説明

小型撮像モジュール

【課題】 IC、レンズ等の部品を基板とケースでパッケージした小型撮像モジュールは、プラスチックのレンズがリフロー炉の熱で変形してしまい、半田のリフローで回路基板に実装することができなかった。この問題を解決する。
【解決手段】 レンズ6の基部6aをケース2内壁の棚2aに乗せ、レンズ上面に弾性スペーサ31、外周に弾性リング32を配置する。リフロー炉内の加熱によるレンズの熱膨張は、これらの弾性部材の圧縮に吸収されて、レンズが無理な変形をせず、常温になれば原状に復帰する。他に、レンズを円錐座で受けて径方向の変形を軸方向の変形に変え、弾性スペーサで吸収する構造、レンズの上面や外周に突起を設けてレンズ本体の変形を避ける構造、レンズを支持するケースの棚部に弾性を持たせてレンズの変形を吸収する構造などがある。こうしてリフローによる小型撮像モジュールの実装が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオカメラ、監視カメラ、工業用カメラ、パソコン、電話機等に組み込んで映像を撮影するのに用いる小型撮像モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】図7は上記のような小型撮像モジュールの一例で、同図(A)は上面図、(B)は(A)のB−B断面図である。また、図8にその分解斜視図を示す。これらの図面に見るように、セラミックスやガラス入りエポキシ樹脂等の基板1とプラスチックのケース2に、構成各要素を収容してパッケージしたものである。基板1にはIC(3)をダイボンデイングし、ワイヤ4でワイヤボンディングしてある。IC(3)には、フォトダイオード等の光電変換素子とMOSトランジスタあるいはCCD素子を組み合わせた検出要素を、多数、マトリクス配置した撮像回路が形成されている。
【0003】図8で明らかなように、ケース2は下側が箱形、上側が円筒状で、図7(B)に見るように、基板1上のIC(3)に面して、ケース2の内側下部にIR(赤外線)カットフィルタ7が固定してあり、これにより屋外など赤外線が多い環境で電荷が飽和して、画像が真っ白になるのを防いでいる。ケース2の上側の円筒部の内壁に棚2aがあって、これにレンズ6が取り付けてある。レンズ6は透明なプラスチック製で、円板状の基部6aの下面に凸レンズ6bを形成してあり、基部6aの外周を棚2aに載せ、上面を絞り5で押さえて支持している。絞り5には光路となる穴5aが開けてある。これらの部品相互の接合にはエポキシ等の接着剤を用いている。このような構成により、外界の映像はレンズ6を通してIC(3)の表面に結像し、電気信号に変換され処理される。
【0004】基板1の周辺には複数の窪み1aがあり、窪み1aの内壁は導電材料で被覆されていて、この導電材料は基板1の上下両面の導電パターンを接続し、図示してないが、基板1の下面における窪み1aの回りの導電材料のランド部が、組み込み先回路基板への接続用の端子電極になっている。従ってこの小型撮像モジュールは、基板1の下面の端子電極を用いて、電子機器の回路基板に表面実装するのに適する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】回路部品を電子機器の回路基板に表面実装するには、半田のリフローによるのが便利であるが、上記の小型撮像モジュールには、これを行うのが困難な事情がある。それは透明プラスチックのレンズ6が、230℃以上に達するリフロー温度に耐えられずに変形してしまうことである。図9は、先の小型撮像モジュールのケース2の上端の、レンズ6を収容した部分の断面図である。同図(A)のように、レンズ6の基部6aをケース2内壁の棚2aに載せて、絞り5で押さえて保持し、絞り5はケース2の上端に接着剤8で接合してある。この小型撮像モジュールを表面実装するために、回路基板に仮付けしてリフロー炉に入れて加熱すると、レンズ6は同図(B)の矢印のように熱膨張しようとするものの、周囲のケース2や絞り5に圧迫されて歪んだり、甚だしい場合には溶融し、変形して固化したりするので、実装後、正常に結像しなくなる。
