説明

導電性ロール及びその製造方法

【課題】導電性の芯体及び導電性弾性体層が均一な接着性と均一な電気特性とを有し、経時的にもこれらの特性を維持可能であり、長期にわたって画質欠陥を発生させることのない導電性ロール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性の芯体10と、該芯体の外周に導電性粉体を含む接着層20を介して接着された導電性弾性体層30と、を有し、前記導電性弾性体層が有極性ゴムを含む弾性体からなり、 前記接着層が、前記芯体の外周面に設けられたポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種を含有する第一の接着層と、前記導電性弾性体層の芯体側の面に設けられたポリオレフィン樹脂を含有する第二の接着層と、を有して構成される導電性ロールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機やプリンターといった電子写真装置において、帯電ロール、転写ロール、現像ロール等として用いられる導電性ロール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置の多くは、有害とされているオゾンの発生が非常に少ない接触帯電及び接触転写方式を採用しており、なかでもロール状の部材が主流となっている。該ロール状の部材は、弾性を有する材料が用いられ像保持体である感光体等に対して確実にニップの形成を可能としている。そして、これらのロールとしては、一般的にSUS、Fe等の芯金上に、カーボン、イオン導電性剤等によりその抵抗値を1×10Ω以下(本発明においては、抵抗がこの範囲にあることを「導電性」という)に調整した弾性層を設けた導電性の弾性ロールが用いられている。
【0003】
例えば、芯体の外周面に接着層を介して発泡ゴム層が形成された発泡ゴムロールにおいて、芯体の外周面と発泡ゴム層の内周面との空隙の発生が抑制された発泡ゴムロールを得るために、接着剤層に多数の粒子を含有し、この多数の粒子の粒子径が接着剤層の厚みより大きい発泡ゴムロールとその製法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、導電性の芯体の外周に沿って、該芯体に接着剤層を介して接着された導電性弾性体層を設けた導電性ロールにおいて、有極性ゴムを含んでいる導電性弾性体層と導電性芯体との密着性に優れ、かつ均一な電気特性が得られ、均一帯電、均一転写可能な導電性ロールを得るために、前記接着剤層が主鎖にエステル基を有する樹脂からなる導電性ロール及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また別の例として、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が剥がれて現像処理が不能に陥ってしまう状態を解消し、ゴム質が金属軸から短期間で剥がされることのない機械的な耐久性の強いゴムロールを提供するために、ゴムと金属軸との間の接着剤として、ロード・ファー・イースト社製のChemlok205とChemlok238をその順に金属軸に対して下塗り及び上塗りして、その上にEPDMを加硫成形して製造されるゴムロール、銀塩感光材料を搬送するゴムロール及びそれを配列した現像処理装置が提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−270640号公報
【特許文献2】特開2002−147435号公報
【特許文献3】特開2002−189278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、金属軸と導電性弾性体層と導電性を確保するため、接着層の厚みより大なる粒子径を有する多数の粒子を接着層に用いると、接着層の表面の凹凸が大きくなり、該凹凸を吸収するセルがない場合は、接着層の凹凸がロール表面の凹凸につながり、しいては帯電ムラを引き起こし、その結果画質不良が生じることがある。
また、導電性ロールとしては、導電性弾性体層と金属軸との接着強度の他に、均一な電気特性を有することが要求されている。
【0006】
さらに、導電性弾性体層に有極性ゴムを用いる場合、該有極性ゴムと金属軸との接着性は一般的にエチレンプロピレンゴムのような非極性ゴムと金属軸との接着性とは異なっていることから、有極性ゴムとも金属軸とも接着性がよい接着剤の選択は困難であり、前記むらのない接着と均一な電気特性とを得ることがますます困難となる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、導電性の芯体及び導電性弾性体層が均一な接着性と均一な電気特性とを有し、経時的にもこれらの特性を維持可能であり、長期にわたって画質欠陥を発生させることのない導電性ロール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 導電性の芯体と、該芯体の外周に導電性粉体を含む接着層を介して接着された導電性弾性体層と、を有し、
前記導電性弾性体層が有極性ゴムを含む弾性体からなり、
前記接着層が、前記芯体の外周面に設けられたポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種を含有する第一の接着層と、前記導電性弾性体層の芯体側の面に設けられたポリオレフィン樹脂を含有する第二の接着層と、を有して構成される導電性ロールである。
【0009】
<2> 前記第一の接着層における導電性粉体の含有量が0.5〜15.0重量%の範囲であり、前記第二の接着層における導電性粉体の含有量が4.0〜20.0重量%の範囲である<1>に記載の導電性ロールである。
【0010】
<3> 前記導電性粉体が、導電性を発現させるカーボンブラックである<1>または<2>に記載の導電性ロールである。
【0011】
<4> 前記カーボンブラックにおけるDBP吸油量が300〜1000cm/100gの範囲、または、BET比表面積が300〜1500m/gの範囲である<3>に記載の導電性ロールである。
【0012】
<5> 前記接着層の芯体軸方向の膜厚ばらつきが5μm以下である<1>〜<4>のいずれかに記載の導電性ロールである。
【0013】
<6> <1>〜<5>のいずれかに記載の導電性ロールの製造方法であって、
導電性の芯体表面に接着層を形成する接着層形成工程と、該接着層の外周に導電性弾性体層を形成する導電性弾性体層形成工程とを有し、
