説明

導電性部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される導電性部材を提供する。
【解決手段】表面に孔部を有する導電性芯体14と、導電性芯体上に形成された導電性弾性層16とを有し、導電性芯体が、孔部中にメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダの硬化物を有するものである導電性部材10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用した複写機やプリンタ等の画像形成装置の帯電装置として、スコロトロン帯電器のようなコロナ放電現象を利用したものが多用されてきたが、コロナ放電現象を利用した帯電装置の場合には、オゾンや窒素酸化物等が発生することがある。これに対して、導電性の帯電ロール等の帯電部材である導電性部材を像保持体に直接接触させて像保持体の帯電を行う接触帯電方式はオゾンや窒素酸化物等の発生が大幅に少なく、電源効率も良いことから、最近では主流となっている。
【0003】
帯電部材は、通常、導電性芯体上に帯電層として弾性層、表面層等が順次形成されたものである。このような帯電部材において、導電性芯体と弾性層との密着性を向上することが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(1)金属製の軸芯体の周面に、付加反応のための官能基がケイ素原子結合水素原子とビニル基である液状の付加反応型シリコーンゴム混合物を供給し、該軸芯体の周面を付加反応型シリコーンゴム層により被覆する工程と、(2)該付加反応型シリコーンゴム層を硬化させて弾性層を形成する工程と、を有する弾性ロールの製造方法であって、前記工程(1)は、表面の温度が60℃乃至160℃の範囲にある該軸芯体の周面に、温度が0℃乃至15℃の温度範囲にある該付加反応型シリコーンゴム混合物を供給する工程を含み、かつ、該付加反応型シリコーンゴム混合物の、ケイ素原子結合水素原子のモル数とビニル基のモル数との比が2.0以上、6.0以下である弾性ロールの製造方法により、シリコーンゴム弾性層の経時的な弾性の低下を抑えつつ、シリコーンゴム弾性層の芯金への密着性が良好な弾性ロールが得られること、弾性ロールの軸芯体を、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、またはそのいずれかの合金、あるいはこれらにクロムまたはニッケルでメッキ処理を施したものとすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−198909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される導電性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、表面に孔部を有する導電性芯体と、前記導電性芯体上に形成された導電性弾性層とを有し、前記導電性芯体が、前記孔部中にメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダの硬化物を有するものである導電性部材である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記導電性弾性層が塩素を含む樹脂を含有する、請求項1に記載の導電性部材である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記導電性弾性層が塩素を含む導電剤を含有する、請求項1に記載の導電性部材である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記導電性部材が、画像形成装置における像保持体の表面を帯電する帯電部材、または画像形成装置における像保持体の表面の現像されたトナー像を被転写体に転写する転写部材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材である。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材を備える帯電装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材とを備えるプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項7に係る発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、導電性芯体の孔部中にメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダの硬化物を有するものではない場合に比較して、長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される導電性部材が提供される。
【0015】
請求項2に係る発明によると、導電性弾性層が塩素を含む樹脂を含有しない場合に比較して、長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される効果がより発揮される導電性部材が提供される。
【0016】
請求項3に係る発明によると、導電性弾性層が塩素を含む導電剤を含有しない場合に比較して、長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される効果がより発揮される導電性部材が提供される。
【0017】
請求項4に係る発明によると、導電性芯体がメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものではない場合に比較して、長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される帯電部材または転写部材としての導電性部材が提供される。
【0018】
