説明

導電性微粒子、異方性導電材料、及び、接続構造体

【課題】導通不良防止とともに接続抵抗の低減化が可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供する。
【解決手段】基材樹脂微粒子と、前記基材樹脂微粒子の表面に形成された表面に突起を有する導電層とからなる導電性微粒子であって、20℃で測定した粒子直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が3500〜60000N/mm、圧縮変形回復率が10〜100%である導電性微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通不良防止とともに接続抵抗の低減化が可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性微粒子は、バインダー樹脂や粘接着剤等と混合、混練することにより、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等の異方性導電材料として広く用いられている。
【0003】
これらの異方性導電材料は、例えば、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、回路基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品を回路基板に電気的に接続したりするために、相対向する回路基板や電極端子の間に挟み込んで使用されている。
【0004】
このような異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、従来、粒子径が均一な樹脂粒子等の非導電性微粒子の表面に、導電層として金属メッキ層を形成させた導電性微粒子が用いられている。しかしながら、このような導電性微粒子を用いて回路基板等同士を電気的に接続すると、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間にバインダー樹脂等がはさまり、導電性微粒子と回路基板等との間の接続抵抗が高くなることがあった。また、回路基板としては、通常、アルミニウム、ニッケル、銅等が用いられているが、これらの表面には絶縁性の酸化物層が形成されていることがあり、導電性微粒子と回路基板等とが接続不良を起こすことがあった。
【0005】
このような問題に対し、導電性微粒子と回路基板等との接続抵抗を低減する目的で、表面に突起を有する導電性微粒子や硬質の樹脂微粒子にメッキを施した導電性微粒子が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの導電性微粒子は、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間に存在するバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を突き破ることで、導電性微粒子表面と回路基板等とを確実に接続させ、導電性微粒子と回路基板等との間の接続抵抗の低減を図っている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような突起を有する導電性微粒子は、回路基板等に挟んで導電圧着をすると、圧着による力を基材微粒子が吸収してしまうため、突起が存在してもバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を突き破ることができず、充分な接続抵抗の低減が得られず、また、特許文献2に記載されているような硬質の樹脂微粒子にメッキを施した導電性微粒子は、回路基板等に挟んで圧着して変形させたときの回復率が劣ることから、断線の原因となることがあり、実際には充分な接続抵抗の低減が得られているとは言えなかった。
【特許文献1】特開2000−243132号公報
【特許文献2】特開平09−127520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、導通不良防止とともに接続抵抗の低減化が可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材樹脂微粒子と、前記基材樹脂微粒子の表面に形成された表面に突起を有する導電層とからなる導電性微粒子であって、20℃で測定した粒子直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が3500〜60000N/mm、圧縮変形回復率が10〜100%である導電性微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、回路基板等の電気的接続の際に用いる導電性微粒子として、表面に突起を有する導電層を有し、一定範囲の10%K値及び圧縮変形回復率を有する導電性微粒子を用いることにより、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間のバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を確実に突き破ることができ、また、回路基板等に挟んで圧着して変形させたときの回復率が高いことから、断線の原因となることがなく、接続抵抗を確実に低減化させることが可能となり、高い信頼性で回路基板等を接続することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の導電性微粒子は、基材樹脂微粒子と、上記基材樹脂微粒子の表面に形成された突起を有する導電層からなる。
【0011】
