説明

小動物防除性樹脂組成物

【課題】安価にして小動物の忌避性能に優れた小動物防除性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A1)オレフィン系樹脂と、(B)小動物防除剤と、(C)小動物防除剤の徐放助剤とを基本的組成物として含有する。これに加えて、(A2)ポリアミド系樹脂及び(A3)無水マレイン酸変性ポリエステル、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するか、(A4)エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するか、前記ポリアミド系樹脂(A2)、前記樹脂材料(A3)より選ばれる少なくとも1種及び前記樹脂材料(A4)より選ばれる少なくとも1種を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物防除剤を樹脂中に混練して成る小動物防除性樹脂組成物に係り、特に、小動物防除性能及びその永続性の改善と低コスト化を図る手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小動物防除性樹脂組成物としては、ベース樹脂中に、小動物防除剤と、この小動物防除材を溶解保持して徐放性を付与する徐放助剤とを混練したもの(例えば、特許文献1参照。)や、ベース樹脂中に、小動物防除剤と、ベース樹脂に対する小動物防除材の親和性を高める親和性樹脂とを混練したもの(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の小動物防除性樹脂組成物は、ベース樹脂中に小動物防除剤の徐放助剤を混練したので、小動物防除性能を長期にわたって発現することができる。また、特許文献1に記載の小動物防除性樹脂組成物は、ベース樹脂として、ポリアミド樹脂及びポリアセタール樹脂より選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いているので、各種構造部材として使用可能な強度、耐熱性及び耐薬品性を有している。一方、特許文献2に記載の小動物防除性樹脂組成物は、ベース樹脂中に小動物防除剤の親和性樹脂を混練したので、ベース樹脂に対する小動物防除剤の分散性及び相溶性を高めることができ、長期にわたって高い小動物防除剤保持率を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−212005号公報
【特許文献2】特開2008−206492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の小動物防除性樹脂組成物には、(a)有害な小動物の忌避率及び忌避速効性が高いこと、(b)各種構造部材を成形したとき、成形後速やかに所定量の小動物防除剤が構造部材の表面に染み出すこと、(c)構造部材の表面から小動物防除剤が徐放され、長期にわたって小動物防除性能を発揮できること、(d)安価に実施できること、等の諸性能をバランス良く有していることが求められる。これらの諸性能を満足するためには、ベース樹脂中に小動物防除剤を均一かつ徐放性をコントロール可能な形で混練することが特に必要であり、そのためには、ベース樹脂とこれに混練される徐放助剤との相溶性を高める必要がある。
【0006】
何となれば、ベース樹脂に対する徐放助剤の相溶性が低いと、ベース樹脂の表面に徐放助剤が析出しやすく、短期間のうちに小動物防除剤が析出し尽くすため、上記(a)及び(b)の性能は満足できるとしても、上記(c)の性能については、満足することができないからである。また、長期間にわたって小動物防除性能を発揮させるためには、ベース樹脂中に大量の小動物防除剤を添加せざるを得ないので、コスト高となり、上記(d)の性能も満足することができない。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の小動物防除性樹脂組成物には、小動物防除剤の徐放助剤が添加されているが、ベース樹脂と徐放助剤との相溶性を高めるための工夫が何ら施されていないので、ベース樹脂の種類によっては、上記(a)〜(d)の性能を満足できない場合を生じ得る。
【0008】
一方、特許文献2に記載の小動物防除性樹脂組成物には、小動物防除剤の徐放助剤が添加されていないので、長期間(特許文献2の記載によれば、3か月)にわたって製品である防蟻シート内に防蟻剤を保持できるとしても、防蟻シートからの防蟻剤の溶出が適切に行われ、防蟻効果を長期間発揮し得るかについては、疑問の余地がある。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価にして小動物の忌避性能に優れた小動物防除性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような技術的課題を解決するため、第1に、(A1)オレフィン系樹脂、(B)小動物防除剤、(C)小動物防除剤の徐放助剤、(A2)ポリアミド系樹脂、及び(A3)無水マレイン酸変性ポリエステル、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するという構成にした。
【0011】