請求項5に係る発明によると、導電性部材の導電性芯体がメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものではない場合に比較して、導電性部材を長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される帯電装置が提供される。
【0019】
請求項6に係る発明によると、導電性部材の導電性芯体がメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものではない場合に比較して、導電性部材を長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
【0020】
請求項7に係る発明によると、導電性部材の導電性芯体がメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものではない場合に比較して、導電性部材を長期に高温高湿環境下に保管しても、画質欠陥の発生が抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る導電性部材を用いた帯電装置の一例の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る導電性部材を用いた帯電装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<導電性部材および帯電装置>
本実施形態に係る導電性部材の形状としては、特に限定されるものではないが、ロール状、ブラシ状、ベルト(チューブ)状、ブレード状などが挙げられる。これらの中でもロール状(いわゆる帯電ロール、転写ロール等の導電性ロール)であることが好ましい。以下、本実施形態に係る導電性部材が帯電部材としての帯電ロールであることを前提に、導電性芯体、導電性弾性層を含む帯電層等について説明するが、もちろんこれら各層の構成材料は、他の形状の導電性部材についても同様に用いられる。
【0024】
図1は、本実施形態に係る導電性部材を備える帯電装置の一例の概略構成を示した側面図である。また、図2は、本実施形態に係る導電性部材を備える帯電装置の一例の概略構成を示した正面図である。図1の帯電装置1は、画像形成装置に備えられる像保持体の表面を帯電させる帯電部材であって、軸中心に回転する円筒状の帯電部材である帯電ロール10と、帯電ロール10に接触して帯電ロール10の表面を清掃するための帯電部材清掃部材であるクリーニングロール12とを備える。帯電ロール10は、表面に孔部を有する導電性芯体14と、導電性芯体14の外周に形成された帯電層16とを備える。帯電層16は、導電性弾性層を有し、必要に応じて表面層等が形成されたものである。クリーニングロール12は、芯体18と、芯体18の外周に形成された円筒状の弾性層20とを備える。
【0025】
図2に示すように、帯電装置1において、帯電ロール10は、電子写真方式の画像形成装置の像保持体である感光体24に対して導電性芯体14の両端部に設置したコイルバネ26等の弾性部材により感光体24の表面に押し付けられ、感光体24に従動する。一方、クリーニングロール12は、帯電ロール10の導電性芯体14とクリーニングロール12の芯体18との軸受けの距離でベアリング28で保持され、クリーニングロール12は、予め定めた食いこみ量で帯電ロール10に従動する。なお、帯電ロール10およびクリーニングロール12はそれぞれ感光体24、帯電ロール10に従動させてもよいし、別個に駆動させてもよい。
【0026】
帯電ロール、転写ロール等の導電性部材の導電性弾性層として、エピクロルヒドリン等の樹脂や、導電剤として4級アンモニウム塩や金属塩を含むゴム材を使用すると、抵抗均一性、高画質の観点から有利である。しかし、特に、樹脂や、良好な抵抗が付与できる4級アンモニウム塩や金属塩が塩素等を含有している場合、特に高湿下に保管したり、結露すると、この塩素等と空気中の水分とが反応し、塩酸等の腐食成分を生成することがある。この塩酸等の腐食成分が例えば、導電性芯体のメッキのピンホール等の孔等の欠陥や、酸化被膜の微細孔欠陥等を通じて、導電性芯体を腐食させることがある。導電性芯体が腐食した箇所は導電性弾性層のはがれやふくれが発生するため、画質欠陥となる場合がある。
【0027】
本発明者らは、導電性芯体の上記孔等の欠陥や微細孔欠陥等の孔部中にメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダの硬化物を有することにより、導電性部材を長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制されることを見出した。この孔部中にメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダの硬化物を形成する方法としては、例えば、孔部を有する導電性芯体をメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダを含む処理液に含浸処理し、硬化させる方法が挙げられる。特に、例えば導電性弾性層が塩素を含む樹脂を含有する、導電性弾性層が塩素を含む導電剤を含有する等の場合であったとしても、導電性部材を長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制されることを見出した。これは、含浸処理により導電性芯体のメッキ等のピンホール等の孔や酸化被膜の微細孔欠陥等が封止され、長期に高温高湿環境下に保管した場合に塩酸等の腐食成分が生成しても、導電性芯体の腐食、導電性弾性層のはがれやふくれ等が抑制されるためと考えられる。
【0028】
メタクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数1以上30以下のアルキル、アルケン、アルキンのメタクリル酸エステルが挙げられ、これらのうち、含浸処理工程での作業性等の点から炭素数2以上20以下のアルキル、アルケン、アルキンのメタクリル酸エステルを用いることが好ましい。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ジメタクリル酸エチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパンエチレングリコール等が挙げられる。これらのうち1種を用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、メタクリル酸エステルとともに他の添加剤を用いてもよい。添加剤としては、公知の他のモノマ成分、重合開始剤、重合禁止剤等が挙げられる。