前記接着層形成工程が、前記芯体表面に第一の接着層を形成する工程と、前記接着層の最表面層となる第二の接着層を形成する工程と、を有する導電性ロールの製造方法である。
【0014】
<7> 前記接着層形成工程における第一の接着層及び第二の接着層の形成を、フローコート法を用いた塗布により行う<6>に記載の導電性ロールの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電性の芯体及び導電性弾性体層が均一な接着性と均一な電気特性とを有し、経時的にもこれらの特性を維持可能であり、長期にわたって画質欠陥を発生させることのない導電性ロール及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性ロールは、導電性の芯体と、該芯体の外周に導電性粉体を含む接着層を介して接着された導電性弾性体層と、を有し、前記導電性弾性体層が有極性ゴムを含む弾性体からなり、前記接着層が、前記芯体の外周面に設けられたポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種を含有する第一の接着層と、前記導電性弾性体層の芯体側の面に設けられたポリオレフィン樹脂を含有する第二の接着層と、を有して構成されることを特徴とする。
【0017】
電子写真方式の画像形成装置等に用いられる帯電ロールや転写ロールとしては、金属シャフト(導電性の芯体)の周囲に導電性弾性体層を設けた導電性ロールが一般的に用いられる。この導電性ロールでは、ゴム等からなる導電性弾性体層と金属シャフトとを接着するため、金属シャフト表面に接着層が設けられる。
特に導電性ロールを導電性部材として機能させるには、前記接着層に導電性粉体を混入して一定以上の導電性を付与する必要があるが、樹脂等の接着剤に前記導電性粉体を導電性確保のため混ぜると、接着性が低下し、導電性ロールの製造工程、使用時での特性変化を含めて問題となることがある。
【0018】
具体的には、弾性層を有する導電性ロールの製造工程は、まず導電性の芯体の外周に接着層を介し弾性体層を形成した後、外径研削によりクラウン形状、あるいは逆クラウン形状とし、さらに必要に応じて前記弾性体層の外周に表面層を形成するものである。ここで、接着後の芯体と弾性体層との間に微小な剥離があると、前記外径研削時にビビリ模様が生じ、その結果、該ビビリ模様が帯電不良等の画質ムラの原因となり画質欠陥が発生する。また、経時的な使用で芯体と弾性体層との接着力が劣化し、芯体がスリップして所望の電気特性が得られず、画質欠陥を発生することもある。そして、前記芯体と弾性体層との接着不良は、特に弾性体層を構成する材料が有極性ゴムの場合に顕著となる。なお、ここで有極性ゴムとは、ポリマー鎖中に極性基を有するゴムのことをいう。
【0019】
本発明者等は、前記有極性ゴムと芯体である金属との接着性を向上させるため、接着層の層構成、材料組成に注目して検討を行った。その結果、接着層を金属の接着に適した層と有極性ゴムの接着に適した層との機能分離した構造とし、さらに前記各層における導電性粉体の含有量を最適化することで、前記導電性ロールの製造工程や使用時における問題の発生を回避することができることがわかった。
【0020】
より具体的には、接着層を芯体である金属との接着性が高い第一の接着層と、有極性ゴムとの接着性の高い第二の接着層とを含む構成とし、前記第一の接着層にポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種を含有させ、前記第二の接着層にポリオレフィン樹脂を含有させる。
上記ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムは、いずれも金属と有機材料からなる部材との接着性に優れるが、これらに後述する導電性粉体を一定量(導電性を十分に確保することができる量)以上混入すると金属への接着性が十分でなくなる。一方、ポリオレフィン樹脂は有極性ゴムとの接着性にも優れるが、やはり単独で接着剤用の樹脂として用いた場合には、前記導電性粉体の混入により金属との接着性が低下してしまう。
【0021】
そこで本発明者等は、接着力維持と導電性確保とを機能分離した新たな接着層構成の構築を試みた。すなわち、接着層における金属側の層(第一の接着層)における導電性粉体の量を接着力が維持できる程度にまで低減し、この層上に、導電性を十分確保できる量の導電性粉体を含んでも有極性ゴムとの接着性に優れ、かつ前記第一の接着層等の下層の接着層との密着性にも優れた第二の接着層を形成して複数層からなる接着層とした。その結果、前記単層の接着層と同等の導電性を維持しつつ金属シャフトと有極性ゴムからなる弾性層とが均一で強固に接着した導電性ロールが得られることがわかった。
【0022】
より具体的には、前記第一の接着層における接着剤成分をポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種とするだけでなく、これに含まれる導電性粉体の量を0.5〜15.0重量%の範囲とすること、及び、前記第二の接着層における接着剤成分をポリオレフィン樹脂とし、これに含まれる導電性粉体の量を4.0〜20.0重量%の範囲とすることが好適であることが見出された。
【0023】
上記第一の接着層に含まれる導電性粉体量は3.0〜13.0重量%の範囲とすることがより望ましく、前記第二の接着層に含まれる導電性粉体量は6.0〜14.0重量%の範囲とすることがより望ましい。
また、本発明における接着層は、金属シャフト(導電性の芯体)側に第一の接着層、弾性体層側に第二の接着層を有していれば、両層の間にさらに別の接着層を設けてもよい。勿論、該別の接着層に対しても導電性を付与する必要がある。
【0024】
以下、本発明の導電性ロールの構成を実施形態により詳細に説明する。
図1は本実施形態の導電性ロールの一例を示す概略構成図であり、(a)は軸方向の断面図、(b)は軸と垂直方向の断面図である。図1(a)に示すように、本実施形態における導電性ロール100は、金属軸(導電性の芯体)10の外周に接着層20を介して導電性弾性層30が設けられ、さらにその外周には表面層40が形成されている。そして、図1(b)に示すように、接着層20は、前述のように金属軸10側の第一の接着層20A及び導電性弾性体層30側の第二の接着層20Bから構成されている。
【0025】
(導電性の芯体)
本実施形態において、金属軸10としては、鉄、ニッケルメッキ処理鉄、銅、ステンレス等、従来公知の金属を用いることができる。金属軸10の形状としては、従来から帯電部材等の芯材に用いられているシャフト状であることが一般的である。