第2に、(A1)オレフィン系樹脂、(B)小動物防除剤、(C)小動物防除剤の徐放助剤、及び(A4)エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するという構成にした。
【0012】
第3に、(A1)オレフィン系樹脂、(B)小動物防除剤、(C)小動物防除剤の徐放助剤、(A2)ポリアミド系樹脂、(A3)無水マレイン酸変性ポリエステル、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料、及び(A4)エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するという構成にした。
【0013】
オレフィン系樹脂(A1)は、小動物防除性樹脂組成物を構造体として形作るマトリクス樹脂である。徐放助剤(C)は、オレフィン系樹脂(A1)に小動物防除剤(B)の徐放性を付与するものである。ポリアミド系樹脂(A2)は、小動物防除剤(B)を担持する担持樹脂であり、オレフィン系樹脂(A1)中の小動物防除剤(B)の保持量を調整する機能を有する。樹脂材料(A3)は、オレフィン系樹脂(A1)に対するポリアミド系樹脂(A2)の相溶性を高める分散助樹脂であり、オレフィン系樹脂(A1)中にポリアミド系樹脂(A2)を均一に分散させる機能を有する。さらに樹脂材料(A4)は、オレフィン系樹脂(A1)に対する小動物防除剤(B)の親和性を高める親和性樹脂であり、オレフィン系樹脂(A1)からの小動物防除剤(B)の徐放量を調整する機能を有する。
【0014】
オレフィン系樹脂(A1)と徐放助剤(C)とは、相溶性が低いため、単にオレフィン系樹脂(A1)に徐放助剤(C)を加えただけでは、小動物防除剤(B)の徐放性を十分に発揮することができず、小動物の忌避効果が高く、かつ製品寿命が長い小動物防除性樹脂成形体を得ることが困難である。なお、オレフィン系樹脂(A1)との相溶性が高い徐放助剤については、今のところ見出すことができない。オレフィン系樹脂(A1)と小動物防除剤(B)と徐放助剤(C)の混合体にポリアミド系樹脂(A2)を添加すると、小動物防除剤(B)がポリアミド系樹脂(A2)に担持されるので、オレフィン系樹脂(A1)中に所定量の小動物防除剤(B)を確実に保持させることができ、更に、この混合物に樹脂材料(A3)を添加すると、オレフィン系樹脂(A1)に対するポリアミド系樹脂(A2)の相溶性が高められるので、オレフィン系樹脂(A1)中に小動物防除剤(B)を均一に分散させることができる。よって、小動物防除性樹脂組成物からの小動物防除剤(B)の溶出を適宜コントロールすることができ、所要の忌避効果を発揮できると共に、長期間その効果を継続させることができる。また、小動物防除剤(B)の添加量をむやみに増やす必要がないので、小動物防除性樹脂組成物の低コスト化を図ることができる。加えて、オレフィン樹脂は、射出成形や押し出し成形などの各種の成形方法をもって各種の成形品を成形可能であるので汎用性に優れると共に、安価であることから、小動物防除性樹脂組成物の材料コストを削減することができる。
【0015】
また、オレフィン系樹脂(A1)と小動物防除剤(B)と徐放助剤(C)の混合体に樹脂材料(A4)を添加すると、オレフィン系樹脂(A1)に対する小動物防除剤(B)の親和性が高められるので、小動物防除性樹脂組成物からの小動物防除剤(B)の析出を適宜コントロールすることができ、所要の忌避効果を発揮できると共に、長期間その効果を継続させることができる。
【0016】
したがって、オレフィン系樹脂(A1)と小動物防除剤(B)と徐放助剤(C)の混合体に、ポリアミド系樹脂(A2)及び樹脂材料(A3)を添加するか、樹脂材料(A4)を添加するか、或いはポリアミド系樹脂(A2)、樹脂材料(A3)及び樹脂材料(A4)の全てを添加することにより、高性能かつ低コストな小動物防除性樹脂組成物とすることができる。
【0017】
また本発明は、前記構成の小動物防除性樹脂組成物において、前記小動物防除性樹脂組成物の総量に対する(B)小動物防除剤の含有率を、1重量%以上10重量%以下としたことを特徴とする。
【0018】
小動物防除性樹脂組成物の製造コストに占める小動物防除剤の割合は高いので、小動物防除剤の含有量を減らすことによって、小動物防除性樹脂組成物の低コスト化を図ることができる。その反面、小動物防除剤の含有量が低すぎると、小動物の忌避効果が低く、その効果の継続性も低くなる。特許文献1には、小動物防除性樹脂組成物中の小動物防除剤の含有率を5重量%〜20重量%にする技術が記載されているが、この場合には、小動物防除性樹脂組成物の製造コストが高価になり過ぎる。また、特許文献2には、小動物防除性樹脂組成物中の小動物防除剤の含有率を0.001重量%〜0.1重量%にする技術が記載されているが、この場合には、適正な小動物の忌避効果及びその効果の継続性を発揮することが困難になる。小動物防除性樹脂組成物中の小動物防除剤の含有率を1重量%〜10重量%にすると、小動物の忌避効果と製造コストのバランスをとることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、オレフィン系樹脂(A1)と小動物防除剤(B)と徐放助剤(C)の混合体に、ポリアミド系樹脂(A2)及び樹脂材料(A3)を添加するか、樹脂材料(A4)を添加するか、ポリアミド系樹脂(A2)、樹脂材料(A3)及び樹脂材料(A4)を添加するので、オレフィン系樹脂(A1)に対する小動物防除剤(B)の相溶性及び徐放性を高めることができ、高性能かつ低コストの小動物防除性樹脂組成物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例に係る小動物防除性樹脂組成物の組成を示す表図である。
