説明

小型圧送試験装置および空洞充填材の長距離圧送性の評価方法

【課題】材料と時間と場所とコストをかけずにエアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する場合の長距離圧送試験を容易に行える小型圧送試験装置および空洞充填材の長距離圧送性の評価方法を提供する。
【解決手段】小型圧送試験装置は、エアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を貯留する貯留タンク1と、貯留タンク1内の空洞充填材を圧送するチューブポンプ2と、このチューブポンプ2に接続された圧送管3とを備え、圧送管3の内径が1/4〜1/2インチであり、長さが20〜100メートルである。このような小型圧送試験装置は、現場で使用する、規模の大きな装置を用いた圧送の場合と同様の圧送後の空洞充填材を得ることができるので、材料と時間と場所とコストをかけずにエアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する場合の長距離圧送試験を容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプラインの空洞への充填材、シールドトンネルの裏込材、防空壕の充填材等として使用する空洞充填材を長距離圧送する場合の小型圧送試験装置および空洞充填材の長距離圧送性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油や天然ガスを運ぶために地盤中に恒久的に埋設したパイプライン内に敷設されたガス管の周囲の空洞を充填する空洞充填材としては、エアミルクやエアモルタルが用いられている。近年、数百メートル〜数キロメートルのパイプラインの空洞を充填する工事が多く、エアミルク充填材を長距離の圧送管によりポンプ圧送している。エアモルタルの一例としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
しかし、長距離の圧送管によりポンプ圧送する場合、圧送中にエアミルク・エアモルタル充填材に含まれる気泡が破壊し、圧送後にはエアミルク・エアモルタル充填材に要求される軽量性や材料分離抵抗性能が発揮されない場合がある。したがって、長距離圧送に適するエアミルク・エアモルタル等の空洞充填材の開発、性能の確認においては、実際に現場で使用する、規模の大きな圧送装置を用いて、空洞充填材を圧送し、圧送後の空洞充填材の材料分離抵抗性能、自己充填性能、長距離圧送性能の把握を行っている。
【特許文献1】特開2004−238214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、実際に現場で使用する、規模の大きな圧送装置で圧送後の空洞充填材を試験体として取得する場合、1度の試験体取得に要する、材料と時間と場所とコストが膨大なものになるという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、材料と時間と場所とコストをかけずにエアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する場合の長距離圧送試験を容易に行える小型圧送試験装置および空洞充填材の長距離圧送性の評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、エアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する場合の小型圧送試験装置であって、
前記空洞充填材を貯留する貯留タンク1と、この貯留タンク1内の空洞充填材を圧送するポンプ(チューブポンプ)2と、このポンプ2に接続された圧送管3とを備え、
前記圧送管3の内径が1/4〜1/2インチであり、長さが20〜100メートルであることを特徴とする。
【0006】
ここで、前記ポンプとしては、チューブポンプが好ましいが、チューブポンプに代えてモーノポンプ、ピストンポンプを用いてもよい。
チューブポンプは、スクイズポンプとも称されるものであり、吐出量が1〜10リットル/分であり、吐出圧の最大が1.0MPaであることが好ましいが、特に吐出量や吐出圧に制限がある必要はない。
また、圧送管の内径は1/4〜1/2インチであり、長さは20〜100メートルであるが、特に内径が3/8インチ、長さが20メートルであることが好ましい。
また、空洞充填材としては、エアミルクやエアモルタルに限ることなく、流動性を備えた空洞充填材であればどのような充填材でもよい。例えば、石炭灰エアミルク、気泡混合軽量土等の、気泡を構成材料とする材料であればよい。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の小型圧送試験装置を利用した空洞充填材の長距離圧送性の評価方法であって、