また、図示されないが、金属軸10には外部電源が接続され、所望のバイアスが印加されるため、外部電源と共に導電性ロール100への電圧印加手段としても機能する。
【0026】
(接着層)
本実施形態では、接着層20は、第一の接着層20Aの表面に第二の接着層20Bが積層されて構成される。
第一の接着層20Aには接着剤成分として、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種が含まれる。
【0027】
オレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン・ターポリマー、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン・ターポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン・ターポリマー、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン・ターポリマーなどを挙げることができる。これらの中では、ポリエチレン系などを好適に用いることができる。
【0028】
フェノール樹脂としては熱反応性フェノール樹脂を好適に用いることができる。該熱反応性フェノール樹脂は典型的に、例えば、フェノール化合物をアルデヒド化合物と酸性、中性または塩基性条件下で適当な触媒と共に反応させることによって調製される。本実施形態に有用なフェノール樹脂は未変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂およびエラストマー変性フェノール樹脂を含む。またこれらの混合物も使用できる。
【0029】
前記フェノール化合物としては、モノヒドロキシ芳香族化合物、多ヒドロキシ芳香族化合物又はそれらの混合物を挙げることができる。また、フェノール化合物は、アルキル(例えば、エチル、プロピル、ブチル)アルコキシ、アミノ、ハロゲン、等のような基と置換してもよい。
例えば、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、o−エチルフェノール、p−クロロフェノール、p−アルコキシフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−ブロモフェノール、2−エチルフェノール、p−t−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノール、カシューナッツシエル液体、レソルシノール、フロログルシノール、カテコール、ピロカテコール、ピロガロール、ナフトール、キシレノール、ジフエニルロールプロパン、サリチル酸、ビスフェノールS、p,p’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、及びそれらの混合体、等を用いることができる。これらの中ではフェノールを好適に用いる。
【0030】
フェノール樹脂は、前記フェノール化合物の1モル当り約0.8〜5モルのアルデヒド化合物との縮合で約200〜2,000、望ましくは300〜1,200の範囲内の分子量を有する有機溶媒可溶性樹脂となる従来の方法で生成するのが望ましい。フェノール樹脂は、周知のようにアルデヒド化合物の量および触媒の種類(酸、塩基)を制御することによってレゾール又はノボラックフェノール樹脂として調製される。該ノボラックフェノール樹脂を使用する場合には、架橋剤として作用をする硬化剤を使用する必要がある。この目的の代表的架橋剤はホルムアルデヒド;パラホルムアルデヒド、s−トリオキサン、ヘキサメチレンテトラアミン、アンヒドロホルムアルデヒドアニリン、エチレンジアミンホルムアルデヒドのようなホルムアルデヒドに分解する化合物;尿素およびホルムアルデヒドのメチロール誘導体;アセトアルデヒド;フルフラール;メチロールフェノール化合物、等である。
【0031】
塩化ゴムとしては、塩素化天然ゴム、塩素含有の合成ゴムなどを挙げることができ、例えばポリクロロプレン、塩素化ポリクロロプレン、塩素化ポリブタジエン、塩素化ブタジエン・スチレン共重合体、塩素化エチレン・プロピレン共重合体およびエチレン/プロピレン/非共役ジエン・ターポリマー、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、臭化ポリ(1,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン)、α−クロロアクリルニトリルと2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、等、およびかかるハロゲンを含有するエラストマーの混合体を用いることができる。
【0032】
第一の接着層20Aには、上記ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種が含まれればよく、これらを単独で含んでも2種以上を混合して用いてもよい。また、第一の接着層20A中に接着剤成分としてこれらの樹脂あるいはゴムが主成分として含まれていればよく、その他の樹脂等が含まれていてもよい。なお、上記主成分とは接着剤成分全体の5重量%を超える量を意味する。以下同様である。
【0033】
一方、第二の接着層20Bに含まれる接着剤成分はポリオレフィン樹脂である。該ポリオレフィン樹脂としては、前記第一の接着層20Aに用いるものとして例示したポリオレフィン樹脂を同様に用いることができる。
また、第二の接着層20Bにおいても、接着剤成分としてポリオレフィン樹脂が主成分として含まれていればよく、その他の樹脂等が含まれていてもよい。
【0034】
第一の接着層20A及び第二の接着層20Bに用いることが可能な市販の接着剤としては、塩化ゴム接着剤として、ロードファーイースト社製のケムロック(Chemlok)204、同ケムロック205、同ケムロック207などの他、シリコーン樹脂接着剤として、同ケムロック607など、ポリオレフィン樹脂接着剤として同ケムロック250X、XJ150など、フェノール樹脂系接着剤として、株式会社東洋化学研究所製のメタロックU20などがあり、また、第二の接着層20Bに用いることが可能な接着剤としては、同ケムロック258などのポリオレフィン樹脂接着剤が挙げられる。
【0035】
接着層20には、接着性に加え導電性を確保するため導電性粉体が含有される。