【0029】
メタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理は、例えば、導電性芯体を、(株)中央発明研究所製の含浸装置BS−200A等を用いて、1.0kPa以下の真空状態で1分以上60分以下の間、真空引きし、メタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダに浸漬した後、0.1MPa以上10MPa以下で1分以上60分以下の間、浸漬加圧し、水洗した後、70℃以上120℃以下、1分以上120分以下の間、湯浸硬化または熱風硬化して行えばよい。その後、必要に応じて、遠心装置等を用いて乾燥し、冷却してもよい。
【0030】
導電性芯体14の材質としては、例えば、少なくともアルミニウム、SUS、鉄、またはこれらの合金、またはこれらにクロムまたはニッケルメッキが施されているもの等が挙げられる。
【0031】
帯電ロール10の帯電層16を構成する導電性弾性層を構成する樹脂としては、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム等のヒドリン系樹脂の他に、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、およびこれらのブレンドゴム等の弾性材(ゴム材)が挙げられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0032】
ゴム材としては、抵抗等の観点からエピクロルヒドリンゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)が好ましいが、イオン導電剤等の導電剤等を付与することによって適度な導電性をもたせてもよいので、これに限らず使用すればよい。
【0033】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、四級アンモニウム塩(例えば、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリオクチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加リン酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。さらに、有機イオン導電性物質として、多価アルコール(1,4ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびその誘導体と金属塩との錯体、モノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)と金属塩との錯体も挙げられる。金属塩としては、例えば、LiClO、LiCFSO、LiAsF、LiBF、NaClO、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;NHの塩等の電解質;Ca(ClO、Ba(ClO等の周期律表第2族の金属塩;これらに、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等イソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったもの;等が挙げられる。このような錯体として具体的には、PEL(LiClOとポリエチレングリコールとの錯体)等が挙げられる。
【0034】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下の範囲であることが好ましく、一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0035】
導電剤としては、抵抗均一性等の観点からイオン導電剤が好ましく、中でも4級アンモニウムクロライドや4級アンモニウムパークロレイト等が取り扱い性、汎用性、低抵抗、コスト等の観点で好適に用いられる。その他、クロライドまたはパークロレートを含有した金属塩を使用してもよい。
【0036】
本実施形態においては、導電性弾性層がエピクロルヒドリン等の塩素を含む樹脂を含有する、および、導電性弾性層が4級アンモニウムクロライドや4級アンモニウムパークロレイト等の塩素を含む導電剤を含有するうちの少なくとも1つの場合において、長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制される効果がより発揮される。
【0037】
導電性弾性層は、弾性材、導電剤の他に必要に応じて軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカおよび炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を含んでもよい。導電性弾性層は、通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性芯体14の周面に被覆することにより形成される。
【0038】
帯電層16が有していてもよい表面層は、異物による汚染の防止のためなどに形成されるものであり、表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではない。ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等の高分子材料が挙げられる。
【0039】
