説明

小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マット

【課題】 男子用小便器の前方床面の立ち位置に設けられる小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットの提供を図る。
【解決手段】 男子用小便器の前方床面の立ち位置が、使用者の左右いずれか一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜するとともに、他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するように構成されている構造を採用する。具体的構造については、マット本体の上面に、爪先方向に向かうに従って凹部深さが増すように傾斜した足型凹部と、踵方向に向かうに従って凹部深さが増すように傾斜した足型凹部と、から成る略足型形状部を一対に設けた構成や、略足型形状を成す一対のマット本体から成り、一方のマット本体の上面が爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するとともに、他方のマット本体の上面が踵方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するようにして成る構成を採用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男子用小便器の前方床面の立ち位置に設置される小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の小便飛散防止構造は、男子用小便器の手前側の床面を被覆するように敷設して飛散した小便を効率よく清掃することを目的とする小便マットと、男子用小便器に小便が飛散しないようにすること目的とする小便マットとがある。
【0003】
上記の小便を効率よく清掃することを目的とする小便マットとしては、例えば、マットの素材が吸水紙等から構成され、少なくても便器手前側の床面を被覆するように敷設される「小便の雫取りマット」(特許文献1参照)提案されている。
【0004】
しかしながら、該「小便の雫取りマット」(特許文献1参照)は、マットの構成を吸水性紙もしくは吸水性層と非吸水性層の二重構造からなる男子用小便器の小水立ち位置に設置されるシート状の小便マット構造の提案であって、小便の飛散を防止する小便マットではないため、使用者が小便マット自体に乗らないで小便を行ったりして、小便器ならびに近傍の床面を小便の飛泡で汚すことがあった。
【0005】
また、上記の小便が飛散しないようにすること目的とする小便マットとしては、例えば、床面と壁面とを有するトイレ室内に設置された小便用トイレ装置において、壁面に設けられた小便器と、小便器近傍の床面に設置された踏段とを備え、踏段上段は床面から30mm乃至100mmの高さを有し、踏段の後部に、踏段の一方の側方から他方の側方へ延びるとともに、踏段上段から上方に持ち上がる突出部を設けた「小便用トイレ装置および踏段」(特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
しかしながら、該「小便用トイレ装置および踏段」(特許文献2参照)は、老人や子供が踏段を踏み外す危険性があると共に、設置された踏段の位置まで前に出て小便を足す姿勢が取り辛い(男性性器または放尿される小便を視認できないくらい前にでる姿勢)ものであった。
【0007】
本発明者は、以上のような小便マットが持つ問題点を鑑み、使用者の一方の立ち脚の重心を前方に掛け、他方の立ち脚の重心を後方に掛けた状態で小便をする姿勢を採ることによって、小便の終了時に腰が惹けない姿勢となるため、男子用小便器を汚すことがない点に着目し、男子用小便器の小便立ち位置に本発明の小便飛散防止マットを設置することで男子用小便器の汚れ防止に効果があることを実験的に確信し、本発明における小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットの提案に至るものである。
【0008】
【特許文献1】特開2002-165729号公報
【特許文献2】特開2009-279121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、男子用小便器の前方床面の立ち位置に設けられる小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、男子用小便器の前方床面の立ち位置が、使用者の左右いずれか一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜するとともに、他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するように構成されている。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、男子用小便器の前方床面の立ち位置に設置される小便飛散防止マットであって、マット本体の上面に、略足型形状であって爪先方向に向かうに従って凹部深さが増すように傾斜した足型凹部と、略足型形状であって踵方向に向かうに従って凹部深さが増すように傾斜した足型凹部と、を一対に設けた構成となっている。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記小便飛散防止マットにおいて、前記足型凹部と略同一形状であって、厚みが傾斜して形成される弾性スポンジ体を前記足型凹部に夫々嵌め込み、マット本体の上端面と弾性スポンジ体の上面とを平坦とした構成となっている。
【0013】
またさらに、請求項4に記載の発明は、男子用小便器の前方床面の立ち位置に設置される小便飛散防止マットであって、略足型形状を成す一対のマット本体から成り、一方のマット本体の上面が爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するとともに、他方のマット本体の上面が踵方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するように構成されている。
【0014】
そしてまた、請求項5に記載の発明は、前記小便飛散防止マットにおいて、前記略足型形状と平面視において略同一形状であって、厚みが傾斜して形成される弾性スポンジ体を前記マット本体の上面に夫々貼付け、マット本体の下端面と弾性スポンジ体の上面とを略水平とした構成となっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットによれば、使用者の一方の立ち脚の重心を前方に掛け、他方の立ち脚の重心を後方に掛けた状態で小便をする姿勢を採ることによって、小便の終了時に腰が惹けないため、男子用小便器を汚すことがないといった優れた効果を奏するものである。