導電性粉体としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。これらの中では、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性を発現させるカーボンブラックを好適に用いることができる。ここで、上記「導電性を発現させる」とは、当該カーボンブラックが添加された材料が、少なくとも前記導電性を有することとなることをいう。
【0036】
また、前記カーボンブラックとしては、DBP吸油量が300〜1000cm/100gの範囲、または、BET比表面積が300〜1500m/gの範囲にあるものを用いることが望ましい。DBP吸油量が300cm/100gに満たない、または、BET比表面積が300m/gに満たないと、カーボンブラック同士の凝集力が低下し少量の添加で所望の導電性を得ることができない場合がある。また、DBP吸油量が、BET比表面積が大きい場合、カーボンブラック同士の凝集力が高くなりすぎ分散性が低下する場合がある。
【0037】
前記DBP吸油量は300〜700cm/100gの範囲とすることがより好適である。また、前記BET比表面積は700〜1500m/gの範囲とすることがより好適である。
【0038】
なお、前記DBP吸油量とは、カーボンブラックの連鎖結合の長さを示す指標の一つであり、ASTM(アメリカ標準試験法)D2414−6TTに定義されている。このDBP吸油量とは、カーボンブラック100gに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の量(ml)を示すものであり、このDBP吸油量の高いカーボンブラックほど長い連鎖結合を形成するものと考えられている。本実施形態では、JIS K6217−4に準じて測定した。
また、前記BET比表面積については、ASTM D3037−78に準じて測定したものである。
【0039】
前記各接着剤成分と導電性粉体との混合は、例えば接着剤成分である前記樹脂やゴムを溶剤に溶解し、この溶液に所望量のカーボンブラック等の導電性粉体を加え分散することにより行うことができる。該分散は、自転公転方式のミキサー、アジテータミル、三本ロールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ビーズミル、コロイドミルなど公知の分散装置を用いて行なうことができる。また、分散性調整のために接着剤を予め溶剤希釈し使用してもよく、溶剤としては、キシレン、メチルエチルケトン、トルエンなどを用いることができる。
こうして得られた分散液を、接着層形成用塗布液として用いることができるが、塗布性や膜厚調整のために、前記溶剤により希釈して使用してもよい。
【0040】
本実施形態においては、前記第一の接着層20Aにおける導電性粉体の含有量を0.5〜15.0重量%の範囲とし、前記第二の接着層20Bにおける導電性粉体の含有量を4.0〜20.0重量%の範囲とすることが望ましい。両接着層における導電性粉体の含有量を上記範囲とすることにより、金属軸10と両極性ゴムである導電性弾性体層30との強固な接着を維持しつつ導電性を確保することができる。
第一の接着層20Aにおける導電性粉体の含有量は3.0〜13.0重量%の範囲とすることがより望ましく、前記第二の接着層20Bにおける導電性粉体の含有量は6.0〜14.0重量%の範囲とすることがより望ましい。
また、導電性粉体の含有量を上記好適な範囲とするため、前記接着層形成用塗布液の作製において、接着剤成分と導電性粉体との比率を調整することが望ましい。
【0041】
接着層20は、例えば、後述するように前記接着層形成用塗布液を金属軸10の外周に刷毛を用いて塗布すること等により形成されるが、第一の接着層20A及び第二の接着層20Bの膜厚は、共に4〜15μmの範囲とすることが望ましく、6〜10μmの範囲とすることがより好適である。
膜厚が4μm未満であると、必要な接着強度が得られない場合があり、また15μmを超える膜厚を得る場合には、厚膜化に伴い接着層自体のヒビ割れ等の不具合が発生する可能性がある。
【0042】
また、第一の接着層20A及び第二の接着層20Bを含めた複数層からなる接着層全体の厚さは10〜30μmの範囲とすることが望ましく、12〜20μmの範囲とすることがより好適である。
総膜厚が10μm未満であると、必要な接着強度が得られない場合があり、また30μmを超える膜厚を得る場合は、厚膜化に伴い接着層自体のヒビ割れ等の不具合が発生する可能性がある。
【0043】
さらに、接着層20の膜厚ばらつきは5μm以下であることが望ましく、3μm以下であることがより好適である。膜厚ばらつきが5μmを超えると、導電性ロールの軸方向で、金属軸10と導電性弾性体層30との接着性に不均一な箇所が発生しやすくなり、前記研磨工程でロール表面性等に不良が出やすくなる場合がある。
接着層20の膜厚は、形成された接着層と軸表面との段差を触針式の表面粗さ測定装置(東京精密社製、サーフコム575A)を用いて測定することにより求めた。なお、前記膜厚ばらつきは、金属軸10における中央と、導電性弾性体層30形成領域の両端部から10mmの位置との3点について測定し、その最大値と最小値との差として求められるものである。また、前記各層の膜厚は、上記3点の測定値の平均値である。
【0044】
なお、導電性弾性体層まで形成された導電性ロールについて接着層の膜厚を求めるには、ロールを軸と垂直方向に切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより確認することができる。また、接着層に含まれる接着剤成分、カーボンブラック種・含有量については、接着層を各層ごとに分離して定法により分析することにより確認することができる。
【0045】
(導電性弾性体層)
本実施形態において、導電性弾性体層30は導電性を有する弾性体からなり、該弾性体が有極性ゴムを含む。このようなものであれば、特に材料や組成は限定されないが、通常、ベースとなる基材に導電性物質を分散、配合してなる。導電性物質としては、有機イオン導電性物質、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられる。
【0046】
前記有極性ゴムとは、ポリマー鎖中にカルボニル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基等の極性基を有するゴムであり、例えばアクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴムを挙げることができる。前記有極性ゴムとしては、エピクロルヒドリンゴムが好ましい。エピクロルヒドリンゴムに他の有極性ゴムをブレンドして用いても良い。