このうち外添剤による汚れ防止の観点から、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好ましく用いられる。共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、質量比で合わせて10質量%以上であるのが好ましい。上記重合単位が10質量%以上の場合は、調液性および表面層塗布時における成膜性に優れるとともに、特に繰り返し使用時における樹脂層の磨耗や樹脂層への異物付着が少なく、ロールの耐久性が優れ、環境による特性の変化も少なくなる。
【0040】
上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。
【0041】
また上記表面層には導電性材料を含有させ、抵抗値を調整してもよい。該導電性材料としては、粒径が3μm以下であるものが好ましい。
【0042】
また、抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、あるいはイオン導電剤のような、電子およびイオンのうち少なくとも1つを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いてもよい。
【0043】
導電剤のカーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0044】
上記カーボンブラックはpH4.0以下であることが好ましい。一般的なカーボンブラックに比べ、表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂組成物中への分散性がよく、前記pH4.0以下のカーボンブラックを配合することにより、帯電均一性が向上し、さらに抵抗値の変動が抑制される。
【0045】
上記抵抗値を調整するための導電性粒子である導電性金属酸化物粒子は、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤であれば何れを用いてもよく、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の効果を阻害しない限り、何れの粒径であってもよいが、抵抗値調整および強度の点より、好ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、さらに、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が好ましい。
【0046】
このような導電性材料によって抵抗制御を行うことにより、表面層の抵抗値は環境条件によって変化せず、安定な特性が得られる。
【0047】
さらに、上記表面層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂等が用いられてもよい。特に、フッ素変性アクリレートポリマを含んで構成されることが好ましい。また、表面層の中に粒子を添加してもよい。これにより、表面層が疎水性となって帯電ロール10への異物の付着が防止されるように作用する。また、アルミナやシリカのような絶縁性の粒子を添加して、帯電ロール10の表面に凹凸を付与し、感光体24との摺擦時の負担を小さくして帯電ロール10と感光体24相互の耐磨耗性を向上させてもよい。
【0048】
帯電ロール10の径は好ましくはφ8mm以上φ15mm以下、より好ましくはφ9mm以上φ14mm以下で、帯電層16の肉厚が1.5mm以上4mm以下であることが好ましい。直径が15mmを超えると周面1箇所あたりの異物に接触する回数が減り、また放電回数が減るので、汚れや帯電性能に対する長期安定性には優れるものの小型化の観点から不利である。直径が8mm未満であると画像形成装置等が小型となるので優位であるが、周面1箇所あたりの異物に接触する回数が増え、また放電回数が増えるので、長期安定性に対して不利となる。
【0049】
本実施形態に係る導電性部材は、例えば、メタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダにより導電性芯体の含浸処理を行う含浸処理工程と、樹脂を含む組成物を加硫成型して、導電性弾性層を形成する加硫成型工程と、を含む方法により得られる。帯電ロールの場合は、加硫成型工程において、樹脂を含む組成物を導電性芯体の表面に加硫成型して、導電性弾性層を形成すればよい。
【0050】
本実施形態に係る導電性部材は、画像形成装置における像保持体の表面を帯電する帯電ロール等の帯電部材、および画像形成装置における像保持体の表面の現像されたトナー像を被転写体に転写する転写ロール等の転写部材、画像形成装置における像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像ロール等の現像部材等に用いられ、特に、帯電ロール等の帯電部材、転写ロール等の転写部材に好適に用いられる。
【0051】
次に、クリーニングロール12について説明する。
【0052】
クリーニングロール12の芯体18の材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われてもよく、もちろんそのまま使用してもよい。また、弾性層20を介して帯電ロール10と適度なニップ圧力で接触するため、ニップ時に撓みのない強度を持った材質またはシャフト長に対して十分剛性をもったシャフト径が選択されることが好ましい。
【0053】
弾性層20は、多孔質の3次元構造を有する発泡体を含んで構成される。発泡体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミドまたはポリプロピレン等の発泡性の樹脂またはニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム等を材質としたものより選択される。弾性層20は、帯電ロール10との従動摺擦により異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電ロール10の表面に弾性層20の擦れによるキズをつけないために、また、長期にわたり千切れや破損が生じないようにするために、引き裂き、引っ張りなどに強い、ポリウレタン、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびシリコーンゴムのうち少なくとも1つがより好ましく用いられ、ポリウレタンが特に好ましく用いられる。