本発明の導電性微粒子は、20℃で測定した粒子直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)の下限が3500N/mm、上限が60000N/mmである。10%K値が3500N/mm未満であると、導電性微粒子を回路基板等の間に挟んで導電圧着した際に、圧着による力を基材樹脂微粒子が吸収してしまうため、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間のバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を突き破ることが困難となり、60000N/mmを超えると、導電性微粒子が硬くなりすぎ、回路基板等の間に挟んで圧着した際に、回路基板等が破損してしまうことがある。好ましい下限は7000N/mm、好ましい上限は30000N/mmである。
【0012】
本発明の導電性微粒子は、20℃で測定した圧縮変形回復率の下限が10%、上限が100%である。圧縮変形回復率が10%未満であると、導電性微粒子の弾力性が低下し、電極間の接続に用いたときに、導電性微粒子と回路基板との間にギャップを生じ、接続信頼性が低下する。好ましい下限は20%、好ましい上限は95%である。
【0013】
上記10%K値は、微小圧縮試験機(PCT−200、島津製作所社製)を用いて一辺が50μmの四角柱の平滑端面で、上記導電性微粒子を圧縮速度2.646mN/秒、最大試験荷重98mNで圧縮することにより測定することができる。
【0014】
上記10%K値は、下記式により求めることができる。
K=(3/√2)・F・S−3/2・R−1/2
F:導電性微粒子の10%圧縮変形における荷重値(N)
S:導電性微粒子の10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:導電性微粒子の半径(mm)
【0015】
上記圧縮変形回復率とは、上記微小圧縮試験機にて導電性微粒子を反転荷重値9.8mNまで圧縮した後、逆に荷重を減らしていくときの、荷重値と圧縮変位との関係を測定して得られる値であり、荷重を除く際の終点を原点荷重値0.98mN、負荷及び除負荷における圧縮速度0.2842mN/秒として測定され、反転の点までの変位(L1)と反転の点から原点荷重値を取る点までの変位(L2)との比(L2/L1)を百分率にて表した値である。
【0016】
上記基材樹脂微粒子としては特に限定されないが、例えば、テトラメチロールメタンテトラアクリレートとアクリロニトリル、トリメチロールプロパントリアクリレートとアクリロニトリル、トリメチロールプロパントリアクリレートとメタクリロニトリル、スチレンとジビニルベンゼン、ジビニルベンゼンとトリメチロールプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼンとアクリロニトリル等の組み合わせによるモノマー成分を用いて、常法に従って重合して得られる共重合体や、ジビニルベンゼン系樹脂等が挙げられる。
【0017】
上記基材樹脂微粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。1μm未満であると、例えば、無電解メッキをする際に凝集しやすく、単粒子としにくくなることがあり、20μmを超えると、異方性導電材料として回路基板等に用いられる範囲を超えることがある。
なお、上記基材樹脂微粒子の平均粒子径は、無作為に選んだ50個の基材樹脂微粒子について粒子径を測定し、これらを算術平均したものとする。
【0018】
本発明の導電性微粒子を導電圧着した際に、突起が基材樹脂微粒子に食い込む場合には、上記基材樹脂微粒子は、表面に無機物からなる硬質層を有することが好ましい。上記基材樹脂微粒子が表面に無機物からなる硬質層を有することで、突起が基材樹脂微粒子に食い込むのを防ぐことができるため、本発明の導電性微粒子を回路基板等の間に挟んで導電圧着した際に、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間のバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を確実に突き破ることが可能となる。
上記無機物としては特に限定されず、例えば、シロキサンや、ニッケル等の金属が挙げられる。
【0019】
上記硬質層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は5nm、好ましい上限は500nmである。5nm未満であると、突起が基材樹脂微粒子に食い込むことがあり、硬質層としての充分な性能を発揮できないことがあり、500nmを超えると、メッキが剥がれやすくなる。
【0020】
上記突起の形態としては特に限定されず、本発明の導電性微粒子を回路基板等の間に挟んで導電圧着したときに、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間のバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を突き破る程度の硬さを有するものであれば特に限定されず、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等の導電性物質を芯物質とする突起が挙げられる。なかでも、導電性に優れることから金属が好適に用いられる。
【0021】
上記金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等の金属;錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−鉛−銀合金等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、銀、金等が好ましい。
【0022】
上記突起の平均高さとしては特に限定されないが、好ましい下限は基材樹脂微粒子の粒子直径の0.5%、好ましい上限は基材樹脂微粒子の粒子直径の25%である。0.5%未満であると、充分に導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間のバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を突き破れないことがあり、25%を超えると、突起が回路基板等に深くめり込み、回路基板等を破損させるおそれがある。より好ましい下限は基材樹脂微粒子の粒子直径の10%、より好ましい上限は基材樹脂微粒子の粒子直径の17%である。