【0047】
また、導電性弾性体層30の基材としては、前記エピクロロヒドリンゴムを主体とするものであることが、ゴム自身の電気的特性(抵抗の均一性、安定性等)の点で好ましい。なお、「エピクロロヒドリンゴムを主体とする」とは、基材成分の主たる成分がエピクロロヒドリンゴムであることを指し、基材成分の50重量%以上占めるものは、「主体とする」の概念中に含まれる。
【0048】
導電性弾性体層30の基材としては、エピクロロヒドリンゴムを主体としつつ、さらに第2のゴム成分を1〜5質量%含有することが望ましい。第2のゴム成分を含有することで、電気的特性を維持しながら加工性を向上することができる。第2のゴム成分が1質量%未満では、第2のゴム成分を含有することによる効果が得られず、第2のゴム成分が5質量%を超えると、主体成分の電気的特性を阻害するおそれがある。
第2のゴム成分としては、基材の材料として挙げた既述のゴム材料だけでなく非極性ゴムも用いることができるが、特に、アクリルゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、及びウレタンゴムから選ばれる少なくとも1種を用いることが、主体成分の電気的特性に影響を与えない点で好ましい。
【0049】
有機イオン導電性物質としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0050】
前記導電性物質である有機イオン導電性物質としては、多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびその誘導体と金属塩との錯体、モノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)と金属塩の錯体も挙げられる。金属塩としては、例えばLiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiBF4、NaClO4、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;NH4+の塩等の電解質;Ca(ClO42、Ba(ClO42等の周期律表第2族の金属塩;これらに、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等イソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったもの;等が挙げられる。
【0051】
また、導電性物質として用いられる金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0052】
さらに、導電性物質としてカーボンブラックを用いることができるが、特に酸性のカーボンブラックを用いると、一部に過剰な電流が流れ、繰り返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくく、さらに、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、基材への分散性が高く、抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、通電による電界集中が起き難くなる。その結果、通電による抵抗変化を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少なく、均一帯電が可能である。このため、カーボンブラックの大きな凝集体に起因する電場集中、絶縁破壊によって発生すると考えられるピンホールリーク等のリーク放電を防止することができ、トナーの固着をも防止することができる。さらに抵抗変化や抵抗のバラツキによる帯電ムラやリーク放電に起因する画質欠陥、環境変動による画像濃度の変動が少なくなり、長期に渡り高画質画像を得ることができる。
【0053】
導電性物質は、前記基材中に単独で配合してもかまわないが、任意の2種以上を配合してもよく、弾性体層としての電気抵抗(表面抵抗率、体積抵抗率)の他、力学強度、硬度、反発弾性率等のシステム全体としての要求に合致するように配合することができる。導電性物質の基材ヘの配合量としては、システム全体としての要求を満足するように適宜調整すればよいが、基材100重量部に対して、1〜30重量部程度とすることが好ましい。
【0054】
導電性弾性体層30には、前記基材、導電性物質の他に、必要に応じて、硬化剤、可塑剤、加硫促進剤等を用いてもよい。また、発泡させる場合、適宜発泡剤等も用いることができる。
導電性弾性体層30の厚みとしては、特に限定されないが、1〜10mm程度とすることが好ましく、2〜5mm程度とすることがより好ましい。
【0055】
(その他の層)
本実施形態においては、導電性弾性層上に表面層40が設けられている。表面層40は、抵抗調整のほか、導電性弾性体層30からのブリード物のブロッキング、汚染物からの保護等の働きを担う層であり、必要に応じて設けられる。表面層40は、ベースとなる基材に導電性物質を分散してなるものである。導電性物質としては、有機イオン導電性物質、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられる。
【0056】
前記基材としては、像保持体やトナーに対する非粘着性に優れる材料を用いることが好ましく、具体的には、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらを主成分とする樹脂成分を挙げることができる。表面層40として、これら非粘着性の材料を用いることで、導電性ロール100が接触する感光体などへの汚染や、導電性ロール表面へのトナー固着防止に対して優れた効果を期待できる。
【0057】
前記導電性物質としての導電性物質は、導電性弾性体層30の項において説明したものと同様のものを用いることができるが、特に表面層40にカーボンブラックを用いることが、ブリードを防止する観点から好ましい。
【0058】
表面層40は、導電性弾性体層30の電気特性及び機能を損なわないよう、薄肉かつ均一で、表面性が良好であることが必要とされる。そのため表面層40の形成は、一般的に樹脂を溶剤に希釈し、スプレー塗装やディッピング処理により行われる。
表面層40の好ましい厚みは、0.001〜0.03mmの範囲であることが好ましく、0.003〜0.015mmの範囲であることがより好ましい。
【0059】