【0054】
ポリウレタンとしては特に限定するものではなく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルやアクリルポリオールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていればよく、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。また、水やアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的である。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えてもよい。
【0055】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電部材として上記導電性部材とを備える。本実施形態のプロセスカートリッジは、必要に応じて、帯電部材を清掃するための帯電部材清掃部材と、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体表面を清掃する像保持体清掃手段とからなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0056】
本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例の概略構成を図3に示し、その構成について説明する。プロセスカートリッジ3は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体(電子写真感光体)24と、感光体24の表面を接触帯電する帯電部材としての円筒状の帯電ロール10と、帯電ロール10に接触して帯電ロール10の表面を清掃する帯電部材清掃部材としてのクリーニングロール12と、感光体24の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像ロール52と、感光体24の表面に接触して、転写後に感光体24に残ったトナーなどを清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード56とが一体に支持されており、画像形成装置に着脱自在である。画像形成装置に装着されたときには感光体24の周囲に、帯電ロール10、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体24の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置58、現像ロール52、感光体24表面のトナー像を被転写体である記録用紙62に転写処理する転写手段としての転写ロール54、クリーニングブレード56がこの順序で配置されるようになっている。例えば、帯電ロール10の導電性芯体が、メタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものである。なお、図3では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。
【0057】
本実施形態に係るプロセスカートリッジ3の動作について説明する。
【0058】
まず、感光体24表面に接触された帯電ロール10に対して電圧を高圧電源(図示せず)から給電することによって、感光体24の表面を高電位に帯電する。このとき感光体24および帯電ロール10は図3の矢印方向にそれぞれ回転する。帯電後、感光体24表面に露光装置58により画像情報に応じた画像光(露光)60が照射されると、照射された部分は電位が低下する。画像光60は画像の黒/白などに応じた光量の分布であるため、画像光60の照射によって感光体24表面に記録画像に対応する電位分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像が形成された部分が、現像ロール52を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電潜像を可視化したトナー像が形成される。トナー像が形成された部分に、所定のタイミングでレジストロール(図示せず)により記録用紙62が搬送され、感光体24表面のトナー像と重なる。このトナー像が、転写ロール54によって記録用紙62に転写された後、記録用紙62は、感光体24から分離される。分離された記録用紙62は搬送経路を通って搬送され、定着手段としての定着ユニット(図示せず)によって、加熱加圧定着されたあと、機外へ排出される。
【0059】
プロセスカートリッジ3に設けられた帯電ロール10にはクリーニングロール12が設置され、高圧電源からベアリング28に電圧が印加され、クリーニングロール12が帯電ロール10と電気的に同極性を有することで、異物がクリーニングロール12および帯電ロール10表面にほとんど蓄積させることなく移行し、クリーニングブレード56で回収させるため、帯電部材に付着したトナーなどの異物が長期にわたり、安定的に除去される。このため、長期にわたり帯電ロール10に汚れがほとんど蓄積することなく、安定した帯電性能が維持される。
【0060】
感光体24は、少なくとも静電潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。電子写真感光体は、円筒状の導電性の基体外周面に必要に応じて下引き層と、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質と電荷輸送物質との双方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、感光層の上に保護層を有してもよい。また、有機感光体に限らずアモルファスシリコン感光膜など他の種類の感光層を使用してもよい。
【0061】
露光装置58としては、特に制限はなく、例えば、感光体24表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光などの光源を、所望の像様に露光するレーザ光学系、LEDアレイなどの光学系機器などが挙げられる。