なお、突起の平均高さは、無作為に選んだ50個の導電層上にある凸部の高さを測定し、それを算術平均して突起の平均高さとする。このとき、突起を付与した効果が得られるものとして、導電層上の10nm以上の凸部のものを突起として選ぶものとした。
【0023】
上記導電層を構成する金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等の金属;錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−鉛−銀合金等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、金等が好ましい。
【0024】
上記導電層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10nm、好ましい上限は500nmである。10nm未満であると、所望の導電性が得られないことがあり、500nmを超えると、基材樹脂微粒子と導電層との熱膨張率の差から、上記導電層が剥離しやすくなることがある。
また、上記導電層には、リンやホウ素等の非金属成分が含有されていてもよい。
なお、上記導電層の厚さは、無作為に選んだ10個の粒子について測定し、これらを算術平均した厚さである。
【0025】
本発明の導電性微粒子は、更に、導電層の表面に金層が形成されていることが好ましい。導電層の表面に金層を施すことにより、導電層の酸化防止、接続抵抗の低減化、表面の安定化等を図ることができる。
【0026】
上記金層の形成方法としては特に限定されず、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、還元メッキ、スパッタリング等の従来公知の方法が挙げられる。
【0027】
上記金層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は100nmである。1nm未満であると、導電層の酸化を防止することが困難となることがあり、接続抵抗値が高くなることがあり、100nmを超えると、金層が導電層を侵食し、基材樹脂微粒子と導電層との密着性を悪くすることがある。
【0028】
本発明の導電性微粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、まず、基材樹脂微粒子の表面に触媒付与を行い、基材樹脂微粒子の表面に芯物質を付着させ、後述する無電解メッキにより導電層を形成する方法;基材樹脂微粒子の表面を、無電解メッキにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解メッキにより導電層を形成する方法;上述の方法において無電解メッキの代わりにスパッタリングにより導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0029】
上記芯物質を付着させる方法としては特に限定されず、例えば、基材樹脂微粒子の分散液中に、芯物質となる導電性物質を添加し、基材樹脂微粒子の表面上に芯物質を、例えば、ファンデルワールス力により集積させ付着させる方法;基材樹脂微粒子を入れた容器に、芯物質となる導電性物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材樹脂微粒子の表面上に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。なかでも、付着させる芯物質の量を制御し易いことから、分散液中の基材樹脂微粒子の表面上に芯物質を集積させ付着させる方法が好適に用いられる。
【0030】
上記無電解メッキ法とは、基材樹脂微粒子の表面に触媒付与を行い、導電層となる金属、及び、メッキ安定剤を含有する金属メッキ液中で、触媒付与された上記基材樹脂微粒子の表面に無電解メッキ法により導電層を形成させる方法である。
【0031】
上記触媒付与を行う方法としては、例えば、アルカリ溶液でエッチングされた基材樹脂微粒子に酸中和、及び、二塩化スズ(SnCl)溶液におけるセンシタイジングを行い、二塩化パラジウム(PdCl)溶液におけるアクチベイジングを行う無電解メッキ前処理工程を行う方法等が挙げられる。
なお、センシタイジングとは、絶縁物質の表面にSn2+イオンを吸着させる工程であり、アクチベイチングとは、絶縁性物質表面にSn2++Pd2+→Sn4++Pdで示される反応を起こしてパラジウムを無電解メッキの触媒核とする工程である。
【0032】
本発明の導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0033】
本発明の異方性導電材料の具体的な例としては、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘着剤層、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0034】
上記樹脂バインダーとしては特に限定されないが、絶縁性の樹脂が用いられ、例えば、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等のビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂及びこれらの硬化剤からなる硬化性樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、これらの水素添加物等の熱可塑性ブロック共重合体;スチレン−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等のエラストマー類(ゴム類)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、上記硬化性樹脂は、常温硬化型、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型のいずれの硬化型であってもよい。
【0035】