【図2】比較例に係る小動物防除性樹脂組成物の組成を示す表図である。
【図3】実施例及び比較例に係る小動物防除性樹脂組成物の使用材料を示す表図である。
【図4】実施例に係る小動物防除性樹脂組成物の物性を示す表図である。
【図5】比較例に係る小動物防除性樹脂組成物の物性を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係る小動物防除性樹脂組成物の構成について説明する。
【0022】
本例の小動物防除性樹脂組成物は、(A1)オレフィン系樹脂と、(B)小動物防除剤と、(C)小動物防除剤の徐放助剤とを基本的組成物として含有しており、これに加えて、(A2)ポリアミド系樹脂及び(A3)無水マレイン酸変性ポリエステル、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するか、(A4)エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有するか、前記ポリアミド系樹脂(A2)、前記樹脂材料(A3)より選ばれる少なくとも1種及び前記樹脂材料(A4)より選ばれる少なくとも1種を含有している。
【0023】
オレフィン系樹脂(A1)は、小動物防除性樹脂組成物を構造体として形作るためのマトリクス樹脂であり、これには、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂がある。ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(PE−LD)、高密度ポリエチレン樹脂(PE−HD)、超密度ポリエチレン樹脂(PE−VLD)、直鎖低密度ポリエチレン(PE−LLD)を用いることができる。また、ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリマー、エチレン・プロピレン共重合体及びブロック共重合体を用いることができる。
【0024】
小動物防除剤(B)としては、樹脂組成物の使用目的に合わせて適宜のものを用いることができる。例えば、各種の農業害虫、衛生害虫その他の昆虫類、蜘蛛類、ダニ類、鼠等の小動物の防除活性を有する薬剤であり、小動物忌避活性を有する化合物、殺虫活性、殺ダニ活性、殺蜘蛛活性若くは殺鼠活性等の殺小動物活性を有する化合物、小動物の摂食阻害活性を有する化合物、小動物の成長コントロール活性を有する化合物等を例示できる。
【0025】
かかる小動物防除性を有する薬剤の具体例としては、イミダクロプリドの様なクロロニコチニル系殺虫剤、シラフルオフェンの様なケイ素原子を有するネオフィルラジカルからなる化合物、ベンフラカルブ、アラニカルブ、メトキシジアゾン、カルボスファン、フェノブカルブ、カルバリル、メソミル、プロポクサー、フェノキシカルブ等のカーバメート系化合物、ピレトリン、アレスリン、dl,d−T80−アレスリン、d−T80−レスメトリン、バイオアレスリン、d−T80−フタルスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、プロパスリン、ペルメトリン、アクリナトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、フェノトリン、d−フェノトリン、フェンバレレート、エンペントリン、プラレトリン、テフルスリン、ベンフルスリン等のピレスロイド系化合物、ジクロロボス、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、プロモフォス、フェンチオン、トリクロルホン、ナレド、テメホス、フェンクロホス、クロルピリホスメチル、シアホス、カルクロホス、アザメチホス、ピリダフェンチオン、プロペタンホス、クロルピリホス等の有機リン系化合物、アセタミプリド、イミダクロプリド、チアクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン等のネオニコチノイド系化合物及びこれらの異性体、誘導体、類縁体等を例示できる。また、メトプレン、ピリプロキシフェン、キノプレン、ハイドロプレン、デオヘノラン、NC−170、フルフェノロクスロン、ジフルベンズロン、ルフェヌロン、クロルアズロン等の小動物の成長をコントロールする活性を有する化合物が挙げられる。また、殺ダニ剤としてケルセン、クロルフェナビル、デブフェンピラドピリダベン、ミルベメクチン、フェンピロキシメート、殺鼠剤としてはシリロシド、ノルボマイド、隣化亜鉛、硫酸タリウム、アンツー、ワルファリン、エンドサイド、クマリン、クマテトラリン、プロマジオロン、ディフェチアロン等が挙げられる。さらに、タイワンヒノキ、アスナロ、ヒノキアスナロ(青森ヒバ)等に含まれるヒノキチオールや、ハーブや、ヒノキに含まれるカジノール誘導体(α−カジノール、T−カジノール)や、クローブ、ナツメグ、コリアンダー、クミン等の香油植物に多く含まれるゲラニオール、ピネン、カリオフィレン、ボルネオール、オイゲノール等、さらに、オギスギなど小動物防除性を有する公知の香油等の天然由来の薬剤も、本発明における小動物防除性を有する薬剤として使用することができる。