【0062】
現像手段は、感光体24上に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナーを含む一成分現像剤あるいは二成分現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有する。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、トナー層が感光体24に接触する方式のものでも、接触しない方式のものでもよい。例えば、図3のように静電荷像現像用トナーを現像ロール52を用いて感光体24に付着させる機能を有する現像器、あるいはブラシなどを用いてトナーを感光体24に付着させる機能を有する現像器など、公知の現像器などが挙げられる。
【0063】
転写手段としては、紙などに直接転写する方式のものでも、中間転写体を介して転写する方式のものでもよい。例えば、図3に示すような記録用紙62を介して直接接触して転写する導電性または半導電性のロールなどを用いた転写ロール54および転写ロール押圧装置(図示せず)を用いればよい。また、記録用紙62の裏側(感光体と反対側)からトナーとは逆極性の電荷を記録用紙62に与え、静電気力によりトナー像を記録用紙62に転写するものを用いてもよい。転写ロール54は、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)などにより、任意に設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ロール54として単層の発泡ロールなどが好適に用いられる。転写ロール54の導電性芯体が、メタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものであってもよい。
【0064】
定着手段としての定着ユニットとしては、記録用紙62に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであれば特に制限はない。
【0065】
トナー像を転写する被転写体である記録用紙62としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタなどに使用される普通紙、OHPシートなどが挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、転写材の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂などでコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙などが好適に使用される。
【0066】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電部材として上記導電性部材と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段とを備える。本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、帯電部材を清掃するための帯電部材清掃部材と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体表面を清掃する像保持体清掃手段とからなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記プロセスカートリッジを使用するものであってもよい。
【0067】
本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成を図4に示し、その構成について説明する。画像形成装置5は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体24と、感光体24の表面を接触帯電する帯電部材としての円筒状の帯電ロール10と、帯電ロール10に接触して帯電ロール10の表面を清掃する帯電部材清掃部材としてのクリーニングロール12と、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体24の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置58と、感光体24の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像ロール52と、感光体24表面のトナー像を被転写体である記録用紙62に転写処理する転写手段としての転写ロール54と、感光体24の表面に接触して、転写後に感光体24に残ったトナーなどを清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード56とを備える。画像形成装置5において、感光体24の周囲に、帯電ロール10、露光装置58、現像ロール52、転写ロール54、クリーニングブレード56がこの順序で配置されている。例えば、帯電ロール10の導電性芯体が、メタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダによる含浸処理が施されたものである。なお、図4では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。画像形成装置5の各構成、画像形成時の動作は図3のプロセスカートリッジ3と同様である。
【0068】
画像形成装置5に設けられた帯電ロール10にはクリーニングロール12が設置され、高圧電源64からベアリング28に電圧が印加され、クリーニングロール12が帯電ロール10と電気的に同極性を有することで、異物がクリーニングロール12および帯電ロール10表面に蓄積させることなく移行し、クリーニングブレード56で回収されるため、帯電部材に付着したトナー等の異物が長期にわたり、安定的に除去される。このため、長期にわたり帯電ロール10に汚れが蓄積することなく均一帯電性能において優れたものとなり安定した帯電性能が維持される。
【0069】
