説明

小動物用忌避剤

【課題】忌避効果の優れた小動物忌避成分を含有し、小動物、特にクマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ等の各種ネズミ類による被害防止に有用な小動物用忌避剤の提供。
【課題の解決手段】小動物忌避成分として、ステモン、好ましくは、ステモンとハッカ油を含有し、その配合比が0.1:1.0〜2.0:1.0である小動物用忌避剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物用忌避剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境、経済活動の多様化に伴い、ネズミ等の有害小動物による様々な形での被害が大きな社会問題となっている。例えば、ネズミによる被害は、従来の食品の被害、病原菌の媒介による衛生上の被害に加えて、今日の生活、経済活動を支える電線・通信ケーブル網に対する咬害に及び、極めて重大な経済的損失を招いている。
そこで、ネズミ等の有害小動物が保護対象物に近づかないようにするための忌避剤の開発が長年にわたり活発に行われてきた。例えば、特許文献1には、ジエチルトルアミド及び/又はメントールを主成分とした組成物が開示され、特許文献2では、リモネン、リナロール、シトラールを主成分とした組成物が提案されている。また、カプサイシン類(特許文献3)は、ネズミに対して高い忌避効果を示し、防鼠電線・ケーブルや防鼠塗料等の製品が開発されている。しかしながら、ジエチルトルアミド、メントール、リモネン、リナロール、シトラール等の化合物は、忌避効果が十分とは言えず、一方、カプサイシン類は高価で取り扱いにくいという問題を有している。
【特許文献1】特開昭60−142903号公報
【特許文献2】特開平1−110602号公報
【特許文献3】特許第3053480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、忌避効果の優れた小動物忌避成分を含有し、小動物、特にクマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ等の各種ネズミ類による被害防止に有用な小動物用忌避剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)小動物忌避成分として、ステモンを含有する小動物用忌避剤。
(2)小動物忌避成分として、ステモンとハッカ油を含有し、その配合比が0.1:1.0〜2.0:1.0である(1)記載の小動物用忌避剤。
(3)小動物忌避成分を0.5〜10.0(w/v)%、低級アルコールを10〜40(w/v)%及び噴射剤を含有するエアゾール形態である(1)又は(2)記載の小動物用忌避剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明の小動物用忌避剤は、小動物忌避成分として有用なステモンを含有し、小動物、特にクマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ等の各種ネズミ類に対して優れた忌避効果を示すので、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いるステモンは、オキシム系化合物(化学名:5−メチル−3−ヘプタノン オキシム)で、香料の調香剤としてしばしば使用されるが、これまでネズミをはじめとする小動物忌避成分として検討されたことはない。しかるに本発明者らは、種々の小動物忌避成分を鋭意研究する過程でステモンが極めて高い小動物忌避効果を示し、特にステモンとハッカ油を組み合わせた場合には、ある特定の範囲でその忌避効果が相乗的に増強されることを新たに見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
また、ハッカ油は、ハッカ又はその種間雑種の地上部を水蒸気蒸留して得た精油で、l−メントールを30%以上含有している。ハッカ油がネズミ等の小動物に対してある程度の忌避作用を示すことは古くから知られており、ハッカ油を含む小動物用忌避剤がいくつか市販されているが、その効果は必ずしも十分ではない。なお、ハッカ油は天然産で高価なため、その一部を安価な合成品のl−メントールで置き換えてもよい。
【0008】
本発明では、小動物忌避成分として、好ましくはステモンとハッカ油の混合物を使用する。すなわち、その配合比が0.1:1.0〜2.0:1.0の場合、相乗的に小動物忌避効果が増強され、極めて有用な小動物用忌避剤を提供する。
【0009】
また、本発明で使用する小動物忌避成分には、本発明の作用・効果に支障を来たさない限りにおいて他の忌避成分を加えてもよい。かかる忌避成分としては、スチラリルアセテート、フェニルエチルフォーメート、フェニルエチルアセテート、L−カルボン等があげられる。
小動物忌避成分の小動物用忌避剤全体量に対する比率は、忌避剤の形態、使用場所や使用期間等によっても異なるが、例えばエアゾールやポンプスプレーのような液状の場合、0.5〜10.0(w/v)%程度に設定するのが好ましい。0.5(w/v)%未満であると忌避効果が十分でなく、一方10.0(w/v)%を超えると匂いが強くなりすぎるので実用的でない。
【0010】
本発明の小動物用忌避剤は、香調の調整のために他の芳香成分を配合してもよい。例示すれば、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、リナロール、テルピネオール、メンタン、p−メンタン−3,8−ジオール、メチルサリシレート、ピネン、リモネン、ゲラニオール、ボルネオール、ゲラニルフォーメート、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油、タイムホワイト油等の天然もしくは合成香料や天然精油があげられる。
【0011】
更に、常温揮散性のピレスロイド系殺虫成分、例えば、エムペントリン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート[トランスフルトリン]、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレートなどを添加すれば忌避効果を増強させることも可能となる。