【0006】このため小型撮像モジュールの回路基板への実装は、一つずつ手作業で半田付けしたり、基板1にケース2を固定してあるだけでレンズの付いてないパッケージを、回路基板にリフローで実装し、レンズや絞りを後工程で取り付けるなどの方法を取ることになって、工数がかかる。耐熱性のあるガラスレンズならリフロー温度に耐えるが、ガラスレンズはプラスチックレンズに比し高価で、コスト上不利である。本発明は上記の問題を解決し、プラスチックレンズを用いた構造であって、半田のリフローで表面実装できる小型撮像モジュールを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明では、レンズが周囲を拘束されているためにリフロー時の熱膨張で無理な変形を生じ、実装後にその悪影響が残るということのないよう、レンズの膨張を吸収する支持構造を取る。
【0008】すなわち、1.レンズに重ねて、あるいはレンズ外周を取り巻いて弾性部材を配置し、レンズの熱膨張をこれらの弾性部材で吸収する。
2.レンズの下面外周に面取りして円錐面を形成し、ケース内壁の棚部には円錐座を形成してレンズをこれに乗せ、弾性スペーサでレンズ上面を押さえて支持することにより、径方向の熱膨張を円錐面で軸方向の変位に変換して、レンズに重ねた弾性部材で吸収する。
【0009】3.レンズの外周と上面に複数の突起を設け、これらの突起を介して外周と上面を囲むことにより、レンズの熱膨張を上記の突起とその接触部の変形で吸収する。レンズの周囲に弾性部材を設けることと、レンズに突起を設けることを、適宜組み合わせて用いることができる。
4.レンズを支持するケースの棚部を弾性のある構造にして、レンズの熱膨張を棚部の変形で吸収する。これらの手段によりリフロー熱による実装後にも、レンズの形状や位置を高精度に維持できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、実施形態にて小型撮像モジュールとしての基本構造は先の図7、図8のものと同様であるから、対応する部品や部分については同じ符号をつけ、詳細な説明は省略する。
【0011】図1は本発明の第1の実施形態で、ケース2内にレンズ6を収容した部分の断面図である。同図(A)は常温における通常の状態であり、レンズ6の基部6aの外周をケース2の内壁の棚2aに乗せ、上側の絞り5との間に弾性スペーサ31を挟んで基部6aを押さえている。また、基部6aの外周とケース2の内壁の間に弾性リング32を配置してある。同図(B)のように、小型撮像モジュールがリフロー炉内で加熱されて、レンズ6が図中の矢印のように径方向および軸方向に膨張すると、弾性スペーサ31と弾性リング32が圧縮されてレンズ6の変形を吸収するので、レンズ6には無理な力が掛からず、リフローが終わって常温になれば、また、図(A)の状態に復帰して異常な変形が残ることがない。
【0012】弾性スペーサ31と弾性リング32は、一体に作った部品であってももちろんよい。これらの部品に発泡シリコンや紙など、断熱性の材料を用いるなら、レンズ6の変形を吸収するだけでなく、ケース2からレンズ6への熱伝導を減らし、レンズの熱変形を抑える作用を持たせることができて、一層有効である。
【0013】図2は本発明の第2の実施形態で、同図(A)に見るように、レンズ6の基部6aの下面外周にテーパ状の面取りを施して円錐面を形成している。一方、ケース内壁の棚2aには、同じくテーパ状の斜面である円錐座2bを形成してある。そしてレンズ6の基部6aの円錐面6cを棚2aの円錐座2bに乗せ、レンズ6の上面を弾性スペーサ31で押さえてある。リフロー炉内で加熱されて図(B)の矢印のようにレンズ6の基部6aが変形すると、基部6は外形の膨張につれて円錐座をせり上がり、その動きと基部6aの厚さの膨張分は弾性スペーサ6aの変形で吸収される。従ってレンズ6には無理な力が掛からず、リフローが終わって常温になれば、また、図(A)の状態に復帰して異常な変形が残ることがない。