本実施形態に係る帯電部材を用いた画像形成装置の帯電部材以外の構成については、これらに限らず従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成を適用してもよい。すなわち、上記帯電部材以外の構成、例えば、帯電部材清掃手段、潜像形成手段、現像手段、転写手段、像保持体清掃手段、除電手段、給紙手段、搬送手段、画像制御手段等について、必要に応じて従来公知のものが適宜採用される。これらの構成については、本実施形態において特に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
(導電性ロールの作製)
[導電性芯体の作製]
導電性芯体としては、直径8mmのSUM材からなる円筒状棒を長さ330mmに切断後に、厚み6μmの無電解ニッケルメッキを施したものを用いた。この導電性芯体について、(株)中央発明研究所製の含浸装置BS−200Aを用い、0.7kPa以下の真空状態で10分間真空引きし、メタクリル酸エステル系含浸剤(商品名:スーパーシールP−601、(株)中央発明研究所)に浸漬した後、0.5MPaで5分間浸漬加圧し、水洗した後、90℃、10分間で湯浸硬化して含浸処理を施した。遠心装置で100rpm、5分間で湯切りし、常温(22℃)まで冷却した。
【0072】
[導電性弾性層の形成]
表1に示す配合物を接線式加圧ニーダ((株)モリヤマ製:実容量75L)を用いて混練を行い、22吋オープンロールにおいてシート状に混練りし、ゴム練り材を得た後、シリンダ内径60mm、L/D20の1軸ゴム押出し機を用いてスクリュ回転15rpmで前述配合物の未加硫ゴム材料を押出すとともに、同時に前記含浸処理を施した導電性芯体を連続的にクロスヘッド(ダイ内径φ12mm、ニップル径φ8mm)を通過させることにより、導電性芯体上に未加硫ゴムを被覆した。押出し機の温度条件設定は、シリンダ部、スクリュ部、ヘッド部、ダイ部のいずれとも80℃とした。押出成形後、180℃、30分でオーブンにて常圧加硫を行い、導電性ロールを得た。
【0073】
導電性ロールの導電性芯体が孔部中にメタクリル酸エステルの硬化物を有することは、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−500)を用いて500−1,000倍にて含浸処理面を観察する方法により確認した。
【0074】
(導電性ロールの評価)
45℃、95%RHの高温高湿槽に常温(22℃)の導電性ロールを入れ、結露した状態から1か月保管した。その後、導電性ロールを取出し、12時間常温(22℃)に放置したのち、その表面を目視観察してゴムのふくれを以下の基準で評価した。また、ふくれ評価後に、ゴムを導電性芯体から剥離し、同様に目視にて導電性芯体の腐食状態を観察した。腐食の評価に関してはJIS Z2371(2000)附属書1のレイティングナンバ法におけるレイティングナンバ(RN)の値の基準を参考にして目安とし、以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
【0075】
[ゴムのふくれ]
◎:全くゴムのふくれなし
○:極軽微なふくれが2個以下
×:ふくれが2個以上発生
[導電性芯体の腐食]
レイティングナンバ(RN)の値を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:9.5以上
○:9.5未満9.0以上
×:9.0未満
【0076】
[画質評価]
上記の方法で作製された帯電ロールを複写機Apeos Port−IV C5570(富士ゼロックス社製)に装着し、A4用紙50,000枚印字テスト(28℃、85%RH環境下で25,000枚印刷後、10℃、15%RH環境下で25,000枚印字)を行った。なお、途中で大きな問題が発生した場合には、その時点で印字を中止した。画質評価は、初期および50,000枚走行後の画像について、目視によって10%ハーフトーン画像中での濃度ムラの有無により以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
◎:濃度ムラ等の欠陥なし
○:ごく軽微な濃度ムラ発生
△:軽微な濃度ムラ発生
×:実使用不可の濃度ムラ発生
【0077】
<実施例2>
表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
<実施例3>
表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
<実施例4>
表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
<実施例5>
表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
<実施例6>
含浸剤としてメタクリル酸2−エチルヘキシル65質量%、ジメタクリル酸エチレングリコール34質量%、ベンゾイルパーオキシド0.8質量%、ハイドロキノン0.2質量%配合物を用いて導電性芯体を含浸処理した以外は、実施例2と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
<実施例7>
クロムメッキを施したSUM材を用いた以外は、実施例1と同様に含浸処理を施した。表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
<実施例8>
導電性芯体としてメッキを施していないSUS304を用いた以外は、実施例1と同様に含浸処理を施した。表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
<実施例9>
導電性芯体としてメッキを施していないアルミニウム製のものを用いた以外は、実施例1と同様に含浸処理を施した。表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
<実施例10>
