の重合触媒を用いることが好ましい。
【0039】
ポリアセタールブロック共重合体の重合に用いられる重合触媒としては、例えば、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
【0040】
ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
【0041】
また、プロトン酸、そのエステル又は無水物としては、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましい。
【0043】
ポリアセタールブロック共重合体を製造する重合方法については、R3セグメントを連鎖移動剤として用いること以外は、従来公知の方法を適用できる。
【0044】
例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。
【0045】
上記の重合により得られたポリアセタールブロック共重合体には、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することは困難である。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。
【0046】
すなわち、下記一般式(4)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールブロック共重合体の融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールブロック共重合体に対して、それを溶融させた状態で加熱処理を施すことにより、特定の不安定末端部の分解除去処理を行う。
【0047】
[R5678+n-n ・・・(4)
一般式(4)中、R5、R6、R7及びR8は、各々独立して、炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換若しくは非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。
【0048】
上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。
【0049】
また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0050】
nは、1〜3の整数を示す。
【0051】
Xは、水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0052】
前記ポリアセタールブロック共重合体の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕を、分解除去処理するために用いる第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(4)で表わされるものであれば特に制限はないが、一般式(4)における、R5、R6、R7、及びR8が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらには、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものがより好ましい。
【0053】
第4級アンモニウム化合物は、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、ヨウ素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4-、SO42-)、炭酸(HCO3-、CO32-)、ホウ酸(B(OH)4-)、及びカルボン酸の塩が好ましい。
【0054】
前記カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。
【0055】
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
【0057】
前記ポリアセタールブロック共重合体の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕を、分解除去処理するために用いる第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタール共重合体と第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する、下記一般式(5)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
【0058】
第4級アンモニウム化合物の使用量(質量ppm)=P×14/Q ・・・(5)
ここで、一般式(5)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールブロック共重合体に対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0059】
前記ポリアセタールブロック共重合体の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕を、分解除去処理する際の、第4級アンモニウム化合物の使用量が、0.05〜50質量ppmの範囲であると、実用上充分な不安定末端部の分解除去速度が確保でき、分解除去後に得られるポリアセタールブロック共重合体の色調も良好なものとなる。
【0060】
上述したように、本実施形態において用いるポリアセタールブロック共重合体(A)の、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕は、融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールブロック共重合体(A)を溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。
【0061】
この分解除去処理に用いる装置としては、特に制限はないが、押出機、ニーダー等が好適である。
【0062】
分解によりホルムアルデヒドが発生するが、通常、減圧下で除去される。
【0063】
熱的に不安定な末端部を分解除去する際に、上述した第4級アンモニウム化合物をポリアセタールブロック共重合体中に存在させる方法には特に制約はなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールブロック共重合体パウダーに吹きかける方法が挙げられる。
【0064】
いずれの方法を用いても、ポリアセタールブロック共重合体を加熱処理する工程において、ポリアセタールブロック共重合体中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。
【0065】
例えば、ポリアセタールブロック共重合体が溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリアセタールブロック共重合体にフィラーやピグメントを配合する場合、ポリアセタールブロック共重合体の樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添加し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