【0026】
徐放助剤(C)は、オレフィン系樹脂(A1)に小動物防除剤(B)の徐放性を付与するものであり、スルホンアミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体、カルボン酸エステル誘導体より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、これらは小動物防除剤(B)を溶解保持し、徐放性を付与する作用を有するものと考えられる。これらの各徐放助剤(C)のうち、カルボン酸エステル誘導体としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲン等で置換されてもよい各種カルボン酸のアルキルエステル、芳香族エステル等を例示できる。
【0027】
カルボン酸エステル誘導体の具体例としては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ベンジルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、4,5−エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、4,5−エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(7,8−エポキシ−2−オクテニル)、4,5−エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(9,10−エポキシオクタデシル)、4,5−エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(10,11−エポキシウンデシル)、フタル酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、各種フタル酸混合エステル及びフタル酸混合エステルのエチレンオキシド付加物等のフタル酸エステル誘導体、イソフタル酸エステル誘導体、テトラヒドロフタル酸エステル誘導体、パラヒドロキシ安息香酸ブトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸シクロヘキシロキシエトキシエトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、ω−アルキルオリゴエチレンオキシドのヒドロキシ安息香酸エステル、ウンデシルグリシジルエーテルのパラヒドロキシ安息香酸付加物等の安息香酸エステル誘導体、チオジプロピオン酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)等のプロピオン酸エステル誘導体、アジピン酸エステル誘導体、アゼライン酸エステル誘導体、セバシン酸エステル誘導体、ドデカン−2−酸エステル誘導体、マレイン酸エステル誘導体、フマル酸エステル誘導体、トリメット酸エステル誘導体、クエン酸トリ(ブトキシエトキシエチル)、クエン酸ジn−オクチル-モノ(ノニルフェノキシエチル)、クエン酸トリn−オクチル、クエン酸ジオクチル(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、クエン酸トリミリスチル、トリエチルシトレート等のクエン酸エステル誘導体、イタコン酸エステル誘導体、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等のオレイン酸エステル誘導体、リシノール酸エステル誘導体、乳酸(n−ブチル)、乳酸(2−エチルヘキシル)、乳酸(n−ブトキシエトキシエチル)、乳酸(n−オクトキシエトキシエチル)、乳酸(n−デシルオキシエトキシエチル)等の乳酸エステル誘導体、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)、酒石酸(n−オクチル)(ノニルフェノキシエチル)、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)等の酒石酸エステル誘導体、リンゴ酸ジブトキシエチル、リンゴ酸ジ(n−ブトキシエトキシエチル)、リンゴ酸ジステアリル、リンゴ酸オクタデセニルイソノニル等のリンゴ酸エステル誘導体、ベンジルグリシジルエーテルのサリチル酸付加物等のサリチル酸エステル誘導体等を例示できる。また、リン酸エステル誘導体としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシル・ジフェニル・ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシル・ジフェニル・ホスフェート、トリクレジル・ホスフェート、トリキシレニル・ホスフェート、トリ(クロロエチル)ホスフェート、キシレニル・ジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)4,4´−ビフェニレンジホスフォネート等を例示できる。
【0028】