【0014】図3は本発明の第3の実施形態で、同図(A)に見るように、レンズ6の基部6aの外周に突起6d、上面に突起6eを数個ずつ等間隔に設けてあり、基部6aの外周をケース2の内壁の棚2aに乗せて、これらの突起6d,6eをケース2の内壁と絞り5の下面に当てている。突起の数は例えば3、4個程度である。ここでは先の実施形態のような弾性部材は用いない。リフロー炉内での加熱による図(B)の矢印のようなレンズ6の変形は、突起6d、6eの変形と、これらがケース2の内壁や絞り5の下面にめり込む変形に吸収されて、レンズ6本体には無理な力が掛からない。そしてレンズ6はリフロー後にも正常な形状を保つ。
【0015】図4は本発明の第4の実施形態で、これは先の第1の実施形態と第3の実施形態を混合した構成である。同図(A)に見るように、レンズ6の基部6aの外周を棚2aに乗せ、基部6aの外周に数個の突起6dを等間隔に設けてケース2の内周に当て、基部6a上面には突起を設けず、弾性スペーサ31で押さえてある。リフロー炉内での加熱によりレンズ6が図(B)の矢印のように変形した場合、径方向の変形は突起6とこれが接触するケース2内壁の変形で吸収され、軸方向の変形は弾性スペーサ31の変形で吸収される。従って、レンズ6には無理な力が掛からず、リフロー後にも正常な形状を保つ。
【0016】図示は省くが、第1の実施形態と第3の実施形態の混合による構成として、前記第4の実施形態とは別の第5の実施形態がある。図3にてレンズ6の基部6a外周に突起6dを設けず、代わりに図1の弾性リング32を設けた構造で、作用は以上の説明から明らかである。
【0017】本発明の第6の実施形態の分解斜視図を図5に示す。これは先の図8の従来例でレンズ6を支持しているケース2内壁の棚2aの部分を、弾性構造にしたもので、棚部は3本の弾性腕2cの形を取り、レンズ6の外周をこれらの弾性腕2c群の先端部に乗せ、絞り5で押さえてレンズ6を支持する。リフロー時のレンズ6の熱膨張につれて弾性腕2c群の先端が径方向外側と軸方向下側に変位し、レンズ6自体は無理な変形をせず、リフローが終わって常温になればレンズ6と弾性腕2c群は原状に復する。
【0018】図6は本発明の第7の実施形態で、レンズ6を支持するケース2内壁の棚部を、図5の弾性腕2c群とは別の弾性構造にしたものである。ケース2の内壁から伸びる3本の弾性腕2cが、中央のレンズ受けリング2dにつながっており、レンズ6の外周をレンズ受けリング2dに乗せ、絞り5で押さえて支持する。リフロー時のレンズ6の熱膨張は、弾性腕2c群で支持されたレンズ受けリング2dの変位で吸収されて、レンズ6自体が無理な変形をすることはなく、リフローが終わって常温になればレンズ6と弾性腕2c群は原状に復する。
【0019】図5および図6の実施形態は、レンズ6を弾性支持する点で効果的なだけでなく、図8の従来例のようにレンズ6が円環状の棚2aに乗って全周でケース2に接するのと異なり、ケース2の内壁とレンズ6の間に分散して設けた弾性腕2cが介在するので、従来例に比して熱伝導度が下がり、レンズ6の加熱を抑える点でも有利である。
【0020】
【発明の効果】従来、プラスチックレンズを用いた小型撮像モジュールは、リフロー時の熱によってレンズが変形してしまうため、半田のリフローを用いて回路基板に実装することができず、一方、耐熱性のあるガラスレンズは高価であるため、やむなく手作業で半田付けしたり、レンズなしのパッケージをリフローで回路基板に実装してからレンズを取り付たりするなどの、非能率な製造方法を余儀なくされていた。本発明によれば、プラスチックレンズの熱膨張を有効に吸収する支持構造を取るため、レンズが無理な変形をすることはなく、リフローを経て常温に戻れば原状に復帰して、小型撮像モジュールを半田のリフローで能率よく回路基板に表面実装することが可能になった。かくしてコストが低減し、製品の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の断面図である。
【図5】本発明の第6の実施形態の分解斜視図である。
【図6】本発明の第7の実施形態の分解斜視図である。
【図7】従来の小型撮像モジュールの図面で、(A)は上面図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【図8】図7の小型撮像モジュールの分解斜視図である。