【0066】
ポリアセタールブロック共重合体(A)の熱的に不安定な末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールブロック共重合体と共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。
【0067】
重合触媒の失活処理としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。
【0068】
重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールブロック共重合体の融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてその共重合体を加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
【0069】
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れた、ポリアセタールブロック共重合体(A)として好適なポリアセタールブロック共重合体を得ることができる。
【0070】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法において、ポリアセタール樹脂(A)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)及びスチレン系エラストマー(B)の合計100質量部に対して70〜95質量部であることが好ましく、75〜90質量部であることがより好ましい。
【0071】
[スチレン系エラストマー(B)]
次に、スチレン系エラストマー(B)について説明する。
【0072】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に配合されるスチレン系エラストマー(B)は、ランダム、ブロック、グラフト等の共重合の形態、側鎖や分岐の有無とその程度、共重合組成の割合、水素添加の有無等、特に制限はないが、本発明の効果を有効に発揮させるという観点から、スチレン量が30質量%以下であると好ましい。該スチレン量は、20質量%以下であることがより好ましい。該スチレン量を前記範囲とすることにより、靭性、ウエルド強度及び外観がさらに優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0073】
水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量、すなわちスチレン系エラストマー(B)におけるスチレン含有量は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka、et al.、RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54、685(1981)に記載の方法で測定することができる。スチレン系エラストマー(B)の、上記測定方法で得られたスチレン量は、30質量%以下であることが好ましい。
【0074】
また、スチレン系エラストマー(B)は、数平均分子量が、10000〜500000であることが好ましい。
【0075】
本実施形態において、スチレン系エラストマー(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量である。
【0076】
また、スチレン系エラストマー(B)の中でも好ましいものは、下記で示されるスチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合しうる単量体との共重合体である。
【0077】
前記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン、エチルスチレン等の芳香族ビニル単量体を含むものであり、中でもスチレンが好ましい。
【0078】
また、前記スチレン系単量体と共重合しうる単量体とは、共重合性不飽和単量体の他、エラストマー等も含まれる。
【0079】
前記共重合性不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド系単量体、ジエンモノマー(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等)等が挙げられる。
【0080】
前記エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンープロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィン等が挙げられ、これらの水素添加物であってもよい。
【0081】
また、共重合体として重合体の少なくとも1つの重合体鎖に極性基含有原子団が結合した変性共重合体を用いることもできる。極性基含有原子団としては、例えば水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルビオニル基、酸ハロゲン物化基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基及びアルコキシケイ素基等からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。変性共重合体は、共重体の重合終了時にこれらの極性基含有原子団を有する化合物を反応させることにより得られる。
【0082】
本実施形態において、好ましい変性素水添共重合体としては、水酸基、エポキシ基、アミノ基、酸無水物基、カルボン酸基、アミド基、シラノール基及びアルコキシシラン基からなる群から選ばれる官能基を少なくとも1種有する原子団が結合している変性水添共重合体である。
【0083】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法において、スチレン系エラストマー(B)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)及びスチレン系エラストマー(B)の合計100質量部に対して5〜30質量部の範囲であることが好ましく、10〜25質量部の範囲であることがより好ましい。
【0084】
[導電性カーボンブラック(C)]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いられるカーボンブラック(C)は導電性カーボンブラックである。該導電性カーボンブラック(C)は、粒子径が小さいかまたは表面積が大きく鎖状構造の発達したものであることが好ましい。より好ましくは、粒子径が0.05μm以下のものである。
【0085】