実施例1と同じ導電性芯体を、(株)中央発明研究所製の含浸装置BS−200Aを用い、2.7kPaの真空状態で15分間真空引きし、珪酸ソーダ(NaSiO、商品名:テクニシールBP−3、(株)中央発明研究所)に浸漬後、0.5MPaで15分間浸漬加圧し、水洗した後、80℃の熱風で、60分間で硬化して含浸処理を施した。その後、常温まで冷却した。表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。導電性ロールの導電性芯体が孔部中に珪酸ソーダの硬化物を有することは、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−500)を用いて500−1,000倍にて含浸処理面を観察する方法により確認した。結果を表2に示す。
【0086】
<実施例11>
表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
<比較例1>
導電性芯体として、実施例1で用いた直径8mmのSUM材からなる円筒状棒を長さ330mmに切断後に、厚み6μmの無電解ニッケルメッキを施したものを用い、含浸処理を行わなかった。実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
<比較例2>
表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、比較例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
<比較例3>
導電性芯体として、実施例7で用いたクロムメッキを施したSUM材を用い、含浸処理を行わなかった。表1に示す配合物を用いて導電性弾性層を形成した以外は、実施例1と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
<比較例4>
実施例1と同じ導電性芯体を、実施例1の条件で含浸剤としてエポキシ樹脂(日本理化社製、リカレジン HBE−100(4,4‘−イソプロピリデンジシクロヘキサノールと(クロロメチル)オキシランのポリマ))を用いて含浸処理を施そうとしたが、エポキシ樹脂を含む含浸剤の流動性が悪く、一連の含浸処理後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−500)を用いて500−1,000倍にて含浸処理面を観察したところ、メッキ部の欠陥部分に含浸剤が上手く充填されていないことが確認された。この含浸処理を行った以外は、比較例2と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
<比較例5>
実施例1と同じ導電性芯体を、実施例1の条件で含浸剤としてコロイダルシリカアルミナ系無機コロイドゾル含浸剤を用いて含浸処理を施した。しかし、コロイダルシリカアルミナ系無機コロイドゾル含浸剤は、硬化反応時の体積収縮率が大きく、かつメッキ層材料との密着性が悪く、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−500)を用いて500−1,000倍にて含浸処理面を観察したところ、メッキ部の欠陥部分に充填された含浸剤に割れや欠陥が生じていることが確認された。この含浸処理を行った以外は、実施例2と同様にして導電性ロールを得て、評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
なお、表1において、エピクロマーCG102はエピクロルヒドリンゴム、NBR230Sはアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、カチーゲンBC−50はラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、LXN−30はラウリルトリメチルアンモニウムパークロレートである。
【0094】
【表2】

【0095】
表2に示すように、実施例1〜11の導電性ロールを用いることにより、比較例1〜5の導電性ロールを用いた場合に比較して、導電性ロールを長期に高温高湿環境下に保管しても、画像形成装置に用いた場合に画質欠陥の発生が抑制された。また、実施例1〜11の導電性ロールでは比較例1〜5の導電性ロールに比較して、長期に高温高湿環境下に保管した場合のゴムのふくれ、導電性芯体の腐食が抑制された。
【符号の説明】
【0096】
1 帯電装置、3 プロセスカートリッジ、5 画像形成装置、10 帯電ロール、12 クリーニングロール、14 導電性芯体、16 帯電層、18 芯体、20 弾性層、24 感光体、26 コイルバネ、28 ベアリング、52 現像ロール、54 転写ロール、56 クリーニングブレード、58 露光装置、60 画像光、62 記録用紙、64 高圧電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に孔部を有する導電性芯体と、前記導電性芯体上に形成された導電性弾性層とを有し、
前記導電性芯体が、前記孔部中にメタクリル酸エステルまたは珪酸ソーダの硬化物を有するものであることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記導電性弾性層が塩素を含む樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記導電性弾性層が塩素を含む導電剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記導電性部材が、画像形成装置における像保持体の表面を帯電する帯電部材、または画像形成装置における像保持体の表面の現像されたトナー像を被転写体に転写する転写部材であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材を備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−198356(P2012−198356A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61927(P2011−61927)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】