以上の構成からなる導電性ロール100は、その用途により、硬度、表面特性(表面粗さ、硬度、摩擦係数)や電気特性(電気抵抗)等が調整される。かかる導電性ロール100の電気特性や表面特性等の諸条件を、適宜、調整することで、帯電手段、転写手段(中間転写方式における1次、2次の双方の転写手段も含む)、更には、除電手段等にも好適に用いることができる。
【0060】
表面特性として具体的には、ロール硬度は、JIS K 7312に記載されているアスカーC硬度で、10度〜80度の範囲に調整されることが好ましく、より好ましくは、帯電手段として用いる場合には、20度〜70度の範囲であり、転写手段として用いる場合には、10度〜50度の範囲である。
【0061】
電気特性として具体的には、導電性ロール100のロール抵抗値は、10〜1010Ωの範囲に調整されていること好ましく、より好ましくは、帯電手段として用いる場合10〜10Ωの範囲である。
【0062】
次に、本発明の導電性ロールの製造方法について説明する。
本発明の導電性ロールの製造方法は、導電性の芯体表面に接着層を形成する接着層形成工程と、該接着層の外周に導電性弾性体層を形成する導電性弾性体層形成工程とを有し、前記接着層形成工程が、前記芯体表面に第一の接着層を形成する工程と、前記接着層の最表面層となる第二の接着層を形成する工程と、を有する。そして、この製造方法により前記本発明の導電性ロールを好適に得ることができる。以下、実施形態を示す。
【0063】
(接着層形成工程)
前記接着層形成工程は、少なくとも第一の接着層及び第二の接着層を含む接着層を、各層ごとに前述の好適な構成となるように形成する工程であり、前記のように接着層形成用塗布液を用いた塗布により行うことが望ましい。
具体的には、前記接着層形成用塗布液を金属軸に塗布する際は、該金属軸の両端を固定しこれを軸方向に回転させ、接着層形成用塗布液を含ませた刷毛を金属軸の長手方向に移動させ、該金属軸の外周に均一に塗布できる塗布装置を用いることが望ましい。この場合、複数本の刷毛を用いて塗布することにより、短時間で塗布することもでき、また一定量の接着層形成用塗布液を刷毛に供給する装置を取り付けることもできる。
【0064】
本実施形態では、上記刷毛塗り法の他に、浸漬法、スプレー法、フローコート法、ロールコーター法など公知の塗布方法を用い塗布することもできる。特に、前記のように導電性ロールの軸方向の接着性を均一とするためには、接着層の膜厚のばらつきをできる限り小さくすることが望ましく、その観点からは前記フローコート法を用いることが好適である。
【0065】
は、前記フローコート法を用いた塗布装置の一例の主要部分を示す概略構成図である。
塗布装置1では、被塗布物である金属軸2が回転可能に挟持されている。図示しないが、金属軸2は、金属軸2が水平に回転可能(矢印A)に支持するアームを有する台座に保持部材を介して配設されている。また、図示しないが、金属軸2は、金属軸2を軸回転させるための駆動手段(回転手段)と保持部材を介して連結されている。
【0066】
金属軸2の周辺には、接着層形成用塗布液を吐出して金属軸2に塗布液を付着させるディスペンサー5が配置されている。ディスペンサー5は、接着層形成用塗布液が充填されるシリンジ11と、該塗布液を吐出する吐出ニードル14と、吐出ニードル14に塗布液を供給する液送チューブ13と、を備える。
また、金属軸2の周辺には、金属軸2に付着した塗布液を平滑化する平滑化手段であるへら15が備えられている。へら15は、塗布液に侵されない材料、例えば、ポリエチレンやフッ素樹脂等のプラスチック、又は、真鍮やステンレス、アルミニウム等の金属の薄い板から構成することができる。へら15は、不図示の圧接手段により、一定の圧力で金属軸2に圧接される。金属軸2とへら15との圧接部が平滑化部を構成する。
【0067】
吐出ニードル14及びへら15は、接着層形成用塗布液の金属軸2への付着及び平滑化に伴い、金属軸の回転毎に付着部及び平滑化部が相対的に金属軸2の一端から他の一端へ水平方向(矢印B)に移動される。この構成は、図示しないが、吐出ニードル14及びへら15を移動させる構成としてもよいし、金属軸2が移動する構成としてもよく、周知の技術により構成することができる。
【0068】
本実施形態の塗布装置1では、まず、金属軸2を矢印A方向に回転させながら、吐出ニードル14から、接着層形成用塗布液を吐出させて金属軸2に塗布液を付着させる。これと共に、金属軸2への圧接力が調整されたへら15により金属軸2に付着した塗布液が平滑化される。そして、金属軸2の回転毎に付着部及び平滑化部を、金属軸2の一端から他の一端へ水平方向(矢印B)に移動させる。このようにして、接着層形成用塗布液が金属軸2外周面に塗布され、接着層(塗膜)が形成される。
また、前記平滑化手段としては、図(b)に示した塗布装置1aのように、一定圧力でエアーを吐出するノズル17としてもよい。
【0069】
本実施形態においては、塗布時の金属軸2の回転数を300〜800rpmの範囲としたとき、塗布装置1の吐出ニードル14からの塗布液の吐出量を1〜7g/minの範囲とすることが望ましく、また吐出ニードル14及びへら15の移動速度を800〜1300mm/minの範囲とすることが望ましい。
【0070】
なお、本実施形態のように複数層からなる接着層を形成する場合には、1層の接着層を形成するごとに室温にて十分な乾燥を行うことが望ましい。ただし、第一の接着層については、金属軸との接着性を高める目的で適度な加熱乾燥を行うことが更に望ましい。加熱乾燥の場合は100〜170℃の範囲で行うことが望ましい。
そして、最終的に金属軸2の表面設けられた第一の接着層と、接着層の最表面に設けられ導電性弾性体層と接する第二の接着剤層とを有する接着層が形成される。
【0071】
(導電性弾性体層形成工程)
導電性弾性体層は、まず、例えば前記基材成分及び導電性物質等をタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ローラ、押出機等の如き混合機により混練して、コンパウンドを作製する。この場合、各成分の混合方法、混合の順序は特に限定されることはない。一般的な方法としては、全成分をあらかじめタンブラー、Vブレンダー等で混合し、押出機によって均一に溶融混合する方法であるが、成分の形状に応じてこれらの成分中の2種以上の溶融混合物に残りの成分を溶融混合する方法を用いることもできる。
【0072】