ホスファゼン誘導体の具体例としては、下記一般式(1)〔式中、mは3〜25の整数を示す。R,Rは同一又は異なって炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基及び/又はアリル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。〕で表わされる環状ホスファゼン化合物を挙げることができる。
【化1】

【0029】
また、下記一般式(2)〔式中、nは3〜1000の整数を示す。R,Rは同一又は異なって炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基及び/又はアリル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。Xは基−N=P(OR、基−N=P(OR、基−N=P(O)(OR)又は基−N=P(O)(OR)を示す。Yは基−P(OR、基−P(OR、基−P(O)(OR又は基−P(O)(ORを示す。〕で表わされる直鎖状ホスファゼン化合物、及び、これらのホスファゼン化合物より選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o−、m−又はp−フェニレン基、ビフェニレン基であるものを挙げることができる。
【化2】

【0030】
さらに、下記一般式(3)〔式中、rは0又は1を、Aは基 −SO−、−S−、−O−又は−C(CH−を示す。〕で表わされる基よりなる群より選ばれた少なくとも1種の架橋基により、置換基R,R,R,Rからアルキル基等が脱離した2個の酸素原子間が架橋されたホスファゼン化合物を挙げることができる。
【化3】

【0031】
一般式(1)で表わされる環状ホスファゼン化合物の具体例としては、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン、ヘキサプロポキシシクロトリホスファゼン、オクタプロポキシキシシクロテトラホスファゼン、デカプロポキシシクロペンタホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物が挙げられる。
【0032】
また、一般式(2)で表わされる直鎖状ホスファゼン化合物の具体例としては、鎖状ジクロルホスファゼンにプロポキシ基及び/又はフェノキシ基を置換した鎖状ホスファゼン化合物が挙げられる。
【0033】
一般式(3)で表される架橋構造の具体例としては、例えば4,4´−スルホニルジフェニレン(ビスフェノール−S残基)、4,4´−オキシジフェニレン基、4,4´−チオジフェニレン基、4,4´−ジフェニレン基等を挙げることができる。
【0034】
これらのホスファゼン誘導体は、任意の位置にアミノ基及び/又はフェニルアミノ基が置換したものであってもよい。これらのホスファゼン誘導体は、前記1種類を単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。また環状ホスファゼンと直鎖状ホスファゼンの混合物であってもよい。
【0035】
また、カルボン酸アミド誘導体としては、N−シクロヘキシル安息香酸アミド等を例示できる。
【0036】
また、スルホンアミド誘導体としては、N−メチル−ベンゼンスルホンアミド、N−エチル−ベンゼンスルホンアミド、N−ブチル−ベンゼンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−ベンゼンスルホンアミド、N−エチル−P−トルエンスルホンアミド、N−ブチル−トルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−トルエンスルホンアミド等を例示できる。
【0037】
また、スルホン酸エステル誘導体としては、ベンゼンスルホン酸エチル等を例示できる。B成分は、スルホンアミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選ばれた1種を単独で、又はこれらから選ばれた2種以上の混合物を用いることができる。
【0038】
ポリアミド系樹脂(A2)は、小動物防除剤(B)を担持する担持樹脂であり、オレフィン系樹脂(A1)中の小動物防除剤(B)の保持量を調整する機能を有する。このポリアミド系樹脂(A2)としては、ε−カプロアミド(PA6)、ヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ウンデカンラクタム(PA11)、ω−ラウロアミド(PA12)、{ε−カプロアミド/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド/ω−ラウロアミド}共重合体を挙げることができる。
【0039】
樹脂材料(A3)は、オレフィン系樹脂(A1)に対するポリアミド系樹脂(A2)の相溶性を高める分散助樹脂であり、オレフィン系樹脂(A1)中にポリアミド系樹脂(A2)を均一に分散させる機能を有する。この樹脂材料(A3)としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン(PE−MAH)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PP−MAH)、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー(SEBS−MAH)、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA,E−GMA−VA,E−GMA−M))を挙げることができる。