本発明の異方性導電材料には、本発明の導電性微粒子、及び、上記樹脂バインダーの他に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、増量剤、軟化剤(可塑剤)、粘接着性向上剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等の各種添加剤を添加してもよい。
【0036】
本発明の異方性導電材料の製造方法としては特に限定されず、例えば、絶縁性の樹脂バインダー中に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に混合して分散させ、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤等とする方法や、絶縁性の樹脂バインダー中に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に溶解(分散)させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定のフィルム厚さとなる用に塗工し、必要に応じて乾燥や冷却等を行って、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電シート等とする方法等が挙げられ、製造しようとする異方性導電材料の種類に対応して、適宜の製造方法をとればよい。
また、絶縁性の樹脂バインダーと、本発明の導電性微粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【0037】
本発明の導電性微粒子及び/又は本発明の異方性導電材料を用いてなる接続構造体もまた、本発明の1つである。
【0038】
本発明の接続構造体は、一対の回路基板間に、本発明の導電性微粒子及び/又は本発明の異方性導電材料を充填することにより、一対の回路基板間を接続させたものである。
本発明の接続構造体は、本発明の導電性微粒子及び/又は本発明の異方性導電材料を用いてなるものであることから、接続不良や変形を生じることがない。
【発明の効果】
【0039】
本発明の導電性微粒子は、回路基板等の間に挟んで導電圧着をする際に、表面に突起を有する導電層を有し、一定範囲の10%K値及び圧縮変形回復率を有する導電性微粒子を用いることにより、導電性微粒子表面の導電層と回路基板等との間のバインダー樹脂等や回路基板等の表面酸化物層を突き破ることができるため、接続抵抗を確実に低減化させることが可能となり、高い信頼性で回路基板等を接続することができる。
本発明によれば、導通不良防止とともに接続抵抗の低減化が可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(1)基材樹脂微粒子の作製
テトラメチロールメタンテトラアクリレート80重量部及びアクリロニトリル20重量部を含有するモノマー溶液に、重合触媒としてベンゾイルパーオキサイド1.5重量部を添加して溶解させた。このモノマー溶液を、700mLの3重量%ポリビニルアルコール水溶液に添加し、攪拌して懸濁させた。
次いで、このモノマー懸濁液を85℃に加熱することにより、重合反応を開始させ、そして反応が完結するまで10時間、この状態を保持した。得られた固形分を濾過し、熱水で洗浄してポリビニルアルコールを除去した後、分級を行うことにより、基材樹脂微粒子を得た。
【0042】
(2)突起の形成
基材樹脂微粒子10gに、5%水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ脱脂、酸中和、二塩化スズ溶液におけるセンシタイジングを行った。その後、二塩化パラジウム溶液におけるアクチベイチングからなる無電解メッキ前処理を施し、濾過洗浄後、粒子表面にパラジウムを付着させた基材樹脂微粒子を得た。
得られた基材樹脂微粒子を脱イオン水300mLで攪拌により3分間分散させた後、その水溶液に金属ニッケルスラリー(平均粒子径200nm)1gを3分間かけて添加し、芯物質を付着させた基材樹脂微粒子を得た。
得られた基材樹脂微粒子を更に水1200mLで希釈し、メッキ安定剤4mlを添加後、この水溶液に硫酸ニッケル450g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、クエン酸ナトリウム116g/L、メッキ安定剤6mLの混合溶液120mLを一定速度で定量ポンプを通して添加した。その後、pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止するのを確認し、無電解メッキ前期工程を行った。
次いで、更に硫酸ニッケル450g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、クエン酸ナトリウム116g/L、メッキ安定剤35mLの混合溶液650mLを一定速度で定量ポンプを通して添加した。その後、pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止するのを確認し、無電解メッキ後期工程を行った。
次いで、メッキ液を濾過し、濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥してニッケルメッキされた導電性微粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、表面に突起を有する導電層を有する導電性微粒子を得た。
【0043】
(実施例2)
モノマー溶液として、トリメチロールプロパントリアクリレート80重量部及びアクリロニトリル20重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、基材樹脂微粒子及び導電性微粒子を作製した。
【0044】
(実施例3)
モノマー溶液として、トリメチロールプロパントリアクリレート85重量部及びメタクリロニトリル15重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、基材樹脂微粒子及び導電性微粒子を作製した。
【0045】
(実施例4)