次いで、上記コンパウンド化したものを金属軸に巻き付けてプレスすることにより、あるいは、射出成型等の公知の成型法により、導電性弾性体層を形成することができる。さらに、表面を平滑化するため、あるいは外径を適正化するため、ゴム表面を回転砥石を備えた研磨機等で研磨することが望ましい。なお、この研磨工程において、金属軸と導電性弾性体層との接着が不十分であると、ロール表面のビビリ模様の発生や、外径不良さらにはそれに伴う電気特性不良が発生しやすい。
【0073】
以上のようにして、導電性弾性体層を有する導電性ロールを得ることができるが、さらに前記のように、必要に応じて表面層を形成する。
表面層の形成に際しては、導電性弾性体層表面に表面層を構成する材料を含む塗布液を浸漬塗布等の公知の塗布法を利用して塗膜を形成し、この塗膜を加熱乾燥させて表面層を形成してもよい。また、予めチューブ状に形成した表面層を導電性弾性体層表面にかぶせて、形成してもよい。なお、チューブ状の表面層を用いる場合には、接着剤を用いて導電性弾性体層表面と接着固定してもよい。あるいは、金属軸および導電性弾性体層からなるロールの外径よりも、内径が若干小さいチューブ状の表面層を用いる場合は、チューブ状の表面層の内周側に空気等の流体を注入した状態とし、この状態で表面層内周側にロールを挿入し、その後、流体の注入を停止させることで導電性弾性体層表面に表面層を固定してもよい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0075】
<実施例1>
(導電性ロールの作製)
−プライマー(接着層形成用塗布液)の調製−
塩素ゴム系接着剤(ケムロック204、ロードファーイースト社製)に、カーボンブラックとしてライオン社製ケッチェンブラックEC(DBP吸油量:360cm/100g、BET比表面積:800m/g)を、接着剤の固形分に対して2.2%となるように添加し、自転公転方式のミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)で5分間分散することで分散液を作製した。その後、前記の接着剤の総量に対し10%となるようにキシレンを添加し攪拌することで、プライマーAを調製した。
【0076】
一方、ポリオレフィン系接着剤(ケムロック258、ロードファーイースト社製)に、カーボンブラックとしてライオン製ケッチェンブラックECを、接着剤の固形分に対して2.5%となるように添加し、前記プライマーAと同様に自転公転方式のミキサーで分散することで分散液を作製した。その後、接着剤の総量に対し30%となるようにキシレンを添加し攪拌することで、プライマーBを調製した。
【0077】
−接着層の形成−
SUM材(JIS G4804)からなり、表面にメッキを施した直径8mmの円柱状の金属軸を、アセトンで洗浄・脱脂した後、該金属軸を回転可能に固定でき塗布部材としての刷毛が軸方向に移動する塗布装置にセットし、プライマーAを金属軸の外周に均一に塗布した。
次いで、室温で1時間乾燥後、オーブンに入れ170℃で10分間焼き付け、接着層A(第一の接着層)を形成した。該接着層Aの一部を剥がし、接着層Aの膜厚を触針式の表面粗さ測定装置(東京精密社製、サーフコム575A)を用いて測定した結果、7μmであった。
【0078】
次に、接着層Aを形成した金属軸の外周に、前記接着層Aの形成と同様にして、刷毛でプライマーBを塗布し、室温で1時間乾燥後、オーブンに入れ170℃で10分間焼き付け、接着層Aの外周に接着層B(第二の接着層)を形成した。接着層Bの一部を剥がし、接着層A及び接着層Bの総膜厚を、前記と同様に測定した結果15μmであり、また膜厚ばらつきは5μmであった。
【0079】
−導電性弾性体層の形成−
前記接着層Aと接着層Bとを有する金属軸を、内径約15mm、長さ約330mmの円筒状の金型に金属軸が中心となるようにセットし、エピクロルヒドリンゴムを主成分とした有極性ゴムに導電性物質を練りこんだコンパウンドを、加熱した前記金型内に射出し、厚さ約3.5mmの弾性層を有するゴムロールを得た。
上記ゴムロールを回転型砥石研磨機にセットし、外形形状が所定のクラウン形状になるよう研磨した。次いでロール表面を洗浄した後、浸漬法にて導電性塗料(ポリエステル樹脂及び導電剤としてのカーボンブラックを含む)を塗布し、乾燥・焼付けを行って厚さ7μmの表面層を形成して、外径が14mmの導電性ロール(1)を得た。
【0080】
(評価)
−プライマーの塗布性−
前記プライマーAの金属軸に対する塗布性を、目視により以下の基準により評価した。
◎:金属軸表面にむらなく塗布でき、塗布後の塗膜表面が平滑である。
○:塗膜表面は平滑でないが、むらなく塗布できる。
△:金属軸の露出はないが、一見して塗膜の膜厚むらが確認できる。
×:金属軸表面が露出する塗布ムラが発生。
【0081】
−接着性−
接着性は、プライマーA形成後、プライマーB形成後、導電性弾性体層形成後において確認を行い、以下の基準により評価した。
◎:導電性弾性体層形成後、手で弾性体を剥ごうとすると弾性体が破壊する。
○:導電性弾性体層形成後、手で弾性体を剥ごうとすると接着剤付近で剥がれる。
△:接着層B形成後、爪で接着層Bが容易に剥がれてしまう。
×:接着層A形成後、爪で接着層Aが容易に剥がれてしまう。
【0082】
−研磨性−
前記導電性ロール(1)の作製と同様にして、研磨前までのゴムロールを用意した。このゴムロールについて、前記と同様に回転型砥石研磨機にて研磨を行い、表面のビビリ模様や凹み等の外観不良発生の有無、形状(外径、振れ等)不良発生の有無を確認し、以下の基準により評価した。
○:外観、形状不良の発生なく、良好である。
△:外観または形状のどちらか一方に不良が発生している。
×:外観及び形状不良が発生している。
【0083】
−ロール部品特性−
前記プライマーの塗布性、接着性、研磨性評価において得に問題はない水準について、前記研磨後のゴムロール表面に導電性塗料を塗布した導電性ロール(1)を作製した。この導電性ロールについて部品特性評価として、帯電性能、画出し等の確認を行い、以下の基準により評価した。
○:特に問題なく、良好である。
×:満足できない評価項目がある。
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0084】
<実施例2〜8、比較例1>
実施例1の導電性ロールの作製において、接着層A、Bの形成に用いるプライマーの配合(接着剤種、カーボンブラック量)を各々表1に示すように変更し、粘度調整目的でキシレンの添加量を変化させた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0085】
<実施例9>
