説明

小動物救護具

【課題】小動物が側溝等の流水路に落下して、側溝内の水に流されても脱出可能な小動物救護具を提供する。
【解決手段】
流水路の上方で流水路を横切る方向に架設されるシャフト3と、そのシャフト3へ直交状に且つシャフト3を中心に夫々単独回転可能に連結され、流水路内で浮力を有する複数のパイプ2とからなる小動物救護具であって、パイプ2の先端に、所定角度上側へ向いた折り曲げ部5を形成して、パイプ2を流水路内の流れに対して上流側へ突出させたことで、小動物をすくう構造を採っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝等の流水路に落下した小動物の救護を行う小動物救護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
側溝に昆虫類、爬虫類、両生類、カモの雛を含む鳥類等の小動物が落下すると、側溝の底面から壁まで縁が高いことと、側溝内を水が流れている場合には水に流されてしまうこととにより、側溝から脱出することができず、そのまま死亡するケースが多く、生態系に悪影響を及ぼすといった問題が発生している。また、小動物の死骸によって排水口が詰まってしまい、流れを堰き止めてしまうといった問題も発生している。
【0003】
このような事態を防止する方法として、側溝内に下流側へ向かって垂下部材を垂れ下げておき、側溝に落下した小動物が前記垂下部材を上って側溝から脱出することを可能とする脱出装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3051751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような脱出装置は、側溝内を水が流れている場合、垂下部材を下流側へ向けて設置することにより、上流から流れてくる小動物が垂下部材の下を潜り、垂下部材を越えてから垂下部材の下端へ上ることで流れから脱出可能となるため、場合によっては垂下部材の下を潜った後、垂下部材の下端へ上ることができずに流されてしまうことがある。また、草やゴミ等の引っ掛かりによって流れが堰き止められてしまうと言った問題もある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、小動物の救護をより確実に行えると共に、草やゴミ等の引っ掛かりを最小限に抑えることが可能な小動物救護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる本発明のうち請求項1に記載された発明の構成は、横断面U字状の流水路の上方で前記流水路を横切る方向に架設される横架部材と、その横架部材へ直交状に且つ前記横架部材を中心に夫々単独回転可能に連結され、前記流水路内で浮力を有する複数の軸部材とからなる小動物救護具であって、
前記軸部材の先端に、所定角度上側へ向いた折り曲げ部を形成して、前記軸部材を前記流水路内の流れに対して上流側へ突出させたことを特徴とする小動物救護具からなることにある。
【0008】
なお、流水路には、コンクリートや樹脂等からなる、断面U字型のブロックを流水路方向に連接することにより構成したものや、地面を掘って水が流れることを可能とする構成のものを含む。具体的には、道路の側溝や用水路等が挙げられる。
【0009】
請求項2に記載された発明の構成は、軸部材を、横架部材の架設方向へ夫々単独で揺動可能に設けたことにある。
【0010】
請求項3に記載された発明の構成は、折り曲げ部の先端を円錐形としたことにある。
【0011】
請求項4に記載された発明の構成は、複数の軸部材間に網状体を架設したことにある。
【0012】
請求項5に記載された発明の構成は、折り曲げ部に、軸部材の軸線を挟んだ前記折り曲げ部の反対側へ突出し、先端が前記軸部材と平行となる延設部を形成したことにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された小動物救護具は、軸部材の先端に所定角度上側へ向いた折り曲げ部を形成することにより、流れに対して水を切りながら水面に浮かぶことが可能であり、上流から流れて来るゴミ等が軸部材に接触しても、軸部材の下を潜らせることにより小動物救護具に引っ掛かることがなく、流れを堰き止めず、下流へ通過させやすくなる。そして、小動物救護具を下流に向けて設ける場合に比べ、小動物が軸部材に登りやすく、小動物を救護できる可能性が一層高くなる。また、軸部材は、それぞれ独立して回転可能であるから、小動物の注目を引きやすくなり、ゴミ等が軸部材に接触した場合、接触した軸部材のみが揺動する。したがって、隣接する軸部材も連動して揺動することがなく、小動物が流下したときであっても隣接する軸部材につかまることが可能である。
【0014】
請求項2に記載された小動物救護具は、横架部材の架設方向へ夫々単独で揺動可能であるから、流下するゴミ等が軸部材に接触し、その軸部材の下を潜らせることができない場合に、軸部材が流水路を横切る方向に傾くことにより、ゴミ等を傾動し流下させ、引っ掛かることなく、流れを堰き止めることがない。
【0015】