ジビニルベンゼンの重合反応により作製したこと以外は、実施例1と同様の方法により、基材樹脂微粒子及び導電性微粒子を作製した。
【0046】
(実施例5)
実施例1と同様の方法により樹脂微粒子を作製した。
得られた樹脂微粒子の表面を無電解メッキ処理により膜厚300nmのニッケルで被覆することにより基材樹脂微粒子を作製した。
得られた基材樹脂微粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、導電性微粒子を作製した。
【0047】
(比較例1)
ポリスチレンからなる粒径5μmの基材樹脂微粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、導電性微粒子を作製した。
【0048】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1で得られた導電性微粒子について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0049】
(1)10%K値の測定
微小圧縮試験機(PCT−200、島津製作所社製)を用いて一辺が50μmの四角柱の平滑端面で、基材樹脂微粒子を圧縮速度2.646mN/秒、最大試験荷重98mNで圧縮することにより10%K値を測定した。
なお、測定は20℃の条件下で行った。
【0050】
(2)圧縮変形回復率の測定
微小圧縮試験機(PCT−200、島津製作所社製)にて基材樹脂微粒子を反転荷重値9.8mNまで圧縮した後、逆に荷重を減らし、荷重を除く際の終点を原点荷重値0.98mN、負荷及び除負荷における圧縮速度0.2842mN/秒とし、反転の点までの変位(L1)と反転の点から原点荷重値を取る点までの変位(L2)との比(L2/L1)に100を乗じることにより圧縮変形回復率を求めた。
【0051】
(3)接続抵抗値の測定
得られた導電性微粒子を用いて以下の方法により異方性導電材料を作製し、電極間の接続抵抗値の測定を行った。
樹脂バインダーの樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、「エピコート828」)100重量部、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部、及び、トルエン100重量部を、遊星式攪拌機を用いて充分に混合した後、離型フィルム上に乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、トルエンを蒸発させて接着性フィルムを得た。
次いで、樹脂バインダーの樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、「エピコート828」)100重量部、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部、及び、トルエン100重量部に、得られたそれぞれの導電性微粒子を添加し、遊星式攪拌機を用いて充分に混合した後、離型フィルム上に乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布し、トルエンを蒸発させて導電性微粒子を含有する接着性フィルムを得た。なお、導電性微粒子の配合量は、フィルム中の含有量が5万個/cmとなるようにした。
得られた接着性フィルムと導電性微粒子を含有する接着性フィルムとを常温でラミネートすることにより、2層構造を有する厚さ17μmの異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを5×5mmの大きさに切断した。これを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有した幅200μm、長さ1mm、高さ0.2μm、L/S20μmのアルミニウム電極のほぼ中央に貼り付けた後、ITO電極を有するガラス基板を、電極同士が重なるように位置あわせをしてから貼り合わせた。
このガラス基板の接合部を、10N、100℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の接続抵抗値を測定した。
また、作製した試験片に対して信頼性試験(80℃、95%RHの高温高湿環境下で1000時間保持)を行った後、電極間の接続抵抗値を測定した。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、導通不良防止とともに接続抵抗の低減化が可能な導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、接続構造体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂微粒子と、前記基材樹脂微粒子の表面に形成された表面に突起を有する導電層とからなる導電性微粒子であって、
20℃で測定した粒子直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が3500〜60000N/mm、圧縮変形回復率が10〜100%である
ことを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
突起は、芯物質を有することを特徴とする請求項1記載の導電性微粒子。
【請求項3】
基材樹脂微粒子は、表面に無機物からなる硬質層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の導電性微粒子。
【請求項4】
硬質層の厚さが5〜500nmであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電性微粒子。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の導電性微粒子が樹脂バインダーに分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項6】
請求項1、2、3若しくは4記載の導電性微粒子及び/又は請求項5記載の異方性導電材料を用いてなることを特徴とする接続構造体。