また、導電性カーボンブラック(C)のフタル酸ジブチル(以下「DBP」とも記す。)吸油量(ASTM D2415−65T)は350ml/100g以上であると好ましく、400ml/100gであることがより好ましい。DBP吸油量が350ml/100g以上であることにより、カーボンブラックの添加量が少なくても、良好な導電性を得ることができる。具体的な導電性カーボンブラック(C)としては、例えば、ケッチェンブラックEC〔DBP吸油量:350ml/100g〕、EC−300J[DBP吸油量:365ml/100g]、EC−600JD〔DBP吸油量:480ml/100g〕(ライオン(株)製)、Printex XE2−B〔DBP吸油量:420ml/100g〕(エボニック デグサ ジャパン(株)製)などがある。また、これら2種以上の導電性カーボンブラック(C)を併用してもよい。
【0086】
導電性カーボンブラック(C)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)とスチレン系エラストマー(B)との合計100質量部に対して5〜15質量部であることが好ましく、6〜13質量部であることがより好ましい。
【0087】
[エポキシ化合物(D)]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いられるエポキシ化合物(D)は、モノまたは多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物であることが好ましい。また、エポキシ化合物(D)は、エポキシ樹脂硬化性添加剤を含んでいてもよい。本実施形態において、エポキシ樹脂硬化性添加剤を含むものもエポキシ化合物(D)とする。
【0088】
エポキシ樹脂硬化性添加剤としては、塩基性窒素化合物及び塩基性リン化合物が通常用いられるが、その他のエポキシ樹脂硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物もすべて使用できる。
【0089】
エポキシ化合物(D)としては、例えば、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0090】
また、他のエポキシ化合物(D)としては、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
エポキシ樹脂硬化性添加剤の具体的な化合物としては、イミダゾール;1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾールなどの置換イミダゾール;オクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミンなどの脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミンなどの芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミンなどの脂肪族3級アミン;トリトリルアミン、トリフェニルアミンなどの芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリンなどのモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素などへのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1〜20モル);トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのリン化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
上述したエポキシ化合物、エポキシ樹脂硬化性添加剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エポキシ化合物(D)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)及びスチレン系エラストマー(B)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
【0093】
[安定剤]
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法には、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている安定剤を、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0094】
熱安定剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤及びこれらの組合せが好適である。
【0095】
前記酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0096】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
【0097】
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
【0098】
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
【0099】
前記ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。
【0100】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体としては、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
【0101】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。
【0102】
具体的にはカルシウム塩が好ましく、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
【0103】
前記安定剤の好ましい組合せは、特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特にポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、特に脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。
【0104】
それぞれの安定剤の配合量は、ポリアセタールブロック共重合体(A)及びスチレン系エラストマー(B)の合計100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
【0105】
[ポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いる装置]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いる装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機がより好ましい。