【0012】
本発明の小動物用忌避剤は、使用場面のニーズに合わせて、液状、ゲル状、固形状、シート状など種々の形態を採用しうる。
液剤を調製するにあたっては、水のほか、エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール、プロピレングリコールのようなグリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル系水溶性有機溶剤、脂肪族もしくは芳香族炭化水素系溶剤や、界面活性剤、可溶化剤、分散剤が適宜用いられる。
また、ゲル状体の調製に用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ゼラチン、オクチル酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸などがあげられる。
一方、パルプ、リンター、レーヨン等のセルロース製担体、ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等の無機多孔質担体、トリオキサン、アダマンタン等の昇華性担体に、小動物忌避成分を必要ならば溶剤等とともに含浸させて固形状、シート状、粒状等の小動物用忌避剤を調製することもできる。
なお、安定化剤、pH調整剤、着色剤などを適宜配合してもよいことはもちろんである。
【0013】
次に、液状形態の小動物用忌避剤について詳述する。
処方としては、小動物忌避成分を0.5〜10.0(w/v)%、低級アルコールを10〜40(w/v)%、必要ならば、更に界面活性剤ならびに水などを含有して水性液剤としてもよい。このような小動物用忌避剤は、ポンプスプレー形態、あるいは噴射剤を伴ってエアゾール形態に好適に適用される。
【0014】
低級アルコールとしては、エタノール又はイソプロパノールが使いやすく、エタノールが性能的に好ましい。また、噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、窒素ガス、炭酸ガス等があげられる。
界面活性剤は、小動物忌避成分の安定性の点から、非イオン系界面活性剤の使用が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどを例示できる。
【0015】
小動物用忌避剤がゲル状体や固形状、シート状等の場合も常法に従って調製することができ、使用目的や使用場面に適した製剤に適用可能となる。
【0016】
こうして得られた本発明の小動物用忌避剤は、室内、倉庫、飲食店等で用いられ、2週間ないし2ケ月間の長期間にわたり、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ等の各種ネズミ類、イタチ、モグラやハクビシン等による被害を効果的に防止できるものである。
【0017】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の小動物用忌避剤について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
ステモン0.15(w/v)%、ハッカ油0.6(w/v)%、及びスチラリルアセテート0.05(w/v)%をエタノール30(w/v)%に溶解したエアゾール原液をエアゾール容器に入れ、残量の液化石油ガスを充填して、本発明の小動物用忌避剤を得た。
【実施例2】
【0019】
ステモン0.40(w/v)%、ハッカ油0.40(w/v)%、l−メントール0.20(w/v)%、ラウリルアミンオキサイド1.2(w/v)%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1.6(w/v)%、ポリオキシエチレンオレイルエーテル3.0(w/v)%、エタノール7.0(w/v)%、クエン酸0.02(w/v)%、及び精製水86.18(w/v)%を含有する液剤をプラスチックボトルに充填して、ポンプスプレー形態の本発明の小動物用忌避剤を調製した。なお、この水性の小動物用忌避剤は、消防法上の非危険物に該当した。
【実施例3】
【0020】
表1に示す組成物を調製し、その0.5mLを5×10cmの濾紙に滴下した。この液量はm2あたり100mLに相当した。
飼育用ケージの中に、前記処理濾紙及び所定量の餌を入れた容器と、無処理濾紙及び餌を入れた容器を置き、ラット1匹を放飼した。3日後、それぞれの食餌量を測り、次式に従って忌避率を算出した。
忌避率(%)=[無処理濾紙区の食餌量−処理濾紙区の食餌量]/無処理濾紙区の食餌量
×100
【0021】
【表1】


【0022】
試験の結果、小動物忌避成分として、ステモン、好ましくは、ステモンとハッカ油を含有する組成物は、ネズミに対して高い忌避作用を示した。そして、ステモンとハッカ油の配合比が0.1:1.0〜2.0:1.0の範囲で、その忌避効果が相乗的に増強されることが認められた。
これに対し、比較例1ないし比較例3に示すように、ハッカ油やl−メントールをベースとした組成物、ならびに、ジエチルトルアミドとリモネンを含む組成物は、忌避効果が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、ネズミ等の小動物による被害防止に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物忌避成分として、ステモンを含有することを特徴とする小動物用忌避剤。
【請求項2】
小動物忌避成分として、ステモンとハッカ油を含有し、その配合比が0.1:1.0〜2.0:1.0であることを特徴とする請求項1記載の小動物用忌避剤。
【請求項3】
小動物忌避成分を0.5〜10.0(w/v)%、低級アルコールを10〜40(w/v)%及び噴射剤を含有するエアゾール形態であることを特徴とする請求項1又は2記載の小動物用忌避剤。

【公開番号】特開2009−120550(P2009−120550A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297188(P2007−297188)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】