【0040】
樹脂材料(A4)は、オレフィン系樹脂(A1)に対する小動物防除剤(B)の親和性を高める親和性樹脂であり、オレフィン系樹脂(A1)からの小動物防除剤(B)の徐放量を調整する機能を有する。この樹脂材料(A4)としては、エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体又はエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体を挙げることができ、より具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)を挙げることができる。
【0041】
その他、実施形態に係る小動物防除性樹脂組成物には、所定量の無機充填材が添加される。無機充填材としては、粒子状無機充填材、繊維状無機充填材、或いは鱗片状無機充填材を使用することができる。
【0042】
粒子状無機充填材としては、チタン酸カリウム粒子、チタニア粒子、単斜晶系チタニア粒子、シリカ粒子、リン酸カルシウム等を例示でき、これらを単独で又は混合して用いることができる。該粒子状無機充填材の中では、チタン酸カリウム粒子が特に好ましい。
【0043】
繊維状無機充填材としては、例えば、平均繊維径0.05〜10μm、平均繊維長3〜150μm、好ましくは、平均繊維径0.1〜7μm、平均繊維長5〜50μmの形状を有する繊維状無機充填材を好適に使用することができ、該繊維状無機充填材としては、例えば、4チタン酸カリウム繊維、6チタン酸カリウム繊維、8チタン酸カリウム繊維、チタニア繊維、単斜晶系チタニア繊維、シリカ繊維、ワラストナイト、ゾノトライト等を例示でき、これらを単独で又は混合して用いることができる。これらの繊維状無機充填剤の中では、8チタン酸カリウム繊維が特に好ましい。
【0044】
鱗片状無機充填材としては、チタン酸カリウム、チタン酸カリウムリチウム、チタン酸カリウムマグネシウム、タルク、合成マイカ、天然マイカ、セリサイト、板状アルミナ、窒化ホウ素等を例示でき、これらを単独で又は混合して用いることができる。該鱗片状無機充填材の中では、チタン酸カリウムが特に好ましい。これらの無機充填材を配合すると、徐放性を長期間に亘って持続させることができる。また、無機充填材の配合は機械的物性の向上にも寄与しうるものとなる。
【0045】
なお、無機充填材はそのままでも使用し得るが、樹脂との界面接着性を向上させ機械的物性を一層向上させるために、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤又はチタネートカップリング剤等の表面処理剤で表面処理して用いてもよい。
【0046】
なお、実施形態に係る小動物防除性樹脂組成物においては、小動物防除性樹脂組成物の総量に対する小動物防除剤(B)の含有率を、1重量%以上10重量%以下とすることが望ましい。含有率が1重量%未満であると、小動物の忌避効果が低くなり、かつその効果の継続性も低くなるからである。一方、含有率が10重量%を超えると、小動物防除性樹脂組成物の製造コストが高価になり、マトリクス樹脂として安価なオレフィン系樹脂を用いたことの効果が減殺されるからである。
【0047】
本発明の小動物防除性樹脂組成物は、例えば各成分を配合し、溶融混錬することにより製造できる。各成分の配合は、予めタンブラー、ブレンダー、ミキサー等を用いて乾式混合することにより行うことができ、また、各成分を混錬機の同一又は異なったホッパーから供給することにより行うこともできる。得られた小動物防除性樹脂組成物は、直接所望の形状に成形して、製品である小動物防除性樹脂成形体とすることもできるし、一旦、押出後、ペレタイザーによりペレット化する等して、保管及び流通させてもよい。ペレット化等したものは、公知の方法により成形することができる。
【0048】
小動物防除性樹脂組成物の成形に際しては、例えば射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、マシニング成形等の公知に属する適宜の成形法を適用することができる。製品である小動物防除性樹脂成形体の形状に関しては特に制限があるものではなく、平板状、棒状、円筒状、櫛形、球状等、あらゆる形状とすることができる。また、小動物防除性樹脂組成物を単体で成形するほか、金属等と組み合わせた二色乃至多色の成形を行うこともできる。
【0049】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて、本発明に係る小動物防除性樹脂組成物の効果を明らかにする。
【0050】
図1に実施例1〜19に係る小動物防除性樹脂組成物の組成を示し、図2に比較例1〜7に係る小動物防除性樹脂組成物の組成を示す。なお、これらの図においては記載が省略されているが、実施例1〜19及び比較例1〜7に係る各小動物防除性樹脂組成物の残部は無機充填物であり、図示した成分と合わせて総量が100重量部になるように調整されている。使用材料の具体的なメーカー名及び商品名は、図3に示す通りである。
【0051】