【0106】
[溶融混練の方法]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法において、溶融混練の方法の具体例としては、以下の[i]〜[iii]の方法が挙げられる。
[i]:(A)成分、(B)成分、及び(C)成分のブレンド物を押出機トップのフィ
ーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させた後、該溶融混練物に、押出機サイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)から(D)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法、
[ii]:(A)成分と(B)成分とのブレンド物を押出機トップフィーダーから連続
的にフィードして溶融混練させた後、サイドフィーダーから(C)成分と(D)成分とのブレンド物を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法、
[iii]:(A)成分と(B)成分とのブレンド物を押出機トップフィーダーから連
続的にフィードして溶融混練させた後、第1(上流側)のサイドフィーダーと第2(下流側)のサイドフィーダーから別々に(C)成分と(D)成分とを連続的にフィードして((C)成分と(D)成分との添加の順序は問わない)さらに溶融混練させる方法。
【0107】
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法において、(A)成分と(B)成分とのブレンド物としては、予め(A)成分と(B)成分とを溶融混練、ペレタイズしたマスターバッチペレットを用いることができる。このマスターバッチペレットを用いる場合、マスターバッチペレットをトップフィーダーからフィードすれば、(C)成分と(D)成分とはトップフィーダー、サイドフィーダーの任意の場所からフィードすることができるが、(C)成分及び/又は(D)成分をトップフィーダーからフィードする際には、マスターバッチペレットと(C)成分及び/又は(D)成分とを事前に混合しておくことが好ましい。
【0108】
上記した溶融混練の方法のうち、本発明の目的を達成するという観点から最も好ましい方法は、(A)成分と(B)成分とのマスターバッチペレットと(D)成分との混合物をトップフィーダーより連続的にフィードして溶融混練させた後、サイドフィーダーから(C)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法である。
【0109】
溶融混練を行う押出機の減圧度に関しては、0〜0.07MPaが好ましい。溶融混練の温度は、用いるポリアセタール樹脂のJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160℃から240℃ある。溶融混練機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましく、溶融混練時の平均滞留時間は、30秒〜1分が好ましい。
【0110】
≪ポリアセタール樹脂組成物≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述の製造方法により得られる。また、該ポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、導電性、靭性、ウエルド強度及び外観に優れる成形品を得ることができる。
【0111】
該ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限するものではなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
【0112】
該ポリアセタール樹脂組成物の成形品の具体的な用途としては、例えば、メンブレンスイッチ、キースイッチ、複写機ドラムフランジ、複写機ドラムギア、複写機チャージャー、電子ライター着火部材等、低い接触電気抵抗と靭性とが要求される電気接点部材等が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
実施例および比較例で用いた各物性の測定方法等を以下に示す。
【0115】
〈シャルピー衝撃強度の測定方法〉
東芝機械(株)製EC75NII射出成形機を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度を90℃に設定し、射出圧力68MPa、射出時間35秒、冷却15秒の射出条件で評価用ISOダンベルを作成した。作成した評価用ISOダンベルを用いて、ISO179/1eAに基づきシャルピー衝撃強度を測定した。
【0116】
〈ギアウエルド伸度の測定方法〉
東洋機械金属(株)製TI−30G2射出成形機を用いて、シリンダー温度を200℃、金型温度80℃に設定し、射出圧力80kgf、射出時間20秒、冷却時間15秒の射出条件で、30φmm、厚み2.5mmのギア試験片を作成した。なお、このギア試験片は3点ピンゲート式であり、3箇所のウエルド部を有する。このようにして得られたギア試験片を島津製作所(株)製のオートグラフAG−IS 10kNのチャック間に固定し、チャック間距離20mm、引張速度5mm/minの条件で引張試験を行い、ウエルド部が破断したときの伸度をギアウエルド伸度(%)として求めた。
【0117】
〈成形品外観の評価方法〉
シャルピー衝撃強度を評価したものと同じISOダンベルの外観を目視により判定し、以下のような判定を行った。
【0118】
評価1:フローマークが全く見られないか、ごく一部にのみ微かに認められる。
【0119】
評価2:フローマークが全体的に微かに認められる。
【0120】
評価3:フローマークが全体的に認められる。
【0121】
評価4:フローマークが全体的にかなり認められる。
【0122】
〈導電性(体積抵抗率)の測定方法〉
上記作成した評価用ISOダンベルから30×20×4mmの平板を切り出し、四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194対応)を前記平板に押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより測定電圧90Vで前記平板の体積抵抗率を測定した。該体積抵抗率が小さい程、導電性に優れる。
【0123】
〈押出機(図1)の説明〉
本実施例のポリアセタール樹脂組成物の製造方法では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L/D=48、ベント付き)を用いた。本押出機の概略図を図1に示す。図1に示すとおり、本押出機は、1〜14:押出機のバレルゾーン(個々に独立している)、15:ダイヘッド、16:押出機モーター、17:定量フィーダー(トップ)、18:定量フィーダー(サイド1)、19:定量フィーダー(サイド2)、20:脱気ベントを備えている。
【0124】
〈ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〉