前記貯留タンクに、固まっていない空洞充填材を投入し、所定の流量および圧力に調整した前記ポンプを用いて、前記空洞充填材を前記圧送管内にて流動させ、該圧送管の先端部で、流動後の空洞充填材を採取し、採取した空洞充填材の性状を評価することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空洞充填材の長距離圧送性の評価方法において、採取した空洞充填材の性状を評価するに際し、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材の気泡量を測定し、その測定値を比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貯留タンクと、この貯留タンク内の空洞充填材を圧送するポンプと、このポンプに接続された圧送管とを備え、圧送管の内径を1/4〜1/2インチとし、長さを20〜100メートルとすることによって、実際に現場で使用する、規模の大きな装置を用いた圧送の場合と同様の圧送後の空洞充填材を得ることができる。したがって、材料と時間と場所とコストをかけずにエアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する場合の長距離圧送試験を容易に行える。
また、貯留タンクに、固まっていない空洞充填材を投入し、所定の流量および圧力に調整したポンプを用いて、空洞充填材を圧送管内にて流動させ、該圧送管の先端部で、流動後の空洞充填材を採取し、採取した空洞充填材を用いて、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材の気泡量を測定し、その測定値を比較することによって、材料分離抵抗性能、自己充填性能、長距離圧送性能の評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る小型圧送試験装置の一例を示す概略構成図である。
小型圧送試験装置は、貯留タンク1と、チューブポンプ2と、圧送管3とを備えている。貯留タンク2は、エアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を貯留するためのものある。チューブポンプ2は、弾性のあるチューブの一点をローラーで押し潰し、ローラーをそのまま移動させてチューブ内部の液体を押し出すタイプのポンプであり、自吸式で弁構造が無く、スラリーや、粘度の高い液体等の圧送に適しているものである。
【0011】
チューブポンプ2と貯留タンク1とは供給管4によって接続されており、チューブポンプ2を作動させることによって、貯留タンク1内の空洞充填材が供給管4を介してチューブポンプ2に供給される。チューブポンプ2と圧送管3とは連結管5によって連結されており、チューブポンプ2により吐出された空洞充填材は、連結管5を介して圧送管3に供給され、この圧送管3内を圧送される。
【0012】
連結管5には圧力計6が取り付けられており、この圧力計6によって圧送される空洞充填材の圧力を計測する。なお、空洞充填材の流量はチューブポンプ2に内蔵されたインバーターにて制御を行う。なお、流量の測定は、圧送管先端から採取したエアミルク、エアモルタル等の空洞充填材の採取に要した時間、採取量(体積)から算出する。
前記連結管5と圧送管3との間には、分岐弁7が介在されており、この分岐弁7には廃液管8が接続されている。分岐弁7は、連結管5やチューブポンプ2のメンテナンスを行う際に、これらに残留している空洞充填材を廃液管8へ導くように弁が作動する。
前記圧送管3は、その内径が3/8インチであり、長さが20メートルである。
【0013】
上記のような構成の小型圧送試験装置と、実際に現場で使用する、規模の大きい装置とを使用してエアミルク(空洞充填材)の圧送試験を行った。
長距離圧送試験装置を使用する場合、貯留タンク1に、固まっていないエアミルクを投入し、所定の流量および圧力に調整したチューブポンプ2を用いて、エアミルクを圧送管3内で流動させ、該圧送管3の先端部で、流動後のエアミルクを採取する。
実際に現場で使用する、規模の大きい装置の場合、エアミルクを圧送管内で流動させ、該圧送管の先端部で、流動後のエアミルクを採取する。
【0014】
圧送試験で使用するエアミルクの配合は以下の通りである。
セメント:120kg、石炭灰:275kg、練混ぜ水235kg、気泡量60%
表1に圧送管の圧送条件を、表2に圧送前後におけるエアミルクの性状の変化を比較した結果を示す。
また、消泡率は次式で求める。
消泡率(%)={1−圧送後の気泡量(%)/圧送前の気泡量(%)}×100
【0015】
【表1】

