説明

導電材料およびその製造方法

【課題】デジタルカメラや携帯電話などの電子デバイス、リチウムイオン電池のような2次電池などに用いられる軽量かつ低コストの導電材料の提供およびその形成方法を提供することにある。
【解決手段】硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させて得られる化合物を含むことを特徴とする導電材料である。前記反応は0℃〜100℃で行われることができる。また、硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させることを特徴とする導電材料の製造方法である。前記反応は0℃〜100℃で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話などの電子デバイス、リチウムイオン電池のような2次電池において、軽量化、薄膜化が進んでおり、それを目的とした電極や配線の軽量化、薄膜化および高屈曲性が求められている。
従来、電極、配線には金、銅、アルミニウム、リチウムのような金属が用いられてきた。しかしこれらの金属は密度が高い為、軽量化が難しく、また屈曲性が悪い為、屈曲を繰り返すと断線する課題が残っていた。これらの課題を克服する為にポリチオフェンやポリピロールのような導電性高分子の応用の試みがなされている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−219697号公報
【特許文献2】特開2000−123658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導電性高分子はコストが高いなどの課題があった。
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、その目的は、軽量かつ低コストの導電材料の提供およびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] 硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させて得られる化合物を含むことを特徴とする導電材料。
[2] 前記反応は0℃〜100℃で行われる、[1]に記載の導電材料。
[3] 硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させることを特徴とする導電材料の製造方法。
[4] 前記反応は0℃〜100℃で行われる、[3]に記載の導電材料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、軽量かつ低コストの導電材料の提供およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明の実施形態を説明する。本発明の導電材料は、硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させて得られることを特徴とする。
硫黄としては、特に限定されるものではないが、例えば、S、S、S、S、S、シクロSを筆頭に、シクロS、シクロS、シクロS10、シクロS11、シクロS12、シクロS18、シクロS20などを挙げることができる。
また、硫黄の形態としては、特に限定されるものではないが固体の硫黄が好適に用いられる。また、固体の硫黄の形状も特に限定されるものではなく、例えば、粒状、ペレット状、フィルム状などを挙げることができる。
粒状の硫黄は例えば乳鉢で粉砕することで得ることができる。
また、ペレット状の硫黄は、乳鉢で粉砕してその後錠剤成形器で錠剤化することで得ることができる。
また、フィルム状の硫黄は、真空下で基板に硫黄を昇華蒸着することで得ることができる。なお、前記基板としては例えば、ガラス、シリコン、アルミニウムや銅や金のような金属、ペットフィルムやアートンフィルムやポリカーボネートやアクリル樹脂のようなプラスチックが挙げられ、その表面上にアルミニウムや金のような導電性材料を蒸着やメッキで形成しておいてもよい。このうち安価で安定なガラス、シリコンが好ましい。
【0008】
続いて、本発明の導電材料の製造方法について説明する。本発明の導電材料の製造方法は、硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させることを特徴とする。得られた反応生成物としては、S(Sb11、S(SbFなどがあげられる。
硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させる方法としては、例えば、基体上の硫黄に五フッ化アンチモンを供給し、反応させる方法が挙げられる。
五フッ化アンチモンの供給方法としては、例えば、五フッ化アンチモンを含む液状材料を基体上の硫黄に滴下して供給して反応させる方法(第一の方法)、五フッ化アンチモンを含む気体を基体上の硫黄に供給して反応させる方法(第二の方法)を挙げることができる。
【0009】
上記第一の方法における、五フッ化アンチモンを含む液状材料の滴下量は、硫黄1molに対して五フッ化アンチモンが1mol〜1000molであることが好ましく、10molから100molであることがより好ましい。また、反応温度は0℃から100℃であることが好ましく、10℃から30℃であることがより好ましい。また、反応時間は8時間〜72時間であることが好ましく、24時間から48時間であることがより好ましい。
また、反応終了後、必要に応じて過剰の五フッ化アンチモンを除去することができる。五フッ化アンチモンを除去する方法としては、例えば留去する方法が挙げられる。過剰の五フッ化アンチモンを留去する条件として、圧力は好ましくは常圧から0.1mmHgであり、さらに好ましくは1mmHgから50mmHgである。また、温度は好ましくは常温から100℃であり、さらに好ましくは60℃から80℃である。
【0010】
上記第二の方法における、五フッ化アンチモンを含む気体の供給方法は、例えば、バブラーに五フッ化アンチモンを入れ、不活性ガスでバブリングして五フッ化アンチモンを含む気体を供給する方法があげられる。反応時間としては1分から1時間であることが好ましく、3分から10分であることがより好ましい。この不活性ガスとしては、窒素やヘリウムやアルゴンが挙げられる。
【0011】
なお、基体上の硫黄は、上述したように粒状、ペレット状、フィルム状であってもよい。基体上の硫黄が粒状、ペレット状である場合には、導電性エポキシ樹脂などの固定化剤を用いることもできる。また、基体上の硫黄がフィルム状の場合には、真空下で基板に硫黄を昇華蒸着してもよい。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
100mgの硫黄を10メノウの乳鉢で粉砕し、錠剤成型器を用いて直径1cmの錠剤を得た。サンプル瓶にその錠剤を入れ、液体の五フッ化アンチモンを1g加えた。錠剤はすぐに黒色を呈した。24時間室温で反応させた後、35mmHg、80℃で過剰の五フッ化アンチモンを留去した。その錠剤の底部に導電性エポキシを塗り、導電性シリコン基板(n型ドーピング基板)に固定化した。錠剤上部に導電性エポキシを用いて直径1mmの円形の電極を形成した。24時間状態調節を行った後に反応生成物を得た。得られた反応生成物の体積固有抵抗を測定したところ、1000Ω・cmであった。また、得られた反応生成物をX線回折により分析したところ、S(Sb11、S(SbFが含まれていることを確認した。
【0013】
(実施例2)
櫛形のアルミニウム電極をパターニングしたガラス基板に硫黄を150μmの膜厚で昇華蒸着させた。その基板をガラスチューブに入れ、そのチューブの入り口を五フッ化アンチモンを入れたバブラーに繋げた。そのバブラーに室温下で窒素ガスを吹き込むことで気体の五フッ化アンチモンを上記基板に吹き込んだ。10分程反応させ、その後窒素ガスのみを10分ほど吹き込んで、反応生成物を得た。得られた反応生成物の体積固有抵抗を測定したところ500Ω・cmであった。また、得られた反応生成物をX線回折により分析したところ、S(Sb11、S(SbFが含まれていることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させて得られる化合物を含むことを特徴とする導電材料。
【請求項2】
前記反応は0℃〜100℃で行われる、請求項1に記載の導電材料。
【請求項3】
硫黄と五フッ化アンチモンとを反応させることを特徴とする導電材料の製造方法。
【請求項4】
前記反応は0℃〜100℃で行われる、請求項3に記載の導電材料の製造方法。

【公開番号】特開2011−103217(P2011−103217A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257538(P2009−257538)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】