実施例及び比較例では、下記製造方法I〜VIのいずれかの方法により、ポリアセタール樹脂組成物を製造した。
【0125】
<製造方法I>
図1に示す押出機おいて、バレルゾーン1は冷却水により冷却し、バレルゾーン2及び3を180℃に、バレルゾーン4〜14およびダイヘッド15を200℃に設定した。この温度条件で、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分のドライブレンド物を定量フィーダー17より供給し、(D)成分を定量フィーダー19より供給して、20の脱気ベントより真空ポンプで脱気し、スクリュー回転数150rpm、押出量15kg/hの条件で、各成分を溶融混練することによりポリアセタール樹脂組成物を得る方法を製造方法Iとした。
【0126】
<製造方法II>
(A)成分と(B)成分とのドライブレンド物を定量フィーダー17より供給し、(C)成分と(D)成分とのドライブレンド物を19の定量フィーダーから供給した以外は、製造方法Iと同様の方法でポリアセタール樹脂組成物を得る方法を製造方法IIとした。
【0127】
<製造方法III>
(A)成分と(B)成分とのドライブレンド物を定量フィーダー17より供給し、(D)成分を定量フィーダー18より供給し、(C)成分を定量フィーダー19より供給した以外は、製造方法Iと同様の方法でポリアセタール樹脂組成物を得る方法を製造方法IIIとした。
【0128】
<製造方法IV>
(A)成分と(B)成分とを予め溶融混練、ペレタイズして2成分のマスターバッチペレットを得た後、このマスターバッチペレットと(D)成分とのドライブレンド品を定量フィーダー17より供給し、(C)成分を定量フィーダー19より供給した以外は、製造方法Iと同様の方法でポリアセタール樹脂組成物を得る方法を製造方法IVとした。
【0129】
<製造方法V>
(A)成分、(B)成分、及び(D)成分のドライブレンド物を定量フィーダー17より供給し、(C)成分を定量フィーダー19より供給した以外は、製造方法Iと同様の方法でポリアセタール樹脂組成物を得る方法を製造方法Vとした。
【0130】
<製造方法VI>
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分のドライブレンド物を定量フィーダー17より供給した以外は、製造方法Iと同様の方法でポリアセタール樹脂組成物を得る方法を製造方法VIとした。
【0131】
実施例、比較例には下記成分を用いた。
【0132】
≪ポリアセタールブロック共重合体(A)≫
〈ポリアセタールブロック共重合体A−1〉
熱媒を通すことのできるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整した。水及び蟻酸を合わせて4ppm含むトリオキサンを40モル/時間、同時に、環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを2モル/時間、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートを、トリオキサン1モルに対し5×10-5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(6)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(数平均分子量Mn=2330)をトリオキサン1モルに対し1×10-3モルになる量で、前記重合機に連続的に供給し重合を行った。
【0133】
前記重合機から排出されたポリマーを、トリエチルアミン1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を完全に行った後、そのポリマーを濾過、洗浄して、粗ポリオキシメチレン共重合体を得た。
【0134】
濾過洗浄後の粗ポリオキシメチレン共重合体1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物として、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を窒素の量に換算して20質量ppmになるよう添加し、それらを均一に混合した後、120℃で乾燥した。
【0135】
これにより、下記式(7)で表されるポリアセタールブロック共重合体(A−1)を得た。
【0136】
このようにして得られたポリアセタールブロック共重合体(A−1)の曲げ弾性率は2550MPaであり、メルトフローレートは9.3g/10分(ASTM D−1238−57T)であり、数平均分子量は52000であった。
【0137】
なお、本実施例において、曲げ弾性率はISO178に基づき測定し、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてPMMA(ポリメチルメタクリレート)換算により算出した。
【0138】
【化3】

【0139】
【化4】

≪スチレン系エラストマー(B)≫
(B−1)スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレン共重合体(商品名「タフテックH1221」、旭化成ケミカルズ(株)製、粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピーク温度(以下「tanδ」とも記す。):−33℃、スチレン量:13質量%)
(B−2)スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレン共重合体(商品名「タフテックM1943」、旭化成ケミカルズ(株)社製、tanδ:−45℃、スチレン量:19質量%)
(B−3)水素添加スチレン/ブタジエン共重合体(商品名「S.O.E L606」、旭化成ケミカルズ(株)製、tanδ:−13℃、スチレン量:40質量%以上)
(B−4)スチレン−ポリエチレン・ブチレン−スチレン共重合体(商品名「タフテックH1041」、旭化成ケミカルズ(株)製、tanδ:−45℃、スチレン量:32質量%)
前記(B−1)〜(B−4)の、粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピーク温度は、下記のようにして測定した。
【0140】
まず、幅10mm、長さ35mmのサイズの測定用のシート状試料を、レオメーター装置(商品名「ARES」、ティーエイインスツルメントー株式会社製)の捻りタイプのジオメトリーに試料をセットした。
【0141】
次いで、実効測定長さを25mm、ひずみを0.5%、周波数を1Hzに設定し、−80℃から80℃まで昇温速度3℃/分で昇温して粘弾性スペクトルを得た。
【0142】
得られた粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピーク温度は、所定のソフトウェア(商品名「RSI Orchestrator」、ティーエイインスツルメントー株式会社製)の自動測定により検出されるピークから求めた。
【0143】