【0016】
また、本発明にかかる小便飛散防止マットによれば、厚みが傾斜状に形成される弾性スポンジ体を、足型凹部に嵌め込み若しくはマット本体上面に貼付けることによって、上端面が平坦状になることにより、使用者がつまずいたり、踏み外したりする危険を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の小便飛散防止構造(小便飛散防止マット)の使用状態を示す全体説明図である。(実施例1)
【図2】本発明の小便飛散防止マットの請求項2記載の実施形態を示す説明図である。(実施例2)
【図3】本発明の小便飛散防止マットの請求項3記載の実施形態を示す説明図である。(実施例3)
【図4】本発明の小便飛散防止マットの請求項4並びに請求項5記載の実施形態を示す説明図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかる小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットは、男子用小便器の前方床面の立ち位置において、その床面構造が、使用者の左右いずれか一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜するとともに、他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するように構成されていることを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる小便飛散防止構造並びに小便飛散防止マットの実施形態を、図面に基づき実施例ごとに詳細に説明する。
【0019】
なお、本発明は、形状や寸法等、下記の実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の要旨に逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の小便飛散防止構造(小便飛散防止マット)の使用状態を示す全体説明図であり、図1(a)は全体斜視図、図1(b)は使用状態側面図である。
本発明にかかる小便飛散防止構造は、男子用小便器Bの前方床面の立ち位置において、その床面構造が、使用者の左右いずれか一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜するように構成され、また、該使用者の他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するように構成されている構造となっている。
【0021】
一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜し、かつ、他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するための具体的構造については、特に限定するものではないが、例えば、男子用小便器Bの前方床面において、一方の足の立ち位置における爪先該当箇所及び他方の足の立ち位置における踵該当箇所に、パイプ状の突出部を設置して、該パイプ状の突出部に爪先及び踵を夫々載せることで、一方の足の爪先及び他方の足の踵を上方へ持ち上げる構造が考え得る。
【0022】
また、立ち位置における床面構造について、一方が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜し、他方が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するよう、予め傾斜させて設計しておくことで、傾斜した該立ち位置に夫々の足を載せることにより、一方の足の爪先及び他方の足の踵を上方へ傾斜させる構造も考え得る。
【0023】
なお、図面では、小便飛散防止マット1を使用することで、一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜するとともに、他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜する構造を採用した場合について示している。
すなわち、男子用小便器の小便立ち位置に設置される小便飛散防止マット1は、後述する実施例2にかかる小便飛散防止マット1であって、男子用小便器Bの前方の床面における適正な立ち位置に使用者が立つことによって小便Sが飛散しないようなマット構造で形成されている。
【実施例2】
【0024】
図2は、本発明の小便飛散防止マットの請求項1記載の実施形態を示す説明図であり、図2(a)はマット本体の構成を示す全体斜視図、図2(b)は一方の略足型形状の足型凹部11aを示す断面図、図2(c)は他方の略足型形状の足型凹部11bを示す断面図である。
図2(a)に示すように、マット本体10は、上面に設けられる小便立ち位置を形成する最大で約1.5cmの深さを有する略足型形状の足型凹部11a、11bが一対に設けられ、約60cm×50cm略矩形の一部が男子用小便器Bの形状に繰り抜かれ、約3cmの厚みを有する合成樹脂製のマットで形成されている。
【0025】
足型凹部11aは、図2(b)に示すように、マット本体10の立ち位置に略足型形状を有し、凹部深さが、爪先方向に向かうに従って増すように傾斜して形成されている。
【0026】
また、足型凹部11bは、図2(c)に示すように、マット本体10の立ち位置に略足型形状を有し、凹部深さが、踵方向に向かうに従って増すように傾斜して形成されている。
【0027】
以上のように、マット本体10の立ち位置に略足型形状の足型凹部11a、11bが設けられることによって、図1(b)に示すように、一方の立ち脚は前方に重心を掛け、他方の立ち脚は後方に重心を掛けた状態で小便Sを足す姿勢を採ることとなり、小便終了時に腰が惹けない姿勢状態となるため、男子用小便器Bの前面を汚すことがないものである。
【実施例3】
【0028】
図3は、本発明の小便飛散防止マットの請求項2記載の実施形態を示す説明図であり、図3(a)はマット本体の構成を示す全体斜視図、図3(b)は一方の略足型形状の足型凹部11aを示す断面図、図3(c)は他方の略足型形状の足型凹部11bを示す断面図である。
マット本体10は、上面に設けられる小便立ち位置を形成する最大で約1.5cmの深さを有する略足型形状の足型凹部11a、11bが一対に設けられ、約60cm×50cm略矩形の一部が男子用小便器Bの形状に繰り抜かれ、約3cmの厚みを有する合成樹脂製のマットと、略足型形状の弾性スポンジ体12で形成されている。