図4に実施例1〜19に係る小動物防除性樹脂組成物の物性を示し、図5に比較例1〜7に係る小動物防除性樹脂組成物の物性を示す。小動物防除性樹脂組成物の物性は、試料中の小動物防除剤(B)の含有量、試料からの24時間毎の小動物防除剤(B)の徐放量、成形から24時間後の試料表面に存在する小動物防除剤(B)の量、殺虫即効性及び害虫忌避率について評価した。
【0052】
試料中の小動物防除剤(B)の含有量は、液体クロマトグラフィで測定し、添加量の80%以上の含有量を適正値とした。
【0053】
試料からの24時間毎の小動物防除剤(B)の徐放量は、液体クロマトグラフィで測定し、5μg/cm・24時間以上を適正値とした。
【0054】
成形から24時間後の試料表面に存在する小動物防除剤(B)及び徐放助剤を含む液体成分の総量は、エタノールで試料の表面を洗い流して、その前後の重量差で測定し、100μg/cm以下を適正値とした。
【0055】
殺虫速効性は、チャバネゴキブリ10匹を用い、継続接触法にて試験して、10分以内を適正値とした。
【0056】
害虫忌避率の評価は、シェルター試験により行った。具体的には、上部が開放された有底のアクリル容器(縦300mm、横230mm、高さ250mm)内に、餌及び水と、害虫が隠れることのできる2つのシェルター(縦60mm、横60mm、高さ10mm)A,Bを置いた。シェルターAは、内部に小動物防除性樹脂組成物からなる前記試料を設置したものとし、シェルターBは、内部に前記試料を設置しないものとした。前記アクリル容器内にチャバネゴキブリ10匹を投入して放置し、10時間後に、前記アクリル容器からシェルターA,Bを取り出して、それぞれのシェルター内にいるチャバネゴキブリの数を数え、忌避率[%]={(シェルターBの虫の数−シェルターAの虫の数)/シェルターBの虫の数}×100の式により、忌避率を算出した。害虫忌避率の評価は、90%以上を適正値とした。
【0057】
図4から明らかなように、実施例1〜19に係る小動物防除性樹脂組成物は、いずれも試料中に小動物防除剤(B)を0.9重量%以上含有しており、試料からの小動物防除剤(B)の徐放量は5μg/cm・24時間を超えており、成形から24時間後の試料表面に存在する小動物防除剤(B)の量は100μg/cm以下であり、殺虫速効性は10分以内であり、害虫忌避率は90%以上であった。
【0058】
一方、図5から明らかなように、比較例1,2,4,6,7に係る小動物防除性樹脂組成物は、いずれも試料からの小動物防除剤(B)の徐放量が5μg/cm・24時間に達さず、成形から24時間後の試料表面に存在する小動物防除剤(B)の量は100μg/cmを超えている。また、比較例3,5に係る小動物防除性樹脂組成物については、そもそも所定の形状を保持することができず、製品として不適であった。
【0059】
これらのことから、実施例1〜19に係る小動物防除性樹脂組成物は、オレフィン系樹脂(A1)に対する小動物防除剤(B)の相溶性及び徐放性を高めることができ、高性能かつ低コストの小動物防除性樹脂組成物とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、各種の農業害虫、衛生害虫その他の昆虫類、蜘蛛類、ダニ類、鼠等の小動物を防除する小動物防除性樹脂成形体に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)オレフィン系樹脂、(B)小動物防除剤、(C)小動物防除剤の徐放助剤、(A2)ポリアミド系樹脂、及び(A3)無水マレイン酸変性ポリエステル、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有することを特徴とする小動物防除性樹脂組成物。
【請求項2】
(A1)オレフィン系樹脂、(B)小動物防除剤、(C)小動物防除剤の徐放助剤、及び(A4)エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有することを特徴とする小動物防除性樹脂組成物。
【請求項3】
(A1)オレフィン系樹脂、(B)小動物防除剤、(C)小動物防除剤の徐放助剤、(A2)ポリアミド系樹脂、(A3)無水マレイン酸変性ポリエステル、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレンブロックコポリマー及びエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料、及び(A4)エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の群より選ばれる少なくとも1種の樹脂材料を含有することを特徴とする小動物防除性樹脂組成物。
【請求項4】
前記小動物防除性樹脂組成物の総量に対する(B)小動物防除剤の含有率を、1重量%以上10重量%以下としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の小動物防除性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6868(P2012−6868A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143863(P2010−143863)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】