【表2】

【0016】
表1から明らかなように、吐出圧は、規模の大きな装置では0.35MPa、本発明に係る小型圧送試験装置では0.30MPaであり、圧力振幅は両装置とも0.10MPaであった。したがって、両装置においてほぼ同じ、吐出圧および圧力振幅にすることができる。
また、表2から明らかなように、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材のエアミルクの単位体積重量を測定し、その測定値を比較すると、本発明に係る小型圧送試験装置では単位体積重量の増減は0.550tf/m3であり、規模の大きな装置では単位体積重量の増減が0.455tf/m3であり、エアミルクの単位体積重量の増減は、小型圧送試験装置の方が若干大きいことが分かる。
また、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材の気泡量を測定し、その測定値を比較すると、本発明に係る小型圧送試験装置では消泡率が60.8%、規模の大きな装置では消泡率が52.1%であり、消泡率は小型圧送試験装置の方が若干大きいことが分かる。
さらに、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材のシリンダーフロー値を測定し、その測定値を比較すると、本発明に係る小型圧送試験装置では増減率が137%、規模の大きな装置では増減率が127%であり、増減率は小型圧送試験装置の方が若干大きいことが分かる。
しかし、これらはほとんど差異がないと言えるので、本発明に係る小型圧送試験装置は、実際に現場で使用する、規模の大きな装置をほぼ再現できると言える。
また、測定項目として、エアミルクの単位体積重量、気泡量、フロー値に加えて、ブリーディング率、気泡径、一軸圧縮強さを採用することもでき、その値の変化を比較することによって、エアミルク(空洞充填材)の長距離圧送性の評価は可能である。
【0017】
本実施の形態の小型圧送試験装置によれば、貯留タンク1と、この貯留タンク1内のエアミルクを圧送するチューブポンプ2と、このチューブポンプ2に接続された圧送管3とを備え、圧送管3の内径を1/4〜1/2インチとし、長さを20〜100メートルとすることによって、実際に現場で使用する、規模の大きな装置を用いた圧送の場合と同様の圧送後のエアミルクを得ることができる。したがって、材料と時間と場所とコストをかけずにエアミルクを長距離圧送する場合の圧送試験を容易に行える。
また、貯留タンク1に、固まっていないエアミルクを投入し、所定の流量および圧力に調整したチューブポンプ2を用いて、エアミルクを圧送管3内にて流動させ、該圧送管3の先端部で、流動後のエアミルクを採取し、このエアミルクを用いて、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材の単位体積重量、シリンダフロー値、ブリーディング率、気泡径、一軸圧縮強さを測定し、その値の変化を比較することによって、材料分離抵抗性能、自己充填性能、長距離圧送性能の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る小型圧送試験装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1 貯留タンク
2 チューブポンプ(ポンプ)
3 圧送管
4 供給管
5 連結管
6 圧力計
7 分岐弁
8 廃液管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する場合の小型圧送試験装置であって、
前記空洞充填材を貯留する貯留タンクと、この貯留タンク内の空洞充填材を圧送するポンプと、このポンプに接続された圧送管とを備え、
前記圧送管の内径が1/4〜1/2インチであり、長さが20〜100メートルであることを特徴とする小型圧送試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の小型圧送試験装置を利用した空洞充填材の長距離圧送性の評価方法であって、
前記貯留タンクに、固まっていない空洞充填材を投入し、所定の流量および圧力に調整した前記ポンプを用いて、前記空洞充填材を前記圧送管内にて流動させ、該圧送管の先端部で、流動後の空洞充填材を採取し、採取した空洞充填材の性状を評価することを特徴とする空洞充填材の長距離圧送性の評価方法。
【請求項3】
採取した空洞充填材の性状を評価するに際し、圧送前の空洞充填材と圧送後の空洞充填材の気泡量を測定し、その測定値を比較することを特徴とする請求項2に記載の空洞充填材の長距離圧送性の評価方法。


【図1】
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【公開番号】特開2009−13748(P2009−13748A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179921(P2007−179921)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】