請求項3に記載された小動物救護具は、水を切り安定して浮力を保つことが可能で、ゴミ等が小動物救護具に接触しても堰き止めることなく、流下させることが可能となる。
【0016】
請求項4に記載された小動物救護具は、小動物が網状体につかまることで流れから脱出しやすくなるだけでなく、軸部材を移動中に滑ってしまうことがあっても、網状体につかまることで助かる可能性が高い。
【0017】
請求項5に記載された小動物救護具は、延設部の採用により、水の流れが速くなっても棒部材が水中に潜ることなく水を切り、安定して浮くことが可能である。また、大きいゴミ等が流下して軸部材に接触した場合であっても、堰き止めることなく、ゴミ等を乗り越えて浮くことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の小動物救護具の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。 図1は、小動物救護具1の説明図である。図2は、軸部材に折り曲げ部を設けた説明図である。図3は、小動物救護具1を側溝に設置した状態の斜視図である。
【0019】
小動物救護具1は、図1に示すように軸部材となる複数のパイプ2と各パイプ2を回転可能に枢着する横架部材としてのシャフト3とからなる。パイプ2は、所定間隔をおいて複数設けられており、パイプ2の後端部外周には、シャフト3をパイプ2の軸方向に対して垂直に連結するホルダ7が取り付けられ、各パイプ2をそれぞれ独立して回転可能としている。また、パイプ2の設置方向は、先端を流れに向かって逆らう方向に設けることで、小動物をすくう構造を採っている。
【0020】
シャフト3の両端にある固定板8は、図3のように側溝の縁に係止させるL字形状からなっている。シャフト3は、側溝の幅に合わせて伸縮調整が可能である。
【0021】
パイプ2は、塩化ビニールやポリエチレン等の中空の部材から成り、水位の変動があっても常に浮くことが可能である。また、パイプ2の表面には、ポルプロピレン製のスリーブからなる滑り止め4が設けられている。そのようなパイプ2において、側溝に水のない状態で小動物救護具1を設置し、側溝の底辺に対してパイプ2の角度が約20〜30度の傾斜を保つように全長を決定している。
【0022】
図2のように、パイプ2の先端部は、パイプ2の軸に対して傾斜角が約45度で曲げられ、その先端部に円錐からなる水切りが設けられた折り曲げ部5が形成されている。パイプ2の後端には、空気及び水抜きのための蓋部材6が設けられており、後端から中空部材の内部に水やゴミが入らない逆流防止弁構造となっている。
【0023】
上記の如く構成された小動物救護具1によれば、小動物が側溝内に落下し、上流から流されてしまった場合、小動物自らがパイプ2の滑り止め4又は折り曲げ部5につかまり、パイプ2へ上がることで水の流れから脱出できる。そして、パイプ2の先端から後端へパイプ2の傾斜を伝って側溝の縁の高さまで登り、シャフト3や隣接するパイプ2を渡って側溝側へ移動する。その後、側溝を越えて側溝外へ出ることにより脱出が可能となる。
【0024】
特に、パイプ2の先端に所定角度上側へ向いた折り曲げ部5を形成することにより、流れに対して水を切りながら水面に浮かぶことが可能であり、上流から流れて来るゴミ等がパイプ2に接触しても、パイプ2の下を潜らせることにより小動物救護具1に引っ掛かることがなく、流れを堰き止めず、下流へ通過させやすくなる。そして、小動物救護具1を下流に向けて設ける場合に比べ、小動物がパイプ2に登りやすく、小動物を救護できる可能性が一層高くなる。また、パイプ2は、それぞれ独立して回転可能とすることから、小動物の注目を引きやすくなり、ゴミ等がパイプ2に接触した場合、接触したパイプ2のみが揺動する。したがって、隣接するパイプ2も連動して揺動することがなく、小動物が流下したときであっても隣接するパイプ2につかまることが可能である。
【0025】
一方、パイプ2がシャフト3の架設方向へ夫々単独で揺動可能であるから、流下するゴミ等がパイプ2に接触し、そのパイプ2の下を潜らせることができない場合に、パイプ2が流水路を横切る方向に傾くことにより、ゴミ等を傾動し流下させ、引っ掛かることなく、流れを堰き止めることがない。
【0026】
また、折り曲げ部5の先端に、円錐形の水切りが設けられることから、水を切り安定して浮力を保つことが可能で、ゴミ等が小動物救護具1に接触しても堰き止めることなく流下させることが可能となる。
【0027】
なお、本発明の小動物救護具1の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、パイプ、折り曲げ部、シャフト等の形状に限定されず、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0028】
図3の形態では、パイプ2の表面に到達しても、パイプ2上を伝っているときに滑って、再び水に落ちてしまう場合がある。そこで、図4に示すようにパイプ2の上側で複数のパイプに渡って網状体10を掛けてもよい。そのように、網状体10を掛けることで、小動物が滑り止め4につかまり、流れから脱出する方法に加え、網状体10につかまることによって流れからの脱出がよりしやすくなる。網状体10をパイプ2のシャフト側後端まで掛けることで、小動物がパイプ2の後端まで伝って各パイプ間を移動して側溝の外側へ移動することが容易となる。