また、前記スチレン量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka、et al.、RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54、685(1981)に記載の方法により得た。
【0144】
≪導電性カーボンブラック(C)≫
(C−1)プリンテックスXE2−B〔DBP吸油量:420ml/100g〕(エボニック デグサ ジャパン(株)製)
(C−2)エンサコ350G〔DBP吸油量:320ml/100g〕(ティミカル製)
なお、本実施例において、DBP吸油量は、ASTM D2415−65Tに準じて測定した。
【0145】
≪エポキシ化合物(D)≫
エポキシ化合物(D)としては、クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(エポキシ樹脂、エポキシ当量=350、軟化点=80℃、旭化成エポキシ(株)製)に、エポキシ樹脂硬化性添加剤として、トリフェニルホスフィン(北興化学工業製)とジシアンジアミド(日本カーバイト工業製)とを添加したものを用いた。
【0146】
[実施例1〜26]
各成分を表1に示す割合で配合し、それぞれ表1に示された製造方法により溶融混練を行った。押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて、上述の方法によりシャルピー衝撃強度の測定、ギアウエルド伸度の測定、成形品外観、導電性(体積抵抗率)の評価を行った。結果を表1に示した。なお、表1中、各成分の配合量の単位は質量部である。
【0147】
[比較例1〜28]
各成分を表2に示す割合で配合し、それぞれ表2に示された製造方法により溶融混練を行った。押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて、上述の方法によりシャルピー衝撃強度の測定、ギアウエルド伸度の測定、成形品外観、導電性(体積抵抗率)の評価を行った。結果を表2に示した。なお、表2中、各成分の配合量の単位は質量部である。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の製造方法により得られたポリアセタール樹脂組成物は上述のとおり、導電性、靭性、ギアウエルド伸度、及び成形品外観に優れているため、OA機器や自動車の機構部品や電気接点部材等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0151】
1〜14:押出機のバレルゾーン
15:ダイヘッド
16:押出機モーター
17:定量フィーダー(トップ)
18:定量フィーダー(サイド1)
19:定量フィーダー(サイド2)
20:脱気ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)とスチレン系エラストマー(B)とを溶融混練する工程1と、
該工程1の後、さらにエポキシ化合物(D)を添加して溶融混練する工程2と、を含むことを特徴とするポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
該工程1の後に、さらに導電性カーボンブラック(C)を添加して溶融混練する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
導電性カーボンブラック(C)を、エポキシ化合物(D)を添加した後に添加することを特徴とする請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
該工程1で得られた溶融混練物をペレタイズしてマスターバッチペレットを得る工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
ポリアセタール樹脂(A)及びスチレン系エラストマー(B)成分の合計100質量部に対して、
ポリアセタール樹脂(A)の配合量が70〜95質量部であり、
スチレン系エラストマー(B)の配合量が5〜30質量部であり、
導電性カーボンブラック(C)の配合量が5〜15質量部であり、
エポキシ化合物(D)の配合量が0.05〜10質量部であることを特徴とする請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
ポリアセタール樹脂(A)が、下記一般式(1)で表されるポリアセタールブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
H−R1−O−R3−O−R1−H (1)
(式(1)中、
1は、下記一般式(2a)で表されるオキシメチレン単位と下記一般式(2b)で表されるオキシ炭化水素単位とを複数有するブロックを示し、オキシメチレン単位とオキシ炭化水素単位とが互いにランダムに存在し、前記オキシメチレン単位と前記オキシ炭化水素単位との総量100モル%に対して、前記オキシメチレン単位の含有量が95〜99.9モル%、前記オキシ炭化水素単位の含有量が0.1〜5モル%であり、2つのR1の平均の数平均分子量が5000〜250000であり、
3は、下記一般式(3a)で表されるエチレン単位と下記一般式(3b)で表されるn−ブチレン単位と下記一般式(3c)で表わされる水素添加1,2−ポリブタジエン単位とを複数有するブロックを示し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位とが互いにランダムまたはブロックに存在し、前記エチレン単位と前記n−ブチレン単位と前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位との総量100モル%に対して、前記エチレン単位の含有量が1〜98モル%、前記n−ブチレン単位の含有量が1〜98モル%、前記水素添加1,2−ポリブタジエン単位の含有量が1〜98モル%であり、数平均分子量が500〜10000であり、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。
【化1】

(式(2b)中、R2は、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基を示し、jは2〜6の整数を示す。))
【請求項7】
ポリアセタール樹脂(A)の数平均分子量が10000〜500000であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
スチレン系エラストマー(B)のスチレン量が30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
導電性カーボンブラック(C)のフタル酸ジブチル吸油量が350ml/100g以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236905(P2012−236905A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106527(P2011−106527)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】