実施例1の導電性ロールの作製において、プライマーの調製にカーボンブラックとして、コロンビアン・カーボン社製Conductex975U(DBP吸油量:170cm/100g、BET比表面積:242m/g)を用い、プライマーAにおけるカーボンブラック含有量を4.3%、プライマーBにおける含有量を12.3%とし、粘度調整目的でキシレンの添加量を変化させた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0086】
<実施例10>
実施例6の導電性ロールの作製において、塗布装置として、図2(a)に示すフローコート法によるものを用い、粘度調整目的でキシレンの添加量を変化させた以外は、同様にして導電性ロールの作製を行った。なお、塗布時の金属軸2の回転数は600rpm、吐出ニードル14及びへら15の移動速度は950mm/minとした。また、接着層A、Bの膜厚調整は、塗布液の塗出量及びへら15の押圧の調整等により行った。このときの接着層の膜厚は15μm、膜厚ばらつきは1.5μmであった。
得られた導電性ロールを用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1にまとめて示す。
【0087】
<比較例2>
塩素ゴム系接着剤(ケムロック204、ロードファーイースト社製)に、カーボンブラックとしてライオン社製ケッチェンブラックEC(DBP吸油量:360cm/100g、BET比表面積:800m/g)を、接着剤の固形分に対して4.3%となるように添加し、自転公転方式のミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)で5分間分散することで分散液を作製した。その後、前記の接着剤の総量に対し10%となるようにキシレンを添加し攪拌することで、プライマーを調製した。
【0088】
実施例1の導電性ロールの作製において、接着層の形成を上記プライマーを用いて1層のみ(膜厚:7μm)とした以外は、実施例1と同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0089】
<比較例3>
ポリオレフィン系接着剤(ケムロック258、ロードファーイースト社製)に、カーボンブラックとしてライオン社製ケッチェンブラックECを、接着剤の固形分に対して12.3%となるように添加し、前記比較例2と同様に自転公転方式のミキサーで分散することで分散液を作製した。その後、接着剤の総量に対し50%となるようにキシレンを添加し攪拌することで、プライマーを調製した。
【0090】
実施例1の導電性ロールの作製において、接着層の形成を上記プライマーを用いて1層のみ(膜厚:7μm)とした以外は、実施例1と同様の評価を行った。
結果をまとめて表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示すように、実施例の接着剤種及びカーボンブラック含有量が調整された複数の接着層を有する導電性ロールでは、塗布性、接着性に優れるだけでなく、研磨性やロール部品特性も含めた良好な特性が得られた。一方、比較例では、研磨性やロール部品特性等のいずれかにおいて何らかの問題が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の導電性ロールの一例を示す概略構成図であり、(a)は軸方向の断面図、(b)は軸と垂直方向の断面図である。
【図2】フローコート法を用いた塗布装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
1、1a 塗布装置
2、10 金属軸
5 ディスペンサー
11 シリンジ
12 プライマー
13 液送チューブ
14 吐出ニードル
15 へら
17 ノズル
20 接着層
30 導電性弾性体層
40 表面層
100 導電性ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯体と、該芯体の外周に導電性粉体を含む接着層を介して接着された導電性弾性体層と、を有し、
前記導電性弾性体層が有極性ゴムを含む弾性体からなり、
前記接着層が、前記芯体の外周面に設けられたポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂及び塩化ゴムの中から選択される少なくとも1種を含有する第一の接着層と、前記導電性弾性体層の芯体側の面に設けられたポリオレフィン樹脂を含有する第二の接着層と、を有して構成されることを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
前記第一の接着層における導電性粉体の含有量が0.5〜15.0重量%の範囲であり、前記第二の接着層における導電性粉体の含有量が4.0〜20.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
前記導電性粉体が、導電性を発現させるカーボンブラックであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ロール。
【請求項4】
前記カーボンブラックにおけるDBP吸油量が300〜1000cm/100gの範囲、または、BET比表面積が300〜1500m/gの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の導電性ロール。
【請求項5】
前記接着層の芯体軸方向の膜厚ばらつきが5μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ロールの製造方法であって、
導電性の芯体表面に接着層を形成する接着層形成工程と、該接着層の外周に導電性弾性体層を形成する導電性弾性体層形成工程とを有し、
前記接着層形成工程が、前記芯体表面に第一の接着層を形成する工程と、前記接着層の最表面層となる第二の接着層を形成する工程と、を有することを特徴とする導電性ロールの製造方法。
【請求項7】
前記接着層形成工程における第一の接着層及び第二の接着層の形成を、フローコート法を用いた塗布により行うことを特徴とする請求項6に記載の導電性ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−250257(P2008−250257A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95072(P2007−95072)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】