【図9】図7の小型撮像モジュールのレンズ周辺の、加熱前後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
1a 窪み
2 ケース
2a 棚
2b 円錐座
2c 弾性腕
2d レンズ受けリング
3 IC
5 絞り
6 レンズ
6a 基部
6c 円錐面
6d、6e 突起
7 IRカットフィルタ
8 接着剤
31 弾性スペーサ
32 弾性リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板とケースにIC、絞り、レンズ、IRカットフィルタ等を収容してパッケージし、回路基板に実装して用いる小型撮像モジュールにおいて、レンズ外周をケースの棚部に載せ、弾性スペーサでレンズを押さえ、外周を弾性リングで囲んで支持することにより、レンズの熱膨張時の寸法変化を弾性スペーサと弾性リングの変形で吸収することを特徴とする小型撮像モジュール。
【請求項2】 基板とケースにIC、絞り、レンズ、IRカットフィルタ等を収容してパッケージし、回路基板に実装して用いる小型撮像モジュールにおいて、レンズ外周下面に円錐面を形成して、これをケースの棚部に設けた円錐座に載せ、弾性スペーサでレンズ上面を押さえて支持することにより、レンズの熱膨張時の寸法変化を軸方向の変位に変換して、弾性スペーサの変形で吸収することを特徴とする小型撮像モジュール。
【請求項3】 基板とケースにIC、絞り、レンズ、IRカットフィルタ等を収容してパッケージし、回路基板に実装して用いる小型撮像モジュールにおいて、レンズの外周および上端面に複数の突起を設け、外周をケースの棚部に載せて前記の突起を介して周囲の部材で囲んで支持することにより、レンズの熱膨張時の寸法変化を前記の突起とその接触部の変形で吸収することを特徴とする小型撮像モジュール。
【請求項4】 基板とケースにIC、絞り、レンズ、IRカットフィルタ等を収容してパッケージし、回路基板に実装して用いる小型撮像モジュールにおいて、レンズの外周に複数の突起を設け、外周をケースの棚部に載せて前記の突起を介してケース内壁で囲み、弾性スペーサでレンズ上面を押さえて支持することにより、レンズの熱膨張時の寸法変化を前記の突起とその接触部の変形および弾性スペーサの変形で吸収するか、あるいはレンズの上面に複数の突起を設け、外周をケースの棚部に載せて前記の突起を介して上面を絞り等の部材で押さえ、外周を弾性リングで囲んで支持することにより、レンズの熱膨張時の寸法変化を前記の突起とその接触部の変形および弾性リングの変形で吸収することを特徴とする小型撮像モジュール。
【請求項5】 請求項1または請求項2または請求項4に記載の小型撮像モジュールにおいて、弾性スペーサ、弾性リング等の弾性部材は発泡シリコン、紙等、断熱性の材料であることを特徴とする小型撮像モジュール。
【請求項6】 基板とケースにIC、絞り、レンズ、IRカットフィルタ等を収容してパッケージし、回路基板に実装して用いる小型撮像モジュールにおいて、レンズ外周を載せる棚部を弾性変形可能に形成したことを特徴とする小型撮像モジュール。
【請求項7】 請求項6に記載の小型撮像モジュールにおいて、レンズ外周を載せる棚部を弾性変形可能にする構造は、ケース内壁に設けた複数本の弾性腕で棚部を形成するか、あるいはレンズ受けリングをケース内壁に設けた複数本の弾性腕で支持したことを特徴とする小型撮像モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−295024(P2003−295024A)
【公開日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−93375(P2002−93375)
【出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(000131430)株式会社シチズン電子 (798)
【出願人】(000124362)河口湖精密株式会社 (120)
【Fターム(参考)】