【0029】
足型凹部11aは、図3(b)に示すように、マット本体10の立ち位置に略足型形状を有した凹部に、爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜した弾性スポンジ体12が嵌め込まれる形状で形成されている。
【0030】
また、足型凹部11bは、図3(c)に示すように、マット本体10の立ち位置に略足型形状を有した凹部に、踵方向に向かうに従って増すように傾斜した弾性スポンジ体12が嵌め込まれる形状で形成されている。
【0031】
弾性スポンジ体12は、略足型形状の足型凹部11a、11bに嵌め込まれる形状、すなわち該足型凹部11a、11bと略同一形状に形成され、厚みは、最大で約1.5cmを有し、傾斜した形状で形成されている。
【0032】
以上のように、小便立ち位置を形成する略足型形状の足型凹部11a、11bに、厚みが傾斜した弾性スポンジ体12を嵌め込むことによってマット本体の上端面が平坦になるため、使用の際には、つまずいたり踏み外したりしない形状を有するものである。
【実施例4】
【0033】
図4は、本発明の小便飛散防止マットの請求項4並びに請求項5記載の実施形態を示す説明図であり、図4(a)は請求項4記載の実施形態を示す全体斜視図、図4(b)及び図4(c)は請求項5記載の実施形態を示す断面図である。
図4(a)に示すように、マット本体20は、一対であって略足型形状を成しており、一方のマット本体20aの上面が爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するとともに、他方のマット本体20bの上面が踵方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜する構成となっている。各マット本体20における傾斜の高低差は最大で約1.5cmとなっており、該高低差がそのまま全体厚みとなっている。そして、マット本体20全体は、合成樹脂製のマットで形成されている。
【0034】
以上のように、一方の上面が爪先方向に傾斜するとともに、他方の上面が踵方向に傾斜するように構成されたマット本体20を、男子用小便器の小便立ち位置に設置することによって、一方の立ち脚は前方に重心を掛け、他方の立ち脚は後方に重心を掛けた状態で小便Sを足す姿勢を採ることとなり、小便終了時に腰が惹けない姿勢状態となるため、男子用小便器Bの前面を汚すことがないものである。
【0035】
なお、図4(b)及び(c)に示すように、上記一対のマット本体20の上面には、爪先部分と踵部分の厚みが異なるように傾斜した弾性スポンジ体22を貼付ける構成を採用し得る。すなわち、爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜したマット本体20aの上面には、踵方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜した弾性スポンジ体22が貼付けられ、逆に踵方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜したマット本体20bの上面には、爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜した弾性スポンジ体22が貼付けられる。これにより、側面視において、マット本体の下端面と弾性スポンジ体の上面とが略水平状となる。
【0036】
弾性スポンジ体22は、前記略足型形状と平面視において略同一形状であって、厚みは、最大で約1.5cmを有し、傾斜した形状で形成されている。
【0037】
以上のように、小便立ち位置を形成する一対のマット本体20の上面に、夫々傾斜した弾性スポンジ体22を貼付けることによって、全体として上端面が平坦になるため、使用の際には、つまずいたり踏み外したりしない形状を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、男子用小便器の小便飛散防止構造及び小便飛散防止マットとして提案しているが、男女共用の洋式便器の構造及びマットとしても使用することが可能である。また、本発明にかかる小便飛散防止マットの技術的思想は、既存便器に敷設するマットとしてだけでなく、家庭用若しくは公衆用トイレの建設段階において当初から便器前方床面に組み込んでしまう構成も考え得ることから、本発明の産業上の利用可能性は非常に高いものと解する。
【符号の説明】
【0039】
1 小便飛散防止マット
10 マット本体
11 足型凹部
12 弾性スポンジ体
20 マット本体
22 弾性スポンジ体
B 男子用小便器
S 小便

【特許請求の範囲】
【請求項1】
男子用小便器の前方床面の立ち位置が、使用者の左右いずれか一方の足が爪先方向に向かうに従って上方へ傾斜するとともに、他方の足が踵方向に向かうに従って上方へ傾斜するように構成されていることを特徴とする小便飛散防止構造。
【請求項2】
男子用小便器の前方床面の立ち位置に設置される小便飛散防止マットであって、マット本体の上面に、略足型形状であって爪先方向に向かうに従って凹部深さが増すように傾斜した足型凹部と、略足型形状であって踵方向に向かうに従って凹部深さが増すように傾斜した足型凹部と、を一対に設けたことを特徴とする小便飛散防止マット。
【請求項3】
前記小便飛散防止マットにおいて、前記足型凹部と略同一形状であって、厚みが傾斜して形成される弾性スポンジ体を前記足型凹部に夫々嵌め込み、マット本体の上端面と弾性スポンジ体の上面とを平坦としたことを特徴とする請求項2記載の小便飛散防止マット。
【請求項4】
男子用小便器の前方床面の立ち位置に設置される小便飛散防止マットであって、略足型形状を成す一対のマット本体から成り、一方のマット本体の上面が爪先方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するとともに、他方のマット本体の上面が踵方向に向かうに従って厚みが増すように傾斜するように構成されたことを特徴とする小便飛散防止マット。
【請求項5】
前記小便飛散防止マットにおいて、前記略足型形状と平面視において略同一形状であって、厚みが傾斜して形成される弾性スポンジ体を前記マット本体の上面に夫々貼付け、マット本体の下端面と弾性スポンジ体の上面とを略水平としたことを特徴とする請求項4記載の小便飛散防止マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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