このように、小動物が網状体10につかまることで、流れから脱出しやすくなるだけでなく、パイプ2を移動中に滑ってしまうことがあっても、網状体10につかまることで助かる可能性が高い。
【0029】
図5に示すパイプ2は、折り曲げ部5をパイプ2の軸線を挟んだ反対側へ突出させて、先端がパイプ2に平行となる延設部9を形成したものである。このような、延設部の採用により、水の流れが速くなってもパイプ2が水中に潜ることなく水を切り、安定して浮くことが可能である。また、大きいゴミ等が流下してパイプ2に接触した場合であっても、堰き止めることなくゴミ等を乗り越えて浮くことが可能である。
【0030】
また、図6に示すように、シャフト3に孔11を複数穿設し、その孔11に固定ピン(図示せず)を挿入することで、シャフト3の軸方向でパイプ2の前後を挟む構成であっても良い。
それにより、パイプ2が隣接する他のパイプに接触したり、壁面に接触することがなく回転可能である。加えて、一方に偏ることもなくそれぞれ回転可能となる。更に、孔11が軸方向に複数設けられていることからパイプ2の位置をシャフト3の軸方向に調整することが可能となる。
【0031】
一方、パイプ2は、中空の部材のみに限定せず、板体等浮力のあるものであれば良い。また、断面形状も円形だけでなく、逆三角形や四角形等も採用可能である。その他、網状体10はパイプ2の全長に亘って掛けるだけでなく、パイプ2の後端部(シャフト側)にのみ掛けても良い。
【0032】
そして、小動物救護具1を多段式として複数設けて、前段の小動物救護具1で小動物を救護するだけでなく、前段の小動物救護具1と後段の小動物救護具1との間に渦を発生させ、後段の小動物救護具1によって水から脱出可能としてもよい。また、パイプ2の数は、パイプと側溝側面とが接触しない間隔であれば増やしても良く、逆に減らしても良い。それに加え、隣接するパイプ同士が接触しない間隔であればシャフト3上を移動可能としても良い。
【0033】
また、図7に示すように、シャフト3を追加し、その追加したシャフト3とシャフト3との間に、網状体10を掛けても良い。その結果、小動物がパイプ2を登ってシャフト3から側溝外への脱出時に、網状体10により側溝内に落ちることがない。なお、図7において、他のシャフト3は上流側に設けられているが、下流側に設けても良い。また、複数のシャフト3に対し、一対の固定板8を設けているが、シャフト3に対し、一対の固定板8を個々に設けても良い。なお、網状体10は、ポリエチレン又はポリプロピレン等で形成されるが、パンチングメタル等の金属製のものに変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】小動物救護具の説明図である。
【図2】パイプの説明図である。
【図3】小動物救護具を側溝に設置した状態の斜視図である。
【図4】パイプに網状体を掛けた状態の斜視図である。
【図5】軸部材の変更例の説明図である。
【図6】小動物救護具の変更例の説明図である。
【図7】小動物救護具の変更例の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1・・小動物救護具、2・・パイプ、3・・シャフト、4・・滑り止め、5・・折り曲げ部、6・・蓋部材、7・・ホルダ、8・・固定板、9・・延設部、10・・網状体、11・・孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面U字状の流水路の上方で前記流水路を横切る方向に架設される横架部材と、その横架部材へ直交状に且つ前記横架部材を中心に夫々単独回転可能に連結され、前記流水路内で浮力を有する複数の軸部材とからなる小動物救護具であって、
前記軸部材の先端に、所定角度上側へ向いた折り曲げ部を形成して、前記軸部材を前記流水路内の流れに対して上流側へ突出させたことを特徴とする小動物救護具。
【請求項2】
軸部材を、横架部材の架設方向へ夫々単独で揺動可能に設けた請求項1に記載の小動物救護具。
【請求項3】
折り曲げ部の先端を円錐形とした請求項1又は2に記載の小動物救護具。
【請求項4】
複数の軸部材間に網状体を架設した請求項1乃至3の何れかに記載の小動物救護具。
【請求項5】
折り曲げ部に、軸部材の軸線を挟んだ前記折り曲げ部の反対側へ突出し、先端が前記軸部材と平行となる延設部を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の小動物救護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−138489(P2008−138489A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328553(P2006−328553)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(591003